日本共産党資料館

日本共産党第18回党大会決議

(1987年11月29日採択)


第1章 第17回党大会から2年間のわが党の主要な国際活動と今後の課題

 1、核戦争阻止、核兵器廃絶のための努力と反核国際統一戦線結成の具体化
 2、世界の共産主義運動にある覇権主義の害悪との闘争
 3、「平和共存と社会主義」の問題
 4、社会主義国による反共野党の美化問題
 5、「資本主義の全般的危機」問題でのわが党の立場の重要性

第2章 第二の反動攻勢とたたかう唯一の革新的対決者としてのわが党の闘争

 1、国民のたたかいと国民のエネルギーの未来
 2、労働戦線の右翼的再編と「翼賛政治」化の進行
 3、今日の革新統一のためのわが党のたたかい
 4、二つの全国的選挙でのわが党の前進と今後の闘争

第3章 国内情勢の新たな特徴と結びついたわが党の任務

 1、日米軍事同盟と日米政治・経済関係の新たな特徴
 2、産業“空洞化”、多国籍企業化の問題と大企業の民主的規制の課題
 3、都市住民・自営業者、農民問題と革新統一戦線結成の新たな諸条件の拡大

第4章 党建設の立ちおくれを克服し、量質ともに強大な党を建設するための今後の課題

 1、「党勢(党員・機関紙)拡大全党運動」の意義と結果
 2、党員拡大と機関紙読者拡大は党建設、党勢拡大の二つの根幹
 3、党建設をいつもおくれた課題としないために
 4、科学的社会主義理論の学問的強化


 日本共産党創立65周年という記念すべき年に、わが党は第18回党大会をひらいた。第17回党大会いらいの2年間、わが党は複雑な内外情勢のもとで党の綱領と第17回党大会の決定を指針として、諸困難と精力的にたたかい、国際、国内両面にわたり積極的な活動を展開した。そして昨年の衆参同時選挙とことしのいっせい地方選挙の二つの全国選挙で前進を記録した。とくに参院比例代表選挙では史上最高の得票を獲得し、いっせい地方選挙では史上最高の地方議員をもつにいたった。わが党は、第18回党大会をいっそう輝かしい意義あるものにするため、大会をめざして最高の党勢を達成すべく「党勢(党員・機関紙)拡大全党運動」を展開した。第17回党大会が決定した党の路線と方針の正確さは、この間のわが党の実践と内外の諸事件の展開によって証明された。

 今日の情勢は、国際的には核戦争阻止、核兵器廃絶のためのたたかいで先駆的役割を果たし、国内的には戦後第二の反動攻勢のもとで唯一の革新的対決者としてたたかってきたわが先の歴史的役割をますます明確にしている。第18回党大会は、この任務を果たすうえで画期をなす大会であった。

 党創立65周年をむかえた日本共産党は、大会の成功をふまえ、立党の精神と、いかなる困難も恐れず歴史をみずからきりひらく不屈の革命的伝統にたち、わが党に課せられた歴史的任務を全力をあげて遂行し、党の新たな前進をとけるであろう。

第1章 第17回党大会から2年間のわが党の主要な国際活動と今後の課題

1、核戦争阻止、核兵器廃絶のための努力と反核国際統一戦線結成の具体化

 わが党は、第17回党大会の決定にもとづきこの2年間、なによりもまず、人類にとって緊急の問題である核戦争阻止、核兵器廃絶のために全力をあげてたたかった。第17回党大会は、核兵器が平和の維持に役立つという「核抑止力」論、核兵器廃絶を無限のかなたにおいやる「究極廃絶」論などをするどく糾弾し、また核兵器廃絶の課題を前面にかかげない各種の「均衡」論、「段階的廃絶」論を批判した。そして「地球上からの核戦争の脅威の根絶、核兵器の一掃をねがう世界のすべての人びと、組織、政党」にたいし、核戦争阻止のための個別課題と核兵器廃絶の課題を結合してたたかう壮大な「反核国際統一戦線」への結集をよびかけた。また国内的には「非核の政府」の問題の新しい具体化をすすめるため、平和と安全をねがうすべての人びとが賛同できる五つの目標──(1)核戦争阻止、核兵器廃絶を緊急課題として追求、(2)非核3原則の厳守、(3)日本を核戦場化に導くいっさいの措置に反対、(4)国家補償による被爆者援護、(5)原水爆禁止世界大会の積極的伝統を生かしての国際連帯──をかかげ、「非核の政府」の運動をいっそう発展させるようよびかけた。

 この2年間の国際情勢の最大の特徴は、核戦争阻止、核兵器廃絶のためのたたかいが全体として明確に前進したことにある。核戦争を阻止するためには核兵器の廃絶が不可欠であり、それは緊急の課題であるとする世論が、広範な国際的潮流として形成されつつある。

 第17回党大会から2ヶ月後の1986年1月、ソ連は期限を切った核兵器廃絶、そのための包括的な核軍縮提案をおこなった。また、核戦力の均衡を自己目的として追求したプレジネフ時代とは異なり、核兵器を地球上から一掃したうえでの通常兵器の低いレベルによる安全保障という考えが提起されるようになってきた。

 反核・平和の国際的運動の面では、「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名が、第17回党大会当時、135ヵ国、国内で1500万人であったのが、今日では150ヵ国におよび、27国際組織の支持をうけ、国内で2700万人の署名へと発展している。ことしの原水爆禁止世界大会は、「ストックホルム・アピール」の2倍の10億の署名を集めることを提起している。世界平和評議会など国際平和・民主組織の活動も活発化し、これまで根づよく存在していた核兵器廃絶をユートピア的思考とみなす傾向、特定の社会主義国の当面の外交交渉の課題を世界の人民の運動の最優先課題とし、核兵器廃絶を緊急課題とすることに抵抗する傾向などが克服されつつある。

 これらの前進が、核戦争阻止、核兵器廃絶を人類にとって緊急・中心課題として位置づけた1984年12月の日ソ両党共同声明の力の発揮であることは、明白である。また昨年8月、日ソ両党共同声明で規定された定期協議としておこなわれた不破委員長とゴルバチョフ書記長との会談、この間におこった核兵器をめぐる諸問題についてわが党がそのつど表明してきた政治的、理論的活動、ことし6月、30ヵ国の共産党、労働者党、民族解放戦線、平和組織からの代表の参加をえてひらかれたわが党主催の核戦争阻止、核兵器廃絶のための「国際シンポジウム」などは、これらの前誠に大きく寄与した。

 原水爆禁止1987年世界大会国廉会議が、核戦争阻止、核兵器箆棒を緊急課題とする「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名10億をめざす国際共同行動の一環としてよびかけた10月24日の「平和の波」は、世界的には50ヵ国でとりくまれて成功した。

 しかし今日、核戦争阻止、核兵器廃絶のたたかいは、核兵器固執勢力の露骨なまきかえしという、新たな問題に直面している。

 現在、国際政治の焦点となっている米ソの中距離核ミサイル全廃条約は、従来の軍備管理ではなく、一つの分野ではあるが核兵器を実際に削減する明確な核軍縮となり、世界の反核・平和勢力を勇気づけるものとなる。しかし西側サミットでも、公然と「核抑止力」論をかかげ、核兵器の廃絶に反対する勢力が根づよい状況のなかで、さまざまな障害もっくりだされてきた。しかも、この条約の対象となっているのは、地上発射の中距離核ミサイルであり、その全廃が実現したとしても、なお海洋配備の中距離核兵器、核積載爆撃機など他の中距離核兵器は残り、また戦略核兵器、戦術核兵器が残されたままになっていることは、いうまでもない。

 この2年間の米ソ交渉の経過をみても、核実験全面禁止協定の締結問題など個々の核軍縮を妨げているのは、核兵器にしがみつく「核抑止力」論の立場であった。世界的に反核・平和運動が前進し、成長をとげたとはいえ、反核・平和勢力はまだ、核兵器固執勢力を包囲し、孤立させるにいたっていない。

 今日の反核・平和勢力の中心課題は、この「核抑止力」論を政治的、理論的に徹底的に打破し、核兵器固執勢力を孤立させ、力関係を変えることである。「核抑止力」論に根本的に対置される政治的課題は、核兵器廃絶である。個々の核軍縮の課題も、核戦争阻止のために有効な個別的課題も、核兵器廃絶の課題を前面にかかげ、この「核抑止力」論を打破するたたかいの前進と結びついてこそ実現が促進されるものである。ここに、核兵器廃絶・核兵器全面禁止協定の締結のためのたたかいと個別課題実現のためのたたかいを切り離すべきでない理由がある。ことしの原水爆禁止世界大会が、中距離核ミサイル問題だけに反核・平和勢力の努力がむけられるのではなく、核兵器全体を廃絶するたたかいにむけられなければならないことを強調したことは重要である。「段階論」は正確な対応ではない。米ソ交渉をふくめ、国際政治の交渉の場でも核兵器全体の廃絶をねばりづよ<提起することが必要である。

 ことしの6月にひらいた「反核国際シンポジウム」でわが党が提起したように、反核・平和勢力と核兵器固執勢力の力関係を変えるうえで、好核政府が支配する独占資本主義国、とくにサミット参加7ヵ国の世論を変えることが決定的に重要である。ベネチア・サミットは「核抑止力」論をふりかざし、「核兵器固執連合」の立場を再確認した。この点で唯一の被爆国であり、サミット参加国である日本で展朗されている「非核の政府」をめざす運動は、重要な意義をもっている。

 この2年間、中曽根内閣・自民党は、SDI協力参加決定、アメリカの核積載艦船の入港うけ入れ、アラスカへの中距離核兵器百発配備要求など、アメリカの核戦略に積極的に加担してきたアメリカの核兵器は「良い核」、ソ連のは「悪い核」とみなしたり、通常兵器があるかぎり核兵器廃絶は危険などとし、「『核兵器廃絶』は日本の平和を破壊します」とする自民党パンフをいぜんとして発行しつづけている。わが党は、国会で日米間の核密約を暴露し、また自民党パンフ問題を徹底的に追及してたたかったが、この意義は大きい。

 政府、自民党が「国際国家日本」なるものをふりかざし、アメリカの核戦略に積極的に協力・加担する根底には、日本をアメリカの「核のカサ」にしばりつけている日米軍事同盟がある。「国際国家日本」論とは、日米軍事同盟のもとでの日本の軍国主義・帝国主義の復活・強化を背景にして、日本は西側の立場にたたなければならないという「西側一員」論にもとづき、憲法の制約も国民世論も無視し、国際的規模でアメリカにいっそう積極的に協力・加担するための新たな「理論的」よそおいである。NATOや日米軍事同盟が「核のカサ」ブロックであることからも、資本主義国の反核・平和運動が、軍事ブロックの均衡こそが平和の保障であるという古いテーゼから軍事ブロックの解体という新しい「平和の哲学」に前進する必要がある。

 今日、日本で日米軍事同盟廃棄のたたかいをすすめるとともに、「国際国家日本」論をふりまきながら「核抑止力」に固執する自民党に決定的な打撃をあたえるうえで、「非核の政府」の運動を急速に発展させることは、日本国民に課せられた緊急の任務である。

 核兵器固執勢力を包囲し、世界の力関係を変えるうえで決定的なカギとなるのは、反核国際統一戦線の結成である。

 第17回党大会は、「反核国際統一戦線への結集」をよびかけたが、ことし4月に発表された宮本議長とルーマニアのチャウシェスク書記長との共同宣言は、共産党間の共同の文書としては初めて反核国際統一戦線の結成をよびかけたものであり、他の世界的諸問題への解決策の提起とともに、今日の世界で重要な意義をもつものである。また、ことし6月、わが党が主催し、大きな成果をあげた「反核国際シンポジウム」の参加者の多くが、わが党の提起する反核国際統一戦線に関心をはらった。国際的な平和・民主団体のなかでも、わが党と日本の自覚的勢力の奮闘によって反核国際統一戦線結成の機運がたかまっている。

 第18回党大会は、この事業をいっそう前進させるため、反核国際統一戦線結成を具体化するつぎの方針を提起し、日本と世界の反核・平和勢力がその実現のためにともに奮闘することをよびかけるものである。

 (1) 反核国際統一戦線は、反帝、反資本主義の統一戦線ではない。思想、信条、社会体制の選択の相違をこえて核戦争阻止、核兵器廃絶の目標で共同できるすべての団体・個人が、この戦線を構成する。包囲し孤立させるべき対象は、核兵器固執勢力である。(戦線という名称については、こだわらない。すべての人びとにとって合意のえられる名称とする)

 (2) 反核国際統一戦線の具体的内容は、核兵器廃絶を緊急・中心課題とし、この課題と核戦争阻止のための個々の課題、核軍縮のための個別的課題を結合することにある。こうして世界の反核・平和勢力の地球的規模の合流をつくり、核兵器固執勢力を包囲し孤立させ、それに勝利する。

 (3) 組織形態は、各国人民の反核・平和運動の結集の場とする。世界の共産主義運動の全体としての共同には、現在なおさまざまな障害があるが、世界の共産主義者が、この反核・平和の民主運動の共同の発展に力をつくすことは、可能であり有効である。

 (4) 核兵器廃絶を口ではとなえながらも、その国で実際には好核勢力と連合したり、また連合をめざし協力関係をもつ政党、勢力や個人は、構成員とはしない。それは彼らを美化し、それぞれの国の国内での反核・平和闘争に混乱と困難をもたらすからである。

 (5) 以上の方針にもとづき反核国際統一戦線を結成するための連絡、協議をおこなう。

 日本共産党は、この方針の実現のためにあらゆる努力をはらい、核戦争阻止、核兵器廃絶のために全力をあげて奮闘するものである。

 また核兵器が廃絶されても、膨大な通常兵器が蓄積されている今日の世界の状況のもとで、わが党が通常兵器の大幅削減のためにも奮闘することは当然である。現在、核兵器保有国と軍事同盟で椿ばれている国の通常兵器が核戦略体制の一環にくみこまれていることをみれば、この課題はいっそう重要である。社会、公明、民社の各党が国会で軍事費削減を要求しえない現在の日本の政治状況のもとで、わが党の役割は、この点でも重大である。

2、世界の共産主義運動にある覇権主義の害悪との闘争

 第17回党大会決議は、他国の党と革命運動に干渉する大国主義、覇権主義は「社会主義と人類の未来をそこなう」ものであり、「他党の内部に対外追従の反党分派を育成し、他国の党と革命運動への介入の先兵とすることは、世界の共産主義運動からただちに一掃すべき最悪の干渉主義である」と規定し、大国主義、覇権主義克服の努力をひきつづく全党的任務とした。また、干渉を合理化する「『併党論』は、一国一前衛党という科学的社会主義の原則とは絶対に両立しえない」ことを指摘し、各種の対外盲従反党分子、集団のあらゆる策動を粉砕することをよびかけた。

 わが党は、この2年間、とくに中国共産党との関係の問題をめぐって、この任務を遂行するため全力をあけて奮闘した。このわが党の努力は、世界の共産主義運動の大義、社会主義の大義を守る原則的闘争であった。

 中国共産党側の申し入れにより両党関係を回復するための日中両党会談がひらかれた経過については、第17回党大会で報告されている。その内容とその後の経過は、すでにわが党中央委員会の文書と会談の日本側責任の論文が詳細に明らかにしているとおりである。

 中国側は、(1)「文革」期の中国指導部によるわが党とわが国の民主運動にたいする乱暴きわまりない干渉を干渉と認めない、(2)「文革」期にわが党指導部の転覆をめざして支持、育成し、激励してきた干渉の産物である反党集団、反党分子との関係を断絶しないという理不尽きわまりない態度をとった。その後の経過のなかでもこの態度をとりつづけ、第1回会談で合意していた第2回両党会談も拒否し、結局会談うち切りを通告してきた。日中両党関係の断絶の責任はもちろん、両党関係が今日にいたるもいまだ回復されない責任は、すべて中国側が負うべきものである。

 中国共産党は、他国の党とは“過去は水に流す”“中国と友好を望むすべての人びとと関係をもつ”という立場で関係が回復されたと主張し、あたかもわが党が中国側に不当な要求をだしているかのような立場をとった。他国の党の態度がどうであれ、わが党は中国側が過去の干渉を不問に付し、中国との“友好”を口にしているからといって反党集団反党分子との関係を維持するような態度を、独立、平等、内部問題不干渉の原則とまったくあいいれないものとして、きびしくしりぞける。これは世界の共産主義運動の大義を守る原則上の問題である。

 いま世界の共産主義運動のまえには、この中国共産党の態度にみられるような覇権主義をいつまでも放置しつづけるのかという重大問題が提起されている。このような横暴がまかりとおることをいつまでも許しておくならば、世界の共産主義運動は、すでに30年近くにわたって存在する不団結と分裂、したがってまた世界の諸問題に共同して対処できないという無責任な低迷状況を克服することはできない。

 わが党はこの間、中国共産党の態度の背景にある中国共産党指導部のきわめて特異な、誤った対外路線の解明をおこなってきた。『前衛』に発表された論文「『文革』以降の中国共産党対外路線の本質」は個人論文ではあるが、その一つの具体的成果である。

 論文は、中国共産党指導部の対外路線について、「文革」以後、若干の変化がみられるものの、「文革」期に毛沢東が提起したといわれる「三つの世界論」の立場をそのまま継承したものとなっていることを具体的に解明した。現在の中国共産党指導部は、「三つの世界論」という言葉は使わな<なり、ソ連を社会主義囲とみなすなど若干の変化をみせてはいるものの、「三つの世界論」への自己批判をまったく抜きにし、中国がすすめている「四つの現代化」路線に資するならば、アメリカとの結託も日本、NATO諸国との連合も継続し発展させることを対外政策全体の基本としている。ことしの10月にひらかれた中国共産党第13回大会でも、これらの路線の是正はおこなわれなかった。

 中国指導部の対外路線全体の基本がここにおかれている以上、資本主義諸国の国内の階級闘争、革命運動がどうなろうとも、それへの関心そのものが生まれてこないことは当然である。現在の中国共産党指導部の対外路線を特徴づけるものは、このような実利主義と無原則性である。

 第18回党大会は、日中両党関係をめぐる問題について党中央委員会がとった立場とすべての措置を全面的に承認するとともに、「併党論」などにもあらわれるいっさいの覇権主義とこんごとも全力をあげてたたかい、また、反党集団、反党分子などのあらゆる策動を封殺し、世界の共産主義運動のなかから覇権主義の害悪を一掃するためにひきつづき全党が努力することを確認する。

 第17回党大会決議は、「覇権主義は、社会主義の大国だけにあらわれる逸脱ではない」ことを指摘し、朝鮮労働党が自国指導者の「主義」や「思想」を世界的な指導思想として、わが国におしつける覇権主義的行為を断固として拒否することを明らかにした。この間、わが党指導部の転雄をも公然とよびかけるにいたっているこの覇権主義にわが党は断固とした反撃をくわえたが、ひきつづきこのたたかいを強めなければならない。

 覇権主義一掃の事業は、わが党が核戦争阻止、核兵器廃絶のたたかいとともに国際連帯のもう一つの中心課題としている民族自決権擁護のたたかいを前進させるうえでも不可欠の課題である。わが党は、帝国主義によるものであれ、社会主義国の覇権主義によるものであれ、民族自決権のいかなる侵害も許さない。アメリカ帝国主義のニカラグアなどへの軍事干渉、他国の民族主椎の侵害に反対する闘争を強化しなければならない。さらに人種隔離政策(アパルトヘイト)に反対する南アフリカ人民の闘争、南アフリカの侵略・干渉に反対してたたかっているナミビア、アンゴラ人民の闘争、西サハラの民族自決権のためにたたかっているポリサリオ戦線のたたかい、イスラエルの占領地からの撤退と独立した国家の創建をふくむ民族自決権確立のためのパレスチナ人民のたたかいとの連帯を強化する。民族自決権の確立・擁護のためのアジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国人民のたたかいに連帯する。ソ連が民族自決権の完全な擁護にもとづく平和というレーニンが確立し実践した原則の立場で、アフガニスタン問題などこれまでの対外路線にあらわれた干渉の誤りをきっばりと清算することが、つよく求められる。

3、「平和共存と社会主義」の問題

 日中両党関係の問題とも結びついて、この間、平和共存と社会主義の問題が特別に重要な意味をもった。「三つの世界論」を事実上継承する中国指導部の対外路線には、平和共存についてのまったく誤った態度がある。

 中国指導部は、日中両国の平和共存のあらわれとして日中両国の「相互信頼」を日本政府とおう歌しあっている。しかし、その実体は、日本政府の反動的、反国民的政策を支持し、美化するものでしかない。

 第一に、侵略的な日米軍事同盟、自衛隊を容認する点である。この基本的態度にもとづき日米軍事同盟強化、自衛隊増強などの路線をこれまで無条件、無原則に支持し、美化してきた。これが日本社会党のなかの根づよい対外盲従体質とも関連して、安保・自衛隊容認への右転落の大きな要因となった。最近、中国指導部は日本の軍事費GNP比1%枠突破に懸念を表明しているが、それはGNP比1%枠以内であればよしとするものであり、日米軍事同盟・自衛隊容認路線に基本的な変化はない。

 第二に、日本政府代表への露骨なへつらいである。中国指導者と中曽根前首相との家族ぐるみの友好をはじめ中曽根前首相への特別の賛辞、さらにまた収賄・汚職の田中角栄との友好関係の維持などは、社会主義国の外交として常軌を逸したものである。

 第三に、日本の政府と独占資本がすすめる反国民的な「産業構造調整」政策を支持し、それを中国の「四つの現代化」に役立てるため、日中両国の経済関係を「相互補完関係」として結合しようとする態度である。「産業構造調整」なるものは、日本の産業を“空洞化”し、労働者階級、人民に新たな苦難をおしつけるものであり、国民の強い反対をうけているものである。この政策を支持し、中国の利益のために利用しようとする態度は、およそ社会主義とは無縁の立場である。

 現在、光華寮問題などで日中両国の政府間関係に若干の矛盾があらわれているとはいうものの、このような実体をもつ日中両国の「相互信頼」関係を今日でも双方は確認しあっている。わが党は、この2年間の活動のなかでも、社会主義国の側からの、このような態度によって形成される社会主義国と資本主義国の関係が、真の平和共存の内容とおよそかけはなれたものであることを明確にしてきた。平和共存とは、社会主義国と資本主義国のあいだにおこる諸問題を武力に訴えることなく平和的に解決し、社会体制の異なる諸国が平和的に共存することである。平和共存を最初に提起したレーニンは、資本主義国との平和共存を追求しながらも、資本主義国政府の反動的、反国民的政策を支持したり、政府の代表者を美化したりする態度を一度たりともとったことはない。中国指導部が日本政府とのあいだでおう歌する日中両国政府間の「相互信頼」なるものは、科学的社会主義の立場にたつ平和共存の原則に反し、日本の労働者階級と人民の社会進歩をめざす闘争の利益にまったく反するものである。

 同時に指摘されなければならない重大な問題は、社会主義諸国の一部がこの間、中曽根首相を「非核3原則を守る」政府の代表者であるとか、「平和と核軍縮」に賛成する代表者であるかのように美化してきたことである。日本の政府が核もちこみを実際には認め、日本国民の7割以上が非核3原則はまもられていないとみなしている事実、軍事費GNP比1%枠突破、SDI参加決定等々、中曽根自民党内閣が大軍拡路線を推進し、アメリカの核戦略強化に加担してきた事実をみれば、このような主張がなんらの根拠もないことは論をまたない。発達した資本主義国からの経済・技術援助が必要であるとしても、そのことによって日本の反動勢力の核兵器問題にかんする態度を美化するようなことは、社会主義の堕落である。平和共存政策の名でそれを合理化できるようなものではない。

4、社会主義国による反共野党の美化問題

 社会主義国の一部が、核兵器廃絶を口にするからといって社会党、公明党、民社党などの反共野党を美化し、彼らを反核勢力とみなしたりする重大な問題が存在する。これは、反共野党が日本国内で果たしている役割を無視し、日本の反核・平和運動に社会主義の側から重大な障害をつくりだすものである。これら反共野党の核兵器廃絶論は、自民党政府と同棟の「究極廃絶」論である。

 社会党についていえば、自民党との連合をめざして、安保条約・自衛隊容認など自民党への同郷路線をうちだし、国会では核兵器の緊急廃絶の決議案に反対し、原水禁運動でも、自民党政府と同様、抽象的に核兵器廃絶をとなえるが、核兵器廃絶を緊急課題にすることに反対している。社会党の「新宣言」では、従来の綱領的文書「日本における社会主義への道」でかかげていた「核兵器全面禁止」の旗もおろした。社会党は、こうした立場から日本の原水爆禁止運動の変質、分裂をはかる妨害勢力になっている。

 社会主義国の一部が、これまで他国に“友人が多ければ多いほどよい”とする態度からこうした反共野党を美化してきたことは重大である。社会主義国の党と政府が資本主義国の人民の自主的社会発展の道に妨害をもちこむことは、科学的社会主義の大義とは絶対に両立しない重大問題である。こういう事態を放置しておくことはできない。

 わが党は平和共存と社会主義の問題について、わが党の立場を明らかにし、科学的社会主義の原則的見地にたって誤った平和共存政策をきびしく批判した。この10月、党があいついで発表した二つの論文「日ソ両共産党関係を素描する──10月革命70周年にあたって」、「科学的社会主義の立場と日本社会党美化は両立しない」は、共産主義運動の問題として、一部社会主義国の覇権主義が、社会党美化などの傾向をふくめ、科学的社会主義、史的唯物論の見地から逸脱した重大な誤りであることを明確にしている。社会主義国が資本主義国との関係を律するにあたり、最低限のこととして資本主義国の革命運動、反核・平和の運動に障害をつくりだすようなことをすべきでないことをあらためて強調するものである。

5、「資本主義の全般的危機」問題でのわが党の立場の重要性

 第17回党大会は、綱領の一部改定にあたり、情勢を「リアルに分析し、主体的革命勢力の真の力」(「綱領の一部改正についての報告」)を強化する立場から、「資本主義の全般的危機」という規定を削除した。これは、その後、国際的にも大きな注目をあびた。

 この規定は歴史的には、社会主義国の一部指導者によって最初に使用され、それがコミンテルンにもちこまれたものである。しかし、「全般的危機」論は、なによりも資本主義国の問題である。

 資本主義のもとでたたかうわが党はこの間、この規定が(1)内容的には多くの不明確さをもつものであること、(2)経済的危機が自動的に革命的危機に転化するという単純な見方を助長すること、(3)社会主義国にあらわれる覇権主義やその他の否定的現象を矯視し、社会主義が資本主義国の革命運動に一路、肯定的影響をあたえているとする現実に合致しない誤った見地を前提としていることを、よりいっそう具体的に解明し、国際会議でもわが党の立場を積極的に明らかにしてきた。

 このわが先の立場は、世界の共産主義運動の発展にとっても、わが国の革命闘争の発展にとっても重要な意味をもっている。

 第一に、「全般的危機」論は、経済情勢依存の傾向を助長するところに重大な問題がある。経済情勢の深刻化は、革命闘争の主体的力量の強化・発展なしには、革命的危機に転化しない。

 第二に、社会主義国依存の受動的傾向を生む。今日の社会主義国が、一方で社会主義の優位性をしめしつつも、重大きわまりない否定的影響を世界の革命運動にあたえていることは、中国の覇権主義のあらわれ一つをみても明白である。これを、社会主義の歴史と現実が一路、世界に肯定的影響のみをあたえているかのようにみなすことは、根本的に誤りである。

 「資本主義の全般的危機」論は、長い歴史のなかで深く検討されることもなく、久しく慣用語的に使用されてきた。しかし、革命運動の発展のために、この概念に深い検討をくわえることは、いま、社会主義国および資本主義国の実態の科学的認織のためにも欠かせない国際的重要課題となっている。わが党はこんごとも、この問題をめぐって積極的な理論活動を国際的にも展開する。

 同時に全党は、第17回党大会決議が「経済的諸矛盾のどのような深刻化も、資本主義の変革につながる革命的危機を自動的にひきおこすものではない」ことを明らかにし、「それぞれの帝国主義国、独占資本主義国での進歩的変革は、その国の革命運動、統一戦線運動が、国民の支持のもとに政権をにぎるだけの主体的力量をかちとったときにのみ、日程にのぼってくる」ことを明確にした重要な実践的意義をみずからのものとしなければならない。

 わが党が、反核・平和運動の分野で世界世論をもりあげ、“力関係を変える”ことを提起してきたことも、革新統一戦線の条件を社会党の変化まちではなく主導的にきりひらく活動を前進させてきたのも、2本足の党活動で目的意識的、計画的に党勢拡大をすすめてきたのもこの見地にたったものである。これこそ、わが党の綱領路線である。わが党は、こんごともこの見地をつらぬき、情勢分析をおこなうさいにも、情勢を解釈するだけでことたれりとするのではなく、革命闘争の主体的力量の強化・発展、人民の闘争の強化・発展を重視する見地をつらぬき、情勢分析をたたかいの武器となるものにすること、客観的情勢の分析の結果を情勢打開の政治方向の明示につねに結びつけることが重要である。

第2章 第二の反動攻勢とたたかう唯一の革新的対決者としてのわが党の闘争

 わが党はこの2年間、中曽根自民党内閣が「戦後政治の総決算」をかかげてひきつづき強行してきた戦後第二の反動攻勢にたいする唯一の革新的対決者としてたたかってきた。わが党は、国民のたたかいの発展に重要な貢献を果たし、反共野党と労働戦線の右翼的潮流による「翼賛政治」化と日本型ファシズムへの政治の進行のなかで、今日の段階における革新統一とはなにかを明確にし、新しい革新勢力の共同の発展に寄与した。これらのたたかいの成果は、この間におこなわれた二つの全国選挙の結果にも結実した。中曽根内閣に代わってその継承をかかげる竹下内閣が登場したもとで、反動攻勢と正面から対決し、国民を結集して国民生活の擁護と向上、民主主義、平和と真の独立をめざすたたかいをひきつづき発展させなければならない。

1、国民のたたかいと国民のエネルギーの未来

 (1)売上税導入・マル優廃止問題での国民的反対闘争とわが党の役割

 第17回党大会決議は、中曽根自民党内閣が強行する反国民的政治と国民の大多数の利益との矛盾の激化は、避けることのできないものであり、「社会の究極的動向を決定する深部の力」がかならず発揮されることを強調した。

 中曽根内閣は、「戦後政治の総決算」路線をいっそう強力に推進するため、自民党の安定過半数体制の確立をめざし、社公民の反共野党をまきこんで衆議院のニセ「定数是正」法案を成立させ、衆参同時選挙を強行した。議会制民主主義を二重、三重にふみにじり、しかもウソとペテンでかためた同時選挙で自民党が大量議席を獲得したのを背景に、中曽根内閣は反共野党の助けもうけて、老人保健法改悪、国鉄を財界に売りわたし、国労、全動労の破壊をねらった国鉄の分割・民営化という「世紀の大悪法」などをつぎつぎと成立させ、国民への重大な攻撃をおこなった。また、地方自治を財政と行政の両面からしめつける「地方行革」のおしつけは、国民生活の全分野に重大な影響をあたえた。また、地方議会の定数削減をすすめた。

 自民党総裁の任期切れによって退陣した中曽根首相の指名で成立した竹下内閣は、みずから公然と「中曽根政治の継乗」をうたっているように、戦後最悪の反動内閣である中曽根内閣が5年間にわたって推進してきた反動路線を忠実に継承することを奪った内閣である。首相就任後のわずかの期間の発言をみても、軍拡の対米公約、大型間接税導入の意向表明などその反国民的要勢が明瞭になっている。この竹下内閣の反動政治も、かならず国民の批判をよび、「深部の力」は発揮されるであろう。

 この2年間の国内情勢の顕著な特徴は、同時選挙での自民党の大量議席獲得にもかかわらず、売上税導入・マル優魔止問題で国民の怒りが燃えあがり、ことしのいっせい地方選挙で自民党が大敗し、大増税関連法案をいったんは廃案においこむ国民的闘争が展開されたことにある。これは「保守化の時代」、「生活保守主義」など同時選挙後とくにふきだしたさまざまな現状肯定論を事実によってうちやぶるものであり、わが党が情勢を社会発展の法則にもとづいて解明してきた科学的社会主義の情勢論の正確さを証明するものであった。

 わが党は、売上税導入・マル優廃止に反対する闘争を展開するにあたり、この大増税が、議会制民主主義の根本をふみにじる公約違反であることを徹底的に明らかにした。また、この大増税の三つの動機──大軍拡、大企業奉仕、アメリカの要求──を国民に明らかにするとともに、これらの点で見解の相違があっても増税反対の1点ですべての人びとが結集することをよびかけ、国民のたたかいを鼓舞した。社会、公明、民社の各党が売上税導入・マル優廃止反対といいながら、わが党との共闘を拒否するだけでなく、わが党代表にたいする国会質問封じ、いっせい地方選挙前半戦の期間中の国会での政治休戦、知事・市長選などでの自民党とのいわゆる“ねじれ共闘”など、国民のたたかいに重大な障害をつくりだしたことも徹底的に批判した。

 この国民的闘争のなかで社公民の各党がとった態度は、これら反共野党の本質をしめすものとして、現在の日本の情勢をみる場合、重大な意味をもつものである。これら諸党が売上税導入・マル優廃止に反対したのは、公約違反の大増税の強行が国民との矛盾をあまりにも拡大し、この問題で自民党政府に同調するならは、自民党との連合をめざすこれら諸党の真の姿が国民のまえにただちに暴露されることを恐れたからにすぎなかった。そのためこれら講究は、国民の反対闘争を徹底させることができなかったばかりか、自民党との「協調」によって「直間比率の見直し」をはかるという大型間接税導入に火種を残す「議長あっせん」をうけ入れ、中曽根自民党内閣の延命にまで手をかす重大な裏切り行為をおかした。「議長あっせん」を社公民が拒否していれば、中曽根自民党内閣を退陣においこみ、その後の自民党政府の増税策動を封じることができたのは明白である。

 中曽根自民党内閣は、社公民のこのような態度に助けられ、わが党を排除した私的協議機関にすぎない「税制改革協議会」での自社公民の密室協議をよりどころにして、いったん廃案になったマル優廃止を復活、強行した・日本共産党は、国民生活擁護と民主主義の名のもとに、「税制協」の即時解散を断固として要求する。

 社会、公明、民社の各党が売上税問題でしめしたこのような態度の根底には、日米軍事同盟・自衛隊容認など自民党の内外政策の基本に追随ないし同調する基本的立場がある。マル優廃止問題での社公民の動揺的態度もここから生まれるものである。

 戦後日本のすべての重要な政治闘争は、日本を支配するアメリカ帝国主義と日本独占資本にたいする労働者階級、広範な勤労人民の闘争として展開された。この闘争でアメリカ帝国主義と日本独占資本の利益を代表するのは自民党であり、労働者階級、広範な勤労人民の利益を代表するのはわが党であった。この中間を、反共の立場を基軸とし動揺的にゆききするのが日本共産党以外の野党であった。一時期、地方政治で共社の共闘で革新自治体も生まれたが、その多くは自民党の革新分断とそれに同調する勢力によって破壊されてきた。そういう意味からも革新自治体の拡大、防衛の意義は大きい。

 現在、戦後第二の反動攻勢のもとで、社会党、公明党の反共連合政権構想で安保・自衛隊を容認する方向が強まり、自民党路線への同調、接近を全体として志向するなかで、これら反共野党の路線上、政策上の選択の幅は本質的にいってなくなっているか、あるいは非常にせまいものでしかない。アメリカ帝国主義、日本独占資本とたたかい、人民に依拠して政権をめざすのか、それとも自民党と連合して政権をめざすのかの選択がせまられる情勢のもとで、社公民は反共野党として、アメリカ帝国主義と日本独占資本の利益に奉仕する自民党の内外路線の基本への追随ないしは同調と自民党との連合という路線を、選択せざるをえなくなった。ここに反共野党の本質がある。

 このような反共野党は、自民党が国民との矛盾を拡大しているのと同様、不可避的に国民の大多数の利益との矛盾を激化させざるをえない。

 売上税導入・マル優廃止問題で国民がしめしたエネルギーは、自民党政府の反動攻勢にたいするわが党や革新勢力の正しいたたかいが堅持されるならば、反動攻勢野放しの悪政を許さない力を発揮する可能性がこんごもあることをしめしたものである。

  (2)日本型ファシズム阻止、民主主義擁護の国民のたたかいとわが党の役割

 民主主義擁護の分野でも、わが党は、国民のたたかいの先頭にたち、この間、重要な役割を果たした。

 中曽根内閣の「戦後政治の総決算」路線は、民主主義への攻撃を露骨化し、軍国主義復活強化、日本型ファシズムへの危険を強めた。日本型ファシズムへの危険は、日本共産党を排除した自社公民の密室協議による「翼賛国会」化という面からも、首相に“超特権的権限”をあたえる「安全保障会議」の設置、国民の目、耳、口をふさぐ国家機密法の策動、大学事議会の設置による「学問の自由」「大学の自治」破壊の攻撃などによっても強められた。

 党は、日本型ファシズムは、戦前とちがって議会制度の民主的外皮は残しながら、議会の形がい化をはかるという特徴とあわせて、日米軍事同盟体制国家をめざすという対米従属の特徴をもっていることを明らかにした。また前大会後、日本型ファシズムはすでに完成しているのではなく、われわれの課題は、日本型ファシズムの実現を阻止することであることを明確にし、第17回党大会で充実させた革新3目標も補強し、つぎのように定式化した。

 (1) 日米軍事同盟と手を切り、真に独立した非核・非同盟・中立の日本をめざす。

 (2) 大資本中心、軍拡優先の政治を打破し、国民のいのちとくらし、教育を守る政治を実行する。

 (3) 軍団主義の全面復活・強化、日本型ファシズムの実現に反対し、議会の民主的運営と民主主義を確立する。

 またわが党は昨年、反動勢力による「天皇在位60年祝賀」キャンペーンにたいして、それが侵略戦争の最大、最悪の責任者である天皇の美化や皇国史観のおしつけ、天皇元首化への地ならしなど、憲法改悪に道をひらくねらいをもっていることを全面的に批判してたたかった。皇国史観の宣伝者、中曽根前首相の「人権差別発言」は、世界中のはげしい批判をよぶとともに、国内では少数民族というべきアイヌの強い憤激をよんだ。天皇の美化と元首化は、主権在民の原則と歴史の進歩に反するものであることが明白になっているにもかかわらず、今日、天皇の病気、皇太子の「代行」と関連して、ふたたび天皇キャンペーンが大々的に展開されており、わが党の理論的、政策的対決点にたった宣伝を積極的に展開することが必要になっている。

 この間の国民のたたかいにもかかわらず、“大本営”の現代版といわれる「安全保障会議」が設置されたが、重要なことは、「治安維持法」の現代版であり、結社の自由を奪う政党法をわが党の先制的反革によって前大会まえに事前に封殺したのにつづき、自民党が今日でもいぜんとして執念を燃やし、再提出の策動をつづけているとはいえ、国家機密法を廃案においこみ、国会再提出を阻止しつづけていることである。わが党と『赤旗』は、国家機密法が戦前の軍機保護法、国防保安法の復活であり、国民の日、耳、口をふさぐ国民弾圧のファッショ法であることを明確にして国民にたたかいをよびかけ、先駆的役割を果たした。

 わが党は、党幹部宅の警察権力による盗聴事件を徹底的に追及し、中曽根自民党内閣にこの権力犯罪の事実を認めさせ、再発防止を言明させた。憲法違反が明確で陰湿きわまりないこの犯罪は、国民の強い怒りをよびおこした。とくに犯罪者が明確であるにもかかわらず、それを不起訴とした東京地検の不当きわまりない態度にたいし、国民的憤激がおこった。わが党が、この事件をわが党だけの問題ではなく、日本の民主主義を守るかどうかにかかわる国民的課題であることを訴え、多くの国民から支持と共感をえたことは、重要である。

 商業マスコミは、国家機密法が国会に提出されないかぎりは、一部をのぞいてこのファッショ法についての報道を避けたが、わが党幹部宅の盗聴事件については社会部ダネとしつつも、社説その他でこれに反応せざるをえなかった。これら二つの問題をとおして国民がしめした態度は、国民が民主主義を擁護する確固とした立場をつらぬき、民主主義の侵害にたいして強力なエネルギーを発揮することを証明している。

 日本共産党は、国家機密法の再提出阻止と完全粉砕、盗聴事件の徹底究明のためにひきつづき奮闘する。また、警察に巨大な権限をあたえる警察拘禁2法の制定を阻止しなければならない。今日、裁判所の反動化も、教科書裁判、厚木基地訴訟、水害訴訟などにみられるように許しがたいものがある。司法反動を阻止し、裁判所に憲法と人権を守る使命を果たさせることは重要なたたかいである。さらに、「君が代」教育による国民の軍国主義思想統制、SDI研究を大学、国公立研究機関にもちこむ産官軍学協同の推進、独占資本に奉仕する人づくりをめざす臨教審「教育改革」、「国際日本文化研究センター」創設などにみられる新国家主義のおしつけに反対するなど、自民党政府、財界・独占資本がすすめる軍国主義、帝国主義の復活・強化を基盤とした日本型ファシズムへのあらゆる策動に反対してたたかい、民主主義を擁護するために全力をあげる。

 憲法施行40周年をむかえ、憲法改悪に反対し、憲法の平和約民主的条項を守りその完全実施を求めるたたかいは、いっそう重要となっている。

 わが党は、自民党など反動勢力の憲法じゅうりんと空洞化の推進、反共野党のそれへの加担を糾弾し、憲法の平和的民主的条項の完全実施のためのたたかいをいっそう強化し、その先頭にたつ。

2、労働戦線の右翼的再編と「翼賛政治」化の進行

 第17回党大会決議は、全民労協による労働戦線の右翼的再編成の進行は労働組合運動自体を「反革新と労資協調の危機的状況にみちびくと同時に、反共野党の新与党化を推進する大衆運動内部の基盤ともなっている」と指摘した。この2年間の事態の進行は、この指摘の正確さを完全に証明した。

 中曽根前首相は、同時選挙後、「1986年体制」論をうちだしたが、これは自民党が公言しているとおり、反共野党のとりこみとともに労働組合運動をとりこみ、戦前の「翼賛政治」、「産業報国会」体制をつくりだそうとするものである。これに呼応して労働戦線の右翼的再編と反共野党の新与党化は、相乗作用をおこし急速にすすんでいる。

 反共主義と体制擁護路線にもとづく全日本民間労働組合連合会(「連合」)が11月20日に発足し、反共を旗じるしとし軍事同盟を容認する国際自由労連への一括加盟を決定した。それにさきだち前日の11月19日に同盟と中立労連がともに解散した。さらに総評は、1990年までに県評をもふくめて解体する決定をおこなっている。総評解体は、「連合」の反共主義、体制擁護路線への屈服、「連合」への「吸収合併」以外のなにものでもない。

 こうした状況のもとで、社会党右派と民社党主導による社会党と民社党の「歴史的和解」への一部の動き、社会党の右翼社民化による野党再編が進行しつつある。公明党も参院選での社公民統一名簿構想をうちだすなど、野党再編の動きを強めている。

 この期間、社会党では石橋委員長の辞任のあと土井委員長が誕生した。土井委員長は、初の女性党首としてマスコミの話題をさらったが、土井委員長のもとで社会党は、憲法による抽象的理想をときどき口にし、憲法の精神と自衛隊、安保条約とは両立できないなどということもあるが、実践的には安保・自衛隊容認という社公民政権構想の道を国会内外で日常的に追求している。山口書記長は、中曽根前首相や自民党をはじめ公明、民社、さらに労働組合右派幹部から求めつづけられてきた日米安保条約、自衛隊、原発、対韓政策の4点について、現実容認の見解を発表した。山口書記長見解の手口は、21世紀をめざす構想なるものを抽象的に描きつつ、実際には「現実主義」と称して自民党との同調路線を合理化していることである。

 このような労働戦線の右翼的再編と反共野党の新与党化の相乗作用は、自民党政府の反動的、反国民的政策推進に力をあたえ、国民に重大な打撃をあたえている。

 すでに昨年、反共野党と全民労協、同盟、総評指導部は、100年余の国民の共有財産である国鉄を、自民党政府が党略のためにつくりだした「赤字」を口実にして分割・民営化するという世紀の暴挙をおこなったのにたいし、賛成あるいは反対闘争の放棄という立場をとった。

 反共・労資協調路線をとり、「連合」結成を推進してきた全民労協、同盟は、資本とのたたかいを放棄し、その攻撃に協力しているだけでなく、自民党内閣の内外路線を支持し、マル優廃止、「直間比率見直し」を支持する態度を反共野党にさきがけて明らかにした。これとあわせて社公民は、日本共産党を排除した自社公民による密室協議でマル優廃止の国会審議に賛成し、また外為法改悪、労働基準法改悪、大学審議会設置法、日航民営化法、公害健康被害補償法改悪など国民生活と民主主義を破壊する諸悪法の成立を前提として審議日程をたて、まったくの短時間の形式的な審議でこれらを成立させるのに手をかした。このようなことは、これまでの国会史上例のない異常な事態である。密室協議を使先する自民党とこれら諸党の策動を許すならば、国会は「翼賛政治」の場となり、労働組合の「産業報国会」化とともに、わが党がくりかえし警告してきた日本型ファシズムを実現させることになる。

 同時に、国際的に日本の反共野党を美化することが、日本の反核・平和運動、革新運動にたいする妨害になることは、このような現実からも、いっそう明白であり、その克服が切実な課題になっていることをあらためて指摘する。

3、今日の革新統一のためのわが党のたたかい

 「翼賛政治」、「産業報国会」化に反対し、日本型ファシズムへの進行を阻止するためのわが党のたたかいは、日本の未来を左右する歴史的なたたかいである。わが党は、はやくも1980年の第15回党大会で事態の重大性を警告し、「資本からの独立」、「政党からの独立」、「労働者の要求の一致にもとづく行動の統一という労働組合運動の初歩的、基本的原則にもとづく労働組合運動の階級的ナショナルセンター確立の方針を先駆的に提起した。今日、統一労組懇は、この三つの原則をかかげて活動し、200万人近い勢力に前進している。ことし7月に開催された年次総会で決定され、たたかうまじめな労働組合に広く討議をよびかけた「階級的ナショナルセンター確立の展望と骨格」(案)は、今日の情勢のもとで階級的ナショナルセンター確立への労働者の自覚と世論を高めるうえできわめて重要な意義をもっている。

 また第15回党大会は、社会党のたちなおりを待望する待機主義にたたず、革新統一を語り、そのために共同し行動する自由な連絡、共同の場としての革新統一懇談会の運動を提唱した。今日、それは445万人にのぼる団体・個人を結集している。

 とくにこの2年間、二つの全国的選挙をたたかうなかで、わが党が、今日の段階における革新統一とは何かを明らかにしたことは重要な意義をもっている。革新統一を政党の組み合わせとしてのみとらえるのではなく、政治革新の目標で一致し、革新統一の共同の意思のある政党とすべての団体、個人を結集することが、今日の段階での革新統一である。またわが党が、革新を望む社会党員、社会党支持者との共同を重視し、ともに革新統一を結成するようよびかけたことは、重要である。これらの活動は、戦後、発達した資本主義国での新しい先駆的なたたかいである。

 「連合」の発足によって、いま、労働組合運動の「産業報国会」化、反共野党の「翼賛政党」化の重大な事態が進行するなかで、労働組合運動の内部にも社会党内にも新しい潮流が形成されつつある。「『連合』不参加」、「総評解体反対」をかかげる労働組合、労働組合員が増大している。民間大企業など右翼的潮流が主導権をにぎる労働組合の内部でも、「労働者の生活と権利を守る」という労働組合存立の原点にたった労働組合運動を求める声がたかまっている。労働戦線統一問題の新しい動向は、たんに右翼的再編が進行しているという事態だけでなく、一方で労働者の階級的自覚がたかまりつつある点にある。社会党内では「党建協」の発足などにもみられるように、「新宣言」路線に反対し、「反安保・反独占」の立場を守ろうとする社会党員の新しい動向が生まれている。これらの新しい潮流の形成は、社会発展の法則として不可避的である。いまこそ、右翼的潮流の新たな職場支配の全面攻勢にたいして、労働者の要求の先頭にたってたたかうことは、とりわけ今日のわが党に課せられた重大な責務である。このたたかいのなかでこそ、右翼的再編に抵抗するすべての潮流と勢力を結集する統一戦線が確実に発展するであろう。

 第18回党大会は、党が提起した先駆的方針への確信をあらたにし、今日の重大な情勢のもとで、たたかうまじめな団体・個人との共同と、今日の革新統一の結集のために全力をあげて奮闘する決意をあらたにする。

4、二つの全国的選挙でのわが党の前進と今後の闘争

 第17回党大会後の2年間に、86年衆参同時選挙、87年いっせい地方選挙の二つの全国的選挙と主要な中間地方選挙など大半の選挙が集中的にたたかわれた。

 これらの選挙の主要な側面は、わが党が前進したことにある。中曽根首相を先頭にウソとペテンでかためた同時選挙で、わが党は衆議院で解散時の27議席(革新共同をふくむ)を維持し、参議院で2議席増をかちとり、とくに比例代表選挙で得票数、得票率ともに過去最高の543万票(9.5%)を獲得した。

 売上税導入・マル優廃止をめぐり“日本列島騒然”たる情勢のもとでたたかわれたいっせい地方選挙では、わが党は7県145市町村で空白を克服し、前回比148議席増をかちとり、地方議員総数は、非改選議員をふくめ3824人という史上最高の地方議員を獲得した。この選挙でわが党だけがすべての議員選挙で前進した。婦人議員は、今回の結果だけをみても他党派の当選者合計をはるかに上回る400人にのぼり、わが党こそが歴史的にも現在も真の婦人の味方であることを実証した。また、福岡県知事選挙では、自公民連合がこんごの中央政局での彼らの主導権を確立するという野望をもって、革新知事打倒におそいかかってきたが、これをうちやぶった意義は大きい。東京都知事選挙では、社会党都本部がどんなことがあっても共産党の容認する統一候補には反対という主張を頑迷に最後までつらぬいて、社会党の指導部もこれに追随した。これにたいしてわが党は、新しい革新統一の力を結集してたたかった。第17回党大会後の中間地方選挙でわが党は、前回比86議席増をかちとった。

 これらの成果は、全体として(1)自民党の悪政とまっこうから対決し国民の真の利益を守る革新の政策を前面におしだしたこと、(2)反共野党の新与党化路線を暴落し、歴史、政策、実績にもとづく政党選択の基準を全有権者に訴えたこと、(3)綱領路線にもとづき、有権者比で得票目標をかかげてたたかったこと、(4)大量政治宣伝を戦略的に重視してたたかったこと、(5)党中央としては選挙準備をはやくからすすめたことなどによってもたらされたものである。

 しかし、これらの成果は、わが先に課せられている歴史的使命からみれば、ごく初歩的なものにすぎない。国政でも県政でも他党派との基本的な力関係は変わっておらず、わが党はたちおくれている。また衆参同時選挙で11の現有議席を失い、いっせい地方選挙では181人の現職議員を落選させ、1県11市67町村で新空白をつくった。その後の中間地方選挙でも30人の現職議員を落選させ、4市20町村で新空白をつくった。

 第17回党大会7中総は、現職議員の落選は「わが党の歴史的弱点」であり、空白議会の存在は、「党の歴史的使命からみても絶対に放置できないものである」と指摘し、「4年間にすベての空白議会を克服する」ことを決定した。このことの意義は、選挙結果からみて明白である。7中総決定以後の中間選挙の実態も、この課題の重要性をしめしている。戦後40余年たった現在なお、全国的に2県、32市、1156町村の空白自治体が存在する。

 こうした状況を克服し、わが党は前進しなければならない。現在の内外情勢は、わが党の前進を求めている。きたるべき国政選挙、東京都議選、沖縄県議選など地方選挙でわが党が昇進し、自民党と反共野党に痛打をあたえ、「翼賛政治」化、「産業報国会」化の政治の流れを逆転させ、国政革新の方向に日本の情勢を変えなければならない。これは、唯一の革新的対決者としてのわが党に課せられている当面の政治目標であり、国民にたいする兼務である。社会党、公明党より議員数でいつまでも劣るようなことでは、この事業を成功させることはできない。大志をもって、きたるべき選挙戦をたたかい、第18回党大会の成果の一つをここに結実させなければならない。

第3章 国内情勢の新たな特徴と結びついたわが党の任務

 わが党は、2年間の活動の成果にたって、国政革新の事業を前進させるために、現在の情勢の主要な特徴点に新たな分析をくわえ、たたかいの課題と方向をいっそう明確にしなければならない。

 現在の国内情勢の新たな特徴は、日米安保条約=対米従席の日米軍事同盟を軸として、日本が「西側一員」の役割を軍事、政治、経済のあらゆる分野で積極的に果たさせられることにより、アメリカ帝国主義、日本独占資本と大多数の国民との矛盾が軍事、政治、経済のすべての分野で、かつてのどの時期よりもするどいものとなったこと、またそれにしたがって政治諸勢力の配置図がいっそう鮮明になったことにある。

1、日米軍事同盟と日米政治・経済関係の新たな特徴

 いまもっとも重大なことは、世界の新たな流れに反して、「日米運命共同体」路線にもとづく日米安保条約=日米軍事同盟強化が急速にすすめられていることである。

 今日の世界の大勢は、核兵器の廃絶・大幅削減などの方向に向かっている。

 また、景近、ワルシャワ条約機構は、NATOとワルシャワ条約機構の同時解消、通常兵器と兵力の大幅削減をくりかえし提案している。これは、注目されるものであるが、まだ情勢が求めるほどの力づよい訴えとして世界を動かしているとはいえない。NATO加盟のギリシャ政府は軍事基地、軍事施設の撤去、合同演習への不参加を表明するなど、軍事同盟解消の方向での動きもおこっている。非核のためのニュージーランドの動向も重要である。非同盟諸国が軍縮、軍事同盟解消の世界的流れをつくるためにたたかっていることはよく知られているところである。

 こうした流れとは逆に、自民党政府は、戦前、日独伊反共軍事同盟が日本を破滅に導いた教訓から学ばうともせず、日米軍事同盟強化の道をつきすすんでいる。最近の動きだけをとっても、軍事費GNP比1%枠突破、SDI参加協定調印 「シーレーン共同作戦研究」の策定、「中期防衛力整備計画」の策定、安全保障会議設置、三宅島NLP基地化、逗子の米軍住宅問題をはじめ一連の基地強化、日米共同演習、自衛隊演習のいっそうの激化など、「西側の一員」として、アメリカの世界戦略に核・非核両面から積極的に加担・協力している。また、ASEAN諸国にみられる非核武装地帯設置の動向に干渉するなど、外交面でも「西側の一員」の立場からアメリカの補完外交をいちだんと強めている。

 しかも重大なことは、日米軍事同盟の強化が軍事、政治面にとどまらず、東芝・ココム事件、外為法改悪にしめされるように、貿易の自由をも日本から奪いさり、日本をアメリカの対ソ戦略に軍事、政治、経済の全面にわたってくみ入れたことである。ココム(対共産圏輸出統制委員会)は、アメリカ帝国主義が対ソ軍事力優位をめざしてつくったものであり、軍事同盟と不可分一体の秘密のベールにおおわれた協定である。これはほんらい、国際的にも国内的にもなんら拘束力のないものである。中国が日米軍事同盟を容認していることから、日本政府が中国をココム対象地域から除外したことは、ココムのもつ軍事的本質をいっそう明瞭にしている。アメリカが一方で日本にたいし、コメの輸入自由化まで要求し、他方でココムにより日本の貿易の自由を奪うことは、まさに言語道断である。

 これに追随し、日本政府がココム協定をたてに貿易の自由を制限することは、軍事ブロック優先の論理によって、経済の平等・互恵を侵犯する行為である。しかも、ココム協定を厳守させるため外為法の「安全保障」条項を強化し、商品の輸出、技術の国際交流すべてにわたって、アメリカの軍事戦略にもとづく貿易制限措置をいっそう強化したことは、ヨーロッパのNATO諸国と比較しても、日米軍事同盟下の日本の対米従属の深さを鮮明にしている。いまや日米軍事同盟は、まさに「軍事・政治・経済」同盟となり、戦前の日独伊反共軍事同盟と同様の反共軍事同盟としての性格をくっきりと浮かびあがらせている。

 日米安保条約=日米軍事同盟が日本経済にもたらす害悪は、「貿易の自由」の分野にとどまらず、日茶経済全体をおおい、国民生活を直撃している。アメリカの財政、経済困難を日本の犠牲で乗り切ろうとするアメリカの要求に自民党政府が属し、円高、市場開放、農業破壊、あいつぐ炭鉱閉山、「前川リポート」による「産業構造調整」と産業“空洞化”政策をすすめることによって、労働者、農民、中小企業者の生活は破壊され、地域経済は壊滅的打撃をうけ、失業は増大している。この根底にあるのも、日本をアメリカに全面的にしばりつける日米軍事同盟である。

 この重大な事態の進行にたいし、日米軍事同盟を容認する社会、公明、民社の反共野党は、国会で軍事賓削減を主張しえないばかりか、ココムからの脱退すら主張しえない。また保守的な経済界の一部からさえ、「前川リポート」による「産業構造調整」と産業“空洞化”が日本の国民経済を破壊するという非難がでてきているとき、社会党は「欧米諸国が、この報告にそった日本経済の転換に強い期待をいだいたにもかかわらず、……目に見える形でのとりくみやその成果をこれといって見つけることができない」(土井委員長国会質問)などとのべ、政府がアメリカの「期待」にこたえ「前川リポート」をいっそう推進するよう主張している。民社党は「前川リポートを推進してほしい」(塚本委員長NHKインタビュー)と主張、公明党も「経済構造を国際協調型」に変える(「21世紀トータルプラン」)、「市場開放行動計画」の「速やかな実施」(「87年基本政策」)を主張している。日米軍事同盟容認が、国民の利益をどこまで裏切るかの証左である。

 日米軍事同盟は、第17回党大会決議が指摘したとおり、「たんに安全保件の領域での選択の問題ではなく」、日本の軍事、政治、経済、国民生活の全面にわたる日本民族の命運にかかわる根本問題である。現在の情勢は、日米軍事同盟に反対するかどうかが、日本の政治、政党間の闘争の中心課題であることを、第17回党大会の時期よりもいっそうするどく提起している。日米安保条約を廃棄し、独立、非核、非同盟、中立の日本を実現する課題は、ますます重要となっている。全党がこの課題を全国民的な中心課題としてとらえ、日米軍事同盟の害悪を軍事、政治、経済のあらゆる側面から暴露する活動をいっそう重視してたたかうことは、わが党の焦眉(しょうび)の任務である。

2、産業“空洞化”、多国籍企業化の問題と大企業の民主的規制の課題

 この期間、世界資本主義経済は、レーガノミックスの破たんにともない、アメリカの70年ぶりの債務国転落とドル安への急激な転換、発展途上国の累積債務問題の深刻化など、いくつもの矛盾を激化させてきた。10月19日の“暗黒の月曜日”にはじまった株価暴落とドル下落はその矛盾の端的なあらわれである。しかし、アメリカ帝国主義が一路衰退に向かっているかのようにみることは、正確ではない。アメリカは、世界的に進出した米多国籍企業により、世界的規模で最大限の利潤を獲得している。アメリカが世界にはりめぐらした軍事同盟網は、米多国務企業の軍事的、政治的支柱となっている。レーガン政権は、みずからまねいた“双子の赤字”(財政、貿易赤字)の最大の原因としての核軍備拡張と多国籍企業による国内産業の空洞化に抜本的には手をつけず、軍事同盟をてこにもっばら西側諸国、なによりも日本に犠牲をおしつけることによって困難をきりぬけようとしている。

 日本独占資本は、日米軍事同盟による対米従属下での帝国主義的復活・強化の道をすすむことにより、日本の産業を“空洞化”させ、みずからも本格的な多国籍企業として繁栄をつづけようとしている。そのためアメリカからの不当な攻撃、米多国籍企業の対日進出に屈従する一方で、労働者、農民、中小企業者、国民各層にますます犠牲をおしつけている。

 現在、世界の大企業上位500社のうち79社が日本企業であり、日本はアメリカにつぐ第2位の地位をしめている。世界大銀行10行のうち6行までが日本の銀行である。また日本は、世界で最大の債権国となり、民間部門の対外資産の増加額は、1986年の1年間に約43兆6000億円、その証券投資は約18兆9000億円という膨大なものとなっている。こうして日本の大企業は、発達した資本主義諸国では類例のない低賃金、長時間労働、下請け中小企業の収奪による長期の資本蓄積をとおし、世界的大企業となっている。そのうえ大企業はいま、つぎの方向で本格的な多国籍企業化を追求し、産業の“空洞化”をすすめ、大量人べらし、下請け切り捨てなどいっそうの横暴をつくしている。

 (1)アメリカやアジア諸国などでの現地生産の比重を高める、(2)部品の調達先もアジア諸国に切りかえ、国内下請け企業を切り捨てる、(3)現地生産による製品を日本が逆輸入する、?国内生産は貸金が日本の4分の1~5分の1というアジア諸国の低い人件費コストを目標にしておこなう、(4)こうした前近代的な過酷な搾取によって国際競争力を強めアメリカ、ヨーロッパへの輸出も拡大する等である。このことによりかつて例をみない大量失業時代、中小企業の大量倒産時代がこようとしている。

 いま大企業がますます全国民の生活、世界の経済を左右する社会的存在となっているとき、このような反社会的行動を放置することはできない。マルクスは、「大洪水よ、わが亡きあとに来たれ!(あとは野となれ山となれ)」これが、すべての資本家の「スローガン」であるとのべ、資本家は「社会によって強制されるのでなければ」労働者、国民の「健康と寿命にたいし、なんらの顧慮も払わない」と指摘した。大企業に社会的兼任を果たさせるため、大企業の民主的規制がいまほど必要なときはない。

 日本共産党は、党綱領でも、また「民主連合政府綱領提案」、「日本経済への提言」でも、大企業の民主的規制を提起し、その内容を発展させてきた。第18回党大会は、今日の時点での大企業の横暴の新しい特徴をふまえ、大企業にたいする民主的規制をつぎのように提起し、労働者、中小企業者など広範な国民がその実現のためにたたかうことを訴える。

 (1)国民生活に重大な悪影半をおよぼす海外投資にたいして、事前に協議・検討できる民主的な体制をつくり、雇用、中小企業の経営、地域経済の安定を守るうえでの大企業の兼任と義務を明確にする。大企業が多国籍企業とんて国境なき利潤追求にすすみ、国内の産業“空洞化”失業増大をなんらかえりみないとき、この規制は不可欠である。

 (2)寄生的利益にたいする重課税、大企業優遇税制の廃止その他の方策で、大企業に蓄積された膨大な利益を国民生活の安定、真の内需拡大にふりむけさせる。1年間(1986年)で43兆6000億円も国外に資本流出させるほど潤沢な蓄積を達成し、通貨投機、財テク(資金の投機的運用)、不動産投機をはじめ、ますます寄生的もうけに手をだすようになっているとき、この措置はきわめて重要である。

 (3)労働条件の改悪に反対し、労働条件の根本的改善を実現する。大企業が、わが国の労働条件をアジア諸国の低賃金、長時間労働に近づけるため、労働者の生活と権利への攻撃、労働条件のいっそうの低下をはかっているとき、労働者はこれに反対し、労働条件改善のためにたたかわなければならない。

 (4)財政・税制の民主的改革、経済制度のあらゆる面で大企業の横暴を許さないための規制を強化する。自民党政府の臨調「行革」路線によって、財界のための、財政・税制のしくみや経済諸制度の転換がおしすすめられ、国民所得の再配分がますます逆方向にむけられている。とくに「民活」路線によって大企業の反社会的活動への規制が緩和され、国有地、公有地などが彼らに配分されている。このような横暴を野放しにすることはできない。

 (5)国際的な規制体制づくりもおこなわなければならない。多国籍企業にたいする行動基準の作成は、70年代半ばに大きく発展したが、多国籍企業やアメリカなど帝国主義・独占資本主義諸国のまきかえしにより後退している。新国際経済秩序の実現にむけた新たな国際的闘争が求められる。そのさい、発達した資本主義国の労働者階級として、大企業に社会的責任を果たさせる立場から(1)雇用、(2)下請け制度、(3)設備投資、(4)海外投資、(5)逆輸入、製品・部品輸入、(6)タックス・ヘイブン(租税回避地)の利用、(7)移転価格、(8)資金運用などで民主的な行動基準にもとづく規制をおこなわなければならない。

 いま発展途上国は、1兆ドルにのぼる累増債務、深刻な飢餓問題、発達した諸国との格差の拡大など重大な事態に直面している。これは発展途上国のみならず世界経済の発展にも重大な結果をもたらしつつある。南北問題の深刻化は、アメリカを中心とした独占資本主義諸国の新橋民地主義的支配、そのあらわれとしての多国籍企業と多国籍銀行の国際的搾取・収奪の結果である。宮本議長とチャウシェスク書記長の共同宣言が明らかにしているように、年間1兆ドルに達している膨大な軍事費を大略に削減し発展途上国の自主的発展に役立てること、新国際経済秩序の実現をめざすたたかいを強化することは、今日、緊要であり、それは「発展途上国とその人民にとってだけでなく、発達した資本主義国の労働者階級と人民にとっても、社会主義国にとっても、重要な意義をもつ」ものである。発達した資本主義国である日本において、独占資本の国際的横暴を許さないためのたたかいを断固として発展させなければならない。

 大企業の民主的規制を徹底させ、大企業の活動を国民生活全体の改頚、経済のつりあいのとれた発展にむけさせるためには、民主的政権の樹立が必要である。しかし、ここに提起したような個々の大企業による不当きわまりない反社会的行為をおさえることは、国民のたたかいによりそれ以前にも可能である。

 社会党が「新宣言」を採択し、従来かかげていた「反独占」の旗もおろしてしまった今日、独占資本に民主的規制をくわえ、社会的責任を果たさせるたたかいでのわが党の責任と役割は重大である。

3、都市住民・自営業者、農民問題と革新統一戦線結成の新たな諸条件の拡大

 日米軍事同盟の「軍事・政治・経済」同盟化は、日本の階級闘争の条件に新しい変化をもたらし、壮大な革新統一戦線を結成する条件をさまざまな分野にひろげている。自民党政府のひきつづく悪政のもと、産業“空洞化”、「産業構造調整」政策の推進により、いま都市は、新たな重大な事態に直面し、都市住民と都市自営業者のくらしと営業は深刻な打筆をうけている。

 〔都市住民と都市自営業者のあらにな動向〕 日本の人口構成の重要部分をしめ戦後一貫して増大しつづけてきた都市型自営業者は、80年代にはいり、「消費不況」につぐ「円高不況」のもとで、大資本によるはげしい収奪をうけ、小売、製造、建設業などを中心に大幅に減少してきた。これにくわえ、政府、自民党が推進する市場開放による製品輸入の拡大、大資本の海外進出による地域経済の破壊、都市再開発の推進による地価の異常高騰などが、「民活」路線の推進などとともに都市部から零細自営業者を締めだしている。地価の異常高騰とそれにともなう増税は、都市住民と零細自営業者を都市から追いだしている。宅地にかかる固定資産税、都市計画税と相続税の軽減は、保守層をふくめて緊急、切実な要求になっている。これらの全過程は都市自営業者のかなりの上層部にも波及し、不安を増大させている。売上税導入・マル優廃止反対闘争にしめされた流通、サービス業界のエネルギーは、今日の都市がおかれている諸条件の反映である。

 自民党は、その政治支配の“恒久化”をめざし、自民党の支持基盤を農村から都市にいかに拡大するかを重要戦略としている。しかし、日米の「軍事・政治・経済」同盟化を推進することにより、都市住民・自営業者との矛盾をますます激化させていることが現在の情勢の新たな重要な特徴である。党はこの矛盾を具体的にとらえ、たたかいを組織しなければならない。

 そのさい、重視しなければならないことは、発達した資本主義国の複雑な状況である。現在、従来型の自営業者は減少しているものの、情報化・エレクトロニクス化の進行にともなって情報サービス、調査、広告、デザインなど新しいタイブの都市型自営業が急速に増大している。また消費の「多様化」、「個性化」などといわれる状態のなかで、中規模の専門店が成長する一定の条件がある。これに膨大ないわゆる「サラリーマン」層の住宅・土地問題、高齢者の問題、子どもの教育・保育、医寮の問題などがくわわり、多様な要求と形態での住民運動もあって、都市特有の政治的、思想的状況をつくりだしている。党は、このように多様化している都市住民、都市自営業者の動向と要求を具体的に分析し、それにもとづく政策的提起をいっそう発展させなければならない。

 米日支配層が都市住民、都市自営業者とのあいだにつくりだすするどい矛盾を基軸にした要求と、こうした多様な要求をそれに結びつけるならば、都市住民、都市自営業者を壮大な革新統一戦線に結集できる。全党が、都市問題をいっそう重視し、このたたかいを積極的にすすめることは、現在の緊急の課題である。交差点交通事故問題、マンション問題でのわが党の対応は、都市住民層の切実な日常要求の解決の努力として重要な意味をもつものである。

 〔農業と農民問題〕 農業と農民経営は、文字どおり、“存亡の危機”にある。アメリカの圧力および、これに呼応した「産業構造調整」路線にもとづく農産物市場の開放、コメをもふくむ全面開放の動き、31年ぶりの生産者米価の大幅引き下げ、農業機械、肥料等の高い独占価格、地価高雅を口実にした農地への宅地並み課税・相続税の強化、産業“空洞化”による農民の兼業労働先の喪失など事態は重大である。農業切り捨て、産業“空洞化”路線をすすめる自民党政府への農民の不満はかつてなくたかまり、長期にわたり自民党の支持基盤とされてきた農村は、いま大きく変ぼうし、政治的転換期をむかえている。

 自民党政府は、「農業過保護」論や日本農業の歴史的、社会的条件を無視した「国際的たちおくれ」論などをふりまき、農民と都市消費者とを分断させ、農業切り捨て政策をおしすすめようとしている。また農民の兼業化、点業と非農業の混在化の進行など農村の都市化現象をとらえ、自民党の農村支配を古くからの支配機構の利用とともに、農村に進出した企業と右翼労働組合や商工会などの新しい組織を利用することによってもおしすすめようとしている。第17回党大会が強調した農業を日本の「基幹的な生産部門」とみなし、「都市と農村の連合、商工業と農業の提携」を重視するという農民運動の新たな観点は、米日反動層の攻撃にたいし、国民的団結をかちとり、反撃を組織する方針として、ますます重要となっている。「農業過保護」論、「国際的たちおくれ」論など商業マスコミをも動員したイデオロギー攻撃に反撃するとともに、この新しい観点にたって積極的かつ大胆に活動するならば、党が農民を革新統一戦線に結集し、また、これまで保守の基盤とみられていた団体や組織をもこの戦線に結集できる可能性が拡大している。今日の情勢のもとで、農業、農民問題を徹底的に重視してたたかうことは、わが党に課せられている重大な任務である。また、漁業・漁民生活の問題も重大であり、これをおおいに重視してたたかう。

 青年、学生、婦人、知識人、文化人、増大する高齢者などの諸階層と米日支配層との矛盾もいっそうするどくなっている。この分野での活動を強化しなければならないことはいうまでもない。

第4章 党建設の立ちおくれを克服し、量質ともに強大な党を建設するための今後の課題

 以上の諸課題を達成し、日本の革新的未来を実現するうえで決定的なカギをにぎるのは、量質ともに強大な大衆的前衛党をつくりあげることである。第15回党大会決定が指摘しているとおり「党勢拡大の規模と速さは、国政革新の展望」を左右する。

1、「党勢(党員・機関紙)拡大全党運動」の意義と結果

 日本共産党は、65年の不屈のたたかいによって、今日、約49万の党員、三百数十万の機関紙読者、600万前後の支持者をもち、反動勢力の総力をあげた攻撃にもかかわらず、国政革新の事業を断固としてすすめうる党に成長した。いま日本は戦後第二の反動攻勢のもとにあるが、戦前の「暗黒政治」の時代、戦後の「第一の反動期」とちがい、反動勢力の全面支配を許していないのは、このような党が存在し、それが広範な大衆と結合しているからである。

 国際的にもわが党は、自主独立の立場に確固としてたち、資本主義世界の共産党のなかで最有力の党の一つとして成長し、現在の資本主義世界全体に共通した困難な情勢のもとでも、その地位を確保するだけでなく、前進を記録している。そして科学的社会主義の原則の擁護と反核・平和勢力、民族自決権擁護の国際的事業の前進に貢献している。

 これらは、わが党の正確な政治的、政策的、理論的活動と第7回党大会6中総決定いらい、党建設を独自の課題として意識的、計画的に追求する全党運動を展開してきたことによってもたらされた成果である。第17回党大会後の2年間にも、わが党は政治的、政策的、理論的活動で貴重な成果をおさめ、内外で党の真価と党への期待を高めてきた。

 しかし、党建設の分野でのわが党の活動は、わが党が国際的舞台、日本の現実政治や大衆運動の面で果たしている役割に比べてみるとおくれがあることを率直に指摘しなければならない。1977年にひらかれた第14回党大会が「50万以上の党」の建設を提起したが、第17回党大会後もこの課題が達成されず、逆に後退し、横網紙拡大では最高時の350万から少なからず後退し、1973年の第12回党大会が決定した「400万以上の読者」の達成には、まだかなりの距離を残している。党はこのおくれをとりもどすため、第18回党大会にむけて「党勢(党員・機関紙)拡大全党運動」を設定し、名実ともに50万をこえる党、機関紙読者の最高時突破を目標とする運動を展開した。

 「全党運動」の到達点は、党員拡大では2万人をこえる新入党者をむかえ、この結果、党員は、1983年8月時点から後退していた状態を打開し、すべての都道府県が第17回党大会現勢を突破し、党史上最大の勢力をきずくことができた。しかし、「全党運動」の目標とした「名実ともに50万の党」は未達成となった。

 機関紙拡大では、「月間」および「全党運動」をつうじて47万人以上の読者をふやし、全党的には日刊紙、日曜版とも第17回党大会水準をこえて前進しているが、過去最高の峰を突破するという「全党運動」目標は未達成となった。

 全党は、第17回大会水準からも後退している党組織も少なくないというこの到達点を直視し、目標未達成の党組織が、大会後も党員拡大、機関紙拡大の目標を1日もはやくやりとげ、さらに着実に前進をつづけるために奮闘することは、全党的前進への自発的任務である。

 この任務をおくらせたままでは、わが党の正しい政治方針、政策的提起を国民各層のなかで実践し、具体化していく力と保障を欠くことになる。また党建設のおくれを放置することは、党の歴史的任務の達成を財政面からも大きく制約することになり、党の盛衰にもかかわる重大問題である。

 今日の内外情勢は、わが党の役割を明確にし、わが党の前進をつよく求めている。戦後第二の反動攻勢というきびしい条件のもとでも、540余万という人びとがわが党への支持を比例代表選挙で明記していることからみても、この課題を達成することは、まったく可能である。全党が党員拡大、機関紙読者拡大のおくれに悪なれする惰性を打破し、さまざまな日和見主義を克服し、この課題をやりぬくことは、日本の労働者階級と広範な勤労人民の要求であることを自覚しなければならない。たちおくれの放置は、現在の政治情勢からみても、わが党の歴史的使命からみても許されない怠慢である。

2、党員拡大と機関紙読者拡大は党建設、党勢拡大の二つの根幹

 党と大衆の結合こそ、わが党の歴史的使命を果たす根本的力である。したがって党員の拡大と、党を大衆と結びつける機関紙の拡大とは、党建設の基本である。わが党は、このことを強調してきたが、第18回党大会は、党員拡大、機関紙読者拡大は双方とも党建設、党勢拡大の根幹であることを確認する。全党はこの立場から、この二つの課題を日常的につねに追求し、わが党の新たな政治的前進をかちとらなければならない。

 (1)党員拡大──計画的、戦略的拡大を

 党の新たな政治的前進をきりひらいていくために、国民が働き、生活し、活動しているあらゆる職場、地域、あらゆる分野で、わが党が大衆的前衛党としての役割と力量を発揮できるように、空白克服などをふくめた計画的、戦略的な方針をもってとりくむことが、とくに重要である。このことは、第17回党大会後の党建設上の重大な教訓である。第17回党大会後の党員拡大は、党大会が「50万の党を建役し、さらに60万の党」をめざすことを提起したにもかかわらず、「党勢拡大全党運動」が提起されるまで、この間の入党者は第8回党大会以降で最低の水準に低迷し、第17回党大会現勢からも後退するという事態にあった。こうした重大なおくれはなによりも、党員拡大への計画的、意識的とりくみが極端によわまり、事実上自然放任という事態がつづいたことにある。このことは、第17回党大会後「党勢拡大全党運動」が提起されるまで、一人の新入党者もむかえていなかった支部が全党的に8割近くに達していたことに如実にしめされている。このような事態は、「全党運動」をつうじて3割の支部で克服されたが、いぜんとして約半数の支部が未成果という状態がつづいている。

 党員拡大にあたって重要なことは、こうした無計画、無気力な状態を打破し綱領実現の革命的大志に燃えた積極的姿勢を堅持し、一貫して計画的、系統的にとりくむことである。また、戦後40年以上を経過してなお党員の対人口比が0・25%以下にとどまっている党組織が残されている問題や、党組織空白が436町村もあり、また多くの経営が党組織空白になっている現状を直視し、革命的気概を発揮し、はやくこれらのおくれた状態を打開していかなければならない。また、第17回党大会で規約を改正し、青年・学生のとりくみを抜本的に強化することが決定されたが、この点でのとりくみが今日なお十分でない。青年党員の比重の低下という事態を党の未来にかかわる問題、党の活力にもかかわる問題として特別重視し、民青同盟への親身な援助とあわせて、機関とすべての党支部がこの分野で思いきった拡大を追求する。なかでも、学生のあいだでの党員拡大を抜本的に強化することは、急務である。また、労働戦線の右翼的再編に抗して前進できる不抜の力を経営や職場のなかにきずくために、労働者のあいだでのとりくみをいっそう意識的に追求する必要がある。党員拡大は、もっとも意識性を必要とする課題であり、計画的、独自的なとりくみを支部を基礎に徹底して推進することを、とくに重視しなければならない。必要な場合には党員拡大にふさわしい方法で一定時期に全党的な運動を展開する。

 (2)「前進をつづけ減らさない」機関紙拡大

 戦後第二の反動攻勢下で、わが国の巨大な商業マスコミは右傾化がいっそう顕著になり、それが流す洪水のような保守的な宣伝は、日々多数の国民に大きな影響をあたえている。こうしたもとで『赤旗』は、人びとの心を変え、多数者革命を推進する中心的武器である。機関紙活動は、大衆運動と日常活動、大量政治宣伝、党勢拡大、選挙闘争をふくむ党活動のあらゆる分野にわたって、党と大衆を結びつけ、革命の事業を前進させるかなめとして、特別重要な戦略約意義をもっている。また、わが党の活動をささえる最大の財政的基礎も、党費とならんで機関紙、雑誌、書籍活動の拡大と発展にあり、その中心である機関紙活動の前進は、財政的にも重大な課題である。

 この度点をつねに確固として堅持し、機関紙活動がもつ困難性から生まれてくるあらゆる局面での日和見主義的、消極的思想や段階論などを、理論的実践的に打破する断固とした思想闘争を不断に展開することによってこそ、機関紙活動での新たな飛躍をきりひらくことができる。

 第17回党大会決定は、前回の選挙時の3割増以上という機関紙拡大の目標を決定した。しかし、その後、現実には、機関紙読者数は、第17回党大会当時の水準をも大きく割るにいたった。このため党中央は、1987年5月、最高水準の早期突破を展望しつつ、7月末までに第17回党大会の水準を回復することを目標とする「機関紙拡大月間」をよびかけた。

 この「月間」では、約38万部を拡大したが、党中央は、目標を達成するにいたらなかった結果を重視し、後退をつづけた悪なれの惰性と結びついた経験主義を排し、小成に安んじることをつよくいましめた。

 第17回党大会決定は、“減らさず前進する”機関紙活動を強調し、「読者としっかり結びつく」ことを教訓として明らかにした。また、大会後、“減紙をなくす6ヶ条”を明らかにし、減紙防止の努力を強めてきた。しかし、8中総では、この方針を発展させ、「『減らさず前進』ではなく、『前進をつづけ減らさない』ことを基本的方向にすべきである」ことを決定した。減紙を上向るおう盛な拡大こそ、もっとも効果約な減紙対策である。これこそが最大の攻勢的防御である。第18回党大会は、こんご“減らさず前進する”というスローガンではなく、この間の全党的な実践の教訓のうえにたって、新しい知恵の発揮として“前進をつづけ減らさない”方針を基本とすることを確認する。

 そのためにも、すでに開始されている『赤旗』を親しみやすい政治的大衆紙にする努力をいっそう促進するとともに、第8回党大会4中総(1962年10月)で強調している読者を大切にする活動態度の確立、第11回党大会2中総(1970年10月)にもとづく「読者にたいする六つの心得」、第16回党大会で機関紙活動の6原則として追加した日常不断の読者との結びつきの強化等を指針に、読者との結びつきを強めることは緊要である。確実な配達、集金は読者への社会的信義として、その初歩的土台である。

 そして、重要なことは“ふやさなければ減る”を肝に銘じ、毎月、減紙を予測してそれを防止する積極的手だてをこうじつつ、確実に減紙を克服して前進するための目標、計画をもってこれをかならずやりとけることである。また、持続的、計画的な機関紙拡大にとりくむとともに、必要な場合には、「一定の時期の集中的拡大」にとりくみ飛躍的前進をはかることである。飛躍的拡大のあとの減紙を当然視する敗北主義、惰性を根本的に打破し、大会後は、3万でも5万でも毎月、持続的に拡大していくことを全党的な課題とする。これは一支部あたり、増紙から減紙を差し引いて月1部、2部以上の増となれば可能なのである。

 機関紙読者拡大では、議員や力のある党員がけん引車としての役割をおおいに発揮するとともに、支部を基礎に、すべての党員があらゆる条件を生かして読者をふやす運動に参加しなければならない。今日の情勢のもとで、平和・革新の共同の新聞としての『赤旗』の役割と魅力を広く宣伝するならば、これまでわが党や『赤旗』と接触のうすかった国民の新しい層や分野でもおおいに読者をふやすことができる。このことに確信をもって全党が機関紙読者拡大にとりくむことが決定的に重要である。

3、党建設をいつもおくれた課題としないために

 党建設をわが党の政治的、政策的活動と比べてつねにおくれた活動の分野としないために、党の「活性化」をはからなければならない。

 戦後第二の反動攻勢による革新分断、イデオロギー攻勢をふくむ各種の反動的諸措置の強化などの国内的要因とともに、現存の社会主義の対外政策にあらわれる覇権主義の誤り、国内建設の停滞、失敗などの否定的現象が個々の党員に将来への展望を失わせる要因となったことは事実である。社会党をふくむ反共野党の右転落ともあいまって、国内全体の革新的機運が停滞、後退するなかで党員の活力が全体として弱まったことも直視しなければならない事実である。

 しかし、どのような情勢のもとでも社会発展の法則はつらぬかれている。反動攻勢のもとでも売上税導入・マル優廃止問題での国民的反対闘争にみられるように、国民のエネルギーはかならず発揮される。社公民の反共野党の本質は、情勢の発展とともにかならず国民との矛盾を激化させ、見破られる。社会主義国の一部でも過去の社会主義建設の途上で生まれた誤りや否定的傾向を見直し、改革をすすめる自己変革が進行しつつある。社会はかならず発展する。全党がこの確新にたてば、どのような反動攻勢にも、どのような困発な情勢にもたちむかい、みずからが「歴史に働きかける」というわが党の不屈の革命的伝統を継承し、たたかいぬくことができる。

 この根本的見地にたって、党建設をいつもおくれた課題としないために、つぎの諸課題にとりくむことが重要である。

 (1)党員の質的強化

 一人ひとりの党員が自覚的に活動する基礎は、党中央の決定はもちろん、独習指定文献をはじめとする学習に計画的にとりくみ、科学的社会主義の基本と綱領的展望を身につけることである。このことなしに社会発展の法則をつかみ、前衛党員としての気概と確信を不動のものにすることはできない。党中央の決定を全党員が読了することは第1義的優先課題である。決定の支部討議は8~9割だが、読了する党員が5割にも達しない惰性的状況を克服し、党の質的建設をすすめるため、この課題のとりくみを抜本的に強めなければならない。第17回党大会は、「全党員がただちに読了にかかり、おそくとも1ヶ月以内に終わるようにする」ことにしていたが、こんごはこれをあらため、全党員がただちに読み終わることにする。この改定の意義は重要である。また党の理論的政治的水準をしめす国際論文や無署名論文を重視し、これを全党員が読むこと、とくに全党的におくれている義務教育をはじめ各級の課程の教育を促進するようにしなければならない。こうして党員の知的自覚を高めることは、先月の質的強化をはかるもっとも重要な要路の一つであり、党活性化の土台となる。

 策17回党大会5中総は、党風の抜本的刷新をはかるため、実行項目を明確にした全党員の必携文書を作成した。これは党風改善に役立ったが、党生活の確立と党員の自覚的な活性化の課題として、ひきつづきこれを重視し、実践する。

 (2)政治単位としての支部の強化

 大衆の切実な諸要求をとりあげて日常不断に活動すること、大量宣伝や機関紙誌活動をつうじてブルジョア・マスコミのさまざまな毒素とたたかつていくこと、大衆組織をつくって大衆自身がたたかい、わが党がそのなかで正しい指導性を発揮していくことなどは、党活動の原点ともいうべきものであり、多数者革命をめざす法則的活動である。この日常不断の党活動を抜本的に強化していくうえで、広範な大衆との接点に組織され、大衆との結びつきの最前線で活動している支部を基礎に活動していくことが決定的に重要であり、このような活動にとりくむ支部が多数をしめてこそ、党の新たな前進が保障される。

 そのためにも、支部の質的強化にたえず心がけ、党員一人ひとりの独習とともに、支部の集団学習を定期化し、とくに党中央の決定はただちに読んで支部で討議し具体化する気風を定着させる。あわせて、6ヶ月に1度の支部党会議(総会)をかならずひらき、支部会議を定期的に開催しなければならないことはいうまでもない。

 もともと、党の基礎組織である支部のほんらいの活動は、党綱領と党決定にもとづき、その職場や地域、学園に責任を負い、大衆のなかで活動し、党と大衆の結びつきを深めひろげ、そのなかで、党建設や選挙戦の独自の諸課題も前進させていくことにある。このことを徹底しなければならない。

 (3)党員の初心を尊重する同志的配慮

 党員一人ひとりの初心である新しい日本社会の実現に向かって党員同士がおたがいに助けあい、励ましあってみんなが力をあわせて活動することは、同志愛と活力にみちた党生活、党活動の基本問題である。これを日常の活動のなかでつらぬくためには、活動的な党員が中心になって積極的な活動を展開しながら、困難な党員を放置せず、同志的援助の手をさしのべていくことが大事であり、活動的でなくなった党員を放置する官僚主義的指導態度をきびしくいましめ、たえず全党員が参加する支部活動の確立に努力しなければならない。そのために、支部指導部の確立を重視して、支部と全党員が日常的に結びつくように体制的にも保障しなければならない。支部指導部の構成にあたっては、適切な力をもった支部長、副支部長、支部委員会を正しく選出することに留意するとともに、とくに支部の指導に責任を負っている地区委員会は、支部幹部の計画的養成、系統的な教育に真剣に努力することである。

 また、支部の分割・再編をおこなった支部では、日常的に党員同士が顔を合わせ連絡がとれるようになり、支部会議が集まりやすくなり身近な問題も気軽にだしあえるようになっている。また、きめたことはみんなでやろうとの連帯感が強まっているところが少なくない。それだけに、分割対象となっているすべての支部のうちまだ完了していない35.5%の支部は、分割・再編をはやく完了させなければならない。同時に、党建設の基本課題の一つである党費納入の抜本的向上に真剣な努力をはらうとともに、″12条該当″党員の克服、日刊紙未購読党員や末掌握党員の解決、党籍・党員カードによる全党員の日常的な掌握など、これらの組織的課題をねばりづよく追求しなければならない。

 (4)中間機関の活性化と指導水準の向上

 党機関の活動の停滞をうちやぶり活性化させていくためには、活動が現状の前進にとってふさわしいかどうかを、きちんと点検し責任をもつという活動態度をつらぬくことが必要である。正確な方針の決定とその実行の組織化、活動の点検は、科学的指導に欠くことのできない諸要素であり、ここに指導を徹底しぬく党機関の責任感と実行力を発揮する真価がある。この課題は、党建設のたちおくれを克服するうえでも重要である。

 また、いっせい地方選挙での教訓である決定から逸脱する誤りを生まないためには、党機関が党中央の決定を全面的に正確につかみ、よく討議して十分考えぬいた方針をきめ、それを機敏に実施に移すなどの指導上の作風──熟慮、機敏、断行の三つをそなえた指導に熟達する必要がある。そのため、機関幹部の教育を計画的に、ねばりづよくすすめる。
 中間機関の指導を抜本的に改善し、本格的に前進させていくためには、党の方針を徹底する正確な一般指導とともに個別指導を重視し、これを機関の不動の指導姿勢として確立・定着させていくよう真剣に追求しなければならない。そのためには地区幹部は系統的に支部にはいり、支部の実情を具体的につかみ、指導・援助を強める必要がある。地区委員会総会を重視し、つねに少なくとも9割以上の地区役員が出席し、時間をかけた討議で、党中央の決定を全面的に深く理解できるようにすることが大切である。しかし地区委員会総会の出席率は、改善されつつあるとはいえ、全党的には7割程度であり、まだ5割台、なかにはそれ以下でしばしば不成立になるところも残されている。こうした状況を改善し、支部指導に直接責任を負う指導機関にふさわしく規律性と活力をたかめなければならない。そうした点で、総会への出席状態を、地区役員選考の重要な基準の一つとして検討する必要がある。また、支部長を兼務している地区委員の比重を最小限にしていくなどの構成上の考慮も重要である。さらに、1986年11月1日の幹部会決議は、「日報制」の廃止と個別指導の強化を決定したが、これを地区委員会の日常の指導スタイルとして確立し定着させることも大事である。

 7中総が、とくに重視し、とりあげた機関財政の強化・確立は重大問題であり、機関の長がその先頭にたち、その地方の全党員の問題として機関が討議し、改善をはかるべきものである。できるだけ緊急に、党費、横関紙をはじめとする事業収入、寄付の財政活動の三つの原則による機関財政の強化・確立をはからなくてはならない。とくに、そのなかで、「人は城」という見地で常任活動家の給与の改善と遅配をなくすことは、機関の活性化にとっても一つの重要な要素である。

 (5)新しい知恵と創造性、自己相互批判を

 党建設がわが党の活動の他の分野に比べておくれている以上、惰性と結びついた経験主義を克服し、新しい知恵と創造性を発揮しなければならない。党建設のこれまでの貴重な経験と方針に依拠しつつ、新しい知恵と創造性が各級機関で発揮されることが重要である。これは個々の党員の活動を活発化させる一つの重要な要因である。

 そのさい、大切な点は、民主集中制を生かし、党内民主主義を尊重して集団的な知恵を結集することである。従来どおりの経験の範囲でものごとを処理することは、担当部門まかせの傾向を生み、集団的検討を弱める。集団的検討こそ、官僚主義、経験主義が生む誤りをふせぎ、新しいイニシアチブを正しく発揮する保障となるものである。

 集団的検討と集団指導を生きたものにするためには、自己相互批判を率直におこなうことである。自己相互批判は、情勢が要求する課題に機敏に、積極的にこたえているかどうかを点検し、責任をもった活動態度をつらぬくうえで不可欠のものである。また新しい事態に対処するさい、率直に自分の意見をだし、相互批判を活発におこなってこそ方針を生きたものにすることができる。「党創立65周年記念・機関紙拡大月間」の結集についての問題、昨年の同時選挙の見通しについての若干の不正確な『赤旗』報道、同時選挙前のポスター問題での一部の不正確な指導の問題などは、こうした批判によってその誤りが克服された。批判は個人攻撃ではないし、個人攻撃であってはならない。党の前進のためのものである。批判をうけたさい、わだかまりをもつようなことは、党員として正しい態度ではない。党の方針は、党の綱領と規約、科学的社会主義の精神にもとづいて、おたがいに活発な相互検討をおこない、自分自身もそれによって啓発されながら、きめられていくものである。自己相互批判は、党活性化の保障である。党中央の各部局をふくめ各級機関は、経験主義にもとづく惰性から脱却し、自己相互批判を徹底させ、新しい創造性を発揮しなければならない。

4、科学的社会主義理論の学問的強化

 科学的社会主義の理論にもとづくわが党の不屈の革命的伝統は、戦前、戦後をつうじ国民の先進部分にわが党の知的信頼をうちたて、自覚的インテリゲンチア、青年・学生のあいだに思想的影響をあたえてきた。近年においても前衛党と民主集中制の問題、「一国二前衛党」論、核兵器廃絶の科学的理論、日米経済関係論、「資本主義の全般的危機」論、社会主義論、内外情勢の理論的解明等々多くの理論活動を全体として積極的におこなった。しかし、欧米資本主義諸国から機械的に導入された、科学的社会主義の理論を古くなったとするいわゆる「ネオ・マルクス主義」理論や資本主義の新しい変化と結びついて生まれる誤った理論を科学的社会主義の立場から徹底的に研究・批判する理論活動を強化しなければならない。この点では、ごく一部の努力があるとはいえ全体として大きく不足があった。このため、インテリゲンチアや学生のなかでの党活動に消極性をもたらし、また党の影響力を拡大するうえで一つの障害となった。党を活性化させるうえでも、政治学、経済学、史的唯物論、歴史、哲学上の諸問題などについて、科学的社会主義理論の学問的強化をはかることは、今日の党建設上の重要な任務である。党中央委員会付属社会科学研究所をはじめ党の理論、政策、イデオロギー部門は、この任務を遂行しなければならない。またこの任務を十分遂行しうるように社会科学研究所などを量質ともに強化しなければならない。もちろん、党中央がおこなうこれらの理論的、学問的活動の結果は、学問上、文化上の問題あるいは芸術上の問題について、党決定として全党を細部にわたって拘束するものではない。全党を拘束するのは、党綱領、規約、党決定であり、これら基本問題についてくりかえし公開討論をおこなうようなことが、正しくないことはいうまでもない。それとは別に、理論上、学問上、文化上の諸問題について党が細部にわたって全党を拘束するような決定をおこなうならば、それは学問、文化の研究、創造の前進にとってふさわしくない。これらの諸問題は党負が知的文化的活動で発揮すべきイニシアチブと論究にゆだねられる問題である。党中央の理論的、学問的研究は、党員の知的関心をたかめ、党員の知的活動を発揚するものである。こうして党が全体として国民に正しい思想的、文化的影響をあたえていくことが重要である。

5、党の構成と幹部政策

 50万近い現在のわが党の構成は、労働者党員65・6%、農民党員2・6%、勤労市民党員8・9%、知識人党員4・5%などとなっており、国民各層の先進部分を結集している。また婦人党員も38・3%をしめるにいたっている。婦人党員が4割近くをしめていることは、戦前戦後をつうじて婦人の解放と男女平等のために一貫してたたかってきたわが党が、いかに婦人を重視しているかのあらわれである。さらに年齢別構成では、30歳代の党員が36・8%ともっとも多く、50歳代以下の青壮年の党員が77・5%をしめている。このようにわが党は路線上、政策上はもちろん、党の隊列でも、全体として労働者階級の前衛党、国民と民族の党にふさわしい構成となっている。知力も体力も成熟する年代の党員が圧倒的多数をしめている。

 もちろん、党をいっそう量質ともに強大なものにしなければならないのは当然であるが、いま50万近いすべての党員が、党の綱領路線と科学的社会主義の原則にもとづいて、今日の情勢のもとで党の果たすべき歴史的使命と任務を自覚し、党がほんらいもっている活力を全面的に発揮するなら、いっそう強大な大衆的前衛党建設を成功させ、第二の反動攻勢を打破して、情勢を革新的にきりひらくことができる。全党はこのことに確信をもって、第18回党大会が提起する課題の全面的遂行に意欲的に挑戦することである。

 こうした党のもつ力量を全面的に発揮するうえで、党中央委員会をはじめ、各級指導機関の構成を、新鮮で活力あるものにすることが重要である。そのために、わが党が一貫してとってきた幹部政策の原則である「長い経験と豊かな知恵をもった試練ずみの幹部と将来性ある若い幹部の結合」(第14回党大会報告)をはかる立場から、各級機関に若い幹部を抜てきし、機関構成にくわえること、そして、つぎの世代をになう将来性ある若い幹部を「理論政策活動と、組織活動、大衆闘争の指導ができる」「いわば“両刀使い”の総合的能力をもつすぐれた幹部」(第11回党大会報告)に成長させる見地から幹部配置を考え、積極的に任務をあたえていくことが重要である。またわが党の構成にふさわしく、婦人幹部を思いきって抜てきすることが重要である。そういう方向で、中央と地方、地方相互の幹部交流をいっそう大胆におこない、各級機関の人事面での停滞の打破をはかる。

 また、幹部の保全のため、常任活動家にたいして週1回の休養の保障と健康管理について、党機関として系統的に努力しなければならない。

6、きたるべき選挙戦での新たな前進のための今後の課題

 量質ともに強大な大衆的前衛党を建設しつつ、全党は、きたるべき国政選挙、東京都議選、沖縄県議選、北九州市議選など地方選挙で、新たな前進をとげなければならない。

 第17回党大会とその後の中央委員会総会は、選挙闘争の理論と方針を発展させた。第17回党大会は、選挙闘争の基本として「四つの原点」にもとづく活動を再確認した。また2中総は、綱領路線にもとづく多数者革命の見地を当面の選挙に具体化した有権者比による得票目標の設定という戦略的意義をもっ重要な決定をおこなった。さらに昨年11月の幹部会は、大量政治宣伝を多数者革命のための不可欠の重要な課題として戦略的に位置づけるとともに、7中総、8中総は、選挙戦の二重のわい小化──選挙とは支持拡大活動、選挙まぎわになってやっと本気になる──という問題について解明し、こんご、基礎的支持勢力の名簿を整備・拡充し、日常不断に支持拡大をすすめること、選挙情勢の判断は第17回党大会7中総決定が定めた四つの基準で総合的にすすめ、候補者への支持拡大数では判断しない、したがって集計も当然しないことを決定した。また、現職議員落選の克服、綱領的課題としての空白克服とそれを財政的にささえる諸措置、町村議員への財政援助と議員活動援助基金の設置、空白克服恒常募金運動などを決定した。これらの決定は、選挙はもともと投票箱のふたをあけるまで結集はわからないものであり、最後の瞬間まで全力をつくすという基本的な見地にたって、従来の支持拡大数の集計が安易な「楽観論」を生む結果となっていたこと、現職議員落選というわが党の近来目立つ弱点や空白問題へのとりくみ方などに反省をくわえ、なによりも選挙を日常的に準備することの決定的重要性を確認するものとしてきわめて重要な意義をもった。全党は、第17回党大会とその後の中央委員会総会で発展させられたこれらの選挙闘争方針にもとづき、とくにつぎの諸課題にとりくまなければならない。

 (1)国政、地方政治での前進の具体的第1歩は、つぎの選挙で顕著で積極的な議席増、得票増を実現することである。そのためには、第17回党大会2中総決定の有権者比による得票目標実現をめざす大志にたたなければならない。とくに、参議院の比例代表選挙でも、今日までの連続5人当選に甘んじないためには、少なくとも100~200万の得票増をかちとらなければならす、惰性的な姿勢をいまから一掃し、ひとまわり大きく支持者をひろげる活動が重要である。それは、参議院の選挙区選挙や衆議院選挙でのわが党の前進を実現する任務と不可分のものである。現職確保、失地回復、空白克服など同時選挙以後も強調されている諸任務は当然のことである。この初歩的課題が遂行されなければ、たちおくれの克服は漫然たる課題として提起されるだけで、いつまでも達成できない。

 (2)「機関紙拡大月間」、「全党運動」など全国的キャンペーンと中間地方選挙との関係を正しく位置づけることが重要である。全国キャンペーンがおこなわれていても、中間地方選挙があるところでは、選挙闘争が最重点のたたかいになることは当然である。力量のある幹部の配置をはじめ、必要な知恵と力を集中して、選挙戦勝利に全力をつくさなければならない。有権者にとって4年に1度おとずれる政党選択で、わが党が全国的キャンペーンがあるからといって、選挙戦を軽視するならば、それは住民にたいする発としての責任を放棄することになる。最近の「月間」、「全党運動」中におこなわれた長野市議選など中間地方選挙の失敗の経験は、このことの重要性をしめしている。

 (3)あらゆる選挙でわが党が前進する基本は、日常不断の選挙活動である。第8回党大会が決定し、第17回党大会があらためて確認した「四つの原点」にもとづく選挙闘争の日常化は、第17回党大会7中総が強調したように党のほんらいの存在意義、党活動の根本的あり方の選挙版である。高度に発達した資本主義国での革命運動の特徴は、政治的、経済的、思想的、文化的闘争を日常的にすすめ、人の心を進歩の方向に変えることにある。このため、これまでの大会がくりかえし強調してきた、(1)大衆の切実な要求にもとづき日常不断に大衆のなかで活動すること、(2)大量政治宣伝活動を日常化し、党の政策と主張、実績、理念、歴史を全有権者につねに知らせること、(3)機関紙読者拡大をはじめ基礎的支持勢力を日常的に拡大すること、(4)わが党と協力、共同する大衆組織、および日本共産党後援会を拡大・強化することが重要である。「四つの原点」にたった党組織と議員、候補者の日常活動こそ、選挙戦でのわが党の前進の源泉である。

 (4)得票目標と綱領実現の戦略的展望の結合は、今日の情勢のもとで党が前進する確固とした政治的保障である。第17回党大会2中総が決定したように、当選に必要とする得要数の追求というせまいわくではなく、米日反動勢力のおしすすめる悪政のもとで国民の不満がうっ積し、要求が山積している今日の情勢のもとで、党の綱領的展望と当面の党の任務を結合し、さしあたり選挙で有権者比1~2割以上の得票をめざすことが重要である。従来の範囲の支持者獲得にとどまるのではなく、党が大衆のなかに政治的にうってでるならば、新しい支持者を広く獲得できる十分な条件が存在する。選挙指導をせまい組織指導にわい小化せず、“政治の風”をふかせ、得票目標と戦略的展望を結合させ、すべての選挙で有権者比の得票目標の実現をめざして選挙戦をたたかうことが重要である。

 (5)大量政治宣伝の戦略的意義を重視することは、選挙戦勝利の鉄則である。この2年間の二つの全国的選挙でも、党員、機関紙読者など組織的陣地のおくれにもかかわらず、党の前進を保障したのは大量政治宣伝の結果である。今日の情勢のもとで、この大量政治宣伝の戦略的意義はますます重要となっている。大量政治宣伝が全有権者を対象とした全戸配布ビラに限定されるものではなく、機関抵、パンフレット、『グラフこんにちは日本本産党です』(11月より月2回発行)、『女性のひろば』の日常的拡大にあることを重視しなければならない。系統的な街頭宣伝、国民とじかに接する口頭宣伝、ビデオ・映画による視聴覚宣伝も重視する必要がある。

 パンフレットの普及活動は、選挙戦の問題としてだけではなく日常不断に党の主張と政策をわかりやすく国民に知らせるうえで機関紙、および『グラフこんにちは』とともに大量政治宣伝の重要な武器となるものであり、また各級機関の財政に大きく貢献しうるものである。しかしパンフレット普及活動には重大な弱点がある。第17回党大会からこの間、11種類、1903万8900余冊の宣伝パンフレットがあらたに発行された(84年3月からの累計では3629万5000冊=25種類)。普及数は391万3500余冊(同、770万1005冊)であり、活用率は20%程度にとどまっており、2千数百万部におよぶ滞留をかかえている。

 パンフレットの普及は、主としてパンフレット普及上位10氏に数えられる議員や積極的活動家の英雄的努力によってささえられており、戦略的位置づけにふさわしい活動の水準にはなっていない。7中総決議は、宣伝パンフレットについて「『赤旗』号外の全戸配布とあいまって広範な大衆を党に近づける大量宣伝の重要な武器であり、財政の武器である」ことを指摘し、「日額をきめ、予算に計上して活動する必要」を強調している。各級機関は、滞留の実態と普及の流れを把握し、体制を強化し不断の活動として本格的にとりくむことが大切である。

 これらの課題をやりとげ、きたるべき選挙で前進することは、国民にたいするわが党の責務である。

 第17回党大会は、各支部がみずから「総合計画」をもちそれにもとづいて活動することを決定したが、すぐれた一部の支部は規約第54条にもとづく半年に1回の支部党会議(総会)を軸に、この計画にもとづいて諸活動と党建設をすすめている。基礎組織である党支部は、規約第54条2項でしめすように大会と中央委員会決定の宣伝にとりくむと同時に、国民のなかで「政策と計画」をもって活動することを任務としている。一部のすぐれた教訓は、ひきつづき前進させなければならない。しかし、多くの支部で、決定の読了・学習教育、空白克服などをふくめきめられた計画の遂行が不十分であった。とくに党勢拡大の点では後退があった。その点で党支部が、「総合計画」の実践についてそれぞれ総括することは重要である。この2年間の活動の経験をつうじて明らかになったことは、大会が提起し、中央委員会が強調するすべての課題を支部が日常的に追求し、その実現のために「政策と計画」をもって全力をあげて奮闘すること自体が、全体として「総合計画」のめざした目標の推進となるということである。したがって第18回党大会は、「総合計画」の問題をこれまでのような形では提起せず、全党が大会決定を実現するために、日常活動を徹底的に強化することを訴える。

 内外の重要な情勢のもとで全党は、第18回党大会が提起した諸課題を断固としてやりとげ、第二の反動攻勢をうちやぶり、国政革新の事業を大きく前進させるであろう。これは、国民がわが党に課している光栄ある任務である。

 わが党の不屈の伝統にたち、民主的な日本をめざし、国民と深く結びついて力づよく前進しよう。