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綱領改定討論欄

 この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。

綱領改定案に対する批判(6)

2003/8/12 S・N生、60代以上、無職

6 綱領改定案をめぐる討議のあり方について

 共産党は、6月21~23日に第7回中央委員会総会を開催し、幹部会が提案した綱領改定案を一部字句修正の上で満場一致で採択し、11月22日に招集される第23回大会に提案することを決定した。これまで検討してきたように、この改定案は現綱領からの根本的転換を含み、また改良主義的傾向の多くの問題点を抱えているにもかかわらず、中央委員会でこれに対する反対者が一人も出なかったということは、異常なこととしか思えない。

 その後、『しんぶん赤旗』は、連日、この改定案の礼賛・讃美の声を収録して党内世論を誘導しつつあり、これに対する異論は一切掲載されていない。中央委員会書記局は、この改定案にかんする公開討論のための『しんぶん赤旗』学習・党活動版(別刷り・臨時増刊号)を発行するとしたが、「注文によって各党組織に送ります」(『赤旗』7月11日)とされているので、そこに批判意見が掲載されていても、恐らく限られた範囲の人の目に触れるだけであろう。こうして、批判意見の発表を認めるという形をとりながらも、それは片隅に追いやられ、党内世論に影響を与えうる道は事実上閉ざされていると思われるのである。

 また、不破氏は、前記の記念講演の中で、「党外の方々のご意見もおおいに歓迎するものです」と言っているが、党中央は、例えばインターネット上ですでに展開されている党外の批判意見に答えようとはしていない。そして、これら党外の批判意見と討論する道は、実際には開かれていない。

 こうした事態は、きわめて嘆かわしいことである。日本の政治において、社会党が右転落したいま、批判的な政党は事実上共産党しかいない。その共産党が、一方でマルクス主義(科学的社会主義)の原則を歪めて改良主義的方向に向かい、同時に、民主的でオープンな討論や党外との意見交流を実質的に阻害する閉鎖的・上意下達的な体質を強めていることは、今後の動向について深刻な危惧を抱かせるものである。

 現在、世界経済は日本を始めとして長期停滞に突入し始めており、アメリカ帝国主義の戦争政策とあいまって、体制としての資本主義は本格的な危機的段階を迎えている。だが、ソ連崩壊後、社会主義の威信は地に落ちたために、社会変革の将来展望が人民大衆共通の理念として形づくられていない。このことが、世界の人民の闘争を大きく制約している。そうした中で、日本共産党が新しい綱領を作成して将来の変革を問題とするということは、議論活性化の一つの大きなチャンスとなりうるものである。このチャンスを活かすためには、共産党がこの討論をオープンな場にもちだすことが必要である。具体的には、共産党のホームページに綱領討議の掲示板を設けて、(誹謗中傷は別として)党内外の自由な討論の機会を提供すること、『しんぶん赤旗』に常設の討論欄を設けて、読者すべてが批判意見を含めて討議の状態を知り、それに参加しうる条件を作ること、その意味で「情報公開」を徹底させること、こうした議論をある期間続けて(今年11月までという短期間に限定しないで)、その討論の中から大きな共通の方向を見出す努力を積み重ねること、を提唱したい。こうした、いわば捨て身の努力なくしては、社会主義・共産主義思想の威信の回復と、共産党の政治的思想的リーダーシップの確立は困難だと思われるのである。