投稿する トップページ ヘルプこの討論欄は、第２３回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。
はじめて投稿します。数ヶ月前にこのサイトをみつけ、熱くかつ示唆的な議論を楽しく拝見させてもらっています。ロンドンに長く住む私にとって、日本の実情や左派の方々の思いを知る上で、また、日本語の媒体を読む楽しみを得る上で、本サイトは大変貴重なものとなっています。
日本共産党とは縁もゆかりもない者ですが、天皇制に関して、democratさん、澄空さん、愚等虫さん、天邪鬼さん等の間で、繰り広げられている議論について、コメントさせていただきます。
一読者の立場からみると、この議論に関して、次のような印象をうけます。
すなわち、この方々の間では、とりわけ、「democratさん」と「その他の方々」の間では、天皇制反対というスタンスを共有されているようですが、議論がまったくかみあっておらず、さらに悲しいことに、双方の根拠のない人格攻撃が散見されています。
議論がかみ合っていない原因は、同じテーマを別の次元から論じていることにつきると思います。
天皇は、サクラ、フジヤマ、ゲイシャと同様に、日本の象徴であるとの、定義が憲法によりなされています。また、政治権力は剥奪されています。
こうした状況の下で、「天皇は君主か」という問題の答えは、当たり前ですが、定義によります。君主の「伝統的な定義」や、様々な法学者の仮説的定義に照らし合わせれば、イエスもノーも可能なのです。従って、この答え探しは、生産的ではないと考えています（すくなくとも、「伝統的な定義」に照らし合わせれば、君主ではないのでしょう）。この意味で、democratさんの言説には、共感できるところがあります。
と同時に、「その他の方々」が示唆されている、天皇制に関するより本質的・実際的な疑問の提示を、私としては、重視すべきだと考えます。
○なぜ、１家族が、特別の戸籍をもち、国民の義務を免除され、生活できるのか？（しかも優雅に・・・）
―― これは、法の下の平等と関わる大問題でしょう。
○その家族がもつ、歴史的に形成された権威が、国内政治上、外交上、悪用される危険性はないのか？もしあるならば、そうしたリスク要因はヘッジすべきではないのか？
―― これは、民主主義と関わる問題です。
上記の２つの問題については、民主的なプロセス（国民投票）によって、天皇制の廃止のための憲法の改正が可能なので、極めて原理的には、解決可能でしょう。
○太平洋戦争において、その家族が果たした役割、およびその責任の所在如何？
○その家族の存続に伴い、旧植民地諸国におけるわが国のレピューテーションが徒に毀損されているのではないか？
こうした問題点を前に、問い直されるべきは、「この家族がわが国の象徴でいいのか」、「そもそも憲法において一国の象徴を定める必要があるのか」というテーマだと考えています。
サクラや、フジヤマは、民間伝承の結果として、象徴の位置を占めるに至ったのでしょう。これらをわが国の象徴とすることに、積極的に反対する人は「おそらく」少ないでしょう。他方、ゲイシャは、北アメリカ人や西ヨーロッパ人のステレオタイプの日本理解に基づくものであり、祇園の芸者や舞妓さんを、日本の象徴とまで言う日本人は「おそらく」少ないでしょう。一つだけ、「確実に」、だれもが賛成するのは、わが国の象徴は何？、とは極めて主観的な問であるということです。
そして、このことが、「なぜ、一国の象徴が、わざわざ、憲法でもって定められなければならないのか」という疑問の提示に繋がるものと考えます。
共産党の方々は、「ある個人（天皇）が象徴でいいのか」・「そもそも憲法において一国の象徴を定める必要があるのか」の双方について、ノーとおっしゃるでしょう。
とはいえ、一般的には、「天皇が象徴でいいのか」という問い「はい、OKです」と答える人もいらっしゃることでしょう。
また、「そもそも憲法において一国の象徴を定める必要があるのか」については、一見、憲法学の範疇に入りそうですが、憲法の基本要素が国民の手に委ねられるべきだとするならば、この問題もまた国民の判断次第でしょう。
天皇制についての、共産党の新方針に、わたしは、「当たり前だろ」と言わざるをえません。むしろ、左派政党に求められるのは、「ある個人が象徴でいいのか」・「もしOKでも、それは天皇なのか、イチローや中田の方がいいのではないか」・「そもそも憲法において一国の象徴を定める必要があるのか」等について、自己の主張を展開することの筈です。そして、国民投票による天皇制の廃止をリードしていくことです。そうした活動よりも、「天皇は君主か」という問題や、共産党の天皇制の定義の変節の是非を重要視するスタンスは、非共産党員の興味を引くことはないと思います。
democratさん、澄空さん、愚等虫さん、天邪鬼さんといった論客の方々が、こうした方向で、建設的、かつ左派らしい言説を披露なさることを期待しております。