今までとは全然違う話をします。
私が今読んでいる本の中にたまたま朴甲東氏や「朝鮮民主救国戦線」の話が載っていました。「朝鮮民主救国戦線」というのは北朝鮮から脱出した政府高官や軍人などが作っている亡命組織の名称で、中国・韓国・日本・アメリカなどに支部・活動拠点が散らばっています。朴甲東氏というのはその亡命組織の常任議長です。
私、このくだりを読んで、最近ネット上で言われている「北朝鮮処分にむけての米中密約」の存在を想い起こしました。「北朝鮮処分にむけての米中密約」とは、事実上6ヶ国協議参加国共通の「目の上のタンコブ」と化している北朝鮮・金正日政権を米国・中国間の談合で秘密裏に処分してしまおうという構想です。仮に北朝鮮内部のクーデターとかで金正日処刑・追放などの事態が発生した場合、「朝鮮民主救国戦線」らのグループが米国の暗黙の了解の下で中国の傀儡として主導権を握り、朝鮮労働党の統治機構を引き継いでやがて徐々に金正日個人崇拝の是正や改革・開放路線に踏み出していく----これが現在考えられる最も実現可能性のある、そして理想の形ではないかと勝手に想っています。その理由は、
①確かに朴甲東氏らのグループは北朝鮮国内に大衆的基盤を持たない極小亡命組織かもしれないが、その組織構成員は、かつて日帝植民地統治下で抗日活動をしていた朝鮮共産党や解放後米軍占領下におかれた南朝鮮で抗米活動をしていた故・朴憲泳氏などの南朝鮮労働党(南労党)の指導者が中心であり、その後北朝鮮政府の政府高官・軍人として統治経験の豊富な人材である事。その点では中国としても比較的安心して金正日以後の北朝鮮を任せられる事。また、朴甲東氏やそれに近い立場にある黄長{Y氏の、アメリカ・ブッシュ政権に対する手放しの評価や北朝鮮経済制裁論については識者によっては全面的に賛成しかねる部分もあるかもしれないが、それを考慮に入れても現実的に"金正日以後"の受け皿になり得るのはこのグループ以外ちょっと思いつかない。
②朝鮮共産党や南労党は実際に南北朝鮮国内で活動していた組織であり、元々国内的基盤もなくソ連の傀儡として据えられた金日成一派とは全然異なる事。実際、朝鮮戦争勃発時にも当初の党の公約通り平和統一路線を守り、北の撹乱・武装蜂起指令には従わなかった点など、道義的にも広範な支持を得られる条件を備えている事。(注:朝鮮労働党と日帝時代に非合法活動をしていた朝鮮共産党とは全然つながりは無い。この様に、ソ連占領下で従来からの土着の共産党組織が抹殺され全く新たなソ連傀儡党派が政権をとった事例は、他に東欧ポーランドなどにも見られる。)
③北朝鮮人民自身による民衆蜂起、東欧型の市民革命で金正日政権が打倒されるのが一番理想的な、ベストな形なのであろうが、残念ながら、今の北朝鮮国内にはそれだけの蜂起の核になるようなグループ、例えばカンボジアのヘン・サムリン派やルーマニアの救国戦線やイラク・フセイン政権時代の共産党・クルド諸派などのような国内反体制派は、今まで知られている限りで言えば北朝鮮国内においては存在しないと思われる。それならたとえ中国の傀儡やアメリカとの談合の産物であろうと、よりましな最もベターな可能性を追求せざるを得ない。
もし、このような形で、理想を言えば無血革命のような形で北朝鮮民主解放が勝ち取られ、徐々にではあれ北朝鮮が異常な個人独裁・社会封建主義王朝から脱却し真の意味での「民主主義人民共和国」になれば、その時に初めて、食糧・人権問題の解決、拉致被害の全容解明と補償、日帝植民地統治の過去の清算、日朝国交回復、朝鮮半島の非核化などの諸課題が緒につき、朝鮮民族の自主的平和統一の課題も徐々に現実の日程に上ってくるであろうと思われます。今、インド・東南アジア・中国が加盟している東アジア平和友好条約に北朝鮮が加盟するような展開にまで及べば、朝鮮戦争の危機も有事法制・改憲の必要もなくなり、この地域を百年以上も蝕んできた民族排外主義も根絶する事が出来るでしょう。
[参考]
・青木直人講演会「米中関係の中の北朝鮮」(「RENK東京」HP)
・「朝鮮民主救国戦線」HP
・朴甲東氏の話が載っていた、私が読んでいた本:
「拉致・国家・人権--北朝鮮独裁体制を国際法廷の場へ」(大村書店)
・この後、読みたいと思っている本:
「北朝鮮--社会主義と伝統の共鳴」(東京大学出版会)
「北朝鮮処分」(祥伝社)
※上記はあくまで私が考えた個人的構想であり、完全に煮詰まった意見でもありませんから、皆さんの意見も聞かせて下さい。本投稿は私の拙板の他のリンク先掲示板にもいくつかマルチポスト投稿してみるつもりです。