一、【インドシナ問題と国際情勢の新しい展開】 この数年間の国際情勢の最大の特徴は、アメリカ帝国主義が、世界支配の野望の重点をアジアにおき、ソ連、中国などとの対決を当面さけながら、大きくない社会主義国と民族解放運動にたいする各個撃破政策を採用して、侵略のほこ先をベトナムに集中してきたことにある。ベトナム侵略で窮地におちいったアメリカ帝国主義は、侵略戦争をインドシナ全域へ拡大することによって態勢をたてなおそうとし、ラオスへの干渉と侵略の強化にくわえて、カンボジア侵略を開始した。こうしてベトナム問題はインドシナ問題に拡大し、さらにあらたな規模で、帝国主義勢力と反帝勢力との国際的対決の焦点となっている。そして三年間のベトナム問題の経過は、七〇年代の国際関係のあらたな条件をつくりだすうえでも、決定的な役割をはたした。
世界最大の帝国主義国が送りこんだ五十五万の米軍と、第二次世界大戦で投下された爆弾総量に匹敵するはげしい爆撃にも屈せず、またソ連と中国との対立が社会主義陣営の団結した支援を困難にしているにもかかわらず、ベトナム人民は英雄的な闘争をすすめ、アメリカ帝国主義に重大な打撃をあたえた。一九六八年にはパリ交渉の開始と北爆停止がおこなわれ、六九年には南ベトナム共和臨時革命政府がつくられた。ベトナム人民の闘争と、それを支援する反帝勢力の闘争は、国際共産主義運動、社会主義陣営の不団結につけこんだアメリカ帝国主義の各個撃破政策の最初の発動を大きな困難に追いこみ、そのことによって、帝国主義の失敗と反帝勢力の前進こそが、世界史の発展をつらぬく今日の基本的傾向であることを、あらためて証明した。
しかしこのことは、帝国主義がその牙を失ったことをすこしも意味しない。帝国主義の侵略的本質には変わりがなく、一つの失敗をさらに凶暴なあらたな侵略でとりもどそうとするものであることは、ニクソン政権のカンボジア侵略が実証している。ニクソンは、第三次世界大戦にまで拡大するかもしれない危険がもっとも大きい地域はアジアであるとのべた。アジアと世界の平和、諸民族の主権の擁護は、まさに反勢力の団結した闘争の前進にかかっている。
そして、帝国主義勢力と反帝勢力の国際的対決には、複雑な局面がいりくんであらわれている。この三年間に、ベトナム侵略反対、イスラエルのアラブ諸国侵略反対、カンボジアへの侵略拡大反対など、反帝・平和の人民運動は各国で前進した。アメリカの反戦運動と黒人運動の発展、フランス、イタリア、スペインその他での労働運動の高揚などにもみられるように、資本主義諸国の階級闘争は、あきらかにあたらしい発展の局面をしめしているが、反帝民主勢力の国際的統一行動の弱さ、右翼社会民主主義者の根づよい分裂策動、一部にあらわれた極左的傾向などが、前進を制約する要因となっている。一九五〇年代から六〇年代にかけてめざましい発展をとげたアジア、アフリカ、ラテンアメリカにおける民族解放運動、民族民主革命をめざす闘争は、ひきつづき前進したが、同時に、一部には帝国主義の新植民地主義政策やそれに追従した民族ブルジョアジーの反動化、内部の階級分化とも関連して、中東問題やアフリカの新興独立国の一部の動向その他にもみられるような困難や後退も生まれている。
もっとも重大な問題は、この三年間に、反帝勢力の先頭に立つべき国際共産主義運動と社会主義陣営内部の不団結が深刻な事態をつづけ、反帝国際統一戦線への効果的結集をさまたげ、帝国主義者の策動の余地をさらにひろげたことである。アメリカ帝国主義への誤った評価や態度の克服がなお総括されていないだけでなく、とくに、中国共産党の毛沢東一派の指導によってひきおこされたいわゆる「プロレタリア文化大革命」、ソ連など五つの社会主義国の軍隊によるチェコスロバキア侵入、中ソ国境でおきた社会主義国家間での最初の武力衝突事件などは、国際的に大きな衝撃をあたえ、帝国主義者の反社会主義宣伝に大々的に利用された。もしも国際共産主義運動の強固な団結、反帝国際統一戦線の結成、強化がかちとられていたならば、反帝民主勢力がさらに大きな成功をおさめていたことはうたがいない。
二、【アメリカ帝国主義の新戦略と反帝統一戦線の課題】 帝国主義の陣営では、アメリカ帝国主義がベトナム侵略でおちいった困難や、ドル危機を中心とした国際通貨体制の動揺に集中的にあらわれている資本主義の全般的危機のふかまりを背景として、一定の再編成が進行している。
六〇年代に比較的急速な発展をつづけた資本主義経済にも、諸矛盾のあらたな先鋭化があらわれている。市場と原料資源の獲得をめぐる世界市場再分割競争は、地域的統合や自由化などの発展とからみあいながら、いっそうするどさをましている。このなかで、第二次大戦の戦勝国アメリカの地位の相対的低下、イギリスの後退、敗戦国日本と西ドイツの地位強化というかたちで資本主義諸国の発展の不均等性がつよまり、帝国主義陣営内の関係にも重要な変化が進行している。だが、戦後のあらたな歴史的条件のもとで、帝国主義諸国の発展の不均等は、これまでのところ帝国主義諸国間の戦争にみちびかずに、社会主義体制、反帝勢力に対抗する帝国主義の大同盟のわく内で進行している。
この同盟の指導者としてのアメリカ帝国主義は、依然として、軍事的にも経済的にも最大、最強の帝国主義であり、「侵略戦争の主勢力」、「世界反動の主柱」である。だがアメリカ帝国主義は、ベトナムその他での失敗に直面し、その地位の相対的低下を同盟・従属諸国の力の動員でおぎなおうとして、国際的支配体制の再編成と各個撃破政策のたてなおしをよぎなくされている。
ジョンソンにかわったニクソン大統領がこのためにうちだした新戦略(グアム・ドクトリンあるいはニクソン・ドクトリン)は、第一に、ベトナム侵略でうけた打撃から教訓をひきだし、MIRV(多核弾頭ミサイル)、ABM(弾道弾迎撃ミサイル)など核戦略態勢の強化とそれにもとづく核優位を維持しながら、同盟・従属諸国に軍事的・経済的負担、とくに「自衛のために人員を供給するという第一義的責任をになうこと」(外交書)をもとめる「肩代わり政策」の強化を柱としている。第二に、「共産主義者の国際的統一というマルクス主義者の夢は解体した」(外交教書)とみて、国際共産主義運動の不団結、とくに中・ソの対立をいっそう巧妙に利用し、核拡散防止条約締結にひきつづくソ連との戦略兵器制限交渉(SALT)、米中会談とその他の対中国政策の柔軟化などで「平和共存」の欺まんをつよめながら、あらたな形態でアジアを主戦場とする各個撃破政策を追求しつづけることをもう一つの柱としている。こうしてニクソン政府は、米軍の部分的撤退と南ベトナムかいらい軍の強化などによるベトナム侵略戦争の長期化、ラオス、カンボジアの「第二のベトナム化」、朝鮮民主主義人民共和国への侵略準備強化をおしすすめている。とくにニクソン政府が、中立政策をまもってきたカンボジアのシアヌーク政権打倒ののちに、カンボジアへの大規模な軍事侵略を強行し、ベトナム侵略をインドシナ全域に拡大したことは、ニクソンのグアム・ドクトリンと「軍事介入の中止」「米軍撤退による戦争のベトナム化」などのうたい文句の本質が、各個撃破政策の強化と「アジア人をしてアジア人と戦わせる」という凶暴な侵略の拡大にあることをあらためて明白にした。
アメリカ帝国主義の新戦略とたたかううえで、諸民族の自決の擁護は、平和擁護とともに、ますます重要な共同の国際的任務となった。帝国主義の介入と干渉をおおいかくす欺まんをくつがえすカギは、その民族自決権への敵対と侵害の暴露にある。社会制度を自由にえらぶ権利をふくめて諸民族の自決権の確立は、現代の世界史的課題の一つである。いうまでもなく、それぞれの国における階級闘争、革命運動も、各国の革命はその国の人民の事業であるという民族自決の原則を前提の一つとしてこそ成功するものであり、これによって、はじめて平和と社会進歩、諸民族の解放をめざす共同の事業における労働者階級と被圧迫民族の真の国際連帯が強化される。ソ連などのチェコスロバキア侵略の否定的役割の一つは、この原理にそむき、民族自決を擁護する社会主義の立場を、ふかく傷つけた点にある。
四月二十四、五日にひらかれたインドシナ人民首脳会議は、ニクソンのベトナム、ラオス、カンボジアにたいする干渉と侵略をはげしく糾弾し、独立、平和、中立、全外国軍隊の撤退など神聖な民族的諸権利の回復をめざす三国人民の正義の闘争にたいする支持を、平和と正義を愛する全世界の人民政府によびかけた。五月五日にはカンボジア王国民族連合政府の結成と民族統一戦線綱領が発表された。アメリカ帝国主義のインドシナ侵略に反対し、ベトナム、ラオス、カンボジアの三国人民を支援する反帝国際統一戦線の結成と強化は、すべての反帝民主勢力のもっとも緊急な国際的課題である。
三、【日米共同声明と対米従属下の軍国主義、帝国主義復活の新段階】 アメリカ帝国主義の新戦略のなかで、日本はアジアで最大の拠点となっている。昨年十一月の日米共同声明は、日米安保条約の長期延長と一九七二年の沖縄「施政権返還」を結びつけて、サンフランシスコ体制をあらたに再編する方向をうちだした。いうまでもなく、沖縄は現在、アメリカの全面的軍事占領下におかれているが、共同声明による「返還」後は、沖縄をふくむ日本全体が米軍の事実上の半占領下におかれることになる。共同声明は、この態勢のもとで、朝鮮、中国、ベトナムにたいするアメリカの武力干渉への積極的協力をあらたに日本に義務づけ、日本全土をアジア侵略のための多角的軍事同盟に緊密にくみこんだ。
同時に、日米共同声明は、対米従属下の日本軍国主義、帝国主義の復活の面でも、一九六〇年の安保改定にひきつづく、あらたな重大な段階を画そうとしている。
日本独占資本は、国民総生産で資本主義世界第二位に達した経済力の急速な強化を基礎に、アジア諸国にたいする帝国主義的膨張への独自の志向をいちだんとつよめており、いわゆる発展途上国むけの年間「援助」額でも、イギリスをぬいて、アメリカ、フランス、西ドイツにつぐ水準に達した。佐藤内閣の対外政策も、アメリカ帝国主義のアジア支配と合作しつつ、個別の「援助」とともにアジア開発銀行、アジア・太平洋協議会など、多様な手段でアジア諸国への経済的、政治的進出をおしすすめてきたが、日米共同声明は一九七〇年代における対外援助」や投資の規模の飛躍的な拡大を方向づけている。
佐藤内閣と日本独占資本は、政治制度の面で、憲法改悪、弾圧体制の強化、教育制度の反動的再編成などによる反動体制の確立をめざしつつ、軍事面では、すでにアジアの反共同盟諸国のなかで実質的に最強の軍事力をもつにいたった自衛隊の大増強をはかり、「自主防衛」の名できわめてはやい速度で軍事費を増大させ、それをささえる兵器産業の拡大・強化にも特別の努力をそそいでいる。日米共同声明は、日米共同作戦の発動区域を、沖縄を拠点に西太平洋全域に拡大するとともに、「韓国」、台湾を事実上日米共同の「生命線」とすることを宣言した。
日本独占資本主義は、アメリカ帝国主義との従属的同盟のもとで、経済侵略をもつよめており、復活・強化しつつある日本軍国主義は、アジアの平和と諸国民の主権をおびやかす現実の脅威となりつつある。
わが党は、複雑な諸要因のくみあわせによる帝国主義的「自立」の可能性をも指摘してきたが、今日における日本軍国主義、帝国主義の復活の過程の最大の特徴は、それが単純に自立の傾向にむかうのではなく、ひきつづきサンフランシスコ体制――「アメリカにたいする日本の従属的な同盟、戦争準備と日本民族抑圧と収奪維持の体制」(綱領)――のわく内で、この体制を、アメリカ帝国主義のアジア侵略の要請および日米間の力関係の相対的な変化に応じて再編しつつ、進行している点にある。
日本は、日米軍事同盟のもとで、軍事的には、依然として、アメリカ帝国主義による半占領下におかれ、国民の意思に反してアメリカの侵略戦争にまきこまれる危険は、日米共同声明によってこれまで以上につよまった。沖縄についても、アメリカは、ここを西太平洋最大の作戦・補給・通信基地として再編・強化しつつあり、その「施政権返還」は、日本の真の独立への第一歩であるどころか、アジアにほこ先を集中したニクソンの侵略計画に日本全体をいっそう直接的にくみこむための道具とされている。
また、日本の政治・外交にたいしても、アメリカ帝国主義は、重要な支配力をおよぼしている。日本の外交政策は、日米軍事同盟によってほとんど全面的に制約され、ベトナム侵略戦争への協力をはじめ、国際政治の舞台で、日本は、ひきつづきアメリカ帝国主義の戦争と侵略の共犯者としての性格をつよめている。社会主義諸国にたいしても、ニクソンの対ソ・中政策に呼応して、「日ソ経済協力」や「日中覚書貿易協定」など一種の「接近」政策をとりながら、全体としては、各個撃破政策にそってアジアの社会主義諸国にたいする対抗、敵視の態度を強化している。
経済的にも、日本独占資本の「高度成長」の過程で、同時にアメリカ独占体の日本への進出の条件が拡大され、米日独占資本間の従属的結合と同盟はますます多面的なものとなった。アジア諸国にたいする日本独占資本の進出も、主としてアメリカの新植民地主義計画の一翼をになう形ですすめられている。日本独占資本自身、一面で競争者としての矛盾、対立、相対的独自性をつよめながら、大局的には、対米従属・依存の関係を維持、利用しようとしている。そして、このような経済的従属・依存関係こそ、日本経済の自主的、平和的発展をさまたげ、日本経済の「高度成長」を国民の利益に反して反動的に方向づけるもっとも重大な条件の一つとなっている。
軍国主義、帝国主義の復活の急速な進行にもかかわらず、日本は現在も真の独立を回復しておらず、依然として、サンフランシスコ体制のもとでアメリカ帝国主義の戦争と侵略の政策にしばりつけられた半占領=半独立の国家であり、「アメリカ帝国主義になかば領された事実上の従属国」(綱領)である。
日本軍国主義も、現状では、自立性を欠いた従属的な軍国主義であることにくわえて、憲法の制約や民主勢力の闘争のもとで、徴兵制の施行や他民族侵略のための「海外派兵」を実行しえず、戦争や侵略の目的を公然とかかげて政治、社会生活全体を軍国主義的に動員する条件をもたないなど、まだ多くの制約のもとにあって、全面的に復活が完了したとは規定しえない段階にある。それだけに、日米支配層は、これらの障害をとりのぞいて軍国主義の反動体制を完成しようとする危険な要求と衝動をいよいよつよめ、民主主義にたいする攻撃と政治反動を強化している。全人民的闘争によって、この反動的計画をうちくだき、軍国主義のあらゆるあらわれに反対して日本軍国主義の全面的復活を阻止する課題は、依然として日本の民主勢力と人民のきわめて重大な緊急の責務である。
アメリカ帝国主義およびその目したの同盟者として復活・強化しつつある日本軍国主義は、日本人民とアジア諸国人民の共通の敵である。共通の敵をもつ日本人民とアジア諸民族の連帯、共同は、いっそう密接で、いっそう重要なものとなった。
日本人民の当面する革命的任務を、アメリカ帝国主義と日本独占資本の合作によるサンフランシスコ体制を打破して独立・民主・平和・中立の日本をきずく反帝・反独占の民主主義革命の遂行にあるとしたわが党の綱領の規定と展望の正確さは、この三年間にさらにいっそうあきらかとなった。日米安保条約と沖縄返還の問題が、日米支配層と日本国民の最大の対決点となったという事実そのものが、そのことを明確に実証している。
こうしてわが国では、日米軍事同盟を固守しつつ、対米従属的な軍国主義、帝国主義の復活をめざす反動勢力の反人民的な道と、日米軍事同盟を打破して平和、中立、真の独立の達成をめざす人民的な道との対抗関係がするどく発展している。
四、【対米従属下での「高度成長」政策による国民生活への攻撃】 異常に急速な日本独占資本の復活・強化の土台となった世界一の「高度成長」の重要な条件は、労働者階級と勤労人民にたいする過酷な搾取と収奪、アメリカのアジア侵略と特需への依存外資と外国技術の導入、急速な対外進出、独占資本の大規模な蓄積をたすける国家財政、国家信用の全面的利用などにある。この「高度成長」は、日本独占資本主義の経済的構造を急激に変化させ、その諸矛盾を特別にはげしくした。
対米従属下の「高度成長」は、人民の犠牲による対米従属的な国家独占資本主義の再編強化をおしすすめ、第一に、一方の極に、少数の独占体への富の集中と金融寡頭制の強化を生みだし、他方の極に、大量生産、大量消費をおう歌するいわゆる「豊かな社会」のもとでさまざまな形態の貧困を蓄積させ、広範な勤労大衆の労働強化と権利のじゅうりん、生活苦、健康の破壊を生みだした。
第二に、貿易、資本の自由化の急速な進行とむすびついて、日本経済の自主的、平和的発展を大きくさまたげている。対米偏重、対社会主義貿易の制限など、日本の地理的条件に反する貿易構造の固定化、石炭産業の破壊と石油中心のエネルギー構成への急激な転換、技術や食糧および原料資源の対米依存の強化、外資系企業の急増とその新産業部門での支配力の拡大など、いくつかの重要な分野では対米従属のあらたな進行さえもたらした。
第三に、日本経済の奇型的な発展をおしすすめ、最新の重化学工業部門では国際的な巨大企業の列にはいる大独占体を続出させ、電子工業、石油化学、原子力その他新産業部門をつくりだしながら、一部の産業や中小企業、農業などをきわめて困難な条件においこみ、公害問題や交通、住宅などの都市問題を特別にはげしくした。
第四に、自民党の対米従属的な、独占資本本位の農政の結果、ごく少数の富農的、資本家的経営は育成されたが、十年間に四百万人以上の労働力と大量の土地を農業からうばい、出かせぎや過疎問題などを深刻化させ、八割の農民を農業だけでは生活できない状態に追いこんだ。外国農産物輸入の自由化、「構造改善」事業などの結果、農業生産における機械化の比重の増大にもかかわらず、たとえば穀物の自給率(重量)は六割以下にさがり、日本農業の自主的、民主的発展の破壊がすすんでいる。
第五に、ぼう大な設備投資をささえる財政・金融政策によって、インフレーションを構造的なものとし、独占価格のつり上げ、公共料金の引き上げ、地価騰貴など物価上昇をはげしくした。
第六に、都市問題、公害問題の重大化がしめすように、人間と自然のあいだの正常な循環関係を破壊し、国土に荒廃をもたらし、人間的生活と人間の生存のもっとも基本的な条件をも失わせつつある。
これらは、たんなるひずみではなく、対米従属下の独占資本本位の「高度成長」強行のさけることのできない産物である。
自民党政府と日本独占資本は、貿易、資本の自由化を完成し、軍事費と対外「援助」の増大、大型合併と「新全国総合開発計画」、「新経済社会発展計画」など、人民の犠牲のもとで一九七〇年代にあらたな「高度成長」をなしとげようとしており、日本独占資本主義の経済的諸矛盾のいっそうの激化、国民生活への全面的な攻撃が特徴的な動向となっている。
いくつかの世論調査がしめすように、国民の七割は、平和と中立、物価の安定をつよくのぞんでいる。日米支配層の侵略と反動、独占擁護の政策は、平和、中立、主権、生活安定、社会進歩、民主的自由の擁護、人間の尊重という国民の圧倒的多数の要求との根本的な敵対関係をいっそう先鋭化させている。これこそ、対米従属下の軍国主義、帝国主義復活、異常な「高度成長」がもたらした事態であり、あらゆる分野で国民の利益をまもる民主的改良がいっそう切実なものとなり、政治の根本的変革の必要を広範な国民に自覚させる諸条件が成長しつつある。
五、【一九七〇年代の政治戦線の再編成】 昨年末の総選挙の結果とその後の情勢がしめすように、日本の政治戦線にもあらたな再編成の過程が進行している。
日米支配層の政治的代理人である自民党は、あと二十二議席で憲法改正発議に必要な三分の二に達する三百二議席の多数を背景に、日米共同声明路線を強行しようとしている。自民党は、七〇年代の主要な敵を共産党だとして反共主義をつよめつつ、自民党の支持率の減退を公明党、民社党との連携によって補強することをくわだて、京都府知事選挙では、出版妨害問題などでの公明党との「貸し借り」関係を利用して、反共・反動の三党連合を結成し、蜷川民主府政の打倒に狂奔した。その敗北から衝撃をうけた政府、自民党は、来年の東京都知事選挙の準備をいそぐとともに、選挙法改悪を提唱しはじめ、現在の国会法規の最小限の民主的規定さえ「慣例と称して今日ふみにじっているのにくわえて、選挙制度、国会制度全体の反動化による議会制民主主義の形がい化をねらっている。政治的発言力をいちじるしく強化している財界も、自衛力増強、大学をふくむ教育制度全体の反動的再編、道州制その他で反動的支配体制を一挙に確立することを自民党政府に要求している。自民党および財界のなかには、憲法改悪を推進するうごきもつよまっている。「中道」「革新」を看板にしてきた公明党は、国会の第三党に進出したが、出版妨害問題にたいするわが党と広範な世論の追及によって、いわゆる「鶴タブー」が打破され、政教一致、一宗専制をめざした反民主的な組織体質への批判もふくめ、創価学会とともにはじめて全面的な批判にさらされた。公明党・創価学会の指導部は、「事実無根」論や「誤解」説で出版妨害問題をごまかし、反対に、わが党と民主勢力にたいして中傷による反共カンパニアを組織することで窮地を脱しようとし、東京都議会では出版妨害問題での発言を理由にわが党の川村都議に不当な発言中止と懲罰決議を強行するなどのファッショ的暴挙をあえてし、京都では「日本共産党をつぶす」ことを公言して自民党と反動連合をくむなど、その危険な反民主主義的体質をいっそう露骨にした。その結果、世論の批判のいっそうのつよまりとともに、公明党の「革新性」に期待をよせていた一部の公明党支持者や創価学会員と指導部との矛盾も深刻となった。六月の公明党大会を前にして、創価学会の池田会長は、出版妨害問題での「猛省」や「国立戒壇」という呼称の取消し、公明党と創価学会の「分離」、「かたくなな反共主義」の否定、圧力的な折伏活動の是正など、「新方針」を提起することで事態を収拾しようとするにいたった。しかし、この「新方針」なるものも、出版妨害の事実をあいまいにしたまま、「政教分離」を二、三年がかりの長期目標とし、その反共カンパニアをも共産党からの攻撃にたいする「自衛」手段として正当化するなど事実に反することをふくめて、全体として矛盾と不徹底さをまぬがれていない。また公明党としては、東京都議会でのファッショ的暴挙をふくめて批判の対象となった諸問題について責任ある自己検討をまだおこなっていない。自民党とのゆ着の経験をかさねてきた公明党が、今後とも自民党への追随と連合の道をとる可能性は根づよく、その反民主的、保守的動向への必要、適切な批判は、依然として、自民党政治の打破、政治の真の革新の任務とむすびついた重要な課題となっている。
右翼社会民主主義政党の民社党は、日米共同声明後、日米軍事同盟の擁護と軍国主義復活政策の支持の基本路線をあらためて再確認共産主義とファシズムを「左右の全体主義」として同列に非難する反共主義を前面におしだしている。戦前、反共の立場から侵略戦争に賛成した幹部を数多くもつ同党は、同じ歴史をくりかえしつつ、独占資本の支持のもとに反共・親米・保守連携の路線をすすんでいる。しかし、総選挙での停滞によって危機感をつよめ、一方では自民党との連立政権の可能性を依然として追求しつつも、他方では労働戦線の反共的「統一」の策動に呼応しながら、社会党の右派との再合同による右翼社会民主主義新党結成という分裂主義的構想をおしすすめようとしている。また出版妨害問題ではある程度公明党を批判しながら、京都府知事選挙では三党連合に加わるなど、その行動と路線には大きな矛盾があらわれつつある。
総選挙で議席の三分の一を失った社会党は、あたらしい危機を経過している。敗北を招いた最大の原因に、同党に根づよく存在する反共主義、それとむすびついたトロツキスト反共暴力集団や毛沢東盲従分子への追随、日米軍事同盟を事実上維持する政策をとっている公明党、民社党との無原則的共同をめざす「多角的、重層的共闘」論など、政策上、路線上の誤りがあったことは明白である。ところが、これらの問題の真剣な追求と検討はおこなわれず、再建大会は派閥間のかけひきが底流となっただけでなく、決定された運動方針には依然としてわが党にたいする根拠のない誹謗がくりかえされている。トロツキスト暴力集団や反戦青年委員会との関係では前進的方向がしめされたが、問題の根本的解決はのこされている。
東京、京都の知事選挙その他の成果がしめすように、共産党と社会党との共闘を軸とした統一戦線こそ、民主勢力全体の前進を保障するただ一つの道であり、いま社会党にもっとものぞまれるのは、綱領上の反共主義とそれにもとづくセクト主義と各種の無原則的動揺の克服、外国からの干渉にたいする自主的態度の確立、労働組合にたいする「社会党支持」しめつけの廃止、安保条約廃棄、沖縄全面返還を中心課題とする平和・中立の統一戦線への積極的態度などである。わが党は、社会党がこれらの重大な欠陥を克服し、広範な国民の期待にこたえてわが党とともに前進することを希望している。総選挙での躍進の結果、わが党の政治的比重は大きくなり、自民党の反民族的、反人民的諸政策にまっこうから対決している政党が日本共産党であることが、いっそう広範な大衆に認識されつつある。公明党の出版妨害問題にたいする断固たる追及にひきつづき、京都府知事選挙で、共産党、社会党、民主団体を広範に結集した「明るい民主府政をすすめる会」が、金力と権力を総動員した反共・反動の三党連合を大差でうちやぶったことは、統一戦線の勝利の展望とわが党の積極的役割をもっとも端的にしめすものとなった。
七〇年代の緒戦としての京都府知事選挙の結果は、自民党、公明党、民社党のそれぞれに大きな衝撃をあたえるとともに、三党連合が反共と党利党略のためのもっとも反動的な結合にすぎないことを暴露し、逆に来年の都知事選挙から中央政局の問題までふくめて、三党間の内部矛盾を拡大することとなった。この選挙は、反共連合戦線の結成によって一九七〇年代をのりきろうとする日米支配層の意図の実現にはさまざまの矛盾と困難があり、この危険な意図を打破して民主勢力が前進しうるあかるい展望と確信をあたえた。
一九七〇年代は、たんなる「多党化時代」ではなく、対米従属とそのもとでの軍国主義、帝国主義復活をめざす反共・反動勢力と平和・中立の日本をめざす民主勢力との対決の時代である。自民党と共産党との対決こそその軸となるであろう。
「革新とはなにか」、「階級政党か国民政党か」という論議にも、わが党は事実にもとづく回答をあたえた。日本共産党こそ、社会主義の理想を堅持し、日米軍事同盟の打破と日本の反動的な政治・経済体制の変革をめざす綱領と政策、具体的闘争方針をさししめしている真の革新政党である。日本共産党は、いっさいの抑圧と搾取を根絶して国民全体を解放する労働者階級の歴史的使命を代表した政党であるからこそ、労働者階級の前衛政党であると同時に、民族と国民の未来にない、民族独立などの真の民族的、国民的利益をまもりうる政党真に民族と国民の党でもある。
六、七〇年代における二つの道の闘争と民主連合政府樹立の展望】 一九七〇年代は、政治、経済、文化などあらゆる分野で、アメリカ帝国主義にたいする従属的同盟のもとでの軍国主義、帝国主義復活の路線と、独立、民主、平和、中立をめざす路線との日本の進路をめぐる二つの道の闘争が、いっそう大きな規模でたたかわれる時期となるであろう。
アジア地域は、現在、世界の矛盾の集中点となっている。アメリカ帝国主義は、ここに侵略政策を集中し、そのなかで、アジアで唯一の独占資本主義国である日本を「アジアにおけるニクソン・ドクトリンの成功のカギ」をにぎるものとしてもっとも重要な拠点にえらんだ。日本における民族的、階級的諸矛盾のいっそうの先鋭化はさけられない。
日米支配層は、これらの諸矛盾の反動的な打開をめざしている。この道は、日本国民にとって重大な不幸と犠牲とを意味している。日本人民は、反対に、国の進路を平和、中立政策をとる独立・民主日本の方向へ根本的に転換させることによる、これらの諸矛盾の人民的解決をめざしている。この転換は、アジア情勢と世界情勢全般にも大きな影響をもたらすであろう。七〇年代の諸条件は、日本の民主勢力が、実際に統一戦線を結成し、自民党政府をたおして民主連合政府をつくり、戦後二十五年つづいた保守党の反動的支配を終わらせる展望をはらんでいる。民主勢力は、あらゆる困難と障害にうちかち、七〇年代に民主連合政府樹立の事業を成功させなければならない。
独立と平和、社会進歩と民主的自由の擁護をめざし、日本における人民の民主主義革命の勝利をめざすわが党の歴史的責任は、いよいよ重大となっている。
七、【三年間の大衆闘争と現状を打開する展望】 前大会以来の三年間、日本人民は各分野の大衆闘争をたえまなく組織し、前進させてきた。七〇年代を迎えてサンフランシスコ体制下の日本の諸矛盾はさらに深刻さをくわえ、人民の闘争の民族的民主主義的なエネルギーは、あきらかに増大しつつある。
労働者の切実な政治的、経済的要求にもとづく労働組合のストライキ闘争は、この数年来年々増加し、昨年の参加者数はのべ五百万人に達した。米価闘争は、全日農、農協を先頭に全農民的な規模で毎年組織され、米の作付制限のおしつけに反対し食管制度をまもる闘争に前進しつつある。大学民主化の闘争、重税や公害、社会保障改悪に反対する諸闘争など、それぞれの要求をかかげた各層人民の諸闘争は、ねばりづよくたたかわれた。
民主勢力の統一行動も、ベトナム侵略反対、米原子力艦船「寄港」反対、安保条約廃棄、沖縄全面返還、大学法粉砕、地方政治の革新、言論・出版の自由の擁護など、さまざまな政治課題で、多くの困難をのりこえて一連の前進をかちとってきた。昨年の一〇・二一には、沖縄県民の統一闘争にもささえられて、一九六三年の安保共闘組織の活動停止以来はじめて、統一実行委員会による安保・沖縄問題での統一集会が組織され、ことしの四・二八闘争にもうけつがれた。また東京、京都の知事選挙などでは、共、社両党を中心と共闘が実現した。とくに東京都知事選挙における政策・組織協定にもとづく持続的共闘の結成と、それによる勝利の経験は、統一戦線運動に重要な典型をうちだしたものとなり、その教訓は沖縄三大選挙、京都府知事選挙にもひきつがれた。
しかし、わが国の大衆運動の今日もっとも重視すべき問題は、個々の闘争の高揚や統一行動の一定の成果や潜在的エネルギーの大きさにもかかわらず、運動の効果的な統一的結集に成功せず、そのために情勢が要求している水準から、なお大きくたちおくれていることである。
その最大の主体的原因は、大衆組織と大衆運動の重要な部分に「特定政党支持」が義務づけられ、反共的分裂主義が克服されていない点にあり、わが国の大衆運動は、そのために日米支配層のはげしい攻撃や分裂策謀にたいして団結してたちむかえないでいる。大衆運動の主力である労働組合運動では、総評の社会党一党支持および同盟の民社党一党支持が依然として支配的傾向となっている。このため労働組合は、その組織勢力の大きさにもかかわらず、低賃金政策を効果的に打破することができず、また民主勢力の統一の中心部隊としての役割をはたしえないでいる。大衆団体をそれぞれ社会党、民社党など特定の社会民主主義政党に従属させるこの党派的セクト主義の誤りは、大衆運動の他の分野にももちこまれ、青年運動、婦人運動などの戦線統一の大きな障害となってきたし、原水禁運動、日ソ・日中友好運動などでは、外国の干渉とむすびついて運動の分裂を生みだしてきた。
全国的規模での統一戦線の未結成は、反共主義とむすびついた「特定政党支持」の義務づけや特定政党の政治路線のおしつけによる運動の分散化、セクト化の結果である。日本の民主勢力は、一九六〇年の安保闘争の歴史的成果として生まれた安保共闘組織を解体され、それにかわる統一的共闘組織をなんらもたないまま、一九七〇年をむかえた。
大衆運動のこの現状を打開して大衆運動と統一戦線運動を飛躍的に発展させる条件は、三年間の闘争をつうじて、今日、大きく成熟しつつある。両翼の大国主義的干渉を基本的に打破し自主性の原則を民主運動に定着させてきたこと、政府、自民党に泳がされたトロツキスト暴力集団を孤立させてきたこと、一致点での行動の統一、妨害分子の参加を認めない、対等・平等の共闘という統一の諸原則が広範な民主勢力をとらえたことなどは、わが党と統一戦線支持勢力の奮闘によってかちとられた貴重な成果であり、党と統一戦線支持勢力の比重と影響は、大衆運動の各分野で拡大している。
さらに国会や東京都議会などでのわが党の躍進と社会党の後退は、社会党が「野党第一党」と称して労働組合などに「特定政党支持」をおしつけることの矛盾を、いちだんと表面化させた。
日米支配層による日米安保条約の事実上の再改悪、軍国主義の復活・強化の重大な挑戦に直面して、日本の真の独立と平和・中立化の課題、国民生活擁護の課題、民主主義の擁護と拡大の課題は、日本の進路にもかかわる日本人民の共同の中心的闘争課題となっている。この三つの闘争課題に全力をあげてとりくみ、日本の大衆闘争のもつ歴史的な弱点を克服して、各分野の民主主義的大衆運動の大きな前進を実現すること、とくに労働組合運動について、「特定政党支持」を義務づけず、政党支持の自由の原則に断固としてたった本来の発展の方向をかちとることは、党と統一戦線支持勢力のきわめて切迫した任務である。いまや党は、第七回党大会以来の十二年間の党建設の前進と総選挙などでの躍進、大衆との結合に依拠して、全人民的な大衆闘争の組織化と統一戦線結成の任務に、全党の総力を結集しなければならない。
八、【安保・沖縄問題と日本の中立化】 当面する闘争の中心課題は、日米軍事同盟の打破と日本の平和・中立化をめざす、安保・沖縄問題での全人民的統一行動の組織化である。
日米安保条約の固定期限は六月二十二日をもって終了し、条約上も終了通告によって安保条約廃棄が可能となる歴史的時期がはじまったが、このことは安保条約廃棄闘争にあらたな局面をひらくものとなった。この局面では、条約終了をアメリカ政府に通告する民主連合政府の樹立が闘争の中心目標となり、日米軍事同盟の解消と独立、平和、中立の日本を願う広範な国民的要求は、革新的、民主的な政府樹立の要求とますます直結することになる。安保条約廃棄闘争は、国民の多数を安保反対、平和・中立の統一戦線の側に結集し、その基礎のうえに民主連合政府をつくりあげ、安保条約を実際に廃棄するという巨大な歴史的事業である。
六月二十三日は、日米共同声明の路線に国民的抗議をつきつけ、「安保廃棄・中立実現の政府樹立」をめざす歴史的な統一行動の日となった。反動勢力に泳がされているトロツキストは、またもや挑発に狂奔したが、これは、安保廃棄闘争の真の勝利の展望から国民の目をそらせ、自民党政府の「治安体制」強化の反動計画をたすける謀略的妄動にほかならない。
しかし安保・沖縄問題での持続的、統一的な共闘組織の結成は、すべての民主勢力の緊急焦眉の課題である。わが党がくりかえし指摘してきたように、この問題での全民主勢力の共闘、なかでもその軸となる共、社両党の共闘を不可能とする客観的障害はない。最大の障害は民主勢力の主体的条件―社会党、総評などが依然とし共産党と一線を画する反共主義をのこし、トロツキストなど妨害勢力の介入にあいまいな態度をとってきた点にあったが、社会党再建大会では反戦青年委員会の育成の方針や日中友好協会脱走派支持の態度にも変化をみせるなど、社会党内にもこの障害を取り除く前進的な方向があらわれている。党と統一戦線支持勢力は、六・二三統一行動の成果のうえにたって、安保・沖縄問題での持続的共闘結成を全国的にも地域的にも重視し、そのための努力を強化しなければならない。
沖縄県の無条件全面返還を要求する沖縄県民の闘争は、日米共同声明以後、安保条約廃棄の要求との結合をいよいよつよめて、沖縄県の米軍支配を根底からゆり動かす規模と深さで発展しつつあり、日本人民の独立、平和、中立の運動のもっとも強力な一翼をになうものとなっている。とくに、沖縄を西太平洋最大の作戦・補給・通信基地として再編・強化しようとするアメリカの構想があきらかにされ、沖縄「返還」をテコとして日米軍事同盟の侵略的強化をはかある日米支配層の策謀がいよいよ明白に暴露されてきている今日、本土の民主勢力が沖縄県の無条件全面返還の闘争をいっそうつよめ、沖縄人民党、沖縄復帰協を先頭とする沖縄県民の闘争との連帯強化のために、いっそう系統的で計画的な努力をはらうことは、きわめて重要である。今秋には沖縄県民の「国政参加」のための衆参両院議員選挙が予定されているが、この選挙で、沖縄人民党を先頭とする祖国復帰民主勢力の勝利をかちとることは、沖縄返還闘争の今後の発展を左右する重大な課題である。
九、【アジアの諸国民との連帯】 日米安保条約を廃棄し、沖縄の無条件全面返還を実現し、平和、中立の日本、日本の真の独立をめざす課題は、日本軍国主義の全面的復活を阻止し、日本の進路をアメリカ帝国主義に従属した侵略的方向から反帝・平和、独立・中立の方向に決定的に転換させる闘争であり、アメリカ帝国主義の侵略と日本軍国主義の復活に反対するアジアの諸国民との国際的連帯をつとめる課題とかたくむすびついている。
アジアの諸国民との国際的連帯の闘争でなによりも重要な課題は、アメリカ帝国主義がその侵略のほこ先を集中しているベトナム人民との連帯である。沖縄をはじめとする日本全土が、ベトナム侵略の総合基地となっている現在、日本人民は、闘争を弱めようとする「ポスト・ベトナム」の宣伝を克服し、ベトナム人民支援の多面的活動をいっそう強化する必要がある。日米支配層がねらう七二年の「沖縄施政権返還」の重大な柱となっている、日本全土のベトナ侵略基地化の策動を粉砕することはとくに重要である。ベトナム侵略戦争の長期化とラオス、カンボジアへの拡大など、インドシナをめぐる情勢があらたに重大化している今日、国際的にもアメリカ帝国主義の侵略に反対し、ベトナム人民をはじめとするインドシナ三国人民を支援する反帝国際統一戦線結成のための努力をいよいよ強化しなければならない。
朝鮮人民との連帯の強化は、アメリカ帝国主義の各個撃破政策を失敗させるためにも、日米共同声明の危険な犯罪的陰謀とたたかうためにも、ますます急務となっている。日航機乗っ取り事件の経過をつうじても、米・日・「韓」をむすぶ事実上の多角的軍事同盟の危険性と佐藤内閣の朝鮮敵視政策の不当性が、広範な国民の前にあきらかとなった。われわれは、朝鮮民主主義人民共和国の承認を要求するとともに、日朝間の往来の自由と経済交流の強化、在日朝鮮人の民族的、民主的権利の擁護、とくに人道問題となっている在日朝鮮人の帰国問題の即時解決のために努力しなければならない。
日中友好の課題は、一方では、自民党・佐藤内閣が中華人民共和国の承認、国連代表権の回復に反対する態度をとりつづけているだけでなく、日米共同声明で台湾問題にたいする公然たる干渉をしながら、「日中覚書貿易協定」にみられるような二面政策をとっていること、他方では、毛沢東一派が「四つの敵」論の承認を日中友好運動と日中貿易におしつける不当な干渉をつづけ、それをうけいれる「土下座友好」や「土下座貿易」がおこなわれていることによって、複雑な状況にある。それだけにわれわれは、平和五原則にもとづく日中友好という原則的政策をあくまで堅持し、日中国交回復、中国の国連での正当な地位の回復、日中貿易の拡大のために積極的に運動するとともに、毛沢東一派の不当な干渉をやめさせ、自主、対等の原則にたった日中友好運動の統一と前進のために着実な努力をつみかさねてゆくことが重要である。
日ソ友好運動の分野でも、干渉の結果としての分裂組織「日ソ親「善協会」がいまだに存在し、ソ連側からの交流、接触がつづけられていることが、日ソ両国人民の真の友好を発展させるうえでの重大な障害物となっている。わが党は、千島問題の公正な解決をはかる積極的、根本的政策をあきらかにし、サンフランシスコ体制打破の展望とむすびつけてその実現の具体的な道すじを責任をもってしめした。日本国民が千島問題の解決を要求することを、反ソ的、報復主義的要求だとする一部の議論はまったく根拠がない。わが党が日ソ間の領土問題の正しい解決を提起することは、自民党や「中道」政党の無責任で党略本位の「北方領土」政策とはことなり、日ソ両国人民の友好を真に安定した基礎のうえにおくことをめざすものである。
十、国民の生活と生命の擁護】 日米支配層と自民党政府によるあらたな「高度成長」政策のもとで、生活の擁護と向上は国民のもっとも切実な共同の要求となっている。都市でも農村でも、人民各階層がそれぞれの多様な要求をかかげて生活と経営をまもる運動にたちあがっている。この国民生活擁護の要求と闘争も、日米支配層、自民党政府の軍国主義、帝国主義復活の路線との正面からの対決という性格をもたざるをえず、七〇年代の政治の真の革新への重要な起動力となる必然性をもっている。
党の政策と方針にもとづき、大衆の切実な当面の日常要求獲得の運動を発展させ、それぞれの分野で可能な一定の民主的改良を実際にかちとる努力をさらに強化するとともに、事態の根本的打開を求める要求とエネルギーを重視し、その面からも、当面民主連合政府を要求する全人民的運動を意識的、計画的に発展させることが、重要である。
闘争の組織化についても、いろいろな大衆団体が組織する闘争を支援し、その正しい発展のために協力することの基本的重要性はいうまでもないが、経済闘争を労働組合など大衆団体まかせにする受動的態度を一掃し、情勢と必要におうじて、党のイニシアチブで全国的、地域的な大衆闘争を主動的に組織する必要がある。大学闘争や出版妨害糾弾闘争の経験にてらしても、党が民主的大衆団体と協力し、広範な大衆の自発性を尊重して創意をくみあげつつ、党のもつ政治的、組織的力量を大衆運動の分野で全面的に発揮するならば、かならず全国的な影響力をもつ強大な大衆闘争を発展させることができる。
今日の国民生活擁護の諸要求のなかでは、労働者、農民など各階層別の要求とともに、物価、公害、災害、交通、住宅、社会保障、過密・過疎問題など、人民諸階層が共通のつよい関心をもち、直接政府や自治体が要求の相手となる課題が、重要な部分をしめている。また、階層ごとの要求と闘争についても、米の作付制限のおしつけに反対する農民の闘争、職場内での民主的権利の保障を要求する労働者の闘争など、現在の大衆組織のわくをこえだ全国的な連帯が要求される問題がすくなからずある。これらの点からみても、党が、経済闘争の組織化に、それにふさわしいやり方で積極的にとりくみ、その政治的指導力を正しく発揮することは、きわめて重要である。
とくに、国民の生命にかかわる問題は特別緊急で切実な重要性をもっている。年間一万六千人の人命を失わせている交通事故、六千人の死亡者を出している労働災害、水俣病などの悲惨な工場公害、多くの市民の健康をむしばむスモッグ公害、鉛公害、大阪のガス爆発事故をはじめ安全無視の「都市再開発」による災害、職場と農村ですすんでいる母性破壊問題などの解決は、猶予を許さない国民的な緊急課題となっている。
十一、【民主主義の擁護と日本共産党の態度】 国民全体の共通の切実な関心をあつめている大学・教育問題、田中自民党幹事長の介入もふくめた公明党・創価学会の出版妨害問題は、民主主義と基本的人権の侵害に反対する国民の要求と関心の深さとひろさを、あらためてしめした。さらに、公明党が東京都議会で自民党と連合しておこなったファッショ的暴挙は、この問題が議会制民主主義への根本的な挑戦につながるものであることについての具体的な実証となった。
七〇年代には、軍国主義、帝国主義復活の路線にもとづいて、政治的反動か民主主義かの根本的な対立が激化することは、明白である。議会制民主主義の擁護、小選挙区制反対、教育制度の反動的再編反対、憲法改悪阻止の闘争をはじめ、不当な弾圧、裁判への政治的介入、民主運動にたいする悪質な挑発とスパイ活動に反対し、民主主義と基本的人権を擁護し拡大する闘争を、一貫して重視する必要がある。
大学民主化、教育改革についてのわが党の政策が、大学闘争の発展に大きく貢献したことにもみられるように、民主主義擁護の大衆闘争、統一行動を発展させるうえで、民主主義的諸要求にこたえる党の政策は大きな役割をはたす。
党は憲法に規定されたいっさいの民主主義的権利の実現と保障のためにたたかうが、当面の政策にとどまらず、独立・民主日本および社会主義日本への展望にたって、民主主義の問題にたいする党の一貫した態度をひろく宣伝し、広範な国民の理解をもとめることは、政治的反動と民主主義との対決に、国民の多数を正しく結集するうえでも、きわめて重要な政治的意義をもっている。
議会制度や国民の民主的権利の憲法による保障など、現在の日本に存在している一定の民主主義は、資本主義社会に固有の限界と歴史的制約をもっているとはいえ、民主主義のための闘争における日本人民の重要な獲得物である。そして、反動勢力のファッショ的攻撃に反対して、ブルジョア民主主義の制度や権利を擁護することは、党と労働者階級の当然の任務である。
わが党がめざすあたらしい日本においては、ブルジョア民主主義の制約を打破して、国民の民主的な権利と自由、政治的民主主義の制度はさらに発展させられ、強固に保障される。
(イ)わが党は、主権在民の徹底した実現をめざす立場から、議会制民主主義をはじめとする政治的民主主義の擁護と発展を一貫して重視し、国の政治制度の問題について、独立・民主日本においても、社会主義日本においても、「名実ともに国会を国の最高機関とする人民の民主主義国家体制」(綱領)を基本とする態度をとっている。
(口)独立・民主日本では、暴力で人民の民主主義制度を破壊しようとする行動をとらないかぎり、政府に批判や反対の態度をとる政党をふくめて、すべての政党にたいして、活動の自由が保障されるし、選挙で国会の多数をえた政党が政権を担当することも、制度上当然のことである。
言論・表現・出版・集会・結社の自由は国民の基本的権利として保障され、はたらく人民がこれらの権利を現実に享受できるように、実際の物質的保障も確立される。
(ハ)これらの民主主義的達成は、労働者階級の権力が樹立される社会主義の日本にも発展的に継承される。社会主義日本においても、共産党の一党制度はとらず、社会主義建設を支持する政党と協力することはもちろん、社会主義を批判する政党も一般には禁止されず、言論・表現・出版・集会・結社の自由、信教の自由も保障される。しかし、不法な暴力的手段で社会主義制度の転覆をたくらむ反革命勢力が法によって規制されるのは、当然である。
民主主義の問題にたいするわが党のこのような態度は、党利党略的な当面の打算にもとづくものではない。独立・民主日本において社会主義日本においても、国民の民主的自由と政治的民主主義を一貫して保障し、反動的な思想や潮流にたいしても基本的には言と思想のたたかいでこれを克服する態度をとることが、国民の多数の確固とした支持のもとに、新しい社会の真の安定と発展をかちとる道であり、社会主義の建設をめざす労働者階級の政治的支配を、本当の意味で実現し強化していく道である。
十二、【大衆闘争の前進のための若干の問題点】 党は、第十回党大会以後、労働組合運動(六中総)、安保・沖縄の統一戦線運動(八中総)、青年運動(九中総)などの方針を中央委員会総会で決定したのをはじめ、各分野の大衆運動とその当面した重要諸問題についての方針と政策を具体化してきた。全党は、ひきつづきこれらの決定を行動の指針として、労働者、農民、漁民、勤労市民、未解放部落住民、貧困者、知識人、婦人、青年、学生、中小企業家などすべての人民の要求と闘争を発展させ、人民各階層の大衆組織を確立、強化、拡大するために努力しなければならない。
大衆闘争の前進のためには、とくにつぎの諸点に注意して活動する必要がある。
1 大衆闘争の組織化にとりくむにあたって、第九回党大会決定では、「統一戦線への発展をめざして、要求の獲得、大衆の自覚の成長と組織の強化、党勢拡大、この三つを統一してたたかう」という、大衆闘争の三つの観点を定式化したが、これに「社会的階級的道義の尊重」、すなわち「プロレタリアートとしての当然のモラルに裏づけられた社会的階級的道義をまもり、要求においても闘争方法においても、広範な勤労人民の社会的支持をえられるような道理と節度のある態度をとる」という観点をつけくわえる。この「四つの観点」を今後かたく堅持すべき大衆闘争の原則とする。社会的階級的道義とは、要求の正当さにたいする不屈の闘志、弾圧や誘惑に屈しない階級的節操、たたかいにおける連帯と献身などを積極的内容とし、自己の正当な要求を勤労人民の共同の闘争として達成する階級的正義につらぬかれたものである。
2 政策問題で、原則上の正確さを保持する努力をつねに重視するとともに、機械的、硬直的態度を克服することは、大衆闘争の発展のためにも重要である。「地域開発」や「農業構造改善」事業な自民党政府の独占奉仕の計画に対処するさいに、政府の政策の暴露と反対だけに終始して大衆の要求を実現する積極的政策を軽視したり、「地域開発」政策などのわく内にあるということから、大衆の実利とむすびついた改良的措置にも一律に反対するなどの機械的態度が一部にあらわれ、大衆からの遊離を招いたことがあった。労働組合運動においても、労働者へ犠牲を転嫁する資本主義的「合理化」や労働者を事実上資本への追随者にしたてることをねらった「生産性向上運動」に断固として反対することは当然だが、設備の近代化や生産性の向上にどんな場合でも無条件に反対するとか、中小企業で実情を無視した要求や闘争方針をとるとか、職場の状況や大衆の感情から遊離した機械的態度とかが、右派勢力に利用されその進出を許す結果を招いた例も、少なくない。政策と戦術の面で、党が堅持すべき原則的で弾力的な見地を全党のものにすることが必要である。
3 また、党の各級の機関、基礎組織、グループは、政策上の指導性をもつと同時に、複雑な情勢、敵味方の力関係や大衆の感情を正しく考慮した大衆闘争の戦術、闘争形態、闘争方針の面での指導にも習熟する努力をつよめなければならない。これは、右翼社会民主主義者やトロツキストの誤った影響を克服して、大衆運動の正しい前進をかちとるうえで、軽視することのできない課題である。
4 労働組合運動などから「特定政党支持」の義務づけをとりのぞき、民主的大衆運動としての正常な発展をかちとるうえで重要なことは、党自身が、それぞれの大衆団体の目的と性格を考慮しつつ、党と大衆団体との正しい関係を確立するためにいっそう努力することである。とくに、労働組合、農民組合をはじめ、思想、信条、政党支持の別をこえて、共通の要求と利益にもとづいて組織されている大衆団体の自主性とその民主的運営、成員の政党支持の自由などの原則をきびしく尊重し、大衆組織の拡大・強化と大衆運動の民主主義的前進のために献身することが重要である。
5 党と正しい協力関係にある民主的大衆組織だけでなく、同盟系の反共、資本追随の立場にたった労働組合、経営者が組織した文化、趣味、スポーツなどのサークル、農協、生産組織など各種の農業・農民団体、業者団体、都市の町内会や農村の部落会、PTA、地域青年団や婦人会、各種の文化団体など、実際に勤労大衆が組織されているすべての大衆組織を重視し、そのなかで活動する必要がある。党の影響力のつよい組織だけに事実上活動を限定するような組織上のセクト主義は、このさい、断固として一掃しなければならない。
また、地域での大衆活動においては、各階層ごとの運動とともに、地域住民の共通の関心や要求にもとづいて組織される各種の民主的な市民運動、市民組織をも重視する必要がある。
6 この三年間の大衆闘争の前進にとって両翼の反党対外盲従分子、トロツキスト反共暴力集団、部落解放運動における朝田一派、公明党・創価学会などの反共主義との闘争が、重要な意義をもった。これらの勢力は、「前衛」あるいは「革新」をよそおってその反共主義の正当化をはかっている点でも、日本共産党への攻撃に手段をえらばない点でも、共通の特徴をもっているが、党は、徹底し理論闘争と大量宣伝によってかれらの反共理論を全面的に粉砕するとともに、どんな暴力、威かくにも屈しない正々堂々とした組織的反撃をおこなった。徹底した理論闘争と組織的反撃の結合というこの方針は、反共主義との闘争における一般的教訓である。
十三、【労働戦線の統一をめざす三つの課題】労働戦線統一のための闘争は、七〇年代を真の政治的転換の時代となしうるかどうかを大きく左右するものである。
共産党の躍進、社会党の敗北という総選挙の結果を見て、同盟やIMF・JC(国際金属労連日本協議会)、全逓指導部などは、「反共労働戦線統一」の策動をあらたに強化してきた。これは、AFL・CIO、国際自由労連指導部などの国際的な反共分裂策動に呼応したものであり、親米反共・労資協調主義にもとづき、日本の労働組合運動全体を日米共同声明の路線と自民党政府の「七〇年代構想」にのせようとするきわめて危険な性格をもっている。しかも、それを推進している主要な勢力が、鉄鋼、造船、電機、自動車、化学など民間基幹産業の労働組合指導部であるということは、重大である。
こうしていま、労働戦線の右翼的再編成の策動を克服して労働組合を階級的、民主的に強化し、労働戦線の真の統一をめざすたたかいは、党と労働者階級にとってもっとも重要な課題の一つとなっている。
そのためには第一に、「資本からの独立」という原則を労働組合の活動と運営の全体につらぬき、「生産性向上」「産業政策」「所得政策」「国家的利益」など新旧のいろいろな口実で、政府、独占資本への追随を運動の基本にしようとする右翼的政策を克服して、独占資本と自民党政府の反労働者政策と対決し、賃金闘争をはじめ、権利の問題や労働災害の問題など、労働者の日常の利益をまもるたたかいをおしすすめるとともに、最低賃金制、週四十時間制、ストライキ権の回復などの制度的な要求と闘争を強化することが重要である。
第二に、「特定政党支持」の義務づけや「共産党排除」のわくをはずさせ、組合員の政党支持の自由の原則と、政党と労働組合の正しい協力、共同の関係を確立することは、反共労働戦線統一の策謀とたたかうためにも、組合民主主義を確立し、職場に基礎をおく戦闘的な大衆行動を発展させるためにも、当面の環となっている。
第三に、以上の二つの基礎のうえに、共、社両党をふくむ全民主勢力の統一戦線結成のために奮闘しながら、同時に、政治課題や統一戦線についての見解のちがいにもかかわらず、反共を前提にせず、当面一致できる切実な要求にもとづくすべての労働組合の共同闘争、行動の統一の実現を産業別、地域的、全国的にもねばりづよく追求することが重要である。そして、「一工場一組合、一産業一産業別組織、一国一中央組織」の原則にもとづく労働戦線の階級的統一の目標をかかげ、そのための意識的努力を強化しなければならない。
この闘争をすすめるにあたって、六中総決定とそれ以後の党の労働組合政策が確立した政策的優位を、経営内、組合内の実際の活動に全面的に生かし、大衆組織のなかでの活動にたいする受動的な消極性や職場の実情と大衆の感情から遊離したセクト的硬直性など、いまなお一部にのこっている誤った傾向を一掃することが急務である。政策水準を高め、いっそう原則的で弾力的な戦術と方針をもてば、自覚的階級的勢力が力をのばしうる条件は急速に成長している。
十四、【農漁民の生活安定と日本の農漁業のゆたかな発展のために】 農村では、「豊作貧乏」「機械化貧乏」など農民の経営困難が増大し、出かせぎとあとつぎ問題、健康破壊と過疎問題など、さまざまな問題が深刻化してきた。これは、対米従属下の独占資本主義の「高度成長」、「農業構造改善」を中心とした反動的な自民党農政の結果である。労働力の大量流出にともない、賃労働兼業農家の一般化、農村労働力のいわゆる「老・婦化」がいちじるしくなり、急速な機械化などで米作その他の生産は上昇したが、外国農産物の輸入によって食糧自給率が大幅に低下し、麦作の衰退など部門間の不均等がはげしくなり、日本農業の自主的、民主的発展を犠牲にした対米従属的でいびつな発展が進行した。六〇年当時千二百万人だった農業就業人口は六九年には九百万人に激減し、大多数の農民、とりわけ貧・中農のプロレタリア化が進行した。五百四十万戸の農家のうち、わずかな土地をもつ農村労働者、貧農は八割に達したとみられ、中農は一割五分程度、資本家的経営をふくむ富農はきわめてわずかである。
自民党政府と独占資本が、七〇年代における農業の全面的な資本家的再編成の強行をめざしてあらたにうちだした「総合農政」は、外国農産物輸入の自由化、食管制度の改廃、農地法改悪と農地の流動化、離農促進、独占資本本位の国土利用計画などにより、小農経営と農民的土地所有を解体させて少数の富農・資本家的経営を育成し、独占資本のために農村の労働力と土地を文字どおり「総合」的に収奪しようとするものである。そのために、農地法の大幅な改悪をおこなうと同時に、米の余剰を口実にした米作減反の強制という反動的攻撃が農民にかけられている。その過程で、同時に、「総合農政」の矛盾と破たんも急激に露呈されつつある。「農業構造改善」事業の典型として、十三年の歳月と四百三十五億円の巨費をついやしてすすめられてきた秋田県八郎潟干拓事業が、米作削減とともに突然中止をよぎなくされたことは、その具体的一例である。農民のあいだには、自民党政府への不信と農業の将来にたいする不安がひろがり、ながく自民党の政治的基盤とされてきた農村も、七〇年代とともに、大きな政治的転換の時期にはいろうとしている。
米作削減のおしつけに反対する闘争は、米が民族の主食であり、全耕地の五六、全農産物販売額の四〇をしめる日本農業の主柱である点でも、米作削減が食管制度、農地制度の根本的改悪と直結している点でも、とくに重視する必要がある。党は、農民組合、農村労働組合だけでなく、米作削減の結果大半が赤字経営におちこむ農協をはじめとするあらゆる農民組織、労働組合、消費者団体、さらには地方自治体をふくめた結集によって、日本の米と農業をまもる統一的闘争を組織する仕事の先頭に立たなければならない。グレープフルーツ自由化に反対するみかん農民の闘争など、残存輸入制限撤廃反対の闘争も、対米従属に反対して農業の自主的発展のための農政を要求する大衆的農民闘争として重要である。
こうして農民の闘争は、農民自身の政治的体験をつうじて、自民党と独占資本の反農民的、反民族的な「総合農政」と、アメリカ帝国主義の「自由化」のおしつけに反対して、農民の経営と生活をまもる農業政策を要求する闘争に発展する展望をしめしている。
わが党は、これまでも、勤労農民の生活と経営をまもるために、自民党政府の売国的反動的農業政策に反対し、独占資本と大山林地主の所有林野の国有化、国費による大規模の開墾・干拓・土地改良、重税と独占物価反対、営農資金とひきあう農産物価格、農業協同組合の民主化などの要求を、党の行動綱領にかかげ、農民の先頭にたってたたかってきた。そして、自民党政府と独占資本の「総合農「政」のもとで、農村の情勢が重大化し、日本の農業の進路と農村の未来が大きく問われる情勢のなかで、党は、昨年、民主的総合農政の積極的構想を発表し、わが国の農政の根本的な転換をよびかけてきた。
今日、きわめて重要なことは、自民党政府と独占資本の「総合農政」にたいするたたかいが、わが国の食糧問題、農業問題、土地問題をめぐる、対米従属と独占資本の高利潤追求の道か、それとも民族独立と農民をはじめとする国民の利益本位の道かという二つの道の対決にほかならないことを明確にして、わが党の民主的総合農政の積極的構想とその具体的政策を広範な農民にしらせ、この方向にこそ日本農業の未来があることをあきらかにしていくことである。わが党の民主的総合農政の構想は、つぎの五つの政策を基本としている。
(1)日本農業の自主的発展……アメリカをはじめとする外国農産物の輸入をおさえ、農業保護政策を確立して、農業を自主的、全面的に発展させる。
(2)農産物の価格保障制度の確立……米麦をはじめおもな農産物の安定した自給をめざし、価格保障制度を確立して、適地適産によって農業を多面的に発展させ、米だけに集中しないですむようにする。農用資材の独占価格の引き下げ、税金の減免、機械の共同利用などによって生産費をきりさげ、農産物が安く消費者にとどけられるようにする。
(3)土地問題の解決……機械、技術の最新の成果を利用して中小農民の経営を改善するとともに、国費による交換分合、土地改良を実施する。農民からとりあげた米軍と自衛隊の基地、演習場の返還、国有、公有、大山林所有者の農用地の大規模な開墾・干拓とその解放で、勤労農民に必要な土地を保障し、家族労働による農業で生活できるようにする。
(4)平等互恵の貿易政策……米、みかん、りんご、茶など、日本に適した栽培技術のすすんでいる農産物を輸出する助成措置をとる。
(5)民主的な総合開発……国民の要求と利益にもとづく自主的、民主的な総合開発計画をつくり、過疎、医療、老後、あとつぎ、結婚などの問題を解決し、生活条件、文化・教育水準の向上をはかり、都市と農村の差をちぢめる。
この民主的総合農政の実現によってこそ、農民的土地所有と経営をまもりぬき、さらに勤労農民に十分な土地と資金、機械・資材をあたえ、農業生産力を全面的に開花させ、日本農業の自主的、民主的発展と農民の生活のあかるくゆたかな将来をきりひらくことができる。
党は、広範な農民に日本農業の将来の展望をしめしつつ、当面、米作削減のおしつけをはじめ生産者米価すえおきと食管制度や農地法の改悪農産物の輸入制限撤廃、重税などの攻撃に反対し、長期低利の営農資金、農用資材の独占価格引き下げ、仕事、賃金、社会保障など、農業経営の安定と賃労働兼業面の改善との両面にわたる緊急の諸要求をかちとる諸闘争の発展のために献身しなければならない。農民の生産や技術にたいする要求をも重視し、自主的な協同組合への必要な援助をはじめ、農協や生産組織、各種サークルへのとりくみもつよめる必要がある。
また、農業をつづける意思のある近郊中小農民や過疎地域の農民・地域住民の利益をまもって積極的に活動しなくてはならない。農民の九割以上をしめる農業・農村労働者、貧農や中に、ゆたかな独立自営の安定農家としての生活と経営を根本的に保障するためには、アメリカ帝国主義と日本独占資本の支配の打破と結びついた、より根本的な諸改革の実施に前進する必要がある。
農民の経営と生活をまもる徹底した民主的農政と土地改革の実現への第一歩となるものが、民主連合政府である。
党は、自民党政府とその「総合農政」に対決して民主的総合農政の構想とむすびつけて民主連合政府のスローガンを大胆に農村にもちこみ、農民組合、農村労組、労働組合を中心に広範な農村住民を団結させて、広大な農村を自民党の基盤から労農同盟を中心とする統一戦線の基盤にかえる努力をさらに強化しなければならない。同時に、これらの民主農政の目標の実現を全面的に確実に保証するものは、人民の権力の確立であることを、あきらかにしていく必要がある。
自民党政府の独占資本本位の漁業政策、臨海工業地帯の造成、米軍、自衛隊の基地演習による漁場のとりあげや外国水産物の輸入などの結果、漁民の質労働兼業がひろがり、海難、公害、あとつぎ、老人問題などが深刻化している。党は、漁民、漁業・漁村労働者の地域的、全国的な要求を重視し、漁協や各種漁業団体の運動を民主的に発展させるとともに、漁民組合、漁業・漁村労働組合などの運動と組織化をすすめるために奮闘しなければならない。
十五、【七〇年代を迎えた思想・教育・文化戦線の前途】 対米従属のもとでの軍国主義、帝国主義復活の新段階とともに、日米支配層の国民にたいする思想的な攻撃にも、あたらしい特徴があらわれている。
日米支配層は、思想・文化戦線でも、日本共産党の孤立化をめざす反共主義の強化に最大の重点をおいている。その特徴は、京都での自民・公明・民社の三党連合の活動や右翼団体に代表されるようなむきだしの反共主義と、トロツキスト、新「左翼」、両翼の反党分子など「革命」派をよそおった反共主義とが、たがいに助けあって一つの反共・民主戦線を形づくっているところにある。
さらに、「国益」論や「経済大国」論などの軍国主義復活弁護論、「産業社会」論などの各種の資本主義弁護論が動員され、七〇年代における日米支配層の思想攻撃のますます重要な内容となりつつある。また、最近いちだんと顕著になってきた文化の退廃化の傾向は、大衆、とくに青年の政治的自覚を眠りこませる攻撃の一形態として、重視しなければならない。
高等教育、出版、放送などの普及によって、学者、教師、技術者、ジャーナリスト、芸術家、芸能人などの知識層人口は急速に増大し、その社会における比重は高まっている。職場においても、居住地においても、知識層の運動の組織化をすすめる仕事は、あたらしい重要な課題である。
党と進歩的知識人が、日米軍事同盟と日本軍国主義の復活を支持する反動思想や、その主柱としての反共主義の攻撃にたいして、これと対決する共同の民主主義的イデオロギー闘争を強化することは、七〇年代の思想・文化闘争の重要な任務である。
平和・中立の統一戦線の結成と強化にむかって広範な知識人、勤労人民を鼓舞する思想的高揚を生みだすうえで、また、日本の文化の自主的民主的発展のために、きわめて重要なことは、党員知識人、文化人の創造・研究活動をさらに発展させることである。党は、広範な大衆の文化要求にこたえ、大衆的文化運動のあらたな前進と高揚をつくりだすために奮闘するとともに、党員知識人、文化人の意欲的な創造・研究活動をはげまし、進歩的民主主義的知識人、文化人との協力のもとに、新しい人民の文化――民族的で民主的な文化の建設に努力し、教育、科学技術、文学、映画、演劇、美術、写真、音楽、舞踊、芸能など、文化のすべての分野で、反動文化の影響にうちかちうる力量をたかめてゆかなければならない。さらに、各分野の有能で誠実な新しいはたらき手をそだてるために十分な配慮をする必要がある。
日米支配層は、「高度成長」に必要な労働力育成のためにも、国民思想の反動的統合をはかるためにも、大学・教育問題を特別に重視し、小・中・高校の学習指導要領の改悪、大学をふくむ学校制度の反動的再編成をおしすすめようとしている。
党は、すべての青少年に科学的認識と教養の基本を身につけさせるという、国民の圧倒的多数が切実な関心をよせている学校教育の問題を重視し、学問の自由と大学の自治、教育の自主性を擁護し、大学の民主化、小・中・高校教育の民主化のために、広範な教師、学生、父母をはじめとする国民と共同しなければならない。
宗教者との共同は、原水禁運動、靖国神社国営化反対、創価学会の出版妨害、国立戒壇、一宗専制の教義から言論の自由、信教の自由をまもる運動のなかで、前進がみられた。われわれは、創価学会員をふくむすべての宗教者の信教の自由の擁護、政教分離のためにたたかい、「地上の問題」では良心的な宗教者とも協力するという原則的な立場を堅持してゆくことが大切である。同時に、無神論をふくむ科学的な世界観の宣伝の自由があるのは当然のことである。
十六、【国会と自治体、選挙闘争での前進】 国会はたんに政治の実態を人民の前にあきらかにするだけでなく、国民のための改良の実現をはじめ、国民の要求を国政に反映させる闘争の舞台として重要な役割をはたす。さらに、今日の日本の政治制度のもとでは、国会の多数の獲得を基礎にして、民主的政府を合法的に樹立できる可能性がある。平和・中立・民主・生活向上の統一戦線の結成を軸に、党と民主勢力が国会の多数をにぎり、民主連合政府をつくりあげることは、わが党が七〇年代にはたすべき歴史的任務である。
党は、この見地から、一方で反動勢力による議会制民主主義の制限と破壊に反対し、選挙制度の民主化と国会運営の民主的刷新のためにたたかいつつ、来年の参議院選挙での躍進をかちとることをはじめ、できるだけ短期間に、少なくとも数十の議席をもつ国会議員団を確立しなければならない。
選挙闘争とその準備は、重要な政治闘争であり、党活動の恒常的な柱の一つとして日常的にとりくむ態勢をとる必要がある。毛沢東一派や反党対外盲従分子は、マルクス・レーニン主義と無縁な「反議会主義」の見地から、わが党にたいして、「議会主義政党への堕「落」などという攻撃をくわえているが、議会制度と民主主義が重要な制約をもちつつも今日のような発達した形態をとっているわが国においては、選挙闘争や国会活動をいっそう重視することこそ必要である。党の強力な国会議員団をつくりあげることなしに、労働者階級と勤労人民の利益をまもりぬき、日本の政治の変革を実現することは困難である。
地方自治体に党と統一戦線勢力が進出することは、反動政治の害悪から地方自治と地方住民の諸利益を防衛し、地方住民の切実、身近な要求の一定の実現をかちとるために、きわめて重大な任務である。そのことは、また、全国的な政治の真の革新――民主連合政府樹立の課題に現実に接近するうえでも、大きな意義をもっている。とくに、自民党政府が、「都市再開発」や「総合農政」の多くを自治体を執行機関として推進しようとしている今日、自民党の反動政治にたいする直接の対決の場としての自治体の役割は、ますます重要となっている。
東京、京都などの経験がしめすように、民主的な統一戦線勢力が首長をもつ自治体の役割はきわめて大きい。とくに、二十年にわたる京都民主府政は、自民党政府のもとでも、民主的な統一戦線勢力が自治体の指導的地位をしめるならば、民主的な都市政策、農村政策をすすめ、交通・公害対策、教育・文化問題、保健問題、中小企業問題、農漁業問題など、広範な分野にわたって自民党の悪政から人民の利益をまもる、民主政治の一定のとりでとなりうることを、事実で立証した。民主勢力の統一戦線が地方議会の多数と自治体首長をしめる民主連合都道府県政、市町村政が数多く誕生すれば、それが日本の政治の転換の大きな原動力の一つとなることは明白である。
その見地からすべての中間地方選挙および来年のいっせい地方選拳を重視し、党と統一戦線勢力の大きな進出をかちとらなければならない。とくに、すべての都道府県議会にわが党の議席をもつこと(現在は約半数)、すべての市議会にかならず議席をもち(全国五百六十四市中百四十二市が空白)、議席空白の町村を大きくへらすこと(現在、全国二千七百十六町村中千九百八十町村が空白)、党議員団が議案提出権をもつ地方議会をふやすこと(現在、東京都、京都府のほか、五市、一特別区、二十三町村)、東京都知事選や塩尻市長選、山ノ内町長選などで既得の陣地をかならず守りぬくとともに、あたらしく党と統一戦線の側に首長を獲得すること、これまでときにみられたように、油断や当選後の活動の欠陥などから、現有議席を失わないことなどを、重視する必要がある。そして、全体として、全国的にも地方的にも、地方自治体の議席の増加の速度をもっともっとはやめるために力をつくさなくてはならない。とくに、各級党機関は、空白克服のための三ヵ年計画をつくり、議席空白の自治体をなくすための活動を計画的にすすめることとする。
さらに、選挙のときだけでなく、自治体の民主的刷新のための活動を、党機関が直接責任をおう党の重要な政治活動として位置づけることが重要である。各級党機関は、どんな場合にもこれを議員まかせにすることなく、議員の十分な議会活動を保障するとともに、必要な幹部を配置し、責任をもって不断に系統的に自治体活動の指導と組織にあたり、選挙での公約を実行する一貫した系統的努力、「私の要求運動」など自治体にむけた大衆運動の組織化、議案提出権の有効な活用をふくめ議会活動の水準のひきあげなどに、積極的にとりくまなければならない。また自治体活動のあらたな発展のためには、全国的な経験や成果の交流を重視し、交通・公害・災害問題、人口急増対策、超過負担反対、道州制粉砕など共通の緊急課題について、全国的規模での統一的闘争を組織する努力を強化する必要がある。
十七、【国民多数の支持をえて民主連合政府の樹立へ】 わが党は、アメリカ帝国主義と日本独占資本の支配をたおし、独立、民主、平和、中立、生活向上の日本をつくりあげることを共同の綱領とした、すべての民主党派、民主的な人びとを結集する民族民主統一戦線の結成をめざしている。党と労働者階級が指導し、労働者と農民の階級的同盟を基礎とするこの民族民主統一戦線に国民の多数を結集したとき、日本を変革する人民の政府を樹立することができる。
同時に党は、綱領でもあきらかにしているように、民族民主統一戦線の政府がつくられる以前にも、「一定の条件があるならば、民主勢力がさしあたって一致できる目標の範囲でも、統一戦線政府をつくるために」たたかう。そして、今日の情勢が提起している課題は、まさにさしあたって平和・中立・民主・生活向上という目標の範囲で一致できる民主勢力を結集した統一戦線の結成であり、それを土台にした民主連合政府の樹立である。
この平和・中立・民主・生活向上の統一戦線は、国民の多数が平和と中立をのぞみ、国民生活を擁護する民主政治を待望している現在、圧倒的多数の国民の意思を表現した国民的統一となりうる点で重要な意義をもつものである。
この国民的統一には、いかなる軍事同盟にもはいらない平和・中立化、民主的自由と生活向上をのぞむすべての団体と個人が、支持政党のちがいや日本の独立と従属の問題などについての見解の相違をこえて、参加できる。もちろん、わが党は日本の真の独立の課題を重視しているが、民主勢力が平和と中立の課題では基本的に一致しているという現状は重要な意義をもっており、平和・中立の課題での統一こそ今日の重点である。このことは、独立の課題が民族民主統一戦線でもつ重大な意義をすこしも低めるものではない。実際には、日米軍事同盟の解消と日本の平和・中立化をかちとる過程そのものは、同時に真の独立をかちとってゆく過程でもあるからである。平和・中立・民主・生活向上をもとめるすべての民主勢力の統一戦線の結成とそのがわへの国民の多数の支持の結集――民主連合政府の樹立こそ、安保・沖縄問題での勝利の大道である。
わが党は、この平和・中立・民主・生活向上の民主連合政府が、民主勢力の一致を前提に、つぎの五つの任務を柱とした内外政策を実行することを主張する。
① 安保条約廃棄と沖縄全面返還 条約第十条にもとづき、安保条約の廃棄をアメリカに通告し、一年以内に米軍とその基地を完全に撤退させる。サンフランシスコ条約の沖縄条項(第三条)および千島放棄条項(第二条項)を廃棄し、沖縄県の無条件全面返還をアメリカに要求するとともに、ソ連との交渉で千島列島の返還をはかる。
② 日本の平和・中立化 国会の議決により、どんな軍事同盟にもはいらず、どんな国にも軍事基地を貸さない平和・中立政策を内外に宣言し、その国際的承認をもとめる。中国、朝鮮、ベトナムなどアジアの社会主義国との国交を正常化し、資本主義国、社会主義国を問わずすべての国と「平和五原則」にもとづく平和関係を結ぶ。「核兵器禁止法」を制定し、全世界での核兵器の完全禁止をはかる。
③ 憲法改悪反対と民主政治の確立 憲法改悪のくわだてを一掃し、議会制民主主義と国民の権利をまもる民主政治の確立をめざす。軍国主義復活の問題については、党としては自衛隊の解散をめざしつつも、当面は、統一戦線として一致できる範囲で、軍国主義の復活を阻止する効果的な措置をとる。
④ 国民生活の擁護と自主的経済政策の実行 従来の日米独占資本本位の経済政策を転換し、物価、税金問題や交通・公害、住宅、社会保障、農業問題など、国民各層のさしせまった要求をとりあげて、独占資本の横暴ともうけをおさえ、国民の生活と経営をまもる経済・財政政策を実行する。アメリカへの従属を排して、日本の農業と中小企業の保護政策を確立し、日本の産業と貿易の自主的平和的発展をはかる。
⑤ 教育と文化の民主的発展 教育基本法にもとづき、十分な教育予算を保障し、教育行政を民主化し、小・中・高校から大学教育まで、真に国民の期待にこたえ、社会進歩に貢献する教育の実現をめざす。文化予算の増加、日本文化の民主的発展を期する。
民主連合政府によるこれらの諸政策の実行は、政治の真の革新と日本の進路の歴史的な転換となるものであるが、日本の真の独立と民主主義、国民生活の安定向上を根本的に保障するためには、さらに国民の政治的団結の前進を基礎として、反・反独占の民族民主統一戦線への発展をかちとり、サンフランシスコ体制――アメリカ帝国主義と日本独占資本の支配を根本的に打破し、独立、民主、平和、中立の日本の建設にむかうことが必要である。
十八、【第十回党大会以後の党建設】 第十回党大会以後の三年間、党建設は全体として前進し、党発展の新段階をきりひらく大きな成果をあげた。
第一に、理論・政策の面で、党は、この期間、大衆の切実な関心や情勢の要求から出発して闘争の正しい方向、日本の新しい進路をしめす政策活動を画期的に発展させ、他政党にたいする政策的優位をいっそう確固としたものにした。同時に、当面する統一戦線および真の革新の道をめぐる論争、トロツキスト暴力集団の妄動と反革命理論、部落解放運動における朝田理論、公明党・創価学会の一宗専制にみちびく政教一致路線と反共主義などにたいする批判、共産主義の理念問題の解明など、豊富な理論活動を展開した。またソ連のフルシチョフらにつづく中国の毛沢東一派からのわが国の革命運動への大国主義的干渉、その干渉の前提となった「反米ソ統一戦線」論やいわゆる「プロレタリア文化大革命」礼賛の強要、ソ連など五ヵ国軍隊のチェコスロバキア侵略、共産党・労働者党の国際会識と反帝国際統一戦線の問題など、複雑な国際問題にたいしても、自主独立の立場を堅持し、科学的社会主義の原則と事業を擁護する見地から、積極的な解明と批判をおこない、マルクス・レーニン主義の創造的な発展に大きく貢献した。
第二に、党の組織建設の面では、数次にわたって「月間」をもうけてとりくむなど第三次総合計画にもとづく党勢拡大をおすすめ、全党の努力の結果、前大会比で党員約一一〇%、「赤旗」本紙読者約一二五%、日曜版読者約一二一%の水準に到達し、党史上最大の党勢をもって第十一回党大会をむかえた。高度に発達した資本主義国の複雑に激動する情勢のもとで、さまざまの反共攻撃をうちやぶって党勢を拡大し、二百万に近い機関紙を敏速、確実、安全に読者にとどけることはけっして容易な事業ではない。今日の成果は、党組織の前進的整備や配達体制の画期的刷新を真剣に推進し、諸困難とたたかってかちとられたものである。これとともに、機関指導や党生活と党活動の改善、財政活動の発展などの面でも、少なからぬ前進をとげた。とくに、職場と地域の全体を対象とする宣伝文書のいっせい配布など大量宣伝活動を発展させたことは、党の政治的力量を高めた特筆すべき前進である。
この期間にひらかれた二回の全国活動者会議や全国都道府県委員長会議は、党中央の方針を急速に全党のものとし、先進的経験を理論化し普及するうえで、重要な役割をはたした。
第三に、各種の選挙戦でも、党は、党建設の成果を土台にして大きな進出をとげた。「当面、広範で強力な発言権を行使しうる国会議員団とすべての地方自治体に党議員団をもつ」という第十回党大会決定の目標にはまだ到達していないが、三年間に国会議員を約三倍、地方議員を一・三倍とし、現在、衆議院十四名、参議院七名、計二十一名の国会議員団と、東京都議会議員十八名をはじめとする千六百八十名の地方議員をもつにいたった。長野の塩尻市、山ノ内町では共産党員の首長が実現し、東京、京都の知事、京都市長その他の首長選挙で統一候補を当選させた。こうして中央、地方の政治における党の発言権と影響力は大きくひろがった。
これらの成果は、第十回党大会が決定した党建設の方針とこれにもとづくわが党の実践が、全体として正確だったことを示している。
同時に、党建設のこの成果は、根本的には、この十数年来の党活動全体の歴史的な結実として獲得されたものである。
わが党が「五〇年問題」を解決して党の組織的統一を全面的に回復した第七回党大会以来十二年たったが、わが党は、この間に、党員数約九倍、「赤旗」読者約四十倍、国会議員約七倍、総選挙得票数約三倍という大きな歴史的前進をかちとり、現実政治に影響をあたえ日本の将来をになう政治勢力として国民の広範な期待をあつめるとともに、中央でも地方でも自民党と真に対決しうる重要な地歩をしめつつある。同時に、わが党の党建設の成果は、国際共産主義運動におけるわが党の責任をも大きくしている。
この歴史的前進を生みだしたものは、
(1)マルクス・レーニン主義の理論を日本の現実に創造的に適用した綱領をつくりあげ、左右両翼の日和見主義とたたかいながら日本革命の正しい路線を堅持するとともに、急速な独占資本主義の復活強化という情勢のなかでこれを理論的にさらに具体化しつつ、人民の利益と要求にこたえる抜本的で具体的な政策を発展させ、統一戦線政策を堅持して人民と民主勢力の団結のために一貫してたたかってきたこと、
(2)国際共産主義運動における両翼の日和見主義と大国主義の誤り、それにもとづく不団結のなかで、国際主義と愛国主義を正しく統一し、日本人民と民主運動、革命運動に責任をおう自主独立の立場と独立、平等、相互の内部問題不干渉、国際連帯の原則にもとづく国際的団結の立場をまもりぬいてきたこと、とくに、この間わが党と日本の民主運動に向けられた外部からの大国主義的干渉にたいしては断固としてこれを粉砕する闘争を堅持してきたこと、
(3)高度に発達した資本主義国における大衆的前衛党建設の実践を科学的に理論化し、計画的な党勢拡大を独自の課題として追求し、必要に応じて集中的にとりくむとともに、大量宣伝などのあたらしい活動形態を創造的に発展させてきたこと、
(4)困難な闘争や任務の遂行における行動上の戦闘性を強化すると同時に、全党員の学習・教育を制度化し、党の思想・理論武装を系統的に強化してきたこと、
などにある。
十九、【党発展のあらたな歴史的段階日本の現実政治を積極的に動かす政党へ】 第七回党大会当時、わが党は「日本の現実政治を積極的に動かす勢力」になることを党建設の目標としてかかげたが、この十数年来の党建設の努力をつうじて、党は、この目標にむかって大きな発展をとげた。
第一に、政治路線のうえでは、サンフランシスコ体制の打破を中心として党がかかげた独立、民主、平和、中立の諸課題は、今日ではわが党の綱領的課題にとどまらず、日本人民と日米支配層、自民党政府とのあいだの日々の対決のもっとも現実的な焦点となっている。
第二に、政治的影響力の点でも、党は幾百万の大衆の支持を背景として、中央、地方の政治に無視できない発言権をもち、他の民主勢力と協力して東京都や京都府その他に統一戦線にもとづく革新自治体をつくることに貢献し、京都府知事選挙にみられるように、ある場合には自民・公明・民社三党の総力をあげた反共・反動連合を統一戦線によってうちやぶる力量の一翼を十分にないうるところまで成長した。
第三に、わが党は、真の革新の立場にたつ政治勢力として、また民主勢力の統一の推進力として、重要な役割をはたしてきたが、この点でも真剣に政治の革新をめざす人びとのわが党にたいする期待はますますつよく広範なものとなっている。
わが党がこのように現実政治に重要な役割をはたす政治勢力として発展してきたことは、第七回党大会以来の、全党の日夜をわかたぬ苦心と努力にもとづく貴重な成果であり、独立、民主、平和、中立の日本をきずく重要な礎石となるものである。
しかし、わが党の歴史的任務からみれば、達成された成果に満足することはけっして許されない。七〇年代をむかえた内外の諸情勢は、日本共産党が、大衆的前衛党建設の事業をさらにあらたな発展段階におすすめ、名実ともに日本の民主勢力の中心部隊となって、政治の革新を現実に実行できるだけの強大な力量を政治的にも組織的にも身につけることをつよくもとめている。そして、十二年間の成果を土台にからとった昨年の総選挙の躍進、それにつづく京都府知事選挙における党と統一戦線の勝利、さらに公明党・創価学会の出版妨害、批判のタブー化と反共カンパニアを打破する闘争の発展などは、わが党のあらたな歴史的飛躍をなしとげうる条件が客観的にも主体的にも存在していることを、明確にものがたっている。
いま、全党にもとめられているのは、あたらしい歴史的段階に即応しうる党の建設―平和・中立の統一戦線を結成し、国民の多数の支持を統一戦線のがわに結集して、国民大衆とともに民主連合政府を樹立するという、七〇年代に課せられたこの歴史的事業をいかなる情勢の激動のもとでも確固としてやりとげる力をもった党の建設である。
そのためには、全党は、これまでの党建設の成果を発展させるとともに、創意工夫を欠いたマンネリズムについては大胆にこれを打破しつつ、つぎの諸課題を党建設の当面の目標として、一日も早くこれを実現しなければならない。
(1) 文字どおり数十万の党員と数百万の機関紙読者をもち、労働者、農民をはじめ各階層のなかに不抜の党組織をつくりあげて、党と幾百千万の人民とのあいだに生きた有機的結びつきをうちたてること。
(2) 国会に少なくとも数十名の議員団を、すべての地方自治体に議員団をもって、中央、地方の政治における発言権を飛躍的に拡大すること。
(3) 一人ひとりの党員がマルクス・レーニン主義―科学的社会主義の理論と党の綱領、諸決定や政策を活動の指針として活用できるように、全党の理論的政治的水準をたかめ、各級の機関や基礎組織が、各種の政治問題や大衆運動に党として指導的役割をはたせる力量を身につけること。
(4)真のプロレタリア的ヒューマニズムにたった党風を、党生活と党活動の全分野にわたって確立し、社会生活、政治生活のなかで、道義的にも広範な国民の信頼をえるようにすること。
二十、【理念問題をめぐる反共宣伝との闘争と党の路線】 反動勢力は、七〇年代の日本の進路を左右するわが党の歴史的前進を阻止するために、反共デマ宣伝を年ごとに強化しているが、かれらはとくにいわゆる「暴力政党」よばわりを反共攻撃の最大の焦点としている。自民党や「治安当局は、綱領に規定されたわが党の立場を勝手にねじまげ、中傷して、これを反共宣伝の材料にすると同時に、国民の民主的権利を侵害する弾圧とスパイ活動を正当化しようとしている。また公明党、民社党もこれに全面的に同調して大規模な反共カンパニアを展開し、わが党にたいする国民の信頼を破壊しようとしている。広範な人民各層のあいだでこの反共宣伝を粉砕することは、党のあらたな発展をかちとるためにも、日本の民主運動の発展のためにも、けっして軽視してはならない緊急な課題である。
暴力の問題については、日本共産党は「組織的かつ系統的な暴力、一般に人間にたいするあらゆる暴力」の廃絶をめざすことを綱領に明記している日本でただ一つの政党である。わが党がめざしている究極の理想社会共産主義社会とは、人による人のいっさいの搾取を根絶することによって、失業や貧困などを社会から一掃し、最後には、国家権力をふくむどんな暴力もどんな強制も不必要になる社会、真に平等で自由な人間の協同社会を実現することである。
社会の変革をめざすさいにも、人民の多数の意思を尊重し、かつ人民にとってもっとも犠牲の少ない形態を望み、追求するのが、共産主義者の一貫した原則的態度である。わが党は、すでに、民族民主統一戦線勢力が国会で多数をしめて平和的、合法的に人民の政府をつくることをめざすことをあきらかにしている。しかし、そのさい内外の反動勢力がクーデターその他の不法な手段にあえて訴えた場合には、この政府が国民とともに秩序維持のための必要な措置をとることは、国民主権と議会制民主主義をまもる当然の態度である。さらに人民の政府ができる以前に、反動勢力が民主主義を暴力的に破壊し、運動の発展に非平和的な障害をつくりだす場合には、広範な民主勢力と民主的世論を結集してこのようなファッショ的攻撃を封殺することが当然の課題となる。わが党がこうした「敵の出方」を警戒するのは、反動勢力を政治的に包囲してあれこれの暴力的策動を未然に防止し、独立・民主日本の建設、さらには社会主義日本の建設への平和的な道を保障しようとするためであって、これをもって「暴力主義」の証拠とするのは、きわめて幼稚なこじつけである。
反共勢力がしばしば引きあいにだす五一年綱領うんぬんの議論も、歴史の事実を無視した中傷にすぎない。五一年綱領は、党が分裂状態にあった時期につくられたものであり、これを採択した「五全協」は統一した党の正規の会議ではなく、これを再確認した「六全協」も、党分裂以来の歴史的制約をのこした不正常な会議であることをまぬがれていないものであった。しかも、党の組織的統一を全面的に回復した第七回党大会は、五一年綱領の廃棄を公式に宣言し、現綱領は五一年綱領にふくまれていた「暴力革命必然論」を根本的に克服して採択されたものである。
日本人民解放の事業を反動勢力の各種の反共、反社会主義の攻撃からまもり、日本の未来の輝かしい展望を確信をもって国民にあきらかにしていく仕事は、いよいよ重要になっている。その点でとくに強調すべきことは、マルクス、エンゲルス、レーニンの個々の言葉を不変の教条としたり、外国の経験を無批判に輸入したりする教条主義的態度をきびしくいましめ、マルクス・レーニン主義の真髄を科学的に活用し、行動の指針とする原則的態度―科学的社会主義の指導的原理にもとづいて日本と世界の情勢を自主的、創造的に解明し、日本における社会主義への道の特徴と諸条件を具体的に追求するという態度をひきつづき堅持することである。とくに両翼の日和見主義、大国主義と結びついて国際共産主義運動、社会主義体制にひきおこされた否定的諸事件が一部に社会主義の事業への失望や不信を生みだしているとき、日本における独立と民主主義、社会主義の事業の成功のためには、このことは不可欠の前提である。
これらの必要にこたえる一助として、社会科学研究所を設立し、日本の現状と将来に関連する科学的研究を蓄積するとともに、科学的社会主義の諸問題について、翻訳上の用語の適否をふくめて、深い理論的研究を自主的、創造的に発展させる。
二十一、【党の思想的、政治的建設のかなめとしての学習・教育活動】 あたらしい歴史的段階に即応する党を建設するうえで最大の急務は、すべての党機関、すべての党員の思想的、政治的水準をひきあげることである。党がこの十数年間にかちとっためざましい理論的、政策的前進はまだまだ十分に全党のものとなっていない。中央と中間機関、各分野、党員のあいだにある不均衡をなくし、共通の高い思想的、政治的水準を全党が身につけなければならない。
第一の課題は、全党員の思想・理論武装の強化である。党員の自発性と戦闘性の重要な源泉の一つは、思想的、理論的確信であり、科学的社会主義の確固たる土台に立つことなしに、幾百千万大衆の心をつかむことはできない。プロレタリア的ヒューマニズムに裏うちされた革命的情熱によって、全党員が広範な大衆から人間的信頼をかちとることなしに、全人民的闘争を組織することはできない。
第二の課題は、全党の政策水準をさらにひきあげるとともに、政策活動の日常化とその大量宣伝の系統化をかちとることである。政策的追求を選挙中だけのものとせず、日常化することによってはじめて、各級機関、基礎組織、グループは、一面的な活動スタイルにおちいることなく、その地方や地域、職場や学園でおこる諸問題を機敏にとりあげて前衛党としての真の指導性を発揮する政治組織に成長することができる。
こうした党の思想的、政治的建設をすすめるかなめは、全党員の学習・教育活動を飛躍的に発展させることにある。
前大会以来の三年間に、新入党者教育の制度的保障を強化し、各級講師資格試験制度をあらたにもうけ、一万数千人の各級講師が誕生するなど、学習・教育活動の恒常化と制度化が前進した。しかし、今日党に要請されている課題からみて、マルクス・レーニン主義の基礎を身につけ政策活動の能力を高めるために、教育内容と制度をさらに改善、充実しなければならない。
すべての新入党者をできるだけ早期に教育すること、党の決定や政策、重要論文を全党員がまず読むことは、さらに重視する必要がある。また、新入党者教育、各級組織の集団学習などをいっそう発展させるために講師有資格者をふやし、その組織的活用をさらに強化するとともに、全党員の独習の保障のために思いきった組織的措置をとらなければならない。とくに幹部の科学的分析力と政策能力、明確な総合的判断力をやしなうためには、党の重要論文、重要政策とともに、古典の学習、とくに哲学と経済学の学習を重視する。国会議員をはじめ、政治の舞台で公然と党を代表して活動している各級の議員は、政策や理論の学習にとくに努力し、不断にその政治的水準を高める必要がある。
また思想・理論闘争、政策活動の強化のために、必要な幹部の再配置、専門家の計画的養成をおこなう。「人民大学」その他、党の主催する大衆教育活動をいっそう強化する。
二十二、【大衆運動の組織と指導】 安保・沖縄問題などの政治的諸課題はもちろん、物価、賃金、税金、住宅、公害、交通、社会保障など、職場、地域、学園、農村の具体的な諸要求をとりあげた大衆闘争を組織し指導する任務を、系統的に追求することはきわめて重要である。党は大衆の切実な諸要求にたいする世話役活動、相談活動の日常化とともに、諸要求にもとづくそれぞれの大衆組織を強化、拡大し、適切で必要な統一行動を発展させるための努力をとくにつよめる必要がある。
これらの大衆運動の組織と指導を、専門部や大衆組織のグループまかせにせず、中央委員会はもちろん、各級機関と基礎組織が責任をもってとりくみ、政策と方針の十分な準備と計画的な宣伝活動をおこない、必要な幹部を配置して努力するならば、かならず全国的規模あるいは地方的規模で、党のイニシアチブのもとで強力な大衆闘争、統一行動を発展させ、いくつかの切実な要求を実際に獲得することができる。
このような大衆闘争の組織と指導が、党勢拡大とともに前進しはじめて、自民党の支配とあらゆる分野で対決できる党をつくることができる。
二十三、【党勢拡大の持続的追求と機関紙活動の強化】 大衆闘争の前進と統一戦線結成のためにも、各種の選挙で勝利するためにも、党勢の拡大は欠くことのできない前提である。共産党、社会党をふくむ民主勢力の一時的な統一行動でさえ、党の強大化なしにはかちとることができないことは、最近の経験によってもくりかえし証明されてきた。第七回党大会以来の十二年の教訓は、拡大を独自の課題として追求し、うまずたゆまず党の組織的建設に努力してきたことこそ、現在の発展の保障であったことを教えている。全党は党勢拡大のこのような歴史的、全人民的意義をはっきりと理解することが必要である。
全党は、今日の情勢が、わが党の党勢拡大をいっそう緊急の課題とすると同時に、党勢を飛躍的に拡大しうる可能性をひらいていることを正確につかみ、あらたな意欲をもって計画的な党勢拡大にとりくまなければならない。
この三年間の経験によってふかめられた第七回党大会以来の教訓は、情勢と任務にてらして党勢拡大の重要な意義をつかみ、諸分野の前進にもかかわらず、党勢拡大がおくれた場合はかならずこれをとりもどし、独自の課題として計画的に追求することの重要性を教えている。とくに激動する情勢のもとでは、他の諸課題との関連と重点を明らかにし、力を正しく配分し、必要があれば一定の期間に力を集中してとりくみ、持続的に党勢を拡大する力量をいっそうつよめなければならない。党勢拡大は規約できめられた党員の初歩的、原則的な義務であり、全党員は日常的に党員と機関紙読者の拡大に努力することがますます重要である。
いうまでもなく、党勢拡大の任務はきわめて重要な課題であるが、資質のある人びとを見いだし正しく党員にする活動や機関紙配達の活動など、特別の困難性をともなっている。したがって、この党勢拡大の任務の正しい位置づけとそれにもとづく指導がとくに必要である。これまでの党勢拡大運動のなかで、しばしば「また拡大か」とか「ふやしてもまたへる」とかいうような受動的傾向があらわれたのは、このような正しい指導が十分貫徹されない弱点にひとつの原因がある。一部の地方では、党勢拡大運動にあたって、全党員を政治的思想的に正しい自覚のもとに結集する努力をおこたり、各戦線分野との正しい関連と位置づけを明白にせず、行政的官僚的追求する傾向があらわれ、またこれを是正するにあたって、党勢拡大の独自の計画的な追求そのものを事実上放棄しようとしたり、一定の期間に力を集中してとりくむことに消極的になる逆の清算主義的傾向におちいった。今日なお党活動の受動的停滞的傾向を克服していない愛知県党組織の経験はこうした教訓をしめしている。これらの誤りをくりかえさないよう警戒し、全党員の力量があますところなく発揮されるようにしなければならない。
「赤旗」は党の宣伝活動と組織活動の中心的武器である。多くの困難を打開して十二ページだて八版制を成功させた成果を土台に、全党はあらたな決意をかためて機関紙活動のいっそうの前進をかちとり、とくに「赤旗」本紙については、日刊全国紙にふさわしく、できるだけはやく百万をこえる読者をもつようにしなければならない。高度に発達した資本主義国として、支配階級が強力な宣伝機関をもっているわが国では、党の強力な機関紙誌、出版活動がとくに必要である。機関紙誌の内容をさらに充実させ、斬新でしたしみやすいものに改善し、読者数の飛躍的拡大はもちろん、編集・発行・印刷と配達、経営の体制もさらに現代的なものとして、党と人民の闘争の躍進を保障するとりでとして強大な機関紙誌の建設をどうしてもなしとげなければならない。党はいま、配達体制の大きな変革をなしとげつつあるが、読者の拡大においつき、敏速、確実、安全で、真に安定した配達と定期的な集金を確立し、読者との多面的な結びつきをつよめるためには、さらに大きな持続的努力が必要である。そのためにも、地味で困難な機関紙誌の配達活動や党の宣伝文書の広範な配布活動をいっそう重視することが大切である。
二十四、【清新な党活動をめざす組織的課題】 あらたな段階の要請にこたえうる清新な党活動を展開するために、第七回党大会以来の党の発展をささえてきた各級機関と基礎組織の活動をさらに大胆に改善することが急務である。
中間機関の主要な任務は、党中央の方針を具体化して下部組織を指導するとともに、大衆の当面する切実な利益をまもる大衆運動を発展させ、民主勢力の結集につとめ、自治体の民主的刷新をはかり、そしてこれらの運動のなかで大衆の信頼と支持をひろげて、強大党をその地域につくりあげることである。この任務をはたすことをめざし、目的意識的に機関構成を改善し、指導能力を強化する必要がある。各分野の活動を保障するに足る必要な常任委員数の確保は、機関の指導力を充実させるための決定的なカギとなっている。また、複雑な諸課題を合理的に敏速に処理するための政治的実務・技術の改善、党勢と党の役割にふさわしい事務所の建設などは緊急の課題である。若い有能な幹部を大胆に抜てきするとともに、経験ある古くからの幹部の適切な保全に配慮し、また必要な場合は、名誉役員制や顧問制などの採用などによって、その老後の同志的な処遇をも考慮することも必要である。全体として、マルクス・レーニン主義にもとづく科学的分析力をもち、理論政策活動と組織活動、大衆闘争指導と党組織の指導の両面にわたる総合的能力、党派性と品性をかねそなえたすぐれた幹部を養成する長期計画をもたなければならない。
党の基礎組織の中心的な課題は、たえずその職場、地域などの大衆の要求に耳をかたむけ、大衆組織やサークルでの活動を重視し、大衆の民主的な結集につとめるとともに、清新な党活動によって、機関紙読者を中心にこれまでよりもまわりも二まわりもひろい大衆と結合した、強大な党をつくりだすことである。そのためには、党生活の三原則に、党の決定の積極的実行をくわえた「党生活の四つの基本」をまもり、基礎組織の活動全体が年齢や性別、職業、家族、大衆組織での任務などの条件に応じた党員全体の活動によってささえられるようにし、戦闘的であるとともに、謙虚で合理的な活動態度を全党員のものにすることが大切である。
基幹産業、重要経営に不抜の党をつくり、その活動を強化することは依然としてもっとも重要な課題である。同時に、自治体闘争、選挙闘争、機関紙活動など党の影響力を拡大するうえで、都市と農村など居住地域での党活動は特別の役割をになっている。前大会以来、全国的課題と結合しつつ、職場、地域の政策と党建設計画をもって活動する基礎組織が数多く生まれたが、この教訓を全党にひろげてゆくことが重要である。
三十万の党員と二百万に近い機関紙読者をもつにいたった今日の党が、さらに飛躍的な成長をめざすうえで、とくに重視すべき問題は、党内民主主義と中央集権制との正しい統一を実際に生かすことである。党の戦闘性を弱める自由分散主義を克服するためにも、また各級機関と基礎組織が法則にかなった党活動を展開するためにも、せまい我流の経験主義を捨て、全党の経験を集約した中央の諸決定をいっそう堅持することが重要である。同時に、下部組織と覚員の自発性と創造性をあますところなくひきだす、清新で積極的な党活動は、党内民主主義の強化なしにはつくりだすことはできない。
党中央がつねに全党の活動状況を的確に把握し、適切に対処することを保障するために、各級機関と基礎組織、党員は、否定的現象や不利な事態、失敗した問題をもふくめて敏速で正確な報告をおこない、その意見を積極的に反映するようにしなければならない。党活動と党建設をすすめるうえで、財政活動はいちだんと重要になっており、これまでに党中央が発表した財政方針の全党的実践とともに、とくに大量宣伝活動、機関の充実にみあった機関財政を発展させることが急務になっている。
外国の大国主義的干渉の結果生まれた「日本のこえ」一派や毛沢東盲従派などの反党分子、トロツキスト暴力集団との闘争をひきつづき強化し、その党破壊活動を徹底的に粉砕することは一貫して重要である。
反動的権力の弾圧とスパイ工作から党を防衛することは、階級闘争の重要な一環であり、党規律の自覚的厳守と革命的警戒心の強化が必要である。
二十五、【おくれた諸県の活動をひきあげるために】 党の躍進をかちとるために、ぜひとも必要なもう一つの重要な課題は、先進都道府県がさらに前進することに加えて、とくに党建設がおくれている諸県の活動を数段階ひきあげることである。
党建設の全体としての前進のなかで、地域的にみると先進的な県とおくれた県の不均衡と格差は拡大された。たとえば鹿児島の本紙読者は対有権者比で京都の十分の一であり、総選挙の得票比率は、同じく京都の十二分の一である。もし党が、これらのおくれた県の党活動、党建設をひきあげることなしに、先進的党組織だけに依拠していたら、飛躍的前進をかちとることがむずかしいだけでなく、党勢拡大も選挙での進出も早晩壁にぶつからざるをえないことは明白である。
おくれを生みだしている原因は、もちろん同じではないが、けっして地域的条件のみでなく、指導の問題が主要なものである。困難な条件のなかでながいあいだ党建設をすすめてきた幹部と活動家の奮闘を正しく評価しつつ、全党的観点から、今日のおくれを一日も早く改善するため、指導機関の強化、人事と経験の交流、中央と先進県からの援助など、必要な諸措置をとる。
二十六、【学習・教育活動と党勢拡大を中心とする党建設計画】 第十一回党大会は、第十回党大会が決定した「第三次総合計画」の成果と教訓のうえにたって、「学習・教育活動と党勢拡大を中心とする党建設の計画」をたてることを決定する。この計画は、第十一回党大会の現勢を基準とし、大会の方針に呼応する全党組織の自発的計画を土台とし、党の質と量をともに発展させる計画とする。
(1) 学習・教育活動の計画――全党員の独習、新入党者教育機関と基礎組織の集団学習、各級党学校の系統的強化、各級講師有資格者の増大と活用、人民大学その他の大衆的学習活動などを中心とする。
(2) 党勢拡大計画――第十二回党大会までに党員と機関紙読者をひきつづき拡大し、真に数十万の党員と二百数十万の読者をもつ党に発展させる。
党員については、入党対象者を組織的にあげ、入党前の教育活動を系統的におこない、持続的に党員を拡大し、次期大会までに文字通り数十万の党を建設する計画をたてて追求する。
機関紙読者については、「赤旗」本紙、日曜版ともに、第十一回党大会現勢を基準として毎年すくなくとも一二以上を拡大することを基本とする。同時に、対有権者比が第十一回党大会現在の全国平均以下の党組織は、できるだけ早くこれを突破することをめざして、平均率をこえるために必要なそれぞれの積極的拡大計画を年次的にたててとりくむ。さらに、国会や地方議会での議席をかならずしめることをめざす党組織は、それにみあった積極的目標をかかげ、その他の党組織も、地方議会の議席の空白克服をふくめ、職場や地域で党と大衆運動の前進をめざして、つねに対有権者比や対労働者などをたかめる計画をもって読者を拡大する。とくに日刊の「赤旗」本紙読者を拡大することを重視する。
全党は、三年後にひらかれる第十二回党大会をめざして、この党建設計画を実現し、日本人民の期待にこたえ、光栄ある日本共産党飛躍的に強化し、あらたな歴史的前進をとげなければならない。
二十七、【三年間のわが党の国際活動】 第十回党大会以後のこの三年間に、国際共産主義運動には重大な諸事件が起こり、日本の革命運動にも大きな影響をおよぼした。中国のいわゆる「プロレタリア文化大革命」、ソ連など五ヵ国軍隊によるチェコスロバキア侵略、中ソ国境衝突、一連の党による「モスクワ会議」の一方的開催などがそれである。わが党は、マルクス・レーニン主義と真のプロレタリア国際主義の原則をまもるために、両翼の日和見主義およびそれと結びついた大国主義的干渉に反対するという一貫した見地から、これらの諸事件にたいして自主的に対処し、日本の革命運動の前進と国際共産主義運動の団結回復のために奮闘した。
わが党は、第九回、第十回の両大会でも確認してきたように、他の共産党・労働者党との関係について、重要な問題で意見の相違がある場合でも、その党がわが党と日本の民主運動にたいする不当な干渉や攻撃をおこなわないかぎり、共通の敵にたいする闘争で、一致点にもとづく共同行動のために努力することを、一貫した基本態度としてきた。
中国共産党との関係についても、同党の「反米反ソ統一戦線」の主張などをめぐって大きな意見の相違が生じていたが、わが党は、一九六六年の春にベトナム、朝鮮、中国に宮本書記長を団長とする代表団を派遣し、アメリカ帝国主義がベトナム侵略戦争を拡大しつつある緊迫した情勢のなかで、アメリカ帝国主義の侵略に反対し、ベトナム人民を支援する共同闘争を強化するための積極的な努力をおこなった。ところが、中国共産党の毛沢東一派は、この共同闘争の提唱を拒否しただけでなく、わが党と日本の民主運動にかれらの極左日和見主義路線をおしつけようとし、さらには、わが党がかれらのおしつけにしたがわないことをもってわが党を公然と攻撃し、反党分子を援助してわが党の転覆活動まで組織した。このような状態になって、わが党ははじめて断固として毛沢東一派に反撃し、かれらの干渉、その行動と路線の重大な誤りを徹底的に糾弾した。毛沢東一派は、今日なお、反党分子の党破壊活動への支援を続け、わが党を日本人民の「四つの敵」の一つに数えあげ、これを承認することをいわゆる日中友好や「友好貿易」の前提とするなどの無法きわまる大国主義的干渉、攻撃を公然とつづけているが、わが国内の毛沢東盲従分子はなんらの大衆的支持をもうけることができず、今日完全な孤立と破たんにおちいっている。
中国のいわゆる「プロレタリア文化大革命」についていえば、わが党は、毛沢東神格化にもとづいて毛沢東一派の無制限の専制支配をうちたてようとするこのくわだての反社会主義的な本質について、明確な認識をもっていたが、日中両党の正しい団結の回復への考慮から、できるだけその批判はさしひかえてきた。ところが、毛沢東一派と反党対外盲従分子は、この「プロレタリア文化大革命」への礼賛と毛沢東思想への追従をわが党と民主運動に強要し、さらには、「文化大革命」の名においてわが党指導部への名ざしの攻撃転覆活動をよびかけ、中国に駐在していたわが党の代表への野蛮な集団的暴行まで組織するにいたった。こういう事態のなかで、わが党は、日本人民の解放闘争と国際共産主義運動にたいする自主的な責任から、一九六七年十月、論文「今日の毛沢東路線と国際共産主義運動」を発表し、毛沢東一派の極左日和見主義、大国主義の路線を批判するとともに、「プロレタリア文化大革命」なるものの反社会主義的実態についても必要な批判的解明をおこなった。
ソ連などの五ヵ国軍隊のチェコスロバキア侵入も、たんに関係諸国と関係諸党のあいだだけの問題ではなく、深刻な国際的影響をおよぼした重大事件であり、わが国でも反動勢力はただちにこの問題を反共、反社会主義宣伝に利用した。五ヵ国軍隊の侵入は、歴史的事実がしめすように、当時のチェコスロバキアの党と政府の抗議を無視し、社会主義国と兄弟党間の関係の基準に反した不当な侵略と占領であり、反帝民主勢力の闘争に少なくない打撃をあたえた。わが党は、科学的社会主義の原則の擁護と国際共産主義運動の団結の基準をまもるために、この行動にたいする批判を公然と表明し、外国軍隊の即時引き揚げをよびかけた。軍事占領のもとでつくりだされたその後のあたらしい事態によっても、なんらこの侵略は正当化されるものではない。
わが党は、ソ連共産党とは、一九六八年二月の会談で、同党代表が反党分子といかなる形態でも関係をもたないことを表明したことを前提として、関係正常化の合意に達したが、なお干渉の所産は一掃されず、正常化は停滞している。
反党分子の問題はマルクス・レーニン主義党の原則問題の一つであり、ソ連共産党がわが国の反党分子との接触をつづけることは、日ソ両党の関係正常化とは両立できないものである。わが党はこの点を重視し、六八年八月の会談をはじめ、解決のために一貫した努力をはらった。ところがことしの四月、「日本のこえ」がひらいた反党集会などにソ連共産党指導下の社会団体、大使館のメンバーが出席し、志賀義雄とともに講演やあいさつをおこない、反党集団を公然と援助、激励した。日ソ両党間には、国際共産主義運動の論争問題と関連していくつかの重要な意見の相違があるが、両党関係の正常化をすすめる前提は、ソ連共産党がこのような反党分子との関係を完全に清算し、いっさいの干渉をただちにやめることである。
この期間にわが党は、国際共産主義運動の諸問題にかんする一連の重要論文を発表して今日における両翼の日和見主義と大国主義にたいする闘争で、一定の積極的貢献をおこなった。
事態の発展のすべての過程は、数年来の論争問題についてわが党の見解の正しさを実証した。最大の論争問題であったアメリカ帝国主義の現状と政策の評価については、そのベトナム侵略戦争によって、無原則的な「平和共存」論の誤りが完全に明白となった。今日ではだれも、アメリカ帝国主義を美化したフルシチョフらの命題をそのままくり返すことはできなくなっている。さらに現代修正主義を批判してきた毛沢東一派が極左日和見主義、大国排外主義の誤りにおちいったことは、二つの戦線での闘争というわが党の見地の正しさを実証した。わが党にたいする干渉との闘争のなかでわが党が発展させた大国主義批判の正確さも、チェコスロバキア侵略や毛沢東一派によるその路線の不当な国際的おしつけによって実証された。論争問題の多くは、すでに歴史の事実によって基本的に決着がつけられつつあるといってよい。
同時にわが党は、国際共産主義運動の当面の中心課題として、アメリカ帝国主義のベトナム侵略に反対しベトナム人民を支援する国際統一行動の強化のために努力し、五大陸の反帝民主勢力の国際会議を提唱した。この提唱は、国際共産主義運動、反帝民主勢力の複雑な現状のもとで、すべての反帝民主勢力を国際統一行動に結集しうる効果的な形態を真剣に探求したものであり、広範な反響をよび、実現のための努力がつづけられた。
共産党・労働者党の国際会議の問題については、わが党は、従来から団結のために役立つ方法で開催することを主張し、「共通の目的をめざすたたかいにおける共同行動」、とくに今日ではアメリカ帝国主義のベトナム侵略に反対する統一行動を協定する国際会議の必要を原則的にみとめてきた。最近の国際共産主義運動の複雑な諸条件のもとでは、論争問題を解決する国際会議をひらく条件はまだないが、反帝統一行動について協議する共産党・労働者党国際会議をひらくことは可能であり、共同して十分な準備をおこない、とくに反帝闘争の第一線にたって奮闘している諸党が出席できるようにしてひらくべきことを、指摘してきた。一九六九年六月に一連の党が開催した「モスクワ会議」には、わが党は、この基本的見地から会議開催の経過、時期と条件などの問題点を指摘して批判的態度をとり、出席しなかった。アジアの多くの諸党も出席しなかった。行動の統一による団結をのぞんで参加した党も少なくなかったにもかかわらず、この会議はけっきょく、事実上論争問題に一方的結論をあたえるような文書を採択して、国際共産主義運動の不団結状態にさらに複雑な要因をつけくわえ、わが党のとった態度に根拠があったことをしめした。
わが党は、この期間に、ベトナム労働党、朝鮮労働党、ルーマニア共産党、イタリア共産党、オーストラリア共産党、フランス共産党、ポーランド統一労働者党、ハンガリー社会主義労働者党、ブルガリア共産党、その他の一連の党とも会談をおこない、友好関係を発展させた。ホーチミン同志の死にさいしては、野坂議長が葬儀に参列して全党の弔意をベトナム人民につたえた。
第十回党大会以後の国際共産主義運動の状況とその発展は、全体として、わが党がこの十数年 来確立してきた自主独立の立場が、理論的にも実践的にも重要な国際的意義をもっていることを、いっそうあきらかにした。
二十八、【科学的社会主義の原則の擁護と論争問題の解決】 この期間に、両翼の日和見主義の誤りはさらに明白となった。両翼の日和見主義の潮流およびそれと結びついた大国主義的干渉によって、国際共産主義運動のけだかい理念さえ傷つけられたことは重視すべきである。社会主義体制を擁護し、各国人民の革命闘争を発展させて世界革命の勝利をかちとるために、プロレタリア国際主義と真の愛国主義とを統一した自主独立の立場にたって科学的社会主義の原則を擁護する二つの戦線での闘争を強化することは、いっそう重要性をおびるにいたった。
中国共産党と中華人民共和国を私物化し、わが国の民主運動、革命運動への干渉をはじめ国際的分裂活動をおしすすめてきた毛沢東一派の極左日和見主義、大国主義の路線は、国際的にも国内的にもその矛盾と困難を増大させている。フルシチョフの路線に代表され現代修正主義の潮流は、一定の手直しをよぎなくされながらも、その誤謬を明白に清算しないまま、毛沢東一派の極左日和見主義的、大国主義的誤謬が国際的に目立ってきた事態をも利用して過去の誤った路線の正当化をおこない、大国主義的態度をつとめており、ひきつづき重大な否定的影響を国際共産主義運動、国際民主運動にあたえている。同時にこの潮流の影響をうけていたところにも、自己矛盾の深化によって一定の分化が進行している。
しかし全体として、国際共産主義運動の内部で大国主義を批判する自主独立の潮流の比重は大きく増大している。自国の革命運動、社会主義建設を真に前進させるためには、事実上の指導党を自任して一国の党の理論や路線を他国の党におしつける大国主義的干渉を7排して、自国の実情を科学的に分析する自主的路線のうえに立つことがどうしても必要である。そして、一九六〇年の共産党・労働者党会議の声明ですべての党が厳粛に確認した、独立、平等、相互の内部問題不干渉、国際連帯という各党間の関係の基準の相互尊重が前提となれば、意見の相違も、兄弟党間の団結を維持したまま、討論と実践の検証をつうじて解決できる。
したがって、論争問題の正しい解決のためには、当面第一に、すでに歴史の検証がくだされた明白な誤りについては、共産主義者としての誠実、卒直な自己批判と訂正がおこなわれなければならない。第二に、こうした団結の道をすすまず、団結をのぞむ関係諸党の協議と準備をつくさずに多党会議をひらいたうえ、多数決で事実上の一方的結論にみちびき、それを共産党・労働者党国際会議の一致した結論ででもあるかのようにあつかうやり方をやめることが必要である。第三に、今日の国際共産主義運動が到達した歴史的段階にふさわしいやり方で、のこされた論争問題についての国際的討論をすすめることがのぞましい。
二十九、【国際共産主義運動のより高い団結への展望と大国主義の克服】 この期間に、世界最大の帝国主義国家の侵略に屈せず、アメリカ帝国主義に歴史的打撃をあたえたベトナム民主共和国の党と人民の英雄的闘争その他は社会主義体制の優位性をかがやかしく立証したが、それと対照的に、両翼の日和見主義とむすびついた大国主義は、その害悪をさらに露呈し、社会主義体制の国際的威信を大きく低下させた。
重要なことは、毛沢東一派による毛沢東思想の国際的おしつけ、チェコスロバキアへの他国の路線の武力によるおしつけがしめしたように、今日の大国主義が、国際共産主義運動での指導権確立という誤った動機とむすびついていることである。しかし、大国主義は、その動機をさまざまな弁護論でおおいかくしている。毛沢東一派の干渉のさいには「現代修正主義との闘争」が、チェコスロバキア侵略のさいには「社会主義陣営の共通の利益」が、その弁護論として利用された。さらにわが国では、社会主義国にたいする「友好分子との接触」という名目で、干渉の所産が正当化されている。外国の干渉とむすびついて生まれた「原水禁国民会議」、「日ソ親善協会」などの分裂組織にたいするあいまいな態度や接触は、干渉の継続を意味するものにほかならない。
大国主義の克服は、レーニン生誕百年を記念するにあたってくみとるべき、レーニンの最大の遺訓の一つである。レーニンは、エンゲルスのことばを引いて「他民族に幸福をおしつけることは、プロレタリアートの勝利をくつがえすことを意味する」とのべ、これを「ただ一つの、無条件に国際主義的な原則」として強調し、その生涯の最後の時期には、大ロシア人的排外主義、大民族の民族主義のあらわれと非妥協的にたたかい、それが「帝国主義にたいする闘争の原則的な擁護」を台なしにするとつよく警告した。ところが、このレーニンの遺訓に反して、その後、国際共産主義運動内部に大国主義が成長した。第二次世界大戦の戦後処理におけるわが国の千島問題にたいするスターリンの態度は、この大国主義とむすびついた誤りの一つの例である。最近の国際共産主義運動内部の両翼の日和見主義の潮流の成長は、この大国主義の害悪を社会主義のための事業の死活問題とするまでにいたったのである。
こうして現在、国際共産主義運動の団結への展望の核心は、事実上指導党思想を時代錯誤的に保持した大国主義を克服して、独立、平等、相互の内部問題不干渉、国際連帯という、今日の発展段階における兄弟党間の団結の基準、国際共産主義運動の団結の自覚的規律を確立することにある。そのことによってはじめて、一連の重要問題で意見の相違がある状況のもとでも、共同の敵にたいする闘争での国際共産主義運動の統一行動を実現することができるし、さらには、両翼の日和見主義をも団結のなかで克服し、国際共産主義運動を、思想的、理論的にも、実践的にも、あたらしい高い段階にひきあげることを可能とし、より高い水準での団結がかならずきずきあげられるであろう。これまでの経過と現状からみて、この事業が、ある程度の期間を必要とするものとなることはさけられないが、わが党と日本人民が、ソ連、中国をふくめすべての社会主義国の党と人民と、真に兄弟的な友好関係を発展させる時期はやがてかならず現実のものとなるであろう。
三十、【日本共産党の国際的責務】 以上の課題からみて、日本共産党の国際的責務はつぎの諸点にある。
第一に、なによりもまず、日本の革命運動を最大限に発展させることである。レーニンは、自国の革命運動の発展のための献身的な活動とその相互支持こそ真の国際主義であることを強調している。この十年間のわが党の躍進は、国際共産主義運動内部の自主的潮流をはげまし、大国主義的干渉への事実による回答となるなど、それ自体が重要な国際的意義をもった。とくに日本やヨーロッパの高度に発達した資本主義国における人民革命の勝利は、世界の力関係を根本的に変え、社会主義世界体制の文字どおり最終的勝利を保障するものであり、その世界史的意義はきわめて重大である。
第二に、帝国主義と反帝勢力の国際的対決の焦点であるインドシナ侵略に反対する反帝民主勢力の国際統一戦線強化のためにひきつづき奮闘することである。党は、そのために、五大陸の反帝民主勢力の国際会議の開催と全世界的な反帝統一行動の強化のための有益なイニシアチブを支持し、その実現のためにひきつづき努力しなければならない。反帝統一行動のための各国共産党の共同の努力と連帯は、国際共産主義運動の団結のための積極的条件をつくりだすであろう。
第三に、現代修正主義、極左日和見主義およびそれと結びついた大国主義的干渉の克服、国際共産主義運動の真の階級的共同と団結の実現のために、いっそう積極的役割をはたすことである。国際政治の重要な諸問題について、わが党の自主的見解を積極的に表明することも、さらに強化しなければならない。
第四に、第十回党大会が決定した他党との関係の基準を堅持し、友好関係にある兄弟党との連帯をさらに発展させるとともに、重要な意見の相違がある党とも、その党が干渉をおこなわず兄弟党間の関係の基準をまもるかぎり、共通の敵にたいする闘争課題の一致にもとづいて、できるかぎり関係を正常化する努力をおこなうことである。しかし同時に党は、反党分子との関係など、わが党とわが国の民主運動にたいする干渉については、きびしい態度をとる。
全党は、国内における責務とともに、これらの国際的責務を立派にはたすために、いっそう戦闘的団結をかためて奮闘しなければならない。