この討論欄は、第22回党大会にかかわる問題全般を論じるコーナーです。
周知のように、先月の党大会で、自衛隊活用をうたう決議案と党内民主主義を根こそぎにする規約改定案が、わずか1名の保留だけで採択された。それでも議案が満場一致で採択されなかったのは、共産党史上42年ぶりのことだそうである。
編集部が述べているように、これほどの大きな政策転換や規約改定を行なうにもかかわらず、たった1名の保留しかあがらなかったのは、この党の全体主義的性格を語ってあまるものがあるが、しかしそれも、党内の選挙の仕方を考えれば、ある意味で当然とも言える。
都道府県委員会の上りの党会議において、党大会への代議員が選出される。たとえばある都道府県委員会に割り当てられた大会代議員の定数が100名だとしよう。そしてその都道府県党会議における代議員数(つまり有権者数)が500名だとしよう。この500名の投票で100名の大会代議員が選出されることになる。都道府県委員会は、大会代議員100名の推薦名簿を党会議に提出する。500名の有権者はそれぞれ定数と同じ100票の票を持って、その票をそれぞれの候補者に投じる(実際の選挙では、候補者の一覧が縦書きに印刷された紙が手渡され、それぞれの候補者の下に○をつけていく)。
この100名の候補者がそれぞれどういう候補者であるかは、もちろん、いちいち具体的に説明する時間などないので、投票者は、これらの候補者が都道府県委員会によって推薦されているというただその一点でのみ投票を行なう。通常はこの推薦名簿以外の立候補者はいないので、この100名の推薦名簿をもとに信任投票が行なわれる。
しかし、ここで今回の議案に批判的な都道府県党会議代議員が、大会代議員になるために立候補したとしよう。すると、100名の推薦名簿候補者と1名の立候補者の合計101名によって100の議席が争われることになる。
さて、ここで問題である。この1名の立候補者が当選するには、何%の得票が必要になるだろうか。最も当選ラインが低い場合を想定しても、50・2%の得票が必要になる。つまり、この立候補者が251票を獲得し、この候補者に回った251票分がすべて100名の推薦名簿の特定人物から流れている場合である。
しかし実際にはこのような想定は非現実的であり、たとえ立候補者が251票を獲得しても、その候補者に回った票は、100名の推薦名簿のさまざまな候補者からランダムに流れるだろう。したがって、251票を獲得したとしても、推薦名簿候補者がいずれも400票以上を確実に獲得しているので、当選できない。
では、最も当選ラインが高い場合を想定するとどうなるだろうか。それは、独自の立候補者に回る票が推薦名簿候補者のそれぞれから完全に均等に流れる場合だが(ただし立候補者は当選ラインを少しでも下げるため、自分以外のすべての票を棄権すると仮定する)、その場合、当選に必要な得票数は499票、得票率は何と99・8%になる!
もちろん、これも非現実的である。したがって、現実の当選ラインは、当選ラインが最も低い場合と当選ラインが最も高い場合の中間あたりになると想定される。すると、日本共産党内部で、党大会代議員に異論派が1名でも選出されるためには、各都道府県委員会の党会議で75%前後の得票を獲得しなければならないことになる。75%前後獲得しないと、1人の異論派党員も党大会代議員になれないのである。これが、わが党の誇る「すべての指導機関は選挙で選ばれる」という「党内民主主義」の原則の実態である。
しかも、重大なことは、そもそもこの都道府県党会議の代議員になるためには、地区党会議で立候補して当選しなければならず、その際の選挙もまた同じであるということである。さらに、地区党会議の代議員になるためには、支部総会で立候補して当選しなければならず、その際の選挙の仕方もやはり同じである。
つまり、支部総会、地区党会議、都道府県党会議の3つの会議で、それぞれ75%前後の得票を獲得してはじめて、晴れて大会代議員になることができるのである。42年間、党大会が満場一致であったのも当然であろう。さらに言えば、この過程で、この異論派党員は、あれこれと難癖をつけられて(たとえば、反党活動の疑いがあるとか)、代議員資格を奪われる可能性もある。実際、東大院生支部ではかつて、そのような理屈で都道府県党会議代議員の資格を奪われた党員がいた。
これがはたして選挙制度だろうか? これがはたして民主主義だろうか?