経済制裁論には反対。
なぜかについていえば、それが単純に拉致被害者に危険が及ぶ可能性があるだけではなく、北朝鮮側の強硬な対応をとる一種の「口実」を与え、これを事実上の「宣戦布告」とみなす、との北朝鮮の対応を合理化する(無論、彼らの論理でだが)からである。
もちろん、問題はこれだけにとどまらない。仮に「経済制裁」を実行したとして、日本政府だけが貿易その他をストップしても、総額にしてはたいした効果にはならない(韓国、中国、ロシアなど周辺諸国が同調すれば別だろうが)。逆に、国内における金正日体制の強化の口実を与え、彼らにより強硬な政策を採ることを正当化する口実を与えるだけに終わるだろう(たとえば、「日本反動支配層は、わが共和国に事実上の宣戦布告をしてきた。そのため、約束された援助も打ち切った。国民の食糧不足はそのためである」…云々などの国内における宣伝とその引き締め)結果的に見て、このようなやり方をとっても、一般民衆の対日感情は悪化し、かえって現在の体制に対する支持をつなぎとめることにしかならない可能性が高いだろう。
さらにいえば、「家族会」を支援している「救う会」会長・佐藤勝巳氏(元共産党員)は、もう10数年前に「崩壊する北朝鮮」なる本を出したが、結局北朝鮮は金日成が死亡しても崩壊どころか、既に10年も存立している。彼らの主張する「北朝鮮崩壊論」など、もはや破綻していることは明白であろう。それどころか、「経済制裁論」などに安易に同調すれば、結果的に日朝両国の人民に山積している諸問題(拉致問題だけでなく、戦後補償問題、日本人配偶者問題、そのほか)解決の糸口を断ち切ることになろう。
志位和夫委員長が提起した方法・手段も、それが拉致問題解決のための一歩にでもつながるのであれば、当方はむしろ評価する。さらにいえば、国交樹立と、拉致問題の解決を切り離して外交課題として交渉する、という戦術的選択があってもよいのではないか?(この項続く)