日本共産党資料館

クーデター糾弾、チリ人民との連帯の強化を

1973年9月19日 日本共産党機関紙『赤旗』主張

  (一)

 九月十一日、チリ軍部がクーデターによって人民連合政府を暴力的に転覆し、アジェンデ大統領を殺害し、人民連合勢力にたいする武力弾圧を加えていることは、いま、民主主義的自由を回復するためのチリ人民の抵抗と、全世界の民主主義、民族独立を擁護するすべての人びとのはげしい抗議を呼びおこしています。
 報道によれば、クーデターを指揮した陸海空軍司令官と国家警察長官を中心にした軍事評議会は、「自由をとりもどし、憲法を回復する」などと称して、全国に戒厳令をしき、国会を解散し、軍事独裁政権を樹立し、これに反対する共産党員、社会党員をはじめ多数の労働者、学生にたいし、重火器をふくむ武力で攻撃加えています。
 この無法きわまりない暴挙の犯罪的な本質は、この国の民主的制度にもとづいた選挙により適法的に成立した政府を、ファッショ的暴挙によって転覆したという点にあります。どのような理由や口実をもってしても、適法的に成立した民主的政府を暴力によって転覆するということは、絶対に正当化することができません。
 チリの反動勢力は、本年三月の国会選挙で、アジェンデ大統領を適法的に罷免ひめん)するに足る議席をえようとし失敗しました。反対に、人民連合は、この三年間に、三六パーセントから四三パーセントに得票率をのばし、人民連合にたいする人民の支持拡大していることがあきらかとなりました。適法的に人民連合政府を打倒することに失敗した反動勢力は、内戦回避をよびかけた人民連合と広範な世論を無視し、民主主義をふみにじって暴力による政府転覆にのり出したのです。
 この点に関連して重要なことは、チリ反動勢力によるこうした暴挙の背後で、アメリカ帝国主義者が一貫して策動をおこなったことです。アメリカ帝国主義が、CIAなどを使ってアジェンデ大統領の当選以前から妨害活動をおこない、とりわけアジェンデ大統領当選以後、一貫して人民連合政府転覆の策謀を企ててきたことは、すでにアメリカ議会の公聴会などでさえ暴露されています。今回の軍事クーデターについても、アメリカ政府当局が少なくとも四十八時間前に知っていたことや、時をあわせてアメリカの軍艦がチリ沿岸に出動していたという事実は、このファッショ的暴挙の直接の遂行者たちが、アメリカ政府の支持と援助をうけていたことを証拠だてるものです。
 今回のチリの軍事クーデターは、「自由」とか「民主主義」とかを口にしながら、アメリカ帝国主義者と各国反動勢力が、どんな方法で、なにをおこなうかということを示す新たな証拠を提供しました。
 日本共産党は、民主主義的自由、民族独立、そして平和の名において、はげしい怒りをこめて、チリの反動勢力とアメリカ帝国主義者によるファッショ的暴挙糾弾し、共産党と社会党をはじめとする民主勢力にたいする弾圧に厳重に抗議するとともに、民主主義的自由の回復と民族主権の擁護のためにたたかうチリ人民にたいし心からの国際主義的連帯を表明するものです。

  (二)

 アジェンデ大統領を首班とするチリ人民連合政府は、この三年間国会に多数をもたず、経済的にも困難をきわめた状況のもとで、民主主義的手続きを尊重しつつ、アメリカ独占体によるチリ人民にたいする搾取と抑圧の拠点とされてきた銅鉱山、銀行などの国有化や農地改革の推進など一連の民族的、民主的改革をおこない、失業を大幅にへらし、労働者の賃金、年金を引きあげるなど、当面の切実な問題を解決するうえで成果をあげてきました。
 これにたいし、チリの反動勢力は、国会で多数を利用してあらゆる改革法案の成立を阻止するとともに、生産のサボタージュ、生活必需品の買い占めとヤミ市場の組織などをおこない、またアメリカ帝国主義は、チリにたいするアメリカからのいっさいの借款と機械設備などの輸出の停止、銅輸出の妨害などにつとめ、内外からチリの国民の経済生活に混乱をひきおこして中間層を人民連合に反対させるため、あらゆる策動をおこないました。
 「革命的言辞」をろうした「左翼革命運動」(MIR)などの極左勢力による挑発的行動も、アメリカ帝国主義と反動勢力によってこの目的のために利用されました。
 軍事独裁政権は、チリの経済的困難を口実にしてクーデターによる人民連合政府転覆の犯行を正当化しようとしていますが、チリ人民連合政府の政策に弱点があったにせよ、チリ国内で深刻な経済的困難と政治的危機をつくりだした根本的な原因が、アメリカ帝国主義とチリ反動勢力の策動にあったことはあきらかです。
 チリ人民連合政府の成立とその三年間の活動は、統一戦線勢力が選挙で多数をしめて人民の政府をつくるという、平和的適法的手段による政治変革の可能性を実際に証明してみせた点でも、アメリカ帝国主義と売国反動勢力のあらゆる妨害に直面しながら、人民の団結に依拠して民族主権の回復と勤労人民のための一連の改革をなしとげた点でも、チリ人民と世界の解放運動の歴史に不滅の一ページを記録したものです。

  (三)

 いまチリの人民は、暴力的弾圧の困難な条件のもとで、軍事独裁政権に反対し、民主主義的自由の回復と民族主権の擁護のために、不屈のたたかいをつづけています。また民主主義、平和、社会進歩をめざす世界各国人民のはげしい抗議の波が広がっています。軍事クーデターが、たとえ一時的に成功したとしても、全世界の反帝民主勢力に支援されたチリ人民の不屈のたたかいによって、軍事独裁政権は、最終的には失敗の運命をまぬがれることはできないでしょう。軍事力による人民のファッショ的支配は、自由民主主義をめざす圧倒的多数の人民の意思と絶対に両立しえないからです。
 しかし、いまチリの反動的軍部は、軍事クーデターの暴挙に反対してたたかっている労働者をはじめ人民連合勢力を手あたり次第に逮捕し、ただちに処刑しようとしています。チリの反動勢力のこの暴挙を即時停止させ、すでに捕えられ死の脅威にさらされている人びとの即時釈放をかちとることは、さしせまって必要となっています。
 いまこそ、アメリカ帝国主義に支援されたチリ反動勢力のファッショ的暴挙に抗議し、チリの人民を支援する国際主義的連帯行動を強めることは、世界のすべての平和、民主勢力の緊急な国際的任務のひとつです。
 とくに七〇年代の国政革新――広範な革新統一戦線の結成と民主連合政府の樹立をめざしてたたかっている日本の国民と民主勢力にとって、いま、チリ人民への国際的連帯を強める行動を発展させることは、きわめて重要な意義をもっています。
 日本共産党は、民主主義的自由、民族主権、平和を擁護する立場から、日本のすべての国民にたいし、チリの反動勢力の無法な暴挙と、その背後にあるアメリカ帝国主義の陰謀を断固として糾弾し、人民連合勢力にたいする暴力的弾圧の停止と逮捕者の即時釈放を要求し、チリ人民と連帯する世論と行動をひろげることを強くよびかけるものです。