この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。
細かいことですが、私は「共産党が『賃金』」問題を取り上げていない」と展望台さんが書いているとは書いていません。
展望台さんは「『賃金』が欠落したのは、単なる不注意とは思えない。現綱領制定以来、約40年間に日本の賃金水準が一般的に向上し、国際的にも見劣りしないことを、共産党が暗に認めたためだろうと、私は思う。」と書かれています。これについて私は展望台さんが誤解していると指摘したのです。
展望台さんの「何故『労働時間』については『新綱領案』に書き込んでいるのでしょうか。『労働時間』は残し『賃金』は削除した理由を、ばるさん様にぜひ解説していただきたいと思います。」について。
現綱領には「当面する行動綱領」として35項目にわたる各階層・各分野の広範な「要求の一覧」が記されています。戦争・平和、国際経済秩序、環境・資源、国際連帯、憲法、選挙制度、議会制度・地方制度・教育制度・司法制度、自衛隊、弾圧法令・弾圧機関、政教分離、部落問題、賃金・失業、労働法、労働時間、過密労働、米の輸入自由化・減反政策、農業政策、林業・水産業、土地、自営商工業者・自由業者、アイヌ、知識人、女性、母親、青少年・学生、18歳選挙権、社会保障制度、中小企業、環境破壊・公害、原子力、災害・事故、日本文化・教育・科学・技術・芸術・スポーツ、思想・表現の自由、財政・経済政策、貿易、税制、独占資本に対する民主的規制などです。
新綱領案はこれらの「行動綱領」=「要求の一覧」ではなく「民主主義的改革」の「主要な内容」として3つの柱に整理しています。従って削除された「単語」は「賃金」だけでなく他のいくつかの要求も含まれています。
3つの柱のうち「経済的民主主義」の分野については改革の内容を6項目に整理してあります。「要求の一覧」では「賃金」は3項目に記されており、そのうちの1つの項目に「長時間労働」と並べて記されています。一方、新綱領案では「長時間労働」は6項目のうちの最初の項目の「ルールなき資本主義」の「規制」の例として「労働者の長時間労働や一方的解雇を含め」「行動綱領」とは違う範疇の中に書かれています。「賃金」という言葉は「消え」ていますが、この項目に「含」まれていると考えることはできるし、第2項の「大企業の民主的規制」による「国民の生活と権利を守る」に含まれると考えてもいいと思います。いずれにせよ「賃金」という「単語」が「消えた」のは「諸階層、諸分野の切実な要求を軽くみるということでは、もちろんありません。こういう改革を実行することによって、各階層・各分野の要求に現実に道を開くという意味でのことですから、その基本的構えをよくつかんでほしいと思います」
もちろん、くり返しますが、「賃金」という「単語」が消えたのは共産党が「現綱領制定以来、約40年間に日本の賃金水準が一般的に向上し、国際的にも見劣りしないことを、共産党が暗に認めたため」という展望台さんの主張はまったくの誤解です。
「長時間労働」の問題については、新綱領案では第5章の未来社会論の中の「生産手段の社会化」の効能の一番目の中に「生産手段の社会化は・・・労働時間の抜本的な短縮を可能にし、社会の成員の人間的発達を保障する土台をつくりだす」とも書かれています。
お分かりになると思いますので、説明はしませんが、そのまま理解したらよいでしょう。
「併せて、外国の「貧困」に触れながら、日本の現状では言及していない理由も、ご教示下さい。」について
「日本の現状では言及していないと」とありますが、新綱領案の中の「民主主義的改革の内容」の中では「貧困」の言葉はありませんが、私は「賃金」と同様、に考えればよいと考えます。
ちなみに上述した第5章の同一箇所に「生産手段の社会化はすべての人間の生活を向上させ、貧困をなくすとともに、・・・」と「貧困」について言及していますが、これは日本に「貧困」が存在することを前提にしてのことであるので、「外国」の「貧困」問題だけに言及しているのではないことはお分かりいただけると思います。
それから「外国の」とありますが、新綱領案第3章9節には「アジア・中東・アフリカの多くの国ぐにでの貧困の増大(南北問題)」とあるように発達した資本主義国の「貧困」とははっきり区別して取り上げていますから、「南北問題」においての「貧困」が質的に違うものであることを御理解ください。「グローバリゼーション」の下、「難民問題」とも結びついて、アジア・中東・アフリカの「貧困」の悲惨さは御承知の通りです。
「新綱領案では、「計画経済」は無くなり」という指摘について。
これもまったくの誤解です。展望台さんも引用されている通り、新綱領案では「経済の計画的な運営」とありますがこれは「計画経済」そのものです。何故「消滅」したと言われるのか分かりません。
「計画経済」という言葉は「学問的に確立した概念」というような難しい言葉ではなく、中学校の公民の教科書にも書かれている極一般的な言葉です。だからGooglrに8千件もあるのです。
「新綱領案は「『かりやすく』というのがコンセプトだという。しかし『計画経済』を『計画的な』とか『計画性』などと言い換えられると、かえって戸惑う。」とありますが今回の新綱領案の改定の最大のねらいは多くの人達に「よりわかりやすい綱領となるように表現をあらためる」ということにあります。難しかったら「日本共産党はどんな日本、どんな世界をめざしているか、その実現の道すじをどう考えているか」理解されません。社会の変革は政党だけでできるものではありません。国民の意思、支持が基本です。そのために「分かりやすくする」ことに展望台さんが「戸惑う」のは理解できません。
「『「市場経済』も分かりやすく言い換えてもらいたい」とありますが、Googleで検索すると6万3千5百件もあります。「計画経済」以上に一般的な用語です。もっと分かりやすくというなら、展望台さんも考えて提案すればよいのではないでしょうか。
ソ連の「国有化」や「集団化」は「悪いイメージ」ではなく、歴史の事実を見れば分かるように「悪い」そのものです。ここでは述べませんが、どんなものであったか自分で調べてください。
新綱領案第5章について展望台さんが「なんとなく格調を欠き、弁明的な文章に思えるのは」展望台さんの「意地悪」のようです。(失礼)