何故、北朝鮮は日本の一般人を拉致するという国家的犯罪を犯したのか、とい
う事について知人が言っていたのは、日本を無理やりにでも戦後処理のテーブルにつ
かせる為ではないか、とのことでした。
拉致問題がマスコミで大きくクローズアップされるようになった最初の頃、聞いた
話です。
小泉首相が意を決して北朝鮮を訪れ、ピョンヤン宣言に漕ぎつけた際、拉致疑惑に
ついてあっさり肯定した金正日の前に返す言葉を失いあっけにとられた一瞬をニュー
スで見た記憶があります。
その後、日本人拉致問題の解決をさぐる方向として、被害者の方々の一時里帰りが
実現しましたが、北へ一旦戻る事に対し拉致家族を始めメディアの多くが北朝鮮不信
を表明するなかで猛烈な北朝鮮バッシングが巻き起こり、六カ国協議へのもちこみな
ど政府の試行錯誤はあるにしても、本来的解決は、道半ばで宙に浮いている現状であ
ると認識しています。
拉致家族の方々は、望ましい解決を逸らしかねない北朝鮮バッシングのなかで宙ぶ
らりん状態に置かれわたし達もまた北朝鮮の脅威が喧伝されるなか、有事立法が制定
され、戦後日本の出発点であった平和主義の危機に直面しています。
余談ですが、拉致問題で取り残されたままになっている家族の方々が再びとりあげ
られるようになった背景に、イラクで香田さんが拘束され自衛隊の撤退をもとめられ
た時、一言、撤退しない、との小泉首相のいわば見殺しのような対応に日本という国
は国民の命よりいわゆる国益をとるのか、という不信感を一般国民が持ってしまうこ
とへの危機感があるのでは、という印象をもちました。
日本人拉致問題の早期解決をどう図ってゆくのかという問いとともに、戦後処理に
対する態度が今こそ問われているのだ、という思いが募ります。
だれの益か曖昧な「国益」を持ち上げ、先の戦争被害者へのまっとうな謝罪を忌避
するならば両国民の間に根強い不信を醸成し、国家間の対立にくみこまれる(戦争に
参加させられる)のではないかと心配でなりません。