曽我ひとみさんの夫、ジェンキンスさんについて、ブッシュやラムズフェルド
はもとよりハト派パウエルすら、彼が「米軍からの脱走兵であり、重罪に値する」と
息巻いている。
ジェンキンズさんが北朝鮮に入国したと言われるのは1965年1月、既に40年
近くが経過しているというのにである。
アメリカの親族が彼も「拉致被害者」と言う主張に対し、アメリカは休戦ライン警
備のチームリーダーの戦線逃亡者であり、脱走兵・戦争犯罪者として時効すら認めら
れないと言い切っている。
彼がどの様な経過で休戦ラインをこえたか、情報の少ない今、確たることは言えな
い。
しかしかつてベトナム戦争が厳しく、その不正義性に抗議する形で沖縄や国内米軍
基地から多くの脱走兵が続出し、当時の「べ平連」など市民団体の人々が彼らを匿い
逃走の手助けをした。
おそらくその数はジェンキンスさんのケースと比べ物にならないくらい、多かった
と思う。
その時の脱走兵は今どうしているのだろう、まだ訴追されているだろうか?ジェン
キンスさん解放へのアメリカ権力者のこだわりは、やはりベトナム戦争以上に不正義
で無法な、イラク侵略戦戦争への負い目の表れであり、不正義の戦争に悩み動揺し、
果ては自殺に追い込まれている自軍兵士への恫喝であり、見せつけでしかないだろう。
朝鮮戦争はこれまで戦争開始側、火付け役としての北朝鮮軍が様々な形で非難され
ることが多かった。
しかし、李承晩傀儡独裁政権下での凄まじい弾圧と虐殺、とりわけ済州島での米軍
を使った数万とも言われる虐殺(4,3事件)など南北統一を当然のことと考えてい
た朝鮮の民衆にとって祖国統一・民族解放の闘いは他の形態を含め、早晩必然なこと
だったと思う。
そもそも民衆の表と裏からの様々な協力がなければ、一時は釜山周辺まで南軍を追
い詰めた北軍の快進撃など、ありえないのである。
最近になって少しずつではあるが、李政権以降続いた親日派独裁政権によって封印
されて来た、「占領軍」としてのアメリカ軍の朝鮮戦争における様々な悪行、現在の
イラクやアフガンの行いにも匹敵する暴虐ぶりが明らかにされつつある。
ジェンキンスさんが何時から朝鮮半島での軍務についたのかは知らない。
しかし彼が米軍・軍曹として朝鮮戦争の真実を知り、良心の呵責から逃れるため休
戦ラインを越えた可能性もあるのだ。
そして私たちは、その休戦ライン、所謂38度線が、そしてもっと言えば現在まで
続く朝鮮半島の南北分断が、ただ単なる北と南の国、又は北朝鮮軍と中国義勇軍と国
連軍との力のバランス、あるいは朝鮮半島解放後進駐したソ連軍とアメリカ軍の合意
による暫定的占領地区割りの結果などではなくして、それが日本の朝鮮植民地政策の
もとでの「関東軍」と「朝鮮軍」の朝鮮軍事的支配の境界線であり、南北朝鮮の人た
ちには全くなんの関係も責任もない、日本の植民地支配の必要性から勝手に引かれた
ものであることを、知るべきであろう。
そしてこれは現在の在日の方々の出身地を見れば分かることだ。
民団系・韓国籍の人にも地理としての「北」出身の人もいる、総連系・朝鮮籍の人
にも済州島や釜山など「南」出身の人もいる。
朝鮮は南北一体なのであり、地理的区分などでは全くないのである、離散家族問題
もその最大のものである。
戦後補償問題としての軍隊慰安婦、性奴隷被害の謝罪と補償、強制連行・強制労働
の謝罪と補償、ジェンキンス・曽我さん家族を含む拉致問題、離散家族問題など余り
にも私たちに残されている課題は多い。
韓国では昨年「日帝下強制動員被害真相糾明等に関する特別法」が成立しました、
この4月のウリ党の勝利による新しい国会もスタートし、戦前の被害の究明がいよい
よ本格化して来ます。
日本政治家による無知と差別感情剥き出しの暴言など、もう通用しなくなります。
朝鮮半島の統一は、決して南北朝鮮の人々だけのものではなく、私たち日本人自身
のことであることを、もっともっと自覚したいし、考えて行きたい。
さざ波の皆さんも是非、国内で様々に闘われている戦後補償関係の裁判、統一マダ
ンなどへの参加、また日朝国交正常化や南北統一の動きに関心を持ち、積極的に参加
して下さい。
そしてジェンキンスさん一家の晴れての解放を、だんまりと丸投げを決め込む小泉
に、要求して行こうではありませんか!