日本共産党資料館

アメリカはパナマ侵略をただちに中止せよ

不破哲三日本共産党幹部会委員長の談話

(「赤旗」一九八九年十二月二十一日)

 、アメリカのブッシュ政権は、二十日、パナマにたいする軍事侵攻を開始した。日本共産党は、独立国家パナマの主権を公然と侵害し、パナマの民族自決権をじゅうりんするこの侵略行為をきびしく糾弾する。同時に、米国政府にたいし侵略行為をただちに中止し、すべての侵攻軍をパナマから即時撤退させるよう、つよく要求する。

 、ブッシュ大統領は、今回の軍事作戦を「アメリカ人の生命を保護し、民主的過程を回復し、パナマ運河条約の実効性を保持し、マヌエル・ノリエガを逮捕するため」であるとのべている。アメリカ人の安全とか民主主義の回復は、六年前のグレナダ侵略でも使われた口実であり、侵略者がみずからの侵略行為を合理化するために使い古してきた奇弁にすぎない。口実にされたパナマ運河条約などの係争問題があっても、それは平和的に解決されるべきことがらであり、軍事力によって他国を侵略することは国際法上も許されない。また、「民主的過程」うんぬんについていえば、パナマの国内体制にどのような問題があろうと、そのことをもってアメリカの侵略や介入を正当化しえないことは明白である。
 アメリカはパナマにたいし経済封鎖、ブッシュ政権も深く関与したクーデターを繰り返したがいずれも失敗し、最後の手段として、さる五月の大統領選挙をめぐる国内紛争での一方の側であるエンダラ氏を支持して「大統領」に就任させ、その「要請」を受けたことを口実として、直接侵攻にでたものである。これは独立国であるパナマの政権を武力で打倒し、アメリカの意のままになる政権をうちたて、パナマを支配下に抑え込もうとするものであり、世界世論をぎまんすることはできない。

 、パナマはもともと今世紀のはじめ、運河をつくるためにアメリカの軍事介入によってコロンビアから切り離されて生まれた国であり、運河地帯は事実上の米直轄地とされて米軍が常駐し、中南米の軍事支配戦略の中枢である南方軍司令部が置かれている。一万人余の駐留米軍に一万三千人余を急きょ増派しての、今回の周到に「事前に計画された作戦行動」は、人口二百万余のパナマを侵攻して、民族自決権のたたかいが高まっている中南米支配の戦略を立て直し、今世紀末にパナマに返還期限がくる運河支配を継続する狙いをもつものである。

 、アメリカが中南米、とりわけ中米・カリブ海地域を「米国にとって死活的重要性をもつ戦略地域」と称してあくまでアメリカの「勢力圏」と位置づけ、グレナダを侵略し、ニカラグアへの武力干渉を継続して世界の平和と民族自決権を脅かしていることにたいし、わが党は国際世論とともに厳しい批判をつづけてきた。
 わが党は、アメリカ政府にたいし、断固として、パナマ侵略の中止を求めるとともに、ニカラグア、エルサルバドルなどラテンアメリカ人民の自決権を侵害するいっさいの干渉行為をやめるよう、あらためてつよく要求するものである。