日本共産党資料館

ソ連共産党中央委員会の書簡(一九六四年四月十八日付)にたいする日本共産党中央委員会の返書

(『アカハタ』1964年9月2日)


日本共産党中央委員会は、一九六四年四月十八日付ソ連共産党中央委員会の日本共産党中央委員会あて書簡にたいする、一九六四年八月二十六日付の返書を送ったが、ここにその返書の全文を発表する。なお本書には、すでにソ連共産党中央委員会が一方的に公表した、ソ連共産党中央委員会の四月十八日付書簡、七月十一日付書簡をも掲載してあるが、これは全党員と党支持者が、わが党中央委員会の返書の内容を正確に理解するための資料として発表したものである。
本文中の見出しは、読者のために本書発行にあたってつけたものである。

ソ連邦共産党中央委員会御中

 同志のみなさん
 七月十五日付のわれわれの返書で、あなたがたの四月十八日付の長文の書簡へのわれわれの回答を準備していることを通知しました。ここにその回答を送ります。
 国際共産主義運動の問題にたいするわが党の基本的態度は、すでにあなたがたもご承知のように、最近では一九六三年十月の第七回中央委員会総会の決議、七中の決定にもとづいて発表された一九六三年十一月十日付のアカハタ主張「国際共産主義運動の真の団結のために」、一九六四年六月二十日付の中央委員会幹部会の声明「各国共産党の国際会議は、分裂のためでなく、真の団結のためにおこなわれるべきである」などに表明されています。
 国際共産主義運動内部の論争と不団結が深刻になっている今日の状況のなかで、わが党が一貫してとっている基本的態度は、日本革命にたいし責任を負う自主独立の党として、プロレタリア国際主義と真の愛国主義を正しく統一するという立場から、わが党の綱領にもとづく日本の革命運動の前進に努力を注ぐとともに、マルクス・レーニン主義とプロレタリア国際主義の原則にもとづく国際共産主義運動の真の団結に積極的に貢献することです。
 わが党は、周知のように、一九六一年ソ連共産党第二十二回大会におけるアルバニア労働党への公然とした非難にさいしても、一九六二年末から一九六三年はじめにかけての一連の兄弟党大会における中国共産党やアルバニア労働党などにたいする公然とした攻撃にさいしても、また中印国境紛争やいわゆる「キューバ危機」にさいしても、つねにモスクワ宣言とモスクワ声明の基本方向および兄弟党間の関係についての基準を守りぬくという立場から原則的かつ自主的に、また国際共産主義運動の団結を考慮して慎重に行動してきました。
 われわれは、「世界反動の元凶」、「国際的憲兵」、「世界各国人民の共通の敵」であるアメリカ帝国主義をはじめとする侵略と戦争の勢力に反対する国際的共同闘争を発表させることをたえず重視し、そのために積極的に努力してきました。
 わが党は、世界戦争を防止する可能性および社会制度の異なる諸国の平和共存の可能性の過小評価がおこらないように、同時にまた帝国主義戦争の危険の過小評価がおこらないように、大衆のあいだでうまずたゆまず活動しなければならないという、モスクワ声明の指摘にみちびかれてきました。
 われわれはまた、一九五八年におこなわれた第七回党大会以前から今日にいたるわが党の歴史が示しているように、国際共産主義運動にとっての主要な危険である現代修正主義との思想闘争を一貫して重視するとともに、同時にトロツキズムとの闘争を不屈に遂行し、また現代教条主義とセクト主義のわずかな現われをも早期に克服するために努力してきました。
 ここでは若干の基本点をあげるにとどめますが、これらの事実は、わが党がモスクワ宣言とモスクワ声明の原則を忠実に守るという態度を厳格に貫いてきたことを物語っています。
 あなたがたも、四月十八日付の書簡でのべているように、わが党の創立から最近の時期にいたるまで、わが党とソ連共産党の間には友好的な関係が続いてきました。絶対主義的天皇制の野蛮な支配のもとにあった戦前および戦時の時期にも、わが党は、あらゆる弾圧に抗して、十月社会主義大革命の成果と中国革命の前進にたいする日本帝国主義の干渉に反対し、プロレタリア国際主義の旗を守ってきました。またアメリカ帝国主義と日本独占資本の支配のもとにある戦後の時期にも、わが党は、「万国の労働者は団結せよ」の精神にもとづいて、社会主義陣営、全世界の共産主義者、すべての人民大衆が人類の進歩のためにおこなう闘争を支持してきました。われわれは、わが党とあなたがたの党とのあいだに、両党間の同志的な団結を乱すおそれのある問題が生まれた場合にも、ただちにあなたがたに向かって公然と問題を提起したり、公然と非難したりするというような態度をけっしてとらず、モスクワ声明によって規定された兄弟党間の関係についての基準を守り、内部的に問題を解決するようつねに慎重な配慮を払ってきました。
 ところがあなたがたは、兄弟党間の関係についてのモスクワ声明の基準をまもろうとはせず、昨年来、わが党にたいして公然と攻撃をはじめ、しかもこれをくりかえしてきました。すなわち、あなたがたは、昨年八月二十五日付「プラウダ」に、わが党を公然と名ざしで攻撃したゲ・ジューコフ同志の論文「広島の声」を発表したのをはじめ、ことしの五月、志賀義雄や鈴木市蔵らが党破壊活動を公然と実行しはじめるとただちに「プラウダ」や「モスクワ放送」をつうじてこれらの裏切者たちを全面的に支持し、わが党にたいする系統的な攻撃をおこないました。さらにこの七月には、わが党中央委員会にあてた四月十八日付の書簡を突然一方的に公表するという乱暴な措置をとりました。しかもこの書簡は、公開しないということを取りきめたことしの三月上旬の日ソ両党会談の内容に関連したものであり、わが党の決定やわが党の代表団の発言をゆがめて、わが党に、マルクス・レーニン主義から離反し、モスクワ宣言と声明の路線から逸脱しているなどという重大な非難をあびせたものです。
 ソ連共産党指導部によっておこなわれたこれらの措置は、明らかに、「もしいずれかの党に他の兄弟党の活動にかんする問題が生じたばあいには、その党の指導部は相手の党の指導部に話をもちかける。もし必要があれば会議を開いて協議する」というモスクワ声明の規定をまったく問題にさえしていない態度です。
 こうした状況のもとで、わが党としても、七月十一日付のあなたがたの書簡にたいする返書を公表するとともに、約一年前のジューコフ同志の攻撃や志賀らの裏切りに関連する「モスクワ放送」その他の中傷に公然と回答せざるをえなくなったことは、きわめて当然なことです。また日ソ両党会談にいたる経過についての一方的な歪曲に反論するため、一九六三年三月六日付、一九六三年十月二十二日付、一九六四年一月十日付のソ連共産党中央委員会宛のわれわれの返書を公表せざるをえなくなったのです。このような事態になったことについての全責任は、当然あなたがたが負わなければなりません。
 四月十八日付のあなたがたの書簡には、大きくわけて、日ソ両党の関係が悪化した原因と経過、日ソ両党会談の問題、社会主義世界体制の役割、部分核停条約の評価、平和共存政策、国際民主運動における共産党の戦術などの理論問題、両党間の関係の正常化についての問題などがふくまれています。
 以下、これらのひとつひとつの問題について、われわれの見解をのべます。
 なお、あなたがたは、すでに四月十八日付のわが党あての書簡を公表し、「タス通信」をつうじてその日本語訳を日本国内にひろく頒布しました。志賀義雄一派や内藤知周一派など裏切者・修正主義者の新聞や商業雑誌その他は、それを全文掲載しています。ですから、われわれもまた当然この返書を公表することをあなたがたに通告します。
 あなたがたは、七月十一日付の書簡で、二つの書簡を公表する理由について「日本共産党指導部が……われわれの書簡に回答する必要さえ考えない現状にあっては、ソ連共産党中央委員会はもはやこの情勢を党内に知らせないでおくにしのびず、日本共産党中央委員会にあてた一九六四年四月十八日付の書簡ならびにこの書簡を公表することを決定した」とのべています。もしソ連共産党の党員に両党関係の真実を知らせることがあなたがたの目的であるならば、あなたがたの四月十八日付の書簡にたいするわが党のこの返書をも勇気をもって公表されるよう希望します。われわれは、それは事実にもとづく真理の探求に大いに寄与するものと確信します。

 (一)日ソ両党の関係はどうして悪化したか

 まず、日本共産党とソ連共産党のあいだの関係がどうして悪化したかの問題からはじめましょう。
 あなたがたは四月十八日付の書簡のなかで、日ソ両党間の関係が悪化したのは、わが党の指導部が「以前の党の諸決議からはなれて、あたらしい路線に立ちつつある」ためであり、「この路線のねらいはソ連共産党その他のマルクス・レーニン主義党の政策にたいする不信と反感を日本の共産党員たちにうえつけ、日本共産党とソ連共産党の伝統的な友情のきづなをたちきり、両者のあいだに不和をかもし出す」ことにあるとして、さまざまな「論拠」をあげています。
 われわれ両党の関係が悪化した原因がわが党の側にあるというあなたがたのこの主張は、真実とはまったくかけはなれたものです。結論から先にいえば、日ソ両党間の関係悪化の原因は、第一に、あなたがたが国際共産主義運動内部で一方的に公開論争をひきおこし、さらにわが党にたいして、この論争であなたがたに無批判的に追従することを要求したことにあり、第二に、あなたがたが、あなたがたの不当な要求に追従せず、自主独立の見地を堅持しているわが党の態度にがまんできないで、わが党にたいする名ざしの攻撃や不当な内部干渉、かく乱活動などをくりかえしてきたことにあるのです。これは、日ソ両党間の関係の歴史的事実にてらして疑問の余地のない明白なことです。
 このことはまた、あなたがたのあげた「論拠」を検討しても、明らかになります。

 (1)論争文献の紹介のしかたについて

 第一に、日本共産党がモスクワ声明の規定を踏みにじってソ連共産党を公然と攻撃しはじめたという「論拠」として、あなたがたは、わが党の国際情報誌「世界政治資料」や中央機関紙「アカハタ」に国際共産主義運動内部の論争問題についてのアルバニア労働党や中国共産党の文献が紹介されていることをあげています。
 この非難に答えるまえに、国際共産主義運動内部における公開論争はどうしてひきおこされたのか、その責任はだれが負うべきか、この問題を明らかにしておかなければなりません。
 一九六〇年の各国の共産党・労働者党代表者会議から一年もたたないとき、その声明を乱暴にふみにじって、突然、ソ連共産党二十二回大会でアルバニア労働党指導部にたいする公然とした攻撃を開始したのは、ほかならぬあなたがたです。そのさい、あなたがたは、「発生した意見の不一致を克服する道をさがしもとめるよう公然とよびかけるのがこの問題にたいする唯一の正しいマルクス・レーニン主義的態度だ」とか、「この場合沈黙をまもる態度をとることは、かれらのまちがった反レーニン的行動をつづけるよう奨励することを意味する」とかいって、こうした乱暴なやりかたを正当化しようとさえしました。この後さらに、一九六二年の末から一九六三年のはじめにかけておこなわれた東欧および西欧の一連の党の大会で、公然とした攻撃は、中国共産党その他にたいして拡大されました。こうした状況のもとで、あなたがたから非難をうけた兄弟党がそれに答えるのは、独立した平等の党として当然の権利です。国際共産主義運動内部における公開論争はこうしてひきおこされたのであり、その重大な責任が、モスクワ声明を乱暴にふみにじって兄弟党にたいする公然たる攻撃を一方的に開始したあなたがたにあることは、きわめて明白な歴史的事実です。
 さらに、公開論争が開始され、それを新たな反共攻撃に利用するための広範な宣伝や中傷がわが国の反動勢力によってまきちらされているという情勢のもとで、わが党が、すでに論争されている問題を自主的に紹介し、全党員がこの問題を包括的に研究できるような措置をとることは、きわめて当然のことです。そのさいこれらの文献をどのような形で紹介するかは、あくまでわが党が自主的に決定すべきことで、外国の兄弟党指導部から注文をつけられるような性質のことがらではありません。しかも、こんにちの公開論争をひきおこした当の責任者であるあなたがたには、論争文献の紹介の仕方が気に入らないなどといってわが党を非難する資格はなおさらありません。
 以上の基本的な前提にたって、あなたがたのいい分を一つ一つ具体的に検討してみましょう。

 (1)あなたがたはまず、一九六二年一月、わが党の国際情報誌「世界政治資料」が「アルバニアをめぐる問題」の特集号を発行し、ソ連共産党二十二回大会におけるアルバニア労働党指導部への攻撃に答えたアルバニア労働党中央委員会第一書記エンベル・ホッジャ同志の演説を掲載したといって、われわれを糾弾しています。
 だが、わが党は、ほかでもないソ連共産党二十二回大会で、あなたがたが突然、アルバニア労働党指導部にたいする公然とした露骨な攻撃を開始したことに関連して、この問題が、国際共産主義運動の重大問題となったので、「アルバニアをめぐる問題」の特集号を発行せざるをえなかったのです。
 ソ連共産党二十二回大会に出席した野坂議長を団長とするわが党の代表団は、あなたがたの組織したアルバニア労働党への非難のカンパニアには加わりませんでした。それは、あなたがたのやり方がモスクワ声明に反していたからです。また、われわれがみずからアルバニア労働党指導部の立場や見解をよくきき、事実にもとづいて、事態を客観的に究明する努力をおこなうことなしに、軽卒に結論を引きだすことは、真理を尊重する共産主義者としてとるべき態度ではなかったからです。
 あなたがたの書簡によると、わが党があたかもアルバニア労働党側の資料だけしか発表していないかのようです。しかしわが党は、「アルバニアをめぐる問題」の特集号を刊行する以前に、アルバニア労働党指導部を非難・攻撃した部分をふくめてソ連共産党二十二回大会の文献を発表しています。また「アルバニアをめぐる問題」特集号にも、アルバニアを非難したあなたがたの論文三編、あなたがたの見解を支持する兄弟党指導者の発言や論文九編とともに、あなたがたの非難に答えた。エンベル・ホッジャ同志の演説とアルバニア労働党機関紙の主張一編が掲載されているのです。わが党の第八回大会二中総の決定にもとづいて発表された一九六一年十二月二十九日付のアカハタ主張にはこの問題について、つぎのようにのべられています。

 「わが党は、商業新聞、雑誌、春日庄次郎一派の文書が、すでに国際的に公表されている文献にもとづいてこの問題をとりあげ、国際共産主義運動の実際の歪曲とわが党にたいする中傷に利用している今日、国際共産主義運動に責任をもっている党として、党員および党を支持している人びと12が、この問題に関連して公表されている文献をいっそう包括的に研究できる措置関係文献の刊行などをすすめるだろう。」

 同様のことは、「アルバニアをめぐる問題」特集号の刊行の言葉にものべられています。この問題については、一九六二年春、ゲ・ジューコフ同志が日本に来たさい、これをもち出してわが党を非難しましたが、わが党の指導部は、そのときすでに以上のようなわが党の立場を明確にのべ、あなたがたの不法な要求を拒否しています。その後、一九六二年末、袴田同志がモスクワへ立ちよったさいも、あなたがたは同様のことをくりかえしましたが、袴田同志は重ねてわが党の立場をのべています。
 あなたがたは、結局、わが党にたいしソ連共産党指導部の立場と見解をのべた文献およびそれを支持している兄弟党指導部の文献だけを発表することを執ように要求して、何とかしてそれをわが党に押しつけようとしているのです。あなたがたは、自分たちの立場や見解に反論している兄弟党の文献を発表したという理由でわが党を非難しているのです。しかし、事実にもとづいて真理をもとめることこそマルクス・レーニン主義者の科学的態度です。まず論争している双方の立場と見解をよく研究するということこそ、その第一歩であることはいうまでもありません。
 わが党が、ソ連共産党指導部のアルバニア労働党への攻撃のカンパニアに加わらず、双方の文献を公表して全党員および党の支持者にこの問題を包括的に研究できるようにしたことは、わが党がモスクワ声明に規定されている兄弟党間の関係についての基準に忠実であり、またマルクス・レーニン主義にもとづく自主独立の態度を堅持していることを証明するだけです。わが国には、「無理が通れば道理が引っこむ」ということわざがありますが、わが党は、あなたがたの無理おしに屈服して道理をすることを断じてみとめませんでしたし、今後もみとめることができません。

 (2)あなたがたは、ついで「日本共産党の出版物は、国際共産主義運動の諸問題に関するソ連共産党の見解を系統的に黙殺していました」とのべています。しかし、これはまったく事実に反しています。それは、わが党の文献を系統的に読んでいる人たちにはまったく明白なことです。
 もともと、わが党の出版物が国際的に論争されている問題をどのようにとりあつかうかということは、わが党が自主的に決定することがらで、あなたがたがとやかくいうべき筋あいの問題ではありません。だが、いったい、あなたがた自身は、国際的に論争されている問題を自国内でどのようにあつかっているのでしょうか。
 ソ連では、周知のように、一九六三年六月十四日付中国共産党中央委員会からソ連共産党中央委員会あての書簡のようなごく一部の例外をのぞいては、ソ連共産党の見解とそれに同調する兄弟党の見解しか公表されていません。しかも、あなたがたが論争の相手方の見解を引用する場合にさえ、ほとんど相手の主張をねじまげて紹介しています。ソ連共産党の出版物には、日本共産党の決議や声明は、両党が会談した時期からみてもすでに久しい以前から掲載されていませんし、国際共産主義運動の問題に関連するわが党の論文は、それこそ長期にわたって文字どおり「系統的に黙殺」されています。それだけではありません。あなたがたは、ソ連に駐在している日本共産党員にたいしてさえ、わが党の機関紙「アカハタ」を読むことを妨害し、時にはあなたがたに都合のわるい記事の掲載されている特定の号を配布しなかったではありませんか。最近では、書店をつうじての一般読者むけ「アカハタ」の輸入を停止したではありませんか。あなたがたは帝国主義の新聞にたいしてではなく兄弟党の新聞にたいして、こういうことをやっているのです。
 ですから、日本共産党の文献にはつうじていないソ連共産党の党員やソ連の一般市民は、日本共産党指導部が「国際共産主義運動の諸問題に関するソ連共産党の見解を系統的に黙殺した」というあなたがたの根拠のない主張を信じるかもしれませんが、しかし、わが党が国際論争文献を包括的に紹介していることを知っている日本の多くの人たちは、あなたがたのこういう乱暴な主張をきいて、ただおどろくだけです。
 あなたがたは、「アカハタ」がソ連共産党の論文の要約しかのせなかったとか、発表の時期がおそすぎるとかいって苦情をのべていますが、以上のような状況のもとで、「アカハタ」があなたがたの発表する論文をすべて、ただちに掲載する義務も必要もありません。ましてや、みずからはわが党の決議や重要論文などを系統的に黙殺しているあなたがたに、そういうことをわが党に要求する権利はまったくありません。
 だが、あなたがたのすでに久しい非友好的態度にもかかわらず、われわれは、これまで国際共産主義運動その他の問題に関するソ連共産党の見解については、「アカハタ」、「世界政治資料」などをつうじて全体としては広く紹介してきました。簡単な数字をあげてみても、「アカハタ」は、あなたがたの論文やあなたがたの見解や立場を報道した記事だけでも一九六二年には年間で二百四十九本、月平均二十本、一九六三年には年間で二百五十九本、月平均二十一本も掲載しています。また「世界政治資料」は、あなたがたの論文、声明、演説などを一九六二年には七十五編、一九六三年には六十八編も転載しました。ソ連共産党指導部が二十二回大会で各国共産党・労働者党代表者会議の声明に明白に反する行為をおこなってのち、とくに、わが党にたいする公然たる攻撃を開始して以来は、われわれはあなたがたの論文や記事のあつかいにたいして当然もとめられる批判的な態度をとってきていますが、その責任は、われわれの側にではなく、あなたがたの側にあります。しかも、なおかつ「世界政治資料」や「国際共産主義運動論争主要問題」では、あなたがたの基本的立場や見解を系統的に紹介していますが、それは、われわれが党員の教育上そうする必要があると考えているからです。

 (3)あなたがたは、さらにわが党が「世界政治資料」などに転載した兄弟党の論文のなかから「分裂主義者」、「帝国主義者に手をかすもの」、「修正主義者」などの言葉を引きだし、「日本共産党の指導部のあるものは、党の出版物をつうじて、ソ連共産党の指導者たちにこのようなひどい侮辱を加えてもよいと考えている」と独断的な結論をひきだしています。
 だが、わが党の出版物に転載された兄弟党の文献のなかで、ソ連共産党指導部についてどういわれているかということと、それについてわが党がどういっているかということは、明らかに別のことです。こうしたことは、説明にあたいしない自明のことです。あなたがたは、二十二回大会いらい、他の兄弟党にたいし、「帝国主義の施し物をもらう権利をかせぐ地ならしをするつもりだ」とか、「血みどろな蛮行」とか、「新トロツキスト」とか「教条主義」とか、「民族主義者」とか「好戦主義者」とか烙印を押しています。わが党の出版物には、こういう言葉が使われているソ連共産党の報告や論文もそのまま転載されていますが、だからといって、あなたがたが悪をあびせた相1手方の兄弟党から、わが党は抗議をうけたことはありません。これはまったく当然のことです。なぜなら、論争の内容にそうした非難の言葉がはいっているのですから、そういう非難の言葉がはいっているからといって、紹介者を攻撃するのが的はずれであることは明白だからです。
 あなたがたはこれに関連して、書簡のなかで「もしもソ連共産党がその出版物で、日本共産党の指導者たちを『裏切者』『帝国主義に手をかすもの』『修正主義者』などと呼んだら、日本共産党の指導者たちは一体どのような反応をしめすでしょうか」と反問しています。ところがあなたがたは、この同じ書簡のなかで、わが党にたいして、「モスクワ宣言とモスクワ声明から逸脱した」とか、「労働者階級のイデオロギーであるマルクス・レーニン主義から離反している」とか、「新世界戦争なかんずく熱核戦争を主張している」とか、「中国共産党のいいなりになっている」とか、さまざまな罵倒をおこない、しかもそれを一方的に公表しさえしたのです。こうした攻撃の仕方は、あなたがたがこれまでもくりかえしてきた常套手段ですが、わが党には、ソ連共産党指導部の見解に反論をくわえた兄弟党の文献を転載することさえ「やめる」よう要求しながら、自分では、わが党に公然と中傷的非難をあびせてはばからないあなたがたのこうしたやり方は、すべてのマルクス・レーニン主義党が国際共産主義運動において独立・平等の権利をもっていることを頭か無視して、自分たちのために特権的な地位を要求することにほかなりません。

 (4)あなたがたはまた、ブラジル、オーストラリア、セイロン、ベルギーなどの「分裂主義「者」の文献を「世界政治資料」が紹介しているといって、わが党を攻撃しています。しかしこの場合にも、われわれは双方の文献を掲載しています。なぜなら、これらの国における党の分裂は国際共産主義運動内部における原則問題をめぐる論争との関連で生じたものであって、われわれ自身が事実にもとづいてよく研究する必要があるからです。  あなたがたは、国際情報誌である「世界政治資料」が、これらの国における党の従来の指導部の見解と、それから分離した党の指導部の見解をあわせて紹介していることさえも非難していますが、あなたがたは、わが党にたいしてはどういう態度をとっていますか。あなたがたは志賀や鈴木らのわが党にたいする破壊活動をそそのかし、わが党から正規の除名処分をうけたかれらの声明や新聞を「プラウダ」や「モスクワ放送」で大々的に紹介し、それらを公然と支持していますが、志賀や鈴木らの処分を決定した八中総決議をふくめてわが党の文献をまったく黙殺しているではありませんか。こういうことをあえておこなっているあなたがたに、わが党に抗議する資格はいよいよありません。

 以上くわしくみてきたように、国際共産主義運動内部の論争文献の紹介をめぐるあなたがたの非難は、結局、わが党にたいし、ソ連共産党指導部およびその立場を支持する兄弟党指導部の文献だけを発表し、あなたがたから非難をくわえられ、それに反論した他の兄弟党指導部の文献はいっさい発表するなという要求に帰着します。自分の方からモスクワ声明に違反して一連の兄弟党を攻撃し、公開論争をひきおこしておきながら、その公開論争における一方の文献だけを発表するよう他の兄弟党に要求するということは、あなたがたに無批判的に追従してモスクワ声明に違反した道をすすむことを他の兄弟党に要求することであり、国際共産主義運動の団結の原則とは両立しえない大国主義的な態度にほかなりません。あなたがたは、この不当な要求を「正当化」するために、ソ連共産党指導部の見解に反論を加えた兄弟党の文献には「真実がただのひとつもない」、「それらはマルクス・レーニン主義のわく内での論争に関係する文献と考えることができない」と断定し、こうした文献―あなたがたの言葉によると「反ソ的中傷的論文」ということになるが日本共産党の出版物に転載されていることは、「マルクス・レーニン主義諸党間の相互関係の基準にたいする直接の違反行為」だとさえ主張しています。
 このような断定や主張からは、どういう結論が引き出されるでしょうか。ここから引き出される結論は、結局ソ連共産党指導部の言動はすべてマルクス・レーニン主義に合致している、これに異論をのべるものはマルクス・レーニン主義に反している、ソ連共産党指導部が公然と他の兄弟党を非難・攻撃することはモスクワ声明に反しないが、他の兄弟党がそれに反論することはモスクワ声明をふみにじるものである、ソ連共産党指導部の非難に答えた他の兄弟党の文献をわが党の出版物に転載することさえ、「マルクス・レーニン主義諸党間の相互関係についての基準にたいする直接の違反行為」だということです。つまり、ソ連共産党指導部の立場や見解に合致しないものは、「真実がひとつもない」し、モスクワ声明に反するということです。  これはいったい、どういう思想でしょうか。これは、まったく主観的な独善的な思想であり、あなたがたのこうした独善的思想とそれにもとづく兄弟党への乱暴な干渉と攻撃の公然とした開始国際共産主義運動と社会主義陣営の今日の不団結の状態を引きおこした最大の原因です。

 (2)部分核停条約の自主的評価について

 第二に、あなたがたは、わが党が部分核停条約にたいして自主的批判的態度をとっていることを、大いに批判して、それをわが党のいわゆる「反ソ的態度」のもう一つの証拠としてあげています。あなたがたの書簡には、つぎのようにのべられています。

 「日本共産党の一部の指導者は、中国その他の反ソ的な記事のかたよった転載だけにとどまらず、最近ではソ連共産党を躍起となって攻撃しているものたちに積極的に合流しました。日本共産党中央委員会幹部会は、一九六三年八月三日、声明を発表し、大気圏内外、水中での核実験禁止モスクワ条約の調印にふみきったソ連政府の意図の正しさと誠意に疑いをさしはさみましたが、この幹部会の声明が発表されて以来、日本共産党指導部は、ソ連が対外政策でとっている措置をつぎつぎと攻撃しています。」

 モスクワでの日ソ両党会談でも、あなたがたは、一九六三年八月三日のわが党幹部会声明をとらえて、わが党を非難しました。この幹部会声明「核兵器全面禁止の旗をかかげ統一を守らなければならない」は、第九回原水禁世界大会にたいするわが党の態度を明らかにしたもので、部分核停条約については、これを締結したアメリカ帝国主義の意図を暴露し、同時に、問題の重大性とこれに関する意見不一致の現状にかんがみて、原水禁運動の統一と団結のために、部分核停条約にたいする支持あるいは反対の決議を世界大会におしつけることに反対したものです。ところが、あなたがたによれば、この声明は、モスクワ会議の声明で規定された兄弟党間の基準を公然とふみにじるものだというのです。あなたがたは、日本共産党指導部のこの声明は、ソ連共産党中央委員会と事前2協議をおこなうことなしに、ソ連邦の政策を攻撃し、このことによって、ソ連共産党の党内問題にたいする乱暴な干渉をおこない、プロレタリア国際主義の初歩的な原則をふみにじったものだとまで極論しました。
 部分核停条約の問題については、項をあらためて、あなたがたの言い分にくわしく反論しますが、ここではあなたがたが問題をすりかえて責任をわが党に転嫁しているという、重要な事実だけを指摘しておきます。
 あなたがたによれば、わが党が部分核停条約に賛成しなかった結果、日ソ両党間の関係が悪化したかのようです。しかし、これも、歴史にたいするまったく主観的独善的な見方で、白を黒といいはるものです。
 周知のように、歴史的経過は、つぎのとおりです。
 あなたがたは、昨年七月、自分自身がそれまで原則的に反対してきた部分核停の条約化に、わが党をふくめ他の兄弟党や兄弟国を事前になんらの説明もしないで突如として賛成し、しかもそれを他の兄弟党や兄弟国に押しつけようとし、それを受けいれないものを攻撃しだしました。部分核停条約の問題をめぐるあなたがたのこうした大転換こそ、国際共産主義運動と国際民主運動の内部の不団結を助長した新たな重大な契機であり、わが党との関係を悪化させた直接の要因でもあります。
 わが党が部分核停条約の締結をめぐる事態を分析して自主的に見解を表明するということは、自主独立の党としてきわめて当然な措置であって、モスクワ声明の原則になんら反していません。なぜならばわが党の七中総の決議が明確に指摘しているように、部分核停条約の問題は、第一に、「各国政府の参加をもとめるというたてまえをとっており、これにもとづいて日本政府も支持、調印の態度をとっている」以上、「国際問題であるだけでなく、わが国の国内問題でも」あり、第二に、アメリカ政府が「条約の一方の当事者」である以上、この条約は、日本人民にとっても、その直接の闘争の相手としてのアメリカ帝国主義にたいする闘争にかんする重要な問題であり、第三に「右翼社会民主主義者や反党修正主義者もこれについてのかれらの見解を流布し、この問題を『踏み絵」として大衆運動を分裂させつつある」以上、大衆運動における分裂主義との闘争においても放置しておくことのできない問題であるからです。七中総決議は、つぎのようにのべています。「こうしたなかで、世界の真の平和、諸民族の解放をねがい、アメリカ帝国主義および日本反動勢力に反対し、日本の労働者階級と勤労人民の根本的利益を守るという立場から、わが党が、この問題にたいし自主的な見解を表明してきたのは、当然である。これはわが党の責任であり、義務である。」
 部分核停条約の問題は、このようにわが党にとって重要な問題であるだけでなく、各国の兄弟党にとっても重大な影響をもたらすものであるにもかかわらず、あなたがたは、社会主義諸国や兄弟党となんら相談することなく、それまで一致して認めてきた路線を一方的に転換してこの条約を締結し、それをソ連の外交政策の自由であるという口実で「合理化」したうえ、この条約締結に同意しない社会主義国や兄弟党にたいしては、ソ連を攻撃するものだとして破壊的な非難を加えています。この書簡でもあなたがたは、わが党が部分核停条約について自主的見解を表明したことを「ソ連共義党を躍起となって攻撃しているものたちに積極的に合流した」指標と見なしていますが、この論法でいくと、あなたがたが部分核停条約への反対から賛成へと転換したことは、どういう指標になるのでしょうか。それは、ソ連政府の立場や見解に正面から反対していたものたちに「積極的に合流した」ことになります。
 しかも、わが党は、部分核停条約反対の従来の方針から部分核停条約参加へのソ連政府の方向転換がけっしてゆるがせにすることのできない重大な問題をふくんでおり、これを解明しないと事態の本質を大衆に理解させる活動が困難になることを知りながらも、国際共産主義運動の団結を配慮する立場から、あなたがたが全責任をおっているソ連政府の態度への直接の論評をさけてきたのです。
 ところが、あなたがたは、わが党がこのような慎重な配慮をはらってきたにもかかわらず、はじめに指摘したように、一九六三年八月二十五日付「プラウダ」にわが党を公然と名ざしで非難したゲ・ジューコフ同志の論文「広島の声」を発表したのをはじめ、日本共産党と日本人民に部分核停条約支持をおしつけるため不当な攻撃と干渉を強めてきました。このようにしてみずから日ソ両党間の関係を悪化させておきながら、八月三日のわが党幹部会の声明「核兵器全面禁止の旗をかかげ統一を守らなければならない」をもちだして、あなたがたが負うべき両党関係悪化の重大な責任をわが党に転嫁することは、誠実な共産主義者のあいだでは許されない態度だといわなければなりません。

 (3)「ケネディとアメリカ帝国主義」について

 第三に、あなたがたは、一九六四年三月十日付「アカハタ」に発表された評論員論文「ケネディとアメリカ帝国主義」に、非難のほこ先をむけています。

 「徹頭徹尾いつわりでかためたこの論文では、ソ連の対外政策方針のすべてに批判がくわえられており、この政策が、ひどくゆがめられた形で紹介されています。」

 だが、この論文は、モスクワ声明の革命的原則を擁護し現代修正主義に反対する立場から、「ケネディとアメリカ帝国主義」の評価をめぐって国際共産主義運動の一部に生まれている修正主義的見解――「アメリカ帝国主義の両翼分化論」や「独・仏帝国主義への主要打撃論」などのアメリカ帝国主義美化論――を批判し、アメリカ帝国主義の二面政策の本質を理論的に解明したものです。もしあなたがたがこの論文の内容に反対だというなら、なんらの論証もなしに「徹頭徹尾いつわりでかためられた論文」などと慢罵をあびせるのではなくて、堂々と理論的に反論すべきです。このような慢罵は、あなたがたの理論的正当性をすこしも意味しないだけでなく、あなたがたがまじめに理論的政治的討議をしようとせず、単なる慢罵、中傷をもってそれにかえてはばからないというあなたがた自身の不名誉を意味するにすぎません。事実と理論にもとづかない非難による慢罵や脅迫は、わが日本共産党には通用しません。
 あなたがたは、結局、わが党が国際共産主義運動の内部で論争されている原則上の問題について自主的積極的に意見をのべ、あれこれの修正主義的見解に理論的な批判をくわえることに反対しているのです。わが党はこのような不当な非難を断固として拒否するものです。

 (4)日ソ協会その他の問題について

 第四に、あなたがたは、「ソ連の文献を日本で配布することを禁止するというような、日本共産党の指導者たちがとっている行政的な措置」なるものを問題にしていますが、われわれは、ソ連大使館がわが党の地方組織にたいし、他の兄弟党を非難した文献を勝手におくりつけるのをやめるよう通告しただけです。もしわが党が国際共産主義運動の問題に関連するわれわれの文献のロシア語訳をソ連共産党指導部の承認なしにソ連共産党の地方組織に配布するとしたら、あなたがたは、いったい、どういう態度をとりますか。それを考えたら、あなたがたも自分のあやまりに気がつくはずです。
 あなたがたは、日本共産党東京都委員会の一部長が日ソ協会の活動家にたいし、ソ連の宣伝資料の配布を中止し、中国共産党の文献の普及をおこなうよう指示したとのべていますが、これは事実無根です。どういう情報にもとづいて、こういうことをいうのでしょうか、ぜひうかがいたいものです。あなたがたはまた、東京都委員会の「闘争情報」にもとづいて、「日ソ協会が反党分子の最後のよりどころである」かのようにいっていると不満をのべていますが、反党分子が日ソ協会東京都連をよりどころとして反党活動をおこなおうとしていたことは事実です。日本共産党員が反党活動とたたかうのはきわめて当然なことです。しかもこの「闘争情報」は、「日ソ両国人民の戦闘的友誼を固めるための親善運動の発展」をめざす活動の一環として、この問題を提起しているのです。
 あなたがたは、あたかもわが党が日ソ両党間の意見の不一致を日ソ協会とソ日協会の関係に持ちこんでいるかのように主張していますが、これはまったく逆です。あなたがたこそ、日ソ両党間の意見の不一致を日ソ協会とソ日協会の関係に持ちこんでいるのです。第一にあなたがたは、日ソ両党間の意見の不一致のあきらかな部分核停条約支持を、日ソ協会に押しつけるためにさまざまな画策をおこないました。すなわち、あなたがたは一九六三年八月から九月にかけて長島又男氏を団長とする日ソ協会代表団がソ連を訪問した際に、ソ日協会の側であらかじめ準備された、部分核停条約を支持するという共同コミュニケに署名するようさまざまな圧力をくわえました。日ソ協会から長島団長にあてた手紙が不法にも開封され検閲されるといった非常識な措置さえおこなわれました。その直後ソ連を訪問した日ソ協会青年代表団にたいしても、同じような圧力がくわえられました。つづいて、あなたがたは、ソ日協会から日ソ協会へあてた一九六三年九月七日付および十月二十三日付の書簡で、日ソ協会が部分核停条約を支持するようくりかえし要請するとともに、その書簡を全国の県連、支部、個人会員などに直接送りつけました。第二にあなたがたは、日ソ両国民のあいだの友好とはまったくなんの関係もない、他の兄弟党を非難した文献をさえ日ソ協会に持ちこんでいます。こうしたやり方は、あなたがたが日ソ協会をソ日協会の日本支部とでも考えているのではないかと判断する以外に判断のしようがありませんし、あなたがたが以前に日ソ協会にたいしてとっていた態度ともあきらかに矛盾しています。たとえば、一九六一年秋、ソ連が核実験を再開し、日本社会党員の常任理事の提唱によって日ソ協会常任理事会が、ソ連政府の核実験再開を余儀なくされた事情を積極的に説明するという態度を決定したとき、あなたがたは、日ソ協会はこの種の複雑な政治問題に関係すべきでないという態度を表明しました。あなたがた自身が主張したこの基準にてらしても、日ソ協会に部分核停条約支持を押しつけたり、国際共産主義運動内部の論争問題をもちこんだりすることが、正しくないことは明白です。
 日ソ協会は、ソ日協会からの「部分核停条約支持要請」について検討した結果、常任理事会の全会一致の決定にもとづいて今年の二月八日、ソ日協会に回答を送りました。日ソ協会常任理事会は、その回答のなかで、日ソ協会は、「思想信条を異にする各界各層の人びとによって構成されており、日ソ両国民の間の友好をすすめる大衆組織」であって、部分核停条約支持要請にたいしては、「協会としての態度を表明しないことがもっとも妥当」であるむね決定したことを通知し、あわせて、この問題の経過についての意見をまとめた手紙を添付して「一方が他方に部分核停条約のような政治問題について、協会として一つの見解を要請することは決して両協会の利益にならない」ということを指摘しました。日ソ協会がとったこの態度こそ、日ソ協会という組織の性格、目的からいって、もっとも道理にかなったものです。
 このように、すべての事実は、日ソ協会の問題においても、あなたがたこそが誤った態度をとり、日ソ協会とソ日協会の関係についての当然の基準をふみはずしていることをしめしています。こういうやり方が日ソ協会の活動を困難におとしいれ、反党分子や分裂主義者たちの策動をゆるしているのです。そして、あなたがたがこういうやり方を中止するならば、日ソ両党間に国際共産主義運動の問題などをめぐって意見の相違があっても日ソ協会とソ日協会は団結を維持していくことができます。

 (5)わが党にたいする不当な攻撃と干渉について

 あなたがたが、日本共産党指導部によるソ連共産党への「攻撃」を立証するためにあげた事例は、以上につきています。われわれが事実にもとづいて反論したように、わが党がモスクワ声明の規定にそむいて日ソ両党間の関係を悪化させたというあなたがたのいい分は、まったく道理を欠き、事実にも反した不当な言いがかりです。こうした言いがかりは、日ソ両党間の関係を悪化させた真の原因をおおいかくすために、無理やり考えだされた口実にすぎません。最近の両党関係の歴史が事実をもってしめしているように、あなたがたのわが党にたいする不当な攻撃と干渉こそ、われわれ両党の関係に「思わしくない現象」をうみだしたもっとも決定的な原因であり、その責任はあげてあなたがたが負うべきものなのです。
 あなたがたのわが党にたいする不当な攻撃と干渉は、昨年七月にあなたがたが、従来の立場を投げすてて米英両国政府と部分核停条約を結び、わが党があなたがたのこうした無原則的な方向転換に無批判的に追従しないことがあきらかになって以後、とくにはげしさをくわえてきました。ここでは多くの事実のなかから、両党会談までの時期におけるとくに主要な点だけをあげることとします。

 (1)まず第一にあげなければならないのは、あなたがたが、原水禁運動などで、わが党を攻撃大衆運動を分裂させ破壊するために活動している右翼社会民主主義者や反党修正主義者と提携して、わが国の平和運動、民主運動の統一を破壊する一連の活動をおこなってきたことです。
 ここ数年来、社会党や総評の一部の右翼指導者や反党修正主義者が、「分裂」をもっておどかしながら、アメリカ帝国主義の核戦争政策との対決を回避する日和見主義の方針を原水禁運動におしつけるために懸命になっていたことは、あなたがたも十分に知っているとおりです。実際、一昨年の第八回原水禁世界大会では、あなたがたの代表団は、圧倒的多数の日本代表および外国代表団と同じ側にたってこの分裂策動とたたかい、ともに原水禁運動の統一と正しい路線をまもりました。
 昨年の第九回原水禁世界大会もまた、右翼社会民主主義者や反党修正主義者たちの同じような分裂策動に直面しました。ところが、第九回原水禁世界大会に参加するために訪日したゲ・ジューコフ同志を団長とするソ連平和委員会代表団の人びとは、分裂主義者の策謀にたいして断固とした態度をとらず、逆に、これらの分裂主義者に呼応して、世界大会の統一の利益に反するような活動をおこなったのです。すなわち、ソ連代表団は、この大会を世界大会ではなく日本大会にすることなどを主張して、もともとこのような陰謀をたくらんでいた一部の右翼社会民主主義者の策動を激励し、さらにわが党から除名され、分裂策謀の一翼をになっていた前野良や勝部元などの反党修正主義者とひそかな会談さえおこないました。
 ジューコフ同志を団長とするソ連代表団は、部分核停条約支持を第九回原水禁世界大会に押しつけようとしましたが、成功しませんでした。大会終了後、ジューコフ同志が日本共産党中央委員会を訪問したさい、わが党の野坂議長は、部分核停条約の問題などについて、われわれはあなたがたと意見がちがうが、来るべき両党会談で討論しようと提案しました。ジューコフ同志はそれに賛成しました。ところがジューコフ同志はそれから二週間後の八月二十五日付「プラウダ」に論文「広島の声」を発表して、部分核停条約を支持しなかったという理由などで、みずからその決議に賛成した第九回原水禁世界大会を批判すると同時に、わが党を名ざしで攻撃し、部分核停条約を支持したという理由で分裂主義者たちの「分裂」集会を積極的に評価する態度を表明しました。
 つづいて、これらの分裂主義者たちが、日本原水協に対抗する分裂組織をつくりだす目的で、「関西平和大会」(一九六三年九月三十日)、「全般的軍縮と平和のための日本大会」(一九六四年一月三十三十一日)などの分裂集会を開催した時、ソ連平和委員会や全ソ労働組合評議会などは、それが分裂主義の路線にそった集会であることを十二分に承知のうえで、これらの集会を支持するメッセージを送りました。これらの行動が原水禁運動の分裂策動において国際的提携をはかるものであったことは、今日ではすでにだれの目にも明らかになっています。
 さらにおどろくべきことは、原水禁運動において分裂主義者と協力し、わが党を攻撃するという自分たちのかく乱活動を合理化するために、あなたがたが、あなたがたもその責任の一部をになってきた原水禁運動の歴史さえ、乱暴に書きかえはじめていることです。たとえば、第九回原水禁世界大会におけるソ運代表団のこうした活動に先立って、一九六三年八月一日付「プラウダ」は、前プラウダ特派員ラティシェフ同志の論文「広島は平和擁護闘争をよびかけている」を発表しました。これは、前年一九六二年の第八回原水禁世界大会について、中国代表の「分裂主義的路線」が原水禁運動の統一を破壊したかのように事態をえがきだして、第八回世界大会から脱落し、しかもこれを暴力で破壊しようとさえくわだてた反共分裂主義者や反党修正主義者を免罪し、第九回原水禁世界大会をめざすかれらの分裂策謀を激励する役割をはたすものでした。
 ラティシェフ同志は、その論文で、つぎのように書いています。

 「平和擁護者たちが昨年の第八回原水爆禁止世界大会で論争のやむなきにいたったいくつかの困難と意見の対立は、中国代表たちが平和のためのたたかいという、もっとも切実な問題について教条主義的かつ非論理的な態度をとった事実に起因するものであった。中国の代表者たちは、分裂的路線にしたがって、大会の席上でアジア、アフリカ諸国の代表団グループを他のすべての代表団に対立させることに努力を傾注したのだ……」

 ラティシェフ同志は、第八回原水禁世界大会の当時、プラウダ特派員として日本に駐在しており、ソ連の核実験への抗議を要求してこの大会を混乱させたのが右翼社会民主主義者と総評右翼指導者に指揮された一にぎりの日本の分裂主義者であったことを目撃したはずです。
 この大会を混乱させたのが日本の分裂主義者であったことは、事態を客観的にみるものはだれも否定できない厳然たる事実でしたから、ミーチン同志を団長とするソ連代表団も、大会終了直後に発表した声明で、つぎのようにのべました。

 「社会党と総評の指導部が世界大会終了後に、大会の混乱の原因は一部外国代表の圧力によるものであったと声明したことについても一言いわなければなりません。これは事実をゆがめるものです。外国代表は、大会でおきた混乱を克服するために協力の用意があることを示しました。大会の結果が示したように、大部分の外国代表団の見解は、日本の平和活動家が大会で代表していた圧倒的多数の代表の意見と完全に一致したのでした。」

 このソ連代表団の声明と、一年後にラティシェフ同志の名前で発表された論文とでは、まるで手のひらをかえすようなすりかえがおこなわれていますが、あなたがたはこれをどう説明するのでしょうか。このことは、わが党や中国の同志たちを攻撃するためには、また部分核停条約を支持しているという理由で分裂主義者を激励するためには、あなたがたが、あえて歴史的事実を書きかえることさえいとわないことを、証拠だてています。

 (2)あなたがたは、さらに、直接わが党にたいしても、さまざまな内部干渉とかく乱活動をおこなってきました。
 たとえば、さきにふれた一九六三年の日ソ協会の代表団のソのさい、ソビエト側の同志たちは、とくに代表団中の日本共産党員にたいしては、日本共産党の方針にしたがうことが党員の義務であることを知りながら、党の方針に反する「個人的意見」、つまり部分核停条約支持の意見をひきだそうと努力し、それが拒否されると「あなたがたがそのような態度をとるならば、日ソ協会は分裂するし、日本共産党も分裂するだろう」というような脅迫的言辞さえろうしました。
 さらに日本に派遣されているイズベスチヤ紙の特派員チェホーニン同志は、わが党の党員に「部分核停条約を支持する立場から日本共産党中央委員会と闘争する」よう扇動しました。このチェホーニン同志の扇動といい、日ソ協会代表団中の日本共産党員にたいする脅迫といい、わが党指導部にたいする公然たる破壊活動でなくてなんでしょうか。これらの扇動や脅迫をうけた同志たちが日本共産党員としてこうした干渉や誘惑を断固として拒否し、あなたがたの野望が実現しなかったからといって、こういう扇動や脅迫をおこなったものとおこなわしたものの責任はのがれられるものではありません。
 また、あなたがたが国際共産主義運動内部の論争を激化させて以来、ソ連大使館は、わが党の地方党機関や労働組合、民主団体さらに個々の党員や活動家などに、他の兄弟党を非難した文献などを大量に無差別的に送りつけはじめました。このような行為は、わが党の方針を無視して、わが党の団結を乱そうとする不当な内部干渉であり、わが国の労働組合運動や民主運動にまで国際共産主義運動内部の論争をもちこもうとする無原則的な行動です。さらにソ連大使館員は、昨年の十月から今年にかけて若干の大学や地方で、わが党から脱落したトロツキスト、修正主義者などを中心とする反党分子が組織した集会にまで参加して、部分核停条約支持や国際共産主義運動の諸問題について講演をおこないました。反党分子が日本共産党を攻撃し、大衆から切り離す目的で組織したこのような集会で、ソ連大使館の同志たちが講演することは、かれらの党破壊活動を援助することにほかなりません。
 そればかりかあなたがたは、わが党の指導部のなかに党の方針にそむく反党分派を組織するための策謀まで開始しました。あなたがたがこの三月にモスクワでの日ソ両党会談に参加する一方で、ソ連大使館などをつうじて東京で反党分派活動を促進するために志賀らとの連絡を強めていたことなどは、もはやかくれもない事実となっています。
 あなたがたのこうしたやり方がモスクワ声明に規定された兄弟党間の関係についての基準をもっとも乱暴をふみにじってのわが党への不当な攻撃であり、わが党の内部問題への許すことのできない干渉であることは、まったく疑問の余地がありません。
 あなたがたは、わが党代表団があなたがたのわが党にたいするこうした干渉と破壊の活動にたいし、正当な抗議をおこなった際、それはソ連大使館その他の機関のすべての活動を中止させ、あるいはそれを日本共産党の統制下におこうとするものだとして、わが党の抗議を拒否しました。つまり、あなたがたは、あなたがたのわが党にたいする干渉や破壊の活動を、ソ連の外交機関の活動の自由とか外交政策展開の自由とかいう口実で正当化しようとしているのです。だが、マルクス・レーニン主義の原則とプロレタリア国際主義を投げすてないかぎり、社会主義国家を指導する共産党が、資本主義国の兄弟党を攻撃したり、反党分子や民主運動や平和運動における分裂主義者を援助したりするために、その外交機関を利用するなどということは、どのような口実をもちだしても合理化することはできません。あなたがたは、他国の内政への不干渉を、社会主義国家の対外政策の当然の原則のようにいつもいっていますが、他国の兄弟党や他国の民主運動への内部かく乱だけはその例外であって、あなたがたの党および国家の当然の権利に属するとでも思っているのですか。

 (二)日ソ両党会談の経過と問題点

 モスクワでおこなわれた日本共産党代表団とソ連共産党代表団の会談にいたる経過と、会談の内容の問題にうつりましょう。あなたがたの書簡は、この点についても事実をゆがめて、われわれが分裂への努力をつよめ、あなたがたが団結のためにできるだけの努力を払ったかのように主張しています。

 (1)両党会談開催までの経過

 あなたがたの書簡は、まず両党会談開催にいたる経過について、つぎのようにのべています。

 「ソ連共産党中央委員会は一九六三年二月、すでに日本共産党中央委員会に、われわれ両党間の関係における機の熟した諸問題を討議しようと申入れました。日本共産党中央委員会は、ソ連共産党その他のマルクス・レーニン主義諸党に反対する論文の転載をともなった長い沈黙ののち、ようやくソ連共産党中央委員会との話しあいに応じました。」

 また七月十一日付のあなたがたの書簡には、「われわれが手紙を送ってから一年後に、ようやく日本共産党代表団は会談のためモスクワへやってきました」と書かれています。
 これらの書簡によると、各国の共産党・労働者党は、ソ連共産党から会談を申入れられれば、にはさておいてもただちにモスクワへ飛んでゆかなければならない義務を負っているかのようです。兄弟党の会談というものは、党の大小や古い新しいにかかわりなく、たがいに独立した平等な党としての立場から、相互の事情と立場を尊重することを基礎として開かれなければならないものです。わが党は、あなたがたから会談の申入れがあれば、いつでも即刻モスクワへゆかなければならない一方的義務をすこしも負っていませんし、どうしても緊急に会談を開く必要があなたがたにあるのなら、わが党が提案したように、あなたがたが東京にくることもできるのです。われわれはあなたがたの書簡に、兄弟党間の関係にあってはならない大国主義的な態度があらわれていることを指摘しないわけにはいきません。ソ連共産党の二十一回大会いらい、あなたがたは口先では「兄弟党のなかには指導する党も指導される党もない」といっていますが、あなたがたがいうこととおこなうこととには大変な開きがあります。しかもあなたがたの書簡によると、日本共産党の指導部は、「われわれが手紙を送ってから一年後にようやく」モスクワへ行っただけでなく、この一年間まるで知らぬ顔をしていたかのようです。しかしこれは、まったく歴史的経過を無視した暴論です。この間の経過は、真相を明らかにするために公表した、わが党の一九六三年三月六日付、一九六三年十月二十二日付、一九六四年一月十日付のソ連共産党中央委員会あての返書に明白に示されています。
 三月六日付のわれわれの返書には、両党会談に原則的に賛成したのち、会談の時期などについて即答できない事情がつぎのように説明されています。

 「わが国では、三月下旬から四月末までの期間に各級自治体選挙がおこなわれます。国際共産主義運動の問題とも関連して自由民主党から社会党にいたる他のすべての政治勢力の反共的攻撃がつよまっている状況のもとで、われわれは、この地方選挙で一定の前進をかちとるために全力をあげて活動しています。またわれわれは今年の秋には第九回党大会の開催を予定しています。
 われわれは、以上のようなわが党の当面の緊急な任務を考慮して、四月の地方選挙について総括を終了してのち、わが党の代表団をソ連に派遣する時期その他についてあらためて検討し、あなたがたにこの問題についての具体的回答をします。」

 日ソ両党会談について、ソ連共産党指導部から第二回目の提案を受けとったのは、一九六三年十月中旬です。この間に、あなたがたが突如として部分核停条約に調印し、それに関連してわが党への攻撃と干渉を露骨におこないだしたことを、ここで想起しておく必要があります。
 こうした状況のもとでも、われわれがモスクワ声明の原則にもとづいて内部的な話しあいによって意見の不一致を解決する態度を堅持していることは、十月十二日付のあなたがたの書簡にたいする十月二十二日付のわれわれの返書に明らかです。われわれは、この返書では、ふたたびその後のわが党の事情を同志的にくわしく説明し、あなたがたの側から日本へ代表団を派遣されるよう要請しました。十月二十二日付のわれわれの返書には、この点について、つぎのように書かれています。

 「その後、今年末に衆議院選挙が必至の情勢になり、わが党が第九回党大会を延期して衆議院選挙の準備に全力をあげていることは、あなたがたのご承知のとおりです。」
 「野坂議長は選挙中はもちろんのこと、来年五?六月までつづく国会開会中は海外旅行は不可能です。また宮本書記長の健康は最近回復しつつありますが、まだモスクワまで旅行して緊張を要する任務につくことはできない状態にあります。
 このような状況のもとで、わが党の事情からすれば、当分、最高指導者をふくむ代表団をモスクワに派遣することは困難だという事情を考慮されるよう希望します。しかしもしあなたがたがあなたがたの代表団を日本に派遣されるならば、われわれはいうまでもなく歓迎します。」

 これにたいして、あなたがたは、十一月二十六日付の書簡で、ソ連共産党代表団を日本へ派遣することに原則的に賛成しましたが、日本への入国の可能性について危惧の念を示しましたので、われわれは積極的に事態を促進するため一九六四年一月十日付の返書で、野坂議長または宮本書記長を団長とする代表団を送ることはできないが、別の構成の代表団の派遣の可能性を検討することをあなたがたに通知し、それからまもなく袴田同志を団長とする代表団の派遣を決定したのです。
 本年三月のモスクワにおける両党会談にいたる経過は、以上のとおりです。だから、「手紙を送ってから一年後にようやく日本共産党代表団は会談のためモスクワへやってきた」とか、「長い沈黙ののちようやくソ連共産党中央委員会との話しあいに応じた」とかいうあなたがたのいい分は、こうした歴史的経過をまったく無視し、事実に反した故意のわい曲をあえてしているだけでなく、兄弟党間の関係を律する平等の原則を正しく尊重する態度をも失っています。またあなたがたは、複雑な日本の情勢のもとで、アメリカ帝国主義および日本独占資本と不断にたたかっているわが党の事情をまったく眼中においていないとみるほかありません。

 (2)わが党代表団の態度

 あなたがたはまた、両党会談にのぞんだわが党代表団の態度をきわめてわい曲してえがきだしています。わが党の代表団は、今回の会談では、主として、すでに事前の往復書簡で意見の交換をしつつあった部分核停条約の問題、それに関連して生じたわが党への干渉の問題、第九回原水禁世界大会をめぐる問題、国際民主主義運動の問題などについて発言しました。
 あなたがた自身、一九六三年十月十二日付の書簡で、「モスクワ条約の問題および両党にとって関心のあるその他の問題について意見の交換をしたい」と提案しています。事実、部分核停条約の締結に関連して第九回原水禁界世大会に新たな困難がもちこまれ、ジューコフ同志の論文によるわが党への公然とした攻撃がおこなわれ、あなたがたのわが党への不当な干渉が生じ、日ソ両党の関係が悪化し、国際民主運動の不団結が助長されたのですから、われわれが今回の会談でまず以上の問題をとりあげたことは、きわめて筋道がとおっています。なぜなら、わが党の代表団は、われわれ両党間の関係を改善する使命をもってモスクワへ派遣されたのですが、そのためには当然、まず、現に両党間に具体的におこっている問題を原則的に解決する努力をしなければならないからです。
 わが党の代表団長は、こうした見地から、会談の冒頭で、国際共産主義運動の全般的な問題については、十分に準備されたのちに開かれるべき国際会議で、あるいは今後の日ソ両党会談でのべることにして、今回の会談では主として両党間に現におこっている問題について意見を交換したいと提案しました。ソ連代表団は、そのさい、これに異論をのべませんでした。
ところが、あなたがたの四月十八日付の書簡によれば、あたかもわが党の代表団が原則的な問題の討論をすべて拒否したかのように会談の内容がねじまげられています。この書簡には、つぎのようにのべられています。

 「ソ連代表団は会談の当初から、またその後も、国際共産主義運動および両党の相互関係の原則的な諸問題について意見を交換しようと一度ならず提案しました。しかしながら、貴党代表団は、これらの問題を討議することを拒否したのです。」
 「原則的な諸問題を忌憚なく話しあうかわりに日本共産党代表団は、事実に反して、ソ連共産党が『日本共産党にたいし内部干渉をおこなっている』と非難することに全力を傾けました。」

 わが党代表団が問題にしたジューコフ同志のわが党にたいする公然とした攻撃、ソ連の大使館員や特派員などのわが党への破壊活動をはじめわが党への一連の内部干渉の事実は、モスクワ声明に規定されている兄弟党間の関係についての基準を踏みにじる原則上の問題であります。その後のきわめて明白な許しがたい事実をあげれば、あなたがたは、レーニン主義的組織原則を侵犯して公然日本共産党の破壊活動にのりだした志賀義雄や鈴木市蔵を露骨に支持していますが、これらは兄弟党間の関係についての基準を乱暴に侵犯した原則上の問題ではないというのでしょうか。わが党の代表団がモスクワであなたがたと会談をしていたときに、あなたがたは、秘密裏に、すでにそれ以前からはじめていた志賀らとの連絡をつよめ、かれらのわが党に反対する活動を積極的に支持しだしましたが、このことは、わが党の代表団が会談で、あなたがたのわが党への干渉の問題を特別に重視したことが、まさにきわめて必要なものであり、妥当であったことを裏書きしています。
 われわれは、マルクス・レーニン主義の階級的見地から部分核停条約について批判的意見をのべましたが、これは重要な原則的問題につらなる具体的な問題です。
 わが党の代表団は、国際民主運動の問題に関連して一連の重要な問題を提起しましたが、これもまたあきらかに、原則上の問題です。
 あなたがたは、われわれのこれらすべての問題提起を「ソ連共産党への数多くの苦情」だとのベていますが、これは、あなたがたこそ具体的な問題を原則的に解決するのを回避したことを示しています。あなたがたによれば、結局、ソ連共産党指導部のいいなりになることが「原則的」で、それへの異論はすべて原則に反する「苦情」だということにしかなりません。
 さらにあなたがたは、四月十八日付の書簡のなかで、わが党の代表団がまるであなたがたを「脅迫」したかのように描きだそうとしています。あなたがたの書簡には、つぎのようにのべられています。

 「日本共産党の代表団が、分裂にいたるかもしれないというようなおどかしをほのめかし、最後通告的な形でこれらの苦情を出したことからでも、会談での日本代表団の努力の真意をうかがいしることができます。」
 「袴田同志は、最初の発言ですでに、『分裂の危険が生まれつつある』ことについてのべました。また最後の会談で袴田同志は、『いまわれわれの間には統一の気配さえない』といっています。日本共産党代表団は、両党会談についてのどんな共同コミュニケにも調印することをかたくことわりました。」

 われわれは、国際共産主義運動の問題についてのあなたがたの文献を冷静に研究してきましたが、あなたがたの議論の仕方の重要な特徴のひとつは、相手の主張をまったくねじまげて、相手がいっていないことをいっているかのように仕たてあげ、それに「反論」するというやり方です。今回の日ソ両党会談におけるわが党代表団の発言についてのあなたがたの描写も、まったく同様な手法にもとづいています。
 袴田同志は、最初の発言を「われわれは今日の国際共産主義運動の不団結の問題を深く憂慮している」という言葉ではじめ、「会談が真に平等な立場で、同志的に冷静に運ばれるよう希望するものである。われわれは、このような立場から、あなたがたの意見をよくきき、またわれわれの考えも同志的に卒直にのべるつもりである」という言葉で結んでいます。
 袴田同志は、代表団の総括的発言では、「たがいに独立・平等の党としての相手を無視して行動しつづけるならば、解決できる問題も解決できないだけでなく、この双方の間が分裂してしまう危険をうむものである」ことを指摘して、「われわれとあなたたちの間にある意見の不一致、国際共産主義運動における不団結の問題を解決するために、謙虚に努力されるよう希望するものである」とのべています。
 わが党の代表団長は、さらに最終発言では、「われわれは、すでに、最初の発言でのべたように、今回の会談をわが党とソ連共産党の第一回会談と考えている。今後も時間をかけて、マルクス・レーニン主義の原則とプロレタリア国際主義にもとづく両党の団結の強化のために、両党間の問題についても、国際共産主義運動についても、しんぼうづよく話しあっていく用意があることを重ねて言明する」とのべています。
 両党会談におけるわが党の代表団の態度についてのあなたがたの描写と、わが党の代表の実際の発言とをくらべてみれば、あなたがたが真実をゆがめていることは明白です。
 わが党の代表団が共同コミュニケの作成に賛成しなかった理由については、代表団がモスクワですでにのべていますし、また七月十五日付の返書でも書きましたが、ここでも重ねてお答えしておきます。
 わが党の代表団が共同コミュニケに賛成しなかったのは、もし会談の内容をありのままに発表すれば、敵の面前に不一致を暴露することになり、またもし会談の内容に反するものを発表すれば、世界と日本の共産党員と勤労人民をあざむく結果になるからです。しかも、あなたがたは、今回の意見の交換が両党のあいだの相互理解と同志的協力のために有益であったことを満足をもって指摘するとか、ソ連共産党が日本共産党との関係においてレーニン的基準を守っているとか、会談の実際の経過とも、あなたがたが実際にやってきたこととも、まったく合致しない内容の共同コミュニケ案を押しつけようとしたので、わが党代表団はそれに賛成しなかっただけです。わが党の代表団が共同コミュニケの問題についてこういう態度をとったことは、原則と平等にもとづく両党の団結を考慮したからであって、それをわれわれが日ソ両党の団結をのぞまなかったかのようにいうあなたがたのいい分は、まったく当をえていません。

 (3)ソ連共産党指導部の不誠実な態度

 両党間の関係を改善するという問題にたいするあなたがたの不誠実な態度は、三月の会談でわが党の代表団が提起した一連の重要問題、とくに、兄弟党間の団結の原則をふみにじっておこなわれたわが党への一連の内部干渉の事実にたいするあなたがたの態度に、もっとも集中的にあらわれています。これらの問題は、両党間の関係の改善を真に願うならば、どうしても回避することの許されないさしせまった原則問題であるにもかかわらず、すでにのべたように、あなたがたは、両党会談のさいにも言を左右にしてこれらの具体的な問題を卒直に原則的に解決することを回避しました。たとえばあなたがたの代表団は、ラティシェフ同志の論文が、中国代表団を攻撃して分裂主義者に援護射撃をあたえたことの指摘には一言も答えずに、もっぱらほかの諸点をもちだして論点をうやむやにしたり、第九回原水禁世界大会において、ソビエト代表団員はだれ一人として、いかなる反党分子とも接触をもったことがないとか、日ソ協会代表団にたいする圧力などとはまったくのぬれぎぬだとか、わが党にたいする反党活動を扇動したチェホーニン同志の行動にたいしては報告を受けていないとか、白を黒といいくるめて、事実を否認したりしました。またあなたがたの代表団は、日本でのソ連大使館員の行動は外交活動の自由に属するといっていいぬけようとしたり、兄弟諸党にとっては、ソ連の文献の大量配布の面でソ連の諸組織をつねに助けることが義務であるという大国主義的な尊大な態度でのぞんだりしました。さらにあなたがたの代表団は、分裂主義者の「平和大会」にメッセージを送ったのは、「たとえそれが反動的な団体」であろうと大衆的諸団体の活動に参加しなければならないというヴェ・イ・レーニンの指示にしたがったもので、なかんずモスクワ声明にもとづき共産党と社会党の団結の必要を強調するためであると驚くべきこじつけと強弁をおこなったり、はてはジューコフ同志の論文の「若干の日本共産党員の立場」についての指摘は、むしろきわめて控え目なものだと開き直ることまでしました。こうしてあなたがたの代表団は、あなたがたの非をいっさい認めようとせず、むしろそれを問題にするわが党こそ、最も小さな、取るにたらないような「エピソード」を集めて「苦情」をいっているにすぎないものだとして、わが党を非難しました。
 しかし、両党会談でわが党の代表団が指摘したあなたがたのわが党にたいする干渉やかく乱の事実は、けっして取るにたらない「エピソード」でもなければ、偶然のものでもありません。われわれは、そのほかにも、わが党にたいする干渉やかく乱についての、一連の事実をあげることができるからです。たとえば、ソ連共産党二十二回大会に出席したわが党代表団がモスクワに滞在していたとき、ソ連共産党中央委員会の一勤務員は、モスクワ駐在のアカハタ特派員にたいし、わが党代表団のなかの指導的同志のあいだにどのような意見のちがいがあるかを知らせるよう要求し、しかもそのことをわが党の指導部には絶対に報告するなと口止めしました。わが党の代表団の指導的同志のあいだに、なんらかの重要な意見のちがいがあるかのように思い込んだことは、まことに笑うべき推測でありますが、重要なことは、あなたがたがわが党のアカハタ特派員をわが党を裏切るスパイ活動にひきこんでわが党の指導部を離間させるための情報をつかもうとしたことです。
 もちろん、わが党のアカハタ特派員は、この不法な要求にしたがわず、わが党の指導部に事実を報告しました。その後わが党の指導部が、このけっして見のがすことのできない明白な党破壊行為にたいして、あなたがたに厳重な抗議をおこなったところ、あなたがたの党の中央委員会のその勤務員は、誤った行為を自己批判するどころか、逆に「口止めしたではないか」といってアカハタ特派員に怒りを示すという態度をとりました。こうしたすべての経過は、この事件が、けっしてその勤務員の個人の行為ではなく、すでに当時から、あなたがたが、わが党にたいするかく乱を意図していたことを示しています。
 あなたがたは、この四月十八日付の書簡においても、あいかわらず問題の解決を回避する不誠実な態度をとりつづけています。しかも、今度は、これらの問題を回避する理由として、三月の会談で「ソ連共産党代表団はこれらの非難の一つ一つにたいして、根拠のある、くわしい回答をおこない、これらの非難が先入観をもって一部の事実を解釈した結果であったり、あるいは、まったく何の根拠ももっていないものであったことを明らかにした」などという、まったく事実に反する理由があげられているのです。あなたがたはこの書簡のなかで、「ソ連共産党中央委員会は、われわれの関係に少しでも害をおよぼすおそれのあるどんな小さな誤解や、ちょっとした障害をも、われわれの関係からとりのぞいてゆこうといつも努力してきました」などと自画自識していますが、実際には、あなたがたは「どんなちょっとした障害」をもとりのぞこうと努力するどころか、逆に、あなたがたの責任で生まれているこれらの障害を真剣にとりのぞこうとするわれわれの努力を、こともあろうに「最後通告」だといって非難しているのです。
 このような無責任ないいのがれによって、日ソ両党関係の悪化にたいするあなたがたの重大な責任――あなたがたがマルクス・レーニン主義の原則を守っているわが党にたいして、文字通りマルクス・レーニン主義とプロレタリア国際主義の原則とおよそ縁のないようなやり方で不当な内部千渉をつづけてきたという責任を回避することは、絶対に許されません。
 なお、あなたがたは、あなたがたがすでに一方的に公表したこの書簡のなかで、マッカーサーの弾圧――党中央委員会にたいする公職追放令によって、わが党中央が非合法下におかれた時期の両党関係をめぐる諸問題にふれています。これは、今回の会談の内容を公表しないという両党代表団のとりきめをまったく無視しているだけでなく、兄弟党が非合法下ないし半非合法下におかれた時期の非公然の問題を、反動勢力の前で無警戒に論じないという、兄弟党間の信義と国際共産主義運動の当然の準則をまったく踏みにじったやりかたです。われわれは、あなたがたがこの問題についてのべている内容に同意するものではありませんが、この公開される書面で、この時期のこれらの問題をさらに立ち入って論究することは妥当でないので、ここではあえて回答する必要を認めません。

 (4)宣言と声明の路線から逸脱しているのはだれか

 あなたがたの書簡は、さらに、このモスクワ会談でわが党の代表団がソ連共産党にたいして提出した「苦情」は、まさに「最近、日本共産党の指導者が一連の原則的な諸問題において一九五七年の宣言と一九六〇年の声明にのべられている国際共産主義運動の合意の路線から明らかに逸脱しはじめた」事実から生まれたものであると断定し、この「根本的事実」なるものを、わが党の代表団が「あいまいにしようとしました」といって非難しています。
 だがあなたがたこそ、われわれが日本共産党とソ連共産党間の関係を改善するために提起した諸問題を、原則にもとづいて、誠実に具体的に解決することを「あいまい」にするために、会談を一挙に国際共産主義運動内部で論争されている政策上、理論上の問題一般の討論にひろげようとしたのです。しかもあなたがたは、わが党が社会主義世界体制の過小評価や平和共存の否定など、モスクワ宣言やモスクワ声明から逸脱した路線におちいっているという不当な非難を加えたのです。その際あなたがたがとくに力を入れたのは、中国共産党の文献がわが党の出版物に転載されていることを根拠として「日本共産党が中国共産党の特殊の路線に連帯性をしめしている」という結論をくだし、わが党を中国共産党に追随し、ソ連共産党をふくむ「世界共産主義運動」全体に敵対するものとして非難することでした。
 あなたがたが、今度のあなたがたの書簡でも、ほとんどあらゆる問題でわが党を中国共産党の追随者として非難していることが示しているように、あなたがたは、あなたがたと意見が一致しない兄弟党を非難攻撃する際、ほとんどつねにといっていいほど、その兄弟党が中国共産党の路線に盲目的に追随しているという口実を用いています。あなたがたが終始一貫使っているこのような論法や、そのようなやり方は、まったくまちがっています。日本の反動勢力や商業新聞は、例外なく日本共産党の内部には「中共派」と「ソ連派」があるとか、「ソ連路線と中共路線の対立」だとかいって、わが党が外国の党の指図にしたがう政党であるかのような反共宣伝を、執ように展開してきました。あらゆる兄弟党に自分たちの路線への無条件追随を要求し、それが拒否されると、その兄弟党を中国共産党の追随者と断定するあなたがたの論法は、事実にも道理にも反して世界の兄弟党全体をソ連共産党の追随者と中国共産党の追随者とに「色分け」するものであり、結局、国際共産主義運動を中傷する反共宣伝家たちの論法とまったく同じ立場に立っているのです。
 わが党は、どの外国の党にも無批判的に追随し、盲従する党ではなく、マルクス・レーニン主義の原則にもとづき、自主独立の立場で、あらゆる問題にたいする態度を決定する党であり、国際共産主義運動内部の論争問題についても、同じ立場で対処しております。しかしこの自主独立の立場は、けっして、いわゆる調停主義、中立主義、折衷主義のようなあいまいな立場を意味するものではありません。われわれは、マルクス・レーニン主義の原則と真理に忠実であり、マルクス・レーニン主義の原則と真理を破るものには批判的でなければならず、正しいことは正しいとし、誤っていることは誤っているとすることは共産主義者として当然の態度であります。同じマルクス・レーニン主義の原則を守り、真理に忠実な党であるかぎり、国際共産主義運動の原則的諸問題について見解が一致するのは当然であって、本来はすべてのマルクス・レーニン主義党が一致すべきものであります。このことが、特定の党にすべて賛成し、特定の党にはすべて反対するというような、誤った盲従主義とはなんの共通点もないことはいうまでもありません。このような立場をとりつづけているわが党を、あなたがたが中国共産党に追随した党とみるのは、わが党にたいする重大な侮辱であり、あなたがたの逸脱した立場からは、事態を客観的にみることができなくなっていることを示すものです。
 あなたがたの発言は、こうした点できわめて重大な内容をふくんでいましたが、わが党の代表団は、袴田同志が最終発言でのべたように、かぎられたモスクワ滞在期間で、あなたがたのすべての発言を詳細に検討することは不可能なため、全面的回答はおこなわずにいくつかの点についてのベるにとどめ、「われわれは、あなたがたの発言内容を党の指導部にくわしく報告し、あなたがたの論点をさらによく検討し、両党代表団のつぎの会談であらためてわが党の意見をのべたいと考える」ことをあなたがたの代表団に表明しました。そしてあなたがたもこの点を了解したのです。
 しかるにあなたがたは、わが党代表団が帰国もしないうちに、「日本共産党代表団は、これらの問題を討議することを拒否した」という信義に反したいいがかりをつけ、両党会談におけるあなたがたの発言内容をつづりあわせた四月十八日付の長文の書簡を、いきなりわが党中央委員会にたいして送りつけたのです。あなたがたが、この書簡のなかでいっているように、「兄弟的協力と国際主義的連帯の精神」で意見交換を続け、「意見の不一致を一歩一歩ととり除く」誠意をもっているなら、まだわが党指導部にたいする代表団の報告さえおこなわれないうちに、このような書簡を送りつけることなど、それこそ頭に浮かぶはずもありません。しかもあなたがたは、書簡を送りつけてからわずか二ヵ月半しか待たないで、この書簡を一方的に発表しました。これは、はじめからそれがあなたがたの予定の行動であり、この書簡の唯一の真の意図が、わが党とあなたがたの党の同志的関係の改善にあるのではなく、ただ日本共産党員と人民の面前で公然とわが党の指導部を非難することによって、わが党の団結をかく乱し、指導部と党員の間を離間し、わが党にたいする日本人民の信頼を掘りくずすことにあったことを、はっきりとしめしています。
 わが党が、宣言と声明の路線から「明らかに逸脱しはじめた」というあなたがたの非難は、なによりもわが党があなたがたへの無批判的追随者でないことへの怒りを基礎にした根拠のない中傷攻撃にすぎません。それは、いかなる党にも追随しない自主独立の立場と、モスクワ宣言とモスクワ声明の原則的規定をきびしく守りながら、それからの左右の逸脱にたいして妥協することなくたたかってきたわが党にたいする、絶対にゆるすことのできない不当な攻撃です。これはあなたがたがわが党にたいするさまざまな「内部干渉」や非難攻撃を、わが党の路線が宣言と声明の路線から逸脱しはじめるというまったく不当な口実で「正当化」しようとしていることを示しています。それだけではありません。同時に、あなたがたが宣言と声明の路線を、いったいどう理解しているのだろうかという、当然の疑問を起こさせるものです。
 われわれは、つぎに、「世界共産主義運動の政策の最も重要な諸問題にたいする日本共産党中央委員会の指導的な同志たちの立場が変わった」ことの証拠として指摘されている四つの理論問題、すなわち、(1)社会主義世界体制の歴史的な役割についての問題、(2)部分核停条約評価の問題、(3)平和共存を中心にした平和、戦争、革命の諸問題、(4)国際民主運動における共産党の戦術の問題について、宣言と声明の革命的原則を正しく守る立場から、あなたがたの批判に必要な反論をおこないたいと思います。

 (三)社会主義世界体制の歴史的役割

 あなたがたは、まず、「日本共産党の指導部が最近、社会主義世界体制の意義と役割、現代の内容と主要な矛盾についての問題に関して一九六〇年の声明にのべられている見解からそれたことに疑いの余地がない」とのべています。おどろかざるをえないのは、あなたがたが、原則問題にかかわるこのような重大な非難を、「疑いの余地がない」などといってきわめて断定的な形で提出しておきながら、この非難を裏づける論拠としては、きわめて皮相な、ほとんど反論の必要もないような論拠しかあげていないことです。

 (1)七中総決議にたいする非難に答える

 あなたがたが、わが党のモスクワ声明からの逸脱の第一の論拠としてあげているのは、わが党が国際情勢の分析において、「人類社会発展のますます決定的になりつつある要因としての社会主義体制の役割」を軽視しているということです。あなたがたの書簡は、つぎのようにのべています。

 「このことについては、日本共産党中央委員会第七回総会(一九六三年十月)の文献にふれるだけで十分でしょう。これらの文献では、帝国主義陣営内部の矛盾、帝国主義と民族解放運動の間の矛盾が現代の主要な矛盾として特徴づけられており、一方、社会主義体制の役割は申訳けにふれてあるにすぎません。このような評価ははたして、一九六〇年声明に規定された、周知の現代の特徴づけにそむくものではないでしょうか?一九六〇年声明は、世界の発展が、まず第一に、社会主義体制と資本主義体制という二つの体制の闘争によって決定されると強調しているのです。」

 この非難は内容的にも、形式的にもきわめて乱暴なものです。なぜならあなたがたは、わが党の全活動の導きの星となっている、わが党の綱領や大会報告および一連の中央委員会決議を全体として見ようとはしないで、部分核停条約締結後の特定の時期の国際情勢を分析した中央委員会決議の一部分だけをとりあげ、しかもそれを意識的にねじまげて解釈しているのです。 わが党の綱領は、現代の内容や社会主義世界体制の役割にかんして、宣言と声明の原則的規定に合致したつぎのような規定をあたえています。

 「第二次大戦後、国際情勢は根本的にかわった。社会主義が一国のわくをこえて、一つの世界体制となり、資本主義諸国の労働運動はますます発展し、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどで植民地体制の崩壊が急速に進行し、帝国主義の支配を足もとからゆるがしている。資本主義の全般的危機はふかまり、資本主義世界体制は衰退と腐朽の深刻な過程にある。社会主義の世界体制、国際労働者階級、帝国主義に反対する勢力、社会の社会主義的変革のためたたかっている勢力は、今日の時代における世界史の発展のおもな内容、方向、特徴を決定する原動力となっている。社会主義世界体制は人類社会発展の決定的要因となりつつある。世界史の発展方向として帝国主義の滅亡と社会主義の勝利は不可避である。」

 党綱領のこの原則的な見地は、あなたがたがとりあげた七中総決議をふくめて、わが党のすべての決議と方針の前提となっており、わが党の実践活動もまた当然、一貫してこの基本見地を発展させる立場に立っています。
 わが党の七中総決議は、世界人民と対立している帝国主義陣営が、その内部矛盾や民族解放闘争の前進によって「全体として弱まっている」状態を分析した後、当面の国際情勢の総括的な特徴についてつぎのように規定しています。

 「このように、国際情勢には、帝国主義陣営が弱まり、民族解放闘争など各国人民の闘争が前進して、社会主義諸国の発展とともに、大局的には有利な局面の発展がある。『世界史の発展方向として帝国主義の滅亡と社会主義の勝利は不可避である』(綱領)という指摘は、今日も一貫して作用する歴史的法則である。それにもかかわらず、当面する局面では国際共産主義運動内部に原則上の問題での意見の相違による不団結がつよまり、それが社会主義国家間の関係にも拡大し、国際民主運動にも影響をあたえるなど、世界の革命運動、各国人民の闘争に複雑、困難な状況をもたらしている。
 最近の国際情勢のいちじるしい特徴は、こうした情勢のなかで、帝国主義陣営の首領であるアメリカ帝国主義が、国際共産主義運動や国際民主運動の不団結につけこみ、これを利用しながら、各国人民を『平和』や『自由』の仮面でぎまんし、いっそうこうかつに侵略戦争と反動の政策を追求していることである。
 アメリカ帝国主義は平和や自由を口にしながら、一貫して社会主義陣営にたいする核戦争の準備をすすめ、また『核戦争のおどかし』によって新植民地主義による侵略と支配をつよめようとしている。……
 アメリカ帝国主義の二面政策の『平和』の偽装にだまされず、またその核戦争のおどかしにおそれることなく、現実にすすめているアメリカ帝国主義の支配と侵略と戦争の政策にたいして、社会主義陣営、国際共産主義運動のマルクス・レーニン主義の原則にもとづく統一と団結の強化、民族解放運動、平和擁護運動、その他すべての民主主義的運動の正しい統一と団結をかためてたたかうことは、ますます重要なものとなってきている。」(ゴシックは引用者)

 当面の国際情勢を、一方におけるアメリカ帝国主義を首領とする帝国主義陣営、他方における社会主義陣営、民族解放運動、各国人民の平和、民主主義の運動や革命運動などとの対立と闘争の観点から分析し、社会主義陣営と国際共産主義運動の統一と団結の強化をとくに重視したこの決議が、なぜあなたがたの目には、「社会主義体制の役割は申訳けにふれられているにすぎない」ものにみえてしまうのでしょうか。

 (1)あなたがたがこの七中総決議を非難するのは、その国際情勢の分析のなかに、あなたがたが書簡のなかで強調しているような諸事実、「世界の工業生産における社会主義諸国の比率」が高まったことや、社会主義諸国における工業生産高の増加率が、資本主義諸国におけるそれを上まわっていることなどが指摘されていないからでしょうか。もちろん、物質的生産の分野における社会主義陣営の前進や勝利が、世界人民の闘争にとって有利な国際的条件をつくりだすきわめて重要な要因の一つであることはいうまでもありません。しかし、あなたがたが、国際情勢のあれこれの局面を分析する場合にはいつでも、社会主義諸国の工業生産高の数字をおりこまなければならないと考え、その指摘を欠いた情勢分析はすべてモスクワ声明の路線からの基本的逸脱として非難しなければならないと主張しているのだとしたら、それはあまりにも視野のせまい考え方だといわなければなりません。ここには世界革命のとりでであり、世界のもっとも主要な革命勢力の一つである社会主義陣営が、世界革命の発展過程のなかではたす歴史的役割を、たんにそれが実現する物質的生産力の高さだけに、あるいは主としてそれに還元する経済主義的な見地が反映しています。
 実際、あなたがたの書簡は、世界の革命過程におよぼす社会主義陣営の革命的影響力の増大が、おもに物質的生産力の面で、資本主義にうちかつことにかかっているかのように論じて、つぎのようにのべています。

 「二つの世界経済体制の競争は歴史的最短期間に、物質生産の分野で資本主義勢力にたいする社会主義勢力の決定的な優位をもたらし、それによって、世界戦争防止をめざす闘争にあらたな、好ましい条件をつくりだし、世界の革命過程に、それを励ますような強い影響を与えるでしょう。」

 両党会談でも、あなたがたは物質的生産力の分野で資本主義をおいこすことの重要性をとくに強調し、社会主義諸国の経済発展水準が高ければ高いほど、社会主義の実例の魅力はますます大きくなり、われわれはもっと積極的に世界革命に影響をおよぼしていくことができるとか、社会主義諸国の人民は、物質的生産の分野で、壊滅的打撃を帝国主義にくわえており、これによって資本主義勢力にたいする社会主義勢力のたえず増大する優勢を確保しているとかくり返し主張しました。だが、「社会主義の範例の魅力」とは、一人あたりの生産力とか物質的生活水準の高さだけにあるのではありません。社会主義の「実例の力」とは、なによりもまず社会主義革命によって搾取階級を打倒し、人民の力によって搾取のない新しい社会をつくりあげつつあるその巨大な革命的経験、帝国主義と反動の干渉・侵略や反革命を粉砕して革命の事業を守りぬいてきた人民の偉大な革命的精神、権力をにぎった労働者階級が、世界の革命的人民を支持し支援してきたそのプロレタリア国際主義、帝国主義的侵略勢力とのたたかいの先頭に立っている世界平和のとりでとしての世界的役間、マルクス・レーニン主義にみちびかれた正しい政治路線、人民に支持されたプロレタリア独裁がきずきあげた政治的、軍事的、文化的成果、国民経済の急速な発展にあらわれた社会主義制度の経済的優越性などなどの総体であります。だからこそ、最初の社会主義国ソ連は、人口一人あたりの生産高で主要な資本主義国よりはるかにたちおくれていた社会主義建設の初期の段階において全世界の人民に社会主義革命と社会主義建設の模範をしめすことができ、資本主義世界全体にたいして巨大な革命的影響力をおよぼすことができたのです。そしてまた、今日、一連の社会主義国が、経済発展の水準においてアメリカや西ヨーロッパ諸国とまだ相当のひらきがあるにもかかわらず、全世界の勤労人民に革命的影響力をおよぼしている根拠は、まさにここにあるのです。この根本問題を見失って、社会主義の「実例の力」を、社会主義が実現した物質的生産力の問題にだけ、あるいは主としてそれに解消してしまい、経済発展の水準が低い間は社会主義諸国は資本主義世界の勤労人民をひきつける力が弱く、経済競争に勝利して総生産高や人口一人あたりの生産高で資本主義諸国をおいこすことが世界革命の勝利の最大の前提だと考える経済主義的な見地におちいるならば、それは実際には社会主義陣営が世界の革命過程のなかではたすべき意義と役割をひきさげ、一面化し、過小評価することにほかなりません。

 (2)それともまた、われわれが七中総決議のなかで社会主義陣営の不団結の問題をとりあげ、その団結の重要性を強調したのがあなたがたの気にいらなかったのでしょうか。だが、わが党が社会主義陣営の統一と団結を重視するのは、それが、社会主義体制の強化と発展の、したがってまた、社会主義世界体制がその歴史的役割をはたすためのもっとも主要な国際的条件をなすものだからです。この点について、モスクワ声明はつぎのようにのべています。

 「社会主義諸国の発展の経験がかさねてしめしているように、これらの国が実績と成果をあげるうえでもっとも主要な国際的条件は、たがいに援助しあい、支持しあうことであり、社会主義陣営の統一と団結から生まれるすべての優越性を利用することである。社会主義陣営は分裂するかもしれないという帝国主義者、変節者、修正主義者どもの期待は砂上の楼閣であって、結局裏切られる運命にある。すべての社会主義国は、社会主義陣営の統一をひとみのように大切にまもっている」(ゴシックは引用者)。

 わが党は、社会主義体制の世界史的役割を高く評価するからこそ、その統一と団結を重視し、その統一を破壊しようとするいっさいの勢力や傾向とのたたかいを、わが党の重要な任務の一つとしているのです。実際、部分核停条約締結後、アメリカ帝国主義は、ソ連との一定の「やわらぎ」政策をとる一方で南ベトナム、ラオス、コンゴなどでの侵略行動をますます拡大し、この八月、部分核停条約締結一周年を祝ってソ連政府およびイギリス政府と「共同声明」を発し「平和」への共同の努力を誓いあう一方で、ベトナム民主共和国にたいする公然たる爆撃を開始しました。アメリカ帝国主義のこの行動は、七中総決議が、社会主義陣営内部の不団結につけこんでアジアの社会主義諸国を「各個撃破」しようとするアメリカ帝国主義の戦争政策の危険性を警告し、社会主義陣営の統一と団結のための闘争の重要性を指摘したことの正しさを、だれの目にも明らかにしました。ところが、あなたがたの書簡は、社会主義体制の役割についていろいろのべながら、帝国主義者の分裂工作と、それに呼応する現代修正主義者の分裂策謀によって、現在きわめて重大化している社会主義体制の統一と団結の問題、社会主義体制が世界史的役割をはたすうえでのもっとも主要な国際的条件であるこの問題については、一言もふれようとはしません。それどころか、あなたがたは、「社会主義世界体制」という言葉をしばしばソ連(あるいはソ連とそれに同調する社会主義諸国)と同義語として使い、その他の社会主義国は、この世界体制のなかで第二義的な役割しか演じていないかのようにふるまっています。これは、あなたがたが、社会主義体制の不敗の力の源泉であり、その全体としての政治的、経済的、軍事的優位の重要な要件である統一と団結を軽視し、社会主義陣営の不団結につけてもうとしている帝国主義者に乗じるスキをあたえ、社会主義世界体制がその歴史的役割をはたすのを保障しえない実践的立場に事実上おちいりつつあることを示しているものといわざるを得ません。

 (3)あるいはまた、七中総決議が、社会主義体制と資本主義体制の矛盾を現代のただ一つの主要な矛盾とみなすあなたがたの見地に同意しなかったことが、あなたがたが七中総決議を躍起になって攻撃する原因なのでしょうか。
 あなたがたは、両党会談で、社会主義世界体制、資本主義諸国の労働運動、植民地・従属国の民族解放運動は現代の三つの革命勢力をなしているが、世界政治、社会発展全体の主軸は、帝国主義諸国にたいする社会主義諸国の闘争であるのを見のがすことはできず、「現代の基本的矛盾はここで解決されている」のであり、国際的階級闘争の中心点はここにあると主張しました。また、書簡のなかでも、同じ思想をくりかえし、これが「現代の内容と主要な矛盾についての問題に関して一九六〇年の声明にのべられている見解」だと主張しています。
 これは、モスクワ声明をまったく主観的に解釈したものです。第一、モスクワ声明は、直接的には、現代の主要な矛盾についての定式をあたえていません。また、内容的にも、あなたがたのこのような見地は、現代の内容についてのモスクワ声明の規定を、不当に一面化し、単純化するものです。モスクワ声明はけっしてそのような一面的見地にたってはいません。

 「こんにちの時代における人類社会の歴史的発展のおもな内容、おもな方向、おもな特徴を決定しているものは、社会主義世界体制、帝国主義に反対してたたかっている勢力、社会の社会主義的変革のためにたたかっている勢力である」(モスクワ声明)  「現在、国際関係の発展を決定するものは、二つの社会体制のたたかいであり、帝国主義と反動と侵略の諸勢力にたいする社会主義、平和、民主主義の諸勢力のたたかいである」(同前)

 わが党の綱領に明記されているように、われわれは、社会主義の世界体制、国際労働者階級、帝国主義に反対する勢力、社会の社会主義的変革のためにたたかっている勢力が、「今日の時代における世界史の発展のおもな内容、方向、特徴を決定する原動力」であり、これらの勢力の全体が、帝国主義に新たな打撃をあたえつつ社会主義世界体制を人類社会発展の決定的要因に転化させ、最終的には帝国主義の滅亡と全世界における社会主義の勝利にいたる「世界史の発展方向」を規定していると評価しています。わが党の七中総決議が立脚している綱領のこの基本的見地が、モスクワ声明の原則的な見地に合致していることは明白です。そして現代の主要な矛盾を社会主義体制と資本主義体制の闘争だけに単純化するあなたがたの見地こそ、モスクワ声明の諸命題とは合致しない、資本主義諸国の労働者階級と人民の闘争や植民地・従属国における民族解放運動の歴史的役割を軽視する誤った見地なのです。
 要するに、モスクワ声明は全体として、あなたがたの展開しているような一面的な矛盾論を正当化することを決して許してはいません。またわが党の七中総決議はあなたがたのような一面的な歪曲を許すものではありません。
 このように、七中総決議を材料にして、わが党の路線をモスクワ声明からの逸脱として攻撃するあなたがたの非難は、どの論点をとりあげてみても、まったく根拠のないものです。この点でも、モスクワ声明に反しているのは、われわれではなくてまさにあなたがたです。

  (2) 「広範な反ソカンパニア」という非難に答える

 あなたがたが、わが党への非難の第二の論拠としてとりあげているのは、わが党が「ソ連共産党に反対する広範なカンパニアをくりひろげ」ているということです。

 「日本共産党の出版物は、社会主義世界体制の役割と意義に然るべき評価を与えていないだけでなく、ソ連邦における共産主義建設の諸成果を黙殺し、ソ連邦にかんする記事資料の発表を最小限に削るまでになり、しかもさいきんでは、ソ連共産党に反対する広範なカンパニアをくりひろげました。」

 あなたがたの書簡のなかで、「社会主義諸国の現実と政策について」「ゆがめられたことばかり報じている」とか「『アカハタ』の紙上で目にするソ連邦にたいする非友好的な態度」は、結局「天に向ってつばきすることになる」とかいうこのような非難をそれこそ「くりひろげている」ことについては、われわれはいうべき言葉を知りません。われわれは長い間、社会主義諸国の現実や政策にたいして、できるだけ正しく日本人民に報道し紹介することに努力してきましたし、すでにのベたように、近来あなたがたの党が、わが党の基本文献や重要論文を国内にほとんど紹介していないにもかかわらず、さきに具体的数字でも示したように、あなたがたの党の重要な決議、論文も数多く紹介してきました。もちろん、偉大なレーニンの創設したソ連共産党の経験、十月革命がつくりだした世界最初の社会主義国家としてのソ連邦の社会主義建設とそれにともなう階級闘争の経験は、その成功と失敗をふくめてすべて貴重な経験であり、正しいマルクス・レーニン主義の観点からこれを分析するならば、多大の世界史的教訓が汲みとられるものです。しかしそのことはけっして、わが党があなたがたのすべての経験を、自主的、批判的に分析せずに、教条主義的にとりいれ、盲従することを意味しませんし、そうすることはかえってレーニンの教えにそむくこととなります。まして、あなたがたが、マルクス・レーニン主義の原則、モスクワ宣言、モスクワ声明の原則的見地から逸脱し、大国主義的な見地からおこなっている宣伝を、そのままおうむがえしに繰りかえすことが、真のマルクス・レーニン主義者の態度でないことは、いうまでもありません。あなたがたの逸脱がますますはげしくなり、わが党への内部干渉が露骨化してきた最近の段階では、とくに、われわれは、あなたがたの文献にたいしいっそう自主的批判的な見地から一定の選択をおこなっています。各国のマルクス・レーニン主義党の独立・平等の権利を否定しないかぎり、わが党のこうした自主的態度を、「社会主義世界体制の軽視」だとか「ソ連共産党反対のカンパニア」だとかいって非難することができないのは、当然のことです。あなたがたが、われわれのこうしたやりかたを口をきわめて非難しているのは、ただあなたがたが、すべての兄弟党に無条件的な追従を求める大国主義的な見地におちいっていることをもう一度証明したにすぎません。
 われわれはこれまで、モスクワ声明に規定された国際共産主義運動内部の二つの日和見主義、すなわち、「依然として主要な危険である修正主義」と、また「個々の党のある発展段階ではやはり主要な危険になることがありうる」「教条主義とセクト主義」とにたいする「二つの戦線」での思想闘争を一貫してたたかってきました。しかしわれわれは、あなたがたが最近、モスクワ声明に反して(モスクワ声明は「ユーゴスラビアの修正主義者の指導者を今後とも暴露し、共産主義運動と労働運動をユーゴスラビア修正主義者の反レーニン主義的思想から守るために積極的にたたかうこと」をすべてのマルクス・レーニン主義党に義務づけています)国際共産主義運動の隊列にひきこもうとしているユーゴスラビア共産主義者同盟にたいする批判をのぞいては、どの国の共産党・労働者党にたいしても、「反対のカンパニア」をけっしておこなってきませんでしたし、もちろん「ソ連共産党に反対する広範なカンパニア」をもおこなってきませんでした。あなたがたが、マルクス・レーニン主義の原則、モスクワ宣言とモスクワ声明の原則から逸脱した路線をおしつけようとして、わが党にたいしておこなっている根拠のない非難や干渉を拒否することは、日本の革命運動に責任を負ったわが党の当然の任務であって、それを「反ソカンパニア」として攻撃することはけっしてできません。あなたがたのこうした不当な攻撃をやめさせるために必要適切な努力をおこなうことは、日ソ両党のあいだに兄弟党間の正常な関係をとりもどし、日ソ両国人民の真の友好関係をつよめ発展させるためにも、かくことのできない課題なのです。わが党の活動全体が示しているように、わが党は、ソ連共産党とソ連人民がかちとった革命的達成にたいして全体として否定的態度をとったり、ソ連人民と日本人民との友好と団結の重要性を軽視したりしたことは一度もありません。それどころか、われわれは、わが国の反動勢力が組織している反社会主義宣伝、なかでももっとも強大な二つの社会主義国家であるソ連と中国にたいする反共主義的な宣伝や攻撃にたいしては、戦後一貫して妥協することなくたたかってきました。あなたがたもよくご承知のように、一九六一年および一九六二年のソ連の核実験に際しては、米日反動をはじめ右翼社会民主主義者と反党修正主義者は、「いかなる国の核実験にも反対」というスローガンを利用していっせいに反ソ宣伝を組織し、日本の平和運動、原水禁運動を反ソ的方向にそらそうとしましたが、日本の多くの平和活動家とともに、もっとも精力的にこの策謀とたたかったのはわが党でした。ところが、あなたがたの党の一部の人びとは、最近「ソ連核実験に抗議せよ」と叫んで反ソ宣伝の先頭に立った反共的右翼社会民主主義者や反党修正主義者たちと手を組んで、わが党にたいする中傷と攻撃にのりだしています。残念なことにあなたがたの今回の書簡も、このような「日本共産党に反対する広範なカンパニア」の一部となっています。モスクワ声明に規定された兄弟党間の関係の基準を公然と踏みにじって国際共産主義運動の団結を乱し、他の党にたいする根拠のない非難をおこなっているのは、われわれではなく、まさにあなたがたです。

  (3)社会主義体制と民族解放闘争の対置という非難に答える

 第三にあなたがたは、われわれが社会主義体制を過小評価しているだけでなく、逆に民族解放闘争だけを重視しているという批判を提起しています。あなたがたの書簡は、「社会主義世界体制にかんする宣言と声明の原則的な命題のねじまげは、世界と世界革命の運命があたかも、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸国の人民の民族解放闘争によって決められているかのようにいう〝理論〟とじかに結びついています」とか、「貴党の若干の代表が、客観的な諸事実にそむいて、社会主義体制の歴史的役割を引下げ、それに民族解放運動を対立させようと、執ように試みているのに驚くしだいです」とのべています。このような非難もまた、わが党中央委員会の基本方針にたいする、不当なわい曲でしかありません。
 すでにくり返しのべたように、われわれは、モスクワ声明の革命的立場をまもって、今日の時代における世界史の発展のおもな内容、方向、特徴を決定する勢力を、けっして帝国主義とたたかう民族解放勢力だけに単純化するような立場をとってはおらず、それは、基本的には社会主義世界体制、帝国主義に反対してたたかっている勢力、社会の社会主義的変革のためにたたかっている勢力であり、国際的にみれば、このいっさいの解放勢力の中心に立っているのは国際労働者階級とその生みの子である社会主義世界体制であると一貫して考えています。このことは、先に引用した党綱領をはじめ、第七回党大会第十四回中央委員会総会の「『共産党・労働者党代表者会議の声明』および『全世界諸国民へのよびかけ』に関する決議」、一九六一年一月五日付「アカハタ」主張「『共産党・労働者党代表者会議の声明』について」、宮本書記長の講演「十四中総決議と八十一ヵ国共産党・労働者党代表者会議の声明の基本的意義」、第八回党大会における中央委員会の政治報告と綱領報告など、わが党の基本文献にくりかえし明らかにされており、まったく疑問の余地をのこしていません。
 われわれは、世界の主要な革命勢力の一つである社会主義世界体制の役割をいささかでも過小評価する傾向とは、いままでもたたかってきたし、今後もたたかっていくでしょう。だが、われわれが社会主義陣営の役割を正当に評価するということは、社会主義陣営のなかのある国が、帝国主義との妥協を実現するために民族解放闘争を軽視する政策をとったり、こうした政策を社会主義陣営や平和・民主勢力全体に押しつけたりする傾向にたいして、われわれが無批判であってよいということには、けっしてなりません。社会主義陣営の一部にあらわれているこの種の傾向を放置することは、世界革命の過程における社会主義陣営の役割を実践的に低めることにほかなりません。一九六二年十月のいわゆる「キューバ危機」のさいに、あなたがたが、キューバ政府との事前の必要な協議さえおこなわずに、アメリカ政府が提出した「国際査察」の要求をうけいれ、アメリカ帝国主義との妥協のためにキューバ国家とキューバ人民の主権を犠牲にしようとしたのは、この種の誤った傾向の代表的なあらわれでした。われわれは当時、アメリカ帝国主義の侵略に反対するキューバ人民の五項目の要求を支持しましたが、あなたがたのこの誤った方針に無批判に追随する態度を表明せず、あなたがたの不満をひきおこしました。だが、われわれは、社会主義陣営の革命的役割を高く評価し、それをきわめて重視すればこそ、社会主義陣営の役割を実践的に低めるこの種の誤った傾向にたいしては無原則的な追随や妥協をしないことを、われわれの国際的な義務とみなしているのです。
 さらにまたわれわれは、社会主義体制の力だけをみて、その他の反帝国主義的革命勢力とくに資本主義諸国における労働者階級の革命運動、被圧迫諸国民の民族解放闘争を過小評価する傾向ともたたかわなければなりません。
 なぜなら、第一に、社会主義世界体制が成立した今日でも、世界人民の三分の二は、いまなお、資本主義、帝国主義のくびきのもとで民族的・社会的解放のためにたたかっているからです。そして、モスクワ声明が明確に指摘しているように、これらのまだ解放されていない諸国人民にとっては、闘争の主力はあくまでその国の労働者階級を先頭とする勤労人民であり、人民の革命運動を指導して民主主義革命および社会主義革命を達成し、民族的・社会的解放を実現する責任はその国のマルクス・レーニン主義党の肩にかかっているからです。

 「いずれの社会制度をえらぶかは、だれも奪うことのできない各国人民の権利である。社会主義革命は輸入されるものではなく、外からおしつけられるものでもない。それは、各国の内部的発展の結果、その国における社会的矛盾の極度の先鋭化の結果おきるものである。」(モスクワ声明)
 「各国の共産党は革命の展望と課題を自国の具体的な歴史的・社会的諸条件に応じて、また国際情勢を考慮にいれて決定する。」(同前)

 もちろん、社会主義世界体制の強化と発展は、資本主義諸国の人民の革命運動、民族解放闘争の前進をたすけ、たたかいの条件を有利にするうえできわめて重要な役割をはたしています。だが、このことを一面的に強調して、諸国人民こそが歴史の創造者であり、階級闘争―とくに今日の時代では、全世界の労働者階級、被抑圧民族の闘争とそが歴史の原動力であるという根本問題を見失い、社会主義体制が、資本主義体制との経済競争に勝利して、「社会主義の範例の魅力」を増大させることが資本主義諸国の革命運動や民族解放闘争を勝利にみちびく決定的要因だなどと考えるならば、それは史的唯物論のもっとも原則的な見地をなげすてることであり、かならず革命運動を、労働者階級の革命的立場とは無縁な受動的な待機主義におちこませ、革命の勝利を永遠のかなたに遠ざける結果になります。
 また第二には、社会主義世界体制と資本主義諸国の革命運動や民族解放闘争とは、相互支持と相互援助の関係に立っており、社会主義世界体制の強化と発展が、民族解放勢力や資本主義諸国の労働者階級を援助し激励するだけでなく、逆に、被抑圧民族の反帝闘争や資本主義諸国の階級闘争の発展もまた、帝国主義を弱め、社会主義を擁護して社会主義世界体制の強化と発展を助ける役割をはたしているからです。
 残念なことには、あなたがたの書簡には、この相互支持と相互援助という観点が正当に強調されているとはいえません。「世界の革命勢力への社会主義諸国の支援」、「社会主義の範例の魅力」の増大の役割、「共通の反帝闘争」における民族解放運動と社会主義世界体制との「団結と協力」などは強調されていますが、社会主義の強化と発展もまた、同時に民族解放闘争の発展や各国人民の革命闘争の発展にも依存しているという他の側面についてはほとんどふれられていません。もしこの見地が欠ければ、社会主義体制の民族解放勢力や革命勢力にたいする支持と援助は、けっして恩恵やたんなる一方的な義務ではなく、同時に社会主義体制自身の強化と発展にとっても不可欠の任務であることが見失われ、それと結びついて不可避的にまだ解放されていない諸国人民の民族解放闘争や革命闘争を過小評価する傾向におちいらざるをえません。
 以上にのべたわれわれの見地からあきらかなように、あなたがたが事実をあげずにおこなった「わが党の若干の代表」が社会主義体制と民族解放闘争とを対立させているという非難はまったく的はずれのものでしかありません。
 あなたがたがこのような事実にも道理にもそむいた、まったくのいいがかりをつけてくる理由は、あなたがた自身が現在の段階におけるアジア、アフリカ、ラテンアメリカにおける民族解放闘争の重要性を過小評価しており、この地域における民族解放闘争の意義と役割を重視するマルクス・レーニン主義者を、社会主義体制と民族解放闘争とを対立させるものという口実を使って攻撃しようとしていることにあるとしか、判断することができません。
 現在、アジア、アフリカ、ラテンアメリカという地域は、社会主義と資本主義の矛盾、帝国主義と被抑圧民族の矛盾、資本家階級と労働者階級の矛盾、帝国主義諸国家間の矛盾などの世界の諸矛盾が相互に結びつき、もっとも鋭い危機を生み出している地域となっています。第二次大戦後、東ヨーロッパの一連の革命の勝利とならんで、中国革命、朝鮮革命、ベトナム革命、キューバ革命など、一連の人民革命が勝利して、この地域にも、社会主義、反帝国主義の勢力の新しい強力なとりでがうまれました。さらに、帝国主義の植民地的抑圧に反対する民族解放闘争の炎がますますもえひろがり、なにものもはばむことのできない勢いで、この地域全体をおおっています。そして現在、アメリカ帝国主義が、激化する諸矛盾のなかで帝国主義の支配の世界史的な崩壊が進行しているこの地域を、帝国主義と人民勢力の闘争の主戦場とみなし、「中国封じこめ政策」や「キューバ封じこめ政策」などの反社会主義計画をおしすすめ、全面戦争の脅迫をともなう南ベトナム、ラオスなどの民族解放闘争の血なまぐさい弾圧やベトナム民主共和国への公然たる侵略などの軍事的冒険に乗り出していることは周知のとおりです。
 アジア、アフリカ、ラテンアメリカという地域が、当面世界の諸矛盾のもっとも激化した地域となっている事実を認め、この地域における社会主義諸国の反帝闘争と民族解放闘争の発展が、世界平和の擁護にとっても、民族の独立にとっても、世界革命の勝利にとっても、きわめて重要な役割を占めているということを正当に評価することは、けっして、現代の世界の諸矛盾を帝国主義と被抑圧民族の矛盾に解消してしまうことでもなければ、社会主義世界体制を過小評価することでもなければ、民族解放闘争を社会主義体制に対立させることでもありません。それとこれとは、まったく別個のことがらです。この地域が諸矛盾のもっとも激化した地域となっているというのは、ちょうど一九一七年にロシアが世界帝国主義の鎖のもっとも弱い環となっていたのと同じように、またあなたがたの書簡も認めているように「アジア、アフリカ、ラテンアメリカの一連の国ぐにが、帝国主義の鎖での〝弱い、たちきれやすい環〟となった」ことを意味しているのです。
 ところが、あなたがたは、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの地域で世界の諸矛盾が激化し、この地域が現在帝国主義勢力と反帝国主義勢力とのもっとも切迫した闘争の主戦場となっていることを、否定しがたい事実にもとづいて承認する人びとにたいして、しばしば、国際労働者階級と社会主義世界体制の指導的役割を過小評価し、主として農民運動である民族解放運動が世界社会主義革命の主力をなしているとみなす反レーニン主義的理論だなどという非難を投げつけています。こうした非難は、あなたがたが救いがたい「ヨーロッパ中心主義」におちいっていることを暴露しているだけです。なぜなら、アジア、ラテンアメリカの社会主義諸国が社会主義世界体制の有力な一部分をなしてこの地域での帝国主義との闘争の最前線にたっており、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの労働者階級とその党が、国際労働者階級の一部隊として民族解放運動に参加し、国によって強弱の度合はあれ、これを指導している事実を否定しないかぎり、このような非難は成立しないからです。いったい、あなたがたは、「こんにちの時代の中心になっているのは、国際労働者階級とその主要な所産である社会主義世界体制である」というモスクワ声明の命題を、ソ連をはじめとするヨーロッパの社会主義諸国とヨーロッパなどの発達した資本主義国の労働者階級とだけが、「反帝闘争における指導者」「世界革命過程における指導者」になることを意味するとでも解釈しているのでしょうか。最近数十年間の世界の革命運動の歴史が実証しているように、発達した資本主義国の労働者階級であっても、修正主義や日和見主義の政策で指導されている場合には、世界革命はおろか、その国の革命の「指導者」になることもできません。そして経済的に発達がおくれ、人口のなかで労働者階級のしめる比重の小さい国であっても、もし真のマルクス・レーニン主義党が労働者階級を先頭とする勤労人民のあいだに指導権を確立するならば、この国の民主主義革命と社会主義革命を実行することができるだけでなく、国際労働者階級のなかのもっとも革命的な部隊として、世界革命全体に偉大な貢献をすることができるのです。もしあなたがたが、歴史のこの教訓を忘れて、「労働者階級の基本的大衆が集中している」経済的に発達した国ぐにだけが、世界革命の「指導権」をにぎるべきだと形式的、抽象的に思いこんでいるのだとしたら、それは、マルクス・レーニン主義の革命的見地とは無縁なヨーロッパ中心主義の考え方だといわなければなりません。

 最後に、われわれは、あなたがたがわが党の「ある指導者たちがソ連邦ならびにその他の社会主義国をひぼうして、自分たちの威信を高めようとしている」とか、「日本共産党指導部」が、民族解放闘争を「ヘゲモニー的意図と野心に従わせることをねらった」「中国共産党指導者たち」の「計画の実現に協力しようとしている」とか、「じぶんたちの党をソ連邦共産党ならびに他の社会主義諸国の共産党と労働者党に対立させて」いるとかいう、いつわってつくりあげられたこのような非難やあてこすりをやめて、あなたがたの書簡がのべている「社会主義の世界体制、国際労働運動、諸国人民の民族解放闘争が共同で努力して初めて、帝国主義に最後のとどめを刺すことができるのです」という正しい見地を言葉だけでなく行動においても一貫させることを切望してやみません。そうした道をすすまず、あなたがたがこの書簡で示しているような態度と政策をいっそうおしすすめるならば、それは結局のところ、ソ連共産党のかつての輝かしい伝統と威信を傷つけ、社会主義体制の歴史的役割を低め、社会主義の世界体制、国際労働運動、諸国人民の民族解放闘争の反帝国主義的共同闘争をよりいっそうそこなう結果にみちびくだけでしょう。

 (四) 部分核停条約の評価

 つぎに、第二の問題、部分核停条約の評価にかんする問題に移りたいと思います。あなたがたの書簡によれば、「戦争と平和、革命の諸問題」につき、わが党の「公式文書および党出版物」では、「どのマルクス・レーニン主義者も、だれ一人として賛成することのできないような見解がのべられて」おり、その筆者は「世界共産主義運動の現在の戦術のイロハをさえ理解していない」反面、「国際舞台におけるソ連邦の政策を故意に歪曲しようと心をくだいている」のだそうで、その一つが部分核停条約にたいする態度だというのです。あなたがたの書簡の随所に出てくるこの種の悪罵に近い極端な非難は、正しい同志的論争をはじめから不可能にするものでしかなく、われわれはあなたがたに、共産主義者としてもっと謙虚な論争態度をとるよう希望したいと思います。
 あなたがたは、わが党が部分核停条約にたいしてとっている態度を、いくつかの論拠をあげて非難しています。モスクワにおける両党会談でも、あなたがたの代表団はわが党代表団が提出したいくつかの問題に根拠のある回答をおこなうことができませんでしたが、残念なことに、今回の書簡であなたがたが書いている論拠も、ほとんどそのときのくりかえしにすぎず、われわれの部分核停条約にたいする態度を変えさせるどころか、かえっていっそう「支持するわけにはいかない」という態度の正しさを確信させるものでしかありませんでした。すでにこの問題については、わが党の態度はくりかえし公表されており、あなたがたにも伝えてありますので、ここでは簡単に、あなたがたの論拠にたいする、われわれの反論をのべることにします。
 あなたがたが部分核停条約の正しさを示すものとしてもち出した数多くの論拠のなかでは、異なった性格をもった二つの種類の議論が、からみあっています。
 その一つの種類の議論は、本来、部分核停条約は核実験の全面禁止と核兵器の完全禁止にいたる当然の第一歩であると主張してこれを無条件に正当化しようとする議論であり、もう一つの種類の議論は、部分的核実験停止は以前の時期には核実験問題の正しい解決ではなかったとしても、最近の国際情勢の新しい変化によってその意義が変わり、支持すべきものに転化したかのように主張して、情勢変化や力関係の変化を理由としてこれを正当化しようとする議論です。この二種類の議論はまったく性格と立場を異にするもので、たがいに矛盾しさえするものであることは、初歩的な論理の上からいっても明らかなことです。あなたがたの書簡では、あなたがたがいったいどちらの立場に立っているのかはかならずしも明らかではありませんが、相互に矛盾しさえするこのような議論を、平気でいっしょにもちだしてくること自体、あなたがたが、自分で結んだ部分核停条約を「正当化」し賛美するためには手段を選ばず、手あたりしだいの論拠を集めていることを示しているといえましょう。

 (1)第一の論拠一部分核停の無条件正当化について

 第一の種類からあなたがたの論拠をとりあげてみましょう。あなたがたは、書簡のなかで、部分核停条約支持が、国際共産主義運動や世界の平和、民主勢力の従来からの一貫した立場であったかのようにいう、事実を無視した議論を展開しています。そのさい、もっとも主要な論拠とされているのは、部分核停条約が、一九五七年と一九六〇年のモスクワ会議で採択された文書に矛盾しているという、わが党代表団の見解はまちがっており、事実は「正反対」なのだという主張です。けれども、われわれは、あなたがたの主張こそ、やはり、まったく事実に反していると考えます。
 一九五七年のモスクワ会議で採択された「平和のよびかけ」の「原子・水素兵器の生産と使用を禁止するよう、その第一歩として、この兵器の実験を即時中止するよう要求しましょう」という訴えも、また一九六〇年の「世界各国人民へのよびかけ」の「核兵器その他の大量殺人兵器の実験、製造、使用を即時禁止するよう要求する」という訴えも、けっしてあなたがたがこじつけているように、地下実験を合法化する部分核停を主張したものではありません。あなたがたの書簡は、部分核停が、「核兵器の生産、実験、使用の完全禁止」という「幅広い課題」の一部分であって、あたかも問題は、協定の幅がひろいかせまいかにあるかのようにみせかけて、部分核停を、「目的完遂への第一歩」だとして、「よびかけ」に合致させようとしています。しかし、事実はあなたがたの主張とはまったく逆で、地下実験を合法化する部分核停は、「核兵器の生産、実験、使用の完全禁止」という課題の一部分であるのではなく、反対にそれに敵対する帝国主義者の要求だったのです。すなわち、第一に、一九五七年の「よびかけ」にある核兵器実験の即時中止の要求は、核兵器の完全禁止への第一歩としてすべての核実験の無条件停止を求める全世界人民の要求を正確に定式化したものでした。翌一九五八年からはじまったジュネーブにおける核実験停止会議でアメリカ政府が、地下実験をのぞく部分的核実験停止だとか、全面核停の前提条件としてのスパイ的な査察制度だとかをもちだしたのは、まさに全面核停をめざす世界の人民の要求と運動をそらせ弱めるための欺まん的な策略だったのです。第二に、一九六〇年の「よびかけ」がさらに積極的に、アメリカを先頭とする帝国主義陣営のこうした欺まん政策に抗議し、スパイ的な査察制度なしの、例外なしの、無条件の核実験即時停止を要求したものであることは、論議の余地のない事実です。一九五七年と一九六〇年の二つの会議のどの文書のどの文章にも、部分核停条約を「合理化」する個所は絶対にありません。それをいくら探してもむだ骨でしょう。
 あなたがたは一九六〇年の「よびかけ」が「各国人民は三大国がもう二年も核兵器の実験をやめているのを喜んでいます」といっている個所を引用して、「よびかけでは帝国主義大国の諸政府が、諸国の人民の圧力をうけて、空中と水中における実験を停止しなければならなかった事実が肯定的に評価されています」(ゴシックは引用者)と新解釈をほどこし、空中と水中の実験停止に「宇宙空間での実験停止」をもつけ加えた部分核停がどうして諸国民に害を与えるかなどとひらきなおっています。しかし当時の自発的実験停止期間中は、地下実験を含めた全実験がおこなわれていませんでした。アイゼンハワー大統領はU2機事件直後の一九六〇年五月七日に地下実験再開を声明し、大がかりな地下実験の準備を大々的に開始しましたが、実際に実験が再開されたのは、一九六一年九月、ケネディ大統領のもとにおいてでした。こうした明白な事実までゆがめて、「世界各国人民へのよびかけ」がまるで地下実験を許容して、空中と水中における実験停止だけを喜んでいたかのようにいいくるめるのは「よびかけ」を採択した八十一ヵ国の共産党・労働者党代表者会議にたいする重大な侮辱を意味しています。
 部分核停に反対して即時無条件の全面核実験停止を要求していたのは、国際共産主義運動だけではありません。国際平和運動も同じ要求を一致してかかげていました。たとえば一九六二年七月にモスクワでひらかれた「全般的軍縮と平和のための世界大会」で採択された「世界の諸国民へのメッセージ」にも、つぎのようにのべられています。

 「わたしたちはすべての核保有国政府に……あらゆる実験を停止することについて協議を達成させ、これらすべての実験をいたるところで、つまり大気圏内、宇宙空間、地下、水中で、永久に禁止する条約をむすぶよう要請する。」(ゴシックは引用者)

 われわれは、のちにのべるようにこの「全般的軍縮と平和のための世界大会」全体には意見をもってはいますが、いずれにせよ、当時の国際共産主義運動、国際平和運動をつうじて、地下実験をふくむ核実験禁止の要求の問題にかんしては、部分核停条約が締結されるまでは、全世界の平和民主勢力のあいだにも、したがってまたわれわれとあなたがたとのあいだにも意見の不一致はありませんでした。
 事実、ソ連政府は、ジュネーブにおける核実験停止会議や十八ヵ国軍縮委員会において、一貫して地下実験を除外した核実験停止というアメリカ政府の提案に断固として反対しており、世界各国の平和、民主勢力は、一致してそれを支持していたのです。すくなくとも一九六二年までのあなたがたの言動は、明白にそのことを証明しています。たとえば、一九五九年四月二十三日のフルシチフ首相の「米大統領書簡」、一九六〇年一月十四日のフルシチョフ同志の最高会議演説、一九六一年六月十一日のケネディ米大統領て「核兵器実験禁止についての覚え書き」、一九六一年八月三十一日の「核実験再開についてのソ連政府声明」、一九六年九月九日のフルシチョフ同志の「九月三日付の米英共同声明についての声明」、一九六一年十一月二十七日の「核兵器実験停止会議の再開にあたってのソ連政府声明」、一九六二年一月二十六日の「核兵器実験停止問題にかんするソ連政府の声明」、一九六二年三月十五日の「十八ヵ国委員会での軍縮交渉に寄せるソ連政府の覚え書き」、一九六二年四月二十四日のグロムイコ同志の最高会議における「ジュネーブ軍縮交渉について」の報告、一九六二年八月二十九日のジュネーブ軍縮委員会におけるソ連代表クズネツオフ同志の発言などすべての文書は、例外なく、地下実験こそは、「現在の核兵器の改良あるいは新型の開発のかくされた形態」であり、もし地下実験を除外しそれを合法化する部分核停条約ができたならば「それは平和の事業に役立たず」「各国人民をあざむくものである」という立場を、連政府がとっていたことを示しています。すなわち、多少の動揺はあったとしても、この期間、なたがたは、国際スパイ制度なしの全面的核実験停止協定が、それがただちに不可能な場合には、管理制度にかんする協定が実現するまでの地下実験の自発的停止をともなった、大気圏内、水中、宇宙空間における核実験停止協定が、すなわちすくなくともあらゆる種類の核実験の停止を実現しる協定を要求しつづけていました。われわれはいくらでも引用を続けることができますが、ここでは二つだけ引用しておきましょう。
 フルシチョフ同志は、前記一九六年九月九日の声明で地下と大気圏外での実験を除外した米英声明についてつぎのようにのべています。

 「米英は、この提案にまったくふくまれていないフランスはいうまでもなく、その核兵器開発をつづける機会を留保すべきだと提案しているのである。それだけではない。ソ連の両手をしばって、ソ連が防衛力をたかめられないようにできるかどうか、ためそうとしているのである。いいかえれば、宣伝によって一石二鳥をねらっている。かれらはソ連の同意をえて核武装による戦争準備を神聖化する一方、話しあいの相手方であるソ連の足をさらおうとしている。
 周知のようにアメリカが制定した新型核兵器開発計画が必要としているのは、まさに地下実験そのものである。米英の提案はこの実験のための青信号である。
 数年来、核保有国三ヵ国ジュネーブ会談でアメリカは地下実験を合法化しようと努力してきた。これが核実験全面停止条約のおもな障害のひとつだったのである」(ゴシックは引用者)。

 さらに今日の条約の原案となった米英共同提案の第二案について、前記ジュネーブ軍縮会議での発言でソ連代表クズネツォフ同志は、つぎのようにのべています。

 「米英共同提案の第二案の地下実験を除外した部分的核実験停止条約案は、明らかにソ連およびその他の社会主義国の国防利益を犠牲にして一方的に西側の軍事的優位を保持することを目的にしたものである。アメリカが長年のあいだ地下実験を利用して核兵器を改良してきたことは周知の事実である。大気圏内外および水中での核実験を禁止する一方、地下実験を合法化するならば、アメリカはソ連の国防力の強化の手をしばっておきながら、自国の核兵器を改良し、その爆発力と効果を増大させることができるわけである」(ゴシックは引用者)。

 このように、部分核停条約が、国際共産主義運動や世界の平和、民主勢力の従来からの一致した要求であったというあなたがたの主張には文字どおりひとかけらの真実もありません。
 あなたがたはこうした明白な歴史的事実を卒直にみることをさけて、態度を変えたのはソ連政府ではなく、アメリカ帝国主義こそ譲歩して態度を変えたのだということをなんとかして証明しようとして、モスクワ両党会談では、地下実験をのぞく核停条約は、もともとソ連政府が主張していたものだという驚くべき議論をもちだしました。すなわち、一九五六年にソ連政府が提出した核実験禁止案は、当時核実験は大気圏と水中だけで行われており、その他の環境での核実験はなかったので、ただ大気圏内と水中での実験禁止を目的としていたが、一九六三年の部分核停条約は、これに、第三の環境である宇宙空間が加えられているというのです。こうしてあなたがたは、一九五六年にソ連政府は、一九六三年の部分核停と同じものを主張していたのであり、アメリカは当時これに反対していたが、一九六三年には賛成せざるをえなくなり、以前のソ連政府の提案を、宇宙空間をくわえていくらか拡大した形でうけいれたのだというように事態をえがきだそうと試みました。これはまさに奇弁としか名づけようがありません。先に引用した一九五八年から一九六二年までの歴史的事実をまったくいんぺいしたうえに、地下実験がまだ大きな問題になっていない時期の核停案まで、部分核停条約による地下実験の合法化を「合理化」するために動員しようとするこうした欺まん的なやりかたによって、問題の本質をごまかすことは不可能です。どんな奇弁をもちだしても、あなたがたが、一九五六年以来の核実験全面禁止の主張から一九六三年の地下実験合法化賛成の主張に転換したという、歴史の事実をおおいかくすことは到底できません。
 しかも、あなたがたの書簡は、部分核停条約は、核兵器の完全禁止という「目的完遂への第一歩」であるとか、「人民大衆の願望に答えた」ものであるとか、条約の中心問題は「空気がこれからも放射能降下物で汚染され、人びとを脅威にさらすかどうか」という問題であり、モスクワ条約は「この脅威に止めをさした」とかのべて部分核停条約を美化し、これを支持しないわが党の態度は、「何千何百万という人びとの健康と生命が危険にさらされても眉ひとつ動かさず、自分たちの特殊の利己主義的な目的を達しさえすれば、人びとの健康も生命も犠牲にしてもかまわないと考えている」「中国共産党と中華人民共和国指導者たち」と「歩調をそろえ」たものだとかいってわれわれを非難しています。しかし元来部分核停は本質的によいものだということをあなたがたが証明しようとして熱心になればなるほど、それは、すでに十分にのべたように、五年間にわたって、ソ連政府をはじめ世界の平和、民主勢力が一貫してとってきた態度を攻撃し、世界の平和、民主勢力全体をあなたがたのいう「何千何百万という人びとの健康と生命とが危険にさらされても眉ひとつ動かさない」非人間的な立場に立っていたとして告発することと等しくなるのです。あなたがたが、核実験停止問題の中心問題は、放射能汚染の防止にあるかのように強弁すればするほど、あなたがたは、約二ヵ年間の自発的停止ののちに一九六一年秋、実験を先に再開したソ連政府の行動放射能降下物が人類に与える危険を無視して、ソ連の「特殊な利己主義的な目的」を追求したものとして、みずから非難せざるをえない立場におちこんでしまうのです。
 あなたがた自身、その書簡のなかで、「実験によって、大気がおびただしい核分裂の産物で充満され」るにもかかわらず、「われわれが強力な核兵器を作って、帝国主義者にたいする優位をかちとるか、それとも、帝国主義者たちが、その優位を保ちつづけ、全世界にその支配をおしつけてくるかの二つに一つ」だったために「止むをえず」「ソ連邦が実験をおこなった時期」があったことを認めています。当時、あなたがたは、帝国主義者が核戦争の準備に熱中しながら、放射能汚染の危険だけを偽善的に問題にしてソ連の核実験を非難したのにたいして適切な反撃をおこなっていました。たとえば、フルシチョフ同志は、つぎのようにのべたことがあります。

 「〝クビをきられてから髪の毛をおしんで泣いても役に立たぬ〟という一つのピッタリあてはまる諺がある。帝国主義の紳士諸君は戦火で人民を殺す一方、人民の健康についておおいにおしゃべりしているのである。」(一九六一年九月八日のモスクワでのソ連・インド友好集会での演説)

 つまり、核実験問題は帝国主義の核戦争政策を促進するか防止するかという根本問題からみなければならず、放射能汚染の問題だけからみることはできないのです。だからこそわれわれは、あなたがた以上に、日本国民がもっている放射能汚染の根絶という要求を身近かに強く理解しているにもかかわらず、たとえ同じ放射能被害をもたらすとしても、帝国主義の核実験と社会主義の核実験の階級的意義の相違を重視し、一九六一年秋のソ連核実験再開にあたっても、たんに放射能の被害だけを問題にすることなく、核戦争防止というより根本的な課題をたたかいとる立場からソ連の核実験にたいする抗議にも賛成しなかったのです。ところがあなたがたは、自国が核実験を必要としているときには、放射能の被害だけに目を奪われてはならないといい、部分核停条約が結ばれると、今度は放射能被害こそ中心問題だといいはじめるのです。そしてあなたがたは、あなたがた以外の社会主義国が、アメリカ帝国主義による核戦争準備政策と核脅迫政策という現実の脅威に直面して、みずから防衛のための核兵器を開発し、所有しようとする努力にたいしては、あらんかぎりの罵倒をあびせてもよいと考えているのです。あなたがたのこうした主張は、ソ連のもっている核兵器は平和のためだが、同じ社会主義国でも他の社会主義国がもつ核兵器は、ただ放射能禍と核戦争の危険をまきちらすだけのものであるかのようにいうまったくの独善にもとづく背理でしかありません。このようなあなたがたの主張は、結局のところ、米・ソを軸とする核独占体制の維持とそれを前提とする、今日のような米ソ間の妥協だけが核戦争防止の確実な保障だとして、ソ連以外の社会主義国の防衛力強化の措置を阻止し、アメリカ帝国主義の核兵器永久所有の野望を助け、その核脅迫を容易にしてやる役割を果たすだけです。
 放射能禍にかんするこのようなあなたがたの態度は、そのときそのときの都合で、昨日はああいい、今日はこういう、文字どおり無原則的な、一貫性を欠いた態度であるといわざるをえません。それはアメリカ帝国主義の核兵器永久所有の野望と核脅迫を助けるだけでなく、核戦争防止という根本課題から世界人民の目をそらさせ、混乱させるものです。それは、帝国主義が準備している核戦争の惨禍から人類を救うためにたたかっている平和運動と原水爆禁止運動を、ただ核実験と放射能禍の問題だけに集中させるものであり、放射能被害の防止という単純な見地から帝国主義の核実験と社会主義の核実験とをまったく同列視し、「いかなる国の核実験にも反対」しているブルジョア平和主義や第三勢力論的「中立主義」の見地にひきもどすものであり、結局は平和運動を弱めて核戦争の脅威の増大に手を貸す有害な結果をもたらすだけです。あなたがたが、部分核停条約に賛成する立場に転換して以後、第三勢力論的「中立主義」の見地にたつわが国の右翼社会民主主義者とおおっぴらに提携しはじめ、昨日まであなたがたが反対していた「いかなる国の核実験にも反対」のスローガンさえ、無批判にうけいれるにいたったことは、このことを端的に証明しています。
 核兵器問題をめぐる闘争の中心課題はあくまでも核戦争の防止と核戦争の危機の根絶にあり、問題はいま、核兵器と核実験の全面禁止の道を進んで、放射能汚染の危険とともに核戦争の危険を完全に根絶する方向に前進するか、それとも、部分核停という欺瞞の道に引きこまれて、放射能汚染の防止という口実で核戦争の危険を増大させる方向に後退するかという、するどく対立した二つの道の対決と闘争として提出されています。われわれはちゅうちょなく、前者の道をえらんでおり、あなたがたもまた以前は、前者の道をえらんでいました。
 これにたいして全世界の帝国主義と反動の勢力は、フランス帝国主義など一部の国を除いて、一致して後者の道をえらんでいました。あなたがたは百ヵ国以上の国家が部分核停条約に賛成したこと、世界人民がこの条約を歓迎していることを示す重要な証拠として重視していますが、それは部分核停こそ、以前から帝国主義と反動勢力が望んでいた当のものであることをもう一度、最終的に明らかにしたにすぎません。あなたがたは、この問題についてわが党代表団が、調印国のうち社会主義国以外はすべて資本主義国だとのべたことを問題にしていますが、わが党代表団は「部分核停条約を支持する国家の数を問題にする場合、当然、今日なお世界の国家の圧倒的多数が基本的には資本主義国家あるいは従属国家であり、その多くが一連の重要な国際問題でアメリカやその他の帝国主義国家に同調しているということを考慮しないわけにはいかない」とのべたのであります。事実、調印国の一つである日本の池田政府もまた、アメリカ帝国主義に従属して、米英案に同調し、以前から部分核停を支持していました。一九六二年十月十六日の国連政治委員会で、岡崎国連代表は、つぎのようにのべて地下実験をのぞく部分核停に賛意を表わしています。その論拠が、いまあなたがたが提出している論拠とほとんど一致していることに、われわれは注意を向けざるをえません。

 「軍縮委の進展ぶりをみると、地下実験を除くかぎり、米英とソ連との立場はほぼ一致したといってよい。地上での実験停止は放射能の危険から人類を救い、他の分野での核実験の停止および軍縮その他の重要問題解決促進に役立つ。したがって、このための合意の成立を直ちにはかるべきであり、われわれはこれが成立できない理由を見出すことができない。
 ブラジルが去る三月十六日の軍縮委で、この観点にたつ部分的停止をはじめて示唆したことに敬意を表する。
 部分的停止が地下実験を合法化するのではないかとの議論があるが、この議論は成りたたない。部分的停止は最終目標ではなく、あくまで全面停止への一歩前進だからである。まず可能な部分的停止をおこない、好ましい空気をつくり、順次最終目標の達成に努力すべきだ」(「朝日新聞」一九六二年十月十七日)

 問題はきわめて明白です。以前には全世界の平和、民主勢力は一致して部分核停に反対し、帝国主義と反動勢力は、アメリカを先頭として部分核停を主張しつづけていたのです。この事実をまったく無視して、あたかもあなたがたが以前から、部分核停の正しさを主張していたかのようにいい立てるやり方は、事情をよく知らない人びとを一時的にまどわせるには多少は役にたつかもしれませんが、マルクス・レーニン主義の立場から、部分核停条約を評価するうえにはなんの役にもたたず、問題を混乱させ、あなたがたの立場を矛盾したものとさせるにすぎません。歴史を偽造するにひとしいこうしたことは、今後いっさいやめようではありませんか。
 問題の本質はただ一点あるだけです。それは少なくとも、一九六二年までは、地下実験を合法化する部分核停条約に反対するという態度では、あなたがたとわれわれは意見が一致していたにもかかわらず、それ以後、われわれは依然として同じ態度をとることが正しいと信じているのに、あなたがたはその態度を百八十度転換させて、社会主義国や兄弟党ともなんら必要な事前の協議をおこなわずに、部分核停を支持し部分核停条約を進んで締結し、国際共産主義運動や国際平和運動の不団結をいっそう重大化させるにいたったということです。あなたがたは、この転換の理由はなんであり、その目的はなんなのかということを、全世界の民主勢力に説明するという、さけることを許されない義務を負っています。ところが今まであなたがたは、自分たちが部分核停にたいする態度を百八十度転換させた事実そのものを頭から否定することによって、この義務を極力回避してきました。モスクワにおける両党会談でも、わが党代表団はさきに引用したようなフルシチョフ同志らの以前の主張をくわしくあげて、ソ連政府が現在とっている立場が以前の立場と根本的に矛盾するものであることを明らかにしましたが、あなたがたはそれについては一言も答えないで、すでにみたように、もっぱら歴史をゆがめることによって、ソ連政府の方向転換をおおいかくそうとつとめたのです。そして、こうした奇弁的な論法で、自分たちの方向転換を「否定」した上で、以前あなたがたが堅持していた立場をとりつづけている人びとを、あなたがたのようにその立場を簡単に投げ捨てていないということで、口をきわめて攻撃しているのです。たとえ部分核停の評価自体をさておくとしても、このような態度がマルクス・レーニン主義者に求められる最小限の誠実さにまったくふさわしくないことは、きわめて明らかなことであります。

 (2)第二の論拠情勢の「根本的変化」という主張について

 さて、あなたがたの第二の種類の論拠、情勢の変化が核実験にかんする問題の立て方を変えたという論拠をとりあげたいと思います。
 地下核実験をのぞく部分核停は、国際共産主義運動と世界の平和、民主勢力の従来からの一貫した要求であったとして、部分核停条約を「正当化」しようとした第一の議論が、歴史の事実の前に崩れさり、あなたがたが部分核停反対から部分核停賛成へ百八十度の転換をとげたことが明らかになった以上、この第二の論拠だけが、まじめな検討に値するものであることは、すでに明白です。あなたがたは、ソ連政府の方向転換の事実を卒直にみとめないままで、この第二の論拠を提出していますが、われわれは、ともかく曲りなりにもあなたがたが事実上自分たちの方向転換の理由を説明しようと試みたものとして、これを歓迎するものです。しかし、さきに指摘したように、もしあなたがたがその見解を首尾一貫させようとするならば、このように矛盾した二つの論拠を並列することは許されません。われわれは、ここであなたがたに、あなたがたはいったい、二つの立場、すなわち、以前から部分核停を支持すべきだったとする立場と、最近の情勢の変化から部分核停は支持すべきものとなったとする立場の、どちらに立っているのかを改めて明確に答えてもらいたいと思います。
 あなたがたの書簡は、前にも引用したように、ソ連の核実験問題にふれながら、かつては、放射能汚染をひきおこすにもかかわらず「われわれが強力な核兵器を作って、帝国主義にたいする優位をかちとるか、それとも、帝国主義者たちがその優位を保ちつづけ、全世界にその支配をおしつけてくるかの二つに一つでした」が、「いまでは情勢は根本から変わりました」として、つぎのようにのべています。

 「ソビエト国民の並々ならぬ努力によって、世界で最大の威力をもつ核兵器がつくられました。帝国主義者は〝力の立場〟にたつ政策を実施する物質的地盤を失ってしまいました。こうした条件のもとでは、核兵器実験の問題も新たな立場からたてられるようになりました。こうした実験の継続は、ただ核軍備の拡張に拍車をかけるだけでした。同時に、実験禁止は、社会主義共同体の防衛力を弱めはしませんでした。なぜなら、ソ連邦の核戦力の中心は、そもそも、地下実験の方法で完成される各種の核兵器といったものではなく、ソ連邦が優位をしめている種類の核兵器であるからです。
 モスクワ条約が帝国主義の世界全体をしばりあげていることは疑いありません。そのなかには核兵器の所有を企図する西ドイツの復しゅう主義者、日本の帝国主義者も含まれているのです」(ゴシックは引用者)

 だが、情勢の「根本的な変化」についてのこの説明は、部分核停条約が帝国主義者の欺まん政策の道具から帝国主義をしばりあげる平和の道具に変わったというあなたがたの主張を合理化できるものではけっしてなく、逆に、世界情勢の把握について、あなたがたがいくつかの点で根本的に誤った見地におちいっていることを暴露しているといわなければなりません。
 はじめに指摘しておかなければならないことは、ここで「世界で最大の威力をもつ核兵器」をもちだしても事態を合理的に説明することができないということです。なぜなら、あなたがたの論拠にしたがえば、アメリカ帝国主義は、すでに核兵器競争における敗北を自認して、いっそう威力のある核兵器の開発の努力をあきらめたこととなり、みずからに不利となった力関係を固定化することとなる部分核停条約を、みずから提案し、みずから締結したこととなるからです。これはアメリカ帝国主義の本質やその核戦争準備をめぐるすべての現実とまったく合致していません。
 その上、もしも、それがあなたがたの態度転換の本当の理由だとすれば、あなたがたは、マルクス・レーニン主義の根本にかかわるいっそう重大な誤りをおかしていることとなります。
第一にもっとも重大な問題は、ここであなたがたが、ソ連がアメリカよりも威力をもつ「世界で最大」の核兵器をもったために「情勢は根本から変わった」という核兵器万能論におちいっており、しかもそこから「帝国主義者は、"力の立場〟にたつ政策を実施する物質的地盤を失ってしまいました」という目を疑わせるような現状認識を引き出していることです。これらの主張はたんに、帝国主義の現在の政策を見誤ったというだけの評価の誤りにはとどまりません。これらの主張は、あなたがたが、帝国主義勢力と世界の人民との力関係によってではなく、核兵器の優劣によって世界情勢が根本的に変化すると考えていることを示しており、現在の帝国主義者はすでに、〝力の立場〟すなわち侵略と戦争の政策を遂行する基礎を失っており、物質的地盤からいえばまさに平和共存政策をとらざるをえなくなっていると考えていることを示しており、あなたがたが事実上、戦争と侵略、抑圧と反動という帝国主義の本質がすでに変化したと考えていることを示しています。これは、あなたがたのマルクス・レーニン主義からのきわめて重大な逸脱を、はっきりと表明した立場だといわざるをえません。
 もちろん、ダレスの「大量報復戦略」からマクナマラ、テーラーの「柔軟反応戦略」への転換や、トルーマンの「ソ連封じこめ政策」からケネディ、ジョンソンの「中国封じこめ政策」への転換などにみられるように、社会主義陣営と帝国主義陣営のあいだの核兵器をふくむ軍事的力関係が、帝国主義が「力の政策」を展開する具体的な形態や方向に影響をあたえる重要な要因の一つをなしていることは、いうまでもありません。だが、ソ連が核戦力において優位にたったことによって「力の政策」の物質的地盤が失われたとか、帝国主義に不利な方向への軍事的力関係の変化が、自動的に帝国主義者をして「力の政策」を放棄させるとか主張することは、結局は、階級的立場をぬきにしたブルジョア的な「力の均衡」(バランス・オブ・パワー)論にたち、さらにはマルクス・レーニン主義とは縁のない帝国主義「変質」論や帝国主義美化論におちいることです。そのような主張が、帝国主義の「侵略的本性」が変らないことにつき、その戦争と侵略の政策につき、アメリカ帝国主義の「冷戦を激化させる方針」につき、全世界のマルクス・レーニン主義党が一致した確認をおこない、平和のための闘争をよびかけたモスクワ声明からの、許すことのできない決定的逸脱と背反であることは、いうまでもありません。それはまさに、マルクス・レーニン主義の根本的命題を修正し、骨抜きにする立場であります。
 ベトナム民主共和国ラオスにたいする凶暴な侵略戦争にまで拡大しつつあるインドシナにおける事態が、全世界人民の前にいっそうあきらかにしているように、アメリカ政府のすべての政策と行動は、ソ連が「世界で最大の威力をもつ核兵器」をもったといわれる情勢のもとでも、かれらがいよいよ凶暴に力の政策を実施していること、その時どきの軍事的・政治的力関係にその戦略を適応させながら、核戦争準備と核脅迫の政策をますます大規模に推進していることをしめしています。アメリカ帝国主義になかば占領され、沖縄の核ミサイル基地化につづいて、日本本土へのF一〇五D水爆積載機の配置と原子力潜水艦の「寄港」をおしつけられ、自衛隊の核武装化がおし進められているこの日本、アメリカ帝国主義による「中国封じこめ政策」とアジア侵略政策の拠点として強化され、インドシナにおける侵略戦争の基地となっているこの日本で、アメリカ帝国主義と日本独占資本の戦争と侵略、抑圧と反動の政策に反対して英雄的にたたかっている日本人民は、このような危険な、アメリカ帝国主義の侵略性を過小評価する見解を到底受けいれることはできません。もしわれわれがあなたがたのようなことをいえば、わが党はたたかう日本人民から切りはなされ、もの笑いの種になってしまうでしょう。アメリカ帝国主義もまた、共産主義者が、帝国主義はすでに侵略戦争を遂行する物質的地盤を失ったといっているのをきけば、腹をかかえて笑うことは確実です。そしてあなたがたの部分核停条約締結という新しい政策がよって立つ基礎が、もしも帝国主義の力の政策の物質的地盤はすでになくなったという独断的な情勢判断にあったとすれば、そのような政策は、実際にはモスクワ声明から逸脱した立場でアメリカ帝国主義を美化し、アメリカ帝国主義の力の政策を助けることとなり、世界の平和を危険におとしいれることとなる以外にありません。
 第二に、あなたがたは、現在における帝国主義の侵略戦争の問題を、核戦争だけに単純化し、しかもそれを大型核兵器を用いた戦争だけに単純化しています。ケネディ以後のアメリカ帝国主義の戦略計画が、テーラーのいう「柔軟反応戦略」に変化し、核ミサイル兵器の大拡張だけでなく、通常兵器による局地戦争と特殊戦争をも特別に重視して、通常部隊と特殊部隊の飛躍的な強化と拡張をおこなっていることは周知のことではありませんか。世界人民の反帝反戦の闘争と社会主義の防衛力の強化に直面したアメリカ帝国主義が、当面大型核兵器による全面核戦争に訴えた場合、自分自身が壊滅的な打撃をこうむる危険を考慮に入れざるをえなくなっているとしても、小型核兵器や通常兵器を用いた局地戦や特殊戦の危険もまたなくなりつつあるなどというのは、アメリカ帝国主義が現実に遂行している侵略戦争から目をそむけ、アメリカ帝国主義と毎日にわたってたたかっている人民を武装解除させる正真正銘の日和見主義の理論です。
 第三に、あなたがたは、アメリカ帝国主義の地下核実験の問題を極端に過小評価しています。あなたがたの書簡は、別の個所で、帝国主義諸国が地下実験禁止に同意しなかったおもな理由は、「この爆発にたいする査察という名目で、いまだに、社会主義諸国で、そのスパイ活動が行えるようにと試みていることにあるのです」とのべていますが、アメリカ帝国主義が巨額の費用を要する地下実験の継続とその合法化に固執しているのは、けっしてソ連にたいするスパイ的査察の実現だけが目的ではありません。一九六四年はじめに発表されたアメリカの「原子力委員会年報」や、同じく本年四月二十日に発表されたマクナマラ国防長官とシーボーグ原子力委員長がジョンソン大統領に送った「地下実験にかんする報告」が公然と認めているように、部分核停条約締結後も、二十八回をこえ、一九六一年九月の再開以来全体ではすでに百回をこえて連続的におこなわれている地下実験計画では、とくに中国その他との限定戦争で使用するための戦術核兵器の開発が大きい比重をしめているだけでなく、大型核兵器をふくむあらゆる型の核兵器の改良と開発、迎撃ミサイルの実験、中性子爆弾の開発実験など、要するに核戦争準備と核脅迫の遂行のための核兵器実験がそのなによりも重要な目的なのです。これらのことを、あなたがたは知らないということはありません。あなたがたは、われわれ以上にアメリカの地下核実験の規模とねらいを知りながら、ソ連邦の核戦力の中心は百メガトン核兵器などであって、「地下実験の方法で完成される各種の核兵器といったもの」ではないから、たとえアメリカが地下実験でどんな核兵器を製作しようと心配する必要はないという立場をとっているのです。こうしたあなたがたの立場は、実際には世界の平和を、米・ソ間の「平和」で代用させ、米ソ間にさえ核戦争が起きなければ、アメリカがその他の地域で使うためにどんな小型核兵器を開発し製造し蓄積しようと、ソ連以外の国にたいしてどんな核戦争準備と核脅迫政策を進めようと、世界平和の大局には関係がないという立場を意味することになります。とくにアメリカ帝国主義が部分核停条約にかけた重要なねらいの一つが、ソ連以外の社会主義国、なかでも中国の核兵器開発を困難にさせ、中国にたいする核包囲網をはりめぐらし、米・ソ間の「相互抑制」を利用しながら「中国封じ込め政策」とアジア侵略政策を各個撃破的におしすすめることにある以上、われわれは、あなたがたの書簡にみられるような立場のもっている世界の平和にとっての重大な危険性を真剣に心配せざるをえません。
 第四にあなたがたは、部分核停条約が「西ドイツの復しゅう主義者、日本の帝国主義者」も含めて、「帝国主義の世界全体をしばりあげている」と断言していますが、これもまったく根拠のない帝国主義の弁護論におちいっているものです。あなたがたは「この条約を回避したりそれに違反しようとしたりする帝国主義者の予想される試み」などとのべて、この条約が帝国主義者が違反したくてたまらないほど、帝国主義者の手をしばりあげるものであるかのように描きだしていますが、帝国主義陣営の主柱であるアメリカ帝国主義者にとって、現状ではみずから提案し、実現したこの条約を積極的に回避したり、違反したりする必要はひとつもないのです。かれらは逆に、核実験停止の範囲を大気圏内、宇宙空間をふくむ大気圏外、水中に限定したこの条約の第一条第一項の規定を全面的に利用することによって、地下核実験を合法的に大っぴらに継続しています。また他国との関係では、この条約は他国の核兵器実験の実施を「刺激し、奨励し」、それに「参加する」ことだけしか禁止していない(第一条第二項)のですから、かれらは、この条約の規定をいささかもおかすことなしに、多角的核戦力計画による西ドイツ帝国主義の核武装化や日本軍国主義の核武装計画を進行させることができます。かれらは、大気圏内実験が必要になれば、第四条に規定された合法的な権利を行使して、「本条約の内容に関連する非常事態が、その国の最高利益をおびやかす」と一方的に認定して、三ヵ月前の予告をおこなうだけで条約から脱退できるのです。事実、アメリカ政府首脳部は、社会主義中国がもし帝国主義の核脅迫にたいする防衛的措置をとれば、それを理由としてこの条約から合法的に脱退する方針を公然と表明しています。帝国主義者たちは、いったいなにを好んで条約を回避したり、条約に違反したりするでしょうか。この条約はけっして、帝国主義の世界全体をしばりあげてはいません。なかんずくそれはアメリカ帝国主義の戦争と侵略の政策をなにひとつ制限していません。逆に、アメリカ帝国主義は、この条約によって、ソ連にたいする「核優位」の実現をねらい、ソ連以外の社会主義国の防衛力の強化の努力をしばりあげようとしているのです。
 以上のように、情勢の根本的な変化なるものを理由として、部分核停条約を美化しようとするあなたがたの試みも、部分核停条約を賛美することの危険性をいっそう痛感させはしても、あなたがたが態度を転換して進んで米英側提案に賛成した行為の正当化を許すものではけっしてありません。事態の真実はただ、帝国主義はいかなる本質的譲歩もしなかったにもかかわらず、あなたがたが、これまでとっていた正しい態度を捨て、帝国主義者にたいし、すべきでない譲歩と妥協をあえてしたことにあるのです。

 (3)部分核停条約にたいするわが党の態度

 あなたがたの二つの種類の論拠についての以上の検討は、この条約に、社会主義人口の過半をふくむ五つの社会主義国が調印せず、わが党をふくめて一連のマルクス・レーニン主義党がこの条約を支持していないことの正しさを、はっきりと示しています。これらの社会主義国とマルクス・レーニン主義党は、あなたがたが投げ捨てた、正しい立場を守りぬき、そのことによって世界平和のために重要な貢献をおこなっているのです。  あなたがたは、五つの社会主義国政府の一つであるキューバ政府についてだけ、つぎのようにのべています。

 「われわれはキューバ政府がおかれている特殊事情を重視し、それを理解しています。キューバ政府はこのために、調印できなかったのですが、それにもかかわらず、三つの環境における核実験の停止を平和愛好勢力の勝利として歓迎しました。」(ゴシックは引用者)

 キューバ政府がたとえ、部分核停条約を「歓迎」しながらでも、それに調印しなかった「特殊事情」とは、カストロ同志が革命防衛委員会結成第三周年記念集会での演説ではっきりとのべているように、キューバがいまアメリカ帝国主義の直接侵略の脅威とたたかっており、「かれらはわたしたちの敵であり、そしてまたわたしたちがかれらの敵である」からです。しかし、これはキューバだけの「特殊事情」でしょうか。そうではありません。それは部分核停条約に調印しなかった五つの社会主義国にもすべて共通な「特殊事情」であり、またそれだけではなく、アメリカ帝国主義の戦争と侵略の政策にさらされているすべての民族と人民にとっても共通な事情なのです。あなたがたは、キューバ政府が調印しなかった「特殊事情」を重視し、それを理解するなら、当然、アメリカ帝国主義を敵とし、その戦争と侵略の政策とたたかっているすべての国とすべての人民が、この条約に調印すべきでなく、支持すべきでない共通の事情におかれていることをも、重視し、理解すべきなのです。そしてさらに、この「特殊事情」は、「アメリカ帝国主義が、世界反動の主柱であり、国際的憲兵であり、全世界の人民の敵である」というモスクワ声明の規定を忠実にまもろうとするすべてのマルクス・レーニン主義党に共通した事情であり、あなたがたがその書簡のなかでのべた「ソ連邦共産党は主要な敵、国際憲兵としてのアメリカ帝国主義との闘争に大衆を動員している」という言葉をその場だけのから文句におわらせないためには、あなたがたの党もまた部分核停条約を賛美してはならなかったし、あなたがたの指導する政府もまたアメリカ帝国主義を利する部分核停条約に調印すべきではなかったのだということをも、あなたがたは重視し、自覚しなければならなかったのです。もし、あなたがたがこのことを理解しないで、アメリカ帝国主義を敵としてたたかうことが、自分たちとは関係のないキューバの人民と政府だけの例外的な「特殊事情」だと考えているのだとしたら、それは、結局あなたがたが、アメリカ帝国主義を敵とみなすことをやめはじめたこと、アメリカ帝国主義にたいする態度という原則問題において、「一九五七年の宣言と一九六〇年の声明にのべられている国際共産主義運動の合意の路線から明らかに逸脱しはじめた」ことを意味することになるのです。
 ところがあなたがたは、モスクワ声明の路線からの自分たちの逸脱を反省するどころか、かえって反対に、アメリカ帝国主義の侵略政策と真剣にたたかい、その見地から部分核停条約への批判的態度を堅持しているわが党にたいして、モスクワ声明の路線をなげすてたなどと悪意にみちた攻撃を集中しているのです。まことに、かえりみて他をいういいがかりだといわなければなりません。
 さらにあなたがたの書簡は、池田内閣と自民党、ブルジョア宣伝機関から右翼社会民主主義者、反党修正主義者にいたる部分核停条約賛美、アメリカ帝国主義美化の大合唱のなかで、断固として部分核停条約にたいする批判的態度を堅持し、日本人民の平和、独立の戦争をただ一つの正しい路線からそらさせようとするあらゆる試みを拒否してたたかってきたわが党にたいして、「最近の文学状況と党の課題」(アカハタ三月五日)で、反党分子が民主主義文学運動のなかに部分核停条約の問題をもちこんで分裂策動をおこなっていることを指摘した個所まで、詐欺的に引用して嘲笑を加えながら、みずから人民から孤立する道をえらんだものだなどと非難しています。「モスクワ条約に執ように攻撃を加え、そうして、右翼の勢力が、日本共産党にたいしてたたかうのを容易にしながら、日本共産党の指導者たちはみずから自分たちの党を孤立させているのではないでしょうか。……日本共産党はまさにこの点で必然的に損をしています」
 そして書簡は、もしも日本共産党が「モスクワ条約に反対の立場をとらずに、事実をありのままに示した」ならば、つまり「池田政府をしてモスクワ条約に調印させたのは日本人民」であることを示し、日本人民が、この条約を土台にして、実験の最終的禁止と核兵器の禁止および絶滅のため、完全軍縮のためにたたかっていることを示したならば、「日本国内の政治情勢は、進歩勢力にとって有利に展開した」だろうとのべています。
 だが、日本政府の部分核停条約参加をめぐる「ありのままの事実」とはなんでしょうか。日本政府が、以前からすべての核実験の即時無条件停止を要求する日本人民の意志に反して、アメリカ側の部分核停案に賛成していたことは、すでにのべたとおりですが、さらにここで補足しておかなければならないのは、実際に部分核停条約が締結された時、ただちにこれに調印するように池田政府に圧力をくわえたのが、日本人民ではなく、ほかならぬアメリカ帝国主義だったという事実です。ケネディ大統領は部分核停条約仮調印と同時に、池田首相に公式の参加要請をおこないましたが、それについて当時の「毎日新聞」ワシントン特派員はつぎのように事態の真相を書いています。

 「国務省の見解だと、米政府は条約への日本の参加は世界世論に訴える力を非常に強めるものであり、条約を全世界的"国際条約にするテコになるばかりか、中共の核実験にも何らかの圧力になることを期待しているとしている。そしてケネディ大統領からこの条約について親書を送ったのは、仏、西独という直接関係国以外は日本だけだということもこれを裏づけており、日本が原爆被災国で戦争を放棄し、核実験の全面停止を熱望している独自の立場にあることに深く留意しているといっている」(ワシントン一九六三年七月二十六日発石塚特派員、「毎日新聞」一九六三年七月二十八日)

 このように「ありのままの事実」とは、日本政府の部分核停条約調印が、日本人民の圧力によるものであるどころか、日本と世界の人民を欺瞞する「平和戦略」の一環として、アメリカ帝国主義と日本政府とによってしくまれた策略であることを示しているのです。人民から「孤立」しないためには、この事実に目をつぶって、池田政府の部分核停条約調印を日本人民の圧力の結果として美化し、部分核停条約支持に転換することが必要だというあなたがたのわが党への「忠告」は、わが党に、米日反動の欺まん政策への協力を勧告すること以外のなにごとをも意味しません。
 わが党は、アメリカ帝国主義の手先となってこのような欺瞞の手助けをすることは、過去もおこないませんでしたし、将来もおこないません。たとえ一時的に、あなたがたもその一翼に加わった部分核停条約礼賛のつくられた「世論」から、わが党が孤立したようにみえても(あなたがたの表現をかりれば、たとえ一時的に「損をする」ことがあっても)、わが党はそれをけっしておそれません。あなたがたの党の創立者であるレーニンは、目先の利益や政治的な損得勘定のために、人民に真理を語ることをためらったり、労働者階級と勤労人民の基本的利益を売りわたしたりする人びとを、つねにきびしく断罪しました。あなたがたがどんな「忠告」をしようとも、われわれはレーニンのこの遺訓を断固としてまもりつづけるものです。しかも、革命運動の大局的・長期的展望にたってみるならば、どんな場合にも、日本人民の真の利益を守りぬくこと、これこそわが党を母なる大衆と緊密に結びつける基礎であります。事実、あなたがたの予測に反して、わが党は人民から孤立するどころか、部分核停条約調印後、七中絵でこの条約にたいする批判的態度をあきらかにしたのち、昨年十一月におこなわれた総選挙では、得票を約四〇%のばし、大きな前進をたたかいとりました。
 アジアと日本の現実は、条約の調印直後に開かれた第九回原水禁世界大会が示したように、自覚的な民主勢力に最初から部分核停条約にかけられたアメリカ帝国主義の危険なねらいに警戒心を抱かせていました。たしかに、部分核停条約調印直後には、いっせいに開始された条約賛美の大宜伝カンパニアに影響されて、この条約が真の緊張緩和と平和共存への転機を画したかのような、バラ色の期待にとらえられた人びともかなり広範に存在していました。しかし、それから一年たった今日では、日本人民の毎日のたたかいの現実の前に、部分核停条約にまだ一定の積極的意義をみとめている人びとでさえ、それを全面的に無条件で賛美することが難しくなってきています。あなたがたの書簡にあるような、この条約が大気の放射能汚染の「脅威に止めをさした」だけでなく、西ドイツの復しゅう主義者、日本の軍国主義者をふくめて、「帝国主義の世界全体をしばりあげている」といった種類の手ばなしの部分核停条約への賛美は、特定の政治的目的のために、現実から目をそむけてむりやり部分核停条約を「礼賛」しようとしている少数の人びとは別として、アメリカ帝国主義と日本独占資本の支配に反対して真剣にたたかっている人びとのあいだでは、ほとんど相手にされなくなっています。さらに核戦争の危険とつながっているインドシナにおけるアメリカ帝国主義の侵略戦争は、部分核停条約によってアメリカ帝国主義が平和共存政策に転換したとかいうすべてのおとぎ話を最終的に粉砕しつつあります。こうした現実にてらしてみるとき、あなたがたとわれわれと、どちらがたたかう人民から孤立しつつあるかは、おのずから明らかでしょう。
 われわれは、また、あなたがたとちがって、このような部分核停条約にたいする賛美を前提にすることによっては地下核実験の禁止や、核兵器の禁止を効果的にかちとることができるとは考えません。なるほど言葉のうえでは、三つの環境における核実験を禁止した部分核停条約を、残された地下核実験におしひろげ、さらにこれを足がかりにして核兵器禁止にまで前進することができるかのようにいうことはできます。しかし生きた現実ときびしい闘争の上では、全面核停を阻止するために帝国主義がもちだしていた部分核停に賛成する道をとおって、帝国主義との闘争ではなく妥協と譲歩に頼って、さらにまたその結果生まれた部分核停条約を社会主義国家と国際共産主義運動、国際民主運動におしつけ、その統一と団結を弱め、不団結を拡大する方向で、核実験と核兵器の完全禁止をかちとることは絶対にできません。そのようなことは、あなたがたのむなしい幻想でしかありません。今日の事態のもとでは、核戦争の阻止、核兵器の全面禁止の要求をかかげ、世界の平和愛好人民の切実な願いにもとづいて共同してたたかう基本方向のもとに、部分核停条約にかけた帝国主義の危険なねらいを暴露し、部分核停条約の支持と礼賛を、国際共産主義運動や国際民主運動におしつける誤まった態度との非妥協的な闘争をおこなってその統一と団結を回復し、帝国主義の核戦争政策に反対する強大な国際的統一行動と統一戦線を組織していく以外には、核兵器と核実験の完全禁止をかちとる道はありません。

 われわれは、あなたがたが、部分核停条約の締結後、アメリカ帝国主義を先頭とする帝国主義陣営がとっている戦争と侵略の政策の実態と、国際共産主義運動と国際民主運動におきているすべての事態を、真剣に考慮して、あなたがたが部分核停条約にたいしてとってきたし、いまなおとっている態度を全面的に再検討されることを、心から望んでやみません。それは帝国主義にたいして、許すことのできない譲歩をおこなって部分核停条約を締結しただけでなく、それを国際共産主義運動と国際民主運動におしつけて、その不団結をいっそう深刻化してきたあなたがたの、さけることのできない責任です。
 あなたがたの党の創立者であるレーニンは、あなたがたもよくご承知のように、政党がおかした誤りにたいしてとるべき態度をつぎのようにのべています。

 「政党が自分のおかした誤りにたいしてとる態度は、その党がまじめであったかどうかをはかり、党が自分の階級と勤労大衆にたいする自分の義務を実際にはたしているかどうかをはかる、もっとも重要で、もっとも確実な基準の一つである。誤りを公然とみとめ、その原因をあばきだし、それを生んだ情勢を分析し、誤りをあらためる手段を注意ぶかく討議すること、これこそ、まじめな党の目じるしであり、これこそ、党が自分の義務をはたすことであり、これこそ、階級を、ついで大衆をも教育し、訓練することである。」(「共産主義内の『左翼主義』小児病」)

 われわれは、あなたがたが、このレーニンの教えにしたがって、部分核停条約の締結とその支持のおしつけをつうじてあなたがたがおかした誤りを公然と認め、その原因とそれを生んだ情勢を分析し、誤りをあらためる手段を慎重に討議されることを願ってやまないものであります。

 (五)平和共存を中心にした諸問題

 あなたがたがわれわれを批判する第三の理論問題として提出している、平和共存を中心とした問題について、われわれの見解をのべてみたいと思います。
 あなたがたの平和共存についての考え方の根底には、「帝国主義者は〝力の立場〟にたつ政策を実施する物質的地盤を失ってしまいました」というような、帝国主義の本質と政策の評価にかんする決定的で重大な誤謬が横たわっていることはすでに指摘したところですが、この個所でもあなたがたは、今日「帝国主義者は余儀なく、諸国家の平和共存を受けいれている」とのべ、あたかもモスクワ声明にいう「社会制度の異なる諸国の平和共存」の目標がすでに達成されているかのようにいって世界人民をあざむいて帝国主義を美化する理論をくり返しています。これは、これらの言葉が、けっしてたんなるいいまちがいや偶然のものではなく、帝国主義勢力、とくにそのかしらであるアメリカ帝国主義が、すでに「力の政策」を放棄し、「諸国家の平和共存を受けいれている」という判断があなたがたの本心であることを証明しています。
 あなたがたは、このようにマルクス・レーニン主義にも反しモスクワ宣言にもモスクワ声明からも逸脱し、世界の現実をも無視した立場から、わが党の平和共存にたいする態度について、手あたりしだいの攻撃をおこなっていますが、こうした攻撃がまったくの的はずれで、根拠のないものとなってしまうのは当然のことです。
 あなたがたは、まず冒頭で、部分核停条約にたいするわが党の「反対」の原因は「日本共産党の指導的活動家が、異った社会制度の国ぐにの平和共存政策をめざす闘争をすてて、それに背を向けたこと」にあると断定し、「平和共存政策は、アカハタ紙上でも、また日本共産党の若干の指導者たちの発言でも、至極手のこんだ攻撃が加えられている」といって一方的に非難しています。  兄弟党のあいだで、このようなまったく事実に反した非難がおこなわれ、それについていちいち反証をあげなければならないということは悲しむべきことですが、公然とした非難がくわえられた以上、われわれはわが党が社会制度の異なる諸国の平和共存を支持しているという、あまりにも当然のことから、まずのべなければなりません。
 わが党は一九五七年と一九六〇年のモスクワ会議が満場一致で採択した『宣言』と『声明』に規定された、「社会制度の異なる諸国の平和共存」を一貫して支持しています。一九六一年七月に開かれたわが党の第八回党大会で決定された日本共産党綱領は、世界的規模では帝国主義勢力にたいする社会主義勢力の優位、戦争勢力にたいする平和勢力の優位がますます明らかになっており、反帝平和の勢力が不断の警戒心をたかめ、団結してたたかうならば、世界戦争を防止する可能性があることをはっきりと確認し、さらに「わが党の当面する行動綱領の基本」の一項として、つぎのような課題をかかげています。

 「党は、世界の平和と、社会制度の異なる諸国の平和共存をめざしてたたかう。党は、核兵器の禁止を要求し、全般的軍縮のためにたたかう。党は、すべての国との国交を正常化し、経済・文化の交流を発展させ、日本人民と世界各国人民の友好親善関係をひろめるためにたたかう。党は、アメリカ帝国主義とわが国の売国的反動勢力が共同しておこなっている社会主義諸国とアジア・アフリカ諸民族への侵略戦争準備、原子戦争のいっさいの準備に反対する。」(ゴシックは引用者)

 わが党の平和を守る活動はすべて、二つのモスクワ会議における『宣言』、『声明』の原則的規定と、わが党綱領のこのような規定に導かれて指導され、進められています。わが党が「平和共存」に反対しているかのようにいう、あなたがたの非難は、みられるとおりなんの根拠もないのです。

 (1)七中総決議と国際情勢のわい曲

 では、あなたがたは、いったいどんな論拠にもとづいて、このような重大な非難をわが党にたいしてつきつけているのでしょうか。
 第一にあげられている論拠は、「日本共産党の党出版物と同様、党の公式文書においても、ソ連邦が平和共存政策を実施しているのは、あたかも、ソ連が『アメリカ帝国主義との闘争を拒否し』たからであり、しかも他の兄弟党までもこの道に押しやっているといったことが書きたてられ」ているということです。
 この非難もまたデマゴギーの一種でしかありません。なぜなら、わが党の出版物、公式文書を問わず、わが党はどの社会主義国にたいしても社会主義国家の正しい平和共存政策を批判し、攻撃したことは一度もなく、一貫して積極的な支持をあたえてきたからです。もちろん、わが党は同時に、アメリカ帝国主義に半ば占領された日本において、アメリカ帝国主義とそれに従属的に同盟する日本独占資本の戦争と侵略の政策、対米従属下の日本軍国主義の復活政策と対決してたたかっている日本人民に責任をもつ党として、平和共存政策のあらゆるわい曲とは非妥協的にたたかってきました。「諸国家の平和共存は、修正主義者がいっているように、階級闘争を放棄することを意味しない」とモスクワ声明がのべているように、平和共存の修正主義的わい曲とたたかうのは、マルクス・レーニン主義党の当然の責務であるからです。モスクワ声明のこの見地を否定しないかぎり、正しい平和共存政策を修正主義的わい曲からまもるためのわれわれの闘争を非難したり、これを理由としてわれわれが平和共存政策に背を向けているかのように中傷したりすることはできません。そして、この中傷は逆に、アメリカ帝国主義の侵略政策の物質的基盤が失われたとか、アメリカ帝国主義が平和共存をすでに受けいれているとかいうような主張が流れ出てくるあなたがたの平和共存政策自体に重大な根本的な誤りがあることを示しているだけです。
 なお、これに関連して簡単にでもふれておかなければならないのは、あなたがたがわが党中央委員会の文書(七中総決議をさしているものと判断できますが)を、つぎのような理由で「国際情勢の真相」を「わい曲」するものとして非難していることです。

 「そこでは、アメリカ帝国主義はただ中国とアジアの他の社会主義諸国だけをじぶんのおもな敵とみなしており、ソ連邦との〝冷戦〟の若干のやわらぎを利用して、これらの国にたいしてだけ戦争を準備しているかのように、事態を描写する試みがなされています。」

 それにつづくあなたがたの叙述をみますと、あなたがたが七中総決議における国際情勢の分析かちわが党があたかも、(1)アメリカ帝国主義はアジア以外の社会主義諸国にたいする闘争をすでに放棄したとか、(2)ソ連の「核威力」はもはや反帝闘争のなかでなんらの役割をも演じていないとか主張しているように思いこみ、この抗議をおこなったのだということがわかります。だが、これもまた、客観性を失った読みちがいです。
 わが党の七中総決議は、該当する個所でつぎのようにのべているのです。

 「アメリカ帝国主義は『平和』や『自由』を口にしながら、一貫して社会主義陣営にたいする核戦争の準備をすすめ、また『核戦争のおどかし』によって新植民地主義による侵略と支配をつよめようとしている。NATO(北大西洋条約機構)、CENTO(中央条約機構)、SEATO(東南アジア条約機構)、東北アジア軍事同盟などの軍事ブロック政策、核兵器の開発、多角的核戦力計画による各国の核武装、世界的な基地の設置に際限もなく熱中している。
 とくに最近では、国際共産主義運動内部の不団結につけこみ、一方ではソ連などとの一定の『やわらぎ』に一応応ずる態度をとりながら、『中国封じこめ政策』を中心として、各個撃破的にアジア、ラテンアメリカなどの民族解放運動の圧殺や中国、朝鮮、ベトナムなどアジアの社会主義国への侵略戦争の陰謀と結合して、南ベトナム、中印国境、朝鮮三十八度線、キューバなどで緊張をつよめている。」(ゴシックは引用者)

 まず、この決議は、アメリカ帝国主義の一貫した「社会主義陣営にたいする核戦争の準備」を指摘し、NATOや多角的核戦力計画などの危険性を強調しています。そして、そのうえで、アメリカ帝国主義が社会主義陣営全体にたいする攻撃の当面の戦術として「ソ連などとの一定の『やわらぎ』に一応応ずる態度をとりながら」、最近とくに、「中国封じこめ政策」とアジア侵略政策をつよめていることを事実にもとづいて指摘しているのです。この指摘の正しさは、すべての事実があますところなく示しています。
 いったい、この決議をどうして、アメリカ帝国主義が「中国とアジアの他の社会主義国だけをじぶんのおもな敵とみなし」、「これらの国にたいしてだけ戦争を準備しているかのように、事態を描写する試み」などとよべるのでしょうか。またアメリカ帝国主義が、当面は核戦力をそなえたソ連などとの全面核戦争に突入して核報復をうける危険を回避しつつ、その戦略の当面の重点を中国をの他の社会主義国の攻撃にむけている事実を指摘することが、どうしてソ連が「核軍備費の重い負担」をになって創設した「核威力」を軽視したことになるのでしょうか。
 もしあなたがたが、アメリカ帝国主義が当面その侵略の主要なホコ先をあなたがたにではなく、中国、ベトナム民主共和国などアジアの社会主義国家にむけているというこの事実に不満があるなら、その不満はアメリカ政府に向けられるのが適切でしょう。もし国際情勢の真相のわい曲を問題にするならば、むしろ、われわれは、現在の主要な危険は、中国をはじめとするアジアの社会主義国にたいするアメリカ帝国主義の攻撃が、ソ連をふくむ社会主義陣営全体にたいする攻撃の当面のもっとも重要な内容をなしており、したがってまた、インドシナ戦争などアジアでの侵略計画との闘争が、世界平和をまもり、社会主義陣営全体を帝国主義の侵略政策からまもるたたかいの当面の主戦場の一つとなっていることを理解できず、アメリカ帝国主義による社会主義の内部変質工作と結びついた米ソ間の一定の「やわらぎ」をもってアメリカ帝国主義の平和共存政策への転換がはじまったかのように「事態を描写する試み」にあると考えています。
 あなたがたはまた、ソ連が帝国主義とたたかっていることを証明するために、ソ連政府が日本人民の独立・平和の要求と闘争を支持したいくつかの事例をかぞえあげていますが、わが党が、ソ連をはじめ社会主義諸国の党、政府、人民が日本人民の闘争によせた支持と激励を軽視したことは一度もなく、共通の反帝闘争における日本人民と社会主義諸国人民との連帯を発展させるためにつねに奮闘してきたことは、あなたがたも、十分ご承知のとおりです。ここで、われわれが見落とすことができないのは、とくに昨年七月の部分核停条約締結以後、日本人民の独立・平和の闘争にたいするあなたがたの態度に大きな変化があらわれていることです。たとえば、今年の一月二十六日、日本にあるアメリカの最大の軍事基地の一つである横田周辺での十三万人の集会を中心に、全国各地で数十万の人びとを結集して安保闘争以後最大の規模をもつ集会とデモが決行されました。だが、「プラウダ」はこれについてわずか数行の記事のなかでただ「群衆〔толпа〕が集まった」と報道したにすぎませんでした。しかもあなたがたは、その一方でそれから四日後に分裂主義者が組織した「平和大会」はきわめて重視して、ソ連平和委員会などの連帯のメッセージを送っているのです。また、今年の第十回原水禁世界大会で、あなたがたが核戦争阻止、核兵器禁止の旗を高くかかげ、アメリカ帝国主義の核戦争政策とまっこうから対決している日本人民の原水禁運動を支援するどころか、運動を分裂させ解体させるためにのみ活動したことは、周知の事実です。こうしたあなたがたのやり方を「侵略的な米日軍事同盟に反対してたたかう日本人民を支援」する態度とはいうことができません。あなたがたは、部分核停条約締結以後、アメリカ帝国主義と日本独占資本の核戦争政策と日本核武装化政策に反対し、日本における全アメリカ軍基地の撤去と全アメリカ軍隊の撤退を要求し、日米安保条約の廃棄をめざして、たたかっている日本人民の戦闘的な大統一闘争にたいして、支持し援助するのではなく、逆にこれを無視あるいは軽視し、さらにはこの闘争の分裂と解体をめざす勢力に同調する行動に出ているのです。
 いずれにせよ、あなたがたの「国際情勢の真相のわい曲」というわが党への非難が、まったくの見当ちがいであることは、ほかの非難と大同小異です。
 なおあなたがたは、この問題をとりあげた個所で「ソ連邦共産党は主要な敵、国際憲兵としてのアメリカ帝国主義との闘争に大衆を動員しているが、それとともに、西ドイツ、日本、イギリス、フランスといった他の国の帝国主義者の侵略政策を無視するのは誤りであると考えています」とのべています。
 ここで、われわれが問題にしなければならないのは、あなたがたが、しばしば、西ドイツ、日本、イギリス、フランスなどの帝国主義の危険を、アメリカ帝国主義の危険に対置させることによって、あなたがた自身が少くとも言葉のうえでは世界人民の「主要な敵」とみとめているアメリカ帝国主義との闘争から、各国人民の目をそらさせようとしていることです。
 たとえば、あなたがたは、両党会談において、自分の核爆弾をどのようにして実験しようかと夢にまでみている西ドイツの報復主義者と日本の帝国主義者の手をしばりあげているといった話をもちだすことによって、アメリカ帝国主義の核戦争計画を野放しにしている部分核停条約を「合理化」しようとしました。だが、西ドイツや日本の核武装化は、いま、アメリカ帝国主義の核戦争計画の重要な一環としておしすすめられており、西ドイツや日本の軍国主義者たちも、その一環をになうことによって、自分たちの野望を実現しようとしていることは、周知のところです。そして部分核停条約は、アメリカ帝国主義によって現に推進されている西ドイツや日本の核武装化計画にとって、なんらの障害をもなしていないのです。このことは、「侵略と戦争の主勢力」であり帝国主義陣営の首領であるアメリカ帝国主義との闘争を軽視したり回避したりする人びとは結局のところ、その他の帝国主義勢力とも効果的にたたかうことができないということを、きわめて具体的な形で示したものです。
 とくに、日本の問題についていえば、あなたがたはその書簡のなかで「まさに日本帝国主義こそ、極東と東南アジアにおけるアメリカ帝国主義の主要な同盟者だということはだれも知らないものはいません」、「アメリカ帝国主義に反対する日本国民の英雄的な闘争」は高く評価するが、「国の内外でいま帝国主義政策をとっている日本の独占ブルジョアジーに反対する闘争の意義」を軽視してはいけないなどといって、日本がすでに自立した帝国主義国としてアメリカ帝国主義と同盟を結んでいるかのようないい方をし、日本帝国主義の侵略政策をアメリカ帝国主義のそれと機械的に並列させています。だが、こうした評価は、日本が発達した資本主義国でありながらアメリカになかば占領された事実上の従属国であり、アメリカ帝国主義がこの従属関係に依拠して、日本を重要な拠点としてそのアジア侵略政策をおしすすめており、同時に帝国主義的に復活しつつある日本独占資本が目したの同盟者としてアメリカ帝国主義の戦争と侵略の計画に加担し、それによって自分の帝国主義的野心をも実現しようとしている現実を、まったく無視したものです。モスクワ声明は、アメリカ帝国主義の支配下でその戦争策源地となっている日本の情勢について、「アメリカ帝国主義者は、極東でも戦争の策源地を積極的に復活させている。かれらは日本の反動的支配者集団とぐるになって、日本人民の民族独立をふみにじり、また日本人民の意志に反して、日本に新たな軍事条約をおしつけたが、この条約は、ソ連、中華人民共和国、その他の平和愛好諸国家にたいし、侵略的目的を追求するものである」とのべました。その後、日本独占資本の帝国主義、軍国主義復活の過程はいっそう進みましたが、日本にたいするアメリカ帝国主義の政治的、経済的、軍事的支配は、依然として存続しているだけでなく、ある面ではいっそう強化されてさえいます。モスクワ声明の評価は、今日でも基本的にはまったく正しいものです。帝国主義、軍国主義復活の道をすすみつつある日本独占資本の独自の侵略性は、アメリカ帝国主義の侵略性と従属的に結びつき、その危険性と反動性を倍加する役割をはたしているのであり、日本人民にとっては、アメリカ帝国主義に反対する闘争と日本独占資本に反対する闘争とをかたく結びつけて発展させることが要求されているのです。あなたがたのように日本を基本的に自立した帝国主義国とみなすことは、結局は、アメリカ帝国主義の侵略性を軽視し、その対日支配を軽視しかつまた日本独占資本の侵略性がアメリカ帝国主義の侵略性と従属的に結びついている事実を見誤り、アジアにおける帝国主義の戦争と侵略の政策の実態を見誤って、日本人民の闘争を正しい方向からそらさせることとなるのです。

 (2)外交交渉と人民の闘争との関係

 第二に、あなたがたがあげた論拠は、「最近、日本共産党の出版物には」、「ソ連が反帝闘争で人民大衆の闘いよりも、外交交渉にたよっているといった考え方が流布されて」おり、「アカハタは、このような見方を『重要な論点』とさえみなしています」という非難です。
 たしかにわれわれは、もし、ソ連にかぎらずどの社会主義国家でも、反帝闘争において人民大衆の闘いにたよらず、主として帝国主義国との外交交渉にたよろうとするならば、それは正しくないと考えています。しかし、このことはけっして、あなたがたがいうように、われわれがまるで「人民大衆の闘争を社会主義諸国の外交活動に対置する」考え方におちいっており、「社会主義諸国が一定の事情のために、資本主義諸国との不動さと柔軟さを同時に要求される複雑な外交関係に入らなければならない」という当然なことを無視していることを意味しません。これも、論点のすりかえ、ないしはわい曲であって、われわれは社会主義国が外交政策においてもつぎのようなモスクワ声明の原則的見地を忠実にまもりつつ、これを戦略的にはもっとゆるぎなく、戦術的にはもっと柔軟に、もっと強力に展開することを望みこそすれ、人民大衆の闘争と機械的に対置して社会主義国の外交交渉そのものを否定したり、社会主義国家の外交政策が、帝国主義諸国間の矛盾を積極的に利用し、必要な場合には一定の妥協をもおこなう戦術的な柔軟性をもつ必要があることを否認したりするような、単純で幼稚なセクト的、小児病的見解をとるものではありません。

 「いま、平和のためにたたかうということは、とりもなおさず、最大の警戒心を維持し、うむことなく、帝国主義の政策を暴露し、戦争挑発者の陰謀と策動をするどく追及し、戦争を方針としているものにたいして各国人民の神聖な怒りをよびおこし、すべての平和勢力の組織性と平和擁護のための大衆の積極的行動をたえまなく強め、新戦争をのぞまないすべての国家と協力関係を結ぶということである。」

 われわれが強調しているのは、こうした原則を守った外交政策が正しく展開されることです。そしてまた、反帝闘争における社会主義陣営の役割を帝国主義国との外交交渉だけに解消したり、さらには、その外交交渉をもって人民の反帝闘争に代用させたりすることは誤りだということです。平和共存をたたかいとる主要な力は、けっして社会主義国の外交政策だけではなく、あくまで帝国主義に反対する全世界のすべての平和、民主勢力の共同のたたかいなのです。われわれがこれらの点を強調するのは、マルクス・レーニン主義者としてきわめて当然なことです。一九六〇年の八十一ヵ国共産党・労働者党代表者会議の「世界各国人民へのよびかけ」もまた、平和擁護の事業が社会主義世界体制、国際労働運動、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの民族解放運動、帝国主義諸国の侵略政策に同意しない中立諸国、全世界の平和擁護運動などすべての平和愛好勢力の決然たる共同闘争にかかっていることを、つぎのように強調しています。

 「これらすべての平和愛好勢力が団結して、決然たる闘争にのりだすならば、犯罪的な戦争計画をうちやぶり、平和を維持し、各国人民の友好を固めることができます。
 平和はひとりでにやってくるものではありません。平和はすべての平和愛好勢力の共同闘争によってのみ守ることができ、かためることができます。」

 われわれが立っているのは、このマルクス・レーニン主義の原則的見地以外のなにものでもありません。  さらに、社会主義国の外交政策の問題に関連して、実際に闘争に害を与えているもう一つの誤った傾向にもふれておかなければなりません。それは、人民大衆の闘争を、とくに資本主義諸国の平和闘争や、被抑圧民族の民族解放闘争を、特定の社会主義国の外交政策に従属させようとする傾向です。先にあげた部分核停条約の支持のおしつけは典型的な例ですが、もう一つ二つ例をあげておきましょう。
 一九六一年八月の第七回原水禁世界大会において、ソ連代表団が「最初に核実験を再開したものが平和の敵だ」と主張した際、われわれの代表は、ソ連代表団団長イエ・エム・ジューコフ氏にたいし、このような主張をしてもよいのかと念をおしました。なぜなら、情勢の推移によってはソ連が最初に核実験再開を余儀なくされることはありうることだし、たとえそういう事態がおこったとしても、ソ連が「平和の敵」とよばれるべきでないことは明らかだからです。しかしジューコフ同志は、ソ連が最初に核実験の再開をすることはありえないと主張しました。その結果、第七回原水禁世界大会の決議のなかには「こんにち、さいしょに核実験を開始する政府は平和の敵、人道の敵として糾弾さるべきである」という有名な言葉が書きこまれました。ところが、それから一ヵ月もたたないうちに、周知のようにソ連政府は核実験を再開したのです。
 米日反動勢力、商業新聞、社会党右翼指導部、反党修正主義者などは、第七回原水禁世界大会の決議をこれみよがしにふりかざしながら、いっせいにソ連核実験再開を非難しました。しかしわが党は、前にものべたように日本の自覚的な民主勢力とともに、大きな困難にもかかわらず、断固として、ソ連の核実験再開が世界の平和を守るために余儀なくされたことを、積極的に主張しました。われわれは、こんにちでも、このわが党の態度が正しかったと確信しています。
 しかしわれわれが、あなたがたの真剣な考慮をのぞみたいのは、社会主義国の外交政策に、戦術的な柔軟性とはちがった意味で正しい一貫性がなく、あちらからこちらへ急激に転換がおこり、さらにその転換に、世界の人民闘争を従属させようとすることが、どんなに資本主義国の人民の運動に困難をもたらすかということです。一九六二年十月のいわゆる「キューバ危機」の時にも同じようなことがおこりました。「キューバ危機」のさなかに招集された世界平和評議会の議長団会議は、「トルコにおけるアメリカ軍事基地の撤去と引きかえにキューバから核ロケットを撤去する」というソ連政府の最初の声明を支持するという決議を全員一致で採択しました。ところが、この会議が終了した直後、ソ連政府はさきの声明を簡単にひっこめて「キューバから一方的に核ロケットを引きあげる」という新しい声明を発表しました。世評議長団会議の決議はまったく宙に浮いてしまったわけですが、この会議に出席したソ連代表は、ただちに他の代表に働きかけ、ソ連政府の新声明と合致した別の決議を採択させようと努力をはじめました。こういったやり方が、世界平和評議会の権威を傷つけるとともに、平和運動の団結を困難にすることは明らかです。このようなことでは、あなたがたの書簡にいう、「資本主義諸国における人民大衆の運動、これら諸国の支配階級にたいして社会主義国がおこなっている対外政策上の圧力――これはすべて一つに融合し、相互におぎない合っています」という言葉は、まったく絵にかいたモチにすぎなくなってしまいます。
 あなたがたは、こうした過去の苦い経験から、なんの教訓も学びとっていないようです。あなたがたは、日ソ両党会談でわが党代表団がこれらの事実を指摘して反省をもとめたのにたいし、まったくほおかむりですごしました。それだけではありません。たとえば、あなたがたは、ソ連が結んだ部分核停条約を支持しなかったからといってわが党を「反ソ」だと攻撃し、さらに、昨年十二月三十一日に発表された「領土紛争および国境問題の解決にさいして武力を行使しないという国際協定」締結についてのソ連政府の提案を、「アカハタ」がただちに大々的に宣伝しなかったからといって、「こういうことが許されるでしょうか」などと非難しました。しかも、その一方で、あなたがたは同じ会談のなかで、ソ連共産党が兄弟党の合意をもとめるのは「内外政策の一般原則と総路線」だけで、部分核停条約の締結にせよ、その他の問題にせよ、ソ連政府がとる対外政策面の措置について、そのたびごとに、兄弟党と相談し合意をうる必要はないという「原則」を宣言しました。しかし、すでにのべたように、部分核停条約反対の方針から賛成の方針へのあなたがたの外交政策の転換は、まさに、「対外政策の一般原則」にかかわる重大な転換であり、部分核停条約の内容からみて明らかなとおり、兄弟党の活動に深刻な関連と影響をもつ基本問題です、結局、ソ連外交の自由を口実としたあなたがたの論理によれば、ソ連共産党は部分核停条約の締結にみられたような外交政策の大転換についてさえ兄弟党に相談する必要はないが、兄弟党の方は無条件にソ連政府の外交政策に追従する義務を負っているということになります。これこそまさに、国際共産主義運動や国際民主運動を、特定の社会主義国の外交政策に従属させようとすることにほかなりません。
 平和共存はけっして帝国主義者との交渉にたよることを主にしてからとられるものではなく、平和共存を拒否して世界制覇計画を追求している帝国主義の戦争と侵略の政策を「社会主義の世界陣営、国際労働者階級、民族解放運動、戦争に反対するすべての国、すべての平和愛好勢力」(モスクワ声明)が共同のたたかいによって、ざせつさせ粉砕することを基本として、かちとられるのです。社会主義諸国の外交政策は、このたたかいの一部分であり、この共同のたたかいにこそ従属して、その重要な任務をはたさなければなりません。いまは、帝国主義者と交渉中だから、その交渉を容易にするために、民族解放闘争のホコ先をゆるめろとか、アメリカ帝国主義にたいする暴露をさしひかえよとか、外交方針が変わったから、平和運動の方針もそれに合わせよというようなことは、事態をまったくひっくりかえすものです。これは、全世界にわたるアメリカ帝国主義の戦争と侵略、抑圧と反動の政策をそのままにしておいて、ただ米ソ間の「協調」を実現しようとする方針にほかなりません。このように、平和共存のための闘争を、「米ソ協調」をめざす外交交渉に従属させ、あるいは解消することは、モスクワ宣言、モスクワ声明にのべられた平和共存の政策とは、なんの共通点もありません。それは、実際には、平和共存をたたかいとる事業を助けるどころか逆に損害をあたえ、平和共存を望まない戦争勢力に打撃を与えるどころか逆に手を貸すこととなるのです。

 (3)熱核戦争の主張者だという挑発的中傷

 あなたがたが平和共存政策にたいする「日本共産党中央委員会の立場」に「本質的な変化」があらわれたという主張の論拠として、最後にあげているのは、わが党の聴濤同志の、日本平和委員会代表団の一員としての一九六三年十一月の世界平和評議会ワルシャワ総会における演説です。あなたがたは、その書簡のなかで、聴濤同志の発言を、つぎのように引用しています。

 「日本共産党中央委員会の聴濤幹部会員は、世界平和評議会ワルシャワ総会で、世界平和評議会がおこなっている平和共存と全般的軍縮の路線は『実際には平和、独立、民主主義、社会進歩をめざす世界人民の多様な歴史的な闘争にとって代えようとするものである』とのべました。ここから聴濤同志は、つぎのような結論をだしています。『世界平和評議会がおこなっている平和共存と全般的軍縮の路線は平和闘争にとって適当でなく、この闘争の目的に矛盾している』(一九六三年十二月九日付「アカハタ」)」

 あなたがたは、聴濤同志のこの発言を根拠にして、(1)「日本の同志たちには、すでに諸国家の平和共存政策が気にくわなくなってきた」、(2)「日本共産党の同志たちが、社会進歩のための闘争――すなわち社会主義のための闘争――もふくめた各国人民の解放闘争の他のすべての形態を、平和共存政策に対置することによって、明らかにこの政策の信用を失墜させようとしている」、(3)「聴同志とその同調者たちの発言」は、「社会制度の異なる諸国家間の戦争、新世界戦争――したがって熱核戦争を主張していることを意味しています」などと大げさな言葉でわが党の非難し、つぎのような言葉で結んでいます。

 「同志のみなさん、ごらんのように、世界平和評議会ワルシャワ総会における貴党代表団の立場は、一九六〇年のモスクワ会議の立場とは天と地のひらきがあるではありませんか。」(ゴシックは引用者)

 しかし、内容の問題にはいる前に、まずはっきりさせておかなければならないのは、世界平和評議会総会に出席したのはわが党の代表団ではなく、日本平和委員会代表団であるということです。しかも聴濤同志の発言は、日本平和委員会の代表団の一人として、第一分科会「軍縮と核戦争の危険に反対するたたかいについて」において、「平和共存」と「全般的軍縮」にかんする世界平和評議会の路線の欠陥を指摘したものであり、わが党の平和運動の諸問題にかんする包括的な見解をのべる立場からのものではなかったということです。あなたがたはここで、日本平和委員会代表をわが党の代表団ととりちがえているばかりでなく、さらに聴濤同志の発言をわが党の平和共存と平和運動にかんする包括的見解をのべたものとみなす二重の誤りをおかしています。あなたがたは、世界平和評議会ワルシャワ総会における日本代表団の見解を反駁したいのなら、聴濤同志の発言だけでなく「日本平和委員会の報告と提案」および「日本平和委員会代表団によって提出された決議草案と提案理由の説明」をとりあげるべきですし、またもしわが党の平和共存や平和運動についての見解を反駁したいのなら、あなたがたはまずこの問題にかんする党の正式文書や党の正式の代表団の発言をとりあげるのが当然です。
 しかも聴濤同志の発言の内容は、あなたがたが主張しているように、平和共存や全般的軍縮そのものを否定したものではけっしてありません。
 一九六三年十二月九日付の「アカハタ」は、聴濤同志の発言をつぎのように報じています。

 「聴濤氏はまず、近年モスクワで開かれた平和と軍縮のための世界大会以来、世界平和評議会がとりつづけてきたような路線が、日本をふくむ世界の平和闘争をいわゆる『平和共存』と『軍縮』に一面的に単純化しており、実際には、平和、独立、民主主義、社会進歩をめざす世界人民の多様な歴史的な闘争にとってかえようとするものであると指摘、『このような路線は、平和の敵、とくに平和の第一の敵であるアメリカ帝国主義を人民に見失わせ、人民を思想的、政治的に武装解除す明白な危険をもたらす』と指摘した。」

 つづいて聴濤同志は、世界平和評議会のこの誤った路線が、アメリカ帝国主義の政治的指導者だった故ケネディ大統領を「平和の使者」だとか「善良な帝国主義者」だとか評価して、総会へき頭に黙とうを提案するような重大な誤りにまで達していることを批判し、世界平和評議会のこのような路線が世界平和運動の団結をけっして保障するものでないことを指摘しました。聴濤同志のこれらの指摘が、全体として平和共存を否定するものではなく、帝国主義者の戦争と侵略の政策をうちくだいて、世界の平和をまもる立場からの指摘であることは明白です。
 この立場は、ワルシャワ総会に日本平和委員会代表団が「決議草案」を提出したさいの「提案理由の説明」に、いっそう詳細にのべられています。

 「われわれは軍縮と平和共存に賛成であり、全面軍縮の達成と平和的共存の確立が平和運動の重要な課題であることを認めるものである。
 しかしながら、全面軍縮と平和共存は、たんなる叫びや主張によって実現することはできない。これらの目標へ向かう道は、平和のためのあらゆる種類のたたかいを組織し、一つの流れのなかに統一した時に、そしてそれぞれの具体的闘争が断固として効果的に遂行されたときに、はじめてきひらくことができるのである。世界平和運動は、いまやそのエネルギーを、帝国主義者によって進められる一つ一つの戦争政策のすべてに反対する断固たる闘争と、そのような政策を粉砕するための闘いに人民大衆を動員することに集中しなければならないと、われわれは信じている。したがってわれわれは、平和運動の路線を軍縮と平和共存に限定するならば、効果的なたたかいへの道を閉ざすことになると考えるものである。」

 これらからも明らかなように、聴濤同志は、日本平和委員会代表団の一員として、平和闘争をいわゆる「平和共存」や「軍縮」に一面的に単純化する傾向や、アメリカ帝国主義との闘争を回避する傾向に反対したのです。もともと、帝国主義の戦争と侵略の政策の具体的なあらわれにたいして大衆を動員して真剣にたたかい、それを一つ一つ粉砕する平和のためのたたかいを離れて、平和共存と軍縮への道を切り開くことはできません。いっさいの平和闘争を、一般的に「平和共存」と「全般的完全軍縮」だけをめざす運動に一面化することは、平和運動を帝国主義の戦争政策とたたかわない、無力な運動に変えてしまうことを意味しています。さらに、平和共存や軍縮を実現するためにも、平和運動が、現実に帝国主義の侵略や抑圧とたたかっている民族解放闘争その他の反帝闘争の意義を軽視せず、それとの大衆的な連帯を発展させる必要があることは、いうまでもありません。もしすべての平和闘争を平和共存と軍縮をめざす運動に解消したり、平和運動を民族解放闘争に機械的に対置させたりすれば、あるいはまた、「平和共存」の名のもとに帝国主義を美化する立場におちいったりすれば、平和共存や軍縮そのものをもかちとることができないのは明らかです。
 ところがあなたがたは、世界平和評議会の誤った路線を批判した聴濤同志の発言を口をきわめて非難する一方、その同じ書簡のなかで「平和共存の路線は、平和の敵にたいして大衆を動員し、積極的な行動を展開する路線である」というモスクワ声明の規定を引用し、また「平和擁護と平和共存のための闘争は、反帝闘争のひじょうに重要な形態の一つ」となったとのべています。もし、あなたがたが本当にこの見地が正しいと考えているのだとしたら、「平和の敵」をあいまいにする傾向や帝国主義の侵略と戦争、抑圧と反動の政策にたいする人民の多様な闘争を「平和共存」や、「軍縮」の運動に解消する一面的な単純化の傾向などを批判した発言を、世界熱核戦争を主張するものだなどとまでいって非難することがどうしてできるのでしょうか。あなたがたが、ここで救いがたい矛盾におちいっていることはまったく明白です。
 以上、あなたがたがわが党への非難の根拠としてもちだした主要な論点を検討してきましたが、検討の結果はすべて、あなたがたの非難自体が的はずれなものであることを証明しています。
 ところが、あなたがたは、マルクス・レーニン主義の原則的見地から「社会制度の異なる諸国の平和共存」をめざしてたたかっているわが党にたいして、このようなまったく根拠にならない根拠をもちだして、「平和共存政策をめざす闘争をすてた」とか「それに背をむけた」とかの非難を投げつけ、はては「社会制度の異なる諸国家間の戦争、新世界戦争――したがって熱核戦争――を主張している」人びとがわが党の指導部にいるかのように中傷しています。こうしてあなたがたは、結局は、アメリカ帝国主義の核戦争政策の極東最大の策源地となっている日本で、日本人民の先頭にたってアジアと世界の平和のためにたたかっている兄弟党を、こともあろうに熱核戦争の挑発者として中傷しているのです。
 これはあなたがたが、結局、デマや中傷をおもな武器とするほどまでになっている残念な事態を示すもので、あなたがたの乱暴な議論をしばしばきかされているわれわれも、この中傷には怒りを禁じえません。あなたがたは今までも、平和共存にかんするあなたがたの見解にたいする批判的見解やちがった見解が表明されると、すぐさま、それに「熱核戦争を望むものだ」というレッテルをはりつけて攻撃してきました。いったいあなたがたは、熱核戦争による革命の輸出か、平和共存をつうじての革命の促進かという、あれかこれかの問題で、世界のマルクス・レーニン主義党が真剣に論争をつづけているとか、マルクス・レーニン主義党のなかに本気で熱核戦争をのぞんでいる覚や指導部があるなどと、世界の人民に思いこませたいのですか。これは絶対に見のがすことのできない挑発的言辞です。しかもこのような論争の対立点の定式化が、まったく事実に反していることが、くり返し指摘されてきたにもかかわらず、それを承知のうえであなたがたは、こんどはわが党やわが党の指導部にむかって、敵と人民の面前で同じ非難をくわえてきました。だが一九二二年の党創立以来、絶対主義的天皇制の野蛮な弾圧のもとで、日本帝国主義の侵略戦争に反対する闘争を一貫してすすめ、少なからぬ指導者と党員がそのたたかいで犠牲となったにもかかわらず、あくまで反戦平和の旗を高くかかげつづけたわが党にたいし、また第二次大戦後の党再建以来、その革命的伝統をひきついでアメリカ帝国主義と日本独占資本の戦争と侵略の政策に反対し、日本人民の平和と独立のための闘争の先頭にたって、核戦争防止と核兵器の禁止のためにたたかいつづけているわが党の戦列にたいして、熱核戦争の提唱者などという非難を投げつけることは、アメリカ帝国主義者や日本の反動勢力さえ考えつかなかったことです。これはあなたがたが、同志的討論においてただ相手をいいまかそうとして極端な主観主義的逸脱におちいり、前後の分別もなく最大限の悪罵とレッテルをはりつける態度に出ていること、すでに討論における共産主義者の風格から遠くはなれてしまったことを示しているだけであって、われわれはそのことを、ソ連共産党の過去の栄光にてらしていっそう残念に思います。

 (4)宣言と声明から離れた「平和共存」政策

 あなたがたが、平和共存政策のために真剣にたたかっている兄弟党にたいして、以上にみたよう常軌を逸した攻撃をしかけてくるからには、あなたがたの「平和共存」政策なるものは、わが党のそれとは別個の基盤、つまりモスクワ宣言やモスクワ声明の革命的諸原則とは別個の基盤にもとづいた「平和共存」政策なのではないかという疑問が起きることをわれわれは禁じることができません。実際、あなたがたの書簡の各処には、この疑問の正しさを証明するような、あいまいな命題や誤った規定が横たわっています。
 (1)たとえば、はじめに指摘したように、あなたがたの書簡のなかには、現在の帝国主義陣営内部の状態をつぎのように特徴づけた驚くべき一節があります。

 「それで、われわれの階級敵の陣営内では、もし帝国主義の狂人どもが世界戦争をはじめるならば、資本主義は一掃され、葬り去られるという真理を、ますますはっきりと理解するようになっています。まさに、このために、帝国主義者は余儀なく、諸国家の平和共存を受けいれているわけです」(ゴシックは引用者)。

 すでにのべたように、あなたがたの書簡は、部分核停条約にふれた個所で、「帝国主義者は、〝カの立場〟にたつ政策を実施する物質的地盤を失ってしまった」というマルクス・レーニン主義に反し、事実に反する主張をおこなっていました。あなたがたは、ここでまた。その主張に対応し、世界舞台における勢力関係の変化、とくにソ連の所有する恐るべき兵器の威力に直面して、現代帝国主義が、世界戦争が自分たちを破滅させることを「ますますはっきりと理解するようになり」、すでに「諸国家の平和共存を受けいれている」と断定しています。
 だが、帝国主義の侵略政策をざ折させ、世界戦争を防止することのできる力関係が生まれたということと、帝国主義がすでに侵略政策を捨てて平和共存を受けいれているということとはまったく別な二つのことがらです。前者はわれわれのたたかいによってつくりだされる展望の問題であり、後者は帝国主義の本質や政策の評価にかかわる問題です。実際には、力関係が不利になっているからこそ、帝国主義はその力関係の逆転をねらって必死に力を集中しているのです。実際には、ただちに全面熱核戦争を放火することができなくなっているからこそ、今日の情勢が具体的に示しているように、ソ連などとの一定の「やわらぎ」の情勢をつくりだしながら、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの地域で、核脅迫と結びついた、通常兵器や小型核兵器を使う局地戦争や特殊戦争の放火に熱中し、たとえばわが党の七中総決議が明らかにしたように、新しく社会主義体制を分裂させる各個撃破戦術に出ているのです。帝国主義者が「諸国家の平和共存を受けいれている」というあなたがたの評価が、米ソ関係というせまい視野からだけ世界をながめ、米ソ関係の当面の「やわらぎ」を一面的に誇張した近視眼的で幻想的な評価でしかないことは、中国、ベトナム、朝鮮、キューバなどの社会主義国にたいするアメリカ帝国主義の態度をみれば明瞭です。
 こうした現実を無視して、すでに「帝国主義者が諸国家の平和共存を受けいれている」と評価するあなたがたの考え方は、平和共存を実現するために、帝国主義の戦争計画を暴露し、これに反対する闘争に世界の人民を動員することがますます重要になっているときに、帝国主義の侵略性をおおいかくし、人民の警戒心を弱めるきわめて明白な大きな誤りであり、またきわめて危険な逸脱した考え方です。
 なるほどあなたがたは、言葉のうえでは、「帝国主義の本性は変っていない」ことを一応認めており、「帝国主義が存在するかぎり、戦争勃発の危険もまた残ること」を一応認めてはいます。しかしあなたがたは、現代帝国主義を、あなたがたの引いた例でいえば「太いコン棒をもった人間には飛びかかろうとせず、ただ遠くからうなり声をあげるのが関の山」の犬のようなものと評価しており、「戦争勃発の危険」を、事実上、帝国主義陣営内のただ一部の「狂人ども」のごく例外的な冒険として軽視しています。こうした帝国主義の侵略的本性の過小評価が、モスクワ宣言とモスクワ声明の原則的見地と両立しないことは明白です。
 結局、あなたがたの「平和共存」政策は、帝国主義が戦争と侵略の政策を遂行している現状を、「平和共存」だといいくるめてそれを認めることであり、帝国主義と本質的、積極的に闘争せず、帝国主義の戦争と侵略の政策を美化して、それに追随し、妥協することによって、あなたがたがいみじくも「平和共存」と名づけた現状をなんとか維持しようとする政策でしかありません。このような「平和共存」政策が正しいものでなく、国際情勢の現実と世界人民の鉄火の闘争のなかでたちまち破産するほかない政策であることもまた明白です。
 東南アジアを中心とした最近の事態は、アメリカ帝国主義が「平和共存」を受けいれているというあなたがたの現状認識の誤りと、それにもとづくあなたがたの「平和共存」政策の破綻とを、きわめて具体的な形で実証しました。さる八月三日、フルシチョフ・ソ連首相は部分核停条約一周年を記念しての「プラウダ」、「イズベスチヤ」記者とのインタビューにおいて、「わたしは、モスクワ条約調印以後の一年間に国際舞台で新しい経験がえられたと信じている。すなわち、ある程度の信頼感がつかみかさねられて、国際緊張の緩和とさまざまな分野での合意をいっそう推進することができるようになった。……したがって、このような信頼感のつみかさねをまもり、信頼感がうすれることなく、逆にあらゆる方法で信頼感を拡大強化していくことが、きわめて重要である」とのべました。ところが、ソ連首相がこのようにアメリカ政府への「信頼感」を表明し、相互信頼の積みかさねが平和への道だと強調していたまさにその時に、アメリカ帝国主義は「国際緊張の緩和」をいっそう「推進」するどころか、ベトナム民主共和国の領海を侵犯し、この共和国に属する諸島に不法な攻撃をくわえ、さらに大規模な攻撃を準備していたのです。つづいて八月五日、ソ連政府が米英両国政府とともに「われわれは、すべての国民の真の利益をまじめに考慮し、国民の利益を考慮した協定をむすぼうと積極的な努力をかさねているもので、いまや相互の理解と平和をめざして前進しようと努力するつもりである」という共同声明を発して、相互にその「平和」政策を確認しあったまさにその日に、アメリカ帝国主義は第七艦隊をトンキン湾に派遣してベトナム民主共和国に大規模な爆撃をおこないました。ベトナム民主共和国の領土と人民を公然と爆撃し侵略したものは、アメリカ帝国主義のなかの一部の例外的な「狂人ども」ではありません。この侵略は、まさに、アメリカ帝国主義を代表するジョンソン大統領の指示のもとにおこなわれたのです。アメリカ帝国主義が社会主義国への公然たる軍事侵略を開始したというこの危険な事態にたいして、あなたがたはただちにこれに適確な反撃をくわえることができず、かえって、アメリカ帝国主義が国連安保理事会を利用してその侵略行動を合法化しようとするのを、客観的には援助するという役割をさえはたしました。これは、けっして偶然ではありません。それは、アメリカ帝国主義の「平和」政策を「信頼」し、米ソ間の「信頼感」の強化によって平和を確保できると考えるあなたがたの「平和共存」政策がらみだした当然の帰結であります。事実が雄弁に示しているように、あなたがたの「平和共存」政策は、アメリカ帝国主義の戦争と侵略の政策をいっそう助長し、その展開を有利にする役割しかはたしえないのです。

 (2)また、あなたがたの書簡のなかには、帝国主義者との闘争の方法についてのべたつぎのような一節があります。

 「ある人たちは、アメリカ帝国主義との闘争を〝激しい〟言葉の数を尺度にして計っていますが、しかしいくらばり雑言をたたきつけられても、帝国主義者には、痛くもかゆくもありません。かれらにたいしてきき目があるのは、ただ現実的な力と確固不動の態度です。帝国主義者が侵略行為にでてきたとき、ソ連邦はただデモンストレーションだけに止まらず、攻撃の犠牲者に効果のあ20る援助を与え、帝国主義者を退却させているのです。」

 あなたがたは、ここで明らかに、帝国主義者を暴露し追及し糾弾する「激しい言葉」と、社会主義国の「現実的な力」や「確固不動の態度」とを対置させ、前者は「帝国主義者には痛くもかゆくもない」ものであり、帝国主義者とたたかうためには、後者だけが必要なのだ、と主張しています。これは、あなたがたが、反帝闘争を強調し帝国主義美化の傾向に反対する人びとを非難するためにこれまでもしばしば使ってきた論法ですが、これまたモスクワ声明の革命的見地とは到底両立しえない誤った論法です。
 モスクワ声明は、あなたがたのように、帝国主義の侵略的本性を徹底的に暴露する活動を「帝国主義者には痛くもかゆくもない」活動などといって軽視するどころか、「現在、各国人民にとっては、どんなときにもまして、特別に高い警戒心をもつことが必要である」ことをくりかえし強調し、すでに引用したように、うむことなく帝国主義の政策を暴露し、戦争挑発者の陰謀と策動をするどく追及すること、戦争を方針としているものにたいして各国人民の神聖な怒りをよびおこすこと、平和擁護のための大衆の積極的行動をたえまなく強めることなどを、平和のためのもっとも主要な任務としてなによりも重視しています。あなたがたの書簡は、あなたがたがモスクワ声明のこの原則的路線から逸脱し、世界の人民を帝国主義者との闘争に政治的に動員することの意義を過小評価し、もっぱら社会主義国の軍事力・経済力とそれを背景にした外交交渉だけにたよろうとする一面的な見地におちいっていることを、きわめて端的に表現したものだといわなければなりません。
 あなたがたは、こうした一面的な見地をさらにすすめて、最近では、実際にアメリカ帝国主義の侵略政策の暴露に反対するだけでなく、しばしばアメリカ帝国主義の「平和政策」を進んで公然と賛美し帝国主義者を美化するところにまで「前進」しています。昨年十二月の世界平和評議会のワルシャワ総会で、あなたがたの指導下にある人びとが中心になってアメリカ帝国主義の政治的代表者であったケネディに黙とうをささげたのは、そのもっとも象徴的な事件でした。
 わが党の代表団が両党会談でこのことを批判し、国際民主運動へのアメリカ帝国主義美化の立場のおしつけについて警告したとき、あなたがたは、①黙とうの提案はフランスのカトリック教徒の作家マドール氏がおこなったものであり、マドール氏は、「議事録」によれば、アメリカ帝国主義の政治的代表に哀悼の意を表するつもりはすこしもなく、ケネディ夫人の二人のこどもにわれわれの同情と哀悼の意をあらわしただけだった、②非共産主義者のこうした提案にたいして抗議したり退場したりすれば、自分を非党員から隔離し、反動勢力に共産主義者への中傷攻撃をつよめる口実をあたえることになるから、ソ連の平和運動家たちも同調したのだと説明し、逆にわれわれを事実を勝手にねじまげるものとして非難しました。この非難には、文字どおり驚くほかありませんでした。これはまったくの白を黒といいくるめようとする逃げ口上というものです。
 第一に、フランス代表マドール氏の「軍縮と核戦争の危険にたいする闘争」と題した報告が総会における正式の補助報告であったことからいっても、総会開会前にソ連代表団の団員が若干の国の代表にたいし、ケネディへの黙とうのための事前工作をおこなっていることからいっても、さらに、総会でケネディへの平和政策」をたたえる演説がくりかえしおこなわれたことからいっても、この提案が、あたかもカトリック教徒であるマドール氏の個人的イニシアチブによるものであるかのようにいうあなたがたの主張は、明らかに無責任な言いのがれにすぎません。
 第二に、黙とうがケネディ夫人と二人の子どもにささげられたなどというあなたがたの言い分にいたっては、ただあきれるほかはありません。「議事録」によれば、マドール氏は、あなたがたの引用文の前でつぎのような言葉で、明確に「アメリカ帝国主義の政治的代表」であるケネディ大統領の死に黙とうをささげることを提案し、最後に「世界平和評議会全体を代表して夫人とこどもへの「同情と哀悼の意を表明」したものだったからです。

 「彼が自国でどんな強力な反対にであっていたかをみずからの死によって示したケネディ大統領の善意にたいし、われわれは敬意をささげようではありませんか。彼の思い出を記念し、アメリカ国民全体にたいし、われわれがかれらと悲しみをともにしていることを明らかにしたいと思います。ケネディ夫人と二人の遺児に同情と哀悼の意を表明するとき、私は世界平和評議会全体を代表してそうしているのだと思います。」

 アメリカ帝国主義の暴露に反対し、逆にこれを美化する方針を国際民主運動に押しつけながら、その点を追及されると、ケネディではなく、その夫人とこどもへの同情の表明だったなどというあまりにもみえすいたうそとごまかしで言いのがれようとするあなたがたのこうした態度は、とても一国の共産党の指導者の態度とは思えません。

 (3)さらにあなたがたは、その書簡のなかで、あなたがたの「平和共存」政策を、「帝国主義の好戦的勢力の抑圧、世界戦争の防止、社会制度のちがう諸国家の平和共存の実現のためにたたかい、経済競争で社会主義の勝利を確保し、これによって、社会主義の魅力をつよめ、革命運動の展開に好ましい条件をつくり、資本主義諸国の勤労者の革命闘争と諸国民の民族解放闘争を全面的にたすけてゆく見通しをたてる」路線として定式化しています。
 あなたがたは、第一に、この路線を「一九六〇年の声明の路線」とよび、第二に、あなたがたのこの路線を批判する人びとの立場を、「二つの体制の軍事的衝突の方針をとり、社会主義を武力で確立」する路線、「戦争によって革命を推進する冒険的路線」と特徴づけていますが、こうした主張は、まったく根拠がありません。
 モスクワ声明は、平和共存と階級闘争の結びつきについてつぎのようにのべています。

 「諸国家の平和共存は、修正主義者がいっているように、階級闘争を放棄することを意味しない。社会制度の異なる諸国家の平和共存は、社会主義と資本主義の階級闘争の一形態である。平和共存の条件のもとでは、資本主義諸国内での階級闘争の展開、さらに植民地および従属国の人民の民族解放運動の展開にとって有利な条件が生まれている。同時に、革命的階級闘争と民族解放闘争の成功は、平和共存の強化を促進する。共産主義者は、平和共存を強固なものにすることができるという人民大衆の信念と世界戦争をくいとめようというかれらの決意を固めることを、自分の義務とみている。共産主義者は、各国人民が、平和、民主主義、民族の解放をかちとるため積極的にたたかうことによって、帝国主義の陣地をいっそう弱めそれをせばめるようにあらゆる方法で促進していくであろう」(ゴシックは引用者)

 モスクワ声明のこの定式をあなたがたの定式とくらべてみるならば、あなたがたの定式が、平和共存が革命闘争と民族解放闘争をたすけることだけを一面的に強調して「革命的階級闘争と民族解放闘争の成功は、平和共存の強化を促進する」もう一つの側面を無視している点でも、「社会主義と資本主義の階級闘争の一形態」である平和共存を社会主義と資本主義の経済競争にわい小化している点でも、モスクワ声明の原則的見地と異った一面的見地におちいっていることは明らかです。すでにのべたように、この一面化は、結局のところ各国の人民大衆こそが革命を推進し勝利にみちびく決定的な力であるというマルクス・レーニン主義の根本的立場にもかかわる、重大な誤りです。
 また、あなたがたのこうした一面的な見地に同意しない人びとを、すべて「二つの体制の軍事的衝突の方針」をとるものとか、諸国家間の戦争によって革命を推進する「冒険的路線」などと中傷し、事実に反して、あたかも武力によって革命を輸出しようとするトロツキスト的潮流が国際共産主義運動や社会主義陣営の内部に存在するかのように、事態をえがきだすあなたがたの議論については、国際共産主義運動内の意見の相違を解決するには少しも役だたず、自分たちが計画し、準備し、遂行している戦争挑発の責任を、社会主義諸国や民族解放運動、革命運動のがわに転嫁しようと躍起になっている帝国主義者たちをよろこばすだけのものであり、許すことのできない挑発的言辞だということを、ここでもう一度指摘しなければなりません。
 あなたがたが定式化した「平和共存」政策とその路線についてのわれわれの見解を、この書簡のなかですべてのべることはとうていできませんが、ただあなたがたが「かつて日本共産党中央委員会はこの政策を明確にしかも無条件に支持していました」(ゴシックは引用者)とのべていることについてだけは、明確に回答しておきたいと思います。すなわち、わが党は、あなたがたがここで定式化したような「政策」、モスクワ声明の路線とは明らかにことなった一面化と誤りをふくむ「政策」を支持したりこれに追従したりしたことは、かつて一度もなかったし、今後もないでしょう。
 このように、ごく簡単にみただけでも、あなたがたの「平和共存」路線とモスクワ宣言やモスクワ声明に規定された平和共存の路線のあいだにはいくつかのきわめて重大なくいちがいがあります。この問題を理論的にも政治的にもより深く解明することは、別の機会を待ちたいと思いますが、あなたがたの「平和共存」路線に同意しないというだけの理由で、わが党を平和共存政策の敵対者としてひぼうし、「熱核戦争」の煽動者というレッテルまではりつけたあなたがたの主張が、なんの根拠もない中傷であり、自己の逸脱した路線をわが党におしつけるための口実と非難にすぎないことは、以上にのべたことだけでも、きわめて明らかです。

 (六)国際民主運動における共産党の戦術

 あなたがたは、第四の理論問題として、国際民主運動における共産党の戦術の問題、あるいは「平和と民主主義の旗をかかげているすべての勢力と運動にたいする共産党の政策」の問題をもちだし、「日本共産党の代表者たちが国際民主団体のなかでおしすすめている路線」について、口をきわめて非難しています。そして、この非難は、主として分裂主義およびセクト主義という二つの角度からおこなわれていますが、国際民主運動におこっている事態を冷静に検討しさえすれば、この非難が的はずれのものであることは、だれの目にもあきらかになります。これらの非難は結局は、反対に、あなたがたが「国際民主団体のなかでおしすすめている路線」の誤りを暴露しているにすぎないのです。

 (1)分裂主義という非難に反論する

 第一の分裂主義という非難についてみてみましょう。あなたがたは、中国代表団と協力して「国際民主団体の分裂」をはかっているということで、わが党を攻撃しています。

 「周知のように、最近日本の同志たちは、世界平和評議会、世界労働組合連盟、国際民主婦人連盟その他、権威ある国際民主団体の分裂をねらう中国代表団の行動を、あらゆる手段でたすけています。」

 あなたがたは、ここでもまた、国際共産主義運動や国際民主運動のなかで自主独立の立場を堅持している党や代表団を、あなたがたに追随しなかったというだけの理由で、逆に中国共産党や中国代表団に追随する勢力として中傷するお得意の論法に訴えています。こうした侮辱的非難は、問題を解決するうえではなんの役にもたちません。もしあなたがたが、その書簡のあちこちで強調しているように、国際共産主義運動の不団結を克服し、両党間の関係を改善することを真に希望するならば、このような他党への根拠のない中傷はいっさいつつしむよう忠告します。
 あなたがたが、「国際民主運動の分裂」をはかったといって、わが党を攻撃するにあたって、最初にあげている具体的事実は、一九六二年七月に開かれた「全般的軍縮と平和のための世界大会」において、日本代表団も大会決議に賛成投票をしたのに、大会がおわると「日本共産党の出版物は、大会の決議に砲火をあびせかけた」ということです。この点についてあなたがたの書簡はこうのべています。

 「たとえば、一九六二年七月二十七日の『アカハタ』には、モスクワから帰った内野日本共産党中央委員会書記局員の論文が発表されましたが、この論文では、世界人民へのよびかけが『平和の敵を明確にしていない』といって非難されており、『よびかけ』は『日本にとって、それはうけいれることができない』とのべられています。
 周知のように、全般的軍縮と平和のための世界大会は侵略的帝国主義層と積極的にたたかうよう訴えた世界人民へのよびかけだけでなく、平和闘争の具体的な道をしめし、戦争の危険な根源をあきらかにした一連の文書もまた採択しているのです。これらの文書は、南ベトナムと南朝鮮をふくむ東南アジアにおけるアメリカ帝国主義の侵略行為を非難し、主として米、仏、英に所属する在外軍事基地の取りはらい、軍事同盟の解散、外国軍の引きあげ、その他の要求をだしていました。大会では、東南アジアにおけるアメリカの軍事行動の停止、日本(沖縄をふくむ)、タイ、ラオス、南ベトナム、台湾、南朝鮮からのアメリカ将兵の即時撤退をよびかける勧告が採択されました。
 このような決議を採択した大会をどうして非難することができるでしょうか。この諸決議は事実、帝国主義の軍事的侵略反対、諸国人民の自由と独立の抑圧反対、民族解放運動の支持をめざす闘争へと、世界の全民主的世論、すべての進歩的な反帝勢力を動員することを目的としたものではありませんか」(ゴシックは引用者)

 この非難は、歴史的事実の二重三重の書きかえにもとづいています。
 まず、あなたがたが「大会決議に砲火をあびせかけた」ものとして問題にしているわが党の内野竹千代同志の論文「『軍縮と平和のための世界大会』に出席して」(一九六二年七月二十七日付「アタハタ」、なお翌二十八日付「脱落補正」(参照)は、モスクワ大会の全体としての意義と性格、日本代表団の活動とその「報告と提案」の内容、大会の討議の内容、「世界の諸国民へのメッセージ」が一定の積極的意義をもちながら一連の弱点と限界をもったものとならざるをえなかった事情、第八回原水禁世界大会を前にした日本の平和運動の独自の任務などについて論じたもので、大会決議日本の平和運動の関連については、正確に引用すればつぎのようにのべています。

 「平和運動の遅れた部隊と進んだ部隊、なが年の経験をもつ国と、これからはじめようとする国とを統一して強大な平和戦線をきずくため、この大会の『メッセージ』は、進んだ部隊、経験のある国にとっては、必要な譲歩であり、やむをえない妥協だったのである。したがって、日本にとっては、この『メッセージ』の段階でふみとどまっているならば適切なものではない。だからといって、これを軽視し、その価値を低めてはならない。これで日本のたたかいが世界のたたかいと結びつくのであるから――」(ゴシックは引用者)

 いま引用した内野同志の文章を全体として読むならば、これが、平和運動の国際的な団結への真剣な配慮から「世界の諸国民へのメッセージ」のもつ意義をみとめつつ、あわせてその限界性を指摘し、日本の平和運動は、日本の具体的な情勢にもとづき、さらに前進した立場にたつことによって、日本における独自の任務と責任をはたさなければならないことを示したものであることは明瞭です。この文章が、「大会の決議に砲火をあびせかけた」ものであり、大会を「非難」したものであり、世界平和評議会の「分裂」をはかった文章だなどとどうしていえるのでしょうか。
 さらに、あなたがたは、わが党への攻撃をきわだたせるために、モスクワ大会の歴史をも書きかえ、この大会を実際とはまったくちがった姿にえがきだして、モスクワ大会には内野同志が指摘したような限界や弱点がまったくなかったかのように主張しています。  たとえば、あなたがたは世界大会が採択した「世界の諸国民へのメッセージ」を、「侵略的帝国主義層と積極的にたたかうよう訴えた」よびかけとして特徴づけています。だが、日本代表団がその他の多くの代表団とともに、大会決議のなかに「侵略的帝国主義層との積極的なたたかい」への訴えをいれることをつよく主張したにもかかわらず、あなたがたの指導下にある人びとが中心になって極力これに反対し、結局「メッセージ」が、この訴えを意識的にさけて、ただ「いまこそ軍拡競争とあらゆる戦争準備にたいする力強い抗議の運動をおこなうべき時である」(ゴシックは引用者)と抽象的にのべるにとどめられたことは周知の事実ではありませんか。
 あなたがたはまた、「平和闘争の具体的な道をしめし、戦争の危険な根源をあきらかにした一連の文書」の存在を指摘しています。だが、これもまた周知のことですが、モスクワ大会は「世界の諸国民へのメッセージ」以外には、いかなる決議や文書をも採択しませんでした。あなたがたはいったい、どの文書のことを問題にしているのでしょうか。
 たしかに、世界大会のすべての関係文書のなかには、あなたがたが列挙した帝国主義の戦争政策に反対する具体的な諸要求を重視し、「平和闘争の具体的な道をしめし」た文書は存在しています。とくに、第三分科会(軍縮と民族独立)に提出された第二小委員会報告書「外国軍事基地と軍事ブロック」は、「南ベトナムと南朝鮮をふくむ東南アジアにおけるアメリカ帝国主義の侵略行為を非難」したのをはじめ、あなたがたが数えあげている具体的な要求と勧告をすべてふくんだ、きわめて重要な文書です。もし、あなたがたが、この文書の存在をもって大会の限界をおおいかくせると考えたのだとしたら、これまた、あなたがたのはなはだしい見当ちがいだといわなければなりません。なぜなら、日本代表団が、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの多くの代表団とともに、これらの文書を大会の公式文書として採択することを強く要求したのにたいし、これにあくまで反対したのはやはりあなたがたの指導下の人びとであり、結局、この報告書「外国軍事基地と軍事ブロック」は、大会で採択になるどころか、大会総会には報告さえおこなわれなかったし、その内容の一部をふくんだ第三分科会報告も、たんなる報告としてあつかわれ、大会の公式文書として採択されず、その内容を大会の「メッセージ」のなかにとりいれることさえおこなわれなかったからです。
 これは、だれも消し去ることのできない事実であります。結局、いまあなたがたが、モスクワ大会の欠陥をかくすためにこれらの文書を引用しなければならなくなったことは、当時のあなたがたの代表の態度の誤りをあなたがた自身が認め、この大会にたいしてわが党の内野同志の論文があたえた評価の正しさを、あらためて証明するものでしかないのです。
 ところが、あなたがたは、世界大会当時には、あなたがたの代表がこれらの文書の採択に反対したことには口をぬぐって、今日では、大会がこれらの文書を採択したかのように歴史を書きかえ、しかも当時、大会の限界性を正しく指摘した人びとを攻撃する武器として、これらの文書を使おうとしているのです。
 このようなやりかたを、いったいなんとよんだらよいのでしょうか。
 このように、モスクワ大会をめぐるすべての事実は、「国際民主団体の分裂」をはかったなどというあなたがたのわが党への非難が、まったくなんの根拠もない中傷のための中傷であることを、疑問の余地なく示しています。こうしたやりかたはあなたがたの名誉を傷つけるだけで、他のだれをも傷つけることができないことを指摘しておかなければなりません。
 「国際民主団体の分裂」に関連して、あなたがたがわが党のもう一つの具体的罪状としてあげているのは、一九六三年十二月の国際民婦連ビューロー会議で、日本の代表が、同年六月の世界婦人大会について一定の批判をおこなったということです。
 この非難をきいて、われわれがまず理解に苦しむのは、国際民主団体とそれに加盟している日本の民主団体との関係に属するこの種の「苦情」を、あなたがたが一方的に公表したわが党中央委員会への書簡でもちだしていることです。もちろん、自国の民主運動の先頭にたってたたかい、その指導に一定の責任をおっているマルクス・レーニン主義党として、国際民主運動やそのなかでの共産主義者の行動や政策についても、両党が話しあうのは必要かつ有益なことです。だが、ソ連共産党中央委員会が日本共産党中央委員会あての文書で、日本の民主団体の代表が国際民主団体の執行機関でおこなった発言について、公然と名ざしで、しかも事実に反した非難をくわえるなどということは、国際民主運動に参加している共産主義者のとるべき態度とはいえません。
 われわれがさらにそれ以上に理解に苦しむのは、あなたがたが、国際民婦連ビューロー会議で日本の代表が世界婦人大会の運営その他について一定の批判をくわえたことをもって、ただちに国際民主婦連盟の「分裂」に通じる行為だとみなしていることです。いったい、あなたがたは、国際民主運動の参加者は、自分たちが参加した集会や運動の弱点、欠陥、誤りなどについて、国際民主団体のしかるべき機関で意見をのべる権利を奪われているとでも思っているのでしょうか。それともあなたがたは、そうした権利をもっているのは、あなたがたをはじめ一部の「えらばれた人たち」だけで、その他の参加者は、あなたがたの指揮のもとに、一部の指導者たちのやることに拍手だけを送っていればよいとでも思っているのでしょうか。
 われわれは、わが党中央委員会からソ連共産党中央委員会への返書としてのこの書簡の性格からいって、このなかで世界婦人大会などについてあまり具体的に論じる必要はないと思いますが、この大会の運営が多くの反民主的な欠陥をもっていたことはすでに周知のことです。ひとつだけ例をあげておきましょう。世界婦人大会にさきだって開かれた国際民婦連ビューロー会議では、大会の統一と団結の配慮から、大会では中印国境問題にはふれないということが決定されていました。ところが、大会の第三日に、インド代表がこの決定を無視して中印国境問題にふれ、中国への攻撃を開始した時、議長団はこの取りきめに反するインド代表の発言をすこしも制止しようとせず、逆にもっぱら不当な攻撃をうけた中国代表からの反論の機会を奪うためにのみ、その権限を利用しました。こうした反民主的な運営の例はまだいくらでもあげることができます。あなたがたは、こうした反民主的な運営を正当に批判しようとする人びとの口を、いつも「国際民主団体の分裂」だとか、「中国への追随」だとかのおどかしで封じようとしていますが、もし日本の民主団体の代表者が、こうしたおどかしに屈して、このような反民主的な傾向を見て見ないふりをするとしたら、それは国際民主運動の統一と団結にたいする責任をなげすてることを意味するでしょう。これらの反民主的な運営をはじめ、国際民主運動内部のさまざまな弱点についてしかるべき方法にしたがって意見をのべ批判をすることは、独立、平等の立場で、国際民主運動に参加している各国の民主団体の正当な権利であり、かつ義務であって、どんなおどかしによっても奪うことができないし、放棄することもできないものなのです。そして、日本の代表がこの当然の権利を行使したことをもって、あなたがたが日本の代表を非難できると考えているとすれば、それはまさにあなたがたこそが国際民主運動の団結の原則を理解せず、これを自分たちの排他的な指揮下におくことに熱中して国際民主運動の今日の不団結の最大の根源の一つをつくりだしていることを、あらためて証明することにほかなりません。

 (2)セクト主義という非難に反論する

 つぎに、第二の非難、国際民主運動におけるわが党の路線をセクト主義だとする非難にうつりましょう。あなたがたは、その書簡のなかでわが党の路線を、「すべての政治問題でまだ完全には共産党と意見が合わない人たちを、共同の平和擁護闘争から切りはなし、この人たちに、協力の前提条件として、共産党の綱領的規定に無条件で同意することを要求する」(ゴシックは引用者)路線、あるいは「じぶんたちと腕を組んで戦争の脅威とたたかい、アメリカの軍事基地反対のデモをおこない、核兵器根絶のために努力している人たちをすべて、かれらが共産主義のイデオロギーをうけいれないからという理由で『分裂主義者』よばわりしたり押しのけたり」(同前)する路線として定式化し、「これは、共産主義者の隊列のなかでずっと前に批判された量見のせまい、セクト的な政策であります」といとも簡単に断罪しています。
 だが、このような言葉をきいたら、多少ともわが党の統一戦線政策につうじている人ならだれでも「いったいどこの国の党のことをいっているのか」との疑問をいだくにちがいありません。わが党の綱領は、民主勢力の共同と団結の必要について、つぎのようにのべていますが、これは、国内の統一行動においても、国際民主運動においても、わが党が堅持している統一戦線政策の不動の原則だからです。

 「当面のさしせまった任務にもとづく民主勢力と広範な人民の共同、団結の必要を、世界観や社会主義革命の方法についての意見の相違などを理由としてこばんだり、さまたげたりすることは、祖国と人民の解放の根本的な利益をそこなうものである。」

 あなたがたがこの書簡のなかでしばしば引用しているわが党の七中総決議も、「共同要求にもとづいて統一行動を発展させる」ことが、平和運動その他の民主運動においてわが党が今後とも堅持すべき統一行動の原則的態度であることをくりかえし強調しています。この点には、まったく誤解の余地はないはずです。そして、わが党のこうした方針と態度が、原水禁運動、安保反対闘争、基地反対闘争、日韓会談反対闘争、日中国交回復闘争などをはじめとする平和と独立、民主主義をめざす日本の大衆運動のなかで、思想、信条の異なる広範な人びとを統一行動に結集し、その統一と団結を守るうえで、積極的な貢献をおこなっていることも、事実によって示されています。
 ところが、あなたがたは、国際的にも国内的にも、「共同要求にもとづく統一行動」という統一の原則を堅持しているわが党にたいして、国際的な大衆団体に「共産党の綱領的規定」、「資本主義の打倒、社会制度の変革というスローガン」、「共産主義のイデオロギー」などをおしつけるものだという非難をあびせかけ、わが党をもっとも幼稚な左翼主義「小児病」患者にしたてあげているのです。いったい、あなたがたは、なにを根拠にして、わが党の統一戦線政策にたいして、このような中傷とひぼうをくわえているのでしょうか。あなたがたの書簡によると、そのただ一つの根拠は、わが党が国際民主運動のなかで一貫して、アメリカ帝国主義の戦争と侵略、反動と抑圧の政策にたいする闘争の旗をかかげつづけてきたことにあるようです。あなたがたの書簡は、つぎのようにのべています。

 「モスクワの会談で日本共産党代表団員が一般民主主義運動にたいする問題でのべた考えを要約すると、つぎのようになります。日本共産党は、もし国際民主団体の参加者がみな、諸共産党の綱領的文献にのべられている若干の主要な規定――たとえば、アメリカ帝国主義は国際反動の総元締であり、世界の憲兵であるという規定を無条件に支持するならば、これらの団体のなかでの協力に同意するということです。
 アメリカ帝国主義の役割にたいする共産主義者の評価はまったく正しく、そしてひろく知られています。それは、兄弟諸党会議の文献にも、わが党の二十二回大会で採択されたソ連共産党綱領にも、他の共産党の綱領にも明記されています。しかし共産主義者は、つぎのことを念頭におく義務があります。それは、きわめて広い住民層はいうまでもなく、労働者階級の隊列のなかでさえも、平和擁護の課題や他の一般民主主義的目的の実現をめざすたたかいで、共産党と協力する用意はもっていても、共産党のイデオロギーと政治路線をまだ受けいれることのできない人たちが少なからずいるということです。日本の同志たちは、共産党の活動の綱領的諸問題を討議するためには別の会合が存在していること、国際的な大衆団体はそれとはちがった一般民主主義的な基礎によって組織されたものであり、その存在と活動の意味は民主的な性格をもつ課題の解決をめざしてたたかう点にあるということを、いったい理解していないのでしょうか。」

 第一に、あなたがたは、例によってここでも、モスクワでの会談でのべたわれわれの見解を、わい曲して、意見の対立を実際とは別なものにねじまげています。議事録をみれば明らかなように、この会談でわれわれがのべた立場は、つぎのように要約することができます。
 (1)日本共産党はもちろん、国際民主運動にモスクワ宣言やモスクワ声明の字句をそのまま押しつけることを主張するものではない。国際民主運動の会議に集まってくる非共産主義者の考えを十分に考慮する必要があるのは当然である。
 (2)しかし、共産主義者は、国際民主運動のなかで、侵略と戦争の主勢力であるアメリカ帝国主義とたたかう方向で、団結しうるいっさいの勢力を団結させるために奮闘しなければならない。これこそモスクワ宣言とモスクワ声明の根本精神であり、国際民主運動のなかで共産主義者がはたさなければならない重大な責務である。
 (3)現在、国際共産主義運動の一部には、「幅広い統一」を口実にして、共産主義者が国際民主運動のなかでアメリカ帝国主義との闘争の旗をかかげることに反対する意見が生まれているが、共産主義者がはじめから共産主義者としての見解をのべることをやめ、非共産主義者を説得することを放棄し、さらにはアメリカ帝国主義との闘争の旗をかかげるものを攻撃することは、まったくまちがっている。
 あなたがたは、われわれのこの見解に反対しました。つまり、国際民主運動内での共産主義者の戦術についてのあなたがたとわれわれのあいだの意見の対立点は、あなたがたがねじまげているように、国際民主運動に共産主義のイデオロギーや社会制度の変革という革命的課題をおしつけることが正しいかどうかとか、アメリカ帝国主義は「世界反動の元凶」であり、「国際的憲兵」であるというモスクワ声明の規定の文字どおりの承認を民主勢力の統一行動の前提条件とすることが正しいかどうかなどという点にあったのではありません。それは、共産主義者が国際民主運動の内部で、アメリカ帝国主義の戦争と侵略の政策と具体的に対決する戦闘的、民主主義的な旗をかかげ、その方向で非共産主義者を説得し、もっとも広範な人びとをアメリカ帝国主義の戦争と侵略の政策に反対する統一行動、統一戦線に結集するよう奮闘することが正しいか、それとも「幅広い統一をまもる」という理由ではじめからそうした主張を放棄してしまうことが正しいかという点にあったのです。そしてわれわれはこの旗をかかげることを主張し、あなたがたはわれわれのこの主張に反対したのです。これは議事録にも明記されていることで、誠実に論争をつづけようとするのだったら、この真の対立点を回避したりあいまいにしたりすることは許されません。
 第二に、あなたがたは、書簡のなかで、自分たちの立場を合理化するために、おどろくべき論拠をもちだしています。それは、アメリカ帝国主義との闘争というスローガンは、社会制度の変革などのスローガンと同じように「共産党の綱領的規定」に属するものであって、これは一般民主主義的目的の実現をめざす、国際民主運動とは無縁なスローガンだという主張です。
 あなたがたは帝国主義の戦争と侵略の政策、民族抑圧と反動の政策に反対してたたかう任務は、一般民主主義運動の課題ではなく、資本主義打倒その他と同じ性質の共産党の綱領的課題だと思っているのでしょうか。たとえば平和擁護闘争の本質が、帝国主義の侵略と戦争の政策に反対する闘争であり、それが帝国主義打倒をめざす革命運動とはちがった、民主主義的運動であることは明らかではないでしょうか。わが党の第七回党大会における「綱領問題における報告」は、この点につき、はっきりとつぎのようにのべてこのことを区別しています。

 「今日の平和擁護闘争は、いうまでもなく、帝国主義の戦争政策に反対する闘争であり、きわめて広範な人民の戦争反対の要求にねざしてはいるが、戦争の根源である帝国主義そのものを転覆するための闘争ではない。」

 一般民主主義的課題と革命運動との課題を混同しているのは、われわれではなくてあなたがたです。あなたがたは、帝国主義の戦争と侵略、抑圧と反動の政策とたたかうという、今日の国際民主運動の中心的任務を、それは革命運動の課題だという理由で、国際民主運動から追放してしまおうとしているのです。
 さらにあなたがたは、モスクワ宣言とモスクワ声明、あるいはあなたがたの党の綱領などが、アメリカ帝国主義は「世界の人民の敵」であり、「国際反動の主柱」であるなどと規定してあるのは、主として共産主義者が党内だけで討議したり、論争用に引用したりするための規定であって、国際民主運動において広範な非共産主義者大衆の前にはもちだしてはならないものと思っているようです。
 だが、このような議論をきくと、この問題でもあなたがたが「一九五七年の宣言と一九六〇年の声明にのべられている国際共産主義運動の合意の路線」なるものをどう理解しているのか、きわめて疑問になってきます。モスクワ宣言とモスクワ声明は、社会主義革命を達成するためだけではなく、平和、独立、民主主義、生活向上などの一般民主主義的課題、なかんずく世界平和をまもるという課題をはたすためにこそ、「世界反動の主柱」であり、「侵略と戦争の主勢力」であるアメリカ帝国主義との闘争に、もっとも広範な人民、いっさいの平和、民主勢力を結集しなければならないと、一点の疑問の余地もなくのべているのです。

 「世界平和を維持するためには、アメリカ帝国主義に鼓舞される侵略と戦争の帝国主義的政策とたたかう平和擁護者のもっとも広範な統一戦線が必要である。」(モスクワ声明)

 さらに、一九五七年と一九六〇年の共産党・労働者党会議が、直接世界の人民によびかけた「平和のよびかけ」と「世界各国人民へのよびかけ」も、アメリカ合衆国をはじめとする帝国主義国の政府、支配者集団が平和の敵であることを明示し、帝国主義者の戦争と侵略の政策に反対する闘争全世界の平和愛好勢力に訴えています。
 もし共産主義者が、この方針に大衆的支持を獲得し、それを国際民主運動や世界平和運動の方針のなかに生かすために奮闘しなかったとしたら、いったいだれが、この方針を主張し、この方向を生かすためにたたかってくれるでしょうか。
 たとえ自分たちの党の綱領に、アメリカ帝国主義の侵略的行動やそれとの闘争の意義を言葉のうえで書きこんでいても、世界平和運動やさまざまの国際民主運動のなかで、また国内のさまざまの民主運動のなかで、アメリカ帝国主義の戦争と侵略の政策を暴露し、これとの闘争の旗をかかげる任務を放棄し、それどころか、他国の共産主義者や非共産主義者がアメリカ帝国主義との闘争の旗をかかげるのを躍起になって阻止しようとし、はては、アメリカ帝国主義の「平和共存」政策への転換などを宣伝してまわる共産主義者が、モスクワ声明とは正反対の立場にたち、「国際共産主義運動の合意の路線」をなげすてたものであることは明瞭です。そして、こうしたアメリカ帝国主義との闘争回避の路線が、中立主義者や平和主義者によってではなく、一連の国の共産党員の手で国際民主運動のなかにもちこまれ、多くの国際民主団体を、その団体がいままで堅持してきたアメリカ帝国主義を先頭とする帝国主義陣営の戦争と侵略の政策に反対する立場から転換させ後退させようとしているところに、国際民主運動の最近の不団結と混乱のもう一つの大きい根源があることは、まぎれもない事実です。あなたがたがわが党を「セクト主義」とか「分裂主義」とかいって非難することは、あなたがたもその重大な責任を負っているこの事態の本質をいんぺいするものだとしか、考えられません。

 (3)国際民主運動の統一と団結

 実際、とくに昨年七月に米英ソ三ヵ国間に部分核停条約が締結されて以後、国際民主運動のなかでのあなたがたの活動は、ほとんど常軌を逸したものとなりました。あなたがたは、世界平和評議会、世界労連、国際民婦連、国際民主法律家協会、世界科学者連盟など、ほとんどあらゆる国際民主団体に、部分核停条約支持などの特定の政治的立場、われわれがこの返書であきらかにしている誤った政治的立場をおしつけようと画策し、これらの団体の統一と団結をますます困難にしました。
 あなたがたはまた、日本の原水禁運動にたいしても部分核停条約支持を押しつけようとし、昨年の第九回原水禁世界大会でこれに失敗すると、こんどは原水禁運動の破壊と分裂のために狂奔している反共右翼社会民主主義者や反党修正主義者と手をにぎり、その分裂策動に参画するという恥ずべき道を歩みはじめました。そればかりかあなたがたは、第十回原水禁世界大会を破壊し、国際的にも国内的にも重要な意義をもっている日本の原水禁運動を分裂させるために、国際的な規模で大大的に分派活動を組織することさえあえてしたのです。すなわち、あなたがたは、第十回原水禁世界大会に反対するための分裂集会に公然とした支持を表明しただけでなく、日本の右翼社会民主主義者をけしかけ、そそのかし、この分裂集会を「正統的」なものであるかのように国際的にみせかけ、あなたがたの意見をうけいれる人びとを国際的に動員してこの分裂集会を「成功」させるために、積極的に活動しました。これは周知のことですが、これが平和運動、民主運動にたいする国際的な分派活動であり、分裂活動であることは、まったく反駁の余地のないところです。  こうした事態は、「国際民主団体の分裂をねらう」とか「量見のせまいセクト的な政策」とか特定の政治的立場の押しつけとか、あなたがたがわが党に投げつけた非難の言葉は、実はあなたがた自身にふさわしいものであって、あなたがたこそが、国際民主運動の今日の不団結と困難とにたいする最大の責任者であることを、ますます広範な人びとのまえに明らかにしました。
 これにたいして、わが党は、日本の民主団体の多くの活動家と協力して、国際民主運動の内部で、それぞれの分野に応じたさしせまった民主的課題での一致をかちとり、それをもとにして共同行動をすすめるという統一の原則を守って、国際民主運動の真の団結のために奮闘してきました。すでにお知らせしたように、われわれは、こうした立場から六月二十日の中央委員会幹部会声明において、国際民主運動の団結を回復し、前進の道をきりひらくための積極的提案をおこないましたが、ここでもう一度この提案をくりかえしたいと思います。この提案は、国際共産主義運動内部の論争問題についてちがった意見をもっていても、本当に国際民主運動の現状を憂慮し、その団結と前進を願っているすべての共産主義者にとってうけいれるものであり、国際民主運動の団結のための有力な基礎となりうるものであることを、われわれは確信しています。

 「国際共産主義運動内部の意見の相違にもとづく不団結は、国際民主運動の内部にも困難をもたらしているが、この分野でもある立場や見解を多数決で押しつけることをやめ、意見のちがう問題については、討論するにしても、各国の共産主義者がモスクワ宣言と声明で明示されているようなアメリカ帝国主義への統一的な認識にもとづいて、それぞれの大衆運動の分野の性質に応じて一致点で共同行動をすすめるという態度をとるならば、前進の道がひらけるのである。わが党員と日本の進歩的活動家たちは、あらゆる国際民主団体の会議でくりかえしてのことを主張してきた。また昨年の第九回原水爆禁止世界大会で実際に証明されたように、もしもこのような道理にかなった方法がとられるならば、国際共産主義運動で一連の原則問題についての論争がつづけられる状況のもとでも、国際民主運動の会議は、実際に一定の団結を維持しながら前進できるのである。
 こうした努力をしようとせず、あくまでもある立場や見解、とくにモスクワ声明に明らかに違反するアメリカ帝国主義美化の方針をおしつけようとするならば、国際民主運動もまたますます無力なものになり、不団結を克服することがいっそう困難になり、アメリカ帝国主義者をはじめ戦争と侵略と反動の勢力をいたずらによろこばす結果になる」(日本共産党中央委員会幹部会『各国共産党の国際会議は、分裂のためでなく、真の団結のためにおこなわれるべきである』一九六四年六月二十日)。

 (七)日ソ両党の正しい団結のために

 われわれは、以上、あなたがたが一九六四年四月十八日付の書簡で提出した問題について、さしあたって必要最小限の範囲で答えました。
 あなたがたは、その書簡のなかで、「反帝、平和、民主主義、社会主義をめざす現代の闘争条件において、わが両党がたがいに関心をもっている他の一連の問題」もふくめて、「ソ連共産党中央委員会は、兄弟的協力と国際主義的連帯の精神で、これらすべての問題を討議する用意があります」とのべています。
 わが党は、すでに一九五八年の第七回党大会の以前から、第八回党大会をへて今日にいたる期間に、内外の修正主義者との闘争のなかで、アメリカ帝国主義にたいする評価、戦争と平和、平和闘争と民族独立闘争、平和共存と全般的軍縮、革命の平和的移行と非平和的移行、構造改革など、一連の諸問題について積極的な見解を発表し、国際的にも一定の積極的な役割をはたしてきました。七中の決定にもとづいて発表された一九六三年十一月十日付の「アカハタ」主張「国際共産主義運動の真の団結と前進のために」にも明確にのべられているように、国際共産主義運動の内部で論争されている諸問題についてさらに全面的かつ積極的に究明し、国際共産主義運動の政治的理論的団結に貢献することは、わが党の基本的な方針であります。

 「われわれは、マルクス・レーニン主義の原則とプロレタリア国際主義を守りぬく立場、モスクワ宣言とモスクワ声明の革命的原則をつらぬく立場、アメリカ帝国主義と日本反動勢力と徹底的にたたかいぬく立場から、国際的に論争されている諸問題について、党中央委員会の指導のもとで、自主的にいっそう深く、いっそう全面的に究明する仕事を今後さらに積極的に果たさなくてはならない。こうして、国際共産主義運動のより高い政治的理論的団結に貢献するという積極的努力をつよめるものである。」

 われわれは、こうした積極的努力の一環として、両党間の団結の強化のためだけでなく、国際共産主義運動全体の利益を守る見地から、日本共産党とソ連共産党とのあいだで意見の不一致が存在する問題、国際共産主義運動内部で不団結をひきおこしている一連の政治上、理論上の原則的諸問題について、今後も必要な方法であなたがたと討議する用意があります。
 われわれが以前から明らかにしており、また最近では一九六四年六月二十日の中央委員会幹部会声明「各国共産党の国際会議は、分裂のためでなく、真の団結のためにおこなわれるべきである」で重ねて明らかにしたように、国際共産主義運動全体の真の団結は、マルクス・レーニン主義の原則とプロレタリア国際主義、モスクワ宣言とモスクワ声明の革命的原則にもとづき、各兄弟党の独立と平等にもとづいてはじめて、かちとることができます。そして、国際共産主義運動のこうした真の団結をかちとる過程においても、アメリカ帝国主義を先頭とする戦争と侵略、反動の勢力との効果的な闘争、国際的な平和、民主運動の効果的な統一を十分考慮して、国際共産主義運動内部の意見の相違によって帝国主義勢力を利することをできるだけ防止するために、当面の諸条件のなかで、共通の目的をめざすたたかいでの共同の行動をかちとる努力が必要です。わが党は、論争によって真理を追求しながらも、アメリカ帝国主義を先頭とする戦争と侵略の勢力の手をしばるという点で、各国共産党・労働者党間の当面の行動の統一を実現し強化することは、国際民主運動の団結のためにも、マルクス・レーニン主義の原則にもとづく国際共産主義運動の真の団結をかちとるためにも、必要なことであると考えています。
 われわれは、日本共産党とソ連共産党とのあいだにある意見の不一致点の克服と、両党間の団結の強化についても、マルクス・レーニン主義の原則とモスクワ声明が規定した各兄弟党間の関係の基準にもとづき、独立と平等の基礎のうえに立って、すべての必要な努力をおこなう決意をもっていましたし、今日ももっています。
 あなたがたの書簡は、「ソ連共産党は、共産主義者の統一という神聖な原則にもとづいて、最大限の責任感と最大限の忍耐力、共産主義者の隊列を団結させるための最大限の配慮を発揮して、世界共産主義運動内の意見不一致の除去と克服のために、できる限りのことをおこなってきましたし、いまでも、おこなっています」とのべています。こうした態度は、われわれもまた一貫して主張してきたことで、われわれはあなたがたがどんな場合にも、その原則的態度にしたがって実際に行動することを希望します。ところがあなたがたは、四月十八日付の書簡でこのような態度を表明しておきながら、七月十一日付の書簡では、つぎのようにのべて、これらの書簡を一方的に公表しました。

 「日本共産党指導部に対しソ連共産党中央委員会が四月十八日付の手紙――その中でわれわれは詳細に同志的に両党間の関係改善についてのわれわれの見解と提案をのべている――を手交してのち、すでに三ヵ月たったがしかしなんらの回答もよせられていません。この期間に日本共産党中央委員会の八中絵がおこなわれました。この間に発表された日本共産党中央委員会の文献およびその他の文書から判断するに、中央委員会においても、中央委員会幹部会においても、ソ連共産党中央委員会の手紙は討議されていません。ソ連共産党中央委員会は、日本共産党中央委員会の同志たちに送ったこの手紙が故意にかくされていることに同意することはできません。」

 われわれは、あなたがたに、おたずねしたいと思います。あなたがたが四月十八日付の書簡で誓った「最大限の忍耐力」とは、わずか二ヵ月半の期間しか待てないものなのですか。あなたがたの「最大限の責任感」や団結のための「最大限の配慮」とは、広範な理論問題をふくんだ長文の論文である「書簡」を送っておき、二ヵ月半たって返事がこないからといって、その理由を問い合わせることもせず、一方的に「故意にかくされている」と独断的に認定して、わが党におくられた非公然の文書を、わが党にたいする一方的通知だけで、突然発表する程度の責任感や配慮しか意味していないのですか。あなたがたは、あなたがたの書簡が、われわれにとって、なにか特別畏怖すべきものであり、われわれが「故意にかくさ」なければならないような内容をふくんでいるとでも思っているのでしょうか。もしそうだとしたら、それは大きな思いちがいであり、なんの根拠もないうぬぼれにすぎません。現に、あなたがたがその書簡を「タス通信」その他で一方的に公表すると、ブルジョア商業新聞、商業雑誌はいっせいにこれを報道し、反党修正主義者の内藤一派をはじめあなたがたが育成とれつとめてきた志賀一派も、待っていましたとばかりにかれらの機関紙にその全文を転載し、この書簡が契機になってわが党のなかに動揺がおきることを大いに期待しました。だが、わが党の動揺を期待した人びとの目算はみごとにはずれました。あなたがたの書簡の公表は、日本共産党中央委員会を中心とした全党の団結にほんのわずかの影響をもあたえることはできず、圧倒的多数の同志が国際共産主義運動の問題やソ連共産党との関係の問題についてのわが党指導部の措置を支持しています。  われわれの検討が当然一定の時日を要し、返事をまだ出していなかった理由は、七月十五日付のソ連共産党中央委員会あての返書でのべましたから、ここではくりかえしません。さらに、七月十五日付の返書で明確に指摘しておいたように、もともと、わが党の指導部があなたがたの書簡を、いつどのような方法で処理するかということは、わが党の内部問題であって、あなたがたからあれこれと指示を受けるような筋あいの問題ではまったくないのです。
 もしあなたがたが「最大の忍耐力」といいながら、これほど性急であり、「最大限の配慮」といいながら、これほど軽卒であり、「最大限の責任感」といいながら、これほど無責任な態度をとるとすれば、あなたがたが、いくら書簡のなかで、ソ連共産党指導部は「意見の不一致を一歩一歩ととり除き、ソ連共産党と日本共産党の兄弟的友好の強化のために必要なことをすべておこなっていく」という「共産主義者にとって唯一の正しい道」に立っているのだと強調しても、その言葉を額面通りにうけとることはとうていできません。あなたがたのこのような態度は、両党間の不一致点を、原則にもとづいて正しく解決しようとするものの態度ではなく、さきにのべたように、わが党に打撃をあたえ、わが党をあなたがたの指揮下に追従する党に変えるのに有利な動揺をひきおこすことを真の目的とする人びとだけがとる態度です。
 事実の経過は、あなたがたの意図をよく実証しています。あなたがたの四月十八日付の書簡と七月十一日付の書簡という二つの書簡の内容と、その一方的公表にいたる経過をみるとき、またこの期間が、わが党が党規律の重大な違反によって除名した志賀義雄らの党破壊活動の公然たる支持と激励に、あなたがたが踏みだした時期とかさなっていることをみるとき、あなたがたの意図がどこに向けられているかを判断することは、だれにとってもそれほどむずかしいことではありません。
 あなたがたは四月十八日付の書簡のなかで、わが党代表団との会談について、「ソ連共産党中央委員会は、日本共産党代表団との会談によって相互理解に達し、われわれ両党の関係の悪化をくいとめることができると期待し、この会談を重く見ていました」などと書いています。ところが、あなたがたは、モスクワで両党会談をおこないながら、他方では秘密に、すでにそれ以前からはじめていた志賀義雄らとの連絡をつよめ、かれらの反党行為を援助する分裂策謀にのりだしていたのです。そして、あなたがたは、わが党代表団の帰国も待たずに、両党会談におけるあなたがたの発言をおもな内容とした長文の四月十八日付の書簡をわが党中央委員会に送りつけておき、五月十五日に志賀義雄が国会における部分核停条約の批准採決に際して、党の決定に反して賛成票を投ずるや、ただちに、いっせいに「日本向けモスクワ放送」、「タス通信」、「プラウダ」などをつうじて、部分核停条約にたいするわが党の態度を公然と非難し、志賀らの党破壊活動を公然と支持する解説や報道を系統的に発表しはじめました。
 つづいてあなたがたは、「一方において日本共産党指導部がソ連共産党にたいする攻撃を強化し、他方においてソ連共産党との間に発生した意見の相違を除去するために何らの措置をもこうじようとせず、この問題についてのわれわれの同志的提案の討議をさけており、さらにわれわれの書簡にこたえることを必要とさえみとめていない」と独断的に認定した七月十一日付の書簡をわれわれに送りつけてきました。こうして、あなたがたは、「日本の共産党の若干の指導者がとりつつある政治的立場は、まず第一に日本の共産党員に重大な困難をまねくおそれがある」とか、「日本共産党の指導的同志」の「思想的理論的構想」は「労働者階級のイデオロギーであるマルクス・レーニン主義に離反」しており、その「政治路線」は「国内の客観的条件と日本の進歩勢力の課題に離反」し、「はえある日本の労働者階級がすでにたたかいとった、すくなからぬ獲得物を攻撃の危険にさらして、日本国民が自国の偉大な、うるわしい未来のためのねばりづよい闘争で緊急に必要としている団結労働運動と民主運動の団結を破壊する」などといって、日本共産党の方針と活動の全体にきわめて重大な非難をあびせた書簡を公表する一方で、同時に「プラウダ」七月十六日号では、志賀、鈴木らが発行しはじめた週刊紙「日本のこえ」を、麗々しく写真入りで紹介し、「愛国者、人民の忠実な息子、国際主義者、平和、民主主義、社会主義の事業の献身的な活動家の新しい戦闘的な機関紙が誕生した」と最大限の賛辞をささげたのです。
 さらにあなたがたは、四月十八日付の書簡のなかでは、日本共産党が「大衆から浮きあがり、孤立状態におちいる」おそれがあるとか「党はますます孤立してゆき、階級敵を喜ばす」心配があるとかいって、いかにもわが党の運命を心から同志的に「憂慮」しているかのようによそおいました。ところが、実際の行動においては、原水禁運動をはじめさまざまな民主的大衆運動の分野で、これらの大衆運動の路線を「親帝国主義」の方向にねじまげるだけでなく、わが党に打撃をあたえ、わが党を大衆から孤立させるために、社会党、総評の一部の反共的右翼社会民主主義者や反党修正主義者と緊密な連絡をとって、あなたがたの指導下のその他の外国勢力まで総動員して、第十回原水禁世界大会にたいする分裂策動を計画的に準備し、実行したのです。原水禁運動の分裂策動への国際的「援助」を組織するために、ソ連、ヨーロッパに派遣された総評政治局長安恒良一氏は、帰国後、1第十回原水禁世界大会に対抗していわゆる「被爆三県連絡会議」による「分裂」大会をひらくという自分たちの計画が、ソ連平和委員会その他から「正統的なものであり、運動の正しい進め方である」と評価され、全面的な支持をえたこと、旧ソ連平和委員会は分裂集会に「強力代表団」を送ることを約束したが、もし同時に第十回原水禁世界大会にも参加するとしても、それは「なぐりこみ」をかけること、つまり大会の破壊とかく乱を目的としたものであることなどを、誇らしげに報告しました(一九六四年六月二十一日付「社会新報」)。この報告の真偽はわれわれの知るところではありませんが、ゲ・ジューコフ同志を団長とするソ連平和委員会代表団が、安恒氏が報告したとおりの分裂的行動をとり、「プラウダ」や「タス通信」その他まで動員して、第十回原水禁世界大会を、「中国代表団とそのあやつり人形」たちの「北京オペラ」「移動サーカス」だという侮辱的中傷をはじめとするとうてい考えられないような非難を加え、日本の原水禁運動とそれを支持する日本共産党に反対する「広範なカンパニア」をくりひろげたのは、まぎれもない事実です。あなたがたのこうした分裂行動と、日本の大衆運動にたいする侮辱的非難とは、内外の圧倒的多数の代表から強く批判され、世界大会では完全に孤立しました。だが、あなたがたの代表団はその批判を受けいれるどころか、あなたがたが動員した一部の外国勢力とともに、第十回原水禁世界大会から脱落して、「分裂」大会だけに参加し、あなたがたの代表団と反共的右翼社会民主主義者および反党修正主義者との密接なつながりを、全世界の人民と共産主義者のまえにいっそうはっきりと明らかにして恥じなかったのです。
 あなたがたは、三月の両党会談で、日本共産党を攻撃し、これに打撃をあたえるために、社会党その他の勢力を利用し、反共分裂主義者と「提携」する自分たちのこのみにくい計画が批判されると、こともあろうにモスクワ声明における共産主義者と社会民主主義者の共同行動についてのよびかけをもちだしてこれを「正当化」しようとしました。だが、どのような奇弁をもちだしてみても、兄弟党を攻撃するために、その国の反共右翼社会民主主義者や反党修正主義者と「同盟」するという、国際共産主義運動の歴史でもほとんど例をみないあなたがたの恥ずべき分裂活動を、合理化することはけっしてできません。
 われわれはあえてここに、あなたがたの日本の社会民主主義政党との最近の密接な提携とゆ着の関係を承知のうえで、日本の平和運動の分裂策動の組織のためにあなたがたと共同している人びと反共右翼社会民主主義者とよびました。それは、日本社会党が、その綱領で「共産主義を克服」することをその「社会主義」の大前提としてはっきり規定した政党であり、あなたがたが共同している人びとこそは、その社会党のなかでも、共産主義を「克服」する課題を達成するためにもっと熱心に活動してきた人びとであるからです。あなたがたは、この日本社会党の伝統的な反共政策のあらわれである平和運動での分裂主義を、かれらが部分核停条約に賛成しているという理由で支持激励し、かれらと同盟してわが党に攻撃をくわえ、また日本の原水禁運動の分裂を国際化してきました。あなたがたのこうした行動は、アメリカ帝国主義とわが国の独占資本の勢力を大いに喜ばせています。
 あなたがたが自分たちの行動の「正当化」のためにもちだしているモスクワ声明についていえば、モスクワ声明が共産主義者と社会民主主義者との共同を重視しているのは、帝国主義と独占資本の戦争と侵略、抑圧と反動の諸政策に反対し、平和・独立・民主主義・生活向上などのさしせまった諸課題を達成するために、労働者階級と人民の統一と団結をたたかいとろうとする立場からであって、人民の運動の分裂をめざす反共右翼社会民主主義者の反共主義、分裂主義を助長するためのものではけっしてありません。わが党は、人民のさしせまった要求をもとにして、日本社会党をふくむ民主勢力の統一行動、統一戦線を実現するために一貫してねばり強くたたかっていますが、この態度こそ、モスクワ声明の統一戦線の方針に合致したものです。だが、あなたがたの社会民主主義者との「共同行動」は、まさに部分核停条約支持を「踏み絵」にして、日本の原水禁運動を分裂させ、人民の団結を破壊するための「共同行動」です。「社会民主主義政党との統一行動」にかんするモスクワ声明からの引用をいくらくりかえしても、わが国の平和運動、民主運動に不当に干渉し、反共右翼社会民主主義者と同盟して運動をかく乱し、分裂させようとしているあなたがたのこの種の分裂活動を弁護することはできないのです。
 あなたがたの四月十八日付の書簡は、末尾でつぎのようにのべていました。

 「ソ連共産党としては、マルクス・レーニン主義の不動の基礎にもとづき、平等とプロレタリア国際主義の諸原則に立脚し、革命運動の共通の利益を出発点として、日本共産党との関係をこんごとも維持していく用意があります。」

 あなたがたのすべての行動にてらして、この言葉が偽善以外のなにものでもなかったことは明らかです。あなたがたがこの言葉を書いてから、四ヵ月間の行動は、あなたがたが、日本共産党との団結や連帯の強化などについてすこしも真剣に考えておらず、「マルクス・レーニン主義の不動の「基礎」や「平等とプロレタリア国際主義の諸原則」、「革命運動の共通の利益」を、紙くずのように投げ捨て、国際共産主義運動の団結の原則をまっとうから踏みにじって、わが党から除名された一にぎりの恥ずべき変節者どもを全力をあげて援助し、わが党にたいする許すことのできない破壊活動を公然と開始したことを示しています。いまではわれわれは、あなたがたがその四月十八日付の書簡と、七月十一日付の書簡との一方的な公表という非常識な行動に出た意図が、ただ志賀らのわが党にたいする破壊活動と呼応して、かれらを国際的に援助し、わが党を混乱におとしいれ、わが党指導部にたいする党員と人民の信頼を動揺させ、わが党を大衆から孤立させ、わが党指導部の権威をおとしめることにあったと判断する十分な根拠をもっています。あなたがたは、わが党に打撃を与えるためには手段を選ばないところまで、いま、おちこんでいます。
 あなたがたのこのような行動と、両党間の連帯や国際共産主義運動の団結の強化についてのべているあなたがたの言葉とは、絶対に両立することはできません。あなたがたの行動は、まったく弁護の余地のないものであり、あなたがたのこのようなわが党にたいする破壊活動を即刻停止し、共産主義者としてのきびしい自己批判をしないかぎり、あなたがたは、国際共産主義運動の統一や団結について語る資格を失っていると、われわれは考えます。
 こうしてあなたがたは今、日本共産党とソ連共産党との両党間の兄弟的協力の長い歴史になかったような複雑で困難な事態をもたらしつつあります。
 そして、われわれが、とくに重視せざるをえないのは、それが革命によって権力を獲得した労働者階級の党によって、複雑で困難な状況のもとで、帝国主義と反動の暴力的独裁と日夜激しいたたかいをおこなっている資本主義国の党に加えられた、公然とした中傷、攻撃と内部干渉であるということです。しかも、あなたがたは、そのわが党にたいする攻撃を、わが国ではまだ権力が反動勢力によってにぎられているという状態を利用しておこなっているのです。たとえばあなたがたは、報道機関の大部分がアメリカ帝国主義と従属的同盟関係を結んでいる日本の独占資本の支配下にあることを承知のうえで、わが党を非難攻撃したあなたがたの書簡を一方的に公表し、あるいは記者会見をおこない、声明を発表して、反共宣伝の新しい武器を提供しています。これは国際共産主義運動の歴史のなかでも、いまだかつて例を見ないものです。もちろん、わが党は、こうした攻撃をけっして恐れるものではありません。われわれは、あなたがたのこのようなマルクス・レーニン主義をふみにじった、道理にあわないやりかたはかならず失敗するものであることを確信しています。あなたがたが、このような策動に熱中すればするほど、あなたがたのこうした態度の誤りは、日本の革命的大衆の、よりいっそうきびしい批判にあうのは必然です。同時にまた、このような事態が、わが党にたいする攻撃に全力をあげているアメリカ帝国主義と日本独占資本をはじめ、右翼社会民主主義者、反党分子を喜ばせ、その反共主義的な攻撃に手を貸すものとなっている現実は、あなたがたのわが党にたいする非難と攻撃が、まさにマルクス・レーニン主義とプロレタリア国際主義に反し、それにもとづく各国共産党のいっそうの団結をよびかけた、モスクワ宣言とモスクワ声明に反するものであることを、もっとも雄弁に証明しています。
 われわれは、国際共産主義運動の真の団結をかちとるという見地から、あなたがたが、誤った見地をわが党だけでなく他の兄弟党におしつけるいっさいの努力をやめ、わが党にたいする不当な攻撃と干渉をただちに中止し、両党がマルクス・レーニン主義とプロレタリア国際主義にもとづき、モスクワ宣言とモスクワ声明の革命的原則にもとづいて、両党間の固い団結を回復、強化する道に立つことを訴えるものです。
 われわれは、四十年の伝統をもつ日本共産党とソ連共産党の兄弟的協力の関係のこうした悪化が、世界の人民運動の偉大な前進の長い歴史からいえば、あくまで、一時的なものであることを信じてうたがいません。国際共産主義運動のなかに、どんな複雑で困難な事態が一時的に生じようとも、マルクス・レーニン主義の偉大な学説の生命力はかならずその一時的困難を克服できるし、国際共産主義運動は、かならず現在の不団結を克服して、いっそう強力な、いっそうかたい団結をかちとり、新しい勝利に向かう巨大な前進をとげることができるからです。
 わが党は、マルクス・レーニン主義とプロレタリア国際主義をゆるぎなく守り、一九五七年のモスクワ宣言と一九六〇年のモスクワ声明の革命的諸原則を忠実に守って、国際共産主義運動の真の団結と発展のためにたたかうと同時に、わが党へのいっさいの不当な干渉とかく乱のくわだてを断固として粉砕しつつ、独立と平等の基礎に立って、ソ連共産党とのあいだにも、真の団結をうちたてるために、そしてまた、反帝、平和、民主主義、社会主義のための闘争における日ソ両国人民の友好と連帯を発展させるために、今後とも一貫して努力をつづけるものです。
 共産主義者のあいさつをもって

一九六四年八月二十六日

日本共産党中央委員会