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綱領改定討論欄

 この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。

現代の言葉で語れ。伝統の言葉も残せ

2003/7/17 展望台、60代以上、ソフト開発

 共産党の公式文書を一見しただけで、違和感を覚える人が多いと思う。独特の生硬な用語が目につくからである。専門用語、学術用語かもしれないが、業界用語、仲間言葉と言ってもよいだろう。仲間内だけならよいが、一般国民に本当に読んでもらいたいのなら、かなり工夫を要する。

 新綱領案でその工夫はある程度実現していると思う。新綱領案と現綱領との用語出現数を比べてみると、次表のように増減している。増えたのは一般新聞でよく見かける用語であり、減ったのは『赤旗』に多い用語であることは、すぐ分かる。不破提案報告に言う「表現をあらためる」方針に沿ったものだろう。

【新綱領案で増えた用語】【新綱領案で減った用語】
  増数増数 減数減数
経済 23基本 5 主義 -75生活 -14
国民 23生産 5 帝国 -52世界 -13
社会 23企て 5 党 -47平和 -13
秩序 11人権 5 人民 -37農民 -12
企業 11地位 5 独占 -33勢力 -12
世紀 10探究 5 民主 -32勤労 -11
戦争 9重大 5 民族 -32政策 -11
分野 8代表 5 支配 -28ソ連 -11
国際 8抑圧 5 アメリカ-28運動 -10
改革 8横暴 5 資本 -27復活 -10
政治 8解決 5 革命 -25覇権 -9
問題 6手段 5 要求 -23解放 -9
発展 6ルール 4 反対 -22階級 -9
政党 6現状 4 たたかう-21権利 -9
変革 6財界 4 労働 -21収奪 -9
人間 6成長 4 反動 -20軍国 -9
地方 5国連 4 日本 -17賃金 -9

 このように多少改善が見られるとはいえ、新綱領案の用語を多い順に並べて見ると、次のようになる。

主義 140  発展 29  生活 17
社会 96 政治 27 独占 16
日本 90 戦争 27 共産党 16
国民 57 支配 27 独立 16
世界 56 企業 25 世紀 15
民主 51 国際 22 侵略 15
経済 50 軍事 21 秩序 14
アメリカ 42 政府 18 制度 14
資本 38 アジア 17 帝国 13
平和 34 党 17 従属 13

 やはりまだ赤旗調が濃い。一般に用いられる「民主」「平和」「企業」といった用語でも、共産党独特のニュアンスがつきまとうことを、読者はすぐ感じとってしまう。赤旗用語だけで複雑な現代を描くのは限界があるだろう。

 しかし私は、古い言葉を無くせと言っているのではない。古典から出た言葉にはほぼ確立した語義がある。共産党の綱領論争も長い歴史がある。焦点になった言葉には、それぞれ重みがある。言葉を残すことと、その言葉が意味する概念や事象を評価することとは別問題である。伝統的な言葉はしっかり残した上で、もし批判があるなら、その言葉に真正面から立ち向かうべきであろう。

 先の投稿で述べたように、「計画経済」を「(経済の)計画性」と言い換えたり、「階級」が現代において如何に存在するのかという肝心な点には触れずに、「労働者階級」という用語をそっと仕舞い込むなど、姑息なやり方には賛成できない。「賃金」をはじめ「組合(労働組合/協同組合)」「大衆」「祖国」「収奪」などが、説明も無く消滅したのも、割り切れない。

 卑近な例で恐縮だが、いま「阪神タイガースの歌」が全国にこだましている。戦前の作詞作曲だが、ファンは違和感なく歌っている。いまさら「♪六甲颪」を「六甲の山風」に、「♪蒼天翔ける」を「青空かける」などと言い換えないほうがよい。大事なのは“猛虎酒場”に出掛けて、ファンと一緒に甲子園言葉、関西弁で熱くタイガースを語ることだろう。

 現代の言葉で現代を語れ。新しい言葉と伝統的な言葉を織り成して、しかも「科学的社会主義」の筋を違えずに、『現代の共産党宣言』を雄渾に書いてほしい。難しい注文だが、だれが書くのか。失礼ながら、老議長の内向きな案文に任せずに、文章力があって視野の広い若い人が、シャープでフレッシュな後世に残る名文を書くことを期待したい。

最後に、新綱領案には無いが、一般国民の日常語で、しかも今の政治、経済、社会を語るに欠かせない言葉百選を掲げておく。一般新聞の最近の見出しから、私の好みで選んで、Google検索でインターネット上の使用状況を調べたものである。新綱領案第二章は『現在の日本社会の特質』である。これらのキーワード抜きで、果たしてそれが多角的に描けているのだろうか。
<注>「*印」は現綱領にあって新綱領案で消えた言葉。なお、ここではあえて「賃金」を採らず「給与」を挙げたが、古典を『給与、価格及び利潤』と改訳せよと主張しているわけではない。

商品* 20,700,000 インターネット362,000
価格* 11,900,000 輸出* 341,000
販売 7,940,000 景気 325,000
通信 7,010,000 北朝鮮 311,000
旅行 5,130,000 NPO 302,000
会社 4,800,000 デジタル 288,000
情報 4,670,000 リストラ 283,000
学校 4,210,000 サラーマン 265,000
技術* 3,700,000 金利 260,000
製品* 3,070,000 廃棄物 254,000
パソコン 2,830,000 遺伝子 253,000
家庭 2,480,000 治安 234,000
ビジネス 2,400,000 バブル 228,000
需要 1,870,000 地域社会 170,000
住宅* 1,650,000 起業 169,000
医療* 1,620,000 負債 161,000
IT 1,620,000 発電 158,000
自動車 1,490,000 少子 152,000
道路 1,480,000 構造改革 146,000
産業 1,430,000 拉致 138,000
日本人 1,420,000 ハイテク 138,000
消費税 1,420,000 高齢* 138,000
投資 1,420,000 不良債権 137,000
少年 1,350,000 無農薬 126,000
合併 1,280,000 デフレ 123,000
輸入* 954,000 燃料電池 121,000
介護* 922,000 電子政府 119,000
ドル 803,000 物価 113,000
流通 765,000 郵政 107,000
犯罪 753,000 国債 105,000
暮らし 749,000 麻薬 101,000
給与 741,000 エイズ 101,000
育児 723,000 規制緩和 96,500
派遣 700,000 セクハラ 92,200
ボランティア 672,000 カルト 90,400
証券 611,000 フリーター 83,000
株式 542,000 知的財産 81,100
マスコミ* 535,000 民営化 80,900
所得 504,000 野党 76,200
外国人 499,000 失業率 75,600
業績* 460,000 公的資金 59,900
ローン 458,000 ホームレス 58,600
防衛 455,000 地価 56,000
商店 438,000 非行 53,200
障害者 424,000 支持率 52,500
ロボット 410,000 過労 51,200
税金* 399,000 水資源 47,200
温暖化 373,000 住民投票 42,300
年金* 373,000 市民運動 37,900
融資 367,000 内部告発 22,900