この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。
共産党が民主的革新政党であるなら、綱領に関する論議を党内で行うとともに、各地域で草の根集会を開いて、国民や諸運動の意見をきいてプログラムを豊富化していくこともできるでしょう。そんなことができないのが悲しいかな現在の共産党です。共産党がどのように「柔軟化」してみても、共産党の体質・組織・思想そのものに本質的な欠陥(ひとことで言えばスターリン主義・全体主義)があると思われます。
諸投稿を拝読すると、官僚的な体質や「民主的経営」の引き回しや専従者の生活の歪み等々への言及が散見されますが、それは戦後の共産党の歴史で連綿と繰り返されてきたことではないですか。「活動」に「真面目」に「良心的」に取り組んだ者ほど、その歪みの被害者になった実例は無数だけれど、その反省は共産党中央にはできないでしょう。
現綱領制定時の非民主的な決定の仕方や、きちんと総括をしないまま方針を変え、大衆運動に押しつけることもあった日本共産党の歴史をご存じない方も多いようですが、その問題を共産党の普遍的な問題としておさえたうで、どのように共産党をよくしていくのかをぜひ考えていただきたいです。
一般の国民としては、ヨーロッパのような社民政党や緑の党・新左翼の一定勢力もない現状で、共産党がこのまま消えてしまうのは困りますし、今の共産党が「躍進」(することはありえないですが)するのも困ります。新自由主義や軍事・管理国家化に対抗し、非常に複雑な状況の中で、新しい社会の変革をめざすプログラムをつくり、それを担う政治勢力は、必ず生みださされるとは思いますが、それに共産党(系勢力)がどうかかわることができるのか、現状では厳しいといわざるえません。
そこで、蛇足ですが、次の点はどうなんでしょうか。
1.スターリン主義的な理解では、社会主義とは、プロレタリア独裁(労働者階級の権力)+生産手段の社会的所有(国有化)+計画経済でだったわけですが、それは破綻しました。新綱領案も「市場経済を通じて社会主義へ」という探求も含めて云々といっていますが、社会主義は何かを明示できていません。市場経済を完全否定する社会主義(一国一工場論)は、統制経済的になり政治的全体主義・官僚主義と直結していました。共産党は「ソ連の指導者が社会主義の原則を踏みにじったから失敗した」というような非科学的な認識のようですが、この点を理論的に総括できていないことは、「民主集中制」のようなスターリン主義を克服できていないこととも深く結びついているでしょう。
綱領案では「主要な生産手段」を一国だけでどうやって社会(的所有)化するのかはっきりしません。はっきりしないのはわからない(当面やる気もない)のだから仕方ないでしょう。その点で、実は自分たちも社会民主主義と同じだ(社会民主主義に復帰しした)という自覚・認識こそが積極的に求められると思いますがどうですしょうか。
2.自衛隊については、統一戦線の政府が安保条約を破棄したもとで、自衛のための実力=「自衛隊」を再編成したものを保持するとはっきり言えない曖昧さも、論理的な探求・整理ができていないからでしょう。共産党はそもそも非武装の9条に反対したわけですが、原理的に主権国家として自衛のための一定の実力を保持することを否定する根拠はないでしょう。また左派政府ができた一定の条件のもとではアメリカやスターリン主義国家や各種テロリストの侵略・攻撃・干渉の可能性は否定できず、軍事力を使用する必要がないとはいえません。侵略戦争の反省、国民の平和主義の意識、米軍従属下に侵略・弾圧の道具と化している違憲の自衛隊の現実、改憲問題、根本的には軍備の全廃に向けてどのように整理をするのかということが問題なのはないでしょうか。