日本共産党資料館

青年学生分野の「広大な空白」克服のための全党的とりくみの強化を

(『赤旗』無署名論文1989年10月17、19日)

 六中総決定は、青年学生分野の「広大な空白」をうめるとりくみを「全党の知恵と力を結集」してすすめることをよぴかけている。いま、全党が、この提起の本格的な具体化と実践をすすめ、この分野での新しい前進をかちとることは、党と革命運動の戦略的未来の展望からいってもまさに急務となっている。目前にせまった総選挙へむけたとりくみのなかでも、党建設の二大欠陥の克服をはじめとする諸課題とあわせて、全党的に青年学生対策を重視し、選挙戦をつうじて広範な青年学生を結集する活動をすすめることは、総選挙においてわが党の大きな勝利をかちとるうえで欠かすことのできない課題である。<

一、青年学生分野での現状打開の全党的重要性と緊急性

 (1)青年学生対策を抜本的に強化する前提は、全党がこの分野での党活動のたちおくれの深刻な実態、日本革命の戦略的展望からみた問題の重大性、そして現状打開の対策強化の緊急性について深くつかむことである。この間、29歳以下の青年党員は、その絶対数においても、全党にしめる比率においても後退がつづいている。とくに学生党員の後退は重大である。党支部も民青同盟班もない空白大学が多数をしめ、党支部や民青同盟班があっても学生全体にたいする影響力が微々たる大学がほとんどという状態となっている。
 1800万人をしめる青年、240万人の学生のなかでのこうした「広大な空白」のもたらす影響はきわめて重大である。世論調査でも、自民党批判のひろがりが青年学生のなかでとくにつよくみられる一方、青年学生の日本共産党への支持率の低下と世代別党支持率の高齢化傾向がすすんでいる。これは、公明党が青年対策で一定の成果をおさめ、最近、社会党が青年のなかで支持をひろげていることと比較しても、たちおくれといわなければならない。この分野での活動の強化は当面する総選挙勝利にとっても重要な課題となっている。
 同時に、青年学生層での党の空白状態は、将来にわたって再生産されることになる。これは、日本の未来の労働戦線、知識人戦線など社会各分野の活動の発展にとっても、党自身の後継者という点からも、文字どおり革命運動の未来を左右する問題であり、すでにその否定的影響は各分野に痛切な形であらわれている。
 この分野での後退は、もはや一刻も放置できない状況にある。いま有効で抜本的な手だてがうたれないなら、年とともにわが党の若いエネルギーが枯渇し、わが党と革命運動の将来にとって重大な世代的空白をつくりだすことにもなりかねない。

 (2)全党は、青年学生分野での「広大な空白」克服のもつ、こうした重大性と緊急性をつかみ、参議院選挙がしめしたように青年の政治的関心が大きな高まりをしめしているいま、六中総決定が強調したように、文字どおり「全党の知恵とカ」を結集したとりくみを本格的にすすめなければならない。長期にわたる後退状況をくいとめ、さらに前進に転ずることは、これまでの延長線上のとおりいっペんのことではできない。青年学生対策というと、民青同盟や学生党組織の問題というとらえ方、また青年学生対策委員会の問題というせまいとらえ方があるが、これでは事態は打開できない。問題の重大性からみて、党建設の二大おくれに匹敵する戦略的大問題として、全党的なとりくみが組織される必要がある。
 各級党機関は、この分野での活動を、担当部まかせにするのではなく、機関の長と常任委員会の責任で系統的にとりくみ、機関の各専門部も、青年学生対策委員会の努力はもちろんであるが、たとえば、労働組合部は労働青年対策、農民部は農村青年対策、婦人部は若い女性対策、文化・知識人委員会は大学教員の協力の強化、組織部門は青年学生への教育や党員拡大など、それぞれの分野から青年対策を重視し、党機関をあげて推進する態勢をつくらなければならない。
 すべての党支部が、その固有の重要な任務の一つとして青年対策を位置づけ、この問題を系統的に支部会議でよく論議し、青年サークルをつくることをはじめ青年のなかでの活動を強化し、党支部に対応する民青同盟班を建設し、青年党員拡大を前進させるための積極的とりくみをすすめることがもとめられている。そのために青年係をきめ、系統的なとりくみをすすめる態勢を強化することが大切である。

二、現代青年の特赦と「柔軟で新鮮」な接近

 (1)自民党政治への国民の未曽有の怒りの高まりと政局の激動のもとで、青年の動向にも政治的関心の急速な拡大と、新しい大規模な流動化の状況がうまれており、その革新的結集の条件がひろがっていることに注目する必要がある。

 ①広範な青年のなかに、自民党への怒りと政治への新しい関心が大きくひろがっている。各種調査でも自民党批判がもっともつよいのは20代の青年である。ある調査では、参議院選挙をはさむこの数ヶ月間に、「政治に関心がある」とこたえた青年が約3割から9割以上へと激増したという結果が報告されるなど、これまで政治に無関心だった青年もふくめたひろい層のなかで大きな変化がおこっている。1986年の同時選挙のときには、青年の「保守化」 「政治的無関心」が喧伝(けんでん)されていたことと比較してみても、この間の変化は注目すべきものがあり、その意義は画期的なものといってよい。
 消費税をはじめとする「三点セット」への怒りと、大学の学費高騰や勉学条件の悪化、青年労働者の低賃金や過密労働など労働条件の劣悪化など、青年各層の状態悪化への不満とが結びついて自民党への怒りが噴出しているのが特徴である。ここに青年を結集する基礎的条件、青年のなかでの「深部の力」がある。

 ②地球的規模での核兵器の問題、環境問題にたいする関心が、青年学生のなかでとくにつよいことも注目すべきである。さまぎまな世論調査をみても、国政の三緊急課題の問題とならんで、核問題、環境問題への関心が高い。高校生平和ゼミナールが年々発展していること、原水禁世界大会での青年企画への結集などにみられるように、反核平和を願う青年のエネルギーはめぎましいものがある。また、青年、とくに高校生、大学生のなかで、地球の温暖化問題、フロンガス問題、森林の破壊の問題、酸性雨の問題などグローバルな環境問題、原発問題などへの関心は非常に敏感なものがある。

 ③同時に直視する必要があるのは、青年のなかでの日本共産党支持率の低下と社会主義へのマイナスイメージの問題である。この10年余、日本共産党への青年の支持率の低下傾向と、世代別支持率の高齢化がすすんでおり、とくに党への拒否率が青年層で高い。社会主義をのぞむという青年はこの10年余でさらに激減しており、反対に現代資本主義、現体制への肯定的見方は根強いし、むしろつよまりつつある。これらの背景には、戦後第二の反動攻勢のもとでの現代青年の成育過程をつつむ政治的環境や教育の影響、一部社会主義国の否定的現象、青年学生をとりまく反共・反動イデオロギーのつよまりなどがある。
 こうした政治意識のなかの積極面と否定面のギャップは、現在の情勢のもとでどの世代にもあるものだが、青年のなかではそのギャップがとくに大きい。このことをリアルに認識し、よく考慮にいれた接近が必要となっている。

 ④特徴的なのは、現在のさまぎまな政治・社会問題にたいして、多くの青年学生が「自分はどうかかわっていくか」 「どう生きるか」という主体的な模索をつよめていることである。どう生きるかという問題は、いつの時代でも青年運動の普遍的な問題だが、とくに今日、差別・選別や管理主義など教育のゆがみ、大学での貧困な教育内容と教育条件、学歴社会と就職差別、職場での劣悪な労働条件と働きがいのもてない状況などにくわえて、激動する政治情勢が進行するもとで、自己の主体的な生き方を確立したいという青年の願いはいっそうつよいものがある。
 現代青年が、個の尊重と確立を真剣にもとめ、自分の生活と幸せをなによりも大切に考えていること、同時に、まだその多くが「私生活主義」といわれるような個人的な幸せの追求のみに至上の価値をみいだす態度にとどまっているという問題点をもっていることは、これまでも指摘されてきたし、なおこの傾向は根強いものがある。しかしこの点でも、自民党の悪政が青年の生活を深刻に脅かしつつあるもとで、いま少なくない青年は、みずからの生活をまもるためにも政治や社会に目をむけなければならないと感じはじめている。

 ⑤友人を何よりも大切に考え、友情と連帯を切実にもとめていることも、現代青年の重要な特徴であり、この傾向は最近10年間をみてもいっそう顕著になっている。青年のなかでのサークル活動の隆盛はそれを物語っている.これは、保育園や幼稚園などの一定の普及によって幼少時からの集団生活の経験をつむなどの成育過程をへて、青年のなかに同世代間の連帯意識が非常につよいということのあらわれである。同時に、教育のゆがみや青年をとりまく商業主義的文化・退廃などとも関連して、青年が真の人間的な連帯の経験に乏しいという問題も指摘されている。しかし、青年の現実の人間関係がしばしば表面的なものにとどまっていることが事実だとしても、青年がほんとうにもとめている人間関係は、人生や生き方の問題を心の底から話しあえる全人格的な関係であることを、正しくみなくてはならない。

 (2)こういう特徴をもった現代青年にどう接近するか。さきの参議院選挙にむけてとりくんだ学生新聞号外の経験は、学生の気分にあった「柔軟で新鮮」な接近をおこなうならば、広範な学生の心をつかむことができることをしめした点で、きわめて重要なものであった。この教訓を全党が深くつかんで活動に生かすことがいまもとめられている。

 ①青年への「柔軟で新鮮」な接近とは、第一に、結論を最初からおしつけるのではなく、広範な学生の気分や要求と共通のところから出発して、ともに考え、前進していこうという態度をつらぬくということである。さきにみたように青年の政治意識に大きなギャップがあるもとで、はじめから党の結論をおしつけるという態度をとるなら、入り口のところで拒否されてしまうことにもなりかねない。このギャップをよく考慮した接近が大切である。もちろん、これは党の主張をいわないということではなく、またさまぎまな反共偏見を克服する努力をつよめることは当然だが、これらを青年の認識の前進にそった形ですすめることが大切である。宮本議長は、「青年をみたら、すぐに党や民青同盟にはいるようにもとめる、それで効果をはかるという教条的な考えでは、時勢にあわない」 (六中総閉会あいさつ)とのべているが、こういう考えは、青年の主体的な成長の過程、法則的な接近の過程を無視した非弁証法的な機械論であり、こういう「接近の拙劣さ」を根本的に改善することが重要である。
 第二は、青年の世界と日本への関心を、人生どう生きるかという青年の生きがいの問題と結びつけて提起するということである。学生新聞号外の「激動の時代、君はどう生きるか」という問いかけは広範な学生の心をつかんだが、それは「どう生きるか」 「いまの政治に自分はどうかかわっていったらいいのか」という、多くの学生が多かれ少なかれ直面しており真剣に考えはじめているが、同時に、その答えがだせていない問題を、正面から問いかけられたからにほかならない。こうした青年とともに考え、青年の成長を助け、みずからの生活と幸福のためにも、社会の進歩的変革が必要であるという自覚──生き方と社会進歩の統一という自覚に青年がみずから到達できるようにしていく必要がある。

 ②こういう学生新聞号外の教訓は、学生にたいする大量宣伝をはじめとするあらゆる接近のとりくみに生かすべきものであり、きらに学生だけでなく、労働青年、高校生など、青年各分野での活動にも具体化して発展させられるべきものである。この間開かれた全国学生担当者会議、民青同盟第三回中央委員会では、青年の結集で成功している全国の経験が報告されたが、それらには、大量宣伝、対話、額集会、サークル活動などその形態はさまぎまだが、青年の関心から出発して生き方を語り合うという点で、共通の法則性があることがあきらかにされた。こうした経験にも学び、とくにつぎのような活動を発展きせる必要がある。

 ○学生新聞号外の経験を生かした青年の気分にマッチした大量宣伝を、青年各層ごと──学生、青年労働者、農村青年、高校生──に具体化し、全青年規模で計画的・系統的にとりくむ。

 ○青年学生の関心、要求から出発して、政治と社会を変える展望、一人ひとりの生き方についてともに語り合う対話活動を強化する。とくに民青同盟のとりくんでいる「青春トーク」運動を党としても重視してとりくむ。

 ○青年学生の関心の高い政治・社会問題と結びつけて青年の生き方を考える学習討論運動、ゼミナール運動をすすめる。学生のなかでの「科学的社会主義セミナー」や、「高校生セミナー」、「労働青年講座」、「農業の未来を語る学習交流会」などが重要である。

 ○党自身の活動としても、青年のなかでサークルをつくり、発展きせる活動を抜本的に重視する。友情と連帯をつよくもとめる青年の動向からしても、サークル活動をつうじて人間的階級的信頼関係をつよめる活動の重要性は、いっそう強調されなければならない。文化、スポーツをふくむ多面的サークルとともに、「政治・社会と生き方をともに考えるサークル」を重視し、とくに学生分野と高校生分野では社研活動を重視する。

三、学生分野の活動の強化方向

 (1)この間、学生分野では、昨年11月の全国青学対責任者会議の方針にもとづいて、中央でも各都道府県委員会でも現状打開のための一定の系統的努力がはじまっている。
 ①学生新聞個別大学版の定期発行の努力、社会科学系サークルの活動強化、科学的社会主義セミナーの開催、学生を対象とした教育講座、中央イデオロギー部会の定期開催などの努力が系統化されつつある。参議院選挙にむけてとりくんだ学生新聞号外の大量配布は、広範な学生に大きな影響をあたえ、学生党組織の確信と活性化にもつながっている。
 こうした努力と結びつけて、この間、北海道大学、東大教養、一橋大学、京都大学、同志社大学、大阪府立大学など、党勢を維持、前進させているいくつかの重要大学がうまれていることは貴重であり、その教訓を全国のとりくみに生かさなければならない。

 ②しかし、全体としてみるならば、学生分野の現状は、いぜんとして深刻な後退状況を打開できていない。年間の党員拡大数が、卒業分を回復しきれない状況が10年以上にわたってつづいている。なお党機関の多くが、この分野の対策を本腰をいれて、系統的にとりくんでいるとはいえない現状がある。
 いくつかの県では、この1年間の学生党員拡大数がゼロないし一人にとどまっており、このまま放置すれば県全体として空白になりかねない状況となっている。
 同時に、学生の集中している大都市部での影響力の小ささも重大であり、東京、神奈川、大阪、兵庫、福岡など、学生数が10万規模以上のところで、学生のなかでの党員比率が全国水準よりもさらに低いという問題がある。

 (2)党中央は、昨年11月の全国青学対責任者会議で、学生対策について、党としての理論・イデオロギー闘争の抜本的強化、「二つの任務」にもとづく学生運動の発展、学生のなかでの党建設、党機関の指導態勢の抜本的強化について、詳細な方向をだしている。この実践、定着にひきつづきとりくみつつ、それにとどまらず、「広大な空白」の克服にむけ、当面つぎの点で学生対策の新しい強化をはかる必要がある。

 ①広範な学生への「柔軟で新鮮」な接近のとりくみの発展……全学生規模での大量宣伝と対話活動、学習討論運動、社研活動をはじめとするサークル活動などにとりくむ。そのさい、学生分野では、学生の政治的関心とともに、その知的・学問的関心にこたえた接近をとくに重視することが必要である。
 日本の政治の展望、社令王義の問題や核兵器の問題など世界をどうみるのかなどと結びつけて、学生の生き方をともに考えるとりくみをすすめる。同時に、学生のなかでの反共・反動イデオロギーへの説得的な批判をすすめ、日本共産党の綱領路線と科学的社会主義への理論的信頼をひろげていくことが重要である。臨教審路線のもとでの大学の反動的再編の実態を分析し、学生の要求にそってその打開の展望をさししめす政策活動も重視しなければならない。
 こうした活動の推進のために、党機関は、学生の気分・関心や要求、大学の現状、学生のなかでの影響力をもっている学問・イデオロギーについて系統的につかみ、よく研究・学習し、理論的政策的イニシアチブを発揮しなければならない。

 ○広範な学生の気分にマッチした全国的大量宣伝を、空白大学もふくめた全学生規模で、学生の年間サイクルにそって系統的におこなう。当面、総選挙にむけて、さきの学生新聞号外の教訓をいっそう発展させたフレッシュな内容がもりこまれた学生新聞号外第二弾「いま考えよう、これからの日本、そして君の未来」の配布を、全党的に重視してとりくむ。配布と結びつけて、対話活動、学習討論運動をすすめ、学生新聞拡大をはじめ組織的な空白克服の力にもしていくことが大切である。学生新聞個別大学版や学園政治新聞などによる学園ごとの大量宣伝の系統化と内容の改善をすすめる。

 ○学生のなかでの多面的なサークル活動を重視するとともに、とくに社会科学系サークルの抜本的強化をはかる。社研活動を前進させているところで共通しているのは、学生が関心をもっている現代的諸問題と科学的社会主義の古典の研究を結びつけてとりくんでいること、サークル員相互の学問的人間的信頼関係を重視し生きがいや大学での学びがい、進路の問題などについてよく話し合っていること、党派性の高い教員の親身の協力をうけていることである。こうした内容をおおいに普及し、少なくとも学生党組織のあるすべての大学で社研をつくり、条件におうじて学部ごとにもつくるためにカをつくす。さらに、学生党組織が空白の大学でも、民主的教員などとの協力をつよめ、社研をつくることを追求する。

 ○学費値上げ反対闘争などこれまでの民主的学生運動の戦闘的伝統を発展させつつ、これまで影響力のなかった広範な大学も結集できるように、学生の共通の関心と要求を基礎にした学生自治会運動の活動改善・強化をはかる。全国段階、地方段階で、広大な空白大学も要求にもとづいて参加できるようなとりくみとして、全国学術文化集会、新入生フェスティバルなどを重視する。自治会再建、民主化、全学連加盟の戦略的な計画をもって、系統的にとりくむ。

 ②党と民育同盟の隊列の質的・量的強化……広範な学生に知的影響力をもつためにも、科学的社会主義の世界観を深く身につけるための学習教育と、党と民青同盟の計画的・系統的拡大をすすめることが重要であることはいうまでもない。広範な学生への「柔軟で新鮮」な接近と、接近する側の質的・量的強化のそれぞれにとりくんでこそ、相乗的に活動を前進させることができる。
 とくに学習教育を画期的につよめ、科学的社会主義の世界観に深い確信をもった知的中核をつくることは重要である。中国や東ヨーロッパなど一部の社会主義国の問題は、広範な学生のなかでも敏感な反応と関心をひきおこしており、授業などをつうじての資本主義美化論も学生に大きな影響をもっているなかで、哲学、経済学、階級闘争論の全体を包括した「全一的世界観」としての科学的社会主義の見地を深くつかみ、その立場から現実に生起するさまざまな問題を見通すカを学生の時期に身につけることが大切である。
 また、もっとも広範な学生層への「柔軟で新鮮」な接近のための努力と結びつけて、すすんだ人たちの自覚を前進させ党と民青同盟の隊列を大きくしていく活動を、学生の年間サイクルにそって計画的、系統的にすすめることの重要性はいうまでもない。このなかで、党機関として、空白大学に党と民青同盟をつくるための具体的計画をもち、系統的なとりくみを推進するようにする。

 ○学生党員は、大学での勉強とは別に、毎日1時間程度は科学的社会主義の独習時間をとることを活動の最優先におくようにする。基本課程、卒業までに修了が義務づけられている地区党学校、学生党員必読の三文献読了の重要性はいうまでもない。中央としても、系統的な学生特別講座の開催、イデオロギー部会などにひきつづきとりくむ。

 ○党勢拡大では、当面、党建設での二大欠陥の克服とあわせて、学生党員拡大のとりくみが重要である。この1年間の学生党員の拡大数は、その前の年と比較しても大きく落ちこんでいる。この秋に少なくとも来年の卒業見込み分を上回り、後退から前進に転ずるために必要な積極的な拡大目標をもってとりくむ。情勢の発展をふまえて改訂した「青年への入党のよびかけ」、「自由と民主主義の宣言」をつかった大、中、小の「日本共産党を知る会」をおう盛に開く。

 ○民青同盟学生班への援助をつよめ、学習を中心に同盟活動を魅力あふれるものに改善し、それと結びつけた同盟拡大にとりくむことは、党員拡大の条件をひろげるうえでもきわめて重要である。この間、民青同盟姓の活動を学習重視、同盟員の多面的な要求重視の方向で改善し、楽しい活気ある活動をつくり、党建設でも前進をつくっている大学がうまれているが、こうした経験をよくつかみ活動に生かすようにする。

 ③大学教員、院生との協力態勢の抜本的強化……現在の学生党組織の後退状況、空白状況の打開をはかるためには、大学教員、院生との協力態勢の抜本的強化が不可欠である。
 とくに学生のなかでの社研活動やゼミナール活動への協力、援助を、大学での党員研究者の重要な固有の任務の一つとして位置づけ、推進をはかるようにする。
 各地の経験をみても、教員が学問的にも、人間的にも親身な援助をおこなっていることが、社研活動と学生支部建設前進の決定的なカになっており、こうした努力はきわめて貴重である。
 党機関は、重要大学ごとに大学対策委員会を設け、大学教員、院生、大学OBの協力を系統化するようにする。党中央としても、大学教員、院生による学生社研などへの協力を促進するための系統的指導を強化するようにする。

四、青年各分野の対策─とくに高校生、青年労働者

 (1)党の青年対策の本格的前進をかちとるためには、学生、高校生、青年労働者など各層別の青年の固有の実態と要求をよくつかみ、それに即したとりくみをすすめることが決定的に重要である.「柔軟で新鮮」な接近を、青年各層ごとに具体化し、各層ごとの接近の法則的あり方を探求しなければならない。そのことを欠落させて、ただの青年対策一般、民青同盟対策一般ということでは、青年の大きな結集をはかることはできない。そして、これらの青年各分野の対策を本格的にすすめるためには、青年学生対策委員会だけの活動ではなくて、とくに大衆運動の各部門をはじめとする党機関の各専門部の協力を組織することが不可欠である。
 青年各分野で、約240万人の学生とともに、とくに重要なのは、約560万人を数える高校生と、約700万人の青年労働者である。また、量的には小さいが政治的・社会的に重要な農村青年、青年の半数をしめる若い女性、大学対策との関係で重要な浪人生のなかでの活動も重視しなければならない。

 (2)民青同盟高校班の活動が豊かに前進することは、高校生の多面的な要求の実現と成長にとっても、また、学生や青年労働者分野の将来にとっても、きわめて重要な意義をもつ。とくに現在、戦後第二のベビーブーム世代が高校生の年代にたっし、青年人口のなかでの高校生の比重が高まっているもとで、この分野の重要性はいっそう強調されなければならない。党は、民青同盟高校班が高校生の要求にこたえて生きいきと発展するよう、全党的な親身の援助の強化をはからなければならない。

 ①高校生平和ゼミナールや高校生平和集会の前進、人権無視の校則問題での自主的運動の発展など、高校生の自主的エネルギーには注目すべきものがある。同時に、偏差値偏重の差別・選別など教育のゆがみのもとで、「もっと勉強がわかるようになりたい」「社会と政治の真実を知りたい」という高校生の要求、友情と連帯の要求は切実である。
 民青同盟の活動のなかでも、高校生分野は、活性化と同盟拡大の面で、新しい前進の方向がうまれている分野である。前進しているところで共通しているのは、学校の勉強と科学的社会主義の勉強を活動の中心にすえていること、平和問題などの社会的関心や学校生活での悩み、友情や連帯の要求にこたえた魅力ある活動をすすめ、高校生としての生きかたや進路について心をひらいて話し合えるような活動をすすめていることである。これらはこの分野に大きな発展の可能性があることをしめすものである。しかし、この分野もまた、全国5千をこえる高校のうち同盟班があるのはごく一部という状況にあり、その打開のための活動を強化することは急務となっている。

 ②党中央は、昨年11月の全国青学村責任者会議で、民青同盟高校班への援助について、高校生を「一人前」の青年として尊重し、そ自主性、自発性に深い信頼をよせることを党の援助の基本的姿勢として強調するとともに、(1)民主的高校教員と高校生の自主的民主的運動との連携を強化する、(2)党員や活動家などの子女の民主的成長を促進する、(3)民青同盟の高校生相談員の配置のための援助をつよめる、(4)党機関に高校生問題委員会を設置し総合的多角的な対策をはかるなどの方針を明確にしている。
 この方針にそって、県委員会に高校生問堰委員会を確立し、非専従だが意欲的で有能な同志を配置し、勉強から一人ひとりの悩みの相談まで、熱意をもった親身な援助をおこない、わずか1年で班を数倍化するなどの急速な前進をかちとった経験もうまれている。また高校生のなかでの社研活動や「高校生講座」への援助の努力もすすめられている。しかし全国的にみると、系統的な対策を開始しているのはごく一部にすぎず、ひきつづき右の方針の具体化と実践にカをつくすことが重要である。とくに都道府県の高校生問題委員会を非専従の同志もふくめてかならず設置し、党機関が系統的な推進態勢を確立することは急務である。

 (3)階級的ナショナルセンターの結成を目前にして、青年労働者への対策も、きわめて重要である。しかし、この分野もまた空白が多く、党のとりくみとしても未開拓な分野となっている。党機関と、とくにすべての経営党支部は、労働運動の未来とのかかわりでも、青年労働者の獲得にむけた具体的計画をもってとりくみを強化しなければならない。
 ①青年労働者の新しい動向の一つとして注目する必要があるのは、離職、転職の急増である。1988年の雇用動向調査によると、転職者は就職した人の55%にもおよび過去最高となっている.この背景の一つは、いうまでもなく青年労働者のおかれている低賃金、長時間過密労働など劣悪な労働条件への不満である。いま独占資本は、年齢で差別していた賃金を能力給にかえ、新たな差別をもちこみ、労働者全体の賃金をおさえようとしている。こうしたもとで、青年労働者が、労働者すべてに共通する大幅賃上げ、労働時間短縮などをかかげてたたかうことが重要となっている。
 いま一つは、「働きがいがもてない」という悩みである。各種調査でも「希望する職場」にたいする答えは、「自分の才能が生かせる職場」がトップであり、収入や休暇にたいする要求をも上回っているが、現実の職場はこの希望が生かされるような状況とはほど違いなかで、青年労働者の不満と要求はつよいものがある。

 ②こういう掛況をふまえ、青年労働者への接近として重要なことは、消費税廃止をはじめ全国民的たたかい、大幅賃上げなど労働条件改善のためのたたかいを重視するとともに、「労働とはなにか」 「働くことの意味」などについてともに学び、労働者としての生きがいをともに考え、語り合う活動をつよめていくことである。
 当面、総選挙にむけて、広大な青年労働者対策の第一歩として、民青同盟を援助して、「柔軟で新鮮」な角度からの青年労働者むけの大量宣伝をおこなうようにする。これと結びつけて民青同盟の「青春トーク」などもつかった青年労働者のなかでの対話活動をすすめる。青年労働者のなかでの多面的なサークル活動や世話役活動、「労働青年講座」などの学習討論運動にとりくみ、これをつうじて労働者としての生きがい、働きがいを語り合い、人間的階級的信頼関係をつよめる活動を重視する。また、青年労働者の半数以上が第三次産業に働く青年であり、その多くは未組織のもとにおかれている状況のもとで、地域・未組織青年のなかで、地域労組の結成と強化をすすめることも大切である。

五、民青同盟への指導と援助について

 (1)この間、民青同盟は、昨年夏の同盟第六回中央委員会、今年2月の全国大会などで提起されてきた「同盟活動の原点」 (「青年と同盟員の要求と成長をなによりも大切にし、民青同盟がほんとうに魅力にあふれ役にたつ組織であることが青年にも同盟員にも実感でき、青年と同盟貞の結集をすすめる」)にもとづく活動改善にとりくんできた。この方向が、民青同盟発展の法則にかなったものであることは、この1年間の全国の活動をつうじても生きいきと実証されている。
 しかし、全同盟的には、班長未確立班が3割近くにのぼるといった班活動の弱さ、大会後新しく選出された地区委員会活動のさまぎまな困難などがあり、その根本には学習のたちおくれがいぜんとして打開されていないという問題がある。
 民青同盟は、さきの三中委で、こうした同盟の到達点のうえにたって、(1)同盟活動の半分以上を学習にあてるという見地の学習教育の画期的強化、(2)学生新聞号外や「わくわく青春トーク」の教訓を生かした「柔軟で新鮮」な青年への大量宣伝と対話、サークル活動、学習討論運動、(3)10月と11月での重点的な同盟拡大、(4)地区委員会活動の抜本的強化、などの方針を確立し実践をすすめている。

 (2)党中央は、昨年来、民青同盟にたいする指導と援助について、くりかえしその強化方向をあきらかにしている。党の指導と援助についていま大切な見地は、学生、高校生、労働青年のそれぞれで、すでにのべたような方向で党がみずから青年を組織し民青同盟をつくる活動をつよめることと結びつけて、民青同盟の機関と班への親身な援助の強化をはかることである。そのために、ここでも、民青同盟への指導を青年学生対策委員会まかせにするのではなく、党機関の三役が責任をもち、党機関の総合的、多角的な対策が可能になるような態勢をとることが大切である。

 ○同盟活動の半分以上を学習にあてるという民青同盟の方針は、今日の激動する内外情勢のもとではとくに重要である。当面する総選挙にとっても同盟が若々しいエネルギーを発揮してたたかううえでの最大の基礎は学習にある。党は、同盟員のなかで、なにが疑問となっており、また関心となっているのかをリアルにつかみ、それにかみあって科学的社会主義と党綱領路線の見地を深く身につけることができるように援助をつよめなければならない。とくに同盟機関幹部の学習強化は、全同盟的な学習強化の最大のカギであり、その援助を抜本的につよめなければならない。

 ○非専従の同志を中心に構成されている同盟地区委員会の活動強化のために、地区委員学習交流会などへの系統的な講師派遣、青年党員の派遣をふくめ同盟地区体制の確立と活動改善、同盟に党の事務所の一角を貸すことなどの組織の実態に即した具体的で親身な援助をつよめることが必要であるが少なくない同盟地区で、地区委員長など幹部が、党のビラ配布や「赤旗」配達におわれ、同盟独自の活動が十分にできないという現状があり、改善をもとめる切実な声がある。同盟幹部の過度の負担をなくし、同盟活動に専念できるように任務保障をすることは、ただちに解決がはかられなければならない問題である。

 ○機関段階、支部・班段階での、党と同盟の懇談会の定期開催の努力をつよめる。懇談会は、系統的にひらいているところでは、党と同盟との親密な関係がつよまり、同盟活動の前進の力となっている。六中総をうけて、定期開催の一定の努力がつよまっているとはいえ、9月度に懇談合をひらいたのは、県で5割強、地区で3割強にとどまっている。民青同盟への親身な指導をすすめるうえでの基本的姿勢の問われる問題としてかならず改善をはかる。

六、党機関の指導態勢について

 (1)冒頭にも強調したように、この分野での活動を後遺から前進に転ずるためには、青学対まかせ、担当者まかせの弊風をあらため、機関の長と常任委員会のイニシアチブのもとに、系統的に機関会議での議題としてこの問題をとりあげ、党機関全体の集団的な知恵とカを結集するための努力が不可欠である。
 中央として、党本部の関連諸部門のなかに青年対策の同志をおき、書記局の指導のもとに総合的な対策を検討、推進するようにする。

 (2)あわせて、都道府県と地区委員会の青年学生対策委員会の強化をはかることが重要である。教育、党建設、大衆運動の各分野などをふくめた多角的で総合的な青年学生対策が可能となるような構成で、かつ実効ある体制を確立し、この運営には担当三役がかならず責任をもつようにする。
 都道府県委員会の青年学生対策委員会の責任者は、ごく一部をのぞいてすべて兼任の同志となっている。その結果、青年学生が集中している重要な県でも、選挙などのたびに青学対責任者の任務が中断し、そのたびに大きな後退をくりかえすという事態がくりかえされている。その改善をはかるために、青年学生運動の帰すうをにぎっている重要な都道府県については、青年学生対策委員会責任者を専任とするようにすべきである。その他の県と地区委員会でも指導の系統性を保障しうる体制の強化をはからなければならない。

 (3)中央として、今年4月から都道府県の学生担当者配置のための援助金を増額する措置をとり、これをうけて新たに専任の学生担当者を配置し、前進をつくりだしているところもうまれている。しかし、援助枠にみあった担当者が未配置のところも残されており、必要な配置のための努力をつよめなければならない。その他の県も、非専従もふくめて、学生対策に専念する担当者をかならず配置するようにする。
 こんご、中央として、学生担当者の活動の促進をはかるための必要な会議を定期的にもち、系統的指導を強化するようにする。
 青年学生分野での全党の系統的なとりくみを抜本的につよめ、日本の社会発展の未来をきりひらく若い世代での前進をかならずつくりだすために、各級党機関と党支部が大きな視野と展望にたって努力をつくすことを、かさねてよびかけるものである。

『赤旗』無署名論文1989年10月17、19日