この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。
日中両国による天皇の政治利用を批判される点には全く異論はありませんが、なぜそれが、「天皇は君主にあらず論は、今後進行するであろう事態に対して何ら効力を発揮するものではない。むしろ、天皇の政治利用を企む政府の行為を免責するだけである」という結論に帰結するのか、全く理解できません。
明治憲法三条による天皇の戦争犯罪免責論については、明治憲法下の天皇が君主であり元首であったことを否定する論者はいませんから、何の比較にもならないでしょう。
端的にお聞きしますが、あなたは天皇の政治利用に対してどのように批判すべきだとお考えですか?
憲法の規定にもかかわらず「天皇は実は君主であり、国家元首なのだ」といえば、批判になりますか?
もちろん、憲法改正して天皇制を廃止できれば問題は解決しますが、天皇制廃止の国民合意ができるまでの間に現実に進行する天皇の政治利用に対しては、上記の立場は政府の行為をおおっぴらに認めるだけでしょう。
現在の政府が天皇を「君主」や「国家元首」として扱うことに反対するならば、憲法を根拠に天皇は君主でも元首でもないというべきではないのでしょうか?
憲法学者の多数は天皇は「元首」と呼ぶべきではない、あるいはそもそも「元首」とは法的に必要な概念ではないという立場ですが、これに対し、保守勢力は憲法改正によって天皇を「元首」と明記せよと主張しています。「天皇は君主にあらず論」を政府や保守勢力は決してとっているわけではないのです。
>世襲制の国家元首をいただく国家は、どう考えても君主制国家なのである。しかし、 国民世論は、未だに憲法制定当時の論争を引きずっている部分があるので、この政府の立場を国民すべてが承認することは出来ないであろう。
あなたは一体天皇を君主であり元首であるとする政府の立場で語っているのか、それを承認できない国民の立場で語っているのか、どちらでしょうか? あなたの議論は少し評論家的過ぎるように感じます。
今求められるのは、傍観者的に事態を批評するのではなくて、どのような憲法解釈の立場に立って天皇の政治利用を批判するかでしょう。
これは、政府がいくら自衛隊の存在や海外派兵を憲法に反しないと言っても、我々は憲法違反だと言い続けるべきであるのと全く同じ問題です。