この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。
「資本論」を引用します。
「まず第一に資本主義的生産過程の推進的な動機であり、規定的な目的であるのは、資本のできるだけ大きな自己増殖、すなわちできるだけ大きい剰余価値生産、したがって、できるだけ大きな搾取である」(「資本論」第一部第11章)
「資本家としては彼はただ人格化された資本でしかない。彼の魂は資本の魂である。ところが、資本にはただ一つの生活衝動があるだけである。すなわち、自分を価値増殖し、剰余価値を創造し、自分の不変部分、生産手段でできるだけの多量の剰余労働を吸収しようとする衝動である。資本はすでに死んだ労働であって、この労働は吸血鬼のようにただ生きている労働の吸収によってのみ活気づき、そしてそれを吸収すればするほどますます活気づくのである」(「資本論」第一部第8章)
「利潤」(剰余価値)を最大にすることが資本主義的生産の根本的な動機・目的です。
この利潤を増やすために資本主義企業は様々な方法を用います。何よりもまず、労働者をできるかぎり長時間、働かせることです。(絶対的剰余価値の生産)
労働基準法は長時間労働の弊害をなくすため、所定労働時間の最長限度を定めており、使用者は、労働者に、休憩時間を除いて1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけないことになっていますが、日本の現実はリストラの一方で違法なサービス残業が横行している事実に見られるように、異常な長時間労働が放置され、労働者の心身を痛めつけ、生活を破壊しています。
今回の労働基準法改悪による裁量労働制の導入拡大はサービス残業を合法化するものでで、既に裁量労働を導入している電機大手では、違法なサービス残業と長時間労働が蔓延しています。昨年10月に社員8千人の規模で裁量労働制を導入したNECでは、残業手当は月20時間(一日1時間)で、朝8時半に出勤し深夜、明け方に及ぶ過重労働が横行していると言われます。
なお、MBさんが触れていたQCサークルについて、私は「相対的剰余価値の生産」と書きましたが、時間外に「自発的」なものという口実で賃金を支払うことなくやられるという点で「絶対的剰余価値の生産」とも考えられます。
もう一つの搾取の方法が同じ時間内の労働の密度を濃くすることです。労働時間は無制限に延ばすことはできません。そこで資本はこんどは同じ労働時間の中で、どれだけ多くの労働を搾り出すかに努力を集中するようになります。
「労働日の延長による剰余価値生産の道がきっぱり断たれたこの瞬間から、資本は、全力をあげて、また十分な意識を持って、機械体系の発達の促進による相対的剰余価値の生産に集中した」「同時にまた、同じ時間内の労働支出の増大、より大きい労働力の緊張、労働時間の気孔のいっそうな充填、すなわち労働の濃縮を、短縮された労働日の範囲内で達成できるかぎりの程度まで、労働者に強要する」(「資本論」第一部第13章)
電機・自動車など製造現場、トラック輸送などの流通現場、マクドナルドなどの販売業、全て分野での労働密度は極端に高まっています。実態は誰もが実感している通りで、説明するまでもありません。
「有期雇用契約の延長」「派遣労働の延長・拡大」「裁量労働制の拡大」など人生設計も立てられなくなる労基法改悪は、日本資本主義の代表の財界の「21世紀戦略」に基づくものです。利潤を最大にするための産業空洞化も深刻です。
大多数の働く国民が、資本による「剰余価値」の際限ない追求によってよって苦しめられています。
「剰余価値生産」すなわち「搾取」は生産手段が「私的に所有されている」ことから生まれます。搾取する階級(生産手段の所有者・資本家)と搾取される階級(生産手段の非所有者・労働者)があるから「搾取」がうまれます。生産手段を「社会化」するということは、生産手段の「所有・管理・運営」を「社会の手に移す」つまり労働者・勤労者の共同所有とすることです。搾取する階級がなくなり、「搾取」はなくなるわけです。だから「生産手段の社会化は、人間による人間の搾取を廃止し、すべての人間の生活を向上させ、社会から貧困をなくすとともに労働時間の抜本的な短縮を可能にし、社会の全ての成員の人間的発達を保障する土台をつくりだす」(綱領案第5章第15節)のです。