日本共産党資料館

日本共産党第十六回大会決議

一九八二年七月三十一日採択


第一章 世界情勢と日本共産党の国際的任務
第二章 日本の国内情勢と国政革新の諸任務
第三章 日本共産党の歴史的使命と党活動の諸課題

  第一章 世界情勢と日本共産党の国際的任務

 一、〔深まる世界資本主義の危機〕

 第十五回党大会は、世界資本主義が今日直面している危機「第一次世界大戦および第二次世界大戦前後の危機にも匹敵するような、政治・経済の全般にわたる深刻な歴史的危機」として特徴づけた。それから二年間余の国際情勢の動きは、この見通しの正しさを、多くの事実をもって証明してきた。
 資本主義世界経済は、第二次石油危機をへて、一九八〇年以後、世界的な不況の進行のなかにある。世界貿易はおちこみ、過剰生産も表面化して、とくにアメリカや西ヨーロッパでは失業者が激増し、戦後最悪の水準をすでに突破するにいたった。この不況は、多くの国ぐにで、はげしいインフレーションや財政破たんと結びついており、そのことが、経済危機をいっそう深刻なものとしている。こうした事態をまえにして、各方面から、〝一九三〇年代の世界的危機の再現〟を警告する声が、あげられている。
 世界の独占資本主義は、この数十年来、国家独占資本主義の体制と経済への政府の介入を体系化したケインズ的政策を資本主義経済を維持する最大の支柱としてきたが、今日の経済危機のなかで、アメリカ、イギリス、日本など独占資本主義国の指導層自身が、従来の政策の破産を公然と認めざるをえなくなっている。しかし、それにかわる新しい有効な政策も指導理論もみいだされず、危機のなかでの政策的手づまりは、経済危機の悪循環をいっそうはげしくしている。先進国首脳会議(サミット)は、資本主義諸大国が協力すれば危機打開が可能になるというふれこみで、一九七五年に発足したが、いらい八年、その時どきのごく部分的な政策「調整」以外には、本格的な危機対策はついになに一つ講じることができなかった。発足時八百五十万だった首脳会議参加七ヵ国の失業者数合計も、今日ではついに二千万人を突破するにいたった。
 アメリカ中心の古い国際経済秩序が、一九七〇年代の初めに、国際通貨危機や石油危機のなかで崩壊しはじめたことは、資本主義世界経済の危機のもっとも重要な側面の一つをなしている。独占資本主義諸国は、アメリカを中心に、この国際秩序の再建にあらゆる努力を傾けてきたが、ここでも思うような成功をおさめることができず、新しい矛盾や対立も表面化してきている。
 日本、アメリカ、ヨーロッパの大企業のあいだの市場争奪戦ははげしさをくわえ、多国籍企業の進出で世界貿易の流れや構造が変化してきたこととも結びついて、アメリカなどの貿易収支を悪化させ、いわゆる〝貿易摩擦〟問題を重大化させてきた。
 世界人口の二分の一をしめるアジア、アフリカ、ラテンアメリカの発展途上国は、多年にわたる植民地支配の遺産が重くのしかかっているうえ、帝国主義・独占資本主義の側から経済的圧迫をいまなおうけつづけ、資本主義世界経済の矛盾の一つの集中点として、その経済的困難は、世界不況のなかでとくに激烈になっている。発展途上国の対外債務(残高)の総額は、一九七一年の八百七十億ドルから八一年の五千二百四十億ドルに、十年間で実に六倍にもふくれあがった。世界銀行の報告は、現在七億五千万人にのぼるこれら諸国の「絶対的貧困」人口が、今世紀末までにさらに一億人も増加することを予測している。
 五月にひらかれた国連環境会議は、大気と海洋の汚染、森林の減少、緑地の砂漠化、人口増加と食糧問題、水不足、飢餓人口の増大、資源の浪費など、地球環境の破壊が、人類の生存にとって破局的な事態にむかってすすんでいることを、するどく警告した。これは、なによりもまず、地球の大きな部分をいまなおその経済的支配下においている世界資本主義にたいする告発である。
「各国の経済主権を侵害するアメリカ主導の国際経済秩序の反動的再編のくわだてに反対し、多国籍企業の活動に民主的規制をくわえ、経済主権の確立と平等・公平を基礎にした新国際経済秩序をうちたてる国際的な闘争」(第十五回党大会決議)を前進させることは、それぞれの国での、独占資本と帝国主義の支配を打破する方向での経済の民主的改革の闘争と同時に、世界各国の人民にとって、いよいよ切実な任務となっている。

 二、〔諸国民を脅かす限定核戦争の計画〕

 世界資本主義の危機の深まりのなかで、アメリカ帝国主義を先頭とした帝国主義・独占資本主義の反動支配層のあいだに、危機からの活路を大規模な軍拡、侵略と戦争の方向にもとめようとする傾向がつよまっていることは、諸国民を核戦争の重大な危険に直面させている。われわれは、一九三〇年代の経済危機が、ファシズムと軍国主義の勢力への合図となり、日本の支配層を中国侵略戦争にかりたてたのをはじめ、第二次世界大戦に道をひらく役割を果たした歴史を、忘れることはできない。
 とくに「強いアメリカ」の再現を旗じるしに登場したアメリカのレーガン政権は、「ソ連の脅威」への対抗という煙幕でその正体をかくしながら、あからさまな「力の政策」を全面的に展開してきた。レーガン政権は、核兵器を中心とした大規模な軍拡をおしすすめるとともに、中東・ペルシャ湾地域、朝鮮半島などへの緊急投入戦力を強化し、さらに、ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラなど中米諸国にたいして、民族主権を頭から無視した介入政策に訴えるなど、戦争と侵略、介入の態勢を強化している。
 レーガンの超タカ派政策の、世界の諸国民にとっての危険性をもっとも鮮明にうきあがらせたのは、レーガンがその現実性をくりかえし明言した限定核戦争の構想である。
 限定核戦争構想は、わが党がかねてから暴露してきたとおり、ソ連との全面核戦争はさけながら、あれこれの地域での侵略目的達成のために核戦争に訴えようという「各個撃破政策の核戦争版」(第十四回党大会報告)であり、この十年来、アメリカ軍部が核戦略の基本にすえてきたものであった。
 レーガン政権が、ベトナム戦争で敗北したのは核兵器を使用しなかったためだという〝反省〟を口にしつつ、この野蛮な核戦争構想をあらためて前面におしたて、ヨーロッパや東アジア(日本をふくむ)でそのための核戦力の増強を急いでいることは、重大である。そこには、核兵器を威かくの手段にとどめず、〝使える核兵器〟すなわち、どんな戦争にでも平気で使える実戦兵器化してゆこうとする凶悪な意図が、はたらいており、全面核戦争に拡大する重大な危険もはらまれている。
 レーガン政権による限定核戦争計画の強調は、北大西洋条約や日米安保条約など、アメリカを盟主とする軍事ブロックの真の役割をあかるみにだし、〝核のカサ〟論の欺まんを崩壊させることとなった。これらの軍事ブロックは、それに参加している諸国民の安全のための〝防壁〟ではなく、アメリカの安全のために同盟諸国を核の戦場とする民族死滅の軛にほかならない。しかし、レーガン政権は、軍事ブロックの侵略的強化を「力の政策」の重要な柱の一つとして、限定核戦争に反対する諸国民の声を無視し、同盟諸国にたいしても、米軍主導下の共同作戦態勢の強化と新たな軍拡を要求し、巡航ミサイルの日本をふくむ海外配備をはじめ戦域核戦力の増強を計画的におしすすめている。
 レーガン政権は、国連その他の軍縮討議でも、核兵器使用禁止決議をはじめ、その限定核戦争計画の障害となる軍縮措置にたいしては、日本をふくむ同盟諸国とともに一貫して反対と妨害の態度をとっている。第二回国連軍縮特別総会が軍縮にかんする実質的合意文書をなに一つ作成できず、失敗のうちに終わった主要な原因も、レーガン政権とその同盟諸国のこうした態度にあった。
 レーガン政権のもとで、限定核戦争は、世界のいかなる地域での衝突からもぼっ発しうるきわめて現実的な危険となってきた。この計画に反対し、限定核戦争の危険な構想の発動を未然に防止すること、さらに核戦争の可能性を地球上から一掃する核兵器の全面禁止をかちとることは、世界の諸国民にとって緊急の中心課題、文字どおり諸民族の存亡にかかわる死活問題となっている。
 同時に、今日の緊張した国際情勢下では、国際紛争を解決するために「力の政策」に訴えようとするあらゆるあらわれに反対し、国際紛争の平和的解決の立場を堅持することが、とくに重要である。
 レーガン政権の直接間接の支援のもとにおこなわれたイスラエルのレバノン侵攻戦争は、許しがたい侵略行為として、きびしく糾弾されなければならない。わが党は、これまで一貫してイスラエルのたびかさなる侵略行動をきびしく批判し、イスラエル軍のアラブ占領地域からの全面的撤退、2パレスチナ・アラブ人の民族的自決権の承認と保障を、中東問題解決の基本として主張してきた。しかし、一部のイスラエル抹殺論にくみするものでないことも、わが党の一貫した態度である。イスラエルの侵略の不当性を糾弾するうえでも、また中東問題の正しい発展のためにも、PLO(パレスチナ解放機構)がイスラエルの存在を承認するという態度をひろく国際的に明確にすることを、わが党はのぞむものである。
 イラン・イラク戦争、イギリス、アルゼンチン間のフォークランド(マルビナス)戦争など、領土紛争に起因する戦争が現実にたたかわれてきている。こうした戦争は、二国間の局地的な戦争であっても、他の大国の介入によってより大規模な戦争に転化する可能性を内包しており、事情のいかんによっては、限定核戦争への引き金となる危険性も絶無とはいえない。領土紛争は、その帰属についての当事国の主張に、どのような正当な根拠があっても、民族解放闘争とは次元を異にする独立国間の国際紛争であり、話し合いによる平和的解決の原則をつらぬくことが、世界平和に貢献する唯一正確な道である。

 三、〔世界は変わりつつある〕

 今日の世界の大局的な力関係は、第一次世界大戦や第二次世界大戦が準備された当時とは、根本的に異なっている。
 帝国主義・独占資本主義が、地球全体を支配下におさめていたのは、すでに六十年以上も前の過去の話となった。現在では、人口で世界の三分の一をしめる国ぐにが、資本主義の体制から離れて社会主義の道にふみだし、さらに、かつての植民地・従属国のほとんどが植民地支配の軛を断ちきって政治的独立をかちとった。その主力は、一部の社会主義国とともに非同盟諸国首脳会議に参加し、世界政治のうえで、世界平和と民族自決、核兵器禁止と軍事ブロック解体をかかげる有力な潮流を形づくっている。
アメリカ、日本、西ヨーロッパの独占資本主義国は、経済的には、世界の工業生産力の半分以上をにぎっているとはいえ、人口面では、世界の六分の一を代表するにすぎない。国連でも、社会主義国と非同盟諸国が約三分の二の議席をしめるようになり、アメリカを中心とする「西側諸国」は、数のうえでも、その帝国主義的な諸政策を国連におしつける力を大きく後退させた。
 独占資本主義諸国の国内においても、その支配体制や帝国主義と反動の諸政策をゆるがす労働者階級と人民の闘争が、新たなたかまりをみせている。
 昨年、西ヨーロッパのフランスとギリシャで、選挙での審判の結果、あいついで革新政権が成立したことは、国際的にも重要な意義をもつ出来事であった。とくに、フランス社会党は、戦後ながくとりつづけてきた反共連合路線と手をきって、この十年来、共産党との統一戦線政策を維持してきたことで、ヨーロッパの社会民主主義勢力のなかでも、特別の地位をしめている党である。この党が、複雑な経過と矛盾をもちながらも、共産党との統一戦線で大統領選挙に勝利し、共産党も入閣した連合内閣が三十五年ぶりにフランスに成立したことは、その政策面には、「軍事力均衡」論にたった核武装論など一連の重要な問題点をふくんでいるとはいえ、発達した資本主義国における国政革新と民主主義、社会主義の事業への共通の教訓をふくんでいる。
 さらに、昨年来の重大な変化は、レーガン政権による限定核戦争態勢の強化が、西ヨーロッパのNATO諸国の国民のあいだに、つよい不安と抗議をよびおこし、〝核のカサ〟論の欺まんを自覚し、核の恐怖の均衡に根本的に反対する反核運動が、軍事同盟の基盤をゆるがすような広範な発展をみせたことである。アメリカにおいても、レーガンの政策は、軍拡の重荷をになわされる国民と政府のあいだにも、あるいはこれまでアメリカの核戦争政策を支持推進してきた指導層のあいだにも、さまざまな抵抗と亀裂を生みつつある。
 大局的には、世界はあきらかに平和と進歩の方向に大きく変化しつつあり、人民の闘争によって、諸国民を死滅の破局にみちびく帝国主義者の核戦争計画を阻止できる客観的諸条件は、存在し成長している。

 四、〔社会主義の国際的役割と大国主義の害悪〕

 今日、世界の三大革命勢力―社会主義諸国、資本主義諸国の革命運動、民族解放運動が、アメリカ帝国主義を先頭とする帝国主義と反動の勢力にたいするたたかいで、正しい前進と連帯をはかることは、世界の平和のためにも、社会進歩のためにも、いよいよ重要になっている。この点で状況を複雑にしているのは、社会主義諸国と世界の共産主義運動のなかに、大国主義、覇権主義の潮流がつよまっていることである。
 一九一七年にロシアで最初の社会主義国が誕生していらい、社会主義諸国は、全体として、人類史を平和と進歩の方向に前進させる積極的な原動力の一つとなってきた。半世紀こえる世界史は、ファシズムと軍国主義の侵略ブロックを撃破した第二次世界大戦でのソ連の役割、アメリカ帝国主義の各個撃破政策をうちやぶったベトナム人民の抗米救国闘争の勝利など、帝国主義の侵略から諸国民の平和と独立を擁護する事業にたいする社会主義の多くの貢献を記録してきた。また、貧困をしらない社会をめざす経済建設の分野でも、おくれた経済条件から出発した歴史的制約や一連の政策的逸脱からの影響をまだまぬがれえないとはいえ、社会主義は、人間による人間の搾取という資本主義的原理の社会生活からの一掃、充実した社会保障制度の確立など、少なからぬ先進的な成果を世界にしめしてきた。とくに、社会主義の諸原則をロシアの歴史的情勢に具体化する精神で、レーニンがおこなった探究は、科学性と革命的創造性にみちたもので、今日なお、理論的、実践的な意義をもつ、科学的社会主義への大きな寄与となっている。
 問題は、今日、社会主義が、ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカに十数ヵ国をかぞえ、国際政治にいちだんと大きな影響力をもつ世界的な体制となった情勢のもとで、社会主義大国に大国主義、覇権主義が肥大化し、それが、社会主義の事業とその威信をそこない、反帝勢力の闘争と団結をさまたげる国際的な逆流または逸脱となっていることにある。
 第十五回党大会決定は、この国際的逆流に特別の注意をむけたが、それ以後の二年間の経過は、この問題を世界の反帝勢力にとっていよいよ重大なものとするにいたった。
 第一は、アフガニスタン、ポーランドの事態にかんするソ連の干渉行為である。
 アフガニスタンにたいするソ連の干渉戦争は、文字どおり植民地戦争の〝泥沼化〟といった様相を呈し、国連総会での百十六対二十三という最近の表決もしめしているように、圧倒的な国際世論からつよい非難をうけつづけている。昨年十二月に強行されたポーランドの軍政樹立は、社会主義の原則とは絶対に両立しえない暴挙であるが、これもまた、一九八〇年夏いらいの民主的改革の運動を敵視し、事態を自分の許すわく内にひきもどす目的で、圧力をくわえつづけてきたソ連の大国主義的干渉と結びついた反民主的、反民族的な所産である。
 わが党が指摘してきたように、「連帯」の運動の一部にあらわれたストライキ乱発の傾向や反社会主義的潮流との結びつきにたいして、これを克服する批判と闘争は、当然の必要な課題だったが、そのことは、社会主義国での軍事政権樹立の暴挙を正当化するものではない。
 チェコスロバキアへの五ヵ国軍隊の侵入をふくめ、一連の民族自決権じゅうりんの根底にあるのは、社会主義の言葉で合理化できないソ連中心の〝勢力圏〟思想である。
 大国主義の弁護者たちは、その覇権行為の正当化のために、「民族解放闘争への援助」とか、国際問題における「階級的政策」といった議論をもちだしているが、帝国主義の側からの将来の侵略を防止するという口実で、他国を自分の覇権のもとにおさめるというのは、帝国主義者の世界分割の論理のくりかえしにほかならない。労働者階級の立場にたった真の国際主義は、こういう干渉の論理の一掃こそを要求している。
 第二に、世界平和のための闘争にかんする問題についてである。
 現在おこなわれている米ソ間の核軍縮交渉で、米ソ両国政府はたがいに一連の提案をおこなっているが、それはどちら「核抑止力」論と「軍事均衡」論の立場からあれこれの核兵器の凍結〟〝削減〟を内容としたもので、核軍縮の最優先課題である核兵器全面禁止への志向が欠落している点では、まったく共通の根本的盲点をもっている。核保有国間こうした交渉は、全体として、核兵器全面禁止をもとめる世界の声を真剣に重視してこそ有意義な結果につながりうるであろう。
 ソ連の「軍事力均衡」論の実践的な内容は、それが、米ソの核の均衡の維持や軍事ブロック間の相互信頼措置など、核軍拡競争と軍事ブロックの対抗という現状を維持したもとでの部分的措置を世界平和の中心課題にして、核兵器の全面禁止、すべての軍事ブロックの解体などの基本課題をなにかの場合、ときに口にすることがあっても事実上なあげしてしまうところにある。
 しかも、もっとも重大な問題は、ソ連指導部が、こうした立場を自分の対外政策の基調にするだけでなく、〝平和綱領〟の名のもとに、世界の平和、民主運動にたいしても、それへの支持をつよくもとめてきたことである。
 わが党は、ソ連共産党第二十六回大会の「平和綱領」なるものへのわが党の意見をもとめたソ連指導部の書簡にたいす昨年六月の返書で、核兵器全面禁止や軍事同盟同時解消などのスローガンが、一九七六年の第二十五回党大会以後、ソ連の対外政策の基本課題から姿を消したことを指摘し、これらの課題を世界平和のための第一義的課題として追求すべきことを提起した。ソ連指導部は、これにこたえた昨年七月の書簡のなかで、日本共産党が提起した「平和のための闘争の諸課題」は、「われわれがずっと以前から提起しているスローガンと原則的に同じもの」だと言明した。この言明がまじめなものであるならば、ソ連指導部には、核兵器全面禁止や軍事ブロック解消問題で、社会主義国にふさわしいイニシアチブをすすんでとり、自分たちが、軍事ブロックや「核抑止力」に固執する帝国主義者とは別個の道にたっていることを、行動でしめす当然の責任がある。
 第三に、各国共産党の共通の国際雑誌『平和と社会主義の諸問題』を、参加諸党の同権と平等という創刊の原則をふみにじって、ソ連の対外政策の宣伝機関にかえてきたのも、ソ連のヘゲモニー主義の重大なあらわれである。この雑誌では、国際的に意見の相違のある問題では、ソ連共産党とそれに同調する党の見解だけが共産主義運動の〝正統〟の立場とされ、それに同調しない党の見解はまったく誌面から排除されている。「反ソ主義」との闘争ということで、ソ連へのいっさいの批判を封殺するだけでなく、それを帝国主義のイデオロギーにくみするものとして、悪罵しつづけている。昨年十一月の党代表者会議で、わが党をふくむ一連の党は、この点の是正をつよく要求したが、ソ連と編集当局はこれを無視し、『平社』誌とその編集局のソ連の宣伝機関化は、いっそ極端なものとなった。『平社』誌をめぐるソ連指導部やその追従者の最近の議論のなかでは、ソ連は「地上の平和のとりで」であり、世界のあらゆる闘争の「中心、前衛」であるとか、ソ連の対外政策を支持することは『平社』誌の当然の任務であるとかのソ連中心主義の主張が、あからさまな形でもちだされるようになってきた。
 『平社』誌とその編集機関は、いまや、ソ連指導部を盟主とし、その路線のもとに世界の共産党を結集するという覇権主義の道具に堕している。世界の共産主義運動におけるその有害な役割は、まさに、かつてスターリンを先頭とするソ連指導部の国際的干渉の手段であった、コミンフォルムを再現するものとなっており、その解散提案は、科学的社会主義の大義にもとづく正しい国際的イニシアチブである。
 第四に、「文化大革命」いらい、毛沢東路線の対外的おしつけを旗とした中国共産党の国際活動にあらわれた大国主義、干渉主義も、世界の共産主義運動と反帝諸勢力の国際闘争にきわめて大きな損害をあたえてきた。
 中国共産党は、昨年の六中総いらい、国内問題については、「文化大革命」時の誤りについて一定の総括をおこない、それにもとづく路線転換にも着手しているが、他国の革命運動にたいする干渉行動やアメリカ帝国主義との同盟政策などの国際活動上の誤りについては、明確な総括も転換もおこなっていない。とくにこの干渉主義が、「鉄砲から政権は生まれる」という暴力革命唯一論のもちこみや「四つの敵」論のおしつけ、反党分派を育成しての日本共産党内のかく乱、日米軍事同盟美化論による反共右派勢力への激励など、日本の革新運動におよぼした害悪はきわめて大きなものがある。
 ことしは、日中国交回復の十周年にあたる。この間の経済・文化の交流は、両国間の人民的な交流にも一定の積極的な意義をもってきたが、自民党政府や財界など日本の反動的支配層が日中関係を推進してきた基本的立場は、日米軍事同盟を歓迎する中国側の態度を前提にしたもので、それは、軍国主義の復活強化の新たなくわだてやアジア政策の反動的な展開に日中関係を利用しようとする政治的意図とも結びついている。
 日本共産党は、中国の現指導部が、「文化大革命」の誤りを真に道理にもとづいて清算しようとするなら、国際活動における干渉主義の誤りの総括は、避けるわけにゆかない問題であることを指摘するものである。

 五、〔日本共産党の国際的任務〕

 日本共産党は、核戦争防止と核兵器全面禁止、すべての軍事ブロックの解体、諸国民の民族自決権の擁護の旗を高くかかげ、帝国主義、覇権主義のあらゆる傾向に反対し、日本と世界の人民の闘争の前進のために全力をつくしてきたが、国際的な活動と闘争のこの分野では、とくにつぎの諸点を重視してゆく必要がある。
 第一に、アメリカ帝国主義が準備している限定核戦争の構想は、日本国民にとっても、世界の諸国民にとっても、民族死滅の破局的な惨禍につながるものであり、その危険を未然に防止して世界の平和を擁護することは、国際分野における最優先の任務である。
 日本は、アメリカ帝国主義の核戦争計画の極東における前線拠点にくみこまれており、日本の国民にとっては、核戦争防止、核兵器全面禁止をめざす国際的闘争と、日米安保条約による日本の核基地化や自民党政府のアメリカ核戦略への加担に反対する国内での闘争とを、統一的に発展させることは、特別に重要である。とくに政府・自民党や公明、民社の反共諸党が、日米共同作戦態勢下の大軍拡という危険な道をすすみながら、国連特別総会むけに軍縮をうんぬんすることでその正体をおおいかくすという欺まんに訴えている今日、アメリカの核戦略の一翼をになう自民党政府の政策と行動に反対する闘争は、日本国民の核戦争反対のねがいを現実に生かすためのかなめとなっている。
 核戦争の防止とその危険の根絶をめざすとの闘争のなかで、核兵器による恐怖の均衡を中心とする「軍事力の均衡」が戦争を抑止しているという誤った理論とその影響の克服に、さらに大きな力をそそがなければならない。「均衡から縮小へ」が核軍縮の現実路線だという議論もあるが、現実にすすめられてきたのは、「縮小」どころか、たがいに「均衡」の達成をめざすという口実で、核軍備のとめどもない増強に拍車をかける以外のなにものでもなかった。
 核戦争防止のための闘争では、わが党が昨年六月に発表した論文「真の平和綱領のために」で強調したように、諸国民の要求と運動を、「軍事力均衡」維持のわく内にとどめることなく、核兵器全面禁止を最優先緊急の課題とし、国際的世論をたかめ、ひろげる先頭にたつことが、なによりも大切である。もちろん、核軍縮の部分的措置でも、核軍拡競争を合法化するようなものでなく、真に核戦争の防止、核兵器全面禁止に役立つ効果的な措置は重要であり、核兵器使用禁止協定の締結は、そのなかでももっとも重視すべき課題である。この協定の締結促進をもとめる国連決議にたいし、ソ連が昨年、わが党の批判した「棄権」の態度をあらためて賛成にまわったことは、社会主義国としてはおそまきながら、当然のことであった。
 わが党は、核兵器全面禁止の課題を、世界平和のための国際的闘争の中心課題とし、それにもとづく国際的な連帯を広範に発展させることを、日本国民および世界の諸国民と平和をねがうすべての諸組織につよくよびかける。これは、平和の要求と運動が、核軍拡競争の悪循環を断ちきる力と方向をもって真に前進する道であり、核戦争の危険から人類の生存と繁栄をまもる最優先の国際的任務である。
 第二に、各民族が自国の進路と運命を自主的に選択・決定する民族自決権を擁護し、これにたいするいかなる侵害にも反対する闘争である。これは、科学的社会主義の大義のきわめて厳粛な要求であると同時に、国際平和の安定した体系の不可欠な基礎をなすものである。
 わが党は、アフガニスタン、ポーランドにおける、ソ連による民族自決権の侵犯や干渉を、きびしく糾弾してきた。しかし、現在の世界で、諸国民の民族自決権にたいする最大の敵対者となっているのは、アフガニスタン問題などでソ連の主権侵犯をおおいに告発しているアメリカ帝国主義自身である。日本国民自身、日米軍事同盟のもとで、戦争に参加するか否かの決定権まで事実上アメリカににぎられ、その国土を、アジア諸国民の民族自決権を侵犯するアメリカの侵略と干渉の基地にされている。アメリカが、中南米諸国はもちろん、彼らが勝手に帝国主義の〝勢力圏〟にかぞえいれている地球上の広範な地域で、自分たちに都合のよい政治制度や社会制度を他国民におしつけるために、テロや謀略もふくめ、あらゆる干渉手段に訴えてきたことは、明白な歴史的事実である。
 この問題で、一方の側の干渉を弁護しつつ、他方の側の千渉を非難する立場は、なんら道理ある一貫性をもたず、結局は、帝国主義あるいは覇権主義の弁護人の立場に堕するだけである。世界の平和と社会進歩をめざす事業が、真に諸国民の理解と共感を期待しうる正義の立場を堅持するためには、すべての民族の民族自決権を尊重し、帝国主義であれ、社会主義大国の覇権主義であれ、これにたいするいかなる勢力の侵害も許されないとする見地をつらぬき、これを国際連帯の一貫した前提としなければならない。
 第三に、世界の共産主義運動における大国主義、覇権主義のあらゆるあらわれと断固としてたたかうことである。
 日本共産党は、大国主義、覇権主義に反対する国際論争を、この二十年来、事実と道理にもとづき、また共産主義運動の原則と節度をまもったやり方で、もっとも積極的に展開してきた。反党分派主義を育成しての干渉や、『平社』誌のソ連の宣伝機関化の問題などにたいしても、一貫した原則的な闘争をおこなってきた。
 本年三月の第八回中央委員会総会がおこなった「若干の国際問題にかんする決議」は、こんどの活動の指針として、とくに重要な意義をもっている。
 わが党は、こんごとも、共産党・労働者党にかぎらず、自主的立場にたつあらゆる進歩的組織との友好・連帯の強化につとめるとともに、若干の重要な問題で意見の相違のある諸党とも、社会主義国の党であろうと資本主義国の党であるとを問わず、日本の党と民主運動に干渉や攻撃をくわえないかぎり、関係を発展させるという基本態度を堅持してゆく。同時に、世界の共産主義運動全体に損害をあたえる大国主義とその追従者の誤った立場、政策、行動にたいしては、ひきつづき、その克服のための努力を積極的につづける。日本共産党が党創立六十周年を記念して本年七月上旬にひらいた国際理論シンポジウムは、すべての参加者の平等と自主的立場の完全な尊重にもとづく自由な意見交換など、民主的な会議運営をつうじて、自主性と同権にもとづく真に国際主義的な国際関係を確立する事業への新たな貢献となった。今日、世界資本主義の危機は、帝国主義と独占資本主義の体制のわく内では今日の世界的な諸矛盾の安定した解決はありえないことをますますあきらかにし、「世界史の発展方向として帝国主義の滅亡と社会主義の勝利は不可避である」という党綱領の命題は、大局的にはその確証をえつつある。社会主義の事業を傷つけている大国主義、覇権主義は、社会主義の必然的産物ではなく、本質的には、科学的社会主義の原則からの逸脱と結びついた、前時代の遺産である。世界のいかなる国でも、社会主義の事業は、その国に生まれたあれこれの逸脱を、科学的社会主義の諸原則にてらして克服するならば、労働者階級と人民の支持と共感をえて前進をとげある可能性と展望をもっている。世界に労働者階級と人民が存在するかぎり、その過程がどのような複雑な経過をたどろうとも、大国主義、覇権主義の克服と社会主義の勝利は、世界史の確実な発展方向である。
 第四に、自民党政府とその追従勢力がおしすすめている対米従属下の軍国主義と帝国主義の道と対決して、サンフランシスコ体制の打破をめざし安保条約を廃棄した非核・非同盟・中立の道をかちとる国民的事業の先頭にたって奮闘することである。新しい日本が非同盟・中立の国際的潮流にくわわることは、新国際経済秩序の確立、核兵器禁止、軍事同盟解消、集団安全保障体制実現への重要な国際的貢献となるであろう。
 日本共産党は、科学的社会主義の旗を確固としてかかげ、世界の三大革命勢力のそれぞれの新しい前進と勝利をつうじて、社会主義の事業のほんらいの優越性と生命力が発揮される新しい時代に近づいてゆく、人類史の壮大な展望をあきらかにしつつ、日本の進歩と変革の事業、当面の歴史的任務である国政革新の事業の勝利のために、国民の先頭にたって奮闘するものである。

  第二章 日本の国内情勢と国政革新の諸任務

 一、〔独占資本と自民党は日本をどこへみちびこうとしているか〕

 資本主義の世界的な危機とともに、日本の対米従属的な独占資本主義も、その構造的な危機を深め、日本とアメリカや西ヨーロッパ諸国などとの経済的な対立もするどくなっている。そのなかで重要なことは、経済的地位と発言権を国際的にもいちだんと強化した日本独占資本が、その支配体制を擁護し対外進出をおしすすめる基本戦略として、対米従属関係の弱化と解消の方向ではなく、世界の帝国主義・独占資本主義の陣営のなかで、アメリカ帝国主義の目下の同盟者の役割経済・政治・軍事の全面でより攻勢的に果たす方向をいっそう強引に推進しつつあることである。
 自民党政府と独占資本は、「西側一員」論をふりかざしながら、日本の国内ではもちろん、国際的にも、反帝・平和・進歩の全勢力に対抗する反動支配体制の極東における主柱の役割を買ってでており、その反動政策を、つぎの諸点を重点方向として展開している。
 第一に、自民党政府は、レーガンの限定核戦争構想にたいし一言の抗議や反対の意思表明もしないばかりか、そのための日本の核基地化を事実上容認し、国連でも核兵器使用禁止決議に反対するなど、限定核戦争構想の具体化に協力・加担する態度をとっている。さらに、〝極東有事〟のさい自衛隊が参戦することを当然の前提として、日本自身が核戦争の一翼をになう日米共同作戦の準備を公然とすすめ、一千の海域の「防衛」分担や三海峡封鎖その他の共同作戦に必要な新鋭装備の大量購入など、核戦争とつながる急ピッチな軍備拡大の道を、つきすすんでいる。この危険な計画への障害を一掃するため、政府・自民党は、これまで軍備拡大の制約とされてきた政府の一連の言明や公約を、つぎつぎと取り払うとともに、戦時に強権を発動できるよう〝有事立法〟の準備をいそぎ、また警察国家の再現をめざす「拘禁二法」の成立、刑法全面改悪、治安立法強化などをたくらんでいる。日米安保条約のNATOなみの〝攻守同盟〟化と並行して、自民党があらためてその推進を決定した憲法改悪は、天皇の元首化をはじめとする国内の政治体制の反動的再編とともに、アメリカの発動する侵略戦争に日本が「西側同盟国」の一員として参戦する計画の、法制上のしあげと位置づけられている。
 第二に、自民党政府は、財政危機のなかで、大企業の利益の擁護と軍備拡大の遂行という二大目的を果たすために、これまで長期にわたる国民的な運動や闘争をも反映して各分野できずかれてきた民主的諸制度をもいっきょにくつがえし、その反動計画を安心して遂行できる財政上、行政上の基盤をきずきあげようとしている。そのために、総理府の一諮問機関にすぎない「臨時行政調査会」を、事実上国会のうえにたつ最高機関扱いし、財界が直接指揮権をにぎって、国民の声も手もとどかないところで、軍拡優先とか福祉切り捨てなど「国策」の根幹を決定するという、ファッショ的な手法に訴えている。
 第三に、政治戦線のうえでは、自民党は、八〇年の衆参同時選挙では、大平首相の急死の追悼選挙となったこともあって、予想外の議席増を果たしたとはいえ、長期的には低落傾向をまぬがれたとはいえず、その力を、公明、民社、新自クなど反共諸党の新与党化で補強し、反動政策の実行と推進の態勢を強化すると同時に、「社公合意」にもとづく社会党の右転落を固定化させ、日本共産党に反共反革新の攻撃を集中して、ひきつづき革新の戦線の分断をはかろうとしている。この反共戦略のもとで、反共分裂主義は、政治闘争のあらゆる分野で、戦争と反動、国民生活破壊の政策をおしすすめる主要な手段となっている。
 日本独占資本と自民党政府の政策と行動は、対米従属下の軍国主義、帝国主義復活について、日本独占資本が、「アメリカ帝国主義の原子戦争計画にわが国をむすびつけ、経済的には帝国主義的特徴をそなえつつ、軍国主義的帝国主義的復活のみちをすすんでいる」と規定した日本共産党綱領およびその後の党大会決定がしめした展望の先見性を実証している。
 日本の独占資本主義は、今日、一般的な意味で経済的に帝国主義段階に属するというだけでなく、資本主義世界第二位の工業生産力をもって、資本輸出国としても、アメリカ、イギリスにつぐ地位をしめるようになり、国際政治のうえでも、アメリカを中心とする世界の帝国主義陣営のもっとも能動的な一員となっている。自民党政府と独占資本が日本と国民をみちびいてきたのは、拡大強化した経済力を基盤に対米従属を断ちきる「自立帝国主義」の道ではなく、党綱領が予見したように、アメリカ帝国主義の核戦争計画に日本をいっそう深くくみこむことで自分たちの軍国主義、帝国主義の野望の実現をはかる道であった。これは、独占資本主義のいっそうの繁栄のために圧倒的多数の国民に新たな経済的困難を強要すると同時に、日本を、核戦争による民族死滅の危険とさえ結びついた、軍国主義とファシズムへの暗黒の時代にひきこもうとするものである。
 戦争と反動、国民的苦難のこの道を阻止し、国政革新によって、主権と安全、民主主義と生活向上を日本国民に約束する日本の新しい進路をきりひらくこと、ここに八〇年代の日本における「二つの道の対決」の中心的な内容がある。

 二、〔三重苦の日本経済〕

 日本独占資本は、「高度成長」期における設備投資と新鋭技術の巨大な累積にくわえ、国家財政の手厚い保護・助成や労働者と下請け中小企業にたいする過酷な搾取などによって、強力な国際競争力を手にし、世界的な不況のもとでも市場争奪戦に一定の優位をしめてきた。国内でも、第一次石油危機ののちにとられた大企業本位の危機打開策、とくに「減「量経営」の名による資本主義的合理化の徹底によって、〝低成長〟下でも十分な収益を確保できる企業態勢をつくりあげ、日本の産業と経済にたいする支配力をいっそう拡大してきた。
 しかし、大企業の高収益や繁栄とは対照的に、日本経済の全体は、やはり資本主義世界経済の危機の一環として、支配層自体も容易に打開の道をみいだせない深刻な危機にみまわれている。それは、長期の不況、財政破たん、貿易摩擦のいわゆる〝三重苦〟に、もっとも集中的にあらわれている。

 (1) 中小企業の倒産(負債一千万円以上)が、月一千件をこえる状況はすでに連続八十二ヵ月におよび、勤労者の消費支出は二年連続して低下し、一九八一年の完全失業者数は統計開始いらいの最高を記録した。すべての指標が、不況のしわよせが国民生活をおしさげ、勤労者の消費不振が不況をさらになびかせるという〝消費不況〟の悪循環をしめしている。
 (2) 自民党政府が七〇年代の「赤字国債」増発政策によってひきおこした国家財政の破たんは、いっそう深刻な状況を呈してきた。鈴木内閣の「財政再建」の公約は完全に失敗し、赤字国債の本格的な償還がはじまる一九八五年度以降の、財政危機の第二段階を目前にして、八一年度補正後二兆九千億円の税収不足が生じ、さらに八二年度、八三年度に十兆円をこえる財源不足という、前例のない破局的事態を迎えるにいたった。
 (3) 一九八一年の日本の貿易収支は、アメリカとのあいだで百三十四億、西ヨーロッパEC諸国とのあいだで百三億の黒字となり、〝貿易摩擦〟は激化し、日本商品のしめだしや日本市場開放への圧力がはげしくなっている。政府は、一連の対米譲歩で事態をきりぬけようとしているが、問題の根源をなす日本の大企業の国際競争力の土台に手をつけないこの種の「調整」策で、解決できる見通しはない。

 この三重苦は、個別の現象ではなく、資本主義の危機のなかで、労働者と国民の犠牲のもとに、大企業奉仕と日米軍事同盟強化・軍拡の路線を追求してきたことによって、つくりだされ激化してきたものである。
 政府・財界は、自分たちがひきおこした危機的な現実にたいするなんらの反省もなしに、「行政改革」はこれからが本番だとして、国鉄、電電公社など経済の公共部門の解体や分割、その事業の内外独占資本への明けわたしという世界にも例をみない計画、社会保障の大幅切り下げ、「過保護」といった中傷的キャンペーンによる農業、中小企業保護政策の切り捨てなどをふくめ、国と地方の全面にわたる行財政全体の反動的再編成と国民生活への多面的な攻撃をいよいよ本格的に強行しようとしている。七月三十日の臨調基本答申の内容は、レーガン政権の要求にそった軍拡を政府の中心的政策に位置づけることをはじめ、国の政策と国家機構を全面的に財界の戦略で反動化しようとする「ファッショ行革」の正体をあからさまにした。さらに、財政破たんの責任と負担を国民に全面転嫁する大増税計画も日程にのぼってきているが、これらが、日本経済の構造的な危機と国民生活の困難を、いよいよ重いものとしてゆくことは、確実である。
 物価問題でも、当面の消費者物価上昇率は、アメリカや多くの西ヨーロッパ諸国にくらべて相対的にゆるい水準で推移しているが、勤労者の家計は、賃金抑制・増税にくわえ、公共料金の連続値上げで大きな打撃をうけている。大企業の独価格の引き上げはすすめられており、世界的なインフレ傾向のなかで、物価上昇がさらにはげしくなる危険は大きい。さらに、安全保障の信頼できる体制を欠いたままの原発大増設計画の推進、大型プロジェクトの強行による環境破壊のいっそうの進行、公害規制の緩和をはじめ「行政簡素化」を口実にした公害行政の骨ぬきと後退など、自民党政府は、国民の環境や安全にたいする国としての最小限の責任さえ、平然と放棄しつつある。
 日本経済の現実も、対米従属的な独占資本主義の体制と自民党政治のわく内では、今日の危機の根本的な打開がもとめられえないことを、具体的に証明している。
 三重苦を克服し、構造的危機を解決して日本経済の再建をはかるためには、経済政策の分野でも、国民生活優先で国内市場の拡大をすすめる方向への転換、軍事費と大企業奉仕の二つの聖域に本格的にメスをいれる財政構造の転換、国民本位の効率的な行政をめざす民主的行政改革、対米追従外交と手をきり非同盟・中立政策にもとづく自主的経済外交への転換など、わが党が提唱してきた内外政策の根本的な転換が、避けることのできない急務となっている。

 三、〔政治戦線の動向と社公合意の破たん〕

 一九八〇年一月の社公合意は、第十五回党大会決定が、きびしく批判したように、八〇年代の政治戦線を体制擁護勢力に有利に展開させるための、革新分断攻撃の重要な布石だった。
 社会党指導部は、当時、公明党などの右傾化に歯止めをかける、野党連合政権をより早く実現するなどの論拠で、その行動を正当化しようとした。この二年間に展開されたわが国の政治戦線の動向は、これらの論拠を事実の論理ですべてうちくだき、社公合意が、反共諸党の新与党化とともに、自民党の政治支配をささえる反革新の道具だて以外のなにものでもなかったことを、全面的に立証した。
 第一に、公明党、民社党、新自由クラブ、社民連など反共諸党の右傾化は、社公合意によって、いっそう拍車をかけられ、その新与党化を事実上完成させた。
 公明党は、社公合意で、共産党排除と安保条約・自衛隊の現状肯定の立場を社会党に認めさせたあと、公式の路線のうえでも、自民党への接近の速度をいっそうはやめた。とくに昨年十二月の第十九回党大会は、1自民党と共通の「西側一員」論を明記して、日米軍事同盟の強化や軍備拡大を積極的に推進する方針をうちだし、2政権構想でも、「外交防衛政策」も「自由主義経済体制」もふくめ、自民党政治の「基本の継承・維持」を公然とうたい、3自民党政権への連合参加という「新たな選択」の可能性をあからさまにとりいれるなど、この数年来の右傾化の総しあげとなった。
 民社党は、安保問題をはじめ、内外政策のほとんどすべての点で、自民党の反動路線を積極的に支持・推進する立場にたち、核持ち込みや軍拡問題〝有事立法〟問題、教科書攻撃、臨調路線の無条件実施などで、自民党以上のタカ派の役割を演じてきた。その根底には、同党指導部の、自民党、財界、自衛隊首脳部などへのいっそうの接近・密着とともに、この党が、同盟に依拠する右翼社会民主主義の党であり、大企業の一体〟の支持を最大の基盤とする政党として、軍需産業をふくむ個別大企業の利害の、政界におけるもっとも直接の代弁者となっているという、根源的な体質がある。新自由クラブは、田中角栄批判など「清潔さ」を売りものにしているが、保守政治内の〝反自民〟派という当初のよそおいを大きく後退させ、自民党の分身としての性格をあらわにし、社民連との一体化など、反共野党や一部の市民勢力を自民党政治に結びつけるうえで独自の役割を果たしつつ、国会内でも、自民党のもっとも忠実な援軍として行動している。
 これら反共諸党は、自民党を補強する形での保補連合政権を政権参加の目標とするとともに、今日の現実政治の場でも、個別問題で自民党との対立が先鋭化することはあっても(選挙制度改革など)、全体としては、日米支配層の八〇年代の反動計画を自民党と共同で推進する新与党の陣営を形づくっている。
 第二に、社公合意下の社会党の右転落は、社会党を慢性的危機にたたせている。
 社会党指導部は、社公合意締結当時、これは将来の政権構想に限定した協定で、その他の分野での社会党の行動を拘束するものではないと弁明していたが、二年間の実践はこの弁明を裏切り、社公合意の反共反革新の立場は、事実上社会党の全分野の活動を規制する基本路線となっている。各地の首長選挙でも、社会党が自民党や反共諸党とともに反革新の連合にくわわったり、自民党政治との対決を放棄する傾向はますますふえている。東京では、党大会で「明るい会」の解散方針を決定することさえした。国会でも、社会党は、「非武装」「護憲」を一応看板としているものの、実際にはしばしば自民党との無原則的な妥協や取引の道にいっそう深くはまりこみ、選挙制度の問題では、昨年の公選法改悪につづいて、憲法違反の全国区制改悪計画を自民党とともに率先して推進している。予算問題でも、革新の立場での共産党との共闘は拒否して、共産党を除く共闘〟という公明党などの反共党略に最後まで追従し、自民党の減税拒否の態度をごまかす密室の取引に一役買ったうえ、軍事費削減の要求さえ、事実上とりさげるにいたった。
 労働戦線でも、社公合意に呼応する形ですすめられてきた「戦線統一」は、具体的になればなるほど、財界と政府の期待にこたえる、同盟主導の右翼的再編という実態をあかるみにだしてきた。同盟は、この間、軍拡推進、大企業擁護の旗印をこれまで以上に鮮明にうちだしてきている。新しい統一体が、この反革新の立場を、その統一綱領に直接書きこむことは当面しないとしても、これに参加する労働組合の運動を、同盟の体制擁護路線と矛盾しないわく内に封じこめることで、自民党と財界の期待にこたえる右傾化の画期となることは、確実である。
 社公合意のもとで、社会党が、野党第一党の議席をもちながら、自民党政治との無原則的な妥協や反共反革新の立場におちこんだことは、革新への期待をこの党にかけてきた多くの党員や支持者のあいだで批判と失望をつよめ、社会党内の矛盾を大きくしている。今年の党大会は、この状況を反映して、人事面では一定の変化を生んだが、路線上では、社会合意路線の継承延長や右転落路線にもとづく綱領の見直しを公式に決定した。公明党など反共諸党は、社会党・総評内の右派勢力とともに、社公合意を武器に、社会党に新与党化への追従をもとめる圧力をくわえつづけており、社会党の混迷は、新執行部のもとでも、いっそう深刻さをくわえている。社会党が、危機と混迷からぬけだし、国民の革新的な期待にこたえる再生への道は、社公合意による反共反革新の拘束を断ちきって、革新統一戦線の方向への転換をおこなう以外にない。京都の社会党の有志が知事選でとった勇気ある行動をはじめ、革新的たちなおりをめざす新しい動向も、まだ地方的部分的ではあるが、あらわれている。
 日本共産党は、社会党が、社公合意のもとでおちいった右転落から、正確な教訓をひきだし、国政革新の闘争の積極的なにない手となることを、つよく希望するものである。第三に、自民党は、反共諸党の新与党化と社会党の革新分断への同調、さらに八〇年の衆参同時選挙での安定多数獲得に力をえ、この好機を最大限に利用して長年の宿願であった反動的諸目標をいっきょに実現しようと、国民と革新勢力にたいする全面的な挑戦にのりだしている。ロッキード事件の裁判の進行によって金権政治に骨まで侵された自民党の腐敗した体質が立証され、政府の重大な失態や無策が国内的にも国際的にも連続するなど、ほんらいなら政局の激動にもつながりうる多くの危機的な要因をかかえながら、自民党は世論を無視した横暴な政治姿勢をとりつづけている。今回の国会延長強行にもみられるように、国際的な大規模な収賄事件の被告人がひきいる〝軍団〟が政権党を事実上支配するという、民主政治を建前とする国では許されない異常な事態さえ、いちだんとつよめられた。「拘禁二法」、〝有事立法〟憲法改悪、小選挙区制など、戦後確立された民主主義と国民の自由の根本的な破壊をねらう新しいファシズムの危険も、増大している。そこまで自民党を増長させ、その横暴に手をかしている最大の要因が、反共諸党の新与党化と社会党のこれへの追従にあることは、真剣に民主政治の擁護をねがうすべての国民が重視する必要のある点である。

 四、〔自民党政治は国民諸階層との矛盾を激化させている〕

 自民党政治は、政治戦線のうえでは新与党をふくめ多数の支持を擁しているとはいえ、実生活のなかでは、あらゆる分野で国民諸階層の利益との矛盾を激化させつつある。
 ながびく不況のもとで、とくに勤労者の生活には、失業者のひきつづく増大、就業労働者の長時間労働と労働の過密化、毎年連続の実質増税と実質可処分所得の低下、住宅事情の悪化、中小企業・中小商工業の経営難と倒産、農林漁業の経営困難の増大、児童や高齢者、障害者のための公共施設の極端な不足など、生活苦と労働苦のさまざまな要因が、いよいよ累積してきている。
 臨調路線に代表される反動的諸政策が国民生活の危機のなかで連続的に強行されることは、選挙での政党支持のいかんにかかわらず、国民諸階層と自民党政治との矛盾や対立をはげしくしないではおかない。
 安保問題でも、自民党政府が、アメリカ帝国主義との軍事同盟という本音を、実際の行動でさらけだしてきたために、一つの大きな変化が生じつつある。自民党がこれまで、その「安保・防衛」政策にたいして曲がりなりにも国民の多数の容認をとりつけていたのは、「日本の安全と自衛のため」を名分としてのことであった。しかし、レーガン政権が日本をふくむ極東を戦場とする限定核戦争の意図を公言し、〝極東有事〟での自衛隊の参戦を予定した日米共同作戦の実態があきらかになるなかで、「核のカサ」論や「専守防衛」論などの欺まん的宣伝は根拠を失い、この面でも、自民党や反共野党の安保持・軍拡推進路線は、国民の多数の立場との矛盾を表面化させざるをえなくなった。最近の世論調査でも、政府の「軍事突出」政策への不同意はいつも多数をしめている。また、核戦争や徴兵制の危険が現実性をおびてきたことは、政治的無関心層が多いといわれてきた青年・学生層の状況にも、一つの転機をつくりだしている。
 政・官・財の癒着による金権政治の横行、学歴偏重のエリート主義の教育の全体系への浸透、反共主義の立場からのいっさいの社会進歩の敵視など、自民党政治の反動的な所産は、大企業による商業主義的な文化支配と結びついて、精神面でも国民の生活環境を悪化、荒廃させており、青少年の非行化、文化的退廃の進行、社会的道義の荒廃などは、現代の日本社会の危機の一側面をなしている。
 自民党政府は、この危機的な状況をまえにして、「教育の再建」や「国民道徳の確立」の名のもとに、「国防」を教育や国民精神振興の中心にすえ、日米軍事同盟のために生命を捨てろと説く軍国主義教育の復活を、公然と主張しはじめた。日本帝国主義がおこなった過去の侵略戦争肯定論のおしつけをはじめ、教科書の内容への反動的統制もいっそうつよめられている。国民の教育と精神生活への反動的介入のこの新たなくわだては、教育の危機を深化させるとともに、日本の将来を真剣に考える人びとのあいだに、切実な危機感をいっそうはげしくさせている。
 自民党政府と国民大多数の利害とのこれらの対立は、政治、経済、文化・教育の危機のなかから必然的に生みだされるものであり、自民党や新与党の多数をもってしても、国民の不満と要求を今日の体制内におさえこむことは絶対にできない。核のカサ論、臨調路線、労働戦線再編、社公合意の四つの破たんは、反動反共政治の中心点での破たんとして、国民の不満と要求の基盤をいっそうおしひろげている。この事実のうちに、自民党政治を大局的な展望において不安定にさせる最大の基盤があると同時に、いかなる反共反革新の攻撃もうちやぶって、国政革新の事業が勝利をしめる最大の客観的基盤も、またここに存在している。

 五、〔行動の統一、統一戦線を求める国民的エネルギーの高まりにこたえて〕

 実際、この二年間に、政治戦線での反共右寄りの動向と対照的に、国民諸階層のあいだでは、核戦争反対、国民の生活と権利、民主主義の擁護などでの行動の統一と統一戦線をもとめるエネルギーの新たなたかまりが、特徴的な発展をみせた。
 軍拡の負担を国民生活に転嫁する反動的な攻撃にたいし、一九八〇年秋には、統一労組懇など民主的大衆組織が中心となって「軍事費を削って、くらしと福祉・教育の充実を国民大運動実行委員会」が結成され、全国で三百万人に達する広範な共同行動が組織された。昨年来の臨調路線による政府・財界の挑戦にたいしても、民主的諸団体が、いち早く「臨調路線反対・国民の生活と権利を守る各界連絡会議」を組織し、ニセ「行革」の真相を広範にあきらかにしつつ、全国的な闘争をひろげ前進させる推進力となった。
 統一戦線支持勢力は、国民の切実な要求と関心にこたえる行動の統一を積極的におしすすめる面でも、主導性を発揮してきた。10・24闘争についても、こうした努力の結果、一九八〇年には、社会党・総評指導部が当初もちだした分裂計画は克服され、十数年来の伝統をうけついだ革新的課題にもとづく共闘が成功的にかちとられた。一九八一年には、社会党・総評指導部は、臨調国会を背景とした重大な情勢にもかかわらず、前年と同じ形態で共闘しようという安保破棄実行委員会側の道理ある提案を拒否して、分裂集会を強行した。しかし、革新の統一の原則を失ったその集会はニャ「左翼」暴力集団のかく乱の場となって無残な混乱に終わった。これにたいして、安保破棄諸要求貫徹実行委員会が中心となってひらいた10・2中央集会は大成功をおさめ、臨調路線に反対するその後の国会外闘争でも統一戦線支持勢力が終始積極的な役割を果たす新たな起点となった。
 戦争か平和かの重大な危機を自覚した核兵器廃絶の運動が、各界の知識人、文化人をも結集して画期的なひろがりをみせたことは、この間の国民的な動向のもっとも重要なあらわれの一つであった。国連第二回軍縮特別総会にむかって、なんらかの形で核軍縮・核廃絶をもとめる特別決議をおこなった地方議会は四十道府県、四百六十五市・特別区、六百六十五町村にのぼった(六月末現在)。「国民運動推進連絡会議」が集めた「核兵器完全禁止と軍縮を要求する国民署名」は六月二十八日現在で二千九百万人をこえ、3・2ヒロシマ行動(二十万人参加)と5・26東京行動(四十万人参加)は、被爆国民のねがいと力を結集する大きな歴史的意義をもつ画期的な統一行動となった。
 自民党など軍拡推進勢力は、国民世論のもりあがりをおさえるために、地方議会の核軍縮決議に反対する通達をだしたり、「反核は反米だ」といって非難するなど、この国民運動にたいしてあからさまな妨害の態度をとった。彼らが同時に、他方で、国会決議の案文に、核軍縮の要求に「究極的」の形容詞をつけることで、当面の核軍拡容認に道をひらこうとしたり、また、国内では軍拡推進の立場を公然ととりつつ反核運動に参加して、軍縮要求を国際舞台での形だけのものにうすめようとするなど、核兵器廃絶の運動を、アメリカの核戦争政策にとって無害な方向にそらせる策略に訴えてきたことも、重視すべき点である。それだけに、この国民運動を、正しい方向で発展させる努力はいっそう重要になっている。わが党などの奮闘の結果、国会決議から「究極的」の文字を削除させたことは、一定の前進的意義をもっている。
 核戦争に反対して結集した国民的エネルギーを、国連特別総会にむけての一時的な運動に終わらせず、持続的な運動として定着させ、さらに発展させるためには、原水協や平和委員会などの既存の大衆組織の拡大強化とあわせて、それぞれの地域や職場ごとに、草の根〟的な反核平和のねがいを、そこでの運動の状況や歴史にふさわしい形で組織し拡大し発させてゆくことが、現在、さしせまった課題となっている。
 第十五回党大会がよびかけた、日本の民主的再生をねがう各界の民主的諸団体、民主的な人びとを結集した「革新統一懇談会」の運動は、わずか一年間の短期間に全国四十七都道府県にひろがり、昨年五月には「平和・民主主義・革新統一をすすめる全国懇話会」(全国革新懇)も結成された。この五月末には、結成一周年を記念する第二回拡大世話人総会もひらかれたが、賛同をよせた各界の著名人士は一万六千人、参加、賛同した団体は千百団体をこえ、賛同・参加者の総数はすでに四百十五万に達して、社会党の右転落という状況のもとでも、革新三目標にもとづく政治革新と革新統一戦線への志向が日本国民のあいだで不屈の生命力と広大な展望をもっていることを象徴する大運動に発展してきた。この運動には、無党派の多くの個人はもちろん、まじめに革新統一をねがう社会党員も少なからず参加して、積極的な役割を果たしている。
 各分野の大衆運動のなかでも、民主的革新的潮流は、それぞれ一定の前進をかちとってきた。
 特記する必要があるのは、労働戦線における統一労組の運動の前進である。総評など既成のナショナルセンターの右転落に階級的批判をくわえ、労働組合の資本からの独立、政党からの独立、一致する要求にもとづく行動の統一という三原則のもとに、階級的ナショナルセンター確立の方向を自覚的に展望してきたこの運動は、その組織規模を前大会当時の二十五都道府県八十五万人から今日、四十七都道府県百五十万人にまで成長させた。労働戦線の右翼的再編の策動がすすみ、革新的政治課題の放棄と結びついて、賃金闘争などでの〝労資協調〟的無力化の傾向もつよまるなかで、統一労組懇は、労働者と労働組合の闘争の階級的前進のための全国的イニシアチブを発揮し、日本の労働組合運動の将来をになう力づよい階級的胎動となっている。
 大衆運動、国民運動におけるこれらのたかまりや前進が、その統一を正しくひろげ、反動勢力の攻撃にたちむかって要求を実現する規模と力量をもつ運動に成長発展してゆくためにも、あらゆる反共反革新の傾向や策動に反対し、あらゆる情勢をつうじて革新の大義をまもりぬく真の革新的潮流の政治戦線での前進が、いよいよきりはなしがたい課題となってきている。
 第十五回党大会の決定、それが党と国民のまえに提起した方針と見通しの正しさは、この二年間の内外情勢の展開の諸特徴によっても、また全党の実践をつうじても、証明されているが、その後の情勢の進展は、日本の進路を、戦争と反動の方向に決定的に方向づけようとする日米支配層の反動攻勢前面におしだし、これをうちやぶる闘争を、日本のこんごの命運のかかる国民的な緊急任務として提起してきた。党は、八〇年代の起点にあたって、第十五回党大会がうちだし任務と方針を基本的に継承しつつ、この反動攻勢を打破する国民的闘争の先頭にたち、さらに、革新統一戦線の結成と民主連合政府の樹立とによって日本の民主的再生への道をきりひらくために、日本における進歩と変革の党--日本共産党の責務に全面的にこたえて奮闘しなければならない。

  第三章 日本共産党の歴史的使命と党活動の諸課題

 一、〔第十五回党大会以後の活動の到達点〕

 八〇年代の歴史的情勢は、国民の先頭にたって日本の現状を革新的に打開する日本共産党の任務を、いよいよ大きくしている。
 第十五回党大会の決議は、七〇年代の闘争の全体を総括しながら、現在の日本共産党が、日本の民主的再生と国政革新の事業において、他のいかなる組織も代わることのできない使命と役割をになっていることを、①どんな複雑な内外情勢のもとでも、日本の国民の進路を正確にさししめす力量と先見性、②大規模な反共反革新の反攻に断固としてたちむかい、社会進歩と革新の大義、民族と国民の真の利益をまもりぬく不屈の一貫性、革新と反革新のはげしい〝陣地戦〟なかで、支部を基礎に、人民的陣地の構築をもって反動支配をうちやぶる闘争に正面からとりくむ組織性、の三つの面から、あきらかにした。その後の情勢の進展と各政治勢力の動向は、日本共産党が革新の主柱となっているところに、現在の政治戦線の核心をなす一つの特徴があることを、国民的な経験と事実でかさねてうきぼりにした。
 (1) わが党は、国政のうえで提起されてきたあらゆる重要問題について、国民の利益と民主主義の道理にたった革新的解決策を根本的かつ具体的に提示し、アメリカ帝国主義と日本独占資本の要求を代弁する政府・自民党の反国民的諸政策にこれを対置してきた。わが党のこの態度は、「保守・革新の対決は時代おくれ」などといって自民党追従を基本にしてきた反共諸党の反革新の態度や、社公合意の拘束のもとに自民党政治との正面からの対決を回避してきた社会党の動揺と、くっきりした対照をしめした。
 とくに、日本共産党が、日本国民の命運のかかわる安保・軍拡問題で、日米軍事同盟の強化とそのもとでの核基地化やの軍備増強を許さず、軍事費削減を要求する革新的見地を、国会の内外で明確につらぬいた唯一の政党であったことは、今日の政治戦線の特質を集中的に表現したものである。
 「行政改革」問題でも、その出発点となった財界主導の臨時行政調査会の構成に国会で反対の意思を表明したのは、日本共産党だけで、他の諸党は、それぞれが土光臨調の成立に責任を負っている。他党が臨調路線に賛成するか是々非々のあいまいな態度をとるかするなかで、わが党が、ニセ「行革」という反動的本質をいち早く明確にし、国民の期待にこたえる真の民主的行政改革の方向を対置したことは、日本共産党の先進的な見地を実証したものであった。党は、公務員労働者や国鉄など公企体労働者の問題でも、不正常な悪慣行を労働者の自覚性にもとづいてすすんでなくすことをはじめ、国民奉仕の立場で業務の改善と経営の民主化にとりくむ階級的責務を提起して、国民の信頼と連帯を発展させる積極的方向をしめした。
 (2) わが党は、地方政治の分野でも、地方住民の利益にたって自民党政治と対決し、革新政治を擁護する立場を堅持した唯一の党である。
 党は、革新自治体の防衛、奪還、拡大をめざす地方的・地域的統一戦線を重視する立場から、革新勢力結集の努力をつくし、この二年間の革新自治体をめぐる攻防戦で、七十七自治体で防衛に成功し、十九自治体を失い、二十五自治体で新たに拡大するという成績をおさめた(七月末現在)。そのなかで、共産党員が革新共同の支持で首長に選出されていた羽曳野市(大阪府)、朝来町(兵庫県)、南箕輪村(長野県)の三市町村で、ときには社会党までふくんだ反共反革新の攻撃に抗して、革新自治体の防衛に成功したこと、南光町(兵庫県)で新たに共産党員を町長とする革新自治体を生みだしたことは、地方自治革新の事業にとって重要な意義をもつ前進であった。
 (3) 行動の統一と統一戦線をめざす国民的運動や各分野の大衆運動での革新的潮流の前進についても、党は、前大会の方針にもとづいて、積極的に貢献してきた。
 (4) 日本共産党自身の力量の強化、拡大の問題では、党は、第十五回党大会の四ヵ月後の衆参同時選挙で、得票は、全国区をのぞいて、衆院選でも参院選地方区でも前回よりのばし、七〇年代の国政選挙の最高時に近い水準を維持しながら、少なからぬ現職議員を落選させ、衆院十二、参院四の議席を失うという後退を喫した。
 この選挙戦は、政治戦線全体の右寄りと六党軍団によるはげしい反共攻撃を特徴としたとはいえ、実践上の全国区軽視による全国区選挙の失敗、衆院選の一連の選挙区での他党派とのせり合い負けによる敗北、基礎票を後退させたままで選を迎えたことなど、ただちに克服にとりくむべき党自体の選挙活動の重要な問題点を露呈したものであった。党は、四中総(八〇年七月)および五中総(八〇年十一月)で、この選挙戦の総括から教訓をひきだし、一九八三年の全国的な選挙戦にそなえるとともに、あいつぐ中間選挙に具体化してきた。
 中間地方選挙では、党は、少なくない失敗をしながらも、その教訓を生かして、全体としては前進を記録し、二年間で百十議席の増をかちとった。これは、各党派のなかで最大の議席増であり(民社党の三十八、社会党二十七がこれにつぐ)、その結果、わが党の地方議員数は三千六百五十三人となり、社会党をぬいて野党第一党になった。とくに、自民党による都政奪還下での最初の都議選で、都議会の制覇と共産党一けた台へのたたき落としなどを豪語していた自民党を敗北させ、日本共産党が五議席ふやして野党第一党の地位を確立したことは、首都という、諸党派間の政治闘争の一つの集中点での重要な前進であった。
 第十五回党大会が決定した「五十万の党員、四百万の読者」をめざす党勢拡大の課題は、各分野の党活動全体のなかで、その達成のもっともおくれた地点にあったが、第十六回党大会をまえにした躍進大運動での全党の奮闘をつうじて、四十八万以上の党員、三百数十万の読者を実現した。党は、この間、「機関紙革命」ともいわれる機関紙活動全体の刷新、支部生活の確立、学習・教育の充実など、今日の情勢と党の発展段階にふさわしく、組織と活動の質的な前進をかちとる事業に力をそそいできた。
 以上が、八〇年代における革新統一戦線をめざして、とりくんできた活動の主要な到達点である。
 政治戦線、大衆運動をふくむこの二年間のすべての動向は、日本共産党を、事実上日本の革新潮流の中心的政治勢力としており、政治革新の統一戦線を結集してゆくうえでも、国民の生活と自由、民主主義をまもるうえでも、日本の主権と安全をかちとるうえでも、自民党政治との国民的対決の先頭にたつ日本共産党の責任を、さらに大きいものとしている。

 二、〔大衆的前衛党の責務と学習・教育の徹底〕

 日本共産党は、日本の進歩と変革の事業に貢献しようとするすべての労働者と人民に門戸をひらいた党であると同時に、科学的社会主義の理論で武装され、変革・不屈・規律を党のほんらいの革命的精神としている大衆的前衛党である。この党が、日本人民の歴史のなかで、支配者の側からのいかなる圧迫や攻撃にも屈せず、人民の先頭にたつ歴史の開拓者としての役割を果たすためには、党のこのほんらいの革命的精神、いかなる困難をもおそれない革命的気概と献身が、すべての党組織とすべての党活動をつらぬく日常的特質となるように、特別の努力をつねに傾けることが重要である。
 この大衆的前衛党建設の事業は、一九五八年の第七回党大会以降飛躍的な発展をとげて、今日、わが党は日本で最大の組織をもつ政党となり、国際的、国内的に重要な役割を果たしている。党の団結はかたく、党の統一をみだすいかなる派閥も存在しない。しかし、この二年間の活動の教訓がしめしているように、大衆的前衛党として、量的にも、党員や機関紙読者、後援会員をふやし、大衆的結びつきをさらにひろげつよめると同時に、党自身の質的な向上と発展、とくに党のすべての隊列の政治的理論的向上をはかり、規律ある党生活、党活動に結集し、党の決定の正しい理解と実践の立場にたつ状態をつくりだし、つよめることが、いちだんと痛切にもとめられている。
 (1) 学習・教育活動と正しい党風の確立による党の質的向上・強化の課題を、きたるべき選挙戦とそのための基礎票構築とあわせて、党の当面の独自活動の分野で党建設の「二つの柱」として位置づけ、これを全党運動として目的意識的に追求することが必要である。
 実際、党が、今日直面している諸課題は、その多くが、すべての党員が荷をになえば、けっして困難でも過大でもない任務である。それが、十分に達成されない状態がしばしば生まれるのは、なによりもまず、全党員が荷をになう状態がつくられないでいるところに、最大の原因がある。わが党は、党と革命の事業に党員として貢献する意思をもったものが、自覚的に結集した組織であり、全党員を党の決定にもとづく活動にたちあがらせる決定的なカギは、学習・教育の徹底による活動への自覚的な結集にある。
 党勢拡大運動の到達点への反省をふくめた、この二年間の党建設の実践をとおしての最大の教訓は、全党員をもれなく自覚的戦士として結集するうえで不可欠の学習・教育活動のたちおくれであり、これは放置することが許されないだけでなく、その急速な克服のための全党的な大運動にすぐとりかからなくてはならない課題である。
 この見地から、全党は、八中総決議が定式化したように、学習・教育活動を、党が前衛党としての力を発揮する「根本的条件」、あらゆる党活動の「根本的前提」とする観点をつらぬき、すべての党員が、党の大会、中央委員会の諸決定を中心に、①綱領路線を学ぶ、②情勢と展望、任務を正しくとらえる、③各分野の政策、方針を学ぶ、④党建設についての学習、⑤科学的社会主義を学ぶ、の五つの眼目を柱とする学習活動に不断にとりくまなければならない。党機関は、責任をもって、講師資格者の力の全面的な活用と発揮をはかる。
 学習・教育活動にあたっては、文献を読むことのほかに見る、聞くといった方法も活用される必要がある。こんご、この観点から、ビデオ、映画等を学習・教育活動の重要な手段として、中央から支部にいたるまで重視していかなくてはならない。
 (2) 現状では、第十五回党大会後の新入党者のうち、未教育者をまだ約二〇残しているうえ、基本課程の全課目修了者は、わずか一一%にとどまるなど、基礎的な学習・教育活動はいちじるしくたちおくれている。それ以前の入党者をふくめれば、全党員必修の「基本課程」を修了していないものは、二十万をこえており、教育活動のこのたちおくれをただちに打開することは、全党活動の全局にかかわる問題である。
 ことに、党の歴史の第三期――第七回党大会いらい今日までの期間、大会ごとにその重要性が強調され、とりわけ第十四回党大会では「教育立党」の強調までなされたにもかかわらず、実態は、第十五回党大会いらいの党活動のもっともおくれた分野が、学習・教育の分野であることをしめしている。他方、各地方の数多くの経験は、学んだ集団がかならずつよくなるという事実をしめしている。各級機関は、このことをよく認識する必要がある。
 新たに党の隊列にくわわった同志が、党の組織や路線の基本を一日も早くつかんで、自分の任務を積極的に果たせるように、さだめられた期限内に新入党者教育をかならず終わらせることは、新入党者の初心と決意にこたえる支部と指導機関のもっとも重大な責務である。また基本課程の未修了者は、独習での認定をふくめ、自分の優先的な任務の一つとしてその修了につとめる。この期間きわめて弱かった中級課程の実施を重視する。
 学習・教育活動は、すべての党員にとって党活動の根本条件であり、中央から支部までの各級の幹部も、各級の議員もみずから学習・教育活動を重視しこれにとりくむことが、指導と活動水準を引き上げるためにも重要である。とくに、地区委員、支部指導部等の対象別教育が緊要である。
 わが党が、党大会や中央委員会の決定、全国会議の方針などの学習を、とくに重視しているのは、党綱領にもとづくわが党の路線は、科学的社会主義の理論を今日の日本と世界の情勢と日本人民の解放闘争の諸条件に適用し、創造的に発展させてえられた成果であり、党の全国的な諸決定こそは、この路線を生きた内容をもって、またもっとも集約した形で表現しているからである。ところが、第十五回党大会の決定の読了者は、八中総時点で全党の五三%にしか達しなかったし、中央委員会総会の決定の読了者は多い場合でも四〇前後にとどまっている。ここにも、そのまま放置することの許されない決定的なたちおくれがある。全党は、党大会の決定をはじめ、中央委員会の決定や全国会議の方針を、すべての党員が二週間以内に読了することを、かたく順守し、この決定が現実につらぬかれるよう、その徹底を具体的にはかることする。

 三、〔国民の要求と大衆運動の先頭に〕

 自民党の悪政と日米支配層の攻撃が、国民各階層のあいだに切実な無数の要求と不満をひきおこしている今日、日常不断に大衆の要求をとりあげてたたかい、生活相談活動とともに、大衆運動を正しく発展させる先頭にたつことは、党創立らい六十年間、国民の根本的利益の擁護を最大の存立理由としてきた日本共産党の、もっとも重大な責務の一つである。
 (1) 大衆運動についての八中総の決議は、大衆運動、大衆闘争にとりくむ課題と方針をしめした、重要な決定であり、すべての党組織と党員は、この決定を指針として、大衆のあいだでの活動を系統的につよめる。
 統一戦線への発展をめざし、1要求の獲得、2大衆の自覚の成長と組織の強化、党勢拡大、9社会的階級的道義の尊重の「四つの観点」は、ひきつづき、大衆闘争にとりくむわが党の原則的観点である。とくに、革新と反革新の闘争が、大衆闘争の分野でも〝陣地戦〟の様相をつよめている情勢のもとで、大衆運動の各分野で、党建設を前進させると同時に、民主的大衆組織の拡大強化をかちとることは、つねに重視して追求すべき任務である。
 (2) わが党は、大衆運動の原点にかかわる問題として〝草の根〟からの運動を強調してきた。それは、大衆団体の既成の組織と、その決定によるスケジュール的な運動だけに安住しがちな大衆運動の形式化を克服するために重要である。同時に重視すべきことは、〝草の根〟運動が、大衆運動が労働者や国民一人ひとりの要求や意欲をほんとうに結集した運動として、たえず新しい人びとをひきつける活力と発展性をもって真に大衆的に前進してゆく、ほんらいの大道だということである。この見地から、すべての党支部、グループは、地域、経営、学園で、〝草の根〟運動への日常的なとりくみをつよめ、党が新たに開始した五項目の要求署名を、全有権者に当たりきる規模で実行するなど、この面でも、大衆的活力にみちた党活動の充実に不断に力をそそいでゆく。核兵器反対の広大な国民的エネルギーを署名活動だけにとどめず、それぞれの地域、職場、学園で可能で適切な方法をもって無数の反核・平和のサークルに組織してゆくことは、この分野の新しい課題である。また、大衆運動の多くの分野で、民主的大衆組織の組織的力量がまだあまり大きくない現状を重視し、その強化と拡大に党としても積極的に貢献すべきである。
 現在、自民党政府の核戦争協力と軍拡の政策や臨調路線による国民への犠牲のおしつけ、民主主義にたいする攻撃のつよまりなどは、都市でも農村でも、これまで民主的な大衆運動にくわわった経験をもたない人びとのあいだにも、深刻な不安や要求をつとめている。党は、〝草の根〟運動のなかで、これらの人びとの要求をくみあげ、その実現のためにたたかいつつ、積極的な政治宣伝もつよめて、党と革新の事業の大衆的基盤をひろげてゆく意識的努力を重視する必要がある。そのさい、視野をひろげて、保守の基盤となっている諸団体にも積極的に接近し、それらの団体や構成員の正当な要求をとりあげ、活動を社会生活のよりひろい分野にひろげてゆくことも、大切である。
 (3) 大衆運動が大きなエネルギーをもって新たなたかまりをみせると、これを分断したり、誤った方向にそらしたりする各種の反共的反革新的な策動がかならずあらわれることは、戦後の日本の大衆運動の歴史が無数の事実で教えているところである。大衆の正当な要求の実現とそれにもとづく統一という、大衆運動のほんらいの立場をまもりつつ、これらの策動に反対し、運動の正しい発展のためにたたかうことは、党と自覚的民主勢力が積極的に果たすべき重大な任務である。
 最近でも、労働戦線の反共的右翼的潮流は、大衆の経済的な要求と運動が革新的課題と結びつくことを妨害し、反対にこれを安保・軍拡肯定という反革新の政治路線と結びつける策動をつよめ、「労働四団体共闘」などを口実に、これまで革新的課題をかかげてきた組織や運動をもその右傾化路線にとりこみ、これを労働戦線の外にもおしひろげようとしている。これは、大衆運動におけるもっとも重視すべき策動の一つであり、党と自覚的民主勢力にとって、経済的課題を反革新的「政治」に結びつけるこの反動的策動を許さず、切実な経済要求にもとづく大衆運動と革新的な政治課題とを正しく結合してゆくたたかいは、とりわけ重要なものとなっている。
 (4) 大衆運動の強力な発展は、大衆宣伝と不可分である。大衆組織自体の宣伝活動、教育活動ももちろん重要である。同時に党独自の大衆政治宣伝は、大衆がかかげている要求の正当性や運動をめぐる情勢、運動のすすむべき方向をあきらかにして、人びとがより確信をもって運動をすすめるためにも、まだ自覚していない人びとをたちあがらせるためにも、大衆運動のなかでのあれこれの右翼的策動を大衆的に克服するためにも、欠くことのできない意義をもつ。日本共産党は、口頭の宣伝とともに「赤旗」などの機関紙誌やパンフレットの普及を重視し、宣伝活動の面でも、科学的社会主義の党としての指導的役割を果たしてゆかなければならない。階級的な労働組合は、そのときどきの問題をとらえての一般的な大衆宣伝にとどまらず、労働者にたいする階級的な教育活動を、重視する必要がある。党にとっても、労働者階級を科学的社会主義と真の国際主義の思想でたかめ、わが国の革命の事業の最後の勝利を確信させ、その階級的戦闘性と政治的指導力をつよめることは、重要な綱領的任務の一つであり、これに積極的にとりくむことは、当然である。

 四、〔一九八三年いっせい地方選、国政選挙での躍進をめざして〕

 来年一九八三年は、全国いっせい地方選挙と参議院選挙が連続し、さらに衆議院については、ことしもふくめて政局の動向いかんで解散総選挙の可能性をたえずはらんでいるという、八〇年代前半の全国的な選挙戦がもっとも集中的に展開される年である。
 政治戦線のうえでは、自民党と新与党による反共反革新の潮流と日本共産党に代表される革新の潮流との二つの道の対決を基軸に、右転落下で動揺的な社会党という、党派間の分岐がいよいよはっきりし、国政と地方政治とを問わず、国民の真の利益にてらしてそれぞれの潮流の果たしている役割も、かつてなく明確になっている。日本共産党の議会勢力の消長が、反動的諸政策から国民の利益をまもる闘争の条件を左右することも、とくに七〇年代いらいの政治闘争のはげしい展開をつうじて、実証されたことである。
 この間の中間選挙の一つひとつを重視して確実な勝利と前進をかちとりつつ、一九八三年の選挙戦の準備を全力をあげてととのえ、いっせい地方選挙と参院選で、党と革新統一勢力の連続的な勝利を実現することは、わが党が当面している政治的任務の最大のものである。全党は、この選挙戦に勝利するために必要な準備活動を画期的につよめ、党と後援会の全力をつくして、一九八三年をかならず、日本共産党の勝利と前進の年にしなければならない。
 選挙戦にとりくむ諸方針は、これまでの決定に明確にしめされている。とくに、四中総が決定した衆参同時選挙の「総括と教訓」、「四中総にもとづく選挙闘争の新たな発展のために」(五中総)、「選挙戦における基礎票一組織票の構築の課題」(七中総)および八中総決定「八三年選挙の準備活動強化のための決議」には、第十五回党大会の決定をその後の実践と教訓にもとづいて充実・発展させた全党の今日的な到達点が、詳細に定式化されている。すべての党組織が、せまい経験主義や我流を排し、これらの諸方針を選挙準備活動に徹底させることは、勝利のための重要な保障の一つである。
 (1) 全国区選挙の失敗を三度くりかえすことは、絶対に許されない。全党は、地域的セクト主義や自然成長論などの誤りを徹底的に克服し、重点地方区の必勝とともに、全国区の全員当選をかならずかちとらなければならない。
 いま、国会の内外で、自民党と社会党の憲法違反の党略的な全国区制改悪案に反対する闘争が展開されている。闘争のなりゆきは予断を許さないが、その結果をみてから全国区の準備にかかるといった段階論は、きびしくしりぞける必要がある。
 わが党は、地方議員総数で野党第一党であるとはいえ、県議、政令市議、一般市議などでは、社会党、公明党にまだかなりの優位を許している。県議選や政令市議選は、選挙区が細分されているうえ、党派間の争いのもっともはげしく展開される選挙であり、ここでの前進のためには、総力戦にせりかつ力量と戦闘性がなによりも要求される。いっせい地方選挙でも、県議会の三つの空白(秋田、福井、徳島)および七百をこえる空白市町村(選挙執行分だけ)の克服に積極的にとりくむとともに、県議、市区)議の議席増を重視し、現有議席の絶対防衛と新議席の獲得を目標として、ただちに本格的な準備にとりかかる。
 衆院選は、政局の動向と自民党などの党略から解散総選挙がいつおこなわれるかわからない突発性を、本来的にもった選挙である。それだけに、とくに必勝をめざす選挙区では、当面日程にのぼっている各種選挙の活動と有機的な連携をとりつつ、衆院選の選挙区ごとに適切な態勢を確立し、衆院選独自の情勢分析と作戦計画、予定候補者の活動の立案と推進など、並行して必要な準備にあたることとする。
 (2) 選挙戦の準備では、自民党やこれに追従する新与党勢力の悪政の、国政・地方政治でのあらわれを具体的につき、わが党の、国民の利益をまもる役割と実績、国民の要求にこたえる現実的で抜本的な政策をあきらかにし、いかなる反共宣伝にも的確な反撃をくわえる攻勢的な政策宣伝を、候補者宣伝とあわせ、早くから日常不断に展開することが、重要である。
 とくに昨年の公選法改悪は、従来からの文書宣伝への不当な規制にくわえ、選挙期間中の口頭宣伝を封じこめたものであり、この不当な攻撃をはねかえすためには、選挙がはじまる以前の宣伝活動で、その選挙で争われる問題点や党の政策などを、有権者に周知徹底させることが、なによりも重要である。さらに、選挙期間中は、認められた宣伝戦の諸手段を重視してこれに最大限の効果を発揮させるとともに、党員や支持者の一人ひとりが、政策を身につけ、広範な有権者にたいする宣伝・組織者として活動することで、わが党の政策的優位性を発揮することにつとめる。
 どんな選挙でも、その勝利を保障する共通の土台は、党員、読者、後援会員を中心とする基礎票の構築にある。すべての党組織が、当面、一九八三年選挙戦での確実な躍進という任務にてらして、とくに有権者対比を重視しつつ、基礎票を勝利に必要な水準にまできずきあげるという角度から、党員と読者拡大のとりくみをひきつづき強化しなければならない。
 後援会活動では、現在存在しているすべての後援会を、日本共産党後援会に発展させること、対応する後援会をもたない党組織は、ただちに読者や党支持者とともに後援会を組織すること、全後援会が、必要な態勢をとって、八三年の選挙勝利をめざす活動をただちに開始し、とりくみを本格的に強化することが、当面の重要な方向である。とくに、五中総いらい一年半以上もたっているのに、いまだに日本共産党後援会への発展がおこなわれないでいるところが四十五市・区、三百七十七町村もあり、さらに複数立候補の議員候補者の地域別後援会では、二百九十二後援会がのこっている。党の機関幹部が議員候補となっているところでも、四十七後援会が、いまだに個人後援会のままである。その原因が、個人後援会にこだわる思想上の誤りにあるにせよ、あるいは事態を軽視し放置してきた怠慢にあるにせよ、党の決定の遂行にたいするいちじるしい無責任と、選挙勝利への積極的意欲の欠如とを露呈したものであることは明白である。個人後援会をそのままにしている議員候補者は、候補者の資格を再検討する。各級機関が、この問題を選挙準備の重大なたちおくれとして重視し、指導を貫徹することは当然の責任である。
 (3) 選挙準備と同時に、党議員団が、大衆の要求の先頭にたって、議会の内外で積極的で正確な活動を展開するよう、指導と援助を強化することが、大切である。選挙戦で問われる党の実績とは、議会内外での活動のつみかさねであり、実際の活動のなかで、大衆の利益にも、革新の大義党の政策にも合致した活動を真剣につらぬいてこそ、党への共感と信頼をたかめうる実績も形づくられる。
 中間選挙で、現職議員が落選した一部には、党機関が議員活動への指導をまったくなおざりにし、いざ選挙がせまってはじめて、議員活動の重大な欠陥に気づくといった失態も、しばしばみられた。議会活動へのこうした放任と無関心は、その地域で日本共産党を代表する指導機関としてのほんらいの政治責任の放棄にもつうじる重大な弱点の露呈である。選挙戦を本格的にたたかうためには、各級指導機関が、この種の〝政治的無関心〟のどんなあらわれも一掃して、自治体政治の諸問題をはじめ、地域の政治闘争にみずから指導的責任を果たしてゆくことが、重要である。
 (4) 来年のいっせい地方選挙では、革新都府政の奪還を任務とする東京、大阪の知事選がたたかわれ、本年中には、それにさきだって香川、沖縄、滋賀の知事選挙もおこなわれる。これらの知事選をふくめ、全国的におこなわれる首長選挙で、革新自治体の奪還、防衛、拡大のために奮闘することは、大きな任務の一つである。わが党は、革新統一をのぞむ広範な団体と個人を結集し、政策・組織協定に基礎づけられ地域的な革新統一戦線で首長選挙をたたかうこと、革新統一候補には、誠実な革新無党派の人がふさわしく、社会党籍をもつ人物を候補とする態度はとらないこと、社会党が国政のうえで反共右転落の路線をえらんだもとでも、地域的に共闘の可能性があれば、社会党にも善意の社会党員にも門戸をとざさないことを、ひきつづき首長選挙にのぞむ基本態度としてゆく。
 東京、大阪、沖縄など、それぞれ事情は異なっているが、わが党は、自民党の悪政から住民の利益をまもる革新の防壁をふたたびきずきあげるために、自民党政治に反対し革新自治体の再建をまじめにねがうすべての団体と人びとに、革新の大義にもとづく革新統一の道をすすむことを心からよびかけ、そのために党として可能な力をつくすものである。

 五、〔党の隊列の系統的、計画的な拡大〕

 全党は、「五十万の党員」の達成をめざして奮闘し四十八万以上という新しい峰を実現することができた。しかし、それはまだ全国的には対人口比〇・四一%という水準であり、日本革命の事業の要請にてらして初歩的な達成にすぎない。党員拡大では、党の隊列の拡大を不断に目的意識的に追求するとともに、党の果たすべき任務にてらした党建設の努力を計画的にすすめることを、特別に重視する必要がある。この点では、党建設の計画においても、その実際のとりくみにおいても、各級党機関が指導性を発揮することが、とりわけ決定的となる。とくに、県や地区で対人口比〇・二五%以下のおくれた党組織は、その早急な突破をめざす特別の活動がもとめられる。
 党の指導機関は、党の量、質ともの強化という見地をつねにつらぬき、党員拡大と同時に、機関幹部が党支部や党員によく接することなど、党の質的強化についての決定を実践するよう、不断に心がける必要がある。
 日本の労働者階級は、社会構成のうえで、人口の三分の二をしめているだけでなく、この階級が革命的自覚にたってその戦闘性と指導力をつとめることは、日本の革命の事業の勝利にとっての最大の保障である。それだけに、反動支配勢力は、労働組合の反共右派幹部の緊密な協力もえて、経営における党組織とその影響力を破壊するために、可能なあらゆる手段を動員している。党は、独占資本の攻撃と圧迫に屈することなく、経営での党建設のこれまでの成果を正しくふまえながら、先進的な労働者をひろく党に迎えいれ、大きな革命的抱負のもとに、重要経営の空白克服をふくめ、経営での党建設を前進させることに、重点的な努力をそそぐ。
 未組織労働者のあいだでも、党は、労働組合の活動を、労働者の日常実利と結びつけた新しい経験をとりいれて、組合の組織化にとりくみつつ、そこでの党建設を重視してゆく。
 労働者階級のもっとも主要な同盟者である農漁民および都市勤労市民のあいだで、大きな力量をもった党を建設することも、多数者革命の保障として、絶対になおざりにすることのできない任務である。
 前大会以後の入党者のうち、婦人のしめる比重は四三%であり、婦人の構成はたかまってきた。これは、わが党の婦人議員の数が、他党にくらべて抜群なこととともに、真の婦人解放と男女平等をめざすわが党の性格を反映した健全な傾向であるが、現実には、婦人党員の多くが、社会や家庭で、婦人なるが故の重荷をになったまま活動している。党は、より多くの婦人を党に迎えいれるために積極的に活動するとともに、婦人党員の活動条件の改善に、特別の同志的配慮をつよめる必要がある。
 青年・学生のあいだで党の隊列を拡大することは、わが党のこんごにとって決定的に重要である。民青同盟についての八中総の決議は、①教育・学習活動の比重を思いきってたかめること、②民青同盟にふさわしい同盟組織の体制と運営を確立することなどを、民青同盟のこんごの活動方向として強調したが、五月にひらかれた民青同盟の第十七回大会は、この方向を真剣に具体化して、新しい発展への画期的な出発点となった。各級党組織は、若い世代のあいだでの独自の党活動を重視し、職場・地域・農村の青年のあいだで、また大学生のあいだでの党建設につとめるとともに、八中総が提起した諸課題に本格的にとりくみ、広範な青年と結びついた強大な民青同盟の建設にむかって、文字どおりみちびきの党としての「指導責任」を果たさなければならない。
 空白克服の課題へのとりくみは、昨年十月の全国活動者会議で指摘されたように、経営や学園についても、地域についても、近年弱まってきている。これは、なによりも党機関の指導性の問題である。このことをふくめて、計画的、戦略的な方針のもとに、党建設の課題にとりくむことの重要性を、かさねて強調するものである。

 六、〔機関紙中心の党活動の全面的な定着を〕

 第十五回党大会いらいの二年間は、わが党の機関紙活動の歴史に重要な意義をもった。
 第一に、わが党は、機関紙中心の党活動を一貫した方針とし、六〇年代初頭の十万余の機関紙読者から出発して、七〇年代には三百万台の読者をもつところまで前進してきた。この間も、配達・集金の整備を中心とした定着活動には注意と努力を払ってきた。この分野の体制は完全ではなかったが、これまでは、これらの障害を上まわる全党の奮闘によって、全体としては新しい峰をつぎつぎと突破してきた。しかし、三百万台の読者という段階を迎えると、定着活動の抜本的改善をふくめた大きな改革なしには、その大台を維持発展させることが、困難になってきた。
 党は、配達・集金の乱れの根絶を提起した一九八〇年八月その常任幹部会の訴えを出発点に、この問題に真剣にとりくみ、そのとりくみをつうじてこの面での欠陥の重大性についてより全面的な認識もえて、〝機関紙革命〟といわれる機関紙活動の抜本的な改革の方針を確立し、全党をあげてその実行にあたってきた。八一年三月の全国都道府県・地区委員長会議で新しく定式化した、①紙面の充実、②拡大、③配達、④集金、⑤採算の諸原則をどんな場合でもにぎってはなさないという機関紙活動の五原則、採算を重視した編集と組織の抜本的な改革の断行、日刊紙の年来の赤字の短時日での解消、社会主義的な〝党有地区営〟および地区機関と支部を中心に党の基本組織が機関紙活動の根幹をになう方向での組織改革が、その中心的な内容をなすものである。昨年十一月には、これらをおりこんだ「機関紙活動の手引き」を発行した。
 第二に、機関紙読者拡大の面では、前大会以後、とくに衆参同時選挙の時期の機関紙活動の弱まりから、大幅な減紙を経験した。党は、一九八〇年九月を起点に、この面での失を回復し、さらに四百万読者という党大会決定の達成をめざす党勢拡大運動に、支部機関紙部の充実と三つの組織的保障(拡大推進班、臨時集金者集団、遅配・欠配根絶班)の提起等をくわえて一貫してとりくんできた。
 この分野での活動は、少なからぬ先進的成果を生みだしながらも、全党的には、一進一退をくりかえしてきた。党中央は、第十六回党大会をまえにしてこの分野のたちおくれを重視し、四月の全国都道府県・地区委員長会議の機会に、「党創立六十周年・第十六回党大会記念日本共産党躍進大運動」を決定し、すべての党組織と党員が、敗北的、消極的傾向を克服して、この任務達成にたちあがることをよびかけた。この大運動の設定は、日常的な計画的拡大とともに「一定の時期の全党的な集中的とりくみ」の必要性をも明確にした第十五回党大会決議にもとづくものであった。
 党中央は直接、全党員への手紙との重要性を訴えた。全党は党中央のこの決定にこたえて奮闘し、大運動の三ヵ月余の期間に六十万をこえる読者を拡大し、三百数十万の水準に到達した。大部分の県、地区が日刊紙、日曜版のいずれかまたは双方で前大会水準を突破し、少なからぬ県、地区が「四百万目標」にみあう大会目標を達成して先駆的役割を果たした。
 三百数十万という今日の到達点は、八〇年代にはいって第十五回党大会時にいったん到達した峰であるが、その後持続しえなかったものであり、今回、〝機関紙革命〟といわれる活動の改革と刷新に努力しながら到達した意義は大きい。「五十万の党、四百万の読者」の目標を未達成の党組織は、その一日も早い達成をめざすとともに、機関紙の定着活動にいっそう大きな力をそそぎ、陣地としてかため、前進をはかっていくことが重要である。
 しかし、各級機関や支部指導部、議員などの多くの称賛すべき奮闘努力にもかかわらず、目標が全党的には未達成であったことは、わが党の数十万の圧倒的多数が自覚的戦士としてたちあがる指導にまだ成功していないことをしめしている。全党組織は大運動の切実な教訓として、全党員の初心を生かし、すべての同志が日本共産党員としての自覚をたかめ前衛性を発揮する指導に、特別大きな努力をつくさなければならない。
 一九八三年の選挙戦は八ヵ月後にせまっており、その勝利のためには、今日の到達点を絶対に後退させないだけでなく、ひきつづき前進して、選挙勝利に必要な基礎票を機関紙読者拡大の面からも構築することが急務である。
 そのため、すべての党組織は、それぞれの到達段階に応じ、ひきつづきその努力を強化する必要がある。すなわち、大会水準未達成の党組織は、その原因を具体的に深く自己分析すると同時に、下りの党会議までにかならず大会水準を突破すること、また、大会水準突破の党組織は四百万目標の達成をめざし、さらに、四百万目標達成の党組織は、自主目標の達成をめざすことが重要である。
 読者拡大の目標の設定とそのとりくみにあたっては、つぎの三つの基準を堅持する。
 ①大運動での到達点を絶対に後退させず、目標未達成の党組織は、ひきつづき「四百万目標」の早期達成をめざす。到達点から後退せずつねに新しい峰をめざすことは、わが党の活動の基本精神であり、若干でも後退した場合にはかならずその月のうちにこれをとりもどし、無対策のままの減紙の累積を許さない。
 ②前回の国政選挙およびいっせい地方選挙時よりも後退している党組織は、期日をきめてできるだけ早く回復するとともに、その何割増かを目標にする。
 ③有権者対比(経営の場合には労働者対比)での目標をたて計画的に追求する。とくにこの点でおくれている党組織は、現状を抜本的に打開する目標の設定ととりくみを、積極的にすすめる。
 以上の基準によって不断に前進しつつ、全党的に四百万読者の早期実現を追求することは第一の課題である。同時に、一九八三年の地方選挙および国政選挙のための基礎票の重要部分である機関紙読者拡大目標を、勝利に必要・確実なものとして積極的に設定しなければならない。
 選挙の立場からも重要なことは、「赤旗」読者と深く結びつくことであり、機関紙活動の五原則――編集充実、配達、集金、拡大、採算性――に「日常不断に読者との結びつきをつよめること」を新たにくわえて六原則とする。
 わが党の機関紙活動の大きな前進方向をしめす〝機関紙革命〟は全党の努力で成果をあげつつあるが、しかし配達・集金活動の現状、三つの組織的保障の定着度からみるならば、いまだ結実に遠く、改革途上である。こんごひきつづき〝機関紙革命〟の課題を重視し、拡大への不断の挑戦とともに、配達、集金の乱れを一刻も早く根絶しなければならない。
 党と大衆を結んでゆく宣伝の武器としては、「赤旗」とともに、わが党が発行し、または普及に努力している定期雑誌および各分野のパンフレットが、大きな意義をもっている。とくに八中総決議は、パンフレット購読者を基礎票に準ずるものとして位置づけ、その計画的な普及の意義を強調した。各党組織が、その特徴に応じた定期雑誌およびパンフレットの活用と普及に、ひきつづき努力をそそぐことが重要である。

 七、〔大衆的前衛党にふさわしい党生活の確立と党指導の徹底〕

 「支部を基礎に、全党員が参加する党活動」を眼目としながら、大衆的前衛党にふさわしい党生活と党指導の確立をめざすことは、党建設と党活動の全体をつらぬく根本的課題である。
 (1) 党の支部は、その地域、職場、学園において日本共産党を代表し、その日常の活動をつうじて党が広範な国民と直接結びつく日本共産党の基礎組織である。支部が、そのほんらいの任務を果たすためには、その地域や職場に責任を負う党の基礎組織として、大衆を党と革新の事業の側にひきよせ、力関係を積極的に変えてゆく目標と展望にたち、それに必要な党勢拡大の諸目標をはじめ、独自の政策と計画をもってこれを自覚的に追求してゆく系統的な努力が重要である。党の全国的な政策や方針を、自分たちが活動している地域や職場の具体的な状況や大衆の要求と結びつけて、具体化し実践することは、支部および全党員の重要な任務である。党中央の諸会議の決定や日々の「赤旗」に発表される諸方針は、中間機関での具体化をへて、はじめて支部の課題となるというものではなく、その多くが直接党支部によびかけられたものであり、支部としてただちにその具体化と実行にとりくむ自発性、積極性を、すべての支部のものとしてゆく必要がある。
 支部に属している一人ひとりの党員は、それぞれおかれている事情も能力も異なっているが、その条件のなかで可能な最大限をつくして実践するところに、前衛党としての真価がある。支部の現状は、多くの活動不参加党員をかかえ事実上少数の党員だけで支部活動をささえている支部もあれば、よく学習もし、全支部員が協力して拡大や大衆活動も積極的にすすめている支部もあるなど、けっして一様ではないが、前衛党のこのほんらいの精神につねにたちかえって、すべての支部員が、その条件と能力に応じて、党活動に積極的に参加する支部の建設を、不断の目標としてゆくことが、大切である。党生活の四基準(イ)支部会議を定期的に開き、全党員が参加する、(ロ)党費をきちんとおさめる、(ハ)学習につとめ、党活動に参加する、(ニ)「赤旗」を読み、紙代をおさめる」を、すべての支部がかたくまもり、これをすべての党員の自覚的な活動の基準とすることに、つとめる。
 指導する党機関の側も、すべての支部の組織と活動を、党の基礎組織にふさわしい生きいきした自覚的な発展の軌道にのせることを、指導の重点として、つねに追求する必要がある。とくに、支部が、組織の乱れなどから困難におちいった場合、早く援助して、これをたてなおすことは、党の指導機関の責任に属することであり、こうした状態を長期にわたって放任するなどは、絶対にあってはならない消極性である。
 党中央は、昨年、党生活や党活動に乱れた支部をたてなおす具体的な指導の重要性を提起し、党中央自身も、東京にかなりの数の同志を派遣し、数十の支部の機関紙活動をたてなおして軌道にのせた。
 党機関の指導にあたっては、昨年十月の全国活動者会議で、党の躍進のカギをにぎるものとして強調された三つの点――方針の徹底、教育の徹底、会議の民主的運営と規律が、ひきつづき重要である。
 支部指導部をふくめ、党機関の選出と構成にあたっては、第十四回、第十五回党大会で決定された幹部政策の具体化をいっそう重視する。
 (2) わが党は、大衆的前衛党の思想を全党のものにする努力とともに、民主集中制を正しく擁護して自由主義、分散主義および官僚主義に反対する闘争の重要性を一貫して強調してきた。この立場から、この二十余年間、反党分派主義のさまざまなあらわれを粉砕し、民主集中制の弱体化をもとめあれこれの日和見主義や傾向にたいしても、これを克服する闘争をおこなってきた。今日、大国主義の潮流が、国際的な干渉の手段として、反党分派主義の育成という手段にしばしば訴えている状況のなかで、わが党の二十年来の闘争の先進的意義は、いっそう明確になってきている。
 日本共産党の歴史的使命がいよいよ重大になってきている今日、全党は、大衆的前衛党の思想とともに、民主集中制の精神と規律を全党に徹底し、すべての党員と党組織が、高い革命的気概と壮大な革命的抱負をもって、その活力を発揮してゆく必要がある。今日、党の規律をむしばむ主要な危険の源泉の一つは、対米従属下の独占資本主義社会で活動していることと関連した、さまざまな保守主義や受動主義、小市民的な誘惑への屈服といった傾向にある。これは、未教育のなかでしばしばおこるものであり、学習・教育の面でも、思想闘争の面でも、これらの不健全な傾向の克服をとくに重視する。
 また、資本主義的な思想の浸透と結びついた各種の社会的道義的退廃現象などは、たとえごく一部にあらわれたものであっても、党の純潔を根本から傷つけるものであり、断固として一掃しなければならない。
 (3) 革新と反革新の闘争がはげしくなるなかで、反動勢力のスパイ・謀略・暴力の攻撃から、党を防衛する任務も、いっそう重大となっている。
 公安警察当局を中心とするスパイ活動は、悪らつかつ執ような謀略性をつとめており、第十五回党大会以後の二年間に発覚したスパイ挑発工作の件数は、各地方党組織から中央に報告がよせられたものだけでも、約三百件という過去最大の数を記録している。党は、憲法の民主的諸原則をふみにじったスパイ・謀略活動にたいして、断固として抗議し闘争するとともに、革命的警戒心をもってスパイの潜入を許さない規律ある党生活の確立を重視しなければならない。
 右翼暴力集団による党攻撃も、自民党の公式の支援や大企業・財界の資金提供にささえられ、全国的な結集と組織化の進行を背景として、いよいよはげしくなってきた。
 党は、第十二回党大会(一九七三年)以降、これらの攻撃から党と民主運動を防衛する任務を、「四本柱の活動」の一つとして位置づけ、重視してきた。一部には、目前に事件がおこらないと、この任務に本気でとりくまないという傾向などがまだ根強くあるが、こうしたゆるみから、暴力集団の不うちで党が重大な損失をうけることのないよう、初心にかえって、この態勢の確立につとめる。
 (4) 党の財政活動を強化し、機関財政を健全化することは、党活動の発展の物質的基礎を保障する、緊急重大な任務である。そのためには、中央委員会や全国会議のたびごとに強調されてきたように、なによりもまず、党費の当月分一〇〇%納入、機関紙誌の対読者一〇〇%集金、パンフレット販売の一〇〇%回収という党財政の基本を徹底的に重視して追求することが、重要である。現状では、党費の当月納入率が、四〇%台、五〇%台という水準に低迷している県党組織も少なくないが、七〇年代前半には、全国平均でも八〇%近い水準に到達していたのであり、納入率や集金率の低さを「宿命的」なものとして当然視する惰性的な消極姿勢は根本から打破し、規律ある党にふさわしい画期的な改善をかちとる必要がある。
 また、機関紙活動の六原則が「採算」問題を全党的な原則の一つにうたっているように、どんな活動にとりくむときにも、財政問題をなおざりにしてはならないことは、党活動のきわめて初歩的な原則である。ことしの赤旗まつりは、内容的にも、政治・文化・娯楽を正しく結合する一方、財政的にも成功をおさめたが、それは、当事者まかせ、業者への過度の依存など従来の〝慣行〟に抜本的改革をくわえて、手づくりを基本とし、参加券代金も一〇〇回収するよう確固としたとりくみをした結果であり、党費納入問題などにも共通する、党の財政活動と党建設上での重要な教訓を残した。
 (5) 正しい党風、正しい活動態度の確立は、学習・教育の徹底とともに、党が大衆的前衛党に発展するうえで根本的に重要である。党は、綱領決定いらいつねに正しい党風の確立に努力してきたが、党が四十八万以上の党員と三百数十万の機関紙読者、六百万の支持者をもつ今日の発展段階で、正しい党風を確立することは、党が不屈の戦闘力を発揮しつつ、より広範な国民の信頼をえて前進するためにいっそう必要である。
 全党は、つぎの諸点を中心に正しい党風の確立につとめ、「量とともに質を」の党建設の原則を実行しなければならない。
 ①党外の大衆にたいする態度のうえで、つねに大衆の要求や不満に耳を傾け、その利益の擁護につとめる立党の精神をつらぬくと同時に、日常大衆に接するさいにも、親切・謙虚で、民主的な社会常識と節度にかなった態度をとること。
 ②党の隊列のすべてにわたって、真のヒューマニズムと同志愛にみちた党生活を確立すること。わが党のすべての党員が、新しい日本の建設という共通の目標に結ばれた自覚的な同志として、困難な条件をもつ党員に配慮と援助の手をさしのべ、親身になって相談しあうあたたかい同志愛を確立すると同時に、真の同志的精神にたった相互批判と相互啓発、率直な自己分析によって活動をたえず前進させてゆくことはきわめて重要である。党内外を問わず、批判はつねに事実と道理にもとづくものでなければならない。
 ③つねに革命的初心にたちかえり、情勢や任務に革命的気概と大志をもってたちむかうとともに、現状に安住する党活動上のマンネリズムをたえず打破してゆくこと。今日、わが党がめざしている革新日本の建設は、きわめて重大な事業であり、その実現にはいくたの闘争を必要とする。党活動のあれこれの分野での部分的、初歩的な成功に甘んじることなく、つねに変革者の精神をもってこの事業にたちむかい、保守主義やマンネリズムを打破するとともに、敗北主義や受動的傾向をも克服し、前進しなければならない。
 ④民主集中制の規律と思想を、不断に全党の血肉としてゆくこと。日常の活動のなかで、会議の民主的運営などによってつねに全党員の意見の反映につとめると同時に、支部会議への全員参加や党費の納入など、日常の党活動、党生活を規律あるものとして確立し、党の活力と戦闘性をつよめることは党の前衛性を発揮するためにきわめて重要である。

 日本共産党は、この七月、党創立六十周年を迎えた。戦前・戦後の六十年にわたる歴史は、さまざまな困難と曲折をへながらも、真に民族と国民の利益をまもり、日本社会の進歩的な発展をめざして、日本人民の先頭にたってきた日本共産党の不屈の先進的役割を、革命の事業の途上でたおれた多くの先輩、同志たちの不滅の業績とともに記録している。
 党は、つねに党創立の原点――初心にたち、六十年の闘争のなかで築かれた誇るべき党の伝統――先進性、不屈性、勇気、日本の真の独立の擁護、自主路線の堅持と正しい国際主義――をうけつぎ、科学的な自己分析性を身につけて、さらに大きな前進をめざすものである。歴史に深く学び、歴史をつくる人間になる――これを党創立六十周年にあたって一人ひとりの日本共産党員の自覚としていかなくてはならない。
 今日、日本共産党と日本国民は、日本の前途にかかわる重大な情勢に際会している。全党は、世界と日本の資本主義の歴史的な危機のもとで、日本の民主的再生と社会進歩への輝かしい道を国民とともにきりひらく党として、その誇りある自覚と、六十年の党史を大局的に特徴づけている科学的戦闘性と不屈の精神を全党のものにし、党綱領と党大会決定を指針に、国民の利益と日本の平和と進歩的未来の実現のために全力をつくさなければならない。