日本共産党資料館

「ポル・ポト=イエン・サリ政権」の虐殺と破壊のあと、民族の自決と幸福のため困難の中で国づくりをすすめているカンボジア人民への連帯と支援をよびかける

1979年6月22日 日本共産党中央委員会常任幹部会

   一

 カンボジア人民の圧倒的多数を結集したカンボジア救国民族統一戦線は、史上類例をみない残虐なポル・ポト=イエン・サリ政権を打倒し、全国土を解放した。一月十日、この統一戦線を基礎として、全カンボジア人民を代表して樹立されたカンボジア人民革命評議会は新しいカンボジア人民共和国の成立を内外に宣言した。
 ポル・ポト=イエン・サリ政権は、二百万人をこえるといわれるカンボジア人民を虐殺し、数百万人を強制移住させて都市を〝ゴースト・タウン化〟し、夫婦や家族を強制的に離散させ、居住、移動や信仰の自由にいたるまで人民の基本的人権を野蛮にじゅうりんした。さらに、無謀きわまる集団化や貨幣廃止などによって農業、工業などすべての経済秩序を破壊し、学校制度の廃止をはじめとして教育、文化そのものを否定する暴政をおこない、カンボジア人民に、はかりしれない苦しみを与えてきた。
 さらに、ポル・ポト=イエン・サリ一味は中国の大国主義的指導部の指図と支援をうけて、不法にもベトナムとの国境線をくりかえし侵犯し、無辜のベトナム人民を多数虐殺し、ベトナム社会主義共和国にたいする大規模な侵略戦争をしかけるにいたった。ベトナム側の断固とした正義の反撃によって、ポル・ポト軍は壊滅的な打撃をうけ、よこしまな意図は失敗に帰し、みずからその命運をちぢめた。
 この暴虐なポル・ポト=イエン・サリ一味を打倒し、カンボジア人民の真の代表者としての人民共和国を樹立したカンボジア人民は、いま、解放のよろこびのなかで、新しい国づくりにとりくんでいる。
 カンボジア人民の新しいたたかいは、なによりも自由と民主的諸権利を回復し、安定した生活と幸福な将来をきずくものであると同時に、ポル・ポト=イエン・サリ一味が不法にしかけた国境戦争を平和的に解決し、独立、同権、内部問題への相互不干渉の基礎のうえに、すべての国との平和、友好関係の樹立をめざすものである。
 平和、独立、民主、中立、非同盟、社会主義をめざすカンボジア人民のこのあらたな努力が、アジアの平和と安全への積極的な貢献となることはきわめてあきらかである。

   二

 崩壊したポル・ポト=イエン・サリ一味にたいし、いま、中国はなお強力な支持をよせ、カンボジアにたいする内政干渉を強化している。日本政府、アメリカ政府もカンボジア人民共和国にたいする無視・敵視政策をつづけていることは重大である。こうした状況のなかで、ポル・ポト=イエン・サリの一味は中国、アメリカ、日本政府などの支持をよりどころに、さまざまな国際的策謀をめぐらし、国際的な「市民権」にしがみつこうとしている。
 重大なことは、日本政府がそのイエン・サリを、すでに過去のものとなった「副首相兼外相」の肩書で、日米首脳会談、東京サミットを前にした二十日、日本に迎え入れ、園田外相との会談をさえおこなったことは、こうした国際的策謀のひとつである。これは、カンボジア人民共和国とカンボジア人民を明白に敵視したものであり、カンボジアにたいする許すことのできない内政干渉であるだけでなく、アジアの平和に逆行するものである。
 わが党は、カンボジア救国民族統一戦線による全土の解放と人民革命評議会の樹立にあたって、ただちにカンボジア人民にたいする連帯を表明してきた。
 わが党は、日本政府がカンボジア人民共和国への敵視政策をやめ、ただちに新政権の承認を要求してきたが、改めてこのことを強く要求する。

   三

 旧「ポル・ポト=イエン・サリ政権」の三年余りにわたる人権無視の暴政と経済の全面的な破壊、国土の荒廃が国民生活に与えた苦しみは言語に絶するものがある。とくに、農業の破壊による食糧不足は深刻なものであり、医薬品の欠乏や衣料の不足が人民の生活と健康に憂慮すべき事態をつくりだしている。さらに、新しい意欲をもって教育と学習にとりくみはじめている教師と生徒にとって、学用品、教育資材の不足は大きな障害となっている。このような事態は、国際的にも広く知られているところである。
 今日、きびしい内外の情勢のもとで、新しい国づくりをおこなっているカンボジア人民にたいする国際的支援を強化することは、まさに急務となっている。
 カンボジア現地の状況をつぶさに視察した宮本太郎ベトナム駐在党代表・赤旗ハノイ支局長は、日本の広範な人びとにたいし、今日、カンボジア人民が直面しているさまざまな困難を知らせるとともに、人道的立場からのカンボジア人民への緊急の支援を強く要請している。
 日本共産党は、今日のあらたな情勢のもとで、あらためて、カンボジア人民があらゆる障害をのりこえて、新しい国づくりで成功をおさめるようねがうとともに、わが国の広範な人びとが、正義と人道の名において、カンボジア人民にたいし物心両面からの支援をよせられることを心からよびかけるものである。

(「赤旗」一九七九年六月二十三日)