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綱領改定討論欄

 この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。

見過ごしにできぬ不破発言

2003/7/3 市本浩、60代以上、ジャーナリスト

 「しんぶん赤旗」6月30日付に、綱領改定案討議のための共産党第7回中央委員会総会での、不破議長の「質問・意見に答える」という発言がのっている。
 綱領改定案そのものについては、いろいろな角度からの批判が可能であり、いまここでそれを全面的に論ずるつもりはない。
 ここでは、前記の不破発言のなかに、絶対に見過ごすことのできない個所があるので、それを問題にしたい。
 不破氏は、「国家がなくなるという共産主義社会の高度な発展の展望に関連して」、国家が「だんだん死滅してゆく」未来社会の在りようの「一つの実例として、日本共産党という”社会”をあげてみたいと思います。……規約という形で、この”社会”のルールを決めています。そこには、……国家にあたるもの、物理的な強制力をもった権力はいっさいありません。……この”社会”の構成員が、自主的な規律を自覚的な形で身につけているからです。」とのべている。
 ここでのべられている「自主的な規律」とは、かの悪名高い「民主集中制」をさすことはいうまでもない。
 かつて有名な「田口・不破論争」とよばれるものがあった。田口とは、田口富久治氏のことであり、論争は民主集中制をめぐる問題であった。田口氏の論点の要旨は、ある社会で支配的な政党の組織原理がその社会の組織原理となるという命題にもとづき、共産党が真に民主的な社会主義をめざすなら、現在の民主集中制の在り方を見直す必要があるというものだった。
 これにたいし、不破氏の論点の中心は、各人の自発的な意志にもとづき構成されている党の規律と、みずからの意志ではなく構成されている社会全体を律するルールとは、次元を異にし、田口氏はそれを混同しているというものであった。
 その不破氏が、前記のような発言をするとは、いったいどういうことなのだろうか。
 ソ連型社会主義の功罪については、いろいろ言われているが、その最大の罪悪は、党の規律である民主集中制を国家レベルの規範にまで押し上げ、憲法にうたいあげるなどして、国民の自由な言論・思想を完全に抑圧し去ったことにある。
 ところで、現在の共産党の党内でほんとに自由で民主的な見解表明が可能だなどとは、党員をふくめ、だれも思っていないだろう。だが、前記の不破発言どおりに日本の未来社会が発展していくとしたら、共産党の党内規律がそのまま日本社会全体の規律となるということにはならないだろうか。
 まことに恐ろしいことである。そんな暗黒社会の到来はまっぴらごめんにしたい。
 不破氏は、田口氏との論争にさかのぼって自己点検してみる必要があるし、最低限、田口氏の「名誉回復」をおこなうべきであろう。