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綱領改定討論欄

 この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。

―人として、共産党員として― 

2004/1/12 愚等虫、40代

 いよいよ、第23回党大会が目前に迫りました。
 私は、昨年の、綱領改定案発表以来、可能な限りの異議申立てと、党改革について の提案等を行ってまいりました。

 趣旨も、内容も、これまでと同じ事にならざるを得ませんが、それでも、今一度、 最後の訴えを、述べさせて頂きたいと思います。

 

 明治維新という一大改革において、それまで、ある種の権威的存在と化していた天 皇は、歴史の表舞台に、否応なしに、引き摺り出されることになりました。
 形の上では、プロシア憲法にならった、大日本帝国憲法の下、陸海軍の統帥権を有 する「大元帥」とされ、精神的には天孫降臨説を背景に、「神の子孫」として、「現 人神」として、国家神道という宗教性を身に纏い、臣民の上に君臨する存在となりま した。
 以後、三代にわたる間、日本は、朝鮮・中国を始めとするアジア・太平洋におい て、侵略と戦争の道を歩み続けました。

 戦後、アメリカによる占領統治の下、日本国憲法が制定され、現綱領は、

 「現行憲法は、……主権在民の立場にたった民主的平和的な条項をもつと同時に、 天皇条項などの反動的なものを残している。天皇制は絶対主義的な性格を失ったが、 ブルジョア君主制の一種として温存され、アメリカ帝国主義と日本独占資本の政治的 思想的支配と軍国主義復活の道具とされた。」

と規定するに至りました。

 不破氏は、「ブルジョア君主制の一種」という規定は、

> 戦前の絶対主義的天皇制が否定され、それとは違う性格のものに変わったとい う事実の指摘としては、一定の意味をもつものですが、しかし「君主制」と規定する ことには、“日本の主権の所在をどうみるか”という点では、誤解を残すものです。

という、訳の分からない言い方で述べ、綱領から「君主制を廃止」するという文言を 完全に削除してまで、天皇制を「容認」しようとしています。

 どなたか、日本の「主権が天皇にある」などと誤解している方が居られるでしょう か?
 誰もそんな誤解はしていないでしょう。「主権の存する日本国民」と、明確に、現 行憲法に書いてあるのですから。そんなことは、今や、小学生の高学年でも知ってい ます。

 また、この間の話の中で、綱領は、党内における文書という意味だけではなく、党 外の人々にも「ディスクローズ」されるものであることを、考えるべきである、と言 われる方が居られました。

 党外の方に「ディスクローズされる文書」として考えるのは当然のことです。
 では「ディスクローズ」とは、一体、何でしょうか。本心を隠して、誤魔化しを並 べ立てる事は、ディスクローズと最もかけ離れた事ではないでしょうか。

 2000年の総選挙の際には、大量に謀略ビラなるものが撒かれました。
 それには、「共産党は天皇制廃止をたくらんでいる」などというように書かれ、党 を攻撃していました。「たくらむ」という言葉は、何かよからぬ事をしでかそうとし ているという印象を与えます。
 しかし、「自治的共生の社会を目指し、君主制(天皇制)の廃止を展望していま す」ときちんと書いていれば、それに対する印象はずいぶん違うでしょう。発展的な ものとして捉えているのだと感じられるでしょう。

 にもかかわらず、もし、そのように書く事を誤魔化して、曖昧にしてしまえば、そ れこそ、謀略ビラ、あるいは一般のメディアで、反共の側から「たくらんでいる」と 言われても、何の反撃もできなくなるのではないでしょうか。

 私には、テレビなどで「天皇制廃止を考えているのなら、何故、綱領に書かないん だ?! 何故、隠そうとしているんだ?!誤魔化そうとしているんだ?!」と詰め寄 られ、まともな返答のできない党幹部の姿が、ありありと見えます。
 それを見ている視聴者は、どう思うでしょうか。
 「ああ、やっぱり共産党は、誤魔化しているんだ。たくらんでいるんだ。謀略団体 なんだ。」と思って当然でしょう。
 私が、反共学者で、「朝まで生テレビ」などに出ているとすれば、この手を使うこ とは当然の事でしょう。だって、「本当の事」なのですから…。

 現綱領に「君主制を廃止」と明記されている中で、98年参院選では、820万人 の方々が、「日本共産党」に投票されたことは、事実であります。
 その後の、相次ぐ、なし崩し的な「右傾化」と、無責任さは、今回の総選挙におい て、決定的な惨敗という結果に現れました。

 「君主制の廃止」を明記する事と曖昧にする事の意味を、しっかりと考えないと、 党は、今まで以上の、さらなる「攻撃」、とんでもない打撃を受ける事になることで しょう。
 ただ、もう、すでに、「胡散臭い政党」として、打撃を受けていると、私には思え て仕方がありませんが…。

 「さざ波通信」でも書かれて居りますように、不破氏は、報告の中で、自分が学生 だったころの「註解日本国憲法」(1953年)なる、丸50年も前の著作を、金科 玉条のようにもち出し権威づけようとしていますが、そのような態度と「二十一世紀 の新しい情勢の諸特徴とこの間の日本共産党の政治的、理論的な発展を十分に反映し た綱領改定案を作るように、全力をそそいだ」とする氏自身の発言とが、如何に乖離 ・矛盾しているか、分かっているのでしょうか。

 憲法制定50数年を経て、この間の憲法学は、学者・研究者・法律家のみならず、 市民・労働者達の裁判闘争等を通じて目覚しい発展を遂げてきました。
 その成果を反映させる事にこそ、綱領を改定する意義があるのであって、かような 権威付けを以って、憲法を論ずるなどは、氏の思考停止、弁証法の放棄であり、そも そも、さざ波編集部の詳細な批判的論証や、多くの投稿、公開討論版における批判な どに見られるように、その他の憲法書なりに目を通したのか、という事さえも疑問に 思うのであります。

 今、まさに、北朝鮮問題やテロ問題、イラクへの自衛隊派兵、そして、天皇及び天 皇家の政治利用を行っての「愛国心」教育、憲法改悪が強力に推し進められようとし ている、このときに、「天皇制容認」と一般マスコミに報道されるが如く、現綱領の 解釈を180度、変更してまで、「君主制廃止」規定を削除するなどということは、 「理論的な発展」などと呼べるものでは、全くなく、日の丸・君が代、「国旗・国歌 化」に先鞭をつけた犯罪的行為と同様に、反動勢力を喜ばせ、後押しをし、日本の民 主主義の発展を支え続けた人々の願いに背くものであり、現綱領を後退させるものと しか言いようがありません。

 先ほど述べましたように、綱領改定案発表以来、ここ「さざ波」編集部の詳細な批 判的検討や多くの投稿、また、南沢大輔氏を始めとする公開討論版上の批判的論証な ど、多くの方々が、反対・異議を唱えております。

 南沢氏は、討論版(NO.1)紙上で、改定案を批判しましたが、金沢春明香氏からの 批判(NO.5)に対し、同(NO.6)紙上で、再反論として、

 1.「象徴」は天皇一人である。
 2.不破議長発言は賀詞賛成を「正当化」している。
 3.党中央の天皇制に対する態度は転換しており、これは歴史的汚点である。
 4.「憲法の枠内でのみ天皇制を認める」ことは不可能である。

という項目を立て、

 「以上の金沢氏に対する質問はすべて党中央に対する質問でもある。しかるべき場 においてできるだけ丁寧な回答をしていただきたい。」

と表明されています。

 これは、公開討論版に載ったものである以上、公式の質問権の行使(党規約第5 条)であります。そして、私の意見と全く同じものです。

 この間、中央は、「赤旗」党活版に、改定案賛成の意見や感想ばかり紹介し、「党 大会を成功させましょう」とキャンペーンしてまいりました。
 このようなこと自体が、私は、「異常であり、民主主義に反する」と思っておりま すし、「党大会の成功」が、何を意味するのか、ということも疑問に思っております が、42年ぶりという綱領の全面改定である以上、徹底論議と質問に誠実に答えるこ とは、最低限の条件であると考えます。
 決して、「シャンシャン」大会で「成功」などと済ませないで頂きたい、と願って います。

 正月、年明け早々、テレビでは、3時間もの皇室特別番組、「愛子さま、……」な るものを放送しておりました。私は、番組欄を見ただけですが…。

 天皇制は、統治権を一個人が有しようと有しまいと、その他の権限を有しようと単 なる象徴に過ぎなかろうと、世襲という形で、生まれたときから、国家の制度とし て、一人の人間の自由を奪い、基本的人権を奪い、自己の生き方を自分で決定するこ とさえ許さない、民主主義の理念に反する制度です。

 まして、現行憲法上、天皇でもなく、法律上も皇位継承者でもない、愛子ちゃん を、生まれた時から(正確には命名された時から)、「愛子さま」と呼び、マスコミ に晒し、普通の子供であれば、護られて当然のプライバシーさえないという、逆の意 味での差別、人権侵害ということを行いながら、まるで当然であるかのような状況に もなっています。

 天皇制は、歴史的「権威」を背景に、「民衆主義」とも呼ぶべき国民の意識を利用 し、近代市民革命以来の「人は生まれながらにして、自由・平等である」という理 念、自由と民主主義の意識、主権者意識、人権意識を曇らせ、その発展を妨げる役割 を果たしております。

 毎年、200億円以上の皇室維持のための予算が使われ、一方では、50人もの餓 死者と、寒風に晒される何千人というホームレスと呼ばれる人々に対する放置という 状況で、憲法第25条における、生存権は、まさに、画餅に帰そうとしております。

 党大会に、出席される代議員の皆さん。

 私には、何の力もありませんが、これらのことを、今一度、考えられ、そして、あ なたが、もし、現綱領のごとく、「天皇制は、ブルジョア君主制の一種であり、人間 の平等と民主主義の理念に反する」と考えられて、党外の知人や友人たちに、これま で語って来られたのでしたなら、その彼、彼女たちに対し、そして、何よりも、自分 の『良心』に対し、恥じることのない行動を、是非、とって頂きたいと、人として、 一人の共産党員として、再度、心から訴えるものであります。

 お読み下さいました皆様、有難うございました。