日本共産党資料館

日本共産党第17回党大会決議

(1985年11月24日採択)


第1章 核兵器廃絶、民族自決権擁護、世界の進歩的発展をめざして

1、核戦争阻止、核兵器廃絶のための反核国際統一戦線をよびかける
2、ニカラグアを国際的焦点とする民族自決権擁護の闘争
3、世界の資本主議と社会主義

第2章 国内情勢の特徴と政治革新への道

1、中曽根内閣の「戦後政治総決算」路線
2、反共野党の新与党化と「翼賛政治」再現の危険
3、自民党政治と国民大多数の利益との矛盾の激化は避けられない
4、平和と革新の勢力の強化のために

第3章 量質ともに強大な日本共産党の建設のために

1、今日の発展段階における党建設の問題点
2、決定の全員読了を軸に、知的自覚と活力にみちた党を
3、幾百千万の大衆と深く結びつき、強大な党勢をもった党の建設
4、選挙戦での新たな前進のために
5、「党建設と党活動発展の総合計画」の設定


 ことし1985年は、第2次世界大戦終結40周年、広島・長崎被爆40周年の年として、世界と日本の前途への教訓を歴史からくみとる重要な機会となった。第2次世界大戦のぼっ発と拡大の全経過は、第一に、軍国主義、専制主義、ファシズムの再現を許さず、第二に、帝国主義、覇権主義のいかなる他民族侵略も許さず、第三に、ふたたび軍事ブロックの支配的台頭を許さないことを、世界の平和と進歩のための最大の教訓としてしめしている。同時に直視すべきことは、大戦終結直前に強行されたアメリカの対日原爆攻撃が、広島・長崎で未曽有の大量虐殺をひきおこすと同時に、その後の「核抑止戦略」や核軍拡競争と結びついて、人類を脅かしている核戦争の危機の起点となったことである。今日人類絶滅の核戦争を絶対に許さず、核戦争阻止のためにあらゆる努力を傾けること、とりわけ核兵器全面禁止・廃絶の実現によってこの危機に終止符をうつことは、死活的意義をもつ緊急最大の人類的課題である。

 日本共産党は、この3年間、党の綱領と第16回党大会の決定にもとづいて、核戦争阻止、核兵器廃絶の課題と諸国民の民族自決権擁護の課題を国際連帯の中心任務とし、国内的には、日米安保条約の廃棄など革新3目標を国政革新の主要な旗としてたたかってきた。わが党が堅持してきた闘争のこの基本方向は、第2次世界大戦の歴史的教訓に全面的に合致するものである。

第1章 核兵器廃絶、民族自決権擁護、世界の進歩的発展をめざして

1、核戦争阻止、核兵器廃絶のための反核国際統一戦線をよびかける

 3年間の国際情勢の展開の最大の特徴の一つは、核軍拡競争の悪循環のもとで、核ミサイルの対抗的増強や宇宙軍拡の計画の進行など、核戦争の危険がいちだんと深刻化してきた一方、反核平和運動と世界政治のうえで、第16回党大会がよびかけた「核兵器全面禁止の課題を世界平和のための国際的闘争の中心課題」とする方向での重要な前進が、かちとられたことである。この前進に大きな役割を果たしたのは、昨年12月の日ソ両党共同声明であり、原水爆禁止世界大会での「東京宣言」(1984年)および「広島からのよびかけ」(1985年)であった。

 現在、世界の各地で、核戦争の危険を真剣に憂慮する広範な人びとによって、核積載艦船の寄港や核兵器のもちこみ拒否、核ミサイル配備反対、核兵器の撤去、非核兵器地帯設置など、その国や地域に特有の要求をかかげた多様な反核平和運動が展開されている。これらの運動は、核兵器使用禁止、宇宙空間の軍事化阻止、核実験全面禁止など、積極的な部分措置をめざすたたかいとともに、核戦争の脅威に反対する重要な力となっている。日ソ両党共同声明や原水禁世界大会の「宣言」「よびかけ」が明記しているように、世界各国の反核平和運動が、独自の課題でのたたかいの前進に努力しつつ、核兵器廃絶――具体的には、核兵器全面禁止国際協定の締結を共通の要求としてその力を世界的な規模で合流させ、核兵器にしがみつく勢力を世界人民の運動と世論で包囲し孤立させるならば、それが核戦争阻止、核兵器廃絶への現実的展望をきりひらく巨大な力となることは確実である。ニュージーランドでは、非核政策を公約した政府が成立し、アメリカの露骨な妨害にあいながらも核艦船の入港を拒否しつづけている。

 本年2月、日本に集まった12ヵ国の平和運動の代表が提唱し“すでに5大陸135ヵ国の人びとが参加した核戦争阻止・核兵器廃絶署名「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」は、反核平和運動の国際的合流のきわめて重要な形態である。わが党は、日本の広範な平和勢力とともに、その成功のために全力をつくす。

 世界政治のうえでは、1月の米ソ外相会談で、日ソ両党共同声明にもとづくソ連側のイニシアチブの結果として、「あらゆる領域での核兵器の完全廃絶」を米ソ交渉の目標とすることを確認した。この合意の内容は、米ソ交渉を、「抑止と均衡」の立場で核兵器廃絶の根本問題をたなあげし、あれこれの部分問題だけの議論に終始してきた従来型のわく組みからぬけださせるうえで、重要な意義をもつものだった。それが交渉のなかで真剣に具体化され、核兵器全面禁止協定締結の問題が米ソ交渉の場で本格的主題として追求されたならば、諸国民の期待にこたえる世界政治の新しい局面をひらく転機となったことは明白である。しかしレーガン政権は、交渉の直前にそれまでの核兵器廃絶の公約を裏切り、「戦略防衛構想」(SDI)を核兵器廃絶にうつじると欺まんしつつ固執し、この合意に背をむけた。これは、核軍拡競争を宇宙空間にひろげると同時に、核兵器廃絶を遠い将来にたなあげする態度である。これに対抗する側にも、SDI反対の緊急性を理由として、核兵器廃絶を米ソ交渉の主題とする努力を弱める傾向があらわれている。核兵器廃絶筒題のたなあげを許さず、1月合意どおりこの課題をジュネーブ交渉の正面にすえさせるための、世界人民の運動と世論の動員が、いよいよ重要になっている。

 核戦争阻止、核兵器廃絶をめざす世界人民のたたかいを発展させるうえで、日ソ両党共同声明に定式化された反核国際統一戦線の方針――核戦争阻止、核兵器廃絶を共通の中心目標として、政治上、思想上、信教上その他のいかなる差別もなしに、全世界の平和・民主勢力をもっとも幅広く団結させ、そのほこ先を「核兵器にしがみつく勢力」にむける――を堅持することを、とくに重視する必要がある。反核闘争を反常闘争あるいは反帝・反覇権主義闘争に従属させたり、現在の国際緊張や核軍拡競争の責任と原因の問題での特定の見地を反核平和をめざす国際的共同の前提としたりすることは、反核平和の戦線を混乱させ、広範な人びとを結集する力を失わせる結果となる。国際情勢の評価など一連の問題で異なった見解をもつ日本共産党とソ連共産党が、これらの見解の相違をわきにおいて、核戦争阻止、核兵器廃絶の問題で共同のたたかいの方向をうちだしたこと、さらに、ことしの原水禁世界大会国際会議で、ソ連、中国をふくめ、多様な見解をもつ諸国の代表が参加して満場一致で「広島からのよびかけ」を採択したことは、反核国際統一戦線の方針の有効性を具体的に実証したものである。

 日本共産党は、唯一の被爆国の党として、地球上からの核戦争の脅威の根絶、核兵器の一掃をねがう世界のすべての人びと、組織、政党にたいし、第17回党大会の名において、反核国際統一戦線への結集をあらためて厳粛によびかける。

2、ニカラグアを国際的焦点とする民族自決権擁護の闘争

 第16回党大会決定は、ラテンアメリカ諸国、なかんずく中米・カリブ海地域にたいするアメリカの侵略と干渉を、国際正義の絶対に許さない民族自決権の侵犯行為としてきびしく糾弾した。

 アメリカ帝国主義は、カリブ海の小国グレナダへの軍事侵略につづいて、いまニカラグアに公然とした軍事的攻撃を示威するとともに、政治的、経済的な攻撃を集中している。レーガン政権は侵略政策の正当化のために使いふるされた「共産主義侵略」説をもちだしている。しかし、複数主義、非同盟、混合経済を基本政策とし、民主的選挙をつうじて国民多数の支持を証明したニカラグア政府にたいして、こうした中傷は通用するものではない、反革命支援、軍事脅迫、経済封鎖などアメリカの不法な攻撃と干渉の根底にあるのは、ラテンアメリカ諸国はその地理的位置を宿命として、アメリカの独占体と帝国主義の支配、その代官である独裁者の支配に永久に甘んじるべきだという、むきだしの帝国主義的“勢力圏”思想である。

 アメリカの軍事干渉に反対し国の主権を守るニカラグア人民の英雄的な闘争は、こうした“勢力圏”主義をうちやぶり、ラテンアメリカをはじめ世界諸国民の自決権を確立し擁護するたたかいの最前線にたつものとして、今日、民族自決権をめぐるたたかいの国際的な焦点となっている。日本共産党は、前大会以後の期間に、サンディニスタ民族解放戦線と同志的な連帯の関係を確立し、ニカラグア人民への支援と連帯の運動の発展に力をつくしてきたが、この努力と活動をいっそう強化するものである。

 また、南アフリカの人種隔離政策(アパルトヘイト)に反対するたたかい、西サハラの解放をめざすポリサリオ戦線、イスラエルの全占領地からの撤退と独立した国家の創設をめざすパレスチナ人民、独立と主権を擁護するアラプ諸国人民、東チモール民族解放戦線のたたかいなど、各国人民の民族の自決と解放闘争を支持し、連帯を強化する。

 世界のいかなる民族もみずからの意思で自分の運命をきめる権利をもつという民族自決権の原則は、世界平和と社会進歩の重要な柱の一つをなしている。世界最初の社会主義革命――1917年の10月革命は、諸民族の自決権を世界の普遍的な原則として歴史上はじめて宣言し、そのことによって、帝国主義勢力が支配してきた国際政治の全体に衝撃的な影響をあたえた。それだけに、現在、社会主義の国ぐにの一部に覇権主義が表面化し、他民族の自決権を侵犯するアフガニスタン問題などの誤りがおかされ、この誤りが是正されないままで推移していることは、中国のベトナム侵犯などの誤りとともに社会主義の大義を傷つけ、平和、民族独立、社会進歩のための連帯と闘争に重大な困難をつくりだしている。

 世界の平和と社会進歩の事業が、諸国民の共感に値する正義の立場を失わないためには、民族自決権の問題で、帝国主義あるいは覇権主義の一方の側の干渉だけを非難する立場にとどまることは許されない。すべての民族の自決権を尊重し、いかなる勢力による侵害も許さないとする見地は、国際連帯の一貫した前提とされなければならない。わが党は、各国の共産党、労働者党との連帯と共同の問題でも、この見地を、こんごとも重視する。

 すべての軍事同盟の解消のたたかいは、核戦争阻止、世界平和の見地と同時に、民族自決権擁護の見地からも、きわめて重要な国際的任務となっている。

3、世界の資本主義と社会主義

 世界資本主義の経済的諸矛盾は、ひきつづき重大な状態にある。
 「強いアメリカ」の再現をめざして登場したレーガン政権は、史上最高の軍事予算をくみ、SDIをふくむ核軍拡と、戦争準備、他民族抑圧の政策に拍車をかけてきたが、その結果、財政赤字と貿易収支の悪化がいちだんと加速された。アメリカは、今日の帝国主義経済の特質をなす多国籍企業による市場の争奪、収奪の強化という点では、ひきつづきずばぬけた地位をしめしているが、そのことが貿易赤字をもはげしくする大きな要因となっている。アメリカ資本主義の経済的困難は、異常な高金利、ドル高をつうじて、さまざまな国際調整にもかかわらず資本主義世界全体に否定的な影響をおよぼし、独占資本主義諸国間の摩擦と矛盾をはげしくすると同時に、開発途上諸国の経済危機をいっそう深刻にしている。また、軍拡による人的物的資源の浪費や独占資本の利潤追求による環境破壊も見逃すことはできない。世界人口の半分をしめる開発途上諸国の危機は、深刻なアフリカの飢餓、8000億ドルをこえた累積債務問題の激化など、一刻も猶予できない事態となっている。とくに重要なことは、世界全体で1兆ドルをこえるにいたった膨大な軍事支出と開発途上諸国にたいする新旧植民地主義の搾取・収奪の歴史的累積が、これらの経済的困難の根源をなしていることである。対米従属下の帝国主義的、新植民地主義的対外進出の道にのりだした日本独占資本も、その責任をまぬがれることはできない。それだけに、核軍拡競争と新植民地主義的国際経済秩序に反対し、平和と諸民族の経済主権擁護を内容とする新国際経済秩序の確立をめざす国際的なたたかいは、ますます切実な意義をもってきている。

 もちろん、経済的諸矛盾のどのような深刻化も、資本主義の変革につながる革命的危機を自動的にひきおこすものではない。それぞれの帝国主義国、独占資本主義国での進歩的変革は、その国の革命運動、統一戦線運動が、国民の支持のもとに政権をにぎるだけの主体的力量をかちとったときにのみ、日程にのぼってくる。アメリカを先頭とする独占資本主義諸国の指導層は、サミットなどでの国際的努力をふくめ、情勢の真の革新的転換を防止し、資本主義の維持と延命、西側軍事同盟の体制強化をはかる措置をたくみにこうじつつある。西ヨーロッパでの一連の経験がしめしているように、社会民主主義政権の誕生も、NATO堅持のわく内にとどまり、資本主義体制の変革に結びつかなかった。
 現存の社会主義諸国は、資本主義的搾取を一掃した成果として、国民生活の多くの部面で、資本主義のわく内では達成できなかった前進を記録し、その範囲では、社会主義の制度的優位性をしめしてきた。だが、生成期の歴史的制約にくわえて、一部諸国での内外政策の展開の過程での試行錯誤や逸脱がおこっている。、とくに重大化した大国主義、覇権主義の誤りは、社会主義の事業への諸国民の信頼をそこなうとともに、帝国主義、独占資本主義の態勢たてなおしと延命をたすけ、世界の進歩を逆行させる深刻な否定的役割を果たしている。

 第16回党大会決定は、社会主義の事業と共産主義運動がもつ復元力に注目して、これらの覇権主義が社会主義に宿命的なものではないことを明らかにするとともに、覇権主義克服のたたかいを党の国際的責務として規定した。3年間の事態の推移は、党大会決定のこの見地の先見性を、多くの事例で裏書きした。実際、日ソ両党が、少なからぬ不一致点をもち、多くの論争をかさねながら、核戦争阻止、核兵器廃絶のための闘争の問題で、世界史的意義をもつ合意に到達したことは、社会主義の理性を核問題で発揮したものとして、社会主義の復元力の価値ある実例の一つとなった。また中国において、少なからぬ歳月を要したとはいえ、「文化大革命」中の国内政策の誤りが批判的に総括され、その転換がはかられてきたことも、社会主義の事業の復元力をあらわしたものだが、対外政策の面では、日本共産党にたいする覇権主義的干渉と、その遺産である反党分子、反党集団との関係継続などの誤りについては、根本的な総括がなされず、誤りを温存する傾向が根ぶかくつづいてきている。

 世界の進歩と発展を推進するためにも、社会主義と人類の未来をそこなう大国主義、覇権主義克服の努力は、ひきつづき重視されなければならない。

 他党の内部に対外追従の反党分派を育成し、他国の党と革命運動への介入の先兵とすることは、世界の共産主義運動からただちに一掃すべき最悪の干渉主義である。さらに、この反党分派グループを独立の「党」として扱い、これと干渉の対象となった共産党を同列視し、両者と関係をもつという手法で干渉主義を合理化しようとする「併党論」は、一国一前衛党という科学的社会主義の原則とは絶対に両立しえないものである。各種の覇権主義的干渉の産物である各種の対外盲従反党分子、集団のあらゆる策動を粉砕し、一掃する闘争は党と民主勢力にとって不可欠の課題である。

 覇権主義は、社会主義の大国だけにあらわれる逸脱ではない。「軍事境界線」と日本漁船銃撃事件などの問題で、科学的社会主義の道理も国際法も無視した立場をとり、自分たちのその立場に同調しないということで、わが党に不当な攻撃をくわえてきた朝鮮労働党の態度は、覇権主義の一つの野蛮な興型である。また、わが党は、自国指導者の名を冠する「主義」や「思想」を世界的な指導思想として礼賛し、あれこれの追従組織を育成して、それをわが国におしつける覇権主義的行為にたいしても、これを断固として拒否する。
 世界の共産主義運動の根本問題として、こうした干渉主義をきびしくしりぞけるとともに、わが党と日本の革命運動に干渉をくわえてきたいかなる党との関係でも、反党分派問題をふくめ過去の干渉主義的行為の溝算を、関係正常化の基本的前提とすることは、わが党の不動の方針である。

 日本共産党は、核戦争阻止、核兵器全面禁止・廃絶と民族自決権の擁護の二つを今日の国際連帯の中心任務としてひきつづき重視しつつ、世界の共産主義運動において、覇権主義の一掃、自主独立、同権、内部問題不干渉の原則にもとづく国際的な協力、共同関係を新たに確立するために、こんごとも奮闘するものである。

第2章  国内情勢の特徴と政治革新への道

1、中曽根内閣の「戦後政治総決算」路線

 第16回党大会決定は、自民党政府と日本独占資本がとっている基本路線を、「世界の帝国主義・独占資本主義陣営のなかで、アメリカ帝国主義の目下の同盟者の役割を経済・政治・軍事の全面でより攻勢的に果たす方向」の推進と特徴づけた。これは圧倒的多数の国民に新たな経済的困難を強要すると同時に、核戦争による民族死滅の危険とさえ結びついた、軍国主義と日本型ファシズムの暗黒の時代を再現しようとするものである。

 党大会の4ヵ月後に中曽根自民党内閣が成立した。中曽根内閣は、成立直後の首相訪米で「日米運命共同体」論、「日本列島不沈空母化」論を公然ととなえて、広範な国民の批判をあびた。その後、“内政・外交重視”の姿勢をとり、最近はふたたび日米軍事同盟最優先のほんらいの姿勢を強調するなど、表面的には“風見鶏”的な変転があったが、この内閣が3年間突きすすんできた道は、70年代なかばから顕著になってきた第二の反動攻勢のもとで、日米軍事同盟の強化、日本の軍国主義、帝国主義復活・強化と日本型ファシズムへの道を新たな段階におしすすめるものである。

 第一に、中曽根内閣は、「シーレーン防衛」など軍事分担をすすんでひきうけ、日米共同作戦計画案に署名するなどアメリカ「有事」のさいの自衛隊参戦体制の具体化にふみだした。自民党政府はこれまで、軍備の保持、したがって軍事費の支出を禁じている憲法の制約をきりぬけて軍拡をすすめるために、“軍事費は対GNP比1%以内”といった条件をみずから決定してきたが、中曽根内閣は、この政府決定までとりはらい、アメリカの軍拡要求に全面的に応じて自衛隊増強を新たな危険な段階におしすすめつつある。核兵器の問題でも、国民の不安と憂慮に背をむけて、核巡航ミサイル・トマホーク積載艦のうけいれを公言して「非核3原則」の空洞化をいちだんとすすめ、アメリカの核攻撃部隊と自衛隊との共同作戦および作戦中の先制核攻撃を容認する態度を明示するなど、アメリカの核戦争体制に日本をくみこむ道に、いちだんと深くふみこんだ。また沖縄で、米軍基地強化のため、不当な土地強奪を、長期にわたって継続しようとする新たな策動が強まっていることは重大である。

 外交面でも、アメリカの極東戦略が要求する日米韓軍事同盟の条件づくりにとくに力をいれ、国連やサミットその他の国際舞台でも、レーガン政権のもっとも忠実な副官として、核軍拡の推進役を買ってでている。

 第二に、中曽根内閣は、軍事費拡大と財界奉仕を聖域としつつ、臨調「行革」の名のもとに、戦後確立され定着してきた福祉、社会保障、労働条件と権利にかかわる諸制度をつぎつぎと破壊してきた。地方自治を財政と行政の両面からしめつける「地方行革」、電気通信事業の民営化、全国統一の鉄道網を分断して財界・大企業の利潤追求にゆだねる時代逆行の国鉄分割・民営化など、国民生活と日本経済への攻撃は、年ごとに広範かつ深刻となり、財政危機の反動的打開のために大型間接税導入のくわだてもすすめられている。

 第三に、中曽根内閣は、「国家改革」を呼号して、日本型ファシズムと軍国主義復活強化の方向で日本の政治体制の再編成をおしすすめ、“日米軍事同盟体制国家”ともいうべき事態をつくりあげようとしている。「スパイ防止」というニセの口実で言論の自由・鉦遺の自由をいっきょに奪いとる戦時立法「国家機密法」制定の策動、結社の自由をふみにじる政党法制定の執ようなくわだて、自米軍事同盟と独占資本の要求にそった人づくりをめざす教育臨調、「行革」に名をかりて内閣にいっそう大きな権限を集中しようとするたくらみ、国会を形がい化する“審議会”政治、文化にたいする反動的イデオロギー攻撃と統制などは、すべてこの反動計画の重要な一翼をになうものである。自衛隊の梅外派兵、さらに徴兵制度も可能にする軍国主義の全面復活をめざして、憲法の明文改悪の危険も、ますます切迫したものとなってきている。政府が、この8月15日、従来の政府統一見解をも投げすてて強行した靖国神社「公式参拝」は、憲法上の制約をはじめどんな障害をも無視して過去の侵略戦争の正当化をはかり、日米軍事同盟下の軍国主義体制づくりにまい進しようとする反動的企図を、あらためて明示したものである。

 金権腐敗問題でも、この内閣は、田中=ロッキード問題のたなあげと弁護の立場に終始した。

 中曽根内閣が「戦後政治の総決算」の名のもとにこれらの反動政策を追求してきた根底には、アメリカ帝国主義の戦略的要求と同時に、日本独占資本の対米従属下の軍国主義、帝国主義の復活・強化の野望がある。日本独占資本は、世界資本主義の諸矛盾の深まりのなかでその経済力をしぶとく強化し、競争力も強め、対外直接投資でも米・英につぐ規模をもつ世界有数の資本輸出国におどりでるにいたった。多国籍企業の形態での海外進出も、本格的な段階にすすみ、自民党政府の「国策」を背景に、またアメリカの対外政策の補完的役割を積極的ににないつつ、きわめて攻勢的な活動を展開しつつある。日本独占資本は、中曽根内閣との結合をいっそう密にし、国内では「民間活力」論など財界・大企業の利益をあからさまにおしだした経済・財政政策を推進し、国際的には“西側同盟”内でアメリカにつぐ地位をしめることでその野望を果たそうとし、日米軍事同盟体制国家づくりを、危険な段階におしすすめようとしている。

 これらすべてのことは、中曽根内閣を「戦後最悪の反動内閣」と規定したわれわれの指摘の適切さを文字どおりしめしている。

2、反共野党の新与党化と「翼賛政治」再現の危険

日本共産党は、中曽根内閣がその危険な性格をあらわにした最初の段階から、中曽根内閣打倒の方針を明確にしてきた。わが党以外の野党のあいだでは、反対に、新与党化はいよいよ強まり、あからさまに自民党との連立を政権参加の目標とするようになってきた。野党のこの状況は、ブルジョア・マスコミの全体としての右傾化とともに、政府・自民党の反動化を大きく助長している。

 中国が、日米軍事同盟の存在やアメリカの世界戦略を補完する日本の軍事力の強化を是認し、反動的な日本政府との「相互信頼」を確認する態度をとってきたことは、中曽根内閣による反動路線の強行を助け、社会党などの右傾化を促進してきた。新自由クラブは、83年の入閣いらい、自民党と統一会派を形成し、結局は自民党の金権政治のわく内の一分派にすぎない実態を自己暴露したが、さらにことしの通常国会では、国家機密法の継続審議に賛成し、ファッショ立法の協力者としての姿をもさらけだした。

 民社党は、1960年の結党いらいの日米軍事同盟推進、大企業の利益代弁、反共反革新という反動路線をいよいよ全面化し、その支持基路である同盟系労組とともに、野党戦線・労働戦線右傾化の反動的推進力となってきた。ことしの党大会では、自民党との連合方針を公然とうちだすにいたった。

 公明党も、昨年の大会で自民党との連合方針を、可能な「選択」の一つとして公然と確認した。その反共反革新の性格は民社党と基本的に変わりないが、言論・出版妨害問題いらい、表むきは「政教分離」をとなえているものの、創価学会の権力支配をめざす「王仏冥合」の政教一致の実態は変わらず、その野望のためには、自民党との結合も、盗聴その他のどんな不法手段も辞さない、謀略的で反社会的な体質を特徴としている。70年代いらいの反共と新与党化の流れのなかでも、社会党の弱点につけこみ反共路線にとりこむ反共分断作戦で特別の役割を果たした。目的のためには手段をえらばぬ体質と、信仰を政治の道具として創価学会員を反共反革新の活動に動員する反動的“活力”とは、日本の民主主義政治にとって一つの重大な妨げとなっている。

 社会党指導部の「ニュー社会党」路線は、社会主義および革新の路線との根本的決別という点でも、自民党勢力との「大連合」に公然と道をひらいた点でも、1980年の社公合意を転機とする右転落の一つの到達点をしめしている。とくに、いま準備されている旧綱領の廃棄と「新宣言」の採用は、右転落路線を綱領的に固定化させ、この党を、民社党、公明党と本質的に変わらない反共野党――自民党との連合勢力の一つに退化させるものである。

 社公間での反共連合政権構想の合意いらいの5年間の経過がしめしたものは、自民党政権に代わる革新連合政権への道ではなく、わが党が当時警告したとおり、わが党以外のすべての野党の新与党化――自民党の補完勢力への転落であった。

 日米軍事同盟肯定を前提とした反共野党のこうした支配体制すりよりは、太平洋戦争前夜の日本の政治戦線を特徴づけた「翼賛政治」――日本共産党を除く全政党が日独伊軍事同盟と侵略戦争を賛美する立場で大政翼賛会に合流した事態の再現の危険を、大きくはらんでいる。

 日本共産党排除の反共主義が国会にまでもちこまれた結果、国会、とくに衆議院の運営は、わが党以外の与野党間の密室取引が中心となっている。これは、議会制民主主義を危機的な状態におとしいれ、国会運営の面から日本型ファシズムと「翼賛政治」に道をひらく危険をもつものである。

3、自民党政治と国民大多数の利益との矛盾の激化は避けられない

 日米軍事同盟の要求にすべてを従属させた中曽根内閣の「戦後政治総決算」路線は、圧倒的多数の日本国民の利益と日本の前途を平和、民主主義、国民生活・環境の全般にわたって、深刻におびやかしている。現在、政治戦線のうえでは、自民党と新与党勢力は絶対多数を誇っているが、日本社会の実生活のなかでの国民の大多数と自民党政治との矛盾は、いっそう深まりひろがっている。

 とくに、社会の究極的動向を決定する深部の力――諸階級・諸階層の経済生活と安全の面で、大企業の繁栄、軍備のはてしない増強のもとで、自民党政治と労働者、農民、勤労市民・中小企業家、文化・知識人、青年・学生、婦人など国民諸階層の利害の対立が強まりつつあることは重要である。

 米日独占資本の主導下で推進されている「高度情報化」、ハイテク(高度技術)中心の急遠な技術革新は、ME(マイクロ・エレクトロニクス)をテコとする大規模な産業再編成とともに、今日の生産関係のもとでは、労働者と人民にたいする搾取と収奪の強化の手段となっている一方、通信衛星の利用など日本の経済主権、通宿主権の侵害、軍事利用の危険も強めている。日本の労働力人口の3分の2をしめる労働者階級は、人べらし「合理化」、欧米諸国より年間300~500時間も長い労働時間と過密労働をおしつけられ、新しい職業病も生まれている。失業者の増大、パートタイマー、派遣労働者など新しい形の不安定就業の急速な拡大、賃金抑制と重税、住宅ローンなど家計の困難が強まっている。家庭崩壊や少年非行のひろがりの背景にも長時間労働、単身赴任などのしわよせがある。

 農業所得は80年以後連続低落しているが、中曽根内閣はアメリカの要求をうけいれて、農産物市場の開放をすすめ、完全自由化に道をひらくとともに、農業予算の連続大幅削減、生産者米価の抑制など農業の縮小再編を強行している。

 日本経済で大きな比重をしめている中小零細企業は、大企業本位の産業再編の影響や中小企業対策予算の年々の削減などのため、80年代連続4年減益がつづき、倒産もかつてなく増大している。高齢人口の増大のなかで強行された福祉、社会保障制度の改悪は、高齢者や障害者、病人の生活苦だけでなく、家族をふくめ国民多数の貧困化をすすめる重要な要因の一つとなっている。

 日米経済摩擦をアメリカ本位に調整する市場開放政策は、労働者・農民・漁民・中小商工業者の生活と営業に広範で深刻な犠牲をしいるものとなっている。

 これらの対立、国民の要求と不満は、対米従属下の軍国主義、帝国主義の復活・強化を基本とする自民党政治が必然的に生みだしているもので、自民党政治の立場では、解消できないものである。また、自民党政治に追従する新与党勢力も、個々の問題で野党的なかまえをみせて、国民に幻想をあたえ期待をつなじうとすることもあるが、その路線の根本において、国民の要求の代表者となることはできない。国民多数者のこの要求を真に代表できる政党は、革新の立場を堅持する日本共産党だけである。現実の政治的展開がこんごとも複雑な経過をたどることはさけられないが、ここに、国政革新の事業が、圧倒的多数の国民の支持の結集のもとに、最後には勝利をかちとりうる展望と根拠がある。

4、平和と革新の勢力の強化のために

 日本の現状は、対米従属下に軍国主義、帝国主義復活・強化をめざす自民党・政府・独占資本の政策展開の面でも、これをささえる「翼賛政治」型の政治状況の面でも、第2次世界大戦の前夜を思わせる危険な動きをしめしている。

 わが党は戦前の「翼賛政治」に反対した唯一の党として、戦後の憲法制定時、専制的天皇制支配を排し、徹底的な民主化を要求する見地から、天皇の象徴化など現行憲法の反動的条項に反対し、主権在民をもりこませるなど、より民主的な憲法を実現するため奮闘した。反動勢力が憲法改悪、天皇の元首化をくわだてている今日、憲法制定時にわが党のとった態度の正しさは、いよいよ明白となっている。党は憲法改悪がたくらまれている情勢のもとで、憲法の平和的民主的条項の擁護と完全実施、憲法改悪反対の旗をたかくかかげてたたかう。

 歴史を逆行させようとする執ようなくわだてにもかかわらず、第2次大戦の教訓から戦争と専制支配に反対する国民の意識、批判は根づよく、反動勢力も戦後40年の民主主義の成熟を無視しえず、むきだしの専制的手法でなく、議会制民主主義の空洞化をはかるなど日本型ファシズムの術策をろうしている。

 とくに戦前と決定的に異なるのは、各分野で、反動政治に反対し、右傾化の流れに抗する平和と革新の勢力が、独立と平和、民主主義と生活向上をめざす日本国民のたたかいの先頭にたっており、また、日本共産党が数十万の大衆的前衛党への発展をとげ、国民の利益を守り政治革新をめざす強固なとりでを形づくっていることである。

 日米軍事同盟の強化と大軍拡のための臨調「行革」路線が進行するなかで、労働者、国民の生活は悪化し、社会保障、雇用・労働制度が根本的に改悪されるなどの全面的な攻撃にたいして、新しい多様な形態でのさまざまな国民運動の発展の条件と契機が大きくつくりだされつつある。

 この3年間、明確になったことは、日米軍事同盟に反対するかどうかが日本の政治、政党間の闘争全体の中心となっていることである。これは、たんに安全保障の領域での選択の問題ではなく、わが党綱領がしめすように、日本の真の独立か、対米従属かという、日本民族の命運のかかった根本的な選択である。その点で、日米軍事同盟への批判、その廃棄の課題を日本の民族の自決権と真の独立を達成する問題として明確にすることが重要である。これはまた、日米軍事同盟強化と日本の軍国主義化の道が国民生活破壊への道であるという点からみても、文字どおり全国民的な中心課題である。

 党は、この十数年来、革新統一勢力とともに、革新3目標を堅持してきたが、この3目標を、情勢の現段階に即して、つぎのように充実させる。

 (1)日米軍事同盟と手を切り、真に独立した非核・非同盟・中立の日本をめざす。

 (2)大資本中心、軍拡優先の政治を打破し、国民のいのちとくらし、教育を守る政治を実行する。

 (3)軍国主義の全面復活・強化、日本型ファシズムに反対し、議会の民主的運営と民主主義を確立する。

 革新3目標は、国民多数者の利益と要求にこたえる力と意義をもっており、党と自覚的勢力が攻勢的な活動を積極的に展開するならば、情勢の革新的打開への展望を主導的にきりひらく現実的可能性が存在している。同時に、中曽根内閣がきわめて露骨にアメリカの核戦争準備への協力を明確にしているなかで、好核政府の打倒と非核政府の要求は重要な意義をもっている。

 非核の政府は、(1)核戦争阻止、核兵器の緊急廃絶 (2)非核3原則の厳守 (3)日本を核戦場化に導くいっさいの措置に反対 (4)被爆者への国家補償 (5)原水爆禁止世界大会の積極的伝統を生かしての国際連帯の5項目を案現する政府である。

 わが党をふくめこの5項目に賛同する思想・信条を問わない広大な戦線を形成し、好核中曽根政府の打倒と非核の政府の実現をめざす。

 これらの展望のもとに当面の重点的活動の任務はつぎの諸点にある。

 (1)原水爆禁止運動の前進 原水爆禁止運動の正しい発展のための闘争は、世界の反核平和運動にたいする唯一の被爆国国民の責務という意味でも、特別に重要な意義をもっている。さまざまな妨害策動を克服してかちとられた昨年の「東京宣言」とことしの「広島からのよびかけ」は、日本の原水禁運動がその国際的な期待と責務にりっぱにこたえた成果であった。この数年来の原水禁運動の困難は、根本的には、総評・「原水禁」ブロックが、1977年の統一の合意をほごにする一方、組織的策動によって原水禁運動と世界大会の指導権をにぎり、30年来の伝統をすべてご破算にして、自民党、公明党、民社党などの安保推進勢力も容認できる方向に運動を変質させようとくわだててきたことから、生まれたものである。彼らは、事前の変質策動に失敗すると、ことしの世界大会の場で、この大会を運動の課題も展望もしめさないたんなる討論集会にすることさえ主張した。しかし、世界大会では、「広島からのよびかけ」は、はげしい闘争の後、最終的には、総評・「禁」ブロックの代表もふくむ満場一致で採択された。このことは、原水禁運動と世界大会の伝統的な路線の道理ある性格と、妨害者たちの立場の不条理さの実証となった。

 この闘争を“コップの中の嵐”などとよんで“草の根”のねがいと対置させたりした卑俗な論評は、日本と世界の反核平和運動を大きく方向づけてきた、原水爆禁止運動の歴史的な意義にまったく目をつぶったものである。

 「東京宣言」「広島からのよびかけ」の実践を中心に、原水禁運動が日本国民の広範な世論を真に結集して前進発展するよう力をつくすとともに、変質策動がこんごどのような形であらわれようと、これを克服する原財的な努力を強めなければならない。

 (2)大衆闘争の積極的前進 大衆闘争全体の問題では、中曽根内閣の反動政策と対決する反核平和、民主主義、生活向上のたたかいに積極的にとりくみつつ、革新統一をめざす自覚的民主的な潮流を強化する活動を、目的意識的な系統性と一貫性をもってすすめることが重要である。

 とくに反動勢力が日本軍国主義の全面的復活の要求と衝動をいよいよはげしくしている今日、これを阻止するためにも、国民の目、耳、口をふさぐ国家機密法や政党法粉砕、憲法改悪反対のたたかいに広範な国民を結集することは、日本の前途にかかわる切実な課題となっている。

 日米合同演習反対、在日米軍基地撤去、核もちこみ反対など、日米軍事同盟の侵略的強化に反対する運動もますます重要となっている。

 文化、思想の戦線においても、日米支配層による軍国主義的反動化や退廃、芸術文化、スポーツへの介入、公的助成のきりすてなどに反対し、進歩と平和、民主主義の文化を発展させるたたかいの強化がつよく求められている。教育臨調に反対し、教育条件の整備、体罰をふくむ校内暴力の一掃、基礎学力の充実と民主的市民道徳の教育など、憲法と教育基本法にもとづく教育の民主北をめざすさまざまな運動を重視する。

 今日の情勢の特徴の一つは、国民の生活防衛の課題と核戦争阻止、核兵器廃絶、軍備増強やその根源にある安保条約廃棄などの政治課題との関連が、国民にとってわかりやすくなっていることである。自民党政治が国民生活にくわえている攻撃の一つひとつをとらえて、国民生活の防衛と向上のたたかいを発展させることは、政治革新の事業の国民的基盤をひろげる意義をもっている。

 全民労協による労働戦線の右翼的再編成の進行は、労働組合運動自体を、反革新と労資協調の危機的状況にみちびくと同時に、反共野党の新与党化を推進する大衆運動内部の基盤ともなっている。それだけに、労働組合の階級的民主的強化と階級的ナショナルセンター確立の展望のもとに労働戦線の革新的潮流を緒集する統一労組懇の役割は重要である。統一労組懇は、着実に影響力をひろげて、共闘の組合もふくめるとすでに250万人をこえる規模をもつようになり、国民的諸要求にもとづく一連の闘争でも、共闘の中心の役割をになってきた。労働者の生活と権利、職場の自由と民主主義の擁護という労働組合ほんらいの任務へのとりくみをふくめ、この運動の実力を着実に前進させる努力が重要である。

 経済構造の変化を反映して人口構成での比重が小さくなっているとはいえ、農民の運動と組織化は、労働者階級と農民の同盟、都市と農村の連合、商工業と農業の提携という見地から、特別の意義をもつ。社会党による全日農の私物化が横暴の度をくわえるなかで、農民運動全国センターの探究と確立の運動が新たに発足した今日、この運動を軸に、激化する農業・農村情勢に積極的にたちむかう農民の民主的な運動と組織を発展させるために奮闘する。また、漁民の民主的な運動と組織を発展させるため力をつくす。

 就業人口の5分の1をしめる勤労市民・中小企業家の運動を大きく発展させる活動も、都市における中間層との同盟の重要な内容をなす課題である。

 反共分裂主義をかかげる日市連流の「市民運動」などを除いて、圧倒的多数の市民運動、住民運動とその参加者は善意の運動であり、活動家である。党は、それらの運動とその参加者と連帯して活動をすすめる。消費者運動、住民本位のまちづくりの運動、自然と環境を守り、公害を防止する運動など、広範な市民運動、住民運動を発展させることも重要である。また、部落解放運動の正しい発展にもひきつづき努力をつくす必要がある。

 さらに、婦人、青年・学生、文化・知識人など、各階層、各分野の大衆運動へのとりくみのなかで、統一戦線を支持する革新的民主的潮流の強化のために力をつくし、日本の情勢を革新的に打開するため大衆的力量を、積極的にきずきあげてゆかなければならない。

 (3)革新統一戦線の運動 1980年の社公合意による社会党の右転落にさいして、第15回党大会は、社会党のたちなおりだけを待望する待機論にたたず、「革新統一を語り要望し、そのために共同して行動する自由な連絡、共同の場」として革新統一懇談会の運動を提唱した。その提起の正しさは、この運動の5年間の発展をつうじて全面的に実証された。全国革新懇は、今日、415万人にのぼる団体・個人を結集して、政治革新の三つの共同目標にむけて国民的合意を形成する活動の先頭にたつと同時に、国民のまえに提起される重要な政治問題や地方政治革新の問題についても積極的な研究と発言をおこない、地方・地域にも日常活動の根をひろげた統一戦線運動として、日本の政治革新の事業に重要な位置をしめみようになった。わが党は、この懇談会の参加団体として、こんごとも、この運動の発展、強化、拡大のために、中央・地方・地域でひきつづき力をつくす。

 革新3目標とそれにもとづく革新連合政権――民主連合政府の要求は、革新統一戦線の運動がひきつづき追求する国政革新の中心目標である。

 トマホーク積載艦寄港反対、政党法・国家機密法粉砕、健保・年金改悪反対など、平和、民主主義、生活向上の切実な国民的要求にもとづく統一行動の面でも、社会党・総評の反共分裂主義がいちだんと強まるなかで、自覚的民主勢力を中心とした統一行動が、昨年の7・29大集会の成功をはじめ、名実ともに国民的諸闘争の主流としての力量をもつ運動に発展してきたのは、この間の重要な前進である。ひきつづきその活動を強化する必要がある。

 革新自治体の防衛・再建・拡大は、地方住民の利益の擁護と同時に、全国的な政治革新の事業、革新統一戦線運動にとって重要な意義をもつ課題であり、条件があるところでは社会党などもふくめた地方・地域の統一戦線のために努力する。非核都市宣言を全国的にひろげる活動も重視してとりくむ。

 統一戦線運動の前進のためには、自民党とその追従勢力、国際勝共連合などの反共策動、“市民主義”や“無党派主義”を名とする日市連などの反共分裂主義、ニセ「左翼」暴力集団の策動など、各種の反共分裂主義をうちやぶるたたかいを、強化しなければならない

 (4)非核・平和の戦線、政府をめざして 各種の世論調査にもあらわれているように、被爆国日本の国民の、核兵器と核戦争への不安は、支配勢力のいかなる世論操作によってもおさえがたいほど、広範・深刻なものである。この広大な世論を、上述の単純明快な五つの目標のもとに広範に結集して非核、平和の戦線をつくり、非核の政府を実現することは、今日の情勢のもとで実現の可能性をもつ、きわめて重要な任務である。党は、非核・平和の強大な戦線とそのうえにたつ政府の具体的展望を、新たに、広範な国民によびかけ、その実現に向かって奮闘するものである。

 (5)党の政治的躍進 日本共産党の70年代初頭の国会選挙等での躍進は、政治戦線と各分野の大衆運動の全体に大きな影響をおよぼし、革新的上げ潮の政治局面をきりひらいた。今日、自民党政府の反動攻勢をうちやぶって国民の利益を守り、国政の革新にむかう政局と大衆運動の前進的変化と統一戦線結成への諸条件を発展させるためには、「国政選挙での10年来の一進一退」を大きくのりこえて、日本共産党の政治的躍進をかちとることが、不可欠の急務である。

第3章 量質ともに強大な日本共産党の建設のために

1、今日の発展段階における党建設の問題点

 党綱領確定いらい24年、わが党は綱領路線にもとづき、日本の真の独立と民主的再生、政治革新をめざす国民的闘争の先頭にたって奮闘してきた。高度に発達した資本主義国であると同時にアメリカ帝国主義の事実上の従属国となっている日本の現状を正確に規定し、対米従属下の帝国主義、軍国主義復活の危険な方向に反対し、日本人民の未来が、民族独立と政治・経済・社会の民主的変革を主任務とする反帝反独占の民主主義革命の方向にこそあることをしめした党綱領の路線と、それにもとづく党の政策・方針の正確さは、この間の内外情勢全体の進展によって、実証された。

 わが党の組織勢力は、この24年間に党員数で約5倍、『赤旗』読者数で約8倍となり、議員数も第8回党大会当時の国会議員6人、地方議員818人から、今日の国会議員41人、地方議員3600余人の現状に大きく前進した。党のこの政治的、組織的発展自体が、党の路線の在しさの歴史による有力な検証である。

 70年代なかばから戦後第二の反動攻勢が展開され、これに追従する潮流も顕著になったもとで、国政選挙での「一進一退」がくりかえされたが、わが党が政治、経済、イデオロギーの三つの分野の闘争で成果をあげ、困難、障害を克服しつつ、基礎的陣地を確保していることの意義は重要である。

 国政選挙での一進一退」を党の方針の誤りによるものとし、中曽根内閣の反動路線や社会党の右転落まで党の責任に帰するような、ごく一部の意見は、方針さえ正しければ万事うまくいくという階級闘争と歴史の発展法則を無視した観念論、敗北主義である。
 日本人民の利益の擁護者、歴史の進歩的開拓者としての日本共産党の役割は、党創立いらい一貫したものだが、自民党政府が「戦後政治の総決算」の名による反動攻勢をはげしくし、他の野党がこれにたいする本格的な対決と抵抗の姿勢を事実上放棄してしまった今日、国民の利益と日本の前途のために日本共産党が果たすべき使命は、特別に重大なものがある。

 情勢は、日本共産党の躍進、大衆運動における革新的民主的潮流の強大な発展、革新統一運動のあらゆる分裂策動をうちやぶっての確固とした前進をつよく求めている。これらの要求にこたえ、党の歴史的使命を果たすためには、それにふさわしい力量と剛毅強じんな党風をもった、質量ともに強大な日本共産党の建設が不可欠である。

 わが党は、量的には第8回党大会がかかげた「数十万の大衆的前衛党建設」の目標に到達するような発展をとげた。しかし、第2次反動攻勢のさまざまな否定的影響とも結びついて、党の隊列にくわわる1人ひとりが自覚的な戦士として活力を発揮する党をつくりあげるという党の質的建設の面は、全体としてなおたちおくれている。ここに、党建設の現段階の大きな弱点がある。これらの弱点を克服するため1977年の第14回党大会は、党の質的向上を重視して「教育立党」の方針を提起した。第16回党大会は、学習・教育活動と正しい党風の確立を、党建設の根本問題として強調した。

 第16回党大会以後3年間の実践は、党の質的建設のおくれを克服することが、党勢拡大の面での本格的前進にとって重要だということを、明らかにしている。全党は、党大会決定、それぞれの時期の中央委員会総会や第1回全国協議会の決定にもとづき、一連の運動を組織して党勢拡大の目標達成のため奮闘してきた。この奮闘は、そのときどきに一定の成果をあげ、最近も4月からの4ヵ月間に20万余の読者を拡大した。そして、第17回党大会をめざした「月間」の奮闘をつうじて機関紙拡大の現状は、第16回党大会がひらかれた1982年7月末の水準にほぼ到達し、前回総選挙時を日刊紙、日曜版ともに突破した。しかし、差し迫った国政選挙での躍進の条件をきずくには、さらに大きな全党的努力が必要である。

 この間、党の前進をささえてきた活動的な党員、なかでも機関紙拡大やパンフレット普及の活動でベストテンに数えられる成果を記録してきた議員、その他の同志たちの役割は、重大であった。これらは、共産主義者の真価を発揮した英雄主義的活動であり、こんごも全党を動かすけん引車としてますます先進的役割を果たすことが、つよく期待される。

 しかし同時に、指導機関の側には、少数の活動的な党員だけの党活動になれて、党のすべての隊列の自覚的結集という仕事に本気でとりくまず、活動に参加していない党員の状況には注意をはらわないという、前衛党の同志的精神とは無縁の惰性的な官僚主義もかなり広くみられた。

 党はこうした状況を打開するために積極的にとりくみ、その結果、9中総以後、決定読了が20~30%という低迷状態を克服し、十分ではないが今日、平均60%前後の前進へむかった。支部討議は1全協いらい90%台を維持し、とくに11中総決定は、十数年ぶりに98%に、大会議案の討議も97%にいそれぞれたっした。

 全党は、第17回党大会の決定、綱領、規約の一部改正とその歴史的意義を重視し、ただちに読了と支部討議にとりくまなければならない。ひきつづき「党のすべての隊列の政治的理論的向上をはかり、規律ある党生活、党活動に結集し、党の決定の正しい理解と実践の立場にたつ状態」(第16回党大会決議)を本格的につくりあげることは、今日の党建設の中心問題である。

 また、この間の党活動の弱点として、さまざまな分野の一部に、基本的にブルジョア個人主義に根ざしつつ、党員としての前衛性を失い、党生活から脱落し、党を裏切る分子が生じ、党からの批判と組織的処分の対象となった。各大会ごとに強調してきたように、民主集中制の思想と規律を不断に全党の血肉にし、分散主義を双葉のうちに克服することは、党建設上のひきつづく重要な任務である。党および民青同盟の一部の働き手に、反動権力から変節、裏切りへの執ような工作がむけられている事態を重視して、権力機関などの策動への不断の機敏なきびしい対応によって、党を防衛しなければならない。

2、決定の全員読了を軸に、知的自覚と活力にみちた党を

 (1)党の前衛性と活力強化のカギは、党員の知的自覚と理論的政治的水準の向上にあるが、そのための第一義的任務として、党の決定の全員読了をかならず達成し、これを全党の党風に定着させなければならない。

 党中央の決定は、党綱領の基本路線をそのときどきの国際、国内情勢に具体化し、全党的な実践を総括して、階級闘争を正しく前進させる方向と展望を提起したものである。それは科学的社会主義の理論と実践の今日的発展として、国内的にも国際的にも、その政治的理論的な正確さと先見性は、多くの歴史の試練をへたものである。この決定を読み、身につけてこそ共産党員らしい自主的、自覚的実践が可能となる。決定の読了と徹底、支部討議をこんごとも重視し、決定に結晶している党の政治的理論的水準が、なお全党のものとなるにいたっていない現状を克服することはひきつづき重要である。

 9中総、10中総、11中総決定読了の全党的な運動は、ことの重要性を強調し、力をそそげば、読了の速度もあがること、党の現状で、全党員読了が達成不可能な目標ではないことを、多くの具体的経験でしめした。そのなかで、これまでの不活動状態を脱して、党活動に自覚的に参加する党員も、多く生まれている。

 党中央の決定は、『赤旗』に発表されしだい、全党員がただちに読了にかかり、おそくとも1ヵ月以内に終わるようにする。読了をすすめつつ、各級機関と支部の会議でただちに討議し、決定にたいする理解を深め、具体化し、党員1人ひとりの任務もきめる。

 (2)24年間の実践をへて、その基本骨格の正しさが完全に証明されている党綱領は、今大会での一部改正によって、いっそう充実したものとなった。この間の党発展の基礎ともなった党規約も、この大会での一部改正によって、反動攻勢に抗して数十万の強じんな党をきずき、発展させる武器としてさらに充実した。これらは、第17回党大会の他の諸決定とともに、こんごの党建設と党発展のために、欠くことのできない重要基本文書である。

 (3)学ぶ党風の確立を重視し、新入党者教育と基本課程教育の期限内(おそくとも入党後3ヵ月以内)の修了、簡素化された独習指定文献の活用による独習推進と活動家の教育の保障など、学習・教育活動を抜本的に強化する。日々の『赤旗』を読み、毎日の活動の指針とすることも、全党にひきつづき徹底してゆく。

 (4)第16回党大会は、確立すべき党風を、大衆にたいする態度、同志にたいする態度、革命と任務にたいする態度、党にたいする態度の4項目にわたって定式化した。ひきつづきこれを党の血肉とするよう努力するが、党の活性化にとってとりわけ重視すべきことは、党員にたいする非同志的、官僚主義的な態度の一掃である。
 党員や党支部の状況を数字と文書だけでみて生きた実態をつかまない傾向、活動的な党員だけを視野にいれてその他の党員の状況に関心をもたず、党員の未掌握状態を放置している傾向などは、党が50万近い党勢をもつようになったなかで生みだされた官僚主義であって、全党員の自覚的結集を妨げる、指導の側の最大の障害の一つとなっている。

 すでに、全党員に手紙をとどける運動、決定読了のための対話運動、日刊紙未購読の党員への全党的なはたらきかけなど、この克服のための多くの努力がかさねられ、数万の同志がこれにこたえて党のたたかう隊列に復帰しつつあるが、これは、この問題の党建設上の重大さからみれば、まだ第1歩の前進にすぎない。ひきつづき、この克服に一貫した努力をそそぎ、党のすべての指導と活動からこの種の官僚主義を一掃することは、党風確立の緊急の課題である。

 支部活動の現在の弱点を克服するためには、支部、班の規模をちいさくし、会議で全員が発言でき、またたがいによく知り合い、支部指導部も日常的に全支部員の状態を知り連絡できるよう再編することが必要である。

3、幾百千万の大衆と深く結びつき、強大な党勢をもった党の建設

 党は、全党員が自覚的な戦士として活動に参加する方向への党の質的向上を重視するとともに、党の量的建設の面でも、幾百千万の大衆と結びついた大衆的前衛党の建設をひきつづき追求しなければならない。そのさい、規約にさだめられた入党の資格を資質一般に解消し、入党条件を事実上あいまいにする一部の傾向は厳にいましめ、資質ある人びとを資格ある人に高めるための多面的、系統的、計画的な党の活動を基本にしなければならない。

 (1)党と大衆との結びつきを強める党の日常活動は、とくに7中総以後、全体として強化された。生活相談所も、全国で1万5544ヵ所と史上最高となり、相談件数は大会後の3年余で167万件をこえた。すべての組織と党員は、「戦後政治の総決算」路線が、大多数の国民と自民党政治との矛盾をひろげ深めるもとで、こんごとも、大衆活動と党建設の「2本足」の党活動の方針を堅持し、大衆の要求を重視し、職場、地域、学園で大衆闘争の先頭にたち、要求実現のために力をつくす。とくに“草の根”の運動を重視し、反核・平和から文化、スポーツにいたる各種のサークルをふくむ大衆組織の確立・強化にとりくみつつ、党を国民からきりはなそうとする反共攻撃に事実と行動をもって反撃する。党支部の大衆のなかでの日常活動を強化し、党と大衆の結びつきをいっそうひろげ厚くするために、各級機関の日常活動促進の体制と活動を強化し、国民の利益の守り手である党ほんらいの使命を発揮するようひきつづき大きな力をそそいでゆく。

 (2)日本のように、巨大なブルジョア・マスコミをもった独占資本主義国では、人民の世論と運動をおこしてゆくうえで、人民の立場にたった、党の積極的で系統的な宣伝活動が決定的な意義をもっている

 宣伝活動では、口頭、文書、視聴覚など、どんな分野でも他党派にまけない活動が求められている。パンフレット普及は、党が発展させてきた重要な宣伝形態である。とくに1983年には「シリーズ・パンフ」を中心に、昨年1全協以後は「考える」パンフレットを中心に、それぞれ数百万部が普及され、広範な人びとを、それぞれの問題をつうじて党と革命の事業に接近させるうえで大きな役割を果たしつつある。国政選挙を目前にしている今日、得票目標に実際にみあった規模まで普及をやりとげることは、宣伝面での重要な課題の一つである。掲示板、地域、職場、学園の政治新聞などを重視することはいうまでもない。

 (3)党の思想的政治建設にとって機関紙活動は、党の動脈として、また幾百千万大衆との結合のパイプとして、ひきつづき不断の奮闘が求められる領域である。党が『赤旗』によって広大な大衆と結びつき、内外のさまざまな問題についての党の政策、立場とともに、内外の情勢や党と人民の闘争、その発展の方向を人民的立場で系統的に明らかにしてゆく活動は、国民の多数者を結集して国政革新の事業、党と革命の事業の成功をかちとるための基本任務である。

 わが党の機関紙活動は、多数の党員の献身と英雄的な努力にささえられて日本のすべての政党のなかで第1位の読者をもち、国際的にも資本主義国の革命運動のなかでは、たかい評価をうけている。

 わが党のきずきあげてきた機関紙活動でのこのような達成を全党の確信にするとともに、党と大衆との結びつきをより広範に保持し、真に革新の世論と運動を組織する力をもった人民的ジャーナリズムをつくりあげなければならない。機関紙活動での新たな前進に向かって、不屈、頑強、持続性、大衆への奉仕、などがつよく求められている。
 機関紙中心の党活動、機関紙拡大へのとりくみを全党に真に定着させるためには、さまざまな時期にいろいろな形態をとってあらわれる機関紙活動にたいする消極主義、日和見主義との闘争を、重視しなければならない。また、原点にたえずたちかえっての指導と活動が必要である。

 党組織のなかで大きな比重をもつ経営支部と党員が、経営内の労働者比での読者拡大を重視するとともに、他の職場、地域での拡大にもとりくむことが重要である。
 機関紙拡大の活動では、既得の陣地からの後退を許さず、つねに前進につとめること、そして1人ひとりの党員が1部、2部の機関紙を拡大することが党を強め、党と大衆との結合の巨大な前進になることを全党員の自覚にする必要がある。機関紙拡大とパンフレット普及を任務とする推進班活動を本格的にすすめるとともに、議員や力のある党員の積極的活動や、あらゆる条件、可能性を生かしたすべての党員の自覚的奮闘が重要である。後援会員が読者拡大に力を発揮した東京都議選の教訓も、全国的に生かさなければならない。

 欠配、遅配、未集金は、読者への重大な背信行為であり、即刻根絶しなければならない。この面では、第16回党大会当時と比べて、欠配が1万3000余件から2000件弱に、遅配が23万6000件台から19万1000件台に、未集金が55万5000件台から27万3000件台に、全党のねばりづよい努力によって大きな改善をかちとった。しかし、なお全面的な根絶ができていない。配達、集金の乱れにたいする思想刷新を強め、“機関紙革命”の方針を文字どおり結実させるためにも、ひきつづき機関と支部の機関紙部の体制強化につとめる。

 (4)党員の拡大は党建設の根幹である。当面、名実ともに50万の党を建設し、さらに60万の党をめざして計画的、系統的に努力する。

 党員は70年代初頭と比較して全体として大きく前進しているが、そのなかで工場支部と学生支部が後退し、青年党員の比重が年々低下していることは、党と日本革命のこんごにとって軽視できない問題である。

 とくに、あらゆる経営、職場に不抜の強大な党を建設することは、労働者階級の前衛党の不可欠の課題である。党機関は経営での党建設の、計画的に奥深くとりくむ方針を具体化し、その系統的指導にあたらなければならない。また、機関と党支部は、空白経営、空白職場に党を建設するため計画をたて、体制をとってとりくむ。

 すべての党組織は、7中総および民青同盟にたいする指導についての10中総の強調点をひきつづいて指針とし、改正された規約の精神を生かし、未来のにない手である青年・学生のあいだでの活動を強める。

 とくに青年・学生に平和と社会進歩への展望をしめし、各種の反共イデオロギーを打破する活動を強めるとともに、民主青年同盟を拡大強化し、党に迎え入れるためのとりくみを抜本的に強化する。党機関と党支部は、民青同盟の学習や活動にたいして、親身で系統的援助をおこなうことが必要である。対応する民青班をもたない党支部は民青班の組織に積極的にとりくむ。

4、選挙戦での新たな前進のために

 来年6月の参議院選挙と予想される総選挙で、わが党が新たな前進をかちとるとともに、あいついでたたかわれる中間地方選挙で勝利しつつ、87年のいっせい地方選挙でも躍進することは、わが党の当面する重要な政治任務である。

 この間、「戦後政治の総決算」路線を強行する中曽根内閣は、反共諸党の新与党化にも助けられて、その主要な攻撃のほこ先を共産党にむけ、選挙での共産党追い落としに全力をあげた。大韓航空機事件、ラングーン事件などを利用した大がかりな反共攻撃、「翼賛政治」型議会運営の国政、地方政治へのひろがり、この10年間で4回におよぶ公選法の改悪、地方議会での議員定数の削滅と党略的分区、反共諸党派の選挙協力、わが党の進出を阻止するための立候補や票の調整、警察権力のわが党への不当な弾圧・干渉など、あらゆる形の反共シフトが強められた。

 こうしたきびしい情勢のもとで、わが党は反動攻勢と果敢にたたかい、国会議員総数は前大会時の41名を維持してきた。また、地方議員でも、いっせい地方選挙で得票を全体として約170万のばし、中間地方選挙でも東京都議選で議席をふやすなど、地方議員総数も3600名台を維持し、野党第1党の地位を守りぬいた。

 議会と選挙の現行の制度には、党の得票率が正確に議会の、構成に反映しないなど、多くの反民主主義的な制約があり、議席の増減を、政治変革の事業の前進の度合いをはかる唯一の絶対的な物差しとすることは正しくない。しかし、この時期、わが党が、はげしい反共攻撃、反共シフトのもとで、国会、地方議会での党の陣地を基本的に守りぬいたことは重要な政治的意義をもっている。

 同時に、地方議員数が前党大会以後若干後退していることは、第8回党大会いらい、大会ごとに地方議員数を前進させてきたわが党の歴史と伝統にてらしても重大である。

 当面する参院選、衆院選、いっせい地方選挙と一つひとつの中間地方選挙で着実に勝利をかちとるためには、第8回党大会いらいの選挙活動における不滅の教訓にしっかりたちもどり、これを発展させることが、今日の情勢のもとではとくに重要である。第8回党大会の政治報告では、選挙戦の前進の前提として、つぎの四つをあげている。

 (1)大衆のあいだでの日常不断の活動

 (2)大量宣伝

 (3)機関紙誌の拡大

 (4)広範で多面的な組織づくり

 歴史の検証にたえたこの選挙闘争の原点を堅持することがいっそう重要になっている。10月にたたかわれた釧路市議選で選挙方針を一面的に単純化して議席を半減させた失敗は、重要な教訓をふくんでいる。

 党は、次期大会までにおこなわれる三つの全国選挙で、過去最高時を上まわる議席を獲得し、すべての選挙区で得票と得票率を抜本的に前進させることを目標として、奮闘する。86年の参院比例代表選挙は、政党を直接えらぶ2回目の選挙であり、議席増のためには、前回獲得した400万余票をかため、さらに500~600万の得票を獲得しなければならない。これを全党の統一的な目標とする。参院選挙区および衆院の現職区、回復区など全選挙区で前進をかちとるため奮闘する。また、地方議会選挙で、現議席の維持だけを目標にする現状安住の傾向をいましめ、条件のあるところでは、力関係の科学的な評価と、革新の党にふさわしい開拓者精神とを結びつけて、空白克服と議席増を意欲的に追求する姿勢がつよく求められている。この間の中間地方選挙で着実に前進をかちとることも、もちろん重要である。

 全党はただちにすべての選挙の候補者を決定し、これらの選挙をたたかうための体制をとる。同時に、この3年間、国政選挙でも地方選挙でも、反動攻勢をはねのけわが党の陣地を基本的に守りぬいたことに確信をもつとともに、これにあまんぜず、前衛党らしい気概をもち、第8回党大会いらいの試されずみの選挙方針を堅持し、とくにつぎの諸課題を中心に、選挙戦での新たな躍進をかちとるために全力をつくさなければならない。

 (イ)中曽根内閣の悪政によって、国民の要求、不満は山積している。生活相談や日常の世話役活動を強め、国民の切実な要求を積極的にとりあげて、その解決のために努力することは、わが党の立党の精神でもある。大衆との結びつきを不断にひろげ、強化し、民主的大衆組織はもちろん、各種サークルをふくめ大衆組織を拡大、強化することを一貫して重視する。議員・予定候補は、党支部と一体となって大衆活動、大衆宣伝の先頭にたつことを強める。

 (ロ)全有権者を対象とした攻勢的政治宣伝を日常不断に強め、これを先行させ、選挙準備から選挙期間のすべての段階で重視することは、わが党の選挙闘争方針の鉄則の一つである。「党おしだし、反共反撃をはじめ、党の政策と実績、理念と歴史を明らかにする宣伝戦を、あらゆる活動に優先させてやりぬくことをどんな場合でも基本方針にしなければならない」(第16回党大会4中総)。

 もともと、宣伝は、大衆闘争、党建設、選挙闘争の共通の土台をなすものである。的確な内容の宣伝は、機関紙読者でなくてもわが党の見解を知る重要な機会となり、わが党への偏見も大きくとりのぞかれることになる、アンケート活動を重視し、宣伝の内容も大衆の要求や関心とかみあったものにしていくことも重要である。

 (ハ)機関紙読者拡大をはじめ、基礎的支持勢力を日常的に拡大し、とくに機関紙読者を前回選挙時の3割増以上、有権者比で得票目標達成にふさわしい水準に高めることは、はげしい陣地戦にうちかち、選挙戦に勝利する不可欠の課題である。東京都議選の教訓を生かす道は、機関紙読者拡大をはじめ基礎的支持勢力の拡大を、選挙が間近にせまってからあわてて始めるのではなく、早くから勝利に必要な陣地構築をゆるぎなくすすめることである。

 (ニ)選挙準備活動を日常不断にすすめるためには、日本共産党後援会をすべての行政区と地域、職場、学園と“タテ線”に確立し、会員を拡大し、活動を強化することである。

 (ホ)以上の活動を全面的にすすめるためには、すべての支部と党員が、党大会決定と中央委員会総会決定を読み、討議し、党の隊列を強化し、全党員が知的自覚と戦闘性をもって選挙勝利のためにたちあがることが基本的前提である。

5、「党建設と党活動発展の総合計画」の設定

 第17回党大会は、第18回党大会をめざす「党建設と党活動発展の総合計画」を決定し、今日の歴史的情勢にこたえる量質ともに強大な党建設と党活動に、計画的にとりくむこととする。

 (1)「総合計画」は1987年11月末までを目標期限とする2ヵ年計画である。

 (2)「総合計画」は、党と大衆との結合、大衆組織と統一戦線運動の前進、国政選挙および地方選挙での前進を展望し、党の支部の確立や充実、空白克服、機関紙誌の拡大など諸分野の拡大目標も明確にした総合的な目標として、設定する。

 (3)この立場から、つぎの5項目の計画を具体化する。

 (1)決定の読了・討議と学習教育の計画――第17回党大会決定の読了をはじめ、そのときどきの中央委員会決定を全党員がおそくとも1ヵ月以内に読了し、かつ支部で討議する党風の確立と定着、すべての党員が日刊『赤旗』を読み、独習の計画をもつ、新入党者教育、基本課程教育の期限内修了の体制を確立する、各級機関幹部の教育などを、計画の柱とする。

 (2)大衆との結合の強化、民主的大衆組織、サークル等の確立・拡大をふくむ大衆諸活動の計画支部の日常活動、世話役活動や生活相談、既存の大衆諸団体への参加、要求実現の運動など、各階層の大衆のあいだでの日常活動、民主的大衆組織の確立・拡大・強化、反核・平和サークルや文化、スポーツのサークルなど大衆組織づくりの活動に計画的にとりくむ。とくに民主青年同盟の組織の確立と拡大には、特別の力をそそぐ。

 (3)党勢(党員・機関紙)・基礎的支持勢力の確立の計画――機関紙読者の拡大は、目前の国政選挙のために、前回総選挙比3割増以上の水準にできるだけ早く到達することを、全国共通の当面の最低目標とし、いっせい地万選挙や中間選挙についても、それぞれ前回比2割増を節目ごとの目標としつつ、2ヵ年間の拡大目標を、各級党組織が自主的に設定する。大衆運動、統一戦線運動など各分野での前進の目標から、拡大計画をたてることも当然である。

 党員の拡大は、名実ともに50万の党を達成し、さらに前進することを全党的な目標とする。

 後援会員の拡大、『女性のひろば』や『グラフこんにちは』などの雑誌、パンフレットの普及など、基礎的支持勢力の全範囲について計画をたてる。

 (1)党風・党生活確立、支部確立、党防衛の計画――第16回党大会が正しい党風の内容とした4項目の実践および党生活の4基準の徹底を重視する。12条該当党員の問題の解決、党員の未掌握状態の根絶をそれぞれ期限をきめて、かならず実現する。支部の再編・分割がおくれているところは、その計画を具体化し、すべての支部が「私たちの支部活動・10ヵ条」にもとづいて、支部生活の確立にあたる。党防衛では、支部に係をかならずおき、日常的に党防衛の任務にあたる。

 (2)空白克服(自治体および党組織〉、おくれた党組織の底上げの計画職場、地域の空白克服は、なによりも党機関が責任を負うべき問題であるが、支部・グループも、意識的にとりくむ必要がある。

 党員の対人口比、日曜版の対有権者比、国政選挙の得票率がとくに低かったり、党組織や議席が空白の市町村がとくに多いなど、おくれた党組織は、全国水準への到達をめざして、特別の計画的な奮闘が求められている。

 すべての党組織は、大会後ひきつづき、11月末まで「月間」の諸課題達成のために奮闘する。その成果にたって、「総合計画」の討議を開始し、みずからの「総合計画」をよくねりあげ、すみやかに作成し、第18回党大会をめざして、その総達成のために全力をそそがなければならない。

 第16回党大会以降の大衆活動、党建設にたいする実践は、党の支部とその指導部の確立・強化および中間機関の抜本的強化と指導水準を高めることがこんごの党発展にとって決定的であることをしめした。

 機関の指導のうえで、一つのことに力を入れると他の重要課題を手ぬきする傾向、全般への目配りがおろそかになり、結局、1課題だけのせまい指導と活動におちいるという弱点が広く存在している。第16回党大会以後も、党建設の二つの柱――機関紙中心の党勢拡大と学習・教育の課題とについて、しばしば“あれかこれか”がくりかえされてきた。この弱点の克服は、とくに重要である。特定の段階で、とくにおくれた課題を重点的にとりくむことはあるが、党建設の二つの柱は、一貫して戦略的に重視すべき任務である。

 各級の指導機関は、綱領路線と大会、中央委員会の決定にもとづいて政治、経済、イデオロギーの各分野の活動と党建設の課題など、党指導の全般にわたって指導と活動をおこなう責任をもっている。おくれている課題に力を集中してとりくむ場合でも、他の課題をおろそかにしてはならない。

 党中央では、党の指導が一面的になったり、課題が錯綜て混乱したりすることのないよう、書記局に特別の担当者をおいて、課題の調整をはかっている。県、地区の諸機関では、機関の責任者が課題や活動の調整の任にあたり、党活動の全体としての総合的な展開を保障してゆくことが適切である。

 党の質的建設、大衆との結びつきの強化を土台にした党財政の確立と健全化は急務である。党員の資格にかかわるものとして党費納入を重視し、機関紙誌とパンフレットの拡大、普及による事業財政や大衆募金網の強化のため努力する。機関財政の抜本的確立に力をそそぎ、「人は城」の見地にたって、一部機関での給与の遅欠配の一掃はもちろん、常任活動家の給与の改善につとめる。

 激動する内外情勢のもとで、全党が党の路線と方針に確信をもち、党中央に固く団結し、日本の民主的再生に向かって奮闘するならば、日本の革新的未来をかならずきりひらくことができる。それが歴史の法則である。