この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。
まずは以下の2つの記事をお読み下さい。 *丸数字、強調文字は引用者による。
2003年6月24日付朝日新聞記事より。
共産中央委 綱領改定案を了承 不破議長「日本の有効な指針」(見出しより)
共産党の第7回中央委員会総会(7中総)は23日、不破哲三議長が提案した党綱領改定案を、一部字句修正した上で了承、3日間の日程を終えた。綱領改定案は11月22日の党大会で正式に決定される。
総会後、記者会見した不破氏は改定案の意義について「資本主義社会が今のままで2100年まで続くとは思えない。(改定案は)日本の役割の有効な指針となる未来社会論だ」と強調。90年代の大きな変動の中で経験した総決算的なものだ」と語った。
不破氏は、①98年に発表した暫定政権構想で「日米安保条約廃棄の要求を凍結する」とした点との関連について、「(改定案でもそう)読み込んで結構だ」と語り、野党連立政権構想に参加していく場合、日米安保条約を事実上容認する姿勢を示した。
不破氏の説明では、総会では40人が改定案について質問。「現綱領には第2次世界大戦でのソ連の功績の記述があるのに、なぜ改定案から削除したのか」との疑問や「共産主義社会での国家はどうなるのか」などの質問が出された。最終的には「アメリカは世界の憲兵と自称」と表現していたのを「世界の保安官と自認」と改めるなど、31カ所で微修正されたが、趣旨に変更はなく全員一致で了承されたという。
2003年6月24日付しんぶん「赤旗」記事より。
「『革命』と『改革』の違いは」「市場経済の評価は」不破議長に記者の質問相次ぐ(見出しより)
「『資本主義の枠内での民主的改革』といわれているが②『革命』と『改革』の違いは?」、③「政権に入ったら閣僚認証式に出るのか」、「市場経済を肯定的に評価しているようだが、革命とどう結びつくのか」──。
日本共産党第七回中央委員会総会で採択された党綱領改定案について、不破哲三議長が説明した二十三日の記者会見では、時間いっぱいまで多様な質問があいつぎ、関心の高さを示しました。
質問は、党綱領改定案の内容面から、「いつごろから改定案の議論をはじめたのか」「綱領論議の国民への情報公開をどう考えているのか」といった策定過程まで多岐におよびました。不破氏は②「民主的改革というのは行われる中身の特徴づけで、その中身を実行するための権力の移行を革命と呼んでいる」③「認証は国家統治の意思の入らない(天皇の)国事行為で、以前から出席する態度を明らかにしている」「市場経済には資本主義を発展させる機能と、社会主義を展開するのに役立つ機能とがある」など、質問に一つひとつていねいに答えました。
また、不破氏は今年にはいって常任幹部会のなかに小委員会をつくり、常幹会議で議論をしてきたことを紹介。情報公開についても「大会に先立ち、草案を内外に公開し、五カ月あまり全党討論をし、国民の意見もうかがう。そのうえで党大会で仕上げるのが、一番妥当な情報公開のやり方だと思っている」などとのべました。
①日米安保条約廃棄の要求を凍結する
七中総で提案された綱領改定案(以下とりあえず「不破綱領改定案」と呼びます)にこのようなことが書いてあるでしょうか。「不破綱領改定案」四の(一二)の1=いわば「行動綱領」ともいうべき部分の〔国の独立・安全保障・外交の分野で〕には次のように書いてあります。
1 日米安保条約を、条約第十条の手続き(アメリカ政府への通告)によって廃棄し、アメリカ軍とその軍事基地を撤退させる。対等平等の立場にもとづく日米友好条約を結ぶ。
不破氏が①のように述べる根拠はおそらく「不破綱領改定案」の四の(一三)の以下の一節が根拠になっているのでしょう。
統一戦線の発展の過程では、民主的改革の内容の主要点のすべてではないが、いくつかの目標では一致し、その一致点にもとづく統一戦線の条件が生まれるという場合も起こりうる。党は、その場合でも、その共同が国民の利益にこたえ、現在の反動支配を打破してゆくのに役立つかぎり、さしあたって一致できる目標の範囲で統一戦線を形成し、統一戦線の政府をつくるために力をつくす。
上の太字部分についてだけいうならば特に異論はありませんが、字面だけで判断することはできません。かつて不破氏らが実際にこのような衝動にかられたことがありました。このときの様子がどのようなものであったかについて、私はさざ波通信第32号への投稿で次のように書きました。「……この創刊号(99年3月)では1998年参院選での共産党の躍進と自民党の惨敗を受けて打ち出された『安保廃棄という共産党の政策を棚上げにした暫定政権構想』が批判されている。また、この直後に出されたさざ波通信号外では『日の丸・君が代の法制化を求めた」党指導部が厳しく批判された。この他にも、「消費税廃止』の廃止、さらには『3%に戻すことの棚上げ』など消費税をめぐる混迷、有事の自衛隊活用論、……」
目下のところ、不破志位指導部はイラク戦争などに見られるように、いちおうはまっとうな方針を出しています。しかし、私がさざ波通信第32号への投稿で述べたような反人民的な政策、いかなる意味でも「国民の利益」にならないような政治方針を出したのは、彼らの目に「政府参加」がちらついた、まさにそのときでした。
その理由は簡単なことです。「さしあたって一致できる目標」が、ある意味では自民党よりも右寄りで反人民的な小沢一郎氏らを含む「野党」との間で「さしあたって一致できる目標」であったからです。自民党政治の打破は当面する政治の極めて重要な課題ですが、このようにしてできた政権に、どのような民衆の利益を期待することができるでしょうか。細川政権、羽田政権、村山政権も、大局的に見ればいかなる意味でも「自民党政治の打破」ではなかったことを脳裏に刻んだ上で、「不破綱領改定案」を検討する必要があると思います。
②『革命』と『改革』の違い
「民主的改革というのは行われる中身の特徴づけで、その中身を実行するための権力の移行を革命と呼んでいる」という不破氏の答えをもう一度引用しますが、おわかりになる方がいらっしゃれば、どのような意味か教えていただきたいが、これほど不真面目、不誠実な態度はないと思います。これは朝日新聞記事ではなく、しんぶん「赤旗」の記事です。念のため。
③「天皇による認証式」に出席する
「認証は国家統治の意思の入らない(天皇の)国事行為で、以前から出席する態度を明らかにしている」ということですが、私は不勉強で申し訳ありませんが、認証式も国会開会式への天皇の出席も同じことだと思いますが、天皇が出席する国会の開会式に、共産党議員は出席しているのでしょうか。出席しているとすればいつごろからでしょうか。また、「(共産党は)以前から(認証式に)出席する態度を明らかにしている」とのことですが、これはいつごろどこで決まったのでしょうか。ご存じの方はせひ教えて下さい。
いずれにしても、「不破綱領改定案」は「政府参加」と日本共産党の従来の立場との不整合性を、党の伝統をあっさり投げ捨て、もっとも大切にすべきラジカルな民主主義的支持者を切り捨てる方向で解決するものになるでしょう。
党中央は、七中総での綱領改定についての「不破氏の提案」や記者会見の内容を、詳細に公表すべきです。私は党中央にこれを要求します。
欺瞞は語れば語るほど明らかになります。