日本共産党資料館

ルーマニアにおける野蛮な人民弾圧を糾弾する

一九八九年十二月二十二日 日本共産党中央委員会

 、ルーマニア西部のトランシルバニア地方のティミショアラ市での民主化を要求する住民のデモにたいする大規模な流血の武力弾圧事件につづいて、市民の抗議行動は全国的な広がりをみせ、首都ブカレストでもデモに参加した数万人の市民にたいし、武装部隊による弾圧が強行された。
 これらの事態は、人民の大衆行動にたいする社会主義政権の態度として社会主義的民主主義の立場に反する重大な悪政であり、単なる国内問題にとどまらず、社会主義的民主主義の立場が国際的に大きく問われている今日の歴史的時期に、われわれの機敏できびしい判断が求められている問題である。
 日本共産党は経過と事態にてらして、社会主義的民主主義をふみにじるルーマニア共産党とルーマニア政府にたいし厳重に抗議し、ただちに人民への武力弾圧を中止するようつよく要求する。

 、十七日から続くティミショアラ市地方での政府治安部隊などによる弾圧では、数百人から数千人という多数の人々が殺害されたと報道された。この事件を深く憂慮して、わが党は正式に真実の積極的な公表を求めたが、何らの回答もなかった。これほどの流血事件を引き起こしながら、住民の安全に責任をもつ政府が、すすんで真相を明らかにせず、弾圧だけを繰り返すことを一般的に合理化することは、ルーマニアの主権者であるルーマニア人民および真実を求める世界の良識への不誠実を重ねる所業である。
 ルーマニア当局は、ティミショアラ市などでの軍事鎮圧と犠牲者などの事態の全体的な真相は覆い隠し、デモは「不良分子、テロリスト、フアシスト的、反国家的」で「今回の暴動は帝国主義者らによって組織されたものだ」、「軍は憲法と法にもとづき同市の秩序と財産を守る義務を果たした」と流血の弾圧を正当化した。これは、社会主義的反省と無縁のものであり、蛮行の合理化にすぎない。

 、わが党はルーマニア共産党とは、一九六八年のチェコスロバキア侵略事件でルーマニアがソ連などに同調しない態度をとったことを重視し、その後一定の友好関係につとめてきた。国内問題をふくめて無条件の相互支持ではもちろんなく、核兵器の廃絶、民族自決権の尊重、他国の共産党への内部干渉の否定、新国際経済秩序創設など世界平和と社会進歩が求める緊急の重要課題での共同の方向を協議し確認してきたものである。しかし、今回の事態は世界の公理にもとづく共通の課題での共同の精神にまっこうから反するものである。
 わが党はルーマニア政府が、中国の天安門事件を擁護する態度をとっていることをみて、民主主義を求める人民の平和的な運動にたいし武力による弾圧を加えるなどという行為は社会主義とは無縁なものであることを正式にルーマニア側に伝えていた。また、ルーマニアが「社会主義の防衛」の名のもとに東ヨーロッパへの集団的介入を提案したことを知ったとき、わが党はただちに、人民の信頼を失った権力を武力でもって維持しようとしたり、外部から介入するなどということは、社会進歩にも科学的社会主義の大義にも反するもので、とうてい許されるべきでない、との態度を疑問の余地なく表明した。
 そうした警告を無視し、今回の流血の弾圧事件についての真実を求めたわが党の要請にも何らこたえることなく、国際世論の抗議も無視して武力弾圧をつづけることは、大局的に科学的社会主義のじゅうりんであり、わが党は断固として糾弾する。

(「赤旗」一九八九年十二月二十三日)