ウナギ犬さんへ、大変遅くなりました。以下の件ですが、
まず、また事実確認しておきたいことがあります。
もう情報封鎖は出来ないようになってきているというのが現在の情勢です。(11月2日付投稿文より)という文章なのですが、本当にこれは客観的事実を書いたものなのでしょうか?
私が報道などで知っている情勢とは、大きな差があるように思えるのですが…
私には、まだ北朝鮮国内の情報封鎖・思想統制は強固であるように見えるのですけども。
この点に付いては、多くの日本・韓国の脱北者からの証言、中国朝鮮族自治区へのジャーナリストの取材等(石丸次郎氏の最近の著作(※1)やRENK(※2)、朝鮮日報・中央日報のニュース、韓国の脱北者のサイトなど)から、多くの情報が入ります。
※1 石丸次郎『北朝鮮難民』(講談社現代新書)、『北のサラムたち』(インフォバーン)、その他週刊誌・月刊誌の石丸氏の記事
※2 李英和『極秘潜入』(小学館)、安哲・朴東明『北朝鮮飢餓ルポ』(小学館文庫)
これらの情報をまとめると、94~99年の大飢餓で生きていけない人はその時全て死に絶え、それでも生き残った人たちは北へ北へと逃げていたと言うことです。現在は中国からの物資の流れがないと生きていけないのです。情報が否応なしに入ってくるのは常識となっています。もうくい止められないと思います。思想統制が徹底されているのではなく、密告制度による恐怖心が徹底しているんだと思います。だれも金正日や党を信じなくなってきている。ただその振りをしているだけと思います。
また、38度線沿いでは、韓国からの放送はジャンジャン入ってくるそうで、一時言われていたようなテレビやラジオが改造され国営放送しか入らない、と言うようなことはないということです。地方幹部自ら韓国や日本・中国のテレビやラジオを聴いているのだそうです。外国情報を聞かないで上の言うことを聞いているだけでは幹部すら生きていけないからでしょう。
わたしの知り合いの脱北者(複数・平壌以外で生活していた人)からもその事実は確認しています。その人いわく「みんな夜中に家を締め切り音が漏れないように目張りをして聞いていた。一番いいテレビ(色んな放送が入るテレビ)を持っているのは地方の党幹部だよ、たまに見せしめのため捕まる人もいたが、賄賂を出さなかったのかな?」「金さえあれば何でも手に入るんですよ」「みんなワールドカップの結果も知っていたよ、韓国を応援するんだよ」「西からの噂は口コミであっという間に国中に広まるんですね」と言っていました。今まさに、大きく変化しているのが現実の姿だと思います。全く情報のはいてこない人々は20数万といわれる強制収容所に入れられている人ぐらいでしょう。
もし日本のみが援助を停止するようなことになっても、事態は膠着するばかりで、ただ北朝鮮の餓死者ばかりが増えるだけ、という危険性が高いのではないでしょうか。
という意見に対し、
餓死者が増えた要因は、国際支援が有ったのか無かったのかという、そういう問題ではないのです。金正日政権の問題と私は思います。どうでしょうか? (10月24日付投稿文より)
というお答えだった訳ですけども、これについても私は、非常に強引な論法だと思います。
イラクへの経済制裁を見てもそうなのですが、経済制裁というものは必ず民の犠牲を生み出す方法です。
それも、経済力の低い者の方から犠牲が強いられる方法です。
犠牲の点で経済制裁が正当化されるには、政権崩壊に至るまでの犠牲が、制裁しないよりはどれだけ犠牲が減らせるか、それを示さなくてはいけないはずです。
日本のみが経済制裁しても他国が援助していれば、崩壊に至るまでの時間が長くなり、かならず北朝鮮国民の犠牲は甚大なものとなると思います。それに対し、貴方の上記の意見は、私は無責任なものだと思います。
それに、犠牲の点でいうなら、「経済制裁から崩壊に至るまでの時間」だけでなく、「経済制裁の包囲網を作り上げるまでの時間」についても考えなくてはいけないはずです。
これについては以前にも言いましたように「経済援助は国連監視下の下に、一人ひとりに物資が届き、胃袋のの中に入るまでを確認すること」それが大前提です。このような活動を推し進めることには反対していません。多くのNGOが北朝鮮の妨害にあって撤退して行きました(※)。このようなことすら命がけになるのです。この辺の事情はイラクとは違うと思います。イラクには医療危機などはありましたが飢えはありませんでした。
※マイク・ブラツケ『北朝鮮「楽園」の残骸』(草思社)
※アンドリュー・ナチオス『北朝鮮 飢餓の真実』(扶桑社)
※ノルベルト・フォラツェン『北朝鮮を知りすぎた医者』(草思社)
今のアジア地域の外交で、「北朝鮮を孤立・崩壊させよう」という運動が広まっているとは、私にはどうしても思えません。
一概には言えないと思います。※
※青木直人『北朝鮮処分』(祥伝社)
むしろそれとは逆に、「北朝鮮を対話の席に引き出そう」という方向性になっていると思います。
私は、北朝鮮を経済的に開放させる方が、他国の協力も得られやすいし、経済制裁の包囲網を作って崩壊に至らせるまでよりも、犠牲が少ないだろうと思っています。
この点については意見が違います。「北朝鮮を経済的に開放させる」には、金正日以外の政権でないと出来ないと思います。開放をすれば金王朝は崩壊せざる終えないと思います。だから彼らは必死に人民を弾圧しているのでしょう。その後にだれが来るかは分かりませんが。
次に、万景望号について。
やっと今、関税や警察、外務省が普通の業務を追行し始めたのです。40年間やりたい放題の北朝鮮に対し普通のことをやり始めただけです。(10月24日付投稿文より)
とありますが、私はこれにも納得できかねます。
まず、私は万景望号が、程度は分からないですが拉致や工作員に関係してきただろうと考えています。
麻薬やミサイル材料の密輸についても、おそらくは関係しているでしょう。
ですから、関係者への事情聴取や運搬物資への検査など、捜査や防犯の手続きについては、私も賛成です。
しかし、「検査基準に満たない限り寄港を認めない」という措置は、どう考えても犯罪捜査や防犯の見地とは、異質なものです。
「検査基準に満たない限り寄港を認めない」というのは、たしかに違法ではないでしょう。
しかし日本に来る全ての船が、あそこまで厳正な措置を受けているとは思えません。
あの時の措置には、どう考えても「厳正な検査」以上の、政治的意図が込められていたと思います。
それも、過去の犯罪への捜査でもこれからの防犯が目的でもなく、現在の日本の、反北朝鮮感情に基づく措置だったろうと思います。
そしてあの措置は、経済制裁へのステップになり得る性格のものだった、とも思っています。
ここでも意見は違います。万景峰号を止めることには反対していますが、日本政府の今のレベルの検査は妥当な水準だと思います。しかし、「救う会」の反対運動などには反対しています。多くの日本人帰国者、在日の家族は向こうに沢山います。その限りにおいては万景峰号彼らにとっては命綱ですから。
※金昌烈『朝鮮総聯の大罪』(宝島社)
※李策『激震! 朝鮮総連の内幕』(小学館文庫)
※韓光熙『わが朝鮮総連の罪と罰』(文藝春秋)
「※」印しは今まで私が読んできた本です。最近は図書館でも置いているようです。まだお読みでないなら、ぜひ読んでください。
今、私は今回の共産党の敗北についていろいろ考えています。『「拉致」異論』を初めとした主張や左翼運動と北朝鮮の関係についていろいろ悩んでいます。考えがまとまるまでは、しばらく投稿は出来ないと思いますが、よろしくお願いいたします。