日本共産党資料館

志賀義雄と鈴木市蔵の除名処分にかんする決議

一九六四・五・二二 日本共産党第八回中央委員会総会

 第八回中央委員会総会は「志賀義雄の規律違反等」にかんする幹部会の報告をきいた。
 報告と討議の結果、志賀義雄の党破壊活動とこれに呼応する鈴木市蔵の役割は明白になった。したがって、第八回中央委員会総会は、この問題にたいする幹部会の報告と結語を承認し、つぎのように決定する。

一、志賀義雄
 規約前文第四節
 第二条の(一)、(二)、(五)、(七)、(九)項
 第十四条の(五)項
 第五十三条の前文
 違反により、規約第五十九条および第六十条にもとづき、規約第六十三条前項の手つづきにしたがって除名する。

二、鈴木市蔵
 志賀義雄の党破壊の分派活動、党規約のじゅうりんに呼応して、党の決定にしたがわず、党規約をじゅうりんすることを言明し、党破壊の分派集団を形成していることが明らかにされた。このかれの行動は、
 規約前文第四節
 第二条の(一)、(二)、(五)項
 第十四条の(五)項
 第五十三条の前文
に違反するものである。
 よって規約第五十九条および第六十条にもとづき、規約第六十三条前項の手つづきにしたがって除名する。

(『前衛』一九六四年七月号)


志賀義雄、鈴木市蔵の党規約のじゅうりんと党破壊活動にたいする処分について

一九六四・五・二二 日本共産党中央委員会

 一、反党活動の事実

 五月十五日、衆議院本会議において部分核停条約の承認にかんする表決がおこなわれた。この条約についてわが党第七回中央委員会総会は
 「放射能汚染がへるだろうということで、この条約をよろこぶ人びとの気持ちを理解できるし、もちろん社会主義国とアメリカ帝国主義とを同一視するものでもない。しかし、いっさいの核戦争防止という、より根本的な問題との関連で大局的にみるならば、アメリカ帝国主義の核戦争準備が、地下実験による核兵器の積極的開発とともに、ひきつづき強行されている事態に無批判でいることはできない。
 とくに、わが国に三たび原水爆の被害をしいたアメリカ帝国主義が、わが国に多数の基地と核武装部隊をおき、日本を拠点として、いわゆる『中国封じこめ』政策を中心にアジアの民族解放闘争の圧殺やアジアの社会主義国への侵略をめざして、小型核兵器の開発をふくむ核戦争準備をいそぎ、アジアと世界の平和および日本の安全をおびやかしているとき、さきにのべたような大局的な理由、根本的な立場から地下核実験の除外など事実上アメリカ帝国主義の核戦争政策を制限しえないこの条約を支持するわけにはいかない」という態度を決定している。
 この立場からわが党国会議員団は、川上貫一同志を代表として本会議で反対討論をおこない、この条約の批准に反対することを決定していた。
 しかるに、志賀義雄は、第七回中央委員会総会の決議と国会議員団の決定にそむいて、部分核停条約に賛成の投票をおこなった。これは、わが党が部分核停条約の本質と、この条約に調印したアメリカ帝国主義と池田内閣・自民党の意図を日本人民の前に暴露し、日本人民が真に平和と独立をたたかいとる道を明らかにすべき重大な瞬間に、党の規律に違反し、党の革命的伝統に反し、米日反動勢力に降伏して、かれらを礼賛する裏切り行為である。かれはこの恥ずべき裏切り行為を、表決の寸前まで党にかくし、党をあざむいて長期にわたって計画的に準備してきた。このことは志賀みずから幹部会の席上で言明している。
 志賀義雄は、第七回中央委員会総会で鈴木市蔵とともに部分核停条約に「条件付賛成」との意見をのべたが、中央委員会の圧倒的多数による決定に服して行動することを表明していた。だがかれは、その直後から、党の決定に反してひそかにある外国勢力と単独に連絡をとり、側近の私党的分子をてなずけて、党の方針に反する分派活動をすすめてきた。
 こうしてかれは、五月十五日の衆議院本会議の表決において、党を裏切って部分核停条約承認案に賛成投票をおこなったのち、新聞記者会見をおこない、かねて用意していた「みなさんに訴える」という声明を発表し、また、ラジオ、テレビに出演するなど公然と党に敵対し、党を破壊する行動を開始したのである。
 これはかつて春日庄次郎一派の反党修正主義者が党を脱走するときにおこなった手口と同じである。
 中央委員会幹部会は、五月十五日幹部会拡大会議をひらき、志賀の反党行動について討議したが、かれは、明白な党規律のじゅうりんと党破壊活動にかんしてはなんら反論できず、口をつぐみ、かつなんらの反省も示さないばかりか、かえって、党をひぼう、自己の行動は党規律の違反でないと強弁した。さらに、かれは、翌十六日ひきつづきひらかれた幹部会拡大会議に、約束をやぶって出席せず、かれの妻渡辺多恵子とともに大阪その他の党員や党支持者にかれの行動を支持するよう電話でよびかけるなど、党破壊の分派行動をつづけるにいたった。
 部分核停条約にたいして志賀と同じ立場をとってきた鈴木市蔵は、十五日の幹部会拡大会議において、出席者の質問にたいして、「志賀の行動は理解できる」と志賀の党破壊活動を擁護する発言をおこなった。また、参議院でのこの条約の表決にたいする態度については二、三日考えさせてくれと答えた。五月二十日にひらかれた幹部会において、かれは、党が参議院での表決にたいする態度をかえなければ、条件付賛成の立場から、賛成投票をするという態度を明らかにした。かれは、他の幹部会員全員の道理にもとづく批判、説得にもがんとして応ぜず、その反党的態度をかえようとしなかった。
 五月二十一日にひらかれた第八回中央委員会総会は、以上の事実についての幹部会の報告にもとづいて、この問題を徹底的に討議した。圧倒的多数の同志が、二人の反党的態度について徹底的な批判をおこない、党規約に照らして断固とした処分を要求した。
 この討議において、志賀はあくまで反党活動をつづけると公言し、鈴木は、党の決定と規約をふみにじって賛成投票をすると言明した。かれらは、弁明と称して発言したが、それは、かれらの反党的行為の弁明ではなく、部分核停条約についての、かれらの見解のむしかえしや、現在の党の歴史的役割と党の基本路線についてのひぼうにすぎなかった。このような手口は、すべての反党分子が党を裏切るときのやり方と同じものである。
 志賀、鈴木両人のあいだには、政治的に共通の修正主義的見解にもとづき、たがいに呼応して、党の決定に公然と反対し、党規律を無視して、あくまで部分核停条約に賛成行動する自由を要求する同一の分派としての関係があることが明らかになった。
 かれらは、全党員と党支持者の献身的な努力によって、日本共産党綱領と政策にもとづいて国会でたたかうことを公約して、国会議員に選ばれたのである。したがって、今回のかれらの行動は、党の規律と政治方針をふみにじり、米日反動勢力に屈服したにくむべき裏切り行為であるとともに、かれらに投票した人民大衆の信頼にたいする恥ずべき背信行為でもある。
 第八回中央委員会総会は、この問題にかんする幹部会の報告と結語を承認し、つぎのように決定した。
一、志賀義雄のこのような行動は
規約前文第四節、「党規律をみだし、決定を実行せず、統一をやぷり、派閥をつくり、分派活動をおこなうことは、党を破壊する最悪の行為である。党内では、党の政治方針や組織原則をそこなうような行動はゆるされない」
「党の規約は、党活動と党生活の基準であり、すべての党員は規約を尊重し、これを軽視したり、無視したりしてはならない。党員は、全党の利益を個人の利益の上におき、誰でも党の上に個人をおいてはならない」
 規約第二条「党員の義務」中の第一項「全力をあげて党の統一をまもり、党の団結をかためる」、第二項「党の政策と決定を実行し、党からあたえられた任務をすすんでおこなう」、第五項「地位のいかんにかかわらず、党の規約と規律をかたくまもる。たえざる修によって高い品性を身につける」、第七項「党にたいして誠実であり、事実をかくしたり、ゆがめたりしない」、第九項「党の内部問題は、党内で解決し、党外にもちだしてはならない」
 規約第十四条第五項「党の決定は、無条件に実行しなくてはならない。個人は組織に、少数は多数に、下級は上級に、全国の党組織は、党大会と中央委員会にしたがわなくてはならない」
 規約第五十三条「国会議員団は、中央委員会の指導のもとに、国会において党の方針、政策にもとづいて活動する」などに違反し、これをじゅうりんしたものである。
 よって中央委員会は規約第五十九条、第六十条にもとづき、規約第六十三条前項にしたがって除名処分に付する。
二、鈴木市蔵の以上のような行動は
規約前文第四節
規約第二条第一項、第二項、第五項
規約第十四条第五項
規約第五十三条
などに違反しこれをじゅうりんしたものである。
 よって中央委員会は規約第五十九条、第六十条にもとづき、規約第六十三条前項にしたがって除名処分に付する。この決議の採決は志賀、鈴木それぞれ別個におこなわれ、中央委員六十名中五十七名の出席によってつぎのとおりおこなわれた。
 反対     三名
 保留     一名
 賛成   五十三名
 中央委員候補三十四名は全員賛意を表明した。
 なおそのあと志賀、鈴木の国会議員辞任要求の決議(別記)がつぎのとおりおこなわれた。
 反対一名(中野)
 保留一名(神山)
 贊成五十三名
 中央委員候補三十四名は全員賛意を表明した。

 二、反党活動の本質

 志賀鈴木の反党活動は、かれらがわが党の綱領とモスクワ宣言モスクワ声明の革命的立場をなげすて、公然と修正主義の立場に転落し、現代修正主義の国際的、国内的潮流とむすびついたことを意味している。
 かれらの部分核停条約に賛成する論拠は「核実験による放射能汚染によるこれ以上の被害をくいとめ、また際限のない核兵器開発競争を抑制する」ということであるが、この条約は、先に引用したわが党の第七回中央委員会総会の決議にもいわれているように、核兵器の開発、製造、拡散、使用を制限するなんらの条項もふくんでいないだけでなく、地下核実験を合法化する結果をもたらしている。現にアメリカ帝国主義は、この条約調印後のわずかな期間に、地下核実験を二十数回にわたっておこない、これによって核兵器の開発精力的にすすめている。また、アメリカ帝国主義は、わが国への原子力潜水艦やFID水爆機の持ちこみなどにみられるように世界のいたるところに核兵器を拡散し、核戦争準備をすすめている。これらの事実は部分核停条約が「核兵器開発競争を抑制する」というかれらの主張がまったく根拠のないものであることを示している。かれらのこのような主張は、アメリカ帝国主義の侵略的本質をあいまいにし、現に進められているアメリカ帝国主義の核戦争準備と日本の核武装化にたいする日本人民の警戒心をくもらせ、これにたいする日本人民の平和と独立を守る闘争を弱めるものでしかない。
 鈴木市蔵は、部分核停条約を他の政治的諸条件から切りはなし、単純に放射能被害が少なくなることを評価して賛成すべきだと主張しているが、それこそ大局を忘れて、局部的な問題に熱中するかれらの日和見主義、修正主義の思想を告白するものである。アメリカ帝国主義が日本をアジアの侵略の拠点として、安保条約にもとづく日本の核攻撃基地化と自衛隊の核武装化を日本の売国的支配層と共同しておしすすめ、「中国封じ込め」政策を中心とする侵略と戦争挑発の行動をつよめているとき、これと切りはなして、放射能汚染のへることだけを問題にすることが核戦争を防止し、日本の独立と平和を守る闘争にとっていかに有害であるかは明白である。
 かれらは、ソ連の提案による部分核停条約に反対することはプロレタリア国際主義に反すると主張しているが、部分核停条約を最初に提案したのはアメリカであり、ソ連もふくめて社会主義諸国と世界の平和勢力が一致して反対してきたものである。しかもこの部分核停条約の締結以後、この条約は国際修正主義の潮流によって、真のマルクス・レーニン主義党にたいする攻撃の道具に使われ、国際共産主義運動と平和運動の団結にいっそう複雑困難な状態をもたらしている。また、わが国においても右翼社会民主主義者と反党修正主義者は、部分核停条約を踏み絵として平和運動や民主運動の分裂を拡大している。さらに、この条約の締結、国際平和運動のなかには、アメリカ帝国主義美化の風潮が強まって、平和運動にまで混乱がつづいている。部分核停条約をよりどころとして国際平和勢力が団結してたたかうならば核実験の全面禁止、全般的軍縮を実現することができるという志賀、鈴木らの主張は、このような事実に照らしてみればまったく矛盾したものであることは明らかである。かれらは、独立と民主主義、平和と社会進歩をめざす日本人民の革命的闘争の立場をはなれ、アメリカ帝国主義の侵略的本質を過小に評価し、現代修正主義の国際的潮流に無批判的に追随する自主性のない態度をとっているのである。これに反して、わが党は、アジアと日本の現実に即して、部分核停条約にたいして自主的批判的態度をとっているが、このことこそ、日本人民の独立と平和の闘争にとっても、アジアと世界の平和のたたかいにとっても重要な貢献をするものである。
 志賀、鈴木の反党活動の特徴は、かれらこそが党綱領の守り手であるかのごとくよそおい、党中央が綱領をふみにじっているかのようにいいふらしながら、実際にはわが党の綱領を攻撃し、党と人民の闘争を修正主義の泥沼におびき入れようとするところにある。かれらは、春日庄次郎、内藤知周一派の反党修正主義者と一見ことなった粉装をこらして、党員と人民大衆をまどわそうとしている。だがかれらの理論的、思想的な立場は、本質的には春日庄次郎、内藤一派のそれと共通のものである。部分核停条約を支持せよという志賀、鈴木の主張の根拠は、春日庄次郎、内藤一派のそれとほとんどちがっていない。アメリカ帝国主義の侵略性の過小評価、アメリカ帝国主義の対日支配と日本人民のこれとの闘争の過小評価などにもその共通性がみられる。かつまた、国際修正主義の潮流に機械的に追随する点では、現代教条主義に堕している。このようなかれらの思想的弱点が現代修正主義の国際的潮流の影響のもとに党破壊分子として活動しはじめたところに特徴がある。
 かれらの政治上の修正主義は、当然のことながら組織原則における修正主義とむすびついている。かれらは、すでにのべたように党規約と党の決定を乱暴にふみにじって、党にたいする破壊活動をおこないながら、これを規約違反でないと強弁しながら、分派活動の自由、党破壊活動の自由を要求している。こうしてかれらはマルクス・レーニン主義党の組織原則を否定し、労働者階級の前衛党を小ブルジョア的な分派集団にかえようとしているのである。
 民主主義的中央集権の組織原則は、ロシア革命以来すべての国の革命運動においてためされたマルクス・レーニン主義党の組織原則であり、共産党に結集された労働者階級の前衛の政治的、思想的団結と自覚的で規律ある行動こそが幾百万の大衆を団結させ革命の事業に勝利する保障である。したがってかれらのわが党を組織的に崩壊にみちびこうとする悪質な修正主義理論とそれにもとづくかれらの恥知らずな裏切り行為にたいして、わが党は、断固としてこれを粉砕するためにたたかう。
 わが党を裏切り、敵に屈服した佐野、鍋山、春日庄次郎らも党の組織原則をふみにじり、自己の反党活動を正当化するために、民主主義的中央集権の組織原則を否定した。だがかれらは、党と大衆に反撃され没落した。志賀、鈴木の恥ずべき裏切り行為もかならずや党と大衆の批判と闘争によってそれにふさわしいむくいをうけるであろう。

 三、むすび

 五月十六日の幹部会声明「志賀義雄同志の党に反対する行動について」が発表されるや、全党組織は熱烈にこれを支持し、党中央の旗のもとにますます団結をかため、党破壊の裏切りと断固たたかいぬく決意を表明している。
 党から追放された志賀、鈴木は、米日反動とその手先右翼社会民主主義者、内外の修正主義者とむすびつき、これに手をかして、わが党への攻撃、党と大衆との結合をきずつけるために狂奔するであろう。
 だが、かれらの策動を粉砕するたたかいを通じて、わが党は、思想的に一段ときたえられ、組織的にも一段と強化され、かならず禍を転じて福とすることができるのである。春日庄次郎一派の裏切りとかれらの党からの追放は、わが党の断固とした闘争によって、その後党は全体として強化されたように。
 われわれは、党の綱領と党大会の決定にみちびかれ、七中総、八中総の決定を深く理解し、これにもとづいて全党の団結をさらにかため、アカハタ読者をはじめとするすべての党支持者を説得してさらに大きく結集しよう。
 われわれは、志賀、鈴木の処分から真の教訓をひき出し、それを党風の強化改善のために生かさなければならない。
 われわれは、志賀、鈴木一派の党破壊活動を粉砕し、現代修正主義と現代教条主義との原則的闘争を強め、当面の大衆闘争などを確実に前進させ、勝利をかちとっていこう。こうして、志賀、鈴木の策動に余地を与えず、党と民族民主統一戦線の前進をたたかいとろう。

(『前衛』一九六四年七月号)