〔昨年の党全国大会で、党は平和的民主的方法による革命の方針をとることを宣言し、この方針のもとに全運動を指導しているにもかかわらず、保守陣では、党がいまなお武力革命の方針をとっているかのような悪意の宣伝をおこなっている。そこでこの問題をいま一度明かにし、全党員に徹ていさせる必要がうまれた。第四回中央委員総会では、つぎの全国大会で最後的に決定するまえに基本的な討論をおこなうため、野坂委員は当面の革命の性質と平和的方法による革命の遂行についておよそつぎのような報告をおこなった。〕
一、第二次世界大戦における世界民主勢力の東西ファシズムにたいする勝利、日本帝国主義の崩壌、日本国内における民主主義勢力の急速な発展――これらはわが国の政治経済、社会の上に根本的な変化をもたらしはじめた。この変化は現在のところ過渡期にあるが、つぎのような方向にいろいろな経過をへて進んでいる。すなわち
第一に半封建的制度すなわち(イ)「軍事的警察的天皇制」および(ロ)地主的土地制度は、主として外からの力によって打破されはじめ、従来の絶対天皇制は立憲天皇制に変化しはじめた。しかしこの民主的変化は、日本政府の怠業または妨害の結果、徹てい的でない。すなわち(イ)天皇のもつ相当の特権、天皇制的官僚制度、軍国主義的反動的勢力ならびに(ロ)地主的土地制度(小作地、山林所有)と地主の農村支配は、土地改革によって弱められたとはいえ、いずれもわが政治経済の上に強く残っている。反動勢力は民主革命の進行をあらゆる方法で妨害し、新らしい形で再起を企てている。そこでわが党の任務は、これらの封建的機構と勢力を完全に打破することである。過去一年半におこなわれた民主的改革の、法制または形式だけをみて、牛封建制は実質的に消滅したと早がってんすることはまちがいであって、それはわが党の任務の遂行をさまたげるものである。
二、金融独占資本は植民地の喪失、軍需工業の消滅、財閥解体などによって勢力を弱めたが、小商工業と一部の産業資本家をギセイにする経済の再編成によって、経済的独裁権を一層強化するとともに、封建的要素をできるだけ利用しながら、しかも憲法改正やその他の民主的改革と二回の総選挙を通じて、政治上におけるかれらの支配をにぎることに、ある程度成功した。その方法は国会と政党の利用、官僚の買収と利用である。
このようにして今日の政権は、金融独占資本と天皇制的官僚と地主的勢力との連合(ブロック)の手中にある。そしてその政権の指導権は、旧来の天皇制勢力から大資本家の手に移りつつある。そこでわが党は主要な打撃を金融独占資本に向けなければならなくなった。
三、右の政権は連合国軍の管理下におかれている。だから党の任務は、ポツダム宣言の趣旨に従って、それを完全に遂行することにある。
四、この情勢にして、人民大衆の政治的意識と勢力とは急速に高揚し、こんどの選挙では、社会党と共産とが、全得票数の三〇パーセントをかくとくし(昨年の選果では二一パーセント)こんどの政権では、社会党が重要な役割を演ずるにいたった。このことは、支配階級の力がすでに弱くなり不安定となったことを示すとともに、今後の危機の進展と、共産党の勢力の増大するにつれて、民主人民政権樹立の条件も促進されることを物語るものである。
五、そこで、当面の革命の性質と任務とは、つぎのように規定される。
今日は、民主主義革命の段階から、社会主義革命の段階に入る過渡期である。したがって党の基本的任務は、民主主義革命を完全に行いながら社会主義革命へ移ってゆくための任務をはたすことである。もっと具体的にいえば
(一)戦犯者および反動勢力の一掃。天皇の手にある政治的特権の撤廃。官僚機構と勢力の打破。
(二)小作地と山林の国有化と民主的管理。地方政治からの地主勢力の一掃。
(三)財閥解体の徹ていとその財産の国有化。金融機関の統合と国営。重要産業の国営。
(四)人民のための経済再建。人民生活の安定と向上。
(五)これらすべてを實現するために民主人民政権の樹立。
一、八・一五以来、つぎのような大きな変化がわが国にもたらされた。
(一)植民地のそう失と日本帝国主義の主要な物質的基礎の破壊。
(二)武装解除、すなわち、イ、軍隊、軍需機構、軍勢力などの解体。ロ、軍事工業のカイ滅。ハ、特高警察の解体。二、官僚の相対的弱化。ホ、反動団体の解散。へ、戰犯の追放。
(三)改正憲法にもとづき、国会とくに衆議院が政権運営の主要な機関となってきた。しかし旧来の官僚機構と勢力とはこれを妨害している。
(四)危機がふかまってくるにつれて、支配階級の政権は動揺し、今までの方法では支配がつづけられなくなったこと。
(五)一定の限界はあるが、人民にたいする自由と大衆闘争が急速に進展したこと。
(六)連合軍の日本管理。
(七)世界的な民主勢力のたい頭。
二、これらの条件がみな革命にとつて有利であるとはいえないが、有利な条件を成長させ、その結果武力によらず、平和的方法によって革命を成しとげる可能性をつくつている。この新しい情勢に応じた新しい戦術を採用することが必要となった。またロシア革命のように、ブルジョア政権を打倒する新しいソヴィエート独裁政権をたてることではなくて、国会外の大衆活動と結合しつつ、国会を通じて、民主的方法によって政権をにぎり、民主人民政権をうちたて、こうして民主革命の完全な遂行と社会主義革命への移行をなしうる可能性をも生じてきた。
この可能性を事実とするための原動力は、大衆の力であり、これはわが党が勤労人民の大多数の積極的な支持をうることにほかならぬ。いいかえれば、労働者階級が農民・中小商工業者その他の勤労者の要求をとりあげ、その貫徹のために闘争するとともに、大衆にたいする革命的政治教育を大規模にくりひろげ、これによってまず農民との同盟を、さらにその他のひろい人民層との同盟を強化し、指導をしっかりとうちたてることにほかならない。このようにして、国会外で人民多数の支持をうることは、多くの困難はあるが、国会内で多数をかくとくするゆえんである。
だから国会を軽視することも、また国会万能主義におちいることも誤りである。国会は国会内外の闘争の成果を制度化するものである。この意味において、平和的方法による革命の完成は、最後的には、国会を通じて行われなければならぬ。したがって現在の情勢においては、命を遂行する上に、武力をのぞくいっさいの合法的方法が活用され、できるだけ発揮されるものである。選挙と国会とは平和的方法の重要な部分ではあるが、これが全部であると考えたり、国会外の大衆的活動を否定あるいは軽視することは正しくない。
三、現段階では、革命は、民主人民政権(または人民的民主主義)によって実行されるものである。同政権の構成要素は
イ、先頭部隊としての労働者階級。ロ、もっとも強い同盟者としての働く全農民。ハ、その他の勤労者、中小商工業者。
一部産業資本家は中立の立場をとるか同伴者とする。
そして、この政権は、労働者階級と以上の階層を代表する政治的勢力、すなわち共産党とその他の政党との連合によって、労働者階級の勢力と指導権とが強められるにつれて急速に、または一歩一歩、社会主義実現のための多くの条件がつくられるのである。