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綱領改定討論欄

 この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。

犬丸氏に反論権は保障されない

2004/2/11 川上 慎一

   この欄で、愚等虫さんの投稿「―民主主義とは何か―(愚等虫)04/1/22」に、democratさんが節度に欠ける表現を使いながら批判、非難を加えました。愚等虫さんのこの投稿に関していえば、私はしばしばうなずきながら読ませていただきました。今回の綱領改定に対する愚等虫さんの気持ちがよく伝わり、democratさんのように「あまりに感情的な天皇制論-愚等虫氏へ(democrat)04/1/25」とは感じませんでした。私は全体としてよい投稿だったと思います。その後、しばらく愚等虫さんの投稿が途切れていることが気になりますが、めげることなく投稿を続けてください。
 澄空さんとdemocratさんの討論も読ませていただきましたが、democratさんの主張は、大会前の私を含めた一連の討論がほとんどフィードバックしていないようです。「法律論の枠を一歩も出ていない」としか思えません。たとえば、澄空さんが「天皇制の概念規定とは何か~ぽっぺんさん・democratさんへ~(澄空)04/2/4」の前半で、述べていることなどをもう少し考えてみたらいかがかと私は思うのですが。ともあれ、これらについてはまた時間をつくって投稿をしたいとは思っています。

 さて、S.Kさんとdemocratさんの間で、党大会の公開討論NO8における犬丸氏の意見をめぐっていくつかの投稿がありました。
 結論を先に述べれば、私は犬丸氏の意見に対して論評を行うことに基本的には問題がないと思います。したがって、democratさんが犬丸氏の意見に対して批判的な投稿をしたとしても、咎められることはないと思います。
 その根拠は、「私人が私的な場で発言したプライベートな問題をを暴いているわけではないのです。赤旗評論版という公的な言論空間で発言した、綱領論議という公的言論について論評することにどのような問題があるでしょうか?」(わからない人ですね:S・Kさんへ(democrat)04/2/5)ということだけで十分ではないでしょうか。
 そもそもS.Kさんが「党員である犬丸氏に反論権が保障されていない」という問題の立て方をしたので、democratさんが「犬丸氏や彼の支持者にもその気になれば反論権は保障されています。あなたのような言い方をすれば、ここでさんざん非難されている不破氏にも反論権が保障されていないということになりませんか? 」といよう反論をしましたが、この反論はあまりにも見当違いではないでしょうか。
 党員には党規約の制約があり、「党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」(党規約第5条)のですから、犬丸氏には反論権はありません。ここに「彼の支持者」を持ち出すことは、democratさん一流のディベート技術なのかもしれませんが、これをもって犬丸氏に反論権が保障されたことになり得ません。まして、不破氏を引き合いに出して、「不破氏にも反論権が保障されていないということになりませんか?」などとdemocratさんは述べていますが、本気でそう考えているのでしょうか。事実上、不破氏の言うことが「党の決定」なのですから、不破氏が「党の決定に反する意見」を持つことはあり得ません。したがって、「不破氏はどこでどんなことを言おうがまったく制約がない」のです。「犬丸氏にもその気になれば反論権が保障されている」とするdemocratさんの反論はどう考えてもおかしいと私は思います。「その気になれば」という修飾語がついていますが、これを使って言い訳をするようなことはなさらない方がよろしい。「これは反論権の有無の問題ではなくて、たんに犬丸氏の個人的事情による自己規制にすぎないからです」(2月9日democratさんの投稿より)という、前段の部分には同意しますが、後段の部分には少々あきれます。前段だけで十分。それほど討論の勝ち負けにこだわる必要はないでしょう。党規約はある意味で「個人的事情による自己規制」でしょうが、もしあくまでも「犬丸氏にも反論権が保障されている」ということを強弁し続け、これを根拠として氏を批判することを合理化すれば、氏には「個人的事情による自己規制」により反論できないことを承知で批判したことになります。これは法律がどうとか、権利がどうとかという問題ではなく、もしそうだとしたら「人間として卑怯である」といわねばなりません。「反論権云々の問題ではない」だけでよい。

 次に犬丸氏批判の内容についてです。これについて私は「非君主制説を採ることで、日の丸、君が代問題、教科書問題など、天皇制イ デオロギーとの思想闘争が過小評価されるのを一番おそれるものである」とする犬丸氏の主張に共感を覚えます。これについてdemocratさんの批判の眼目は「日 の丸・君が代の強制に対して「天皇制廃止」を掲げて闘うべきなのであろうか?」でした。S.Kさんが「(犬丸氏が)短絡的で矮小な主張はされていないと思うのですが?」と読みとったのはむしろ自然な読み方だったと私は思います。実を言えば、私自身も同じような感想を持ちました。democratさんはこれに対する反論を「「天皇制イデオロギーとの思想闘争」とは:S・Kさんへ(democrat)04/2/9」でしていますが、このような判断の根拠は最初から書いておいた方が読み手に対して親切ではないでしょうか。ただし、内容には共感は覚えませんが。

 いま手もとに公開討論の「赤旗評論特集版」がないので、正確な引用はできませんが、たしか、犬丸氏は「天皇制に関する定義を綱領で決めないでほしい」という趣旨のことを書いておられたように記憶しています。
 理論上の問題は、専門家である研究者の努力が不可欠です。研究者には「自由な研究と発表」が不可欠です。日本共産党の戦後の歴史において、「党の決定・党の公認理論」がマルクス主義、社会主義の理論の発展をどれほど阻害したことでしょうか。私は、赤旗評論版の犬丸氏の意見の核心はここにあると思いました。