日本共産党資料館

日本共産党第十二回大会決議

一九七三年十一月二十日採択


第一章 内外情勢の特徴
第二章 生活、権利、主権、平和のための闘争、革新統一戦線と民主連合政府樹立をめざして
第三章 党建設の諸任務

 一、【第十一回党大会決定の意義と内容】 三年前の一九七〇年七月、内外の大きな関心と注目のもとにひらかれた日本共産党第十一回大会は、六〇年代の党と人民の闘争の総括のうえにたって、七〇年代に日本のすすむべき進路を明確にさしめし、党と民主勢力がはたすべき歴史的な諸任務をあきらかにした。
 第十一回党大会は、アメリカ帝国主義の新戦略――ニクソン・ドクトリンについて、それが、対中・ソ「緊張緩和」政策をふくめ、あらたな形態で「アジアを主戦場とする各個撃破政策」を推進するものであることを暴露し、ベトナム、ラオス、カンボジア三国人民の闘争が、ひきつづき国際的対決の焦点であること、インドシナ侵略に反対する反帝国際統一戦線の結成と強化が、すべての反帝民主勢力の第一義的な国際的責務であることを強調した。
 大会は、七〇年代をむかえた日本の情勢を分析し、日米共同声明の路線にもとづく日米軍事同盟の再編強化、対米従属下の「高度成長」による経済的諸矛盾と国民生活の困難の増大など、日本の政治的経済的現実が、あらゆる分野で、国民の利益をまもる民主的改良をいっそう切実なものとし、国政の根本的変革の必要を広範な国民に自覚させる条件を成長させつつあることをあきらかにした。そしこの情勢評価を背景に、七〇年代のおそくない時期に、民主連合政府を樹立し、国政の革新を実現することを、党と人民が直面す七〇年代の歴史的任務として提起し、これは容易ではないが、けして不可能な課題ではないことを指摘するとともに、民主連合政府の内外政策の大綱をあきらかにした。
 大会は、こうした展望を明確にしつつ、日本の真の独立と平和・中立化、国民の生活と生命の擁護、民主主義の擁護と拡大という三つの闘争課題を中心に、日本人民の闘争をあらゆる分野で発展させるための課題と方針をしめし、反共主義や労働組合運動への「特定政党支持」のおしつけなど、さまざまな障害を克服して、平和・中立・民主・生活向上の統一戦線革新統一戦線を結成することを、すべての民主勢力と国民によびかけた。
 第十一回党大会はまた、党建設の問題でも、日本の現実政治を積極的に動かす政党に発展すべきあらたな歴史的段階をむかえていることを確認した。そして、七〇年代の国政革新の事業を指導しうる力量を急速に身につけるように、(1)次期党大会までに数十万の党員と二百数十万の機関紙読者をもつ党をつくりあげる、(2)国会に数十名の議員団を、すべての地方自治体に議員団をもつ、(3)全党の理論的、政治的水準をたかめる、(4)真のプロレタリア・ヒューマニズムにたった党風を確立する、など党建設の当面の諸目標を決定し、「量とともに質を」のスローガンをはじめ、党発展のあらたな段階をひらく具体的な方針をあきらかにした。
 大会は、わが党がうけた大国主義的干渉の問題点をふくめ、国際共産主義運動の現状を分析し、その団結への展望の核心が、事実上指導党思想を保持した大国主義の克服にあることを解明するとともに、世界の労働者階級、反帝民主勢力の共同の敵にたいする闘争での統一行動と、国際共産主義運動のより高い団結をめざすわが党の国際的責務をあきらかにした。
 全党は、第十一回党大会の決定とそれを具体化した中央委員会総会の諸決定を指針として奮闘してきたが、三年間の内外情勢の発展と日本人民の闘争の前進、なかでも日本共産党の躍進は、大会決定の正しさを全面的に証明するものとなった。

 第一章 内外情勢の特徴

 二、【国際情勢の展開の特徴】
 (1) 第十一回党大会決議が「あらたな規模で、帝国主義勢力と反帝勢力との国際的対決の焦点となっている」としたインドシナ問題は、一九七三年一月の「ベトナムにおける戦争終結と平和の回復にかんする協定」、二月の「ラオスにおける平和回復と民族和合の達成にかんする協定」の成立によって歴史的転機をむかえた。これらは、大きな犠牲をはらいながらも、世界最大の帝国主義国アメリカが総力をあげた侵略を挫折させ、ついに全米軍の撤退と民族的諸権利を擁護しぬいたベトナム人民、ラオス人民の勝利であり、インドシナ三国人民にとってだけでなく、国際的にも偉大な歴史的意義をもつものであった。三国人民の英雄的な闘争は、アメリカ帝国主義の各個撃破政策に重大な打撃をあたえた一方、民族解放と社会主義の大義の優位をしめす貴重な範例をたたかいとって各国人民を鼓舞し、反帝勢力の国際的結集にも不朽の貢献をもたらした。
 しかし、アメリカ帝国主義は、インドシナ侵略でのこれらの挫折にもかかわらず、世界反動の主柱、侵略と戦争の主勢力として、他国民にたいする侵略と抑圧の政策を放棄しようとはしていない。ニクソン政権は、米ソ接近、米中接近を軸としてヨーロッパやアジアに一定の緊張緩和をつくりだしてきたが、社会主義諸大国とのこれらの交渉や協定は、なによりもまず、ソ・中両国間の対立を利用し、さらには反帝闘争にたいする国際的支援を抑制することで、アメリカ帝国主義の各個撃破政策に有利な「平和の構造」をつくりだすことを、主目的の一つとしている。現に、ニクソン政権は、外交教書でも、「世界問題の中でのアメリカの指導的役割は引き続き不可欠なものである」と強調して、世界各地の諸問題に介入するアメリカ帝国主義の権利を公然と宣言し、NATO(北大西洋条約機構)、日米軍事同盟をはじめとする侵略的軍事同盟の体制を、あくまで維持しつつ、ソ連にたいする核優位の確保をはかり、世界最大の軍備の増強と近代化をはかっている。さらに、ニクソン政権は、NATO諸国と日本をむすびつける〝キッシンジャー構想〟をおしすすめ、各国に軍備や経済負担の「責任分担」をおしつけつつ、アメリカの指導のもとに、社会主義諸国と反帝勢力に対抗する帝国主義大同盟をつくりあげようとしている。
 すべての事実がしめすように、部分的な後退や挫折を余儀なくされながらも、アメリカ帝国主義は、その基本戦略を根本的に変更しようとはしていない。社会主義大国間の不団結の利用および帝国主義陣営の再編成によって体制をたてなおしながら、アジア、ラテンアメリカその他で、反帝・独立・進歩の闘争にたちあがった人民を各個的に撃破し、可能なところではどこにでも侵略と反革命の突破口をひらくこと――ニクソン政権の世界戦略の基本は、ひきつづきこの方向にある。
 インドシナでも、ニクソン政権はその野望をすてていない。ベトナム、ラオス協定は、社会主義陣営内の不団結や弱点とも関連して、ベトナム、ラオス人民の勝利をなお全面的なものとせず、南ベトナム問題などの最終的解決を今後の政治闘争にのこした。ニクソ2ン政権は、この条件を利用して、合意事項の実施をひきのばし、あるいはそれに違反して、この地域の新植民地主義的支配を維持するために、あらゆる策略をめぐらせている。とくに、人民の完全勝利という可能性もひらかれつつあるカンボジアでは、ロン・ノルかいらい政権を援助して侵略戦争を依然継続し、米軍爆撃再開の脅迫や、社会主義諸国の不団結にもつけこんだ外交的策略にも訴えて、かいらい政権の崩壊と独立・民主・統一カンボジアの成立の防止に、躍起になっている。アメリカ帝国主義のあらゆる策動をうちくだいて、合意された諸協定の厳正な実施を要求し、解放闘争が最後の勝利を確保するまで、ベトナム、ラオス、カンボジア三国人民支援の闘争を強化することは、すべての反帝勢力にとって依然として重要な国際的課題である。
 ニクソン政権による各個撃破政策の重大なあらわれの一つは、最近のチリにおける軍事クーデターである。一九七〇年十一月、アジェンデを大統領とする人民連合政府が、選挙をつうじて成立して以来、アメリカは、チリの売国反動勢力と手をにぎって、金融しめつけと禁輸、銅輸出の妨害、CIAによる政府転覆の謀略活動にくわえて、極左暴力分子MIR(左翼革命運動)をも利用して、この人民政権を崩壊させるための系統的策動をつづけてきた。選挙でアジェンデ政権を敗北させるという計画がことしの三月に失敗したあと、チリの売国反動勢力は、ついに、民主的、合法的に選出された政府を暴力で打倒し、人民連合を軍事テロで粉砕するという今回の凶暴なクーデターに訴えたが、その演出者がアメリカ帝国主義であったことは明白である。あらゆる迫害に抗して軍事独裁打倒、民主的自由の回復と国家主権の擁護の正義の闘争をたたかっているチリ人民と連帯して、チリの軍事独裁勢力とその背後の指揮者を糾弾する国際的闘争を国の内外で発展させることは、インドシナ問題とならぶ、反帝民主勢力のさしせまった共通の第一義的な国際的責務である。
 世界の人民が、アメリカ帝国主義のこれらのあらたな挑戦に直面している今日、すべての反帝民主勢力は、アメリカ帝国主義の戦争と侵略の政策への警戒心をいっそうつよめ、その各個撃破政策が世界のどの地点にあらわれようとも、世界人民の国際的に連帯した闘争をもってこれにこたえるよう、あらゆる努力をつくす必要がある。
 この点で、九月にひらかれた非同盟諸国首脳会議で、多くの発言者が、今日の国際情勢を大国間の関係「改善」によって世界が一路「緊張緩和」にむかっているかのようにみる評価を誤った幻想として批判し、帝国主義、とくにアメリカ帝国主義の侵略と干渉、新旧植民地主義に反対して三大陸諸国の独立と主権を擁護する一連の積極的決議が採択されたことは、きわめて重要な意義をもっている。
 (2) 国際通貨危機の深刻化と世界的なインフレーションの悪化で、帝国主義陣営と世界資本主義経済は、いっそう不安定な時期にはいった。
 ドルを基軸通貨とし固定レート制を特徴としたIMF(国際通貨基金)体制がくずれたことは、戦後の世界資本主義経済の一つの歴史的時期が終わったことを意味している。この期間、発達した資本主義国の経済拡大の前提の一つであった固定レート制は、七一年八月のニクソンのドル非常措置でくずれさり、国際通貨危機は、変動レート制を常態とする新しい時期に移行した。
 アメリカが相対的地位を弱化させながら、軍事的経済的侵略のためのドルたれ流しをつづけて、金との交換を停止したドルを世界的に通用させようとするかぎり、ドル不安はたえずくりかえされざるをえない。現在おこなわれている国際通貨の新秩序をめぐる交渉、「新国際ラウンド」とよばれる世界貿易拡大をめざす交渉も、せいぜい一時的調整にとどまり、長期的に安定した新秩序をつくりだすことができないことはあきらかである。
 国際通貨危機の深刻化と関連して、国際的なインフレーション激化のあらたな局面があらわれている。それは、各国の勤労者の生活苦をはげしくし、各国経済をもかく乱している。各国の独占資本は、インフレーション対策ととりくまざるをえなくなったが、もっぱら犠牲を勤労者や中小企業におわせる重税や所得政策をもちだしている。
 イギリス、アイルランド、デンマーク三国の参加による拡大ECの誕生は、資本主義大国間の経済戦争をさらに複雑にし、激化させている。拡大ECが巨大な経済ブロックとして発展することを警戒しているアメリカは、国際通貨問題、国際貿易問題の新ラウンドで、アメリカにとって好ましくない方向をとらせないために全力をあげている。
 今日の資本主義の腐朽の進行は、資源と公害問題の重大化、多国籍企業の成長、さらに〝南北問題〟の深刻化にもあらわれている。資源とエネルギーの将来、公害の拡大が各国共通の問題となったことは、利潤追求のために資源を浪費し、地球を汚染する帝国主義独占資本主義の支配が、すでに歴史的には生命を終わるべき制度であることを浮きぼりにした。
 アメリカの巨大独占体を中心とする多国籍企業の巨大な成長は、レーニンが指摘した資本輸出と国際独占体による世界の経済的分割のもっとも発展したものであり、現代帝国主義の寄生性と腐朽のもっとも集中的なあらわれである。アメリカ系の多国籍企業は、ばく大な売り上げ高とばく大な資産をもち、国際通貨投機にものりだし、世界資本主義の不安定性をいっそうはげしくする要因の一つになっている。
 この三年間に、いわゆる〝南北問題〟も、いっそう深刻化した。世界の三分の一の人口を占める地域で、経済的停滞と大量の飢餓がひろがったことは、現代帝国主義が人類の生存の障害となっていることをあらためて強烈にてらしだしている。
 (3) これにたいして、この三年間、反帝勢力は、一連の困難や挫折をふくみつつも、インドシナ三国人民の勝利をはじめとしていくつかの重要な前進をかちとった。
 東パキスタン人民の民族独立闘争の勝利とバングラデシュ共和国の樹立、アルジェリア、イラク、シリア、リビアなどの外国石油会社の国有化、アフリカにおけるポルトガル領植民地の解放運動や人種差別に反対する闘争、ラテンアメリカ諸国での人民闘争の発展など、民族解放運動は、全体として新しい高揚にむかっている。
 社会主義諸国の人民も、ベトナム民主共和国の勝利、中国の国連代表権の回復、朝鮮民主主義人民共和国の国際的地位の上昇、各国の社会主義建設の前進など、一連の重要な成果をかちとった。しかし、ソ連と中国の国家的対立は、この期間にさらに拡大し、アメリカの各個撃破政策を有利にするとともに、社会主義陣営、反帝勢力内部の不団結を長期化させる役割をはたしている。
 この期間に特筆すべきことは、日本、フランス、イタリアなど、発達した資本主義諸国で、共産党と革新勢力が一連の成功を記録したことである。とくに日本共産党の躍進、フランス左翼連合の総選挙での前進など、革新的な統一戦線と民主連合政府の方向が、国際的にも一定の共通性をもって追求されていることは特徴的である。
 新しい国際情勢のもとで、日本と世界の反帝勢力の闘争を正しく前進させるうえで、アメリカ帝国主義の世界戦略の本質と方向を正確に認識し、正確に対処することは、きわめて重要な課題となっている。日本共産党は、この三年間にも、ベトナム侵略をはじめ、アメリカ帝国主義の侵略と対決する国際共同行動の強化、国際統一戦線結成のために一貫して努力した。わが党が、ケネディ以来のアメリカ帝国主義の世界戦略の本質的特徴と主要戦術を、国際共産主義運動の不団結を利用した各個撃破政策として深く解明したことは、重要な理論的、実践的貢献となった。わが党がこの観点からベトナム問題を第一義的な国際的課題として重視し、侵略者ニクソンの訪中、訪ソのねらいを暴露し、それにたいする歓迎の誤りを指摘したことの正しさは、その後の情勢の発展とニクソンの新戦略の展開自体によって、完全に裏づけられている。
 今日の反帝平和勢力の共同の任務は、アメリカ帝国主義を免罪するいっさいの日和見主義とたたかい、アメリカ帝国主義の侵略政策の一つひとつのあらわれとき然として対決し、すべての反帝勢力の国際統一戦線を結成強化して、真の平和共存と民族的自決、各国人民の闘争の勝利のために連帯して奮闘することにある。

 三、【日米軍事同盟の再編と独占資本主義の諸矛盾の激化】 この三年間の国内情勢の発展も、第十一回党大会決定の情勢分析が、きわめて的確であったことを裏づけている。  (1) アメリカ帝国主義と自民党政府の合作による一九七二年の日米沖縄協定は、沖縄県民をはじめとする日本国民の全面返還要求をそらせながら、米軍基地を存続させたままの施政権返還によって、日米軍事同盟を侵略的に強化するものになった。
侵略的、屈辱的なこの沖縄協定の発効とともに、サンフランシスコ体制は再編され、沖縄も本土とともに事実上の半占領下に移された。極東最大の沖縄基地が在日米軍に組みこまれた結果、日米軍事同盟の危険性はいっそう大きくなり、安保条約の事実上の改悪がおこなわれた。日本の安全のためにも、アジアの平和のためにも、日米安保条約廃棄と平和・中立化は、いよいよ切迫した課題となった。
 強調する必要があるのは、ベトナム協定締結以後、アメリカ帝国主義のアジア戦略にとって、日米軍事同盟の比重と在日米軍基地の重要性がいっそう大きくなったことである。空母ミッドウェーの横須賀母港化、関東計画、SR7の嘉手納基地からのカンボジア偵察など、日本を米軍の出撃拠点とする策謀はあらたな進行をみせている。自民党政府は、安保条約が適用される米軍出動の範囲をこれまで「極東ならびにその周辺」としていたが、これを事実上無制限に拡大した。同時にニクソン政権は、ニクソン・ドクトリンの日本への適用と称して、自衛隊の増強と「韓国」軍近代化計画の肩代わり、サイゴン政権への「援助」を強要している。ニクソン大統領の来日計画の目的は、日米軍事同盟のあらたな再編強化のためにほかならない。
 しかし、日米反動勢力による日本国民にたいするあらたな挑戦は、日本の革新勢力と国民多数の大きな抵抗をよびおこし、いくつかの矛盾を深めている。五年間で総額五兆二千億円という四次防計画、自衛隊の沖縄派遣をふくむ防衛二法にたいする反対闘争は、かつてなく強力にたたかわれた。アメリカの指揮のもとでの日韓」同盟政策は、金大中事件という「韓国」CIAによる主権侵害事件でその実態を暴露した。自衛隊を「違憲」と断じた長沼裁判の歴史的な判決によって、自衛隊増強反対、軍事基地撤去など、軍国主義復活を阻止する国民的闘争は、憲法改悪に反対し、平和・民主条項の完全実施を要求する闘争とむすびついて、新しい高まりをみせている。
 (2) この三年間のあいだに、内外の経済的諸矛盾がはげしくなり、国民生活の困難もさらに深刻なものとなった。これは、対米従属のもとで日本独占資本主義の異常に急速な経済成長が長い期間つづいた結果であるとともに、世界資本主義体制の矛盾の深まりと関連してあらわれたものである。
 この期間、急速な経済的発展をつづけた日本独占資本主義は、世界貿易においても、対外援助や資本輸出の規模においても、その国際的地位をいちじるしく高め、帝国主義的な海外進出を強化した。日本の大企業、大銀行は、つぎつぎと世界的大企業のランク入りをし、本格的な多国籍企業への成長をめざしている。すでに日本の対外資産は対外負債を大きくこえ、日本は有力な資本輸出国としての地位をつよめつつある。
 とくに、アメリカ帝国主義のアジア戦略に追従した政府の対外援助政策に歩調をあわせて、日本独占資本の南朝鮮および東南アジアへの経済的進出は急速にすすんでいる。すでにこの地域の輸入では日本が首位にたち、数多くの海外進出企業がつくられている。これらが新植民地主義の脅威をあらたに拡大しつつあることは重大である。
 日本独占資本主義の急速な発展によって、日米間の経済的矛盾がはげしくなった。それは、世界一の「高度成長」をつづけてきた日本の独占体が、寄生的体質をつよめつつあるアメリカ独占体にたいして、日米軍事同盟を主柱とした従属関係にむすびつけられてきたことの必然的結果であったが、重視すべきことは、この矛盾もまた、事実上二回にわたる円の大幅切り上げ、貿易・資本の自由化の完成、繊維製品をはじめとする対米輸出規制など、日米軍事同盟のわくのなかで、とりわけ中小企業や農業の利益を犠牲として、日本の対米追従と譲歩を基本として調整されたことである。
 アメリカ系の多国籍企業の対日進出も、資本の百自由化とともに、いっそうさかんになっている。日本独占資本は、原子力、情報処理、宇宙開発、海洋開発など、先端的科学技術の開発と新産業の育成をいそいでいるが、それもアメリカへの技術的依存を特徴としており、日米独占資本間の多面的な結合と提携は、各分野でひきつづき進行している。
 さらに、七三年八月の田中・ニクソン会談では、「世界の中の日米関係」が強調され、国際通貨・国際貿易の新体制をめざす国際交渉、エネルギー問題などでの日米協力が具体的にとりあげられた。日米安保条約第二条の「日米経済協力」は、日米両国関係だけでなく、ひろく国際的規模にわたって拡大され、アメリカ帝国主義の世界支配政策にとっても、日本独占資本の海外進出政策にとっても、いっそう重要な役割をはたすものとなりつつある。
 これらの事実は、「今日における日本軍国主義、帝国主義の復活の過程の最大の特徴は、それが単純に自立の傾向にむかうのではなく、ひきつづきサンフランシスコ体制のわく内で、この体制を、アメリカ帝国主義のアジア侵略の要請および日米間の力関係の相対的な変化に応じて再編しつつ、進行している点にある」とした、第十一回党大会の決議の指摘が正確であったことを立証している。(3)一方、この期間の国内の経済情勢のもっとも注目すべき特徴は、日本独占資本主義のこれまでの進路の矛盾がいっそう表面化し、各分野で深刻な破たんが進行するとともに、国民生活に重大な困難がもたらされたことである。
 大資本中心の「高度成長」政策と対米従属的な「日米経済協力」は、日本経済をいちじるしく不安定にし、国民生活を圧迫する根源となっている。
 対米従属的エネルギー政策をとりながら、海外から世界一早いテンポで原燃料輸入をふやし、加工して輸出をふやす方式は、資源の略奪に反対する資源産出国の自立的動向と、ニクソン政権の新エネルギー政策による国際的な原燃料資源争奪戦、国際通貨危機の進行のなかで破たんに直面している。臨海工業地帯拡大による重化学工業化も、公害問題、都市問題、国土問題の激化とそれにたいする国民の抵抗運動の高まりのなかで、矛盾を激化している。労働者と勤労人民にたいするはげしい搾取と収奪、国民の低福祉を土台にして、ばく大な独占利潤をあげ、政府の手厚い保護と助成のもとで大企業の資本蓄積を急速におしすすめていく方式は、物価の高騰と悪インフレーションを生みだし、「新しい貧困」を拡大している。
 重要なことは、自民党政府と日本独占資本が、こうした矛盾と破たんを、アメリカ帝国主義との従属的同盟関係をさらにつづけ、また経済的侵略や新植民地主義的政策をいっそうつよめ、はたらく国民にたいする搾取と収奪を系統的に強化し、大資本本位の「高度成長」政策をさらにおしすすめることを基本としてのりきろうとしていることである。
 田中内閣が経済政策の柱としている「日本列島改造」論は、一九八五年の国民総生産を七〇年の四倍以上にすることを中心目標とした、大資本本位の長期的な国土開発計画、超「高度成長」政策である。このような政策の実行が、いっそうインフレ的な財政金融政策、公共料金の引き上げ、高物価と重税、地価の暴騰、公害の拡大農業危機の拡大など、広範な勤労者の生活を悪化させることは確実である。
 こうして、大企業のおどろくべき利潤増大の反面、はたらく国民の生活は深刻な打撃をうけている。消費者物価、卸売物価とも、戦争直後の時期をのぞいて戦後最高の上昇を記録し、大企業の土地買い占めと土地投機により、地価、家賃、土地や住宅の分譲価格の急上昇が生みだされ、住宅難はおそるべき程度に達した。PCB、水銀による汚染、光化学スモッグのひろがりなど、公害もさらに重大化し、「大企業による社会的殺人」は現在も進行中である。
 労働者は、物価上昇に見合わない低賃金と「合理化」、労働災害の増大だけでなく、住宅難、交通難の増大によって苦しめられている。農業からの労働力の流出、臨時、日雇い労働者の増大、婦人労働者の差別された低賃金などは、日本の低賃金構造が新しい特徴をもってつづいていることをしめしている。外国農産物のはんらん、政府の減反政策、独占資本の農業への進出で打撃をうけ、農民経営も危機を深めている。海の汚染と埋め立てで、沿岸漁民は漁場と生業をうばわれている。円切り上げ、対米輸出規制、貿易・資本の自由化、大資本の中小企業分野への進出と買い占めなどで、中小企業も大きな打撃をうけ、倒産が増大している。
 自民党政府の対米追随と大資本本位の経済政策、大資本、大企業のあくどいもうけと横暴、反社会的行動にたいする国民の怒りが、かつてなくひろがり、戦後の日本経済の路線そのものの根本的な転換の必要を、広範な国民が自覚しはじめていることが、この三年間をつうじての経済情勢の重要な帰結である。
 こうしてわが国では、自民党政府が解決能力を失っているすべての国民的課題を解決するために、わが党を先頭とする革新勢力の手による反帝、反独占の民主的改革がもとめられており、日米軍事同盟の解消と平和・中立化、大資本本位から国民本位への経済政策の転換、軍国主義の全面復活阻止と民主主義の確立が、文字どおり国民的な緊急の任務となっている。

 四、【日本共産党の躍進と政治戦線】 以上のような国際、国内の諸矛盾の激化を反映して、この三年間、日本の政治戦線にもいちじるしい変化が進行した。
 第一の変化は、自民党の退潮傾向がいっそう発展し、長期にわたった自民党の多数支配に終止符をうつ政治的展望が、いっそう現実的な見とおしをもってあらわれてきたことである。七年八ヵ月つづいた佐藤内閣をひきついで登場し、当初、日中国交回復の公約と「日本列島改造」論の提示によって、高い支持率をみせた田中内閣は、その年の総選挙で自民党の後退をくいとめることができなかっただけでなく、一連の失政によって国民の支持を急速に失った。来年の参議院選挙では、わが党と革新統一勢力の奮闘いかんではさらに自民党が後退する可能性も生まれており、もしも国政レベルでの政策協定にもとづく革新勢力の統一戦線が実現し、選挙共闘が大きく前進するならば、自民党の安定した多数を戦後はじめて失わせることも不可能ではない。
 第二の重要な変化は、自民党の退潮と対照的な日本共産党の躍進である。六九年の総選挙では四名からいっきょに十四名に躍進した共産党は、七一年の参議院選挙では七名を十名にふやして参議院での交渉団体の資格を獲得し、さらに七二年の総選挙では三十八名を当選させ、革新共同一名をあわせて三十九名の議員団をつくり、民社、公明両党をぬいて野党第二党に大躍進した。得票数は五百七十万票、六九年の総選挙の得票三百二十万票とくらべると、三年間に一八倍の支持拡大をかちとったことになる。この大躍進は、なによりもまず、党綱領と第十一回党大会の路線の勝利であり、その正しさが事実によって検証されたことであった。
 自民党の退潮と日本共産党の躍進は、日本の政治戦線が、第十一回党大会決議が予測したように、「自・共対決」を軸にして発展していく新しい段階にはいったことを意味している。事実、昨年の総選挙以後、日本の政局は、共産党の躍進を軸として、それ以前の型とはまったくことなった展開をしめしてきた。民社党、公明党、社会党右派の連合を策した「二党一派連合」や「社公民連合」の反共中道路線は、大幅に後退し、国会運営においても共産党の発言権がつよまり、共産党を排除しておこなわれてきた国会のなれあい運営は不可能となった。国会は、妥協や取り引きの舞台から、自民党の悪政と国民の統一的要求との対決の重要な舞台としての性格をつよめつつある。
 田中内閣のファッショ的な小選挙区制の策謀を粉砕する院内外の闘争での党がはたした決定的役割、名古屋市長選その他の革新市長実現での党の積極的貢献、一議席を争った大阪参議院補選における党の歴史的勝利、東京都議選での党の着実な前進、労働運動における「特定政党支持」おしつけの後退傾向など、中央と地方とを問わず、統一戦線運動においても、大衆運動においても、共産党の躍進を契機として新しい局面が生まれ、発展している。
 全党の奮闘によって、あきらかに、わが党は、第七回党大会以来めざしてきた「現実政治を動かす勢力」としてすでに前進しつつある。
 わが党の躍進がきりひらいたもっとも重要な政治的展望は、七〇年代のおそくない時期に民主連合政府を樹立することをめざした、すべての革新勢力の統一戦線結成という展望である。今日の情勢は、すでに革新統一戦線を結成しうる客観的諸条件を成熟させており、民主連合政府樹立の目標は、今日、当面する政治闘争で民主勢力の共同の目標をしめす、実践的スローガンに発展しつつある。それにもかかわらず、その主体的条件が大きく立ちおくれている点に、現情勢の最大の問題点がある。
 革新統一戦線結成をめざしてわが党が提示した革新三目標については、客観的には、多くの革新勢力のあいだに一致が生まれている。この共同の政策的基準で一致できる諸政党が民主連合政府をめざす政策協定をむすんで、労働組合、民主団体などすべての革新勢力を結集した革新統一戦線を結成するならば、わが国の政治情勢に飛躍的な転換が生まれることは確実である。中央、地方での統一戦線に結集した巨大なエネルギーは、今後の国政選挙において、自民党を追いつめる巨大な力となり、国民の多数の支持を獲得する日を近い将来の現実とするであろう。
 こうした現実的可能性が日本の政治、経済情勢のなかに生まれているからこそ、自民党と独占資本は、その危機を打開するために、日本共産党と対決し、反共・ファッショ化路線と革新勢力分断の路線を必死におすすめ、自民党の一党独裁を永久化しようとしているのである。四割台の得票で八割の議席を独占しうる小選挙区制の策謀、自民党政府の提案するすべての法律を成立させうる通年国会構想、「自由新報」の五百万読者獲得運動と組織拡大、「自由社会をまもる」と称する大規模な反共キャンペーンの展開、野党の一部にたいする反共連合工作など、自民党と反動勢力が、全力をあげて革新統一戦線結成の展望を事前につみとり、おしつぶそうとしていることはあきらかである。
 今日の反共主義は、きわめて多様な形態をとっており、その手段も単純ではないが、その共通の本質は、反革命と反民主主義にある。共産主義と共産党は、社会進歩の歴史的方向の体現者として、社会主義、共産主義社会の樹立をめざす革命的理論と革命的運動であると同時に、その本質上、もっとも徹底した民主主義と平和、民族的自決の擁護者、推進力である。この共産主義と共産党を敵視し、敵対する反共主義は、結局、人民の革命的運動と対決する反革命の先兵となるだけでなく、民主主義、平和、民族的自決にたいする敵対者となり、反動と侵略、民族的抑圧への協力者、推進者とならざるをえない論理的、実践的必然性をはらんでいる。
 反共主義を前面におしだした反動勢力の反民主的挑戦にもかかわらず、社会党、公明党は、わが党が提唱し、多くの国民も痛切にのぞんでいる革新統一戦線結成にたいして、これを回避する態度をとってきた。この態度の根底には、根づよい反共主義への傾斜という問題がよこたわっている。
 中間政党の反共主義、いわゆる反共中道主義が、結局のところ、反動支配の補完物の役割をはたすことは、すでに国際的にも証明ずみの問題である。戦後の経験をとっても、フランスやイタリアなどの反共中道政権は、中道右派であると中道左派であるとを問わず、例外なく独占資本の利益を擁護し代弁する政府となった。
 今日、わが国では、日本の進路をめぐる二つの道の闘争が、これまで以上の大きな規模でたたかわれている。とくに、来年の参議院選挙は、政治戦線における二つの道をめぐる大会後の闘争の最初の大きな焦点となるだろう。
 今日の政治勢力の複雑な関係、革新勢力の主体的弱点から、国政革新の事業が、いくつかの屈折や後退をともなうことは当然予想されることである。「社公民路線」その他の反共中道勢力の結集もひきつづき追求されようし、自民党政府が、自民党の多数支配を維持し、共産党が参加した革新政権の樹立を阻止するために、あらゆる可能な手段に訴えることは確実である。しかし、いまひらかれつつある政治局面の基本は、自民党の多数支配に終止符をうって国政革新の展望を現実にひらきうるか、それとも暗黒政治への道をすすむ自民党の一党独裁を許すかという、政治的対決の一貫した発展にある。
 わが党は、労働者階級の前衛党であると同時に、真の国民の党、民族の党として、この政治的対決において、国民の期待をになって決定的な先進的役割をはたさなければならない。

 第二章 生活、権利、主権、平和のための闘争、革新統一戦線と民主連合政府樹立をめざして

 五、【三年間の日本人民の闘争の前進】 第十一回党大会決定は、一九七〇年代の諸条件が、革新統一戦線の力で自民党政府をたおし、民主連合政府をつくって、戦後長期につづいた保守党の反動的支配を終わらせる展望をはらんでいることを指摘し、「あらゆる困難と障害にうちから、七〇年代に民主連合政府樹立の事業を成功させる」ことを、日本の民主勢力のになっている歴史的責務として提起した。
 この三年間の日本人民の闘争は、わが党の躍進を軸に、国政革新の事業を全体として大きく前進させた。
 第一に、日米軍事同盟打破と日本の平和・中立化、国民の生命と生活の擁護、民主主義の擁護と拡大など、日本人民の三大闘争課題のどの分野でも、日米支配層、自民党政府の反国民的、反動的な挑戦に対決する人民各層の闘争が前進した。とくに、日米沖縄協定反対闘争(七一年)や小選挙区制粉砕闘争(七三年)が、統一戦線のたちおくれと闘争準備期間の短さにもかかわらず、六〇年安保闘争以来の大規模な闘争になり、それぞれ自民党政治に打撃をあたえたこと、公害・高物価反対闘争が、各階層の広範な人びとの参加のも全国各地で大きなひろがりをみせ、闘争のほこ先が自民党政治と独占資本にますます集中するようになってきたこと、春闘など労働者のストライキ闘争や農民の米価闘争への参加人員が年ごとに増加し、闘争の力量を大きくしていることなどにみられるように、人民各階層のあいだでの要求と闘争のひろがり、自覚の高まりは、三年間の各分野の闘争を全般的に特徴づけている。なかでも、公害や農・漁業の荒廃化、大企業の買い占めに反対する闘争などでは、これまで自民党の直接の影響下にあった団体や大衆もひろくたちあがり、この面からも自民党政治の土台をゆり動かしている。各種の公害や環境破壊、反人民的な「開発」などに反対する住民組織が、政府の「環境白書」によっても、全国で一九七〇年の二百九十二組織から今日千四百二十組織にまで急増していることも、運動の急速なひろがりをしめす一つの指標である。
 第二に、民主勢力の統一行動も、一定の発展方向をきりひらいてきた。革新的諸課題をかかげての統一行動は、「一日共闘」の限界内ではあるが、三年間に中央段階だけで三十八回組織され(第十回大会から第十一回大会までは、三年半で二十回)、そのなかで、一九六九年の一〇二一闘争ではじめて成立した統一実行委員会方式が、民主勢力の共闘方式として定着してきた。共闘の課題も、ことしの五月には、共産、社会、公明三党をふくむ統一実行委員会十八団体のあいだで、安保条約廃棄をはじめ、三大闘争課題の全般にわたる七項目のスローガンが合意された。
 また、「小選挙区制粉砕中央連絡会議」が、安保共闘の規模を上まわる二百三十三団体(構成人員約千四百万人)の参加のもとに結成され、この反民主的暴挙の完全粉砕まで継続的にたたかう共闘態勢を確立したことは、民主教育推進、司法反動反対など個別課題での共闘組織のあらたな結成とともに、統一への努力が生みだした貴重な成果である。
 地方政治革新の統一戦線も大きく前進した。知事選挙では、七〇年代にはいって以来の三年余の期間に、全国十九都道府県、人口の六四が住む地域に革新共闘が成立し、京都、東京、大阪、埼玉、沖縄、岡山の六都府県で革新統一知事が勝利した。革新統一および革新共同をふくめ、わが党が与党となっている革新自治体は、前大会当時の二都府、三十市、二十三町村から、現在、六都府県、七十一市、六十九町村にふえ、人口の三分の一以上、三千七百万人以上がそのもとで生活している。京都での分裂攻撃や一部の地域での反共連合など、中間政党内の反共勢力による逆流はなお根づよくあるが、革新統一戦線こそ七〇年代の政治革新の事業をにないうる真の革新の潮流であることは、地方政治の分野ではすでに現実に証明されている。
 国政の分野でも、革新統一戦線と革新連合政権の問題は、国民の関心の集中する現実政治の焦点となり、革新を名のるすべての政党が、好むと好まざるとにかかわらず、この問題への回答をせまられている。民主連合政府をめざす闘争は、いまや、国民的な闘争によって実現すべき目標として、現実政治の日程にのぼってきている。これらは、この十数年来、一貫して統一戦線と民主連合政府の旗をかかげてきたわが党の奮闘と日本人民の闘争の反映であり、七〇年代の政治情勢の革新的な展望をつとめるものである。
 第三に、日本人民の闘争の指導的な推進力としての日本共産党の役割が、党建設および選挙戦での躍進を土台として、いよいよ重大になった。
 日本共産党が、衆議院議員数および地方議員数で公明、民社両党を追いぬき、野党第二党に進出したことは、国政と地方政治のうえでの党の発言権をつよめるとともに、人民の利益の擁護、政治の革新をめざす国会内外の闘争を発展させる重要な条件となった。第十一回党大会の決定は、大衆運動における「党のイニシアチブ」の重要性を強調したが、党は今日まで、運動に正確な方向と発展の展望をあたえる闘争目標や政策、方針の提起、科学的な情勢分析の点でも、大衆を結集して闘争を現実に推進する宣伝・組織活動の点でも、複雑な状況に対処しつつ民主勢力の統一行動や共闘組織の前進の一貫した追求という点でも、多くの分野で前衛党としての責任を積極的にはたしてきた。
 自民党・田中内閣の反民主的策謀に痛撃をあたえた小選挙区制粉砕闘争の大きな成果は、人民と民主勢力の闘争における日本共産党の先駆的、推進的な役割とその重要性をあらためて明確にした。人民の闘争への党のこれらの貢献が、路線の正しさとともに、党建設および選挙闘争での躍進によってささえられていることを重視する必要がある。一部の日和見主義者は、「大衆闘争の重視」を口実選挙闘争や党建設の任務を第二義化する議論をとなえたが本の情勢と人民の闘争の現実は、この種の〝大衆闘争唯一論〟にすでに実践的に決着をつけている。
 第四に、トロツキストや毛沢東盲従集団など、〝革命的〟な言葉で身を飾りながら、民主運動の破壊とかく乱に狂奔してきた反共暴力集団の反人民的反革命的役割がひろく暴露され、かれらにたいす大衆的な糾弾とその自己破たんがすすんだことも、三年間の闘争のいちじるしい特徴の一つである。とくに軽井沢の「連合赤軍」事件や学園の内外でひん発するテロ・リンチ事件は、かれらの犯罪的役割をいっきょにあかるみにだしたが、それは同時に、「鉄砲から政権が生まれる」という極左冒険主義の方針を日本におしつけようというもくろみから、これら暴力集団を支持、激励してきた中国の干渉者たちや、かれらを「同盟軍」とみなして無責任に弁護してきた一部の政党や知識人の責任を、日本の国民と民主勢力の前にあらためて証明することとなった。日本共産党は、これら反共暴力集団が五〇年代後半に活動をはじめた最初の時期から、かれらが人民と民主勢力の運動の破壊を目的にした反共・反革命の集団であることをあきらかにし、断固としてかれらの策動とたたかってきたただ一つの政党である。極左勢力の妄動が反動勢力によって利用されたチリの軍事クーデターの経験は、この闘争の重要性をいっそうあきらかにした。部落解放運動における朝田一派も、「同和」事業を私物化し、暴力で地方自治と民主主義を破壊する、反共、反民主主義の正体がひろく暴露され、羽曳野市長選挙での革新共同の勝利にみられるように、社会的な孤立化の傾向をつよめている。
 トロツキストや毛沢東盲従分子は、その自己破たんの進行にもかかわらず、労働組合運動の一部にその反共分裂主義の方針をもちこみ、また一部の大学での暴力支配やテロ活動をつよめるなど、その犯罪的策動をつづけている。党と民主勢力は、ひきつづきこれらの反共暴力集団との闘争を重視し、これを人民の闘争の全分野から真に一掃するまで、徹底してたたかう必要がある。

 六、【革新統一戦線の未結成とその要因】 日本人民の闘争の現局面の重大な特徴として、これらの前進面と同時に指摘する必要があるのは、情勢と闘争の進展のなかで、民主連合政府樹立の問題が、客観的にはもはや避けることのできない課題として政治の日程にのぼっているのに、国民の先頭にたってこれを現実に推進すべき革新・民主勢力の側の主体的条件が情勢の要請から大きくたちおくれ、それが自民党の反動支配を維持させる根本的な要因の一つとなっていることである。
 そのたちおくれの最大のものは、国政レベルでの革新統一戦線がいまだに結成されていないことである。中央段階での統一行動の一定の前進や、地方的な統一戦線の一連の貴重な成果にもかかわらず、全国的な規模での統一戦線が実現されないでいる主要な障害は、なによりもまず中間政党内の反共主義の諸傾向にある。
 民社党は、総選挙で敗北し第五党に転落した条件のもとで、国会内ではやむをえず共産党をふくむ共闘にもある程度くわわっているが、反共分裂主義の基本路線を変更しようとはしていない。四月の党大会でも、共産党を「左右の全体主義」の一つにかぞえてこれとの対決を強調し、一連の選挙戦では、共産党を主敵とし自民党と提携する立場を公然とあきらかにした。政策面でも、日米軍事同盟の肯定、自衛隊合憲論によるその弁護、大資本の政治献金への依存など、自民党追随と反革新の立場にはなんら根本的反省はくわえられておらず、同党が、革新統一戦線と革新連合政権への参加の資格を、みずから放棄していることは明白である。民社党春日委員長による〝革新〟連合国民政権の構想も、従来の反共野党再編路線にあらたに自民党の一部をくわえようというものであって、同党の革新性のあかしとなるどころか、革新統一戦線を敵視する反共・親自民の立場のあらたな証明にほかならない。
 公明党の総選挙後の動向には、安保条約の「段階的解消」論から「即時廃棄」論への転換、五・一五集会などの統一実行委員会をはじめ、共、社両党をふくむ院外共闘への参加など、革新的姿勢を強調することで大衆的支持の回復をはかろうとしてきたところに、民社党とは対照的な一つの特徴がある。しかし、これらの革新的転換が、従来の立場への理論的反省ぬきのいわばなしくずしの転換であることにくわえて、一連の首長選で、表向き革新支持をとなえながら実際には自民・民社の反革新連合候補を支持した二面的態度、三年前の「政教分離」の公約を事実上放棄した選挙戦での創価学会との再一体化など、同党の革新的姿勢の一貫性、真実性を疑わせる材料は少なくない。とくに、公明党は、当面の諸課題での共産党との共闘に応じつつも、憲法や民主主義の問題についての「疑惑」を口実に、共産党との政権共闘に一線を引き、都議選その他で自民党とも軌を一にした反共キャンペーンに訴えたことは、同党の根づよい反共主義の傾向をあらためて前面におしだしたものであり、ここに、今後、公明党の革新性の真実が問われる一つの中心問題がある。
 社会党は、わが党とともに革新統一戦線を結成するうえで、政策的にはほとんど障害がないにもかかわらず、政権構想については、日米軍事同盟の継続と共産党撃滅論をとなえる民社党をふくめた「全野党共闘」論に固執し、革新統一戦線の課題を回避しつづけてきた。二月の党大会では、日本共産党の躍進を、社会党への「挑戦」、それも社会主義政権樹立の段階にまでつづけられる「挑戦」と規定し、わが党との対決の姿勢をつとめ、国会内外の共闘が前進した状況のもとでも、しばしば共闘前進の方向とは逆行する、〝共産党主要打撃論〟ともいうべき態度をとってきた。とくに京都では、民主勢力が多年にわたって共同でつくりあげてきた革新府政とその基盤をなす革新統一戦線そのものに、社会党の一部が正面からの破壊的攻撃をくわえてくるといった事態まで生まれた。社会党が、革新勢力の持続的共闘の推進、革新統一戦線の結集に消極的ないし否定的態度をとる根底には、六〇年代以来の「高度成長」政策への同調にもみられる、党内の各種の非革新的要素とともに、同党綱領にも明記されている反共主義がなお根深くのこっているという問題を、指摘する必要がある。
 今日、国政革新の急務である革新統一戦線の結成に道をひらくためには、革新三目標などによる一致する課題にもとづく国会内外の共闘の強化、政権構想や各種の政策問題をめぐる論争の正々堂々とした展開とともに、統一の最大の障害である反共主義の諸傾向を克服する努力が、決定的に重要である。とくに、わが党にたいする不当な非難や攻撃にたいしては、これを見すごすことなく、かならず事実と道理をつくして反論し、ぜひをあきらかにしていかなければならない。こうした論争は、共闘への努力と矛盾するものではなく、反対に、共闘をしっかりした革新の立場で前進させるための、土台をかためるものである。
 大衆運動の分野では、反共主義が、労働組合運動などでの「特定政党支持」の義務づけの体制と根底においてむすびついていることを、とくに重視する必要がある。「特定政党支持」の義務づけの打破については、第十一回党大会決定は、大衆運動の効果的な統一的結集を実現し、統一戦線運動を飛躍的に発展させる緊急最大の課題として指摘したが、社会党、民社党は今日なおこの反民主的な体制頑強に固執しており、労働組合運動での一定の前進にもかかわらず、まだその根本的解決をみるにいたっていない。
また、広大な農漁村が、自民党農政の破たんなど、客観的には革新への条件をつよめながら、昨年の総選挙の結果にもみられるように、現実には、依然として自民党政治の強力な基盤をなしていることも、七〇年代に政治革新の事業を成功させるうえでけっして軽視することのできないたちおくれである。
 党は、国会内外の諸闘争にとりくむにあたり、すべての戦線、すべての分野で、革新統一戦線と民主連合政府の旗をいっそう高くかかげ、これを実現しうる条件を積極的につくりだす努力を、これまで以上の目的意識性と系統性をもって強化しなければならない。

 七、【三つの闘争課題と今後の方向】 日米軍事同盟の再編強化、大企業本位の「高度成長」政策のひきつづく強行軍国主義復活と議会制民主主義への挑戦など、日米支配層、自民党政府の反国民的諸政策が露骨に推進される情勢のもとで、真の独立と平和・中文化の課題、国民生活擁護の課題、民主主義の擁護と拡大の課題は、「日本人民の共同の中心的闘争課題」としていっそうその重要性をつよめている。
 日米軍事同盟の打破と平和・中立化 ベトナム侵略戦争の全経過は、日本をこの戦争の前線基地に変えた日米安保条約の対米従属性と侵略性を争う余地のない形で証明した。日米沖縄協定によって、核基地をふくむ巨大な沖縄米軍基地が日米安保条約下にくみこまれるにいたった今日、サンフランシスコ体制の打破、独立・平和・中立の日本をめざす闘争のうえで、日米安保条約廃棄の課題は、いよいよ重大となっている。米中接近や日中国交回復、ベトナム協定締結などから情勢を一面的にとらえ、日米安保条約は「空洞化」したと主張する議論が民主勢力の一部に影響をあたえたが、その誤りは、ミッドウェーの横須賀母港化や米空軍の横田集中など、ニクソン・ドクトリンにもとづく在日米軍基地再編計画の進行によっても明白である。日本のすべての民主勢力は、長沼裁判の勝利によってその違憲性がいっそう浮きぼりになった自衛隊の基地撤去闘争をふくめ、日本全土でアメリカの侵略基地撤去の闘争に積極的にとりくまなければならない。今年七月に、沖縄協定の発効という新しい情勢のもとで、沖縄返還同盟が解散し、あらたに「基地対策全国連絡会議」が組織された。この組織を、全国の基地撤去の闘争を推進する共闘組織として強化していくことが重要である。
 党と民主勢力は、日米安保条約廃棄の旗をさらに高くかかげ、これを国政革新の事業の中心にすえて、日米軍事同盟打破の闘争を真に国民的な規模で発展させるために全力をかたむけなければならない。この闘争では、日米軍事同盟の危険な役割の暴露、糾弾とともに、日本を侵略戦争の温床からアジアと世界の平和の強固ないしずえに変える中立化政策の積極的意義の解明と宣伝を、大いに重視する必要がある。
 日米軍事同盟打破の闘争は、アメリカ帝国主義の侵略に反対し、日本軍国主義の復活に反対するアジア諸国民との国際的連帯と、不可分のたたかいである。アジアの平和と安全、諸国民の独立を擁護する闘争では、アジアのすべての地域からの米軍の撤退、米軍基地の撤去の要求とともに、アメリカ、日本その他の新植民地主義と経済侵略に反対することが、ますます緊急な共同課題となっている。党と民主勢力は、日本をひきつづきインドシナへの侵略と介入の拠点として利用しようとする日米両国政府のあらゆる策動に反対し、現在なおアメリカ帝国主義の軍事的侵略とたたかっているカンボジア人民への支援をはじめ、ベトナム、ラオス、カンボジア三国人民が民族自決の原則を基礎に最後の勝利をかちとるまで、インドシナ人民支援の国際的責務を全面的にはたさなければならない。
 朝鮮人民との友好・連帯の強化は、朝鮮半島を共同の〝生命線〟とする日米軍事同盟の危険な策動をうちやぶるために、いっそう重要な課題となっている。金大中事件は、自民党政府が「自由陣営の第一線」として称賛してきた「韓国」朴政権の暗黒政治の実態を暴露したが、この事件をつうじて同時に浮きぼりにされてきたのは、日米安保条約下の日・「韓」関係の維持強化をすべてに最優先させてはばからない自民党政府の対朝鮮政策の危険性である。われわれは、「日韓条約」の廃棄、朴政権への経済援助の打ち切り、平和五原則にもとづく朝鮮民主主義人民共和国との国交樹立、在日朝鮮人の民主的民族的権利への不当な圧迫と差別の撤廃、対日謀略機関である在日「韓国」CIAの追放など、日本政府に対朝鮮政策の根本的転換を要求するとともに、「在韓国連軍」の即時撤退をはじめ、朝鮮人民自身による朝鮮の自主的平和的統一のための闘争を支持してたたかうものである。
 アメリカを起動力とする核兵器開発競争が中国、ソ連をもふくめて悪循環の様相を深めてきた今日、アジアと世界の平和をまもるうえで、核兵器全面禁止のための闘争は、ますますさしせまった急務となっている。わが党中央委員会は七月に、アメリカ、イギリス、フランス、ソ連、中国の核保有五ヵ国に、核兵器完全禁止協定の締結をもとめる書簡を送り、全世界の共産党・労働者党に手紙をだしてそのための積極的な努力をよびかけた。唯一の被爆国である日本の平和・民主勢力は、核兵器全面禁止の原点にたって、原水爆禁止運動の統一的発展に力をつくすとともに、全世界の人民のあいだに、すべての核保有国にこの協定の締結を要求する世論と運動を高める努力の先頭にたつ、厳粛な責任をおっている。
 国民の生活と生命の擁護 人民各階層の生活と生命をまもる運動が、「政治の真の革新への重要な起動力となる必然性をもっている」という第十一回党大会の指摘の正しさは、三年間の闘争の経験によってみごとに実証された。多くの国民は、公害による国民の健康と生命の破壊、大企業の土地・商品買い占めによる物価暴騰、ドル危機の犠牲転嫁、農業・食糧問題の重大化など、直接自分の生活にかかわる深刻で切実な経験をつうじて、現在の国民生活の困難の最大の根源が、大企業の横暴な支配と対米従属、これに奉仕する自民党政治にあることを理解しつつある。国民の生活と生命の擁護の問題が、国民の利益とアメリカ帝国主義および日本独占資本の支配とのあいだの矛盾を浮きぼりにし、反帝反独占の方向での国政の革新を広範な人びとの自覚的課題とする、もっとも重要な契機となっているところに、今日の情勢の特徴がある。
 すべての党組織と党員は、七〇年代の日本の情勢のこの特徴を正確にとらえ、都市でも農村でも、経営でも地域でも、また国会や地方議会のなかでも、生活擁護の要求と運動を一貫して重視し、党の政策と方針にもとづいて積極的なとりくみをいっそう強化する必要がある。この闘争では、労働者、農民、漁民、勤労市民、知識人、婦人、青年、学生、中小企業家など各階層ごとの要求とともに、物価問題、税金問題、公害問題、都市問題、社会保障問題など各階層に共通する国民的あるいは全住民的な要求があわせて重要である。党は、大衆の期待にこたえる指導力を効果的に発揮できるように、組織上の適切な態勢をとって力をそそがなければならない。  生活と経営をまもる各分野での大衆の運動を正しく発展させるためにも、また、これらの運動と政治革新の事業とのむすびつきをさらにつよめていくためにも、民主連合政府綱領についての提案や「いのちとくらしをまもり、住みよい国土をつくる総合計画」、第二次土地改革構想、民主的総合農政の構想をはじめ、大衆の要求を実現する道を科学的にさしめした党の諸政策を、大胆に宣伝することが大切である。
 党はこれまでにも「瀬戸内海政策」、「日本海政策」、「太平洋ベルト地帯政策」、「琵琶湖政策」など、一連の府県に共通する地方政策を発表してきたが、各都道府県党組織は、それぞれの地方で住民の生活と経営をまもる政策活動をひきつづき重視するとともに、一連の党組織に共通するこの種の政策問題については、党中央の指導のもとに、関係都道府県党組織が共同して住民の要求にこたえる政策の提起と、その実現のための闘争の組織化にあたるよう、積極的な努力をつよめなければならない。
 特別の注意と努力をはらう必要があるのは、自民党の対米従属、大資本本位の圧制のもとで、生活と経営の条件を根本からおびやかされつつある都市と農村の中間層の問題である。党は、農民、勤労市民が、今日の国政革新の事業の重要な一翼をになう勢力であることを正しくとらえて、その生活と権利と営業の正当な擁護の課題を一貫して重視し、その闘争の前進と組織化を系統的に援助しなければならない。中小企業家にたいしても、日米独占資本の圧迫に反対して経営の安定をめざす要求と運動を支持し、その自主的民主的組織の拡大への援助をつよめる必要がある。
 都市と農村の中間層の問題に関連して、とくにこの分野での自民党の反共攻撃を打破する闘争は重要である。自民党は、共産党が「土地や私有財産の国有化」を計画しているとのデマ宣伝で国民をおどしつけ、とくに農民や勤労市民、中小企業家など、都市と農村の中間層を真の革新政治への道からひきはなし、大企業本位の今日の経済体制と自民党政治につなぎとめようとしている。これにたいして、①日米独占資本と自民党政府こそ、農民からの土地とりあげや中小企業の経営圧迫の元凶であり、大企業の横暴をおさえて、農民に十分な農地を保障し、中小農民、自営商工業者、中小企業家のために安定した経営発展の条件をつくりだすことが、民主連合政府の基本政策であることを、具体的に解明するとともに、②独立・民主日本から社会主義日本への前進は、ごく少数の独占資本家をのぞく、圧倒的多数の国民にとって、生活の向上と繁栄の道であること、個人の住宅をはじめ生活手段はいうまでもなく、はたらく国民の土地や財産の国有化や強制的没収などは、わが党の社会主義化のプログラムにはふくまれておらず、社会主義化の方法についても、「勤労農民および都市勤労市民、中小企業家にたいしては、その利益を尊重しつつ納得をつうじてかれらを社会主義社会へみちびくように努力する」(党綱領)ことが、日本における社会主義建設の一つの基本原則となることを、科学的社会主義の原則と党綱領にもとづいて積極的に説明し、自民党その他の反共デマ宣伝を徹底的に粉砕する必要がある。
 民主主義の擁護と発展 議会制民主主義の根底をおびやかす小選挙区制の策謀、憲法、国会法の規定を無視して多数党による国会の完全支配を意図した「通年国会」の構想とその既成事実づくり、自民党憲法調査会の「憲法改正大綱草案」の決定、わが党と民主勢力にほ先をむけた右翼テロ集団のテロ攻撃、ファッショ的議員集団「青嵐会」の結成、「自由社会の擁護」を看板にした、気ちがいじみた反共キャンペーンの展開など、最近の諸事件は、日本共産党の躍進によって加速されつつある自民党政治の支配の危機を、自民党一党独裁をめざすファッショ的方向で打開し、憲法改悪による軍国主義と政治反動の体制の確立に道をひらこうとする政府、自民党、日米支配層の計画を、あからさまにしめした。これらの反動的計画を粉砕し、議会制民主主義の破壊と暗黒政治の再現を許さず、国民の民主的権利の擁護と拡大をかちとる闘争は、政治革新をめざす民主勢力の闘争のもっとも重大な一つの焦点となってきている。それは、ファッショ的攻撃による侵害から国民の民主的諸権利を防衛するというだけではなく、合憲的手段による国政革新の可能性を擁護拡大するたたかいであり、さらには、将来の新しい日本にひきつがれ、より発展した形で保障されるべき国民の民主的な権利と自由、政治的民主主義の制度の諸要素を準備するという意味でも、大きな意義をもつものである。
 党は、この見地から、小選挙区制粉砕、議会制民主主義の擁護、憲法改悪反対の闘争を重視するとともに、政治反動と軍国主義のいかなるあらわれをも安易に見すごすことなく、各分野での民主的権利の擁護と拡大のために奮闘しなければならない。司法反動化とのたたかい、自民党政府の刑法全面改悪の計画に反対する闘争も重要である。反動勢力は、多くの経営や地域で、共産党員やその支持者への不当な圧迫や差別をくわえ、これをテコに労働者や国民の権利をきりちぢめるという手段に訴えているが、反共主義とむすびついたこれらの攻撃を打ちやぶることは、民主勢力全体がとりくむべき民主主義擁護の闘争の本質的な課題であり、党自身のき然としたとりくみとともに、広範な民主勢力を結集して社会的な糾弾と抗議の闘争を組織することが重要である。熊本の宮本委員長暗殺未遂事件や日教組大会への妨害事件など、テロと暴力による民主主義の圧殺をくわだてる右翼テロ集団を粉砕する闘争も、民主勢力全体のきわめてさしせまった課題である。これらの右翼テロ集団が、政府、自民党の反動政治を温床として育成され、反共、反民主主義の先兵として政府、財界の直接の庇護をうけていることは、だれも否定できない事実であり、この凶悪きわまる暴力を国の政治生活から根絶するためにも、自民党政府の打倒と国政革新の闘争を前進させなければならない。この闘争では、南朝鮮の朴政権のはげましと政府、自民党の庇護のもとに、対日謀略部隊の一つとして活動している「国際勝共連合」の反共策動を打破する闘争を、いっそう重視する必要がある。トロツキストや「解同」朝田一派などの反共暴力を粉砕する闘争も、日本の政治生活と学園から暴力を一掃し、自由を真に擁護するうえで、ひきつづき強化しなければならない。
 自民党が、自衛隊や警察力を、自民党の政治支配と国民弾圧、反共主義のための道具としていることは、民主主義の擁護、軍国主義復活反対の見地からも、みすごすことのできない問題である。党は、警察による弾圧とスパイ活動、自衛隊の治安出動の禁止、破防法などの弾圧立法および公安調査庁など政治的秘密警察の廃止、警察、自衛隊における反共教育の禁止などを、政府に要求するとともに、国政革新についてのわが党の見解を、有権者の一員である自衛隊員や警察官に直接知らせる宣伝活動を特別に重視し、系統的にとりくむ必要がある。

 八、【大衆運動の飛躍的な発展のために】 三つの闘争課題を中心とした大衆運動の現状と今後の前進の方向については、今年四月の第十回中央委員会総会で、全般的な方針だけでなく、労働者、農民・漁民、青年・学生、婦人、勤労市民、自営業者、中小企業家、知識人など各階層の運動、さらに文化運動、体育・スポーツ活動、民主的教育運動、公害・「地域開発」・自然破壊などにたいする住民運動、物価値上げ反対闘争、部落解放運動など各分野の諸課題にわたる詳細な検討をおこない、具体的な方針と政策を決定した。全党は、第十一回党大会の決定およびこれを具体化した十中総の決と報告を深く身につけ、これを行動の指針として、党の大衆活動をつよめ、すべての人民の要求と闘争を発展させ、大衆組織を拡大強化するために特別の努力をはらわなければならない。
 なかでも、革新統一戦線結成と民主連合政府樹立という歴史的事業の成功の条件をきりひらくうえで、とくに重点的に追求する必要があるのは、第一に、労働者階級の生活と権利のための闘争と組織化の任務および、それとむすびついて、「特定政党支持」義務づけの体制を打破し、労働戦線の階級的民主的前進をかちとる任務、第二に、広大な農・漁村を自民党政治の基盤から党と革新統一戦線の強固な基盤に変える任務、第三に、都市中間層の生活と営業をまもる闘争、都市住民の健康と生活環境の破壊に反対する闘争などを発させるとともに、都市における地方政治革新の事業をいっそう大きく前進させる任務である。
 労働戦線の統一と階級的前進 自民党政府のインフレ政策や進行する資本主義的「合理化」のもとで、労働者階級の生活苦と労働強化権利への圧迫がはげしくすすんでいる今日、党は、労働者階級の生活と権利をまもる闘争を重視し、その要求と運動の先頭にたたなければならない。この闘争では、十中総決定も指摘しているように、賃金、労働時間、労働災害、職業病などの基本的要求とあわせて、青年、婦人あるいは技術者層や職制層もふくめて、各層ごとの諸要求を積極的にとりあげ、その切実な要求にもとづいて、もっとも広範な労働者の階級的結集をはかっていくこと、ストライキ権回復の問題、職場での反共的差別や資本の不当な介入への反撃をはじめ、労働者の民主的権利の擁護と拡大の闘争を重視すること、物価、公害、年金など、広範な国民諸階層とも共通する生活防衛の要求を、労働組合が積極的にとりあげ、国民的な共闘の推進者となることなどを重視する必要がある。
 さらに、賃金、労働時間、社会保障、ストライキ権、災害など、労働者の共通の切実な要求にもとづいて、あらゆる傾向の労働組合の共闘を前進させることは、労働者の要求の実現のうえでも、労働戦線の統一の展望のうえでも重要である。党は、地域的にも、産業別的にも、また全国的にも、一致する要求にもとづく労働組合の行動の統一の方向を積極的に提起し、そのための活動をすすめなければならない。
 労働戦線では、全体としては、労働組合を事実上特定政党の私物にする「特定政党支持」義務づけの体制が、共産党の進出をおそれ反共主義ともむすびついて、現在なお支配的である。しかし、階級的民主的潮流の成長および政治戦線における日本共産党の躍進を背景として、反共野党連合路線と一体にすすめられてきた民間労働戦線の右翼再編計画の挫折と反共戦線統一論の矛盾の深まり、政党支持のしめつけをはずした単位組合や地方組織の増加にくわえて、化労連(総評)、海員組合(同盟)などいくつかの主要単産における「特定政党支持」義務づけの撤廃の決定、広範な労働者のあいでの革新統一戦線結成への要望の高まりなど、労働組合運動のこの歴史的な弱点を克服する新しい条件も、急速に成長しつつある。「特定政党支持」の義務づけを撤廃させ、組合員の政党支持の自由を保障するとともに、政党と労働組合の正しい協力、共同の関係を確立することは、労働組合運動が、社会民主主義政党の従属物としてのセクト的制約から解放され、労働者の団結と闘争の組織としての本来の性格と活力をとりもどす前提であると同時に、労働戦線の階級的統一への途上にあるもっとも重大な障害をとりのぞくことである。この任務が労働戦線の主要な部分で達成されるならば、それは労働戦線の様相を一変させるだけでなく、労働組合運動が、労働者階級の組織された部隊として、真に全民主勢力の団結に中心的な役割をはたしうる情勢をひらき、革新統一戦線の結成と民主連合政府の樹立をめざす革新・民主勢力の主体的条件を飛躍的に前進させる転機となることは確実である。
党は、今日の新しい条件を積極的にとらえ、「特定政党支持」義務づけの体制に最後まで固執しようとする社会党、民社党の誤りを大衆的にあきらかにし、問題の急速な根本的解決を実現するためいっそう系統的な努力をそそがなければならない。この闘争では、労働者の憲法上の権利と労働組合の本質的性格をふみにじると同時に、真に労働者の利益を擁護しえない中間政党の支持を労働者に強要するという、「特定政党支持」義務づけの二重の誤りを、事実にもとづく十分な説得力をもって批判することが、とくに重要である。
 労働戦線の真の統一をめざす闘争を前進させるためには、「特定「政党支持」の義務づけ打破の課題を中心として、十中総が提起したつぎの五つの課題を、労働組合運動の全分野で一貫して追求しなければならない。

 (1)「特定政党支持」の義務づけや「特定政党排除」の誤りの克服、組合員の政党支持、政治活動の自由の保障、政党と労働組合の正しい協力、共同の関係の確立。
 (2)労働組合運動における階級的、民主的潮流の強化。
 (3)労働組合の活動と運営の全体に「資本からの独立」の原則をつらぬくこと、労協調主義や、トロツキストの反共挑発活動をふくめ、各種の反共分裂主義の大衆的克服。
 (4)いわゆる路線上の一致を前提にせず、①要求にもとづく行動の統一、②特定政党の支持、排除の義務づけを前提にしないという統一の原則にだって、あらゆる傾向の労働組合の共同行動の追求。
 (5)広範な未組織労働者の積極的な組織化。

 労働者階級のあいだでの強大な党の建設が、この任務を成功的にはたしていく基礎的な土台であることはいうまでもない。全国のすべての経営に党組織が存在し、経営者や反共組合幹部のどんな攻撃や圧迫にも屈しないで、労働者の闘争とその組織化の先頭にたって活動する状態をつくりだすために、党は、経営党組織の強化、拡大に力をいれることはもちろん、党員も「赤旗」読者もいない経営、党組織のない経営を一掃する空白経営克服の活動を、基本的任務の一つとして系統的に追求しなければならない。未組織労働者の組織化のために専任の宣伝・組織者を配置することも、この活動を前進させる積極的な方向である。党は、経営支部の活動を基礎に、労働組合運動の階級的民主的強化につとめるとともに、党の独自の活動として、広範な労働者大衆のあいだで、「赤旗」読者の拡大、科学的社会主義の理論やわが党の綱領、政策についての宣伝を計画的におこない、階級的自覚の発展を積極的にすすめなければならない。
 経営での党建設でとくに重視すべきことは、反共、親米、労資協調主義の潮流の拠点となっている民間基幹産業、独占的大企業に、職場に根をおろし、労働者大衆とかたくむすびついた不抜の党組織を建設し、その労働組合運動を前進させるための、計画的なとりくみである。すべての都道府県党組織は、労働戦線全体を階級的に発展させる長期の、全国的展望にたって、この課題に本格的にとりくむ必要がある。
 農村・漁村での活動 対米従属、独占資本本位の自民党農政のもとで、この数年のあいだに、食糧自給率の大幅な低下、農地の減少耕地利用率の低下、農業就業人口の減少と労働力の「老・婦化」、出かせぎの増大、賃労働兼業農家の急速な増加、借金の増大、過疎地域の荒廃など、農業の危機的状況はいちだんと深まった。漁業も、臨海工業地帯の造成、発電所や原油基地の建設などで漁場を破壊されるとともに、公害の被害を正面からこうむり、大漁業資本の圧迫とあいまって、中小漁民や水産関連業者の経営と生活は根底からおびやかされている。こうした事態に直面して、農・漁民の大衆闘争が高まり、ながく自民党の政治的基盤とされてきた農村、漁村に、自民党政治との対決の方向での政治的転換の条件が急速に成長しつつある。農業、漁業の危機と荒廃は、いまや自民党政治の危機のもっとも本質的な要素の一つとなっている。
 今日、多くの農民、漁民は、その生活の現実から、日本の農業、漁業の前途を保障し、経営と生活をまもる農・漁業政策の確立を真剣にもとめているが、この要求にこたえて、農業、漁業に明るい未来を保障できるものは、日本共産党がめざす国政の革新民主連合政府の樹立とそのもとでの民主的農・漁業政策の総合的実行以外にない。昨年から全国に配置された農村の宣伝・組織者の報告によっても、党組織がないか、あってもきわめて力の弱い空白の農村でも、党の農業政策の宣伝は、これまで自民党を支持してきた有力者や農協幹部のあいだにまで、きわめて大きい反響をおこしており、政策を前面に出した宣伝・組織活動が的確におこなわれるならば、全国の農村を党と革新統一戦線の基盤に変えうる条件が広範に存在していることが証明されている。
 全党は、農民の切実な要求にもとづき、全農民を対象とした宣伝と運動、農民組合、農村労働組合など民主的農民組織の拡大強化とともに、農協など既存の農業・農民団体や住民組織のなかでの活動の重視、賃労働兼業農民、婦人、後継青年のあいだでの活動、自治体活動の強化と空白自治体の克服、農村での党建設の一貫した追求など、十中総で決定された農村における党活動と農民運動の前進のための方針を指針として、情勢にたちおくれることなく、農村、漁村での多面的、総合的活動を強化し、この面からも民主連合政府樹立への道を積極的にきりひらいていかなければならない。
 農・漁村では、自民党がこれまで、農・漁協や各種生産団体、部落会などを足場に支配の網の目を広範にはりめぐらしてきたのにたいして、中間政党は、これに対抗できるだけの組織的な基盤をもっておらず、政策面でも、多かれ少なかれ自民党の農・漁業政策への妥協と同調の傾向がつよいというのが、一般的特徴であった。こういう状況のなかで、全党は、農漁村における自民党の政治的支配たちきり、その政治的転換を実現するうえで、党のはたすべき責任と役割が特別に大きいことを自覚し、思いきって視野をひろげ、大きな抱負と展望をもって、農漁村での活動にとりくむ必要がある。

 九、【人民的議会主義の国会活動と選挙闘争】 第十一回党大会は、できるだけ短期間に「少なくとも数十名の国会議員団」を確立することを、当面の任務として決定したが、参議院、衆議院の二つの選挙戦でこの目標は基本的に達成された。第十一回党大会当時、衆議院十四名、参議院七名で、「院内交渉団体」の資格がないという不当な理由で国会運営の中枢からしめだされていたわが党国会議員団は、現在では、衆議院四十(革新共同をふくむ)、参議院十一、あわせて五十をこえる議席をもち、両院で予算をともなわない議案提案権を確立し、とくに衆議院では野党第二党の地位を占めて、国会運営の面でも、国政審議にあたっても、その発言権を飛躍的に増大させた。
 国会でのわが党の躍進と人民的議会主義の立場にたった国会活動は、国政革新の政治的条件を成長させるうえで、大きな役割をはたしている。これまで長いあいだ、わが党を除外して自民党と中間政党だけですすめられてきた国会の〝なれあい〟運営に終止符がうたれ、国会は、無原則的な妥協や取り引きの傾向を根深くのこしながらも、自民党の悪政と国民の要求との対決にとっての重要な舞台としての性格をつよめつつある。共闘問題でも、従来の民社党ペースの〝社公民共闘〟に代わって、国会外の民主勢力の共闘とも密接な関係をもちながら、国会内でも自民党政治と対決する革新的共闘を前進させるあらたな条件がつくりだされた。国会での諸党派の闘争は、日本の進路をめぐる政治闘争の一つの集中的な表現であるが、わが党の躍進によって、国会を中心とした日本の国政が新しい局面をむかえるとともに、日本人民の闘争全体のなかで、国会闘争の占める比重はいちだんと高まっている。
 党国会議員団は、第十一回党大会決定に定式化された国会活動の三つの任務をはじめ、人民的議会主義の路線にたった党の理論的・政治的な達成を指針としつつ、国民の要求と期待にこたえる諸活動をさらに前進させ、国政革新の事業におけるその重大な役割をはたさなければならない。
 七〇年代の今後の政治的発展を展望する場合、民主連合政府樹立という国政革新の目標の実現にとって、今日の到達水準からさらに飛躍した、より強大な党議員団を国会に確立し、国政の舞台におけるわが党の比重を決定的に高めることが、不可欠の条件となることは自明である。今日の日本の政治的条件は、一般的にいっても、各党派が有権者の支持を争う選挙戦を、政治闘争のもっとも重要な形態の一つとしている。とくに国政の進路の選択がせまられている七〇年代の諸条件のもとでは、国会選挙の一つひとつが、政治的力関係の変革をめざす党と民主勢力の闘争全体の結節点としての意義をもっており、選挙戦での党の前進の度合が、国政革新のテンポと方向を決定する。全党は、この見地から、今後のすべての選挙戦で党の躍進と勝利をかちとるために、党組織の力量を全体的に発揮して奮闘しなければならない。そのためにも、各級の党組織と党幹部が、選挙戦の指導に熟達することが重要であり、特定の担当者や専門部だけでなく、すべての党幹部が、三年間の一連の選挙戦の経験を総括した四中総、五中総、九中総、十一中総の諸決定をはじめ、これまでの党の諸決定に集約されている選挙闘争の理論と経験を深く身につけるように、特別の努力をはらう必要がある。
 とくに、来年の参議院選挙と、きたるべき衆議院選挙で、党があらたな躍進をかちとることは、当面の中心課題である。九中総では、つぎの総選挙では「全国のすべての選挙区で議席を争う」意気ごみと、情勢を主体的、能動的に変革する決意をもって、選挙戦の準備にとりくむことを決定したが、全党は、参議院選挙での躍進を確実にするためにも、日常不断の政策・宣伝活動、党勢拡大と空白克服、大衆組織の拡大、農村対策の抜本的な強化、中間選挙の重視などをふくめ、この決定の確実な実行に、全力をあげなければならない。

 十【自治体の民主的刷新のために】 地方政治の分野でも、党はこの三年間に大きな前進をとげた。党の地方議員数は、全国で第十一回党大会当時の千六百八十六名から、二千七百二十六名に増加し、ここでも野党第二党の位置を占めるにいたり、わが党が与党として現実政治をになう革新統一あるいは革新共同首長の自治体の数も、五十五から百四十九に増加した。第十一回党大会が提起した具体的諸課題についても、(イ)都道府県議会では、当時議席をもたなかった二十五県議会中二十二県であらたに議席をかちとって、四十四都道府県に百三十四の議席をもち、(ロ)空白自治体の克服でも、大会当時の空白自治体百四十二市(空白率二五・二%)、千九百八十町村(七三%)を、六十三市(九・八%)、千六百二十八町村(六二%)にへらし、(ハ)党議員団が議案提出権をもつ地方議会の数を、大当時の三十一議会から百十四議会(東京都、京都府、大阪府のほか、四指定都市をふくむ四十六市、九特別区、五十五町村)に大幅にふやすなど、重要な成果をおさめた。
 地方自治体への党と統一戦線勢力の進出が、地方住民の利益の防衛および国政革新の課題への接近のうえでもつ重大な意義は、三年間の実践をつうじてますます明白となった。党は、次期改選時には、空白の県議会と空白市議会をかならずなくし、議席空白のすべての町村に候補者をたてて空白を大きくへらすこと、議席をもっている自治体では、確実に躍進をかちとって、より強力な発言権をもつ議員団を確立すること、革新統一首長、革新共同首長をふやし、革新自治体を人口の過半数の地域に拡大すること、などの具体的目標をかかげ、この見地からすべての中間地方選挙と一九七五年のいっせい地方選挙を重視し、地方政治革新の速度をさらに速めるために、計画的な努力をつくす必要がある。
 自治体活動では、党議員が、住民から選出された住民利益の一貫したまもり手として、公約実現の闘争の先頭にたち、議会内外でのその活動を、今日の情勢が要求する高い水準にひきあげるために、不断の努力をすることはもちろんであるが、同時に強調しなければならないのは、一部の党機関にまだ根づよくある、選挙は熱心にやるが当選したあとの活動は事実上議員まかせという傾向を、ただちに一掃することである。各級党機関は、自治体の民主的刷新の任務が、党建設や大衆運動の指導とならんで、それぞれの中間機関がになっているもっとも主要な任務の一つであることを銘記し、議員団の活動の指導や住民運動の組織化をふくめ、都道府県政あるいは市町村政の諸問題に、たえず系統的にとりくまなければならない。これは、各級党機関が、日本共産党を代表してその地方、地域の政治生活に責任をおっている指導機関である以上、当然のことである。
 革新自治体では、党のはたすべき責任と役割は、いっそう重大である。現在の革新自治体は、首長は民主的な統一戦線勢力の側にあるが、多くの場合、議会では自民党やこれに追随する勢力が多数を占め、首長をささえる地方的統一戦線も、その活動を選挙時だけにかぎろうとする社会党などの消極的態度のためにまだ強固ではなく、本格的な力量を発揮しえないでいるなどの弱点をもち、全体としては、革新統一戦線が首長と議会の多数を占める真の革新自治体への過渡的段階を脱していない。また、交通、公害対策、教育・文化問題、福祉政策などでは、多くの革新自治体は、短期間に全国的意義をもつ画期的な成果をあげたが、自民党政府の統治下の自治体という限界や歴史の若さとも関連して、都市問題などその実際的解決が今後に残されている問題も少なからずある。自民党は、革新自治体が過渡的にもつこれらの弱点を利用しつつ、革新首長の打倒と自民党政治の復活のために、自民党流の「住民むけ」組織や統一戦線分断の策謀などあらゆる手段をつくしている。
 こういう状況のもとで、革新自治体を、自民党および各種の反共・反革新勢力の攻撃からまもり、真に住民の要求と期待にこたえる方向で、行政の革新的発展を着実にかちとることは、わが党の大きな責務である。そのためには、とくに、党と革新首長との関係をふくめ、革新自治体の政治的基盤をなす革新統一戦線の強化に努力し、この陣地を解体しようとする分裂企図にたいしてはき然とした態度をとること、革新自治体のもとでも、住民の要求を実現するための住民運動を積極的に組織し、住民と共同して障害を除去し、革新行政を前進させる方向をつよめること、どんな複雑な状況のもとでも、革新政治とその前進を正しくささえる堅固な支柱として、党議員団の活動を強化し、選挙ごとに確実に議席を増大させること、革新自治体の施策の問題についても、ただ自治体当局の提案をまつという受動的態度にとどまらず、革新政治をにないささえる与党として、必要な場合には党独自の積極策を提起し、施政の革新的な前進をはかっていくこと、都市問題など革新自治体がこれから本格的に挑戦すべき諸課題でも、党のイニシアチブを発揮すること、党の国会議員団と地方議員団との密接な連携を軸に、国政革新の活動との有機的、効果的な結合をはかっていくことなどを重視する必要がある。
 自治体活動での政策的な蓄積と発展は、国政革新への政策的準備としても、きわめて重要な意義をもっており、党は、全党の英知と経験を結集して、この分野で真に指導的役割をはたせるように努力しなければならない。

 十一、【思想・文化の分野での闘争】 わが国は、高度に発達した資本主義国として、国民の教育および文化水準、総人口にしめる知識層の比重、新聞、テレビ、ラジオ、出版物など各種の大量宣伝機関の発達等、多くの指標が国際的にみてもっとも高いレベルに属する国の一つであり、自民党政治の打破、民主連合政府の樹立という国政革新の事業に、圧倒的多数の国民を結集していくうえで、知識人の役割も大きく、日米支配層、自民党その他の反共勢力による反動的思想攻勢とたたかい、革新的世論を正しく形成、発展させていく思想・文化の分野の闘争は、特別に重要な意義をもっている。
 党は、この見地から、各分野での思想・理論闘争を一貫して重視し、反動イデオロギーの主柱である各種の形態の反共主義をうちやぶる問題でも、少なからぬ成果をかちとってきた。
 党の思想・理論闘争では、日本共産党と科学的社会主義の事業にたいする反共主義の正面からの攻撃とならんで、「科学的社会主義」の名のもとに科学的社会主義を否定する各種の修正主義的反共的潮流を粉砕する闘争を、ひきつづき重視する必要がある。「日本のこえ」一派や毛沢東盲従集団、これにつらなる反党知識人などは、その一つの典型であるが、そのもう一つの典型は、社会党内で最近その影響力をつよめている「社会主義協会」(向坂派)である。かれらは社会民主主義の一派でありながら、「マルクス・レーニン主義の正統派」を自称し、その立場から日本共産党を攻撃する点でも、またソ連共産党への無条件的追従を金科玉条として、チェコスロバキア侵略や千島問題をふくめてソ連の政策のすべてを無条件に支持し、わが党の自主独立の立場を「ブルジョア民族主義」と非難する点でも、「日本のこえ」一派の双生児ともいうべき潮流である。「社会主義協会」(向坂派)は、社会党こそ、日本革命を指導する「マルクス・レーニン主義党」に発展しつつあるという、非科学的、非現実的な独断にもとづいて、労働組合への「特定政党支持」のおしつけをはじめ、社会党の反共セクト主義のあれこれのあらわれを、左翼的言辞で合理化することにつとめ、現在では社会党内の反共主義のもっとも有力な理論的支柱となっている。そのエセ「マルクス・レーニン主義」の諸理論への批判と克服は、革新統一戦線結成の任務とむすびついた、理論戦線の急務の一つである。
 文化戦線でも、反党文学者などからの党攻撃との闘争が重要である。中野重治らからの党攻撃にたいしても、今年にはいってから一定の積極的な理論的反撃がおこなわれ、過去の文学的業績のかげにみずからの変節をかくしつつ日本共産党への陰湿な中傷をつづける反党文学者に一連の痛撃があたえられたが、ひきつづきその全面的継続が必要である。
 戦前のプロレタリア文化運動の歴史的業績や戦後の民主主義文化運動への貢献など、半世紀にわたる党の歴史が明確にえがきだしているように、日本共産党が、各種の反動イデオロギーと対決し、日本の進歩的、民主的文化を発展させる指導的推進力としての役割をはたしてきたことは、われわれが発展的にうけつぐべき、日本における科学的社会主義の事業の光栄ある伝統の一部分をなしている。党は、ひきつづきこの戦線での思想・理論闘争を強化するとともに、党員文化人、知識人、研究者の進歩的立場からの創造と研究の活動をはげまし、また民主的諸課題での広範な知識人との共同をつよめ、科学的社会主義の党の知的影響力を、知識人と文化の戦線にむけていっそうひろく確固としたものとするために、努力しなければならない。
 文化の各分野での民主的な創造・研究活動の発展とともに、音楽や演劇その他勤労者と広範な人びとを基盤とした大衆的文化運動の解決をもとめられる諸課題を積極的に解明し、あらたな前進をかちとることは、文化戦線のさしせまった課題である。この分野では、大衆的鑑賞運動と創造活動を混同する傾向などとともに、わが国の文化運動の現段階における歴史的課題が、文化の民族的民主的な発にあることを無視して、資本主義の文化に代わる社会主義文化の建設を事実上当面の全般的任務としたり、われわれが継承すべき文花の民族的伝統や遺産を、事実上封建時代およびそれ以前の庶民文だけに限定したりするような、文化理論と政策上の誤りが一部の文化活動家にみられた。こうした理論上、方針上の一部の混乱は、運動の大衆的発展をさまたげる要因の一つともなってきたが、これは、五〇年問題の文化活動面での総括が公式におこなわれず、五〇年の党の分裂とこれに先行する時期に西沢隆二らによってもちこまれた文化政策上の誤った理論や傾向にたいし、さまざまな闘争が当時の困難な条件のなかでもおこなわれてきたにもかかわらず、またその後、西沢らの政治的理論的破産が議論の余地なく明白になっているにもかかわらず、それを党として総括し、その歴史的理論的分析を適時に徹底しておこなってこなかったという歴史的事情ともむすびついていた。文化戦線での活動の正しい発展のためにも、文化政策と文化問題にかんして、できるだけ早く五〇年問題の経過とそれに先行する時期の問題点、教訓の総括をおこなうことが重要である。党はすでにたびたびの大会や「日本共産党の五十年」で、政治分野ではこの時期をふくめた明白で率直な歴史的理論的総括をおこなっている現在、それは十分可能である。

 十二、【民主連合政府綱領についての提案発表の意義】 この党大会で、「民主連合政府綱領についての日本共産党の提案」を決定することは、革新統一戦線と民主連合政府をめざす闘争にとって、画期的な意義をもっている。
 わが党は、一九六〇年の安保闘争の直後に、他の政党にさきがけて、「安保条約反対の民主連合政府」のための闘争を全国の民主勢力によびかけて以来、国の進路が争われる国政選挙のたびごとに、民主連合政府が実行すべき内外政策の基本にかんする党の見解をあきらかにし、一貫して政府構想の基本を発展的にあきらかにしてきた。とくに最近では、第十一回党大会で、①安保条約廃棄と沖縄全面返還、②日本の平和・中立化、③憲法改悪反対と民主政治の確立、④国民生活の擁護と自主的経済政策の実行、⑤教育と文化の民主的発展を民主連合政府の内外政策の五つの柱としてその大綱を解明し、つづいて一九七一年一月には、政権構想の展望をもった革新統一戦線の政策的基準として、①日米軍事同盟と手を切り、日本の中立をはかる、②大資本中心の政治を打破し、国民のいのちとくらしをまもる政治を実行する、③軍国主義の全面復活・強化に反対し、議会の民主的運営と民主主義の確立をめざす、の三項目を発表した。
 今回の民主連合政府綱領の提案は、自民党政治の危機が深まり、これと交代すべき革新政権への国民の期待と関心が大きく高まってきた現在の情勢に対応して、従来からの党の方針をさらに具体化し、革新統一戦線を基礎に樹立される民主連合政府が、内政、外交の両面で実行する政策の詳細を包括的にあきらかにしたものである。この政府綱領提案のもつ政治的意義は、とくにつぎの諸点にある。
 第一に、この政府綱領の提案は、自民党政府の打倒と民主連合政府の樹立が、日本の進路と国民の生活にどのような意義をもつか、国政の革新が実現されるなら、日本国民の前にどんなにゆたかな可能性がひらかれるかを、外交、経済と国民生活、民主主義、教育と文化など、国の政治の全分野にわたってきわめて具体的にあきらかにし、民主連合政府が、緊急の国民的課題にこたえ、真の民族的利益をまもる政府――真に民族と国民の政府であることを、具体的にしめしている。すべての国民は、これによって、自分たちの切実な要求と国政革新の事業との関係を、生きいきと理解することができる。
 第二に、政府綱領の提案は、日本共産党および党がその一翼をになう革新統一戦線が、自民党政府にたいするたんなる批判と反対の勢力ではなく、国民の利益と要求にこたえて現実政治をにないうる真に建設的な勢力であることの、もっとも雄弁な確証である。わが党はこれまでも、「いのちとくらしをまもり、住みよい国土をつくる総合計画」(一九七二年)、医療保険、医療制度の根本的改革の政策(一九七二年)や「第二次土地改革の構想」(一九七三年)はじめ、真の革新の立場にたった科学的で建設的な政策活動で、党の〝政権担当能力〟を証明してきたが、政府綱領の提案は、こうした努力の一つの集大成である。
 第三に、自民党その他の反共勢力は、革新の潮流の発展を反共主義の中傷でおしとどめようとし、統一戦線の政府である民主連合政府を「共産政権」とねじまげ、その政府のもとで国民の自由や財産権が抑圧されるといったデマ宣伝に熱中している。しかし、民主連合政府は、民主勢力の一致を前提に、自民党の悪政の諸結果および日米独占資本の支配と抑圧から国民の利益をまもる各分野での民主的改良と民主的改革を実行する政府である。今回の政府綱領の提案は、このことを、政策内容に即して明確にし、国民の民主的な自由と権利の擁護と拡大はもちろん、大企業、財界の横暴な抑圧から、財産権をふくむ国民の生活を防衛し、向上させることが民主連合政府の内政の中心問題であることをあきらかにしており、党と民主勢力に、各種の反共デマ宣伝を粉砕する強力な武器をあたえるものである。
 第四に、わが党は、革新連合政権が国政革新の道であることを、政党のなかでもっとも早く提起し、そのための努力をつづけてきたが、それにつづいて、今回、政府綱領の提案を、具体的に発表した。このことは、わが国の革新的世論のあいだに、政権構想をもった本格的な革新統一戦線結成への機運をおこし、革新三基準に賛成する政党や団体のあいだで、共同政府綱領についての協議が可能となるような情勢をつくりだすうえでも、大きな積極的意義をもっている。
 もちろん、今回の政府綱領の提案は日本共産党の独自の提案であって、広範な国民の討議にゆだねるものであるが、今後、革新的立場にたつ諸政党間で共同政府綱領の協議が開始されるようになった場合、わが党が、この政府綱領の提案の承認を前提としておしつけるつもりのないことは、いうまでもない。協議のさいに基礎的な出発点として要求されるものは、わが党が以前から主張しているように、革新三基準での政策的な一致と、革新連合政権をめざして共闘しようとする意思とである。社会党の一部には、革新連合政権を「全野党共闘」のわくにはめこむために、革新三基準の柱の一つである安保条約廃棄の問題をたなあげにしようとする傾向がみられるが、これは結局のところ、革新政権の外交・軍事政策を、自民党政治に追随させ、国民の革新への期待を裏切ることでしかない。
 民主連合政府綱領についての提案の全党的な学習と全国民的な宣伝は、国政および地方政治の舞台での党の政治活動を、人民の利益を擁護し真の政治革新をめざす方向でいっそう目的意識的なものにするとともに、国民各階層の要求と運動を国政革新の事業とより有機的にむすびつけ、この歴史的課題実現の起動力とするうえで、きわめて重要な意義をもっている。全党は、今回の政府綱領の提案とむすびつけて、民主連合政府の樹立の方法についての党の基本方針-革新統一戦線の結成を軸に、選挙で自民党や反共・反動勢力を敗北させて、革新統一戦線の勢力が国会の多数をにぎり、民主連合政府を平和的、合法的につくりあげるという方針を宣伝することも、重視しなければならない。一部の論者は、チリの人民連合政府が軍事クーデターで打倒されたことをとらえて、日本での民主連合政府の展望に疑問を投げかけているが、この機械的な類推には根拠がない。日本では、革新統一戦線による国会の多数の獲得が、政府樹立の不可欠の前提となる。また、この政府は、社会主義樹立を目標とする政府ではなく、現段階の国民的要求にこたえる国民生活防衛と民主的改革の政府であることが、最初から明確にされている。さらに、極左勢力の介入を許さないという点で、わが党の精力的闘争によって、かなり広範な民主勢力にすでに基本的な一致がえられていることなどの一連の積極的特徴は、ひきつづき堅持、発展させられなければならない。一方、革命運動の発展過程での「敵の出方」の複雑さをみず、平和的な道を暴力でとざそうとする反動勢力の出方への警戒心を欠いた、安易な態度も、社会党その他のわが党の「敵の出方論」への無責任な攻撃にみられるように根づよい。われわれは、広範な民主勢力と民主的世論の結集によって、各種のファッショ的暴挙を封殺する闘争をいっそう重視するとともに、チリの事態を理由に、国政革新の事業を平和的に成功させる可能性の追求を放棄しようとするいっさいのくわだてをきびしくしりぞけ、平和的手段による民主連合政府の樹立と政治革新の展望を、国民多数の支持のもとに現実化するために、ひきつづき奮闘するものである。
 革新連合政権の問題について、公明党は、最近ひらかれた同党の大会で、「中道革新連合政権」の構想を発表するとともに、政権問題での共闘の前提に「憲法と議会主義の擁護」を要求し、わが党が日本の社会主義的未来と関連した将来の発展方向として、憲法の進歩的改正の展望をもっていることを理由に、わが党の国政革新の路線や民主主義と自由にたいする態度への「疑念」を表明している。こうした態度は、反対に、同党の立場の革新性への疑問につながるものである。第一に、将来、真に社会主義をめざす政党が、現行憲法を永久不変のものとみなさないのは当然であるが、現在の国政革新の課題は、資本主義か社会主義かの選択ではなく、平和、中立、民主主義、生活向上という資本主義のわく内での民主的改革の実現であり、これを任務とする民主連合政府は、憲法問題では、わが党がくりかえしあきらかにしてきたように、憲法改悪に反対し、現憲法の諸条項を厳格にまもることを、憲法問題での基本態度としている。社会主義への展望などにつながる日本の将来にわたる問題については、各党が多かれ少なかれとなる見解をもつのは当然であって、こうした将来での憲法問題についての見解の相違をもって、当面の革新連合政権のための共同を拒否する理由とすることこそ、いわば自党の綱領的方針の承認を共闘の前提として他党にもとめようとする独善の態度である。第二に、現行憲法を日本社会の未来永ごうにわたって不変のものとすることは、実際には、日本の将来を現在の資本主義体制の若干の改革の範囲内にとどめることであり、民主主義の点でも、主権在民の原則と本質的に矛盾する天皇制の永続を肯定するなど、きわめて不徹底な立場をとることである。公明党がこの立場をみずからの方針とするだけでなく、これに同調する政党以外とは政権共闘には応じられないという立場に固執するなら、それは、真に社会主義をめざす政党との政権共闘を原則的に否定し、革新連合政権への参加の道をみずからとざすことである。第三に、反対政党の活動の自由、選挙による政権交代の問題をふくめて、国民の民主的権利と政治的民主主義が、当面の民主連合政府の段階はもちろん、将来の社会主義日本においても一貫して保障されるというわが党の基本態度は、第十一回党大会の決定にも公式に明示されている。日本共産党のこれらの公式の見解を無視して、共産党の「一党独裁」といった「疑問」なるものをことさらもちだし、それを政権共闘を拒否する理由とすることは、本質的には「自由社会を守ろう」を合言葉にした自民党の反共キャンペーンにもつうじるものであり、真に革新の立場にたつ政党のとるべき態度ではない。
 わが党は、革新三基準で一致できる諸政党が、あれこれの人為的な障害をつくることなく、国政レベルでの革新統一戦線結成にふみきり、共同政府綱領についての協議をふくめて、革新連合政権への道を積極的に共同で探究する立場にたつことを、第十二回党大会の48名においてあらためて提唱するものである。

  第三章 党建設の諸任務

 十三、【三年間の党建設の総括】 わが党は、昨年、党創立五十周年をむかえ、過去の不屈の歴史をふまえ、新しい半世紀への第一歩をふみだしたが、この三年間の党建設は、第十一回党大会が提起した目標と課題にもとづき、「量とともに質を」のスローガンをかかげた全党の活動によって、この歴史的な時期にふさわしい前進と成果をかちとった。
 第一に、党勢拡大の面では、「二本足の活動」の基本方針を一貫して堅持し、持続的拡大の定着につとめつつ、七〇年後半の三つの課題の大運動、七一年後半の集中拡大の運動、七二年五月以後の党創立五十周年記念の党躍進大運動、七二年秋の総選挙での躍進をめざす特別月間、七三年三、四月の空白克服の特別月間、八、九月の党大会をめざす党躍進大運動月間など、数次の運動を推進した結果、党は、第十二回党大会を、党員三十数万、党機関紙の読者は百万以上増加して二百八十数万という党史上最大の組織勢力をもってむかえた。
 この間、党は、七〇年代の歴史的任務をはたすうえでの党建設の緊急課題として、空白克服の課題の特別の意義を一貫して強調し、そのための特別月間を設けるなどしてとりくみ、今日までに、沖縄県をふくめて全国のすべての市町村に「赤旗」読者をもち、これまで党組織のなかった少なからぬ町村や経営にあらたに党組織をつくることに成功した。
 第二に、党の質的強化の面では、党がとくに努力を集中したのは、すべての党員が一人のこらず革命的自発性をもって活動し、党のもつ力量のすべてが発揮されるような党の思想的、政治的な建設党生活と党指導の確立であった。その見地から、学習・教育活動でも、全党の理論・政治水準を高める中心課題として、全党員が党大会や中央委員会の決定を読了し、これを活動の指針として身につける運動を重視してきた。この運動は、たとえば大会決定を七〇年の年末までに七六の党員が読みきるという、過去の経験を大きく上まわる成果をあげた。
 党創立五十周年にあたって党中央が発表した「日本共産党の五十年」は、半世紀の日本社会の歴史にはたしたわが党の先進的役割とその不滅の業績を、なにものもおそれない科学的社会主義の精神であきらかにするとともに、半世紀の試練をへて今日わが党がたっている到達点を、未来をきりひらく革命的展望とともに解明した文書であり、党と革命の事業への理論的確信と革命的情熱で全党を武装するために、重大な役割をはたした。
 党の質的水準を高めるうえで画期的な意義をもったのは、七一年十二月の六中総における組織活動改善の決定である。善意をもつすべての党員が、能力と条件に応じて党活動に参加できるように、戦闘的で合理的な組織活動の方向を全面的にしめしたこの決定は、日本の条件のもとでのレーニン型の党――大衆的前衛党の建設をめざす組織政策のあらたな発展であり、大衆との生きた結合のもとに、法則にかなった党の活動体系を、支部を基礎として確立する巨大な一歩をふみだしたものであった。この組織活動改善は、党創立五十周年を記念した党躍進大運動の成功をはじめ、その後の党の各分野での躍進をささえる支柱となった。
 党建設のこれらの前進は、国政および地方政治におけるこの三年間の党の躍進のもっとも強固な土台をなすものであったが、ここでとくに教訓として強調すべきことは、この成果が、あらゆる反共攻撃との不断の徹底した闘争と同時に、党勢拡大への独自の計画的なとりくみを軽視する党建設上の日和見主義のさまざまなあらわれを、思想的、実践的に克服することによってかちとられたという問題である。
 青年運動など若干の分野にあらわれた新日和見主義、分派主義との闘争は、党建設にとってきわめて重要な意義をもった。これらの分派主義者は、情勢評価や闘争方針のうえで、ニクソンの対中・ソ接近をもっぱら帝国主義の「危機」とみなし、その侵略性を軽視するアメリカ帝国主義美化論や、沖縄協定以後日本軍国主義が主敵となったとする事実上の「一つの敵」論などの日和見主義的見地をとなえるとともに、わが党の人民的議会主義の立場や党の組織活動改善の方針をブルジョア議会主義、解党主義などと攻撃し、党勢拡大独自の課題としてとりくむことにも、「大衆闘争の重視」を口実として反対した。かれらは、とくに、党にかくれて民主青年同盟中央委員会内に反党・反同盟の分派を組織し、民青同盟にたいする党の指導に反対して、民青同盟を、党に対抗する反党分派活動の拠点に変質させようとした。この新日和見主義、分派主義の危険な傾向にたいし、党は、理論上、政治上、組織上の徹底した批判と闘争をおこない、これを粉砕したが、この闘争は、民青同盟が一時期の組織的停滞を克服し、新しい発展と高揚の方向をかちとるうえでも、重要な契機となった。
 わが党は、この十数年来、さまざまな日和見主義、分派主義とたたかって、党の隊列の統一を政治的にも組織的にも強化してきた。今後も情勢や党の発展のいろいろな段階で、日和見主義、分派主義があれこれの形態で発生する可能性がある。そのような傾向が生まれた場合には、ただちに原則的な闘争によってこれを克服することが、第七回党大会以来の党建設の最大の教訓の一つである。

 十四、【沖縄人民党の合流と沖縄県における党建設】 第十二回党大会は、アメリカ帝国主義の全面軍事占領下に、いかなる暴圧にも屈せずに、サンフランシスコ体制打破、独立・民主・平和・中立の日本の建設の旗をかかげ、沖縄県民の先頭にたってたたかってきた沖縄人民党の党員が、日本における科学的社会主義の事業を積極的にになう立場を明確にし、わが党の隊列に参加したことを、心から歓迎する。
 日米沖縄協定にもとづく沖縄「施政権」返還後も、沖縄には、広大な米軍基地が依然として存在しているうえ、大資本による土地の買い占めなど、県民生活のあらたな破壊と圧迫も進行しており、核も基地もない沖縄を実現し、大資本本位の開発でなく、県民のいのちとくらしをまもる経済復興をかちとることなど、県民の切実で緊急な諸問題が山積している。長期にわたってアメリカ軍の圧制のもとでたたかいぬいてきた沖縄県民のあいだには、民族の真の独立と民主主義達成への大きなエネルギーがうずまいている。大多数の沖縄県民とかたくむすびついた、強大な党県委員会と県党組織を急速につくりあげることは、わが党に課せられた急務である。その条件が熟していることは、沖縄人民党が、わが党への組織的合流を決定してからむかえた七月の那覇市議選で、はげしい反共攻撃をうちやぶり、八人全員当選、与党第一党への進出という、大きな勝利をおさめたことによっても証明された。
 党は、沖縄に強大な党を建設し、沖縄をアメリカ帝国主義の日本とアジア支配の拠点から、日本人民解放のたたかいの拠点にするために奮闘することが重要である。

 十五、【政治の革新を現実に実行できる力量をもった党を】 第十一回党大会の決定は、新しい歴史的段階をむかえた党建設の基本任務として、革新統一戦線の結成と民主連合政府樹立という七〇年代の歴史的事業を「いかなる情勢の激動のもとでも確固としてやりとげる力をもった党の建設」という目標を、全党の前に提起した。この基本任務からみるならば、三年間の党建設の成果は、もちろんまだ歴史的任務達成の途上での一歩にすぎない。今回、わが党が民主連合政府綱領についての提案を決定した状況のもとで、まさに、国政革新の事業を現実ににないうる党の建設は、いっそうその切実性をしており、政治的にも組織的にもそれだけの強大な力量を身につけた党を、できるだけ短期間につくりあげるために、ひきつづき全力をあげて奮闘しなければならない。
 この立場から、第十一回党大会が提起した七〇年代の党建設の任務を、今日の新しい発展段階に即して具体化し、全党がこれを覚建設の当面の基本目標として追求する。

 (1)第十三回党大会までに、持続的に党員と機関紙読者を拡大し、四十万以上の党員と四百万以上の読者をもついっそう強大な大衆的前衛党に発展すること。
都市と農村での不抜の党建設を全体として系統的に追求し、すべての経営、すべての地域に党組織をつくること。
 (2)党建設がおくれている諸県、諸地区の活動と党勢力(党員、読者、得票率)を飛躍的にひきあげて、衆議院、参議院のすべての選挙区で議席を争いうる力量をつくりあげ、国会にいっそ強力な議員団を確立するとともに、すべての地方議会に議員団をもって発言権を拡大すること。
 (3)組織活動改善の方針を徹底して、すべての党員が能力と条件を生かして生きいきと自覚的に活動する党生活、党活動を確立すること。
 (4)一人ひとりの党員が理論・政策学習につとめて、党の政策や理念を大衆に説明し、反共攻撃をはねかえすことのできる力を身につけるとともに、各種の政治問題や大衆運動に、指導的役割をはたせる党機関と支部になること。
 (5)党防衛の問題は、民主連合政府樹立への道をすすむうえでいよいよ重大性をましてくる課題であり、党防衛をふくめ党建設、大衆運動、選挙の四本柱の活動と、それらの共通の土台としての宣伝を、党活動の共通のスタイルとすること。

 十六、【大衆宣伝、大衆活動】 党の諸活動の共通の前提である宣伝活動は、選挙戦をはじめ重要な闘争などの場をつうじて、多くの前進をかちとったが、同時に、反共宣伝にたいして機敏に徹底的に反撃せず選挙戦で失敗した例や、貴重な宣伝物が生かされず山積みにのこされていた例など、克服すべきいくつかの問題もあった。こうした教訓を生かして、宣伝活動の内容や形態、また規模や系統性などについて、さらに創意を発揮して発展させなければならない。
 宣伝活動では、国民の大多数を党と真の革新政治の側に結集するという展望のもとに、文字どおりすべての国民、全階層の人民を対象にした宣伝に、とくに力を入れる必要がある。なかでも、自民党などが「自由か独裁か」などのスローガンのもとに、真実を国民からかくす反共デマ攻撃をつとめている今日、自民党の悪政の暴露とともに、国民のいのちとくらしをまもり、独立・民主・平和のためにたたかっている日本共産党の真の姿――理念、政策、伝統、活動について、党が先制的に系統的に宣伝していくことが重要である。そのさい、わが党への支持は、総選挙でも全国的には投票者の約一〇%にすぎず、まだ九〇%近くはわが党を支持していないという現実にたって、党の宣伝の内容を、事実と道理にもとづく説得力あるものにする努力が必要である。
 また、党中央がだす「赤旗」号外などだけにたよることなく、地域の具体的な問題をとりあげた効果的な文書宣伝をおこなうとともに、街頭や会場などでの演説会をはじめ、口頭による宣伝、説得活動を重視し、積極的に多数の弁士を養成し、大衆の関心のある問題を機敏にとらえつつ、日常不断に、広範な人びとに党の政策や見解を訴えていくようにしなければならない。
 こうした宣伝活動と結合して、切実な国民各層の諸要求にもとづく大衆活動を組織し、指導し、またそれぞれの大衆組織を強化、拡大するために、党は誠実に真剣にとりくむことが大切である。この活動をつうじて党と大衆とのむすびつきをつよめ、党の政治的、組織的影響をひろげ、それぞれの分野で運動や団体の性格にふさわしいやり方で、革新統一戦線の結成の方向に推進しなければならない。そのためにも、各級党機関は、大衆団体の党グループや党員活動家の活動とこれにたいする指導を重視し、グループが、党の方針を理論的にも政治的にも十分身につけて活動し、大衆団体の拡大強化、大衆運動の前進に正しく貢献できるよう努力をつとめる必要がある。

 十七、【学習・教育活動】 党の思想的、政治的水準を高め、一人ひとりの党員が党と革命の事業に確信をもち、広範な大衆にたいする宣伝、説得力を身につけるようにすることは、党の当面する諸任務の遂行にすべての党員が自覚的にたちあがり、全党の力をあますところなく発揮するためにも、国民の多数を結集して国政革新の事業を前進させるうえでも、いっそう急務となっている。そのためには、教育内容と制度の改善、充実をはかりつつ、第十一回党大会が決定した学習・教育活動の諸課題を、ひきつづき系統的に追求しなければならない。そのさい、新入党者教育を入党後一週間以内におこなうことをはじめ、初級学習の積極的な実施、各級機関の幹部の独習の保障などを、とくに重視する必要がある。マルクス・レーニン主義の古典の学習とわが党の実際の理論、政策、方針の学習とを結合させることは、学習・教育活動の基本であり、とくに、日本の現実に科学的社会主義を創造的に適用し、日本の現実が提起し国民が関心をもつ政治的、社会的問題のすべてについて解明した指針党大会の諸決定の学習を重視し、これを党の学習教育の体系に正しく位置づけることが重要である。この点では、第十二回党大会の決定とともに、七〇年代の展望と党の任務を全体としてあきらかにしている第十一回党大会決定をつねにあわせて学習することとする。
 科学的社会主義の理論は、人類のすべての価値ある遺産の集大成であり、その意味でも、基礎的な一般教養を高めることを、あわせて学習の課題とする必要がある。また、真のプロレタリア的ヒューマニズムにたった党風の確立につとめるとともに、党員が日常の活動と生活で必要な民主的常識にかなった態度を身につけ、社会生活のなかで広範な信頼をえるようにすることも大切である。
 党の発展は、党活動の各分野、各段階で、高い理論・政治水準をもった幹部を大量に要求している。各級党学校の整備と定期化をはじめ、幹部の学習・教育活動を目的意識的に強化し、幹部の科学的分析力と政策能力、明確な総合的判断力、下級機関や党支部を具体的に指導する政治的力量をやしない、従来の幹部の水準を向上させる不断の努力とともに、新しい幹部の養成をはかる必要がある。とくに各級機関は、新しい教育幹部を何人養成するかについて明確な計画、目標をもち、教育幹部要員がすすんで各級講師資格試験に応募するようにみちびかなければならない。
 また、広範な大衆の要望にこたえて、人民大学、労働学校、農村学校など、党が直接おこなう大衆的教育活動の発展にも、さらに系統的な努力をそそがなければならない。

 十八、【党勢拡大の持続的追求】 歴史的責務にこたえて、大衆闘争と統一戦線活動を前進させ、各種選挙戦で勝利し、政治的力関係を変革していくためにも、党勢の拡大は、不可欠の保障であり、推進力である。とくに、その支配の危機を反動的ファッショ的な方向で打開しようとしている自民党政府や、直接、間接にこれをたすける各種の反共的潮流がつよまりつつあるとき、これを打ちやぶって、政治を真に革新的な方向に発展させていくために、党員と機関紙読者を拡大強化することは、今日、ますます決定的な意義をもっている。
 しかも、昨年末の総選挙以来、わが党にたいする関心と期待はひろがり、党勢を急速に飛躍的に拡大する条件と可能性がかつてなくつよまっていることを正確につかみ、民主連合政府樹立という政治目標の実現にふさわしく、あらたな意欲をもって計画的な党勢拡大にとりくまなければならない。
 党勢拡大の基本は、持続的拡大のための不断の努力と活動である。もちろん、諸分野の活動にくらべて党勢拡大がおくれたり、とくに激動する情勢のなかで必要な場合には、一定の期間、重点的に党勢拡大にとりくみ、前進をかちとらなければならない。全党組織は、総合的な活動をすすめながら、つねに党勢拡大を独自の課題として計画的に追求し、持続的に、着実に、党員と機関紙読者を拡大するようにしなければならない。そのためには、組織活動改善の方針と一連の「手引き」、とくに党員拡大と機関紙活動の二つの「手引き」全党的に徹底し、すべての党員が能力や条件を生かした〝たて糸〟の活動によってひろい大衆との結合をつよめ、持続的に党勢を拡大していく活動に習熟し、これを定着させていくことが必要である。
 党勢拡大の前進には、独自の計画的なとりくみが絶対に必要であるということは、第七回党大会以来の試練ずみの鉄則である。この三年間にも、この鉄則を見失い、まず大衆運動へのとりくみが先決だとか、いろいろな理由をもうけて党勢拡大への独自のとりくみを事実上無視あるいは軽視する党建設上の日和見主義的傾向が一部にあらわれたが、こうした日和見主義のどんなあらわれについてもけしてゆるがせにせず、これを理論的、実践的に一掃する断固としたたたかいが重要である。
 組織活動改善の方針が発表されて以来、党員は持続的に着実に拡大している。それは、この組織政策によって、党綱領を支持し党活動に参加する善意をもちながら、活動上の矛盾から党を離れるという不正常な状態が改善され、同時に、党とともに活動している党支持者を党の隊列にひろくむかえいれる道をひらいたことをしめすものである。今後、党員拡大の規模と速度をいっそう発展させるために、大衆的な入党前教育などに系統的にとりくみ、真に数十万の党をかならずつくりあげなければならない。入党にあたっては、党規約にもとづく厳正な審査が、確実に、すみやかにおこなわれる必要がある。
 高度に発達した資本主義国であるわが国においては、「赤旗」は、とりわけ党の宣伝活動と組織活動の中心的武器である。「赤旗」は、日刊紙、日曜版ともにその紙面を豊富で親しみやすい魅力あるものにいっそう充実させ、「働くものの新聞」であると同時に、「民族と国民の新聞」としての特徴と性格を積極的に生かし、ひろく国民のあいだに普及し拡大しなければならない。とくに、「赤旗」日刊紙は、十六だてになった今日、文字どおり「一紙で間にあう新聞」としての期待にこたえるように、編集内容をたえず改善し、定期的な責任ある配達・集金、読者との不断のむすびつきによって、日刊全国紙にふさわしく一日も早く百万をこえる読者をもつようにしなければならない。その見地から、印刷・通信の体制を全国的にいっそう強化し、ニュースの速度と量の点でも、一般紙におとらない水準を保障するよう努力することが大切である。機関紙の配達・集金活動は、党中央と全党員をむすび、党と大衆をつなぎ、大衆闘争の発展と党勢の不断の拡大を保障し推進する基本的な活動の一つであり、読者がひろく増大するなかで、いっそう重要となっている。敏速、確実、安全、安定した配達とともに、読者とのむすびつきを重視し、これを保障するためには、配達・集金活動のさまざまな形態を条件に応じてくみあわせ、多くの党員の積極的参加および党支持者の協力のもとに、これを不断に改善、強化していくようにしなければならない。
 『前衛』、『月刊学習』など党の発行する定期誌と書籍の普及活動は、「赤旗」の大きな躍進とくらべると全体として停滞の傾向にあるといわざるをえないが、機関紙とはちがった性格をもち、宣伝、啓蒙、教育の面で重要な役割をになっている定期誌・書籍の問題を重視し、その普及にとりくむ必要がある。

 十九、【支部活動の強化】 党の支部は、わが党の基礎組織であり、その地域、その職場(学園)において日本共産党を代表する、党の政治単位である。すべての支部が、その明確な自覚をもって、活動にとりくむことが重要である。
 したがって党支部は、それぞれの具体的な政策と計画をもって大衆の利益をまもって活動し、生産と生活のすべての場所で大衆とのむすびつきを不断につよめなくてはならない。経営支部は、その経営の労働者のあいだで大衆の日常利益のために献身的にはたらき、その経営の労働組合運動の階級的民主的強化、未組織労働者の組織化にとりくみ、その経営を党と統一戦線の不抜のとりでにするという任務をはたさなければならない。地域の居住支部あるいは農村支部は、その地域に強力な党を建設すると同時に、住民の要求と運動の先頭にたち、自治体の民主的刷新のためにたたかい、自民党その他の反動的影響を打破して、住民の多数を党と統一戦線の側に結集するという任務をもっている。民主連合政府樹立の事業は、党の基礎組織であるこれらの支部が、当面の諸課題の遂行を長期の展望とむすびつけ、その基本的任務を責任をもってはたしていくことによってこそささえられ、推進されるものである。
 支部の日常の活動においても、党のまわりのせまい範囲に活動をかぎるのでなく、あらゆる階層、あらゆる団体を支部の活動の対象としてとりくむことが重要である。多くの選挙戦において、党は全有権者を対象にした宣伝・組織活動をおこない、その過半数の支持を獲得する活動を展開する経験をひろげてきたが、これを選挙時の活動だけにとどめることなく、この見地から、多面的で総合的な活動を日常的にすすめる必要がある。また、それらの活動を保障するための支部財政の強化につとめることが大切である。
 この活動を系統的に発展させるうえで、組織活動改善の方針と一連の「手引き」を支部活動のなかに定着させることが、つよくもとめられる。とくに、すべての党員が〝たて糸〟の活動の任務をもち、大衆の日常生活にかかわるあらゆる分野、あらゆる組織での活動をひろげること、支部(班)会議のひらき方や連絡の方法による党活動など「手引き」による活動改善を具体的に発展させること、支部の幹部、活動家をそだて、手わけして支部全体を日常指導できるような量、質ともに活動力のある支部(班)指導部を確立すること、深い同志的配慮のもとに、プロレタリア・ヒューマニズムとプロレタリア英雄主義を統一的に発揮し、すべての党員が自覚的に活動することなどのために努力しなければならない。
 一部の党組織では、支部を労働組合など大衆団体の線にそって〝たて割り〟の組織としているところがあるが、これはただちにあらため、地域と経営を単位として再組織し、規約にもとづく支部建設を正しくすすめることが重要である。

 二十、【中間機関と幹部政策】 中間機関の活動と指導の水準を向上させることは、党発展の重要な一つのかなめとなっている。とくに、直接党支部の指導にあたる地区委員会の確立、強化は、決定的に重要である。
 中間機関の主要な任務と指導の問題については、組織活動改善の方針を党機関みずからが真に身につけてこれを指導と活動の基本にすえ、党に課せられた任務を、具体的な実情をつかみ党内のすべてのエネルギーを自覚的にひきだし結集させるやり方でかならずやりとげる、科学的で戦闘的な指導をつらぬくことが大切である。
 中間機関の任務をはたすために、機関の構成を改善、充実し、指導能力を強化すること、これを保障する幹部政策ならびに財政の確立に大きな力をそそがなければならない。
 党は、第十一回党大会決定にもとづき、常勤すべき県常任委員は少なくとも九人以上、地区常任委員はなるべく五人以上、少なくとも三人以上にするために努力した結果、多くのところで改善がおこなわれたが、現状に甘んずることなく、ひきつづき充実をはかる必要がある。大都市などでは、必要に応じてこうした地区委員会を可能なかぎり行政区単位に確立し、市政の諸問題をふくめて地域に密着した活動をすすめるようにしなければならない。また、その他の地域でも、市町村(場合によっては郡)でいくつかの支部が活動している場合には、補助指導機関としての市町村(郡)委員会を重視し、その確立をはかっていく必要がある。
 各級機関の活動の充実のためには、非常勤の委員が、たんに会議に参加するだけでなく、その機関の活動の一定の部門を責任をもって担当するなど、非常勤の党活動家の力の効果的な結集をはかっていくことに、いっそう努力しなければならない。
 今日、党の総路線は明確であり、党中央の正確な政策と方針が情勢の発展に即応してつねにあきらかにされているもとで、これを具体化し実際に遂行している幹部の問題は、きわめて重要な比重をもってきている。とくに急速に情勢が発展し、要求や運動の分野と規模がひろがり、複雑さもましてくるなかで、これにこたえうる各級、各分野の幹部を必要としており、幹部政策の問題は、党建設の重要な根幹の一つをなすものである。
 したがって、経験ある古くからの幹部の保全とたえざる向上、活動的な新しい幹部の抜てきとゆきとどいた養成によって、新旧幹部の長所をともにむすびあわせていくという幹部政策の基本的見地にたって、将来性のある有能な三十代、二十代の活動家をあらゆる分野にわたって抜てきし、系統的、計画的に配置し養成することが重要である。また、党の幹部や一般常任活動家が、老齢をむかえて第一線での日常活動も非常に困難になってきた場合には、第一線の激務からは解除する配慮をするとともに、革命家としての長期の経験を尊重して、それにふさわしい処遇をおこなうことが、党の団結とプロレタリア・ヒューマニズムの見地から必要である。そのさい、事情と必要に応じて、第十一回党大会で決定した名誉役員や顧問の制度を生かすことは、有意義であろう。病気で長期の療養を必要とする幹部についても、その部門、任務から解任するなど、安心して療養に専念できるようにすることが大切である。
 中央および地方の指導幹部を、全地方的、また全国規模の全体的指導に習熟する幹部として養成するためには、幹部の特性を考慮しつつも、必要と条件に応じて、適宜幹部を中央と地方あるいは地方間で交流して配置することは当然のことであって、経験と視野をひろげてその成長をはかり、つねに安定し、かつ清新な機関構成を実現するように努力しなければならない。また、幹部の健康の管理を積極的にすすめる必要がある。
 重要経営や農村にたいする宣伝・組織者の活動を重視し、さらに非常勤の委員や大衆団体グループをふくむ各分野の幹部を活用するなど、全体として、今日の情勢と任務にこたえうる機関の指導と活動を強化しなければならない。この点、農村宣伝・組織者だけでなく、未組織労働者の組織化のための宣伝・組織者の配置も積極的に考慮する必要がある。
 充実した機関の常任の給与の保障や、系統的な政治宣伝活動の展開などをふくめ、党の政治組織活動を発展させるために、財政問題はいっそう重要となっている。
 党中央は、常任の最低給与基準をきめて実施してきたが、各級党機関がこの問題を重視し、今後それぞれの地域における労働者の賃金水準をめざして、この基準をさらに高める必要がある。また、党中央は、常任活動家の遺児にたいする育英制度や、党活動のなかでたおれた党活動家への「弾圧犠牲者救援基金」の適用を決定したが、これはプロレタリア・ヒューマニズムの精神にたった具体的措置の一つである。
 党の募金活動についての三原則(①募金は党内外をとわず、あくまで自発的なものという前提をつらぬく、②党員にたいする人頭割りの割当てはおこなわない、したがって支部にたいしても地区にたいしても割当てはおこなわない、③生活が特別に苦しい党員の家計に影響する個人負担をさせない)は、党員の積極性と創意を発揮するうえで大きな役割をはたした。今後もこの三原則を堅持するとともに、党費納入の改善、機関紙誌代の対読者完全回収、大衆的募金機関の才覚の強化など、全党的なとりくみによって財政活動を発展させなければならない。

 二十一、【党の防衛と規律】 党の半世紀の歴史の教訓は、反動勢力の暴力による攻撃とスパイ工作から党を防衛することが、階級闘争の重要な一環であることを教えている。
 とくに、自民党、反動勢力が暗黒政治再現への反動的計画をつよめつつある最近の情勢のもとで、熊本での宮本委員長暗殺未遂事件など、各種反共暴力集団のしゅん動はますます激しくなっており、党および幹部防衛の活動を今日の緊迫した情勢にふさわしく位置づけ、改善、強化することは、全党的な課題である。党は、現在の情勢と反動勢力の謀略的で凶暴な本質を正しくつかみ、必要な警戒心をつよめ、「左」右の反共集団の暴力、テロとき然としてたたかい、党内に潜入したスパイを摘発するなど、党を防衛する活動を強化するとともに、民主勢力にむけられた暴力、テロ、スパイ活動を糾弾する闘争の先頭にたって広範な民主的世論と統一戦線の結集をはからなければならない。
 新日和見主義者による分派的策動との闘争の教訓などからも、党規律にたいする惰性的なし緩した態度を一掃して、党規律の自覚的厳守と革命的警戒心の強化が不断に強調される必要がある。

 二十二、【おくれた党組織の底上げの課題】 国政革新を現実ににないうる党への発展にとって、先進的な党組織がいちだんと前進し、中位にある党組織が先進に追いつくように奮闘することとともに、なによりも、党勢においても得票率においても全国水準からたちおくれている党組織が、革命的・戦闘的気概をもって奮起し、短時日におくれを克服し、すみやかに全国水準に追いつくことが決定的に重要である。これなしに、すべての選挙区で現実に議席を争う選挙をたたかい、党の国会へのひきつづく進出をかちとることはできない。
 たちおくれ克服の任務に積極的にとりくみ、二倍、三倍の読者拡犬をかちとった諸県の活動や、全国的な空白克服の活動、農村の宣伝・組織者の活動など、この三年間のいくたの経験は、機関の科学的で戦闘的な指導のもとに力をつくしてとりくめば、大きな成果を急速にかちとることができる情勢にあることをしめしている。
 全国的水準からいちじるしくおくれている県党組織の存在は、客観的には、民主連合政府樹立という事業にたいして、その足をひっぱる役割をはたしている。この自覚のもとに、これらの党組織が奮起するとともに、この底上げがその意味からもまさに全党的、全国的課題であることを重視し、中央と先進県からの各種の援助をふくめ、必要な諸措置をとることとする。

 二十三、【党建設の三ヵ年計画】 第十三回党大会をめざす党建設の計画は、第八回党大会以来の四次にわたる党建設計画の成果と教訓を発展的にうけつぎながら、量的にも質的にも現段階の任務にこたえる党を急速につくりあげるために、つぎの四つの計画を内容とする。各地方党組織は、大会後ただちに、この大会方針に呼応する各党組織の自発的計画をたて、次期大会までにその達成をめざして奮闘しなければならない。

 (1)学習・教育活動の計画 第十一回、第十二回党大会決定の学習をはじめ、そのときどきの中央委員会決定を全党員が学習する党風の確立。すべての党員が独習の計画をもつこと、新入党者教育はかならず一週間以内に完了する体制をつくること、党勢拡大計画にみあう入党前教育の計画と実行、各級党学校の定期的開催、人民大学、労働学校その他の大衆的学習・教育活動の抜本的拡大などをふくめ、計画をたてる。
 (2)党勢拡大の計画 第十三回党大会までに党員と読者の持続的拡大を全党に定着させ、少なくとも四十万以上の党員と四百万以上の読者をもつ党に発展させる。
そのさい、総選挙の得票比率や、党員と読者の対有権者比が全国平均以下の党組織は、衆参両院選挙のすべての選挙区で議席を争える主体的力量をできるだけ早く確立することをめざして、とくに意欲的、積極的な計画をたてる必要がある。
 (3)空白克服の計画 空白克服の活動に計画的にとりくむ。その計画は、(1)次期改選時には、空白県議会と空白市議会をかならずなくし、議席空白のすべての町村に候補者をたてて空白を大きく克服する。(ロ)すべての市町村に党組織を確立する。(ハ)すべての経営、すべての学園に党組織を確立する、の三点を基本目標とする。
 (4)指導機関確立の計画 すべての地区委員会が、五人以上の常勤の常任委員と充実した指導能力をもつように、これを保障する財政をふくめて強化することをはじめ、各級の指導機関の確立、強化の仕事を計画的にすすめる。支部も、組織活動改善の方針を生かした指導機関と指導体制の確立を目標とする。

 全党が、三年後の第十三回党大会をめざして党建設に全力をあげ、この計画を実現するならば、日本共産党が日本人民の闘争の各分野でその指導的力量をさらに飛躍的に高め、七〇年代の歴史的事業の達成にむかって、新しい巨大な前進をかちとることができることは確実である。

 二十四、【党の国際活動】 わが党は、これまでの党大会決定にくりかえし定式化されているように、国際共産主義運動のなかで、他党と重要な問題で意見の相違があっても、その党がわが党と日本の民主運動にたいし干渉や攻撃をおこなわないかぎり、兄弟党間の関係を発展させ、共通の敵にたいし、一致点にもとづいて共同のたたかいをすすめるために努力するということを国際活動の基本態度としてきた。
 この立場にもとづき、この三年間、一連の諸党と二党会談をおこなってきた。
 とくに一九七一年の宮本委員長を団長とするわが党代表団のベトナム、ルーマニア、ソ連、イタリアの四ヵ国訪問とスペイン共産党をふくむ五つの党との会談、本年八月、不破書記局長を団長とする代表団のフランス訪問は、それぞれ重要な意義をもった。その他、この期間に一連の諸党と、訪問先やわが国でそれぞれ会談をおこなった。また、一連の社会主義国や資本主義国の党大会およびチリ共産党創立五十周年記念集会に代表団を派遣した。
 これらの会談や訪問をつうじて、多くの党とのあいだで、各国共産党の自主独立の原則をはじめ、国際共産主義運動の団結の基準や意見の相違があるなかでの団結回復の方向などについて、基本的な合意が確認されたことは、わが党の国際路線の正しさを裏書きした。とくにルーマニア共産党およびスペイン共産党との会談で、反党分派の育成、支持をふくめ、他国の党にたいするあらゆる干渉に終止符をうつことが、国際共産主義運動の団結の前提として確認され、このことがそれぞれの共同コミュニケで明確に宣言されたことは、国際的な統一と団結の事業への貴重な貢献となるものであった。
 わが党は、これらの国際活動のなかで、帝国主義と反帝勢力の国際的対決の焦点となった、アメリカ帝国主義のベトナム侵略戦争に反対するたたかいの前進とそのための世界の反帝勢力の国際統一行動の強化のために奮闘した。わが党は、一九六八年に五大陸の反帝民主勢力の国際会議を提唱したのにつづいて、国際統一行動の具体化の当面の形態として、ベトナム人民の代表も参加できる反帝民主勢力のレベルでの国際会議の開催のために努力してきた。とくに、一九七一年の宮本委員長を団長とするわが党代表団の四国訪問と五党との会談、および訪日したフランス共産党代表団との会談などでは、ベトナム支援の国際統一戦線の重要性、そのための国際会議の効果的形態を探究する必要があることなど、ベトナム問題をめぐる基本点で、これらの諸党とのあいだで合意が達成された。その後一九七二年二月にベトナム人民支援のパリ世界集会、またローマ集会が開催されたことは、わが党の努力の一つの結実であった。
 また党は党創立五十周年を記念して、中央委員会付属社会科学研究所主催の国際理論会議を東京で開催した。これには、イタリア、イギリス、オーストラリア、スペイン、フランス共産党の代表、西ドイツのマルクス主義調査研究所の代表、オブザーバーとしアメリカ共産党代表が参加した。この会議は、高度に発達した資本主義諸国の党のたたかいの理論的成果を交流するうえで、きわめて有益なものであった。この国際理論会議が、各党は自主独立の党であり、たがいに自分の意見をおしつけてはならないという基本的態度にもとづいて運営されたことは、会議の成功を保障した重要な条件となった。
 わが党は、こうして兄弟諸党との関係を発展させる努力をはらうと同時に、わが党と日本の民主運動にたいする不当な大国主義的干渉やこれに追従する反党集団のかく乱活動にたいしては、ひきつづき原則的なたたかいをおこなってきた。
 わが党はこの間、「日中問題と日本共産党」、「大国主義的干渉者の新たな破たん――〝社会主義〟を看板にした植民地主義」など、中国の干渉者にたいする反論を発表した。またわが党創立五十周年にさいし発表されたソ連の三つの論文が、フルシチョフらのわが党への干渉を正当化しようとこころみていることにたいしても、論文「黙過できない重大な歪曲――わが党の歴史をめぐるソ連の三論文について」で原則的な反論をくわえ、かつ、今日の日ソ両党関係の真の改善を妨げているものが、フルシチョフ当時の「プラウダ」でのわが国の反党分子志賀一派の分派活動への激励が、今日なお公然と訂正されていないで、反党分子の活動に利用されているところにあることをかさねて指摘した。ニクソンの訪中、訪ソに関連して国際共産主義運動や国際民主運動でふたたびつよまった各種のアメリカ帝国主義美化論にたいしても、わが党は「ニクソンとアメリカ帝国主義」、「米中共同声明とニクソン美化論の新段階」などを発表し、ニクソンの世界戦略の意図を詳細に暴露するとともに、ニクソ美化論、免罪論の全面的批判をおこなった。
 第十一回党大会以後、わが党は、国際共産主義運動の歴史にもかかわる重要な問題として、ユーゴスラビア問題を研究した。この研究の成果は、「日本共産党の五十年」のなかであきらかにしたが、わが党は、この結論にもとづいて、一九七二年、ユーゴスラビア共産主義者同盟の招待によって研究代表団をユーゴスラビアに派遣し、研究を深めるなど、ユーゴスラビア共産主義者同盟との関係を発展させている。
 この三年間のわが党の国際活動は、国際情勢の複雑な展開のなかで、わが党の国際路線の正しさを証明したものであり、日本の現実政治を積極的に動かす党へのわが党の躍進にも裏づけられて、国際的な舞台でも、わが党の活動の重要性はいよいよ大きくなっている。
 国際共産主義運動の現状は、第十一回党大会が提起した党の国際的任務が、ひきつづき重要な意義をもつことをしめしている。党は、つぎの諸点を重視しつつ、この任務の遂行にあたらなければならない。
 第一に、日本の革命運動に全責任をおうわが党が、日本革命の前進と成功のために奮闘することは、アジアからアメリカ帝国主義の侵略と民族的抑圧のもっとも重要な拠点をとりのぞき、日本軍国主義の全面復活の危険を根絶して、アジアと世界の平和と進歩に貢献するという点でも、高度に発達した資本主義国における人民革命の勝利として世界の力関係の変革に寄与する点でも、わが党がになっている最大の国際的責務である。
 第二に、アメリカ帝国主義に反対するベトナム、ラオス、カンボジア人民の闘争、軍事クーデターに反対し、民主主義と自由をまもるチリ人民の闘争との連帯をつとめることである。さらに、アメリカ帝国主義の戦争と侵略に反対する闘争はもちろん、日本独占資本の経済侵略や新植民地主義に反対する闘争をふくめて、世界の他の地域で展開されつつある諸国人民の反帝平和、独立の闘争と正しい基礎のうえでの連帯をつよめなければならない。
 第三に、国際共産主義運動における兄弟党間の関係の基準を堅持し、その前提のもとに兄弟諸党との連帯をいっそう発展させることである。国際会議をひらいて論争問題を解決し、国際共産主義運動の統一と団結をかちとる条件のない今日の状況のもとでは、二党間の会談を重視し、重要な諸問題について意見と情報を交換しあい、経験を交流することが重要である。
 とくに、アメリカ帝国主義との対決の前線にたっているベトナムの党をはじめアジアの諸党との連帯とともに、発達した資本主義諸国の党との関係をひきつづき重視する必要がある。発達した資本主義国の諸党とわが党とは、多くの共通の課題をもっており、これらの諸党と二党会談、その他の方法によって関係を発展させ、共通の任務にもとづく共同闘争を前進させることは、双方にとって有益なことであるだけでなく、国際共産主義運動の前進的発展にも資することである。
 第四に、現在国際共産主義運動の団結を回復するための最大の障害となっている大国主義的干渉を排除するために、ひきつづき努力することである。
 真に国際共産主義運動の団結をめざすためには、なによりもまず、今日の国際共産主義運動にはいかなる指導的中心も必要でなく、どのような形態でも他党の内部問題への干渉を許さず、他党の分派の存在と活動を支持、育成しないことは、すべての党の第一義的な国際的責務である。他党の分派への支持をふくめ、時代錯誤の指導党思想にもとづく大国主義的干渉に終止符をうたなければならない。
 第五に、マルクス・レーニン主義の諸原則と科学的社会主義の大義をあらゆる歪曲から擁護する闘争を、国際的にも国内的にも積極的に遂行することである。大国主義的干渉と軍事的対決の可能性までふくんだ中の対立、社会主義諸国におきた一連の否定的現象は、社会主義の理念をいちじるしく失墜させた。また、アメリカ帝国主義美化論や「反米反ソ統一戦線」などに典型的にあらわれた国際政治における両極の日和見主義の誤りも明白な歴史的審判にもかかわらず、まだ清算されていない。大国主義とあらゆる種類の日和見主義に反対し、科学的社会主義の大義を擁護する闘争は、ひきつづくわが党の重要な任務である。
 わが党は、党綱領の路線にもとづいて、日本の国内において七〇年代の政治革新の事業と日本人民の解放闘争の勝利のために奮闘してその歴史的責務をはたすとともに、国際的にも、プロレタリア国際主義と真の愛国主義とを統一した自主独立の立場を堅持し、党と日本人民に課せられた責務にこたえるために、あらゆる努力をつくさなければならない。