この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。
今回の綱領案においは社会主義的変革の中心課題として「生産手段の社会化」ということを打ち出しました。「生産手段の社会化」は多様な形態が考えられるでしょう。国有化ももその一つです。協同組合的な形態も広く、採用されるでしょう。
ただその際最も大切なことは、その「所有・管理・運営」が常に「生産者が主役」という原則をどんなことがあっても堅持することです。政治、経済、社会において民主主義に反するような体制は断じて社会主義・共産主義ではありえません。なぜかというと「生産者が主役」「国民が主人公」ということを無視、軽視すれば社会主義建設は必ず失敗します。「市場経済を通じ社会主義に進む」「計画性と市場経済を結合させて」というのもそういう観点からのもので、国民の自発性、意思、要求、声を無視して上からだけの、一方的な、統制経済は絶対にうまく行きません。
ソ連の国有化、農業の集団化は社会主義の原則とはまったく正反対のものです。「生産手段」が国有化されただけで社会主義経済とは言いません。「生産手段」は国家の一部官僚の手にではなく、社会全体の手に「所有・管理・運営」が移されなければなりません。ソ連の「国有化」「集団化」されて工業も農業も悲惨なものでした。農業では大量の家畜が殺され、生産力もがた落ちでした。工業も重さのノルマだけ課し、使えない機械などが野ざらしになっていたのは承知のとうりです。どのような材質の、どのような形の、どのような色の、どのようなデザインの製品をつくるのかは、国家の一部の官僚がすべて決められるはずがありません。それ統制的にやろうとしてソ連は失敗したのです。このソ連の失敗の事実は決して「蛇足」などではなく、社会主義原則に反するやり方では決して社会主義的変革は不可能だという重要な歴史的事実です。
綱領案は言います、「生産手段の社会化は、その所有と管理が情勢と条件に応じて多様な形態をとりうるものであり、日本社会にふさわしい独自の形態の探求が重要であるが、生産車が主役という原則を踏みはずしてはならない。『国有化』や『集団化』の看板で、生産者を抑圧する官僚専制体制をつくりあげた旧ソ連の誤りは、絶対に再現させてはならない」「国民の消費生活を統制したり、画一化したりするいわゆる『統制経済』は、社会主義・共産主義の日本の経済生活では全面的に否定される」
ちなみにナチスも社会主義を標榜したし、日本の戦時中の革新官僚たちも、マルクスやレーニンの社会主義経済を学んで自分流に解釈し、戦時統制経済を進めました。そこにはもちろん「生産者が主役」という視点ははまったくありませんでしたが。