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拉致の真相1
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●拉致のきざし
拉致事件は、ほぼ確定されている事件でも、すでに1962年(42年前)には発生しており、1977~78年と80~83年の期間がピークとなっている。その他にも多数あったが、この時期への集中しているのは、明らかに当時の朝鮮半島の情勢が反映しているといえる。
1960年代後半から、北朝鮮は「武力南進・赤化統一」の方針を推進し、多くのゲリラを韓国に進入させた。東海(日本海)岸一帯にはゲリラ部隊が侵入し、韓国軍と激しい戦闘を展開。一方、ソウルなど主要都市には多数の政治工作員が潜入して反政府活動を組織した(現在も政・財・官・労で秘密裏に工作活動をしているという)。また、北から南へ侵入するトンネルが何本も掘られた(今や観光名所となっている。しかも現在も発見されていないトンネルが在ると言われ、ぜひ韓国に行ったときは見学して下さい)。
これらの事件のなかで最大級のものと言えば、1968年の韓国大統領官邸襲撃事件だ。31人の特殊部隊が38度戦を越えて侵入し、ソウルの大統領官邸にあと2キロまで迫った事件はあまりにも有名な話だ。
この頃の北朝鮮のやり方の特徴は、38度線や東海岸から直接侵入する方法がほとんどだった。それに対し、当時の朴正熙政権は韓国全土で警備態勢を固め、38度線の南には鉄条網と地雷原、要所にコンクリート防壁を築いた(今も高速道路を走っていると良く見かける不気味なコンクリートの塊)。また、海岸立入禁止、軍と住民が民間防衛隊を組織してパトロールをする、これと並行して国民も戦時態勢にに入り、夜の外出禁止と灯火管制、全員に身分証明書の携帯、避難訓練も義務づけた。こうして、ゲリラや工作員(スパイ)の潜入を阻止した。
●日本の工作基地化
しかし、70年代入ると、韓国の警戒態勢が効果をあげ、工作員が38度線や海岸から侵入することが非常に困難となり、変わりに日本経由で、日本人になりすまして入国する例が増え、無防備な日本が狙われたと思われる。
それを示す良い例が、1974年8月15日(光復節、日本の終戦記念日)に起きた朴大統領狙撃事件である。朴大統領が光復節の記念演説中、在日韓国人青年の文世光がピストルで狙撃、弾はそれてとなりの大統領夫人が死亡した。
韓国の発表によれば、文世光は大阪で北朝鮮の工作員に誘われ、反韓国活動のグループに入り、大阪府警高津派出所でピストルを盗み、複数の工作員の指導で射撃やゲリラ訓練をし、日本人のパスポートを使ってソウルに来た。彼の自供に基づいて、韓国警察は日本が北朝鮮の対南工作の拠点になり、それに朝鮮総連が深く関係しているとの調査結果をまとめる。
すぐに韓国政府は日本政府に対して朝鮮総連の活動規制、工作員の出入国監視の徹底などを要求した。しかし、当時の田中内閣は狙撃に日本警察のピストルが使われたことを謝罪したものの、朝鮮総連や工作員の規制は日本の国内法に基づいて処置すると回答、明確な姿勢を示さなかった。国内では、北朝鮮と友好関係にある革新陣営が規制に反対。田中首相も反対を押し切って朝鮮総連を規制することはしなかった。
一方、日本の警察は、文世光がピストルを盗み、日本人のパスポートを不正に使って出国したことを捜査で裏付けた。さらに捜査を進めるには、韓国政府に対して文世光を直接取り調べる要求を出す必要があった。しかし、日本政府はそれをせず、事件から4ヵ月後に韓国は文世光を処刑。日本が北朝鮮工作員の活動を直接確認する機会は失われ、以後対策もたてられなかった。
またもう一つの例は、辛光洙(シン・グァンス)事件である。
辛光洙は静岡県新居町出身の在日朝鮮人。日本名は立山富蔵といい太平洋戦争終結後に北朝鮮に帰国。1950年に北朝鮮義勇軍に志願入隊。1954年にブカレスト工業大学予科入学。1973年に能登半島から密入国し、以後日本を拠点に対南工作を行っていた(『北朝鮮よ、銃殺した兄を返せ!』朴春仙/ザ・マサダ刊に詳しい)。
そして、1980年6月に宮崎県青島海岸で大阪府に住んでいた調理師の原敕晁(はら ただあき)さん(当時43歳)を拉致し、同人名義の日本旅券を不正に取得の上、同人になりすまして海外渡航を繰り返していたが、1985年にソウル市内で韓国当局に逮捕された。
当初は死刑判決を受けたが後に無期懲役に減刑。1999年12月31日、ミレニアム恩赦で釈放され、2000年9月2日北朝鮮に送還され、北では現在「非転向」として英雄扱いされている。日本の警察は辛光洙を国際手配し、北朝鮮に身柄の引き渡しを求めている。
以上に示した例は、全て日韓当局(政府・裁判所・警察)で確認されており、多数の証拠物件も上げられており、紛れもない事実です。北朝鮮の拉致政策は純然たる北朝鮮の国内問題から発したものであり、過去の植民地政策が影響していることは全く考えられません。