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綱領改定討論欄

 この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。

教条的でなく実践的で柔軟な議論を

2003/8/4 democrat、40代、弁護士

 この「さざ波」は今回初めて投稿したが、民主集中制などの党中央の教条主義を批判する人たちが多いのかと思ったら、天皇問題や路線問題に関してはかえって現行綱領を金科玉条のようにして批判する方が多いのだなという感想で、率直に言ってがっかりした。
 今回の綱領改定案については私も疑問は多々あるが、少なくとも歴史的到達点や社会科学の成果を真剣に検討して柔軟な発想で書かれている点で好感を持つ。

 澄空氏やS・N生氏から長文の批判をまたいただいたが、7月27日付けで私が川上慎一氏に書いた、この問題の実践的意義についての議論は無視されたようだ。

1.天皇制は「君主制」、天皇は「君主」という点
 「ブルジョア君主制」でも「立憲君主制」でもいいが、憲法が明文で統治権を否定し社会的実態としても統治権を全く有しない現在の象徴天皇制に対して、あえて「君主制」や「君主」という表現を用いる実践的意味は何か?
 我々は憲法を根拠に、「象徴天皇制は君主制ではない」、「天皇は君主ではなくて象徴にすぎない」と端的に明言して(これは憲法学者の常識だし、一般国民の意識にも適うだろう)、君主のように天皇を持ち上げようとするあらゆるあらわれに対して闘うべきではないのか?

2.天皇制「容認」について
 現行綱領においても天皇制廃止は当面の課題ではなかったはずだ。現行綱領下の「実践活動」において、天皇の政治利用や政教分離原則違反の問題は現行憲法違反の観点から取り組んできたのであって、党が「天皇制廃止」の方針を掲げて取り組んだ運動はないだろう。

 天皇制廃止の課題をいつ提起するのかという点は、現行綱領においてもそれほど明確なものではなかったのであって、当面する課題でない以上「いつ提起するのか」などと言っても具体的に答えられるものではないし、あまり意味もないことだ。現時点の綱領では、象徴天皇制廃止の基本的立場を明確にしておけば、「情勢が熟したときに国民の総意によって」程度で十分だし、それ以上書きようがないのではないか。批判者にはぜひご自身の具体的見解を披露してもらいたいものだ。

3.天皇制の政治的危険性
 S・N生氏は、川上慎一氏同様、「天皇は反動勢力にとって極めて有力な道具であって、自衛隊のクーデターと連動して、天皇に・・・超憲法的行為をとらせるという可能性を否定することはできない」として、そのような可能性はないという私見を批判した。
 しかし、彼は私の重要な論拠であった、「戦前の軍部台頭に利用された天皇の統帥権や美濃部博士の天皇国家機関説に対する非難は、まさに天皇が明治憲法において万世一系の絶対君主とされたことが利用されたのであって、このような利用は現行憲法の下では全く不可能」という点は、無視したようだ。
 明治憲法とその下の天皇に対する国民意識と、現憲法下の60年近い政治的積み重ねと象徴天皇に対する国民意識の大きな隔たりを考えれば、天皇をクーデターの道具になどというのは全くの荒唐無稽であろう。
 可能性のみを言いつのるなら、「万々が一」などの政府答弁を我々が批判したかつてのソ連脅威論のようなものである。
 天皇制の政治的危険性はそのような荒唐無稽な危機アジではなく、もっと別のところに存在する。あえて言えば、ソフトなイデオロギー支配の装置としての役割だ。そして、これに対しては憲法と国民多数の意識に依拠して徹底的に天皇制を政治的に無化、中性化していく戦略をとるべきなのである。天皇制廃止はその先の課題である。