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「北朝鮮問題」討論欄

金国雄様

2003/11/12 天邪鬼、60代以上、自由業

 在日朝鮮人からの視点で見る日本共産党および左翼の問題、私にとって盲点でした。 歴史と言うものを一つのサイトから見てしまうことの危険性について2年程前から自 身気になっていました。たとえば私たちはヨーロッパの歴史はなんとなく知っていま す。しかしアラブの歴史を知らないのでヨーロッパ人の視点からしかアラブを見ない。 アメリカ人の視点からアラブを見てしまう。するとアラブは歴史も時間もない、文化 もない、文字どうり砂漠のイメージしか頭に浮かんでこないのです。反対にアラブの 側から欧米を見ていくとまったく世界史が変わり立体的に見えます。
 朝鮮は近くて遠い国、といわれます。地球の裏側の欧米のことならよく知っている のに朝鮮の歴史を私たちはあまり知りません。中国史の方を学んだのに朝鮮史をほと んど知らない。そんな人がほとんどです。ところが朝鮮人のほうが日本人より日本史 を研究しています。
 私は朝鮮人から見る日本人が気になっていました。また日本の共産主義運動が在日 朝鮮人共産主義者からどう見えているかということも非常に気がかりでした。日本共 産党員が共産主義者は共産党にしかいないと勝手に思いこみ、独善的な印象を私にも たらしていますが、在日の方にとってはもっともっと言いたいことがあるのじゃない かと思ってきました。
 たとえば日本共産党はあの戦争について日本人民を戦争の被害者と言い続けてきま したが、朝鮮人にとっては日本人のすべてが加害者と見えないはずがないと思います。 その加害と被害の受け止め方の違いが私たちに横たわる壁のように思えます。
 日本共産党史を読んでも在日共産主義者のことがまったく無視されています。貴兄 が紹介してくださった「プロレタリア国際主義の屈折 朝鮮人共産主義者 金斗ヨウ の半生」トウエイコウ氏の論文を読みました。(ごめんなさいね、パソコンに不慣れ で朝鮮人の漢字の姓名を打ち出せないのです)
 その論文の序章を見た瞬間にハッとさせられてあとは引き釣り困れるように読んで しまいました。そして〈申し訳ない〉という感情が今私の心に広がっているのです。
 日本共産党が結党から弾圧に次ぐ弾圧のあとで1934年に壊滅する前に在日共産主義 者が日本共産党の中に解消され、その後も引き続いて党を守り続け、敗戦の時には志 賀義雄、徳田球一、宮本顕治、袴田里美など政治犯釈放運動をしてくださったのです。 そして戦後再建された日本共産党を初めに支えたのは在日朝鮮人です。それは金銭面 まで日本共産党は在日に依存し利用したのですね。その後日本共産党から在日朝鮮人 が出て行ってしまうのですが、この論文ではそのあたりのことがまだよくわかりませ ん。
 主題が金斗ヨウの半生だからです。金斗ヨウは素晴らしく原則的な朝鮮人です。し かしトウエイコウ様のこの論文がなければ金斗ヨウは歴史の中に消え去ってしまった と思えばトウ様が蘇えらせてくださったことは大きな功績です。金斗ヨウの格闘した 課題、「民族の独立と階級性の問題」は今も重要なままに残っています。イスラム諸 国の反植民地闘争が民族主義だけですまない、その中での階級問題なども包含するか と思えば本当に難しいものだと思います。
 それとは別に在日朝鮮人に助けられて戦後再建しえた党が果たして在日のために何 をしたのかを考えると悲しくなります。彼らの選挙権の問題、職業の問題、差別、外 国人登録における指紋押捺の戦い、入管法の戦い、それらに対して日本共産党は一体 何をしてきたのだろうか。また韓国や中国、東南アジアから命がけで出稼ぎにくる労 働者のためにどのようなことをしてきたか、彼らを犯罪者と扱う日本の権力に対して 党はどのように守ったのか、私はそれを知りません。しかしこのようなことをするこ とがインターナショナリズムだと思いますが、民族主義!抑圧民族の民族主義を唱え る日本共産党が在日や韓国、中国、アジア労働者と連帯して日本帝国主義と戦う姿勢 はなかったと思います。
 「植民地支配をめぐる「妄言〉の堪えないこの国に居ると、やはり植民地支配とい う「過去」は、ほかならぬ「現在」の問題なのだと言う冷厳な事実を痛感せざるを得 ない。そして加害者と被害者のさかいにある時間感覚の落差はもはや埋めようもない」
 歯と歯の間から漏れるようなこのうめきに近い言葉を読まされてわたしは自分の非 力さに頭をたれるのです。しかしこの作者のおかげで自分達の至らなさを自覚できる 端緒となったことにお礼を申し上げたいと思います。その他に沢山の資料を金国雄様 は紹介してくださいましたがおいおい勉強させてください。このサイトに在日の方が 三人も加わってくださったことは素晴らしいことです。いくら左翼といっても日本人 の独善主義、鼻持ちならないこともありましょう。忌憚のないご意見を心から期待し ます。