日本共産党資料館

日本共産党宮本顕治中央委員会議長とルーマニア共産党ニコラエ・チャウシェスク書記長の共同宣言

 日本共産党の宮本顕治中央委員会議長とルーマニア共産党のニコラエ・チャウシェスク書記長は、メッセージの交換ならびに両党代表の会談をつうじて、今日の国際情勢、とくに核兵器をめぐる問題および世界の共産主義運動の状況について意見交換をおこなった。両者は、国際的に存在するきわめて深刻で差し迫った情勢を考慮して、両指導者の直接の会談を待つことなく、緊急に提起されている当面する共通の課題の実現に積極的に貢献するために、また、その方向での両党の共同をいっそう発展させるために、以下の共同宣言を発表することで合意した。
 宮本顕治中央委員会議長とニコラエ・チャウシェスク書記長は、国際情勢の進展を検討した結果、歴史的経過に照らしてみるならば、事態の推移は、両者がそれぞれの党を代表し調印した一九七一年九月三日の共同コミュニケと一九七八年七月十日の共同宣言で提起された分析と評価の正しさ、諸命題の完全な有効性と今日的意義を証明したと評価した。世界は今日、重大な歴史的岐路に立っている。一方では、核戦争阻止、核兵器廃絶を要求する事業、民族自決と民主主義、社会進歩をかちとる事業が深奥な発展をとげ、世界史のあすをになう力量を立証しつつある。他方、大規模な核軍拡および、ますます精巧化された通常兵器の軍拡はとどまるところを知らず、また、一連の資本主義国の多国籍企業に示されている帝国主義の寄生性と、発達した資本主義国間の経済・貿易摩擦、通貨の不安定性の増大、発展途上国の巨大な累積債務など、世界資本主義体制は、諸矛盾の深化に直面しつつも、勤労国民の犠牲によって、また発展途上国からの収奪の強化によって、資本のどん欲な利潤獲得の新しい活路を常に執ように追求している。人類の資源と富は、核兵器およびその他の破壊手段の膨大蓄積をはじめ軍備競争の拡大など非生産的浪費にでなく、地球上の幾億千万もの人びとが直面している飢餓と貧困の解消、開発に緊急に向けられるべきであり、社会問題の解決に使われるべきである。総じて、従来の国際政治と国際経済の決定的転換が求められている。
 この転換のため今日ほど、世界の社会主義諸国、資本主義諸国の勤労人民、民族解放勢力、反核平和勢力平和と安全、独立、民主主義、社会進歩のために力を合わせ断固としたたたかいと行動をすすめることが要請されているときはない。とりわけ、核兵器をめぐる課題は、このたたかいの焦点である。
 宮本顕治同志とニコラエ・チャウシェスク同志は、核兵器問題をめぐ今日の国際政治のゆきづまりを打開するうえで、核戦争阻止、核兵器廃絶のための広大な反核国際統一戦線を結成することが急務であり、のために全力をつくすべきときであることを厳粛に宣言する。
 両指導者が最初に会談した一九七一年以来十六年の間に、核兵器は急速に増大し、その破壊力を途方もない恐るべき段階に高めた。しかも今日の世界では、新たな核戦争がおこれば、それが人類と文明の破滅にみちびくことは必至であり、かつまた、地球上のさまざまな紛争が新たな核戦争に発展する危険性と脅威は、引き続き増大している。
 今日、世界の各地、各大陸では、核兵器の新規配備阻止、配備された核兵器の撤去、SDIなど宇宙軍事化阻止、核実験全面禁止とそのための国際協定の締結、非核兵器地帯の設置、核兵器積載艦船の寄港反対など、核戦争を阻止し、核軍縮を求める闘争が発展している。ヨーロッパとアジアにおける真の核兵器ゼロを実現するさまざまな形態のたたかいは重要である。これらの闘争は、それぞれの国の人民に押しつけられている核戦争の脅威と核軍拡競争にたいする切実な防衛として、人民の反核平和のエネルギーの発揮として、世界平和に大きく貢献している。しかし同時に、レイキャビクにおける米ソ首脳会談とその後の経過がしめしているように、核兵器が平和のための抑止力として必要であるという「核抑止」論を声高にふりかざした核兵器にしがみつく勢力の巻き返しも強まっている。核兵器が諸国の防衛能力と安全保障を強化し、世界の平和の維持に貢献するという、誤った、時代遅れの考えは、完全に放棄されることが必要である。
 こうした情勢のもとで、各地で発展しているそれぞれの具体的課題でのたたかいを、力をつくして発展させることは常に重視されなくてはならない。同時にそれらのたたかいを、国際的にひとつの大流に結集し、統一した力で、核兵器固執勢力を包囲し、孤立させることが決定的に重要となっている。核兵器の廃絶こそ核戦争を完全に地球上からなくすことを保障するものであり、あらゆるたたかい、行動の合流を、地球的規模で実現するかなめとなる共通の中心目標は、核兵器の全面禁止、完全廃絶である。こうして広大な反核平和の統一戦線をつくり巨大な力の結集をはかることこそ、核兵器をめぐる世界の情勢に根本的な転換をもたらすものとなるであろう。
 核兵器の開発、製造、実験、保有、配備、使用を全面的に禁止する国際協定締結の緊急課題を前面にかかげ、諸国人民のたたかいの発展と国際世論の動員によって核兵器に固執する勢力を包囲し、圧倒する世界的な趣(すう)勢をつくりだすことが、同時に個別的な課題の実現をも保障する。
 日本共産党とルーマニア共産党は、一九七八年の共同宣言で、「全般的軍縮、第一に核兵器の全面禁止がきわめて緊急の任務となっており、この目標の実現と措置の採択のために、全世界の世論を動員し、人民大衆の無数の行動を組織することが要請されている」ことを一致して確認したが、壮大な反核国際統一戦線の結成は、その今日における具体化である。
 戦後四十余年、国際連合をふくめ国際政治の場において核軍縮がくりかえし叫ばれながら、この間、広島、長崎に投下された核爆弾の百万発分の核兵器、人類を何十回となく絶滅させうる巨大きわまる核兵器が蓄積されてきた。それは、核兵器廃絶という中心課題が、長期にわたり棚上げされ、核兵器の存在を前提とした「抑止と均衡」にもとづく、核軍備の管理が追求されてきたからである。このことは、人類文明の継承のために、悪魔の兵器に打ちかつ新しい人類の理性と勇気を至上の課題にしている。
 宮本顕治同志とニコラエ・チャウシェスク同志は、この点で、最大の核保有国であるソ連とアメリカ、すべての核保有国の間で、また国際連合において、核兵器廃絶にかんする政治的合意と国際協定、実効ある措置が達成されるならば、世界の安全と人類の進歩にとってはかりしれない巨大な歴史的意義をもつであろうと考える。
 日本共産党の宮本顕治中央委員会議長とルーマニア共産党のニコラエ・チャウシェスク書記長は、核戦争の危険を憂慮する世界中のすべての政治勢力、労働組合、婦人、青年の組織と運動、宗教界その他の社会階層、組織および個人にたいし、政治、思想、信条の違いを超え、地理的地域にかかわりなく行動にたちあがり、核戦争の危険を除去し、核兵器のない世界を実現するための国際的な反核平和の統一戦線を構築するようよびかける。この歴史的事業の達成のために、これらすべての勢力と緊密に協同するという両党の共同の決意を宣言する。こうした壮大な展望をきりひらくうえで、世界の平和・民主運動が正確な目標を掲げ、原則にそった活動を発展させることはきわめて重要であり、両指導者は、いくつかの分野で、このためにすすめられつつある国際的共同行動を促す積極的な運動やよびかけを歓迎する。
 宮本顕治同志とニコラエ・チャウシェスク同志は、世界の平和と安全が重大な脅威にさらされている今日、反ファシズム統一戦線の歴史的経験と教訓を想起しつつ、ありとあらゆる力を結集して、平和民主勢力の国際的な共同を実現し、反核国際統一戦線の構築に貢献することは、両国の共産主義者にとってもっとも光栄ある責務となっていると強く確信する。
 日本共産党とルーマニア共産党は、核戦争阻止、核兵器廃絶という史上最大の全地球的な事業を達成するために、死力をつくして行動する決意を表明する。いまこそ、人類の存亡をかけた行動のときである。
 宮本顕治同志とニコラエ・チャウシェスク同志は、また、一兆ドルに達している膨大な軍事費の浪費と低開発にたいして深い憂慮を表明する。両者は、ますます高性能化されている大量の通常兵器の蓄積による危険をも強調しつつ、軍事費の大幅削減のために、通常兵器、兵力の大幅削減を主張する。発展途上国の約一兆ドルにのぼる莫大な累積債務の蓄積、発達した諸国との格差の拡大は、諸国の独立と主権の擁護にとってのみならず、世界経済の安定した発展にも、さらには人類の未来にも、重大な結果をもたらしつつある。日本共産党中央委員会議長とルーマニア共産党書記長は、こうした重大化する現状を打開して低開発の諸問題を全地球的規模で解決することをめざして、いまこそ、すべての国家とすべての社会勢力が断固として行動にたちあがるときであると強調する。この点で、両党指導者は、一九七八年の共同宣言でも重視した新国際経済秩序の創設と、軍縮による発展途上国の自主的発展に役立つ開発援助が、差し迫った共同の課題になっていることを一致して指摘した。すべての諸国人民の利益となるこの複雑な問題の解決をめざし、国連や、発展途上国も発達した国も同じ権利をもって参加する国際会議などを含め、諸国政府と人民の努力が緊急に必要とされている。新国際経済秩序の実現は、発展途上国とその人民にとってだけでなく、発達した資本主義国の労働者階級と人民にとっても、社会主義国にとっても、重要な意義をもっている。
 両党指導者は、世界の平和と安全にとって、武力の行使および武力による威嚇の放棄、外部からのいかなる干渉もなく自国の発展の道を自由に選択する各国人民の権利の厳格な尊重を国家関係の原則として名実ともに確立することが重要であり、新しい公正かつ民主的な国際関係にみちびく基礎であることを一致して強調する。すべての軍事同盟の解消、外国軍事基地の撤去、他国の領土からの外国軍隊の撤退は、世界の恒久平和の重要な条件のひとつであり、各国人民の真の独立と主権の確立にとって不可欠である。日本共産党とルーマニア共産党は、民族の独立と主権の尊重の精神にもとづき、主権国家間のすべての紛争問題を政治的に、話し合いをつうじてのみ解決することを確固として主張する。
 宮本顕治同志とニコラエ・チャウシェスク同志は、世界の共産主義運動の状況を検討し、まず、団結の回復および連帯と協力の強化にとって共産党・労働者党間の公認の原則を厳守することの決定的意義の解明、他党の分派の支持・育成、特定の路線の押しつけを含めたあらゆる干渉の停止など一九七一年の共同コミュニケでの世界の共産主義運動にかんする指摘が、この十六年間に、きわめて重要な歴史的役割を果たしたことを確認した。覇権主義にもとづく他党の内部問題への干渉がおこなわれず、またそのような干渉に起因する不団結が解決されるならば、各党が活動している具体的、歴史的、社会的条件の相違にもかかわらず、それは各党間の共同を妨げるものとはなりえない。
 共産党・労働者党がそれぞれの革命運動と社会主義建設を科学的社会主義にもとづき創造的、自主的におこなうことは当然のことであり、それは正しい意味の国際連帯の可能性を大いに促進する。
 日本共産党とルーマニア共産党は、あらゆる形態での他党の内部問題への干渉を完全に終わらせることの重要性を重ねて指摘する。両党は、共産主義運動の真の統一回復への道における障害の克服は必要であり可能であると考える。両党は、その可能性を実現する努力を続けながらも、さしあたって人類を核戦争の危険から守る事業の前進に向けて広範な平和民主勢力の国際的な共同を実現し発展させることをはじめ、軍縮、平和、民主主義、社会進歩のための共通の事業での共同の方途の探究をさまざまな形で続けることを重視する。共産主義運動は、これらの目標を達成するうえで、国際政治生活においていっそう大きな役割を果たしうるし、また果たさなければならない。このための各党間の共通の努力、自由な意見交換などをおこなうことは積極的な意義をもつ。共産党間の正しい相互関係にもとづく新しい国際連帯は可能である。
 生活、現実、歴史的経験そのものは、きわめて複雑な現代において労働者階級の組織、すべての進歩的民主的勢力、世界中の諸国人民が、核兵器のない世界、軍縮と平和、各国民が自由に独立して発展する世界、よりよい世界、より公正な世界を地球上に築くために、努力を強化することが緊急に必要であることを証明している。
 両指導者は、共産党・労働者党の国際的共同の実現、世界の共産主義運動の正しい方向での発展のために、自主独立、同権、内部問題不干渉の公認の原則を厳守し、徹底させ、他党の分派の支持などを含めあらゆる干渉に終止符を打つことが不可欠であることを改めて確認する。
 宮本顕治同志とニコラエ・チャウシェスク同志は、日本共産党とルーマニア共産党の伝統的な友好と連帯の関係の一貫した発展を喜ぶとともに、この両党の関係を核戦争阻止、核兵器禁止、全般的軍縮、諸民族の自決権尊重、平和で安全な世界のすみやかな実現という時代の要請に積極的にこたえていく方向でいっそう充実、発展させ、国際的な反核平和の戦線の構築のため、また、世界の共産主義運動の効果的な結集のために積極的に寄与していく決意を表明する。

 一九八七年四月二十九日
  日本共産党中央委員会議長

宮本顕治

  ルーマニア共産党書記長

ニコラエ・チャウシェスク

(「赤旗」一九八七年四月三十日)