この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。
ばるさん様 「賃金」@「新綱領案」に関する拙稿、読んで下さりありがとうございました。また『資本論』の読み方までご教示下さり、恐縮しております。
ただ、老骨に対して「是非再度学習して欲しい」とおっしゃるほど「賃金」が重要なものなら、新綱領案にせめて一言ぐらい触れてほしかったと、というのが投稿の趣旨であります。
私は、「共産党が『賃金』問題を取り上げていない」などとは書いていません。誤解もしておりません。「新綱領案」から欠落していることを、問題にしたのです。
ばるさん様は、その理由について現綱領の“行動綱領”との関連に注目し、「不破提案報告」を引用して説明しておられます。しかし、それなら何故「労働時間」については「新綱領案」に書き込んでいるのでしょうか。「労働時間」は残し「賃金」は削除した理由を、ばるさん様にぜひ解説していただきたいと思います。併せて、外国の「貧困」に触れながら、日本の現状では言及していない理由も、ご教示下さい。
---------------------------------------------
ついでながら、新綱領案から欠落している重要キーワードをさらに挙げると「計画経済」がある。この言葉は、現綱領で次のように肯定的に使われている(「自由と民主主義の宣言」でもほぼ同じ)。
>「生産力をむだなく効果的に活用する社会主義的計画経済」
>「計画経済と市場経済の結合など弾力的で効率的な経済運営」
新綱領案では、「計画経済」は無くなり、次のように言う。
>「生産手段の社会化は、…経済の計画的な運営によって…」
>「社会主義的改革の推進にあたっては、計画性と市場経済を結合させ…」
「計画経済」は、学問的には確立した概念だろうと思う。かつては大学に「計画経済論」という講座名もあった。試しにインターネットで検索(Google)して見ると、流行りの「市場経済」に比べて1桁少ないとはいえ、8千件以上もヒットする。今も生きている言葉なのである。新綱領案は「分かりやすく」というのがコンセプトだという。しかし「計画経済」を「計画的な」とか「計画性」などと言い換えられると、かえって戸惑う。それなら「市場経済」も分かりやすく言い換えてもらいたい。
不破議長の提案報告には
>「『計画経済』を国民の消費生活を規制する『統制経済』に変質させてはならないという点は、『自由と民主主義の宣言』をはじめ、わが党が一貫して重視してきたこと」
とある。計画経済と関係深い「国有化」という言葉は、『宣言』では
>「国有化が必要となる場合にも、その対象となるのは、大企業の手にある主な生産手段だけ」
と、限定的ながら必要性を認めていた。しかし、綱領では「集団化」とともに今回初めて登場し、次のように否定的に用いられている。
>「『国有化』や『集団化』の看板で、生産者を抑圧する官僚専制の体制をつくりあげた旧ソ連の誤りは、絶対に再現させてはならない」
しょせん、悪いイメージのつきまとう言葉は避けよう、ということだろう。他方の「市場経済」も欠陥を連想させる言葉なのだが…。新綱領案第五章「社会主義…」について、不破報告は長文を費やしている。なんとなく格調を欠き、弁明的な文章に思えるのは、私の意地悪だろうか。