北朝鮮の国家予算規模の見方は、情報が非公開あること、又、北のウォンが紙くず同然で、為替レ-トの計算が不安定で、邦貨換算が難しいこともあり、推定する幅が大きい。200億円程度~5000億円程度まで巾ある。高い方での比較は、沖縄県の県予算と同程度、あるいは石川県よりも少し低いレベルとなる。中間的な見方=「船橋市の年間予算程度」とすると2500億円内外となる。
概ね30~40%の軍事費率の維持は共通的な見方となっている。750~1000億円程度が軍事費に使われ、軍事費以外では、1500~1750億円程度となる。
中曽根回想録では、防衛庁長官時代、日本での核のコスト試算をしたところ、2000億程度となったとしている。日本のような工業基盤が整備されたところで、このようなコストで、ロクな工業インフラがない北朝鮮でのコストは想像を絶する。国家予算まるまるつぎ込むようなコスト構造で、これが、更に飢餓を誘発する。正に人民の犠牲に依拠するもので、北朝鮮の核に反対する最大の理由である。
まして、貿易構造は、10億ドル近い赤字構造の国である。輸出6.5億ドルに対し、輸入16.2億ドル(外務省HP)となっており、国家予算の半分近くの額が入超となっている。ヤミ資金(ミサイル、麻薬等)をがないと、核も国も回っていかない。ヤミ資金は金正日が独占し、国家予算の10倍規模とも言われる。
北朝鮮の飢饉の本質は「北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク[RENK]が鋭い分析をしているので、それを引用させていただきたい。
「金正日は、飢饉を十分に回避できたのに、邪悪な目的を優先させて飢饉を故意に発生させた。これは、次のような金正日の発言とピッタリと符号する。「〔99年の弾道ミサイル発射について〕 敵は優に何億ドルもかかっただろうと言っているがそれは事実だ。 [中略] その資金を人民生活に振り向けたらどれほどよいだろうかと思ったが、私は、人民がまともに食べることができないことを知りつつも、あすの富強祖国を建設するために、資金をその部門に振り向けることを許諾した」(『労働新聞』1999.4.22 )
北朝鮮の飢饉の発生は..........
○食糧の総量が急に減ったからではない。又、一般的な国内経済の非効率性や、国外の経済環境の激変が直接的な原因ではない。
○国際的な人道援助が、適切な物資の分配をしないで、意図せざる事態の悪化を招いた可能性が強い。
○援助で肥え太った特権層がヤミ市場経済を乗っ取ったことで飢饉が進行した。
○金正日は努力を怠たっただけでなく、意図的に飢饉を作り出し政策的に飢饉を促進した。
北朝鮮人民の飢餓線上の苦境は、基本的な構造は何も変らない。脱北者の数が増えつづけていることが、それを物語っている。特殊な対外的ショ-ウインドウ(平壌)しか見ていないと「街も人の表情も明るくなっていた」「売店でアイスクリームを食べる女性の姿は、ソウルで見る韓国の女性たちと殆ど変わりがない」とノ-天気な見方しかできない。
条件(人民への配給の監視)を付けない援助は、特権層を太らせ、人民をますます困窮せていくことを冷徹に見ておくことが肝要と考える。