2月21日付朝日新聞が1面で興味深いスクープを報じている。
見出しは「中国、北朝鮮向け核溶媒を押収」。
あらすじは次の通りだ。
(1)米国CIAが
「北朝鮮が核関連物質を中国から列車で搬入する」
との極秘情報をキャッチ。
(2)米政府はこの情報を中国に提供。
(3)中国は同情報を基に列車を捜索、
核溶媒のリン酸トリブチルを押収した。
記事の書きぶりから見て、朝日新聞ワシントン特派員がCIA当局者から聞き出した話と見られる。
21世紀国際社会の主導権をめぐり
緊張関係にあるはずの米中両国が
北朝鮮対策でCIA情報を共有していたのは、
注目すべき動きと言える。
特異な国家・北朝鮮の暴走、崩壊で
最も深刻な影響を受けるのは
韓国、そして隣国の中国だ。
そして北朝鮮の暴走で北東アジアの安定が覆されれば、
アジアに深くコミットする米国にとっても
憂慮すべき事態となることは間違いない。
米中両国が奥深い水面下で手を握った背景に、
そんな背景があるのは確かだろう。
両国の思惑は、少なくとも現時点においては、
北朝鮮の暴発を防ぎつつ
非軍事的に核武装解除しようという点で
ピタリ一致しているようだ。
裏を返せば、金正日政権は
もはや頼みの綱の中国からも
国際社会の一員として扱われなくなったことを意味する。
米中接近を呼び起こすほど、
北朝鮮の核疑惑は深刻化しているわけだ。
今の米国が、NPT体制下の核保有国として
果たすべき義務を果たしているとは、私も思わない。
NPT加盟の核保有国は、自らの核軍縮に務めるべきところ、
米国はむしろその精神に逆行する姿勢を
度重ねて示しているのは、周知の事実だ。
日本は唯一の被爆国として今後、
米国に対してきちんとこの問題を質すべきだろう。
(小泉政権では望み薄ですが)
しかし、米国の対応が不誠実だからと言っても、
それをもって
北朝鮮のNPT脱退、兵器級プルトニウムの製造、
ウラン濃縮核開発を容認する理由には成り得ないと思う。
むしろ、核保有国である米中両国は一層協力して
北朝鮮の核武装解除に全力を挙げるべきではないか。
もちろん平和的プロセスを通じて、だ。
そうした観点からみると、
日米中韓ロの5カ国が
北朝鮮を徐々に核武装解除させる6カ国協議の枠組みは
極めて重要なプロセスだということが分かってくる。
また6カ国協議の枠組みは、
それが対話プロセスとして機能する限り、
米国の対北軍事路線の台頭を抑制する作用も
もたらすと思われる。
なお、共産党の穀田恵二国対委員長が
3月3日の衆院予算委員会で
この枠組みを前向きに受け止めた点については
冷静かつ賢明な判断だと評価したい。
私も同様の考えに立っている。