日本共産党資料館

民主連合政府綱領についての日本共産党の提案 第三部

(『赤旗』一九七三年十一月二十二日)


第三部 憲法改悪に反対し、民主主義の確立と、教育、文化の民主的発展をはかる

 民主主義の分野にかんする民主連合政府の政策の基本は、日本国憲法にもとづいて、国民主権と議会制民主主義、地方自治の原則を尊重し、国民の自由と権利をまもり、政府行政を民主的に刷新し、教育、科学、芸術、文化の民主的で多面的な発展をはかることにおかれる。
 自民党・田中内閣は、憲法改悪による軍国主義の全面復活と日米軍事同盟の強化をめざして、急速に政治反動をつよめている。自民党は、「現行憲法の自主的改正」を政綱にかかげ、同党憲法調査会が作成した「憲法改正大綱草案」は、天皇の元首化、自衛隊と日米安保条約の合憲化、基本的人権の制限、内閣の緊急立法権をもり込むなど、憲法の全面改悪をめざしている。同時に自民党は、憲法改悪を先どりする既成事実をつみかさね、長沼判決を無視して違憲の自衛隊をひきつづき増強し、司法反動を促進し、刑法改悪をたくらみ、地方自治を制限し、教育にたいする介入と統制をつよめている。とりわけ、田中内閣が、自民党一党独裁をめざす小選挙区制の再強行をたくらんでいること、憲法、国会法の会期制の原則に違反する「通年国会」の導入をくわだて、国会をどんな悪法でも無条件に成立させる道具にかえようとしていることは、議会制民主主義にたいする重大な挑戦である。
 しかし、憲法の平和的、民主的条項とそれをまもる広範な国民のたたかいが存在することは、自民党・田中内閣の軍国主義の全面復活と政治反動の強化にとって重大な障害となっている。また、憲法にもとづいて戦後うちたてられた諸制度や法体系も、さまざまな改悪とじゅうりんをこうむったが、平和と民主主義をめざす国民にとって活用できるものも少なくない。「三割自治」といわれる制約のもとでも、国民は首長公選制を活用して全人口の三分の一をしめる革新自治体を成立させている。教育基本法も平和・民主主義をまもるよりどころとなっている。最高裁の反動化にもかかわらず、四大公害裁判や長沼判決にしめされたように、国民をはげますいくつかの判決もかちとられている。憲法と憲法にもとづく諸制度、法体系が忠実に実行されるならば、それだけでも、日本の民主主義に画期的な前進がもたらされるだろう。
 憲法違反の安保条約を廃棄し、憲法改悪を阻止し、生活向上を求める広範な国民を結集する民主連合政府の出現は、真に憲法を国の基本法として生かす条件を飛躍的に拡大させるであろう。
 民主連合政府は、その制定いらい、アメリカと日本の反動勢力によってゆがめられ、形がい化されつつある憲法を厳正に実行する、日本で最初の政府としてつぎの政策をおこなう。

 第一章 民主主義の擁護と拡大

 一 憲法改悪反対、憲法の平和的、民主的条項の完全実施

 民主連合政府は、憲法改悪のいっさいのくわだてに反対し、憲法の平和的、民主的条項を完全に実施することはもらろん、憲法第九十九条にもとづき、現行憲法を尊重し、擁護する。
 天皇についても、従来、自民党政府がつづけてきた各種の逸脱をただし、天皇の国政関与を禁止した憲法第四条、国事行為の範囲を規定した第七条を厳格にまもる。

 二 国民主権と議会制民主主義の擁護

 議会制民主主義の基本は、国民こそ国政の主人公であるという国民主権を正しく生かす方同で、選挙制度と議会の民主的運営の確立に努力することにある。民主連合政府の樹立後も、総選挙による国民の審判にもとづく政権交代制がまもられることは、憲法上からも、民主主義の基本からも、当然のことである。
 1 国会の尊重と国会運営の民主化
 政府は、国会を「国権の最高機関」(憲法第四十一条)として尊重し、歴代自民党政府がやってきたような、ただ政府提出の法律案を多数決できめさえすればよいといった態度ではなく、国政の重要問題が、国会の審議をつうじて主権者である国民の前に十分あきらかにされ、決定されるよう、また、国民の意思がよりよく国会審議に反映されるよう、国会の民主的な運営に積極的に協力する。
 2 選挙制度の民主化
 憲法の「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」(前文)という規定にもとづき、四割台の得票で八割の議席をしめるファッショ的な小選挙区制に反対する。
 衆議院、参議院とも現在の選挙区のままで有権者に比例するよう議員定数を是正し、政党の政治活動、言論、文書などによる選挙活動の自由の保障、買収の一掃など選挙制度を民主化し、国民の総意が正しく反映されるようにする。民意を問うた結果にもとづき、衆議院では都道府県を選挙選挙区とする比例代表制をめざす。
 会社、団体からの政治献金を禁止し、政治献金は、一定額以下の個人の寄付に限定する。

 三 自由と権利の擁護

 民主連合政府は、憲法に規定された国民の自由と権利を全面的に擁護する。
 言論、表現、出版、集会、結社の自由をきびしく尊重し、国民の「知る権利」を保障する。政府批判の言論や報道、芸術表現にたいしても、行政的な抑圧、統制をおこなわず、言論をつうじてぜひをあきらかにする態度をつらぬく。資本力、暴力などによる言論・報道機関にたいする干渉、妨害、圧迫は許さない。
 信教と宗教活動の自由を保障する。国の宗教活動を禁止した憲法の規定をまもり、靖国神社、伊勢神宮の国営化などには反対する。
 部落住民にたいする身分差別をなくすため、居住、職業、雇用、結婚、社会的地位、生活環境などの差別をなくす措置をとる。「同和教育」運動の自主的、民主的発展を保障する。
 わが国における少数民族というべき北海道のアイヌ系住民にたいしては、少数民族としての権利を保障し、アイヌ文化の保護と保存、いっさいの差別の一掃、生活にたいする特別の対策を実施する。

 四 政府行政の刷新

 民主連合政府は、国会を尊重し、法律を誠実に遂行することを前提に、大資本奉仕や官僚主義、汚職、腐敗をなくし、国民の要求を正しく行政に反映させ、物価、公害、保健衛生、社会保障、教育など、国民のための行政能率を向上させるとともに、行政権力、とりわけ警察権力による国民の自由と権利への干渉、抑圧を排除する方向で政府行政を刷新する。当面、主として公正な人事と運用の改善によって行政の民主化をすすめるが、必要な制度や法律の改正にさいしては、国民世論の圧倒的支持と公務員労働者の協力をえて改革をすすめる。
 1 清潔で能率的な、国民本位の行政の推進
 政府出資企業への監査の強化、関係会社への高級官僚の天下り就職の禁止などの措置をとって高級官僚と大企業とのむすびつきをたち切り、利権、汚職をなくす。
 食品衛生関係職員、労働基準監督官、商品投機の監視要員、気象予報官、看護婦、教員、保母など国民の切実な要望にもかかわらず、きわめて不足している各種職員の増員をはかり、国民へのサービスを改善する。
 財界や大企業の役員が重要な地位と比重を占め、しばしば国会がはたすべき役割を不当に代行している各種の審議会、調査会、委員会などの構成をあらため、国民各層の意思が正しく反映できるようにし、運営も民主化する。審議会の乱立をあらため、必要不可欠なものに整理する。
 国会による行政機構への民主的規制をつよめる。行政にたいする国民の苦情、相談の敏速な解決をはかるため、国会が任免権をもつ委員によって構成される機関の設置を検討する。
 すべての官公労働者、公営事業労働者の労働基本権を保障するとともに、国民奉仕の自覚をたかめ、行政の民主化、能率化を促進するための下からの点検、提案の態勢をつよめる。「給与勧告」制度を廃止し、人事院制度を再検討する。昇任試験を民主化するなど、学歴を問わず有能な人材を登用し、人事の公平をはかる。
 公務員労働者をふくむ国民各層の代表で構成される審議機関をもうけ、行政の実態の調査、公表、行政改革のあり方を検討し、革新続一戦線勢力として一致した点から改革に着手する。検討の基本は①行政のなわばり主義をなくす民主的一元化と能率向上のあり方、②中央と地方の行財政事務の民主的再配分、③大資本奉仕の機構、スパイ・弾圧機構などの改廃と国民に奉仕する部門の拡充、④公務員制度の民主化、⑤汚職・腐敗の一掃、その他とする。
 2 国民の生命、財産をまもる民主的な警察行政
 警察行政の基本を、防犯と捜査、交通安全、災害救助などの活動を強化して、不法な犯罪や暴力活動から国民の自由、生命、身体、財産を保護することにおく。諸集会、結社、思想、言論の自由をおかすような干渉、弾圧はおこなわない。この見地から、現行諸法規と警察機構を検討し、必要な改廃をおこなう。
 一人一殺をめざす右翼暴力集団をはじめ、いっさいの暴力テロ集団を解散する。暗殺、クーデターなど不法な手段で憲法に規定された民主的制度をくつがえそうとするものにたいしては、きびしく対処する。
 警察制度を民主化し、公選制の都道府県公安委員会が指揮、監督する都道府県警察を確立する。
 警察人制を公平にし、公正な試験制度により、だれでも能力におうじて高級幹部に昇進できるようにする。
 警察官の労働基本権を保障し、待遇と労働条件を改善する。警察官にたいする教育のあり方をあらため、警察官が憲法を厳密にまもり、国民の自由と人権を尊重する立場で職務を遂行するようにする。
 米CIA、「韓国」CIAなど国家主権と人権をおかし、謀略活動をおこなっている外国諜報機関を一掃する。
 検察官の公訴が、真に国民の権利と生活をまもるものになるよう、検察審査会制度の運用を改善する。

 五 司法の民主化

 自民党政府がやっているような、憲法にそむいた司法の反動化、裁判への介人をいましめ、裁判における国民の権利を保障する。
 裁判費用を負担できないため裁判をうけられない国民をなくすための国費による裁判扶助制度の新設や国選弁護人の費用基準の引き上げ、簡易裁判所の充実と申し立て手続きの簡素化などにより、憲法に規定された国民の裁判をうける権利を保障する措置をとる。無実の罪で泣く人を出さないよう刑事訴訟手続きや再審制度のあり方を是正する。
 裁判の独立を保障する。最高裁判所裁判官にたいして任命諮問委員会を設けるとともに国民に真のリコール権を保障するよう最高裁判所裁判官国民審査法を改正する。
 懲罰行刑主義をあらため、教育をつうじて社会に復帰できるようにする立場から刑務所の設備や受刑者の処遇を改善する措置をとる。

 六 地方自治の保障

 歴代の自民党政府は、憲法の地方自治の精神をふみにじって、自治体を政府の下請け機関とする中央直結の「三割自治」をおしつけてきたが、民主連合政府は、このような政策を根本的に転換し、地方自治体が直面している財政上、行政上の困難の解決を援助し、自治体が住民の意思と要求を反映した、住民のいのちとくらしをまもる地方政治を実現できるよう努力する。とりわけ住民にもっとも身近な自治体である市町村を地方自治の基本単位として重視する。
 超過負担の解消、地方交付税の増額と配分の民主化、基準財政需要額の実情に見あった引き上げ、国庫補助制度の改善、地方債の元利償還の負担を軽減する措置など自治体の自主財源をふやし、地方自治を財政的に保障する措置を強化する。
 公害をひどくし、自治体の財政員担を京やす大資本本位の開発を政府が上からおしつけるような態度をとらす、住民本位の開発への技術的、財政的援助をつよめる。
 地方自治権をうばい、大資本本位の自治体再編をめざす市町村合併のおしつけや道州制の導入はおこなわず、広域行政は、関係自治体の民主的な協議を尊重してすすめるようにする。
 公害や交通などを規制する権限を大幅に自治体にうつし、地域の実情に応じた公害対策、交通対策が遂行できるようにし、必要な財源も保障する。
 東京都の特別区長は公選制にする。
 競馬、竸輪など競走事業はその健全化をはかりつつ、地方自治体の自主性を尊重する。
 憲法の地方自治の精神にもとづき、地方制度のあり方を民主的に検討し、革新統一戦線に結集する諸勢力の一致点にもとづいて実行する。検討の基本は①中央、地方の行財政事務と権限の民主的配分のあり方、②住民参加を強化するための各種委員会、審議会のあり方、直接請求権の対象の拡大、③地方議会の権限の問題、④地方自治体の外郭団体である公社、公団などの管理・運営を民主的におこなう問題、⑤市町村と都道府県の民主的協力関係、その他とする。

 第二章 教育、科学、文化、スポーツの民主的、多面的発展

 一 憲法、教育基本法にもとづく民主教育の発展

 民主連合政府の教育政策の基本は、歴代自民党政府が形がい化してきた憲法、教育基本法にもとづく民主教育の原則を実現し、教育をうける国民の権利をまもり、一人ひとりの青少年の能力をゆたかに発展させるゆきとどいた教育をめざすことにおかれる。民主連合政府は教育予算を大幅にふやし、教育施設整備五カ年計画を実行し、教育費の父母負担を軽減する各種の措置をとる。教育にたいする不当な干渉をおこなわず、学問の自由、教育の自主性を尊重し、教育委員会の公選制を復活する措置をとるなど教育行政の民主化をはかる。
 民主連合政府の教育政策は、いわゆる「偏向教育」とは無縁であり、初等・中等教育の基本を、基礎的な学力、ゆたかな情操と市民道徳、健康な身体の育成におく。
 1 教育施設整備五カ年計画の実行
 教育施設の貧困、教職員の不足などの事態を急速に改善するため、教育予算を大幅に増額し、自治体と協力して教育施設整備五カ年計画を立案、実行する。五カ年計画はつぎの諸点を基本内容とする。

  1. 過密地域のプレハプ教室、不足教室の解消、小・中学校の増設
  2. へき地教育対策の強化
  3. 障害児のための教育・医療施設の増設、障害児にたいする教育差別の廃止
  4. 学級定員の適正な縮小と教職員の大幅増員
  5. 公立高校増設などによる希望者全員高校人学の実現
  6. 公立の幼稚園、保育所の増設と幼保一元化への接近
  7. 医学部、夜間部など国立大学の拡充、国、公、私立大学間格差の是正
  8. 図書館、公民館、職業訓練施設、産業相談所の増設など社会教育、生涯にわたって国民の教育を受ける権利を保障する生涯教育の充実

 2 教育費の父母負担の軽減、私学助成の強化
 憲法に規定された義務教育の無償の実現をはじめ、教育費の父母負担の軽減をはかる。貧しい家庭のこどもでも教育がうけられるよう奨学措置を強化する。
 私学の自主性を尊重しつつ、就学前教育から大学までの私学にたいし、大幅な公費助成措置をとる。私学統制の道具となっている日本私学振興財団の民主的改組を検討する。
 3 教育行政の民主化
 教育行政の基本を、学間の自由と教育の自主性をまもり教育条件を整備することにおき、教育への官僚統制をきびしくいましめる。
 戦後実行されていた教育委員会の公選制を復活し、教育委員が日常的に活動できる体制をととのえる。
 労働基本権をぶくめて教職員の基本的権利を保障する。教師が、よりよい教育をおこなうという国民にたいする責務をはたせるよう、自主的な教育活動や研究を保障し、専門家にふさわしく待遇を改善する。
 4 教育内容の改善
 こまぎれの知識のつめこみでなく、基礎的な知識や技術の基本を系統的に学習できるようにする。学習のおくれたこどもをださないようにする。こどもの自主性を尊重するとともに、自覚的で民主的な規律や市民道徳も重視する。
 五段階相対評価をやめ、学習の到達度を正しくしめす評価方法を、教師、専門家、父母などをふくめて民主的に検討する。
 以上の立場から、現行教科書検定制度の廃止をふくめ、学習指導の要綱や教科書の内容などのあり方について検討を開始する。
 5 六・三・三制の民主的充実と学校体系の正しいあり方の検討
 各界から反対や批判のつよい中央教育審議会の教育改革にたいする答申は採用しない。教育改革は民族の将来に重大な影響をあたえる事業であるから慎重に検討し、自民党政府がやってきたような民意を無視した強行をさけ、当面、改善をいそがれている教育施設、人員の整備拡充、高校学区制や教育課程の改善など、六・三・三制を民主的に充実させる措置に重点をおく。
 6 大学の自治と教育、研究の発展
 学問の自由を大学の自治を保障する。大学を学術の中心として、その教育、研究機能を発揮し、社会進歩と国民の期待にこたえるものとするための各種の措置をとる。
 政府は大学にたいする不当な干渉はおこなわず、大学問題の自主的、民主的解決を促進する。学園の暴力にたいしては、大学関係者と協力しつつ、法律にもとづき暴力を一掃するためきびしい措置をとる。学生、教職員の参加による大学の自治を保障し、自主的、民主的な大学改革を支援する。
 大資本の大学への浸透を規制し、研究における平和、自主、民主、公開の原則を尊重する。教育と研究を統一し、基礎と応用のつりあいのとれた発展をはかる。公開講座、テレビ、ラジオなどをつうじ大学教育と国民との結合をはかる。
 教育施設整備五カ年計画をつうじて、大学の教育研究施設、厚生施設の拡充、大学間格差の是正をはかる。学費値上げをおさえ、奨学金をぶやし、私立大学生への授業料補助をおこなうなど学生生活の改善をはかる。教職員の定数の増加、待遇、研究条件の改善、身分差別の撤廃をはかる。大学院の研究、教育を充実させる。
 国公立大学の拡充、大学間格差是正を基礎に入試難を解消し、入試方法を改善する措置をとる。

 二 科学研究の総合的発展

 民主連合政府は、外国技術依存、軍事研究や大企業奉仕の研究など、自民党政府のゆがんだ反動的科学研究政策をあらためて、科学者、技術者の自由な創造的研究を援助し、日本の科学、技術のすぐれた達成を土台に、日本と世界の平和と進歩、福祉に役立つ科学・研究の発展をめざす。
 人文・社会・自然科学をふくむ科学研究にたいする国の責任および学問、研究の自由、研究の軍事利用反対、研究体制の充実と民主化、自主・平等の国際交流など研究の基本方針をさだめた「科学研究基本法」の制定を検討する。日本学術会議法をまもって、日本学術会議を文字どおり「わが国の科学者の内外に対する代表機関」(日本学術会議法)とする。原子力委員会、宇宙開発委員会、海洋開発審議会などの構成と運営を民主化する。
 すべての学会が自立して運営できるよう補助金の支出など援助をつよめる。国立・公立試験研究機関に広範な自治権をあたえる。
 科学研究費の思いきった増額をおこない、民主的配分によって、基礎、応用のつりあいのとれた発展と人文・社会・自然科学の調和と協力をはかる。研究者の待遇を改善する。
 総合的な科学研究対策をすすめるとともに、ガンをはじめ医学研究、無公害技術の開発、研究、新エネルギー源の開発や国産エネルギーの活用、防災、都市問題の研究などを重点的に促進する。

 三 芸術、文化の多面的な発展

 わが国における芸術、文化は、誇りうるすぐれた達成とともに、大きな発展の可能性をもっているが、歴代自民党政府の反動的文化行政と大資本による文化手段の支配のもとで、 アメリカ的退廃文化の浸透、民族的文化財の破壊、独占資本の復活強化にともなう芸術、文化の腐朽と反動化、軍国主義化がすすんでいる。民主連合政府は日本文化のすぐれた伝統をひきつぎ、表現の自由を保障して、芸術、文化の民主的で多面的な発展をはかる。
 文化予算を大幅にふやし、国・公立の文化施設の増設、自由な創造と普及にたいする公的援助をすすめる。国民が低額または無料で、すぐれた芸術、芸能を鑑賞できるような措置をとる。
 所得税の控除わくの引き上げ、税率の引き下げなど、芸術家、芸能人の生活を改善する措置をとる。すべての分野の著作権を平等に保護するため著作権法の一部改正をおこなう。
 「日米文化協力」などによる従属的文化状況をなくし、諸外国との対等平等な文化交流を促進する。意義ある文化財、文化遺産、民族芸能を保護するとともに、健康で民主的な芸術文化を振興し、国民の文化環境を改善する。

 四 体育・スポーツの大衆化と健全な発展、ゆたかな余暇の保障

 民主連合政府は、すべての国民の健康と体力を積極的に保持し、青少年およびすべての国民のレクリエーションの希望にこたえるため、体育・スポーツを重視し、ゆたかな余暇を保障する。
 日本の人口一人あたりのスポーツ予算は、欧米諸国の十数分の一から数分の一にすぎず、公共スポーツ施設の建設は極端に立ちおくれている。これを克服するため、大小の公営スポーツ施設の整備をいそぎ、専任指導員も増員する。施設は、勤労者、青少年、婦人、中高年齢者、障害者などだれでも気軽につかえるように配慮する。
 学校の体育は、児童、生徒、学生の体力をつくり、心身のつりあいのとれた発展をはかるため、施設、用具を充実させ、体育教師をふやす。
 体育専門大学、体育学部の充実をはかり、学校、社会のスポーツ指導員を計画的に養成する。
 国のスポーツ予算をふやし、自治体への補助を増額する。自主的スポーツ活動にたいする助成措置をつよめる。
 大企業や自民党政治家とむすびついた反動スポーツ行政をあらため、広範なスポーツ関係者の参加による保健体育審議会、スポーツ振興審議会の民主化、教育委員会の公選制の復活などによって、中央、地方のスポーツ行政の民主化をはかる。中央、地方の体育協会、種目別スポーツ・体育団体の自主的、民主的な発展を援助する。
 しばしば事故をおこすしごき式のトレーニングをあらためるようにし、体育・スポーツの大衆的普及の基礎のうえにすぐれた選手の育成をたすける。
 プロ野球、大相撲、プロボクシングなど見るスポーツも健全に発展させ、職業スポーツマンの生活と権利をまもる。
 最低賃金制、週四十時間労働制・週休二日制、年次有給休暇の延長によって収人や労働時間による制約を減少させ余暇の機会を拡大する。大企業などの労働者にたいする余暇管理や、観光、交通大資本をはじめとする大資本の余暇産業の先どりによるゆがみを正す措置をとり、安くて便利な公共余暇施設の整備や自然環境の保全をはかる。

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