日本共産党資料館

新日和見主義との闘争の教訓
「日本共産党第十一回大会第十回中央委員会総会決議」から

 第十一回党大会以来の大衆運動の経験、とくに昨年の新日和見主義との闘争の経験は、大衆運動の正しい発展のためには、各種の反共分裂主義やこれと結びついた日和見主義の潮流との闘争だけでなく、自覚的民主勢力の内部に生まれる日和見主義的傾向との思想闘争が重要であることを教えている。
 大衆運動の分野での最近の思想闘争の主要な教訓は、第一に、情勢評価や運動論の問題での各種の日和見主義的見地のもちこみにたいして、これを政治的、思想的に克服する活動を重視することである。昨年、大衆運動の一部にあらわれた、ニクソンの訪中、訪ソを美化した「緊張緩和論」や、ニクソン・ドクトリンをアジアからの戦略的後退と誤認したアメリカ帝国主義の一路敗北論、それにかわって日本軍国主義こそアジア人民の主敵となったとする「日本軍国主義主敵論」などは、いずれも情勢とその発展方向の誤った評価にもとづいて、アメリカ帝国主義の侵略性を軽視し、日本の平和・民主勢力の闘争を、ベトナム人民支援や日米安保条約廃棄という第一義的な課題からそらせる役割をはたしたものであった。これらの日和見主義的評価や誤った運動論を事実と道理にもとづいて批判し、その影響を一掃することは、大衆運動に特定の政治的イデオロギーをもちこむこととは、まったく別個の問題であり、大衆運動の正しい前進のために欠くことのできない課題である。
 教訓の第二は、日本人民の闘争全体のなかから、せまい意味での大衆闘争だけをぬきだして絶対化し、選挙闘争や議会闘争の任務、党建設の任務、理論・政策活動、宣伝活動の任務などを、この大衆闘争に従属する第二義的課題として軽視する「大衆闘争唯一論」の誤りである。この誤った見地は、新日和見主義のもっとも重要な内容をなすものであったが、第九回中央委員会総会の決定が明確に指摘しているように、総選挙の結果は、第一に、党建設での前進が、わが党の政治的躍進のための不可欠の前提だということを実証した点でも、第二に、選挙という政治戦での党の勝利と躍進が、各分野の大衆運動の発展にあらたな展望をきりひらいた点でも、新日和見主義の誤りにたいする二重の実践的判決となった。
 この「大衆闘争唯一論」は、理論的には、社会の発展についての科学的社会主義の学説――史的唯物論からの根本的逸脱であることが指摘されなければならない。史的唯物論は、階級闘争こそが社会発展の原動力であること、この階級闘争は、理論闘争、政治闘争、経済闘争の三つの側面をもっていることを教えているが、新日和見主義の見地は、この階級闘争の内容から、国家権力をめぐる政治闘争の諸形態や、階級闘争の指導部隊を建設する党建設の闘争などをきりすて、せまい意味での大衆闘争だけをぬきだして、これを「社会発展の原動力」とするという、史的唯物論の一面的な漫画化と結びついていたのである。
 教訓の第三は、大衆運動と政党との関係についての問題である。党は、民主青年同盟のように、「日本共産党のみちびきをうける」ことをその組織の本質的性格の一つとしている特殊な大衆組織をのぞけば、一般的には、大衆団体が機関決定で「特定政党支持」の立場をとることに反対している。しかし、そのことが反対に、大衆団体の運動ではすべての政党を同列視する立場をとるべきだということを意味しないのは、いうまでもない。大衆団体は、その組織の性格からいって、自民党の反動政治およびこれに同調する他党の誤りについて、無批判であるべきだとか、大衆団体の運動では、すべての野党を同列視して、なにが大衆の根本的利益を代表する真の革新の立場であるかを不問に付すべきだなどとすることは、大衆運動を誤った政治的中立主義の道にひきいれることにほかならない。とくに、大衆運動内部での党の活動が、「革新同列論」という誤った見地にとらわれ、真の革新政党はだれかという問題提起を、大衆のあいだで事実にもとづいて日常不断におこなうことをさけるとしたら、それは運動の前進をさまたげる重大な誤りである。
 第四の教訓は、知識人・文化戦線での思想闘争の問題である。党は、これまで各分野での思想・理論闘争を一貫して重視し、各種の反党・反共分子の党攻撃にたいしても、これを徹底的にうちくだいてきたが、知識人・文化戦線では、反党文学者や反共知識人の党攻撃についての軽視があり、これを粉砕する思想・理論闘争がいちじるしくたちおくれていた。中野重治らは、過去の文学的業績を資本として対外盲従と変節の立場を粉飾しつつ、日本共産党への攻撃をつづけているが、わが党の政治的躍進のなかで、知識人・文化の戦線でも、日本共産党の主張と役割をより正確にとらえようとする新しい動きがひろがりつつある今日、これらの変節者たちの役割のみにくさと反動性は、いちだんとうきぼりにされてきている。党は、すでにかれらとの闘争の新しい積極化を実行に移しつつあるが、今後ともこの分野での理論闘争を強化し、科学的社会主義の党の思想的、理論的な影響力を、いっそう確固としたものにするために努力しなければならない。

(「赤旗」一九七三年四月十四日)