この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。
澄空さんの議論には驚くことばかりです。
1.まず、現行綱領が「君主制の廃止」を「民主主義革命」の課題としているという点ですが、現行綱領のどこにそう書いてあるのでしょうか。
現行綱領の「第五章 国民大多数の利益をまもる新しい日本へ-当面する革命の性格と党の中心任務」の行動綱領に「君主制の廃止」は入っていません。「君主制の廃止」は、「第六章 独立、民主、平和日本の実現めざして」の「統一戦線政府から革命の政府へ」の最後のところで次のように書いてあります。
「この権力は、労働者、農民、勤労市民を中心とする人民の民主連合の性格をもち、世界の平和と進歩の勢力と連帯して独立と民主主義の任務をなしとげ、独占資本の政治的・経済的支配の復活を阻止し、君主制を廃止し、反動的国家機構を根本的に変革して民主共和国をつくり、名実ともに国会を国の最高機関とする人民の民主主義国家体制を確立する。」
すなわち、「君主制の廃止」の課題は、米日反動勢力の支配を打ち破って樹立した革命の政府が遂行すべき課題として掲げられているものです。この点についてこれまでの党の解説では、民主主義革命の課題は米日反動勢力(2つの敵)の支配の打倒であって、天皇制廃止はその後に国民の合意を得て行う長期的視野に立った課題であるということだったはずです。
何よりも、現行綱領の下での党の長い実践活動において、かつて「天皇制廃止」が掲げられたことがあったでしょうか? 天皇問題に関するこれまでの党の実践活動は、現行憲法の象徴天皇条項を厳格に遵守し主権在民の精神を守らせること、政治利用に反対することに尽きるのであって、これはまさに今回の綱領改定案の立場です。
2.次に、「君主制」の点です。
澄空さんは、日本は「君主制」の国家であって天皇は「君主」であるといわれます。まるで右翼ですね。もしそのような発言をする政治家がいたら、我々は、「とんでもない。日本は主権在民の民主主義国家であって、天皇は君主でなく象徴にすぎない」と抗議しなければならないはずです。違いますか?
「統治権の形骸化」とは統治権があるがそれを行使しない慣行が確立しているというような場合をいうのであって、憲法上明文で統治権を否定されている天皇には「形骸化」という言葉は当たりません。「象徴」とは「鳩」が平和の象徴であるとか「星条旗」が米国の象徴であるといった意味であると、どの憲法教科書にも書いてあります。つまり、我々は天皇を鳩や旗のように政治的に無力な存在として扱わねばならないという意味です。
天皇制を不愉快な存在で廃止したいと思わない人はここにはいないでしょうが、自分の主張に固執するあまり、憲法原則を無視したり、過大に天皇制を描こうとするのはかえって方針を見誤ることになります。
綱領改定案は、少なくとも天皇制に反対する理由を「一人の個人あるいは一つの家族が『国民統合』の象徴となるという現制度は、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではな」いと丁寧に書いている点で、「君主制の廃止」という不正確な表現だけの現行綱領よりも優れていると私は思います。