この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。
「さざ波通信」は、日本共産党に対する「左からの批判者」として精力的に発信を続けている。S・T氏の深い見識に基づく日本共産党批判の鋭い論調には、毎回大いに学び啓発されている。
「さざ波通信」が1999年2月のサイト開設以来警告してきた日本共産党の右傾化はその後も急速に進み、前22回党大会での規約の全面改悪、そして今回の綱領の全面改悪にまで至っている。こうした事態を迎えて、党の再建についてS・T氏の見解を伺いたいと考えた。
<日本共産党の変質に対するわれわれの思い>
今回提案された綱領の全面改定は、S・T氏が指摘する通り、「現行綱領の戦闘的・革命的内容を基本的に廃棄するものであり、日本共産党の議会主義的改良主義政党への完全変質を画するもの」(「さざ波通信」33~35号)である。
日本独占資本は、有事立法・イラク特措法の制定、自衛隊の海外派兵と、アメリカ帝国主義の侵略戦争に積極的に加担し、その最大の障害となっている憲法の改悪も具体的日程に載せた。新自由主義むきだしの、労働者の首切り、リストラ、医療・年金改悪等により大多数の国民の生活はますます逼迫してきている。いまや、戦後の民主主義・憲法体制は壊滅状態となっている。
この重大な情勢のとき、日本共産党は闘いの旗を一層鮮明に掲げるのではなく、支配権力との正面からの対決を回避する綱領を策定しようとしている。
日の丸・君が代法制化のきっかけをつくった不破指導部は、天皇制と自衛隊を綱領の上でも事実上容認し、戦後民主主義の一貫した担い手であった日本共産党の立場を放棄した。
アメリカ帝国主義と日本独占資本の二つの敵は、倒すべき対象ではなくなった。「革命」は独占資本を温存した「ルールある資本主義」の枠内に閉じこめられ、社会主義・共産主義ははるか彼方へ追いやられた。
帝国主義をカウツキー流の政策上の問題にすり替え、弱肉強食の市場経済も賛美し、経済侵略を現地の経済を発展させるものとして美化するまでにいたった。国際連帯の立場も、超階級的「野党外交」という泥靴で汚されてしまった。
不破指導部は、日本共産党をひたすら国会での多数派形成・政権参加を夢想する選挙党にし、大衆運動の強化よりは党勢力の温存を優先してきた。経営支部は居住地協力を任務とされ、職場の運動は選挙中心の「職場革新懇」の活動に事実上解消された。国家独占資本の不当労働行為と闘っている国鉄労働者へ全面屈服を強いる国労執行部の4党合意受け入れを容認し、闘いを妨害する役割まで果たした。
不破指導部は労働運動・大衆運動の革命的意義を綱領からも捨て去り、これまでの議会主義路線を一層推進しようとしている。
過酷な弾圧の下でも命をかけて天皇制と日本帝国主義の侵略戦争と闘ってきた戦前の党の歴史は、日本人民と党のかけがえのない誇りである。敗戦後の民主化闘争、三池・安保闘争、ベトナム反戦闘争など党は人民の先頭に立って闘った。こうした戦前・戦後の闘いは、労働者の階級的自覚を促し党の権威を高めた。
われわれが、革命への熱い思いを抱き、全力を挙げて闘い、結集してきた日本共産党を、不破指導部は決定的に変質させ、「42年間の理論的総括」と称して党の戦闘的・革命的伝統をことごとく捨て去ろうとしているのである。
<党再建への道>
綱領が全面的に改悪されれば、党批判の綱領上の基礎は失われる。さらに、党内民主主義が極めて制限されている今の党にあって、党を批判し続ける者は官僚的体質をもった指導部によって組織的にも排除されるであろう。「さざ波通信」が目指している党内部からその路線を批判し、党内世論の転換を図って行くのはもはや不可能である。
変質した党と決別し、不破指導部が捨て去った前衛党の旗を掲げていくことがこの時機求められている。
われわれは何としても前衛党の旗を守っていきたいと思っており、党の右転換を徹底して批判し全国に発信してきた「さざ波通信」がその積極的役割を果たして欲しいと願っている。
このまま手をこまねいていれば、党内外の闘いのエネルギーもやがて雲散霧消してしまうのではないだろうか。
党再建について、S・T氏の率直な意見をお聞かせ願いたい。
(注):
われわれはこれまで、労働組合の階級的・民主的強化のために闘ってきた。組合の変質を狙った攻撃に対しても、その都度反撃し、職場内の力関係では圧倒的に劣勢にある中でも闘いに勝利した。この闘いは、資本の攻撃に屈することなく、働く者の権利と誇りを断固として守るという職場における前衛党の有り様を示す闘いでもあった。
党の日和見主義的方針や官僚主義的な指導を批判しつつわれわれは党に結集してきた。しかし、前大会での規約の全面的改悪により、もはやわれわれが求める共産党ではなくなったと判断し永年在籍した党から決別した。現在は、各人がそれぞれの生産点・生活点で微力ではあるが自立した新たな闘いに挑戦し、党の再建に向けての模索をお互いの共通の目標にしている。