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第22回党大会討論欄

 この討論欄は、第22回党大会に向けた、決議案、規約改定案、をはじめとする文書類、各種会議や機関紙での大会向け討論、および、前大会から今大会までの党活動など、大会にかかわる問題全般を論じるコーナーです。党員限定とさせていただきます。

規約改定案についての私見…その1

2000/10/20 川上 慎一、50代

 規約改定案について、このサイトにおけるの吉野さんの投稿や、JCPにおける久遠寺さんの投稿など、貴重な意見がありました。これらの投稿においても指摘されいますが、私なりにいくつかの点にしぼって私見を述べます。かなり長くなってしまいましたので、2回か3回に分けて投稿します。

【1 現行規約の民主主義的側面】
 現行規約には、いくつかの民主主義的な規定があります。

第19条 党の各級指導機関は、党大会と各級党会議で選出される。選挙は選挙人 の意志が十分表明されるようにしなくてはならない。
第22条 党の基本的な問題について、全党討議を特別に組織するのはつぎのばあい である。
(1) 三分の一以上の都道府県組織によって、その必要が認められたばあい。
(2) 中央委員会の内部に確信をもつ多数が存在しないばあい。
(3) 中央委員会の内部に、一定の見地にたつ強固な多数があっても、中央委員会がその政策の正しさを全党的に検討する必要を認めたばあい。
 この全党討議は、中央委員会の指導のもとにおこなう。
第25条 党大会は、中央委員会によって招集され、二年または三年のあいだに一回ひらかれる。特殊な事情のもとでは、中央委員会の決定によって、党大会の招集を延期することができる。党大会は、中央委員、准中央委員および代議員によって構成される。中央委員会は、党大会の招集日と議題をおそくとも三カ月前に全党に知らせる。
 中央委員会が必要と認めて決議したばあいと、党員総数の三分の一、または都道府県組織の三分の一が、その開催を要求したばあいには、三カ月以内に臨時大会をひらく。

 全党討議の規定や臨時党大会の開催に関する規定は、50年問題を経て新たに追加された規定です。この投稿を書くにあたってあらためて文献的な検証をしていませんが、私の記憶は間違っていないと思います。あの不幸な時代の経験がこの規定を党規約に明記させたのだろうと思います。当時の主流派といわれた党幹部が誤った方針を全党に押しつけ、独善的な実践が、日本人民の闘いと党に深刻な打撃を与えたという経験を深く反省したことが、これらの規定を党規約に明記した背景であったということです。党が正しい方針を確立していく上で、全党の意志を的確に集約することの重要性が当時の全党の意志によって確認されたと理解することができます。
 これらは、いずれも党の意志決定に党員の意志を反映させる上で重要な規約上の規定です。ところが、これらの規定は綱領確定から現在まで一度も発動されたことがありません。「都道府県党組織や党員の三分の一以上」という規定が意味を持つためには、都道府県党組織相互の間での意志の疎通、所属支部の境界をこえて党員相互間に何らかの意志の疎通が可能でなければなりません。ところが、所属する支部、地区、都道府県をこえて意志の疎通は事実上許されていません。
 また、党中央と異なる見解や反対の見解を発表することを禁止する規定があれば、党内にどのような意見があるかを知る機会は一般党員には存在しません。党の機関紙誌が「反対意見を公表すること」は経験的に皆無に近いので、上にあげた規約の民主主義的規定は死文化しています。党員が党中央の方針や決定に反対する意見を公表する自由がなくして全党討論も大会における討論も成立するはずがありませんし、全党討議を一般党員が要求することもできません。
 現行規約の民主主義的規定が実質的な意味をもつための制度的保障はほとんどない、といわねばなりません。これは、日本共産党が非合法状態におかれた戦前の経験と深い関係があり、反非合法状態におかれてから間もないという当時の情勢の反映であり、非合法状態における党を想定していることがその主要な理由であることは間違いないでしょう。
 現行規約の民主主義的規定が、発動されたことが希であり、実質的に死文化しているとしても、これを現状追認的に削除したり、さらに骨抜きにするようなことが、今後の党のあり方として正しいとは思えません。
 他の政党の規約を検討したことはありませんから、どのような表現になっているかは知りませんが、たとえば自民党などでは総裁を選出した後は、人事権も含めて非常に広汎な権限を総裁にあたえ、トップダウン方式の党運営が行われているはずです。一般の党員が党の政策や方針の決定に参加することはなく、選挙運動の手足となって動くだけの存在なのでしょうか。党大会においては代議員の選出などで、一般党員と国会議員とは厳格に区別され、国会議員には特権的な地位があたえられています。それは、この党がもともとブルジョアジーの政党であり、少数者による多数者の支配を使命としている政党であるという階級的な性格からきているものであり、本質的に社会全体の多数者の意見を反映する必要がないからであります。したがって、党総裁など少数の幹部による党運営でいっこうにさしつかえないということです。
 社会の根本的な変革をめざす日本共産党においては、党の意志決定に人民の意志がどれほど反映するかは決定的なものであり、その党の性格さえ左右するものです。この点から、現行規約第16条「党組織の階級構成は、労働者の比重を不断にたかめなくてはならない。指導機関の構成もまた同じである。」という規定は、あってもなくてもよいとか、他の規定で準用できるというような性質のものではありません。党がこのようにして構成され、そして、党の意志決定に多くの党員の意志が反映することは、この党の生命線ともいうべき決定的なものです。そして、そのような党において、全党の意志がどのように集約され、どのように政策や方針に反映するかも、きわめて重要なことであるはずです。
 党規約のこれらの部分を、もし改訂するならば、不破・志位指導部が選択した道ではなく、逆に全党の意志を民主的に集約する具体的な保障を明確にすべきであったと私は思います。むしろ、この道こそが日本共産党の長期の凋落傾向に歯止めをかけ、党の再生につながるものとなるであろうと思います。

【2 なぜ規約改定が先行したか】
 また、さざ波の投稿でも指摘されたことですが、「党大会」について以下のような変更があります。

<現行規約>
第26条 党大会は、つぎのことをおこなう。
(2) 党の方針と政策を決定する。
<改定案>
 第二十条 党大会は、つぎのことをおこなう。
 (二) 中央委員会が提案する議案について審議・決定する。

 なぜこのような変更が必要となったのでしょう。この変更は単なる字句上のものでしょうか。「わかりやすくする」ためでしょうか。労働組合や(私が学生であったころの)学生自治会では、執行部の提出する議案に反対の立場から全面的あるいは部分的「対案」が提出する権利が保障されるのは当然のことですが、改定案のこの規定では、議案を提出することができるのは中央委員会に限定されることになります。
 大会代議員選出の非民主的な過程はさまざまな投稿などでよく知られているところです。私自身も都道府県党会議代議員までは選出されたことがありますが、およそ「選挙人の意志が反映できる」ようなものではありません。党中央に重要な点で異論をもつ党員が選出されることはまず不可能です。何重ものフィルターを通過して構成される党大会においてさえ、議案提出権を中央委員会に限定するというシステムが、なぜ不破・志位指導部に必要であったのでしょうか。
 このことに対する私なりの回答をする前にもう一つ検討すべきことがあります。それは、現行規約第22条「全党討議」の規定が丸ごと削除されたことです。たとえ、さまざまな制約が強まり実質的に後退しつつあるとはいえ、今大会においても、大会議案に対する党員の意見を発表することが行われます。このことは、現行規約の第22条「党の基本的な問題についての全党討議」を根拠としているはずです。これが削除されれば、不破・志位指導部は今後、「全党討論を組織する義務は課せられていない」あるいは「全党討議という制度はない」ということになり、一般党員の側から全党討議を要求する規約上の根拠がなくなることになります。
 臨時党大会開催を要求する要件として現行規約にある「党員総数の三分の一」という規定も改定案では削除されます。さらに、吉野さんが2000/9/21投稿のでご指摘のように、「党の会議や機関紙誌で、党の政策・方針にかんする理論上・実践上の問題について、討論することができる。ただし、公開の討論は中央委員会の承認のもとにおこなう」という現行規約から『機関紙誌』という語句が削除されています。

 不破・志位指導部が全党討論をどれほど好まないかということは、これだけあげれば十分だろうと思いますが、「大会における議案提出権」を中央委員会に限定し、「全党討議」の規定を削除したねらいは、綱領の変更にあたり一切の反対意見を封鎖、抑圧すること以外にはないと思います。
 不破・志位指導部が民主党幹部から要求されたものは「民主集中制・綱領・党名」の変更でした。(私だけではないと思いますが)、私は「民主集中制は放棄しないだろう・綱領は変更するだろう・党名は変更しないだろう」と予想していました。だいたいはそのように進行しつつありますが、予想外であったのは、規約の改訂が先行したことでした。
 大会議案を決定した七中総はまたも満場一致だったようですが、無記名秘密投票で採決をすれば、満場一致になることはなかっただろうと思います。とうてい革命家とはいえないようなふがいない中央委員ばかりですが、この満場一致そのものはそれほど不思議な現象ではありません。
 かの不破氏は、宮本氏の指示のもとで、プロレタリアートの独裁を説き、ブルジョア議会主義を批判し、革命への漸次的移行を唱える構造改革論を火の出るような戦闘的な調子で批判していたのですし、宮本氏の庇護のもとで最高指導者への道を歩んできたのですから、この党の中央幹部には「面従腹背」の幹部が実際にいたということであります。そうしなければ宮本氏のもとで中央役員であり続けることができなかったからです。何の疑問もなく不破・志位指導部を心から支持している中央委員が圧倒的多数であったとしても、七中総に出席し賛成の挙手をした中央委員のすべてが「心から賛成した」とは考えられません。また、現役の中央役員を退いた古い幹部まで含めれば、現行綱領路線から不破・志位路線に変更することに何の疑問ももたないという党員は、それほど希少ではないと思います。さらに私のような下部組織の党員まで含めれば、不破・志位路線に反対する党員が無視できない存在であることは、少なくとも不破氏にはわかるはずです。
 このような党内状況で、綱領改定を試みれば、いくらふがいない中央役員でも「全党討論をすべきである」ということぐらいは言うでしょうから、全党討論を組織しないわけにはいきません。社会における闘いでも党内における論争でも同じですが、闘いや論争が広がり、社会の下層の人たち、あるいは下部組織の党員が多く参加すればするほど、一般的には、闘いは左傾化していきます。「ルールある資本主義」の枠内で満たされる人々もいるでしょうし、あるいは「資本主義そのもの」の抑圧に苦しんでいる人々もさらにその何倍もいます。論争が広がり、まったく党活動に参加していなかった膨大な党員──この党員が現在ではゆうに過半数をこえることは間違いないと思います──が参加するようになれば、「資本主義の枠内での改革」路線を越えるところまで論理は進んでいくかもしれません。不破・志位指導部にとって、中央役員や機関の専従活動家を統制することはそれほど難しいことではありませんが、無数の一般党員を意のままに統制することはできません。綱領の改定を無難に切り抜けるためには、死文化した現行規約の規定──とりわけ一般党員が全党討議を要求したり、臨時党大会を要求したり、党の機関紙紙上で反対意見を発表する権利を保障した規定──さえもが邪魔になった、ということでしょう。
 不破・志位指導部の真のねらいは、綱領改定を何ごともなく粛々と、またも満場一致で達成することにあるといわなければなりません。このことで手間取り、醜態を見せるようなことがあれば、民主党のパートナーとしての資格を損なうことになります。規約から「全党討議の規定を削除」し、「大会における議案提案権を中央委員会に限定」、「反対意見の発表を禁止」したことによって、不破・志位指導部は綱領改定におけるフリーハンドを確保したことになります。
 さらに、前の大会代議員をそのまま臨時大会の代議員として取り扱うことができるようにしたことは、綱領改定の大会が非常に間近に開かれることさえありうることを示しています。ネット上で、来年の参議院選挙直前にも綱領改定を目標にした「第23回臨時党大会」開催の情報が流れていますが、私もそれはあり得ると思います。
 今回の大会で規約改定案が決定されれば、予想される「綱領改定の党大会」にむけて全党討論を、少なくとも私たち一般党員が要求する規約上の根拠はなくなってしまいますので、第22回大会は「全党が(公開の)討論に参加」する最後の大会になるかもしれません。
         <続く>

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