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綱領改定討論欄

 この討論欄は、第23回党大会に向けた、綱領改定案にかかわる問題を論じるコーナーです。

公的言論空間と匿名批判

2004/2/12 法田 律、50代、企業法律顧問

恩師の学説が議論対象とされている上に、論争当事者双方が前提的事実に関して重大 な誤認をしているようなので、今回に限り二つの論点についてだけ発言をしておく。

(一)大会議案討論誌は公的言論空間の要件を満たしてはいない

議案討論誌は近年、「公開討論」と銘打たれて、定価まで印刷され販売をされている ようであるが、少なくとも7回党大会時の「綱領案」討論誌『団結と前進』は、その 性格において「公的言論空間」とは全く異質なものとして位置づけられていた。今日 の「公開」云々の標榜や定価販売の実施などは、対外的印象や財政上の要請に迫られ て取られた措置なのであろうが、自由な結社における構成員の権利と内部規律の保障 の観点からは議論のあるところである。

一般に、新聞、雑誌等の投稿欄であれ、「さざ波通信」のようなホームページ上の掲 示板であれ、真に開かれた「公的言論空間」とは、まず、それらの言論空間での発言 を欲する人物に対し、言論空間に参加するための資格要件を設けることはない。私も 購読していない新聞に投稿が掲載された経験を何度かもつし、現に何ら資格要件を課 されることなく、このように「さざ波通信」に登場しているのである。
しかし、国民誰でもが参加することができない言論空間は、「公的言論空間」とは看 做し得ないのである。本討論欄での発言者諸氏も、その全員が党の大会議案討論誌に は参加し得まい。討論誌が一般書店で販売されている?ことをもって党の大会議案討 論誌を「公的言論空間」と規定することは、事物の現象のみにとらわれてその本質を 見ることができない思考様式を表すことでしかなかろう。

したがって、日本共産党員犬丸義一氏への匿名批判とは、「公的言論空間」における 正当な言論権の行使などとはとうてい看做し得ないし、犬丸氏の反論権の有無以前的 な不適切行為、公権力によって行われる可能性をも想定した上で敢えて言えば、自由 な結社の内部問題に対する外部からの干渉行為とさえ言い得るのである。
批判者による論難を正当な言論行為として看做すことは、断じて出来ない。

(二)匿名批判の正当性とその限界

一般に、匿名による他者批判を正当性と認めることができるのは、その批判者が、構 成員に対し不利益処分等強制力を行使する権能を有する国家、企業等々の私的又は社 会的集団(さしあたり政党もその範疇に含まれよう)に向けた批判の必要に迫られた 場合においてである。もちろん特殊的には、この討論欄のような対等な条件下にある 言論行為において、相互が匿名での権利行使を行うことも許容されよう。
匿名による言論権の行使とは、本来社会的地位・身分を物理的、経済的等々の威力に より脅かされる事態が想定される当事者にのみ擁護されるべき社会慣習上の「弱者の 特権」とでも言い得る事柄なのである。

そこからは、「社会的権力」以外の個人、集団、それも当該個人や集団が、実名をもっ て人格的に社会的認知をされている人物に対する匿名批判を行うことは、その本来の 必要性を喪失していると看做すことができよう。社会的弱者への匿名による批判とは、 匿名批判の本来の意義からも、その社会的合意形成の歴史的経過からも厳しく制限を 求められるべきものなのである。

したがって実名をもっての批判以外、一般人に対して匿名による批判を行うことは、 社会道義上から、更には厳格な法理解の観点上からも、厳しく自制をされるべきもの であると考えるのであるが、本討論欄に参加をされている投稿者諸氏は如何お考えで あろうか?

追記
かかる議論で疲弊するよりも、天皇制の内容問題の検討努力を継続されるべきではな かろうか?