共産党は衆院の拉致特別委員会で決議に棄権し、一転参院では賛成した。変更の理由としてあげているのは「外交的努力を引き続き強化すること」の一言が入った事としている。
赤嶺議員の発言によると、「政府がすすめる精査の結果を北朝鮮にきちんと示し、新たな回答を得て真相の解明をすすめるためにも協議の継続が必要だ。経済制裁は解決の道を閉ざしてしまう」としたが、12月15日の志位発言は「今後の交渉の推移と、北朝鮮の態度いかんによっては、交渉による解決を成功させるために、経済制裁を取ることが必要になる場合があり得る」と大きく舵を切った。
やっとまともな認識になったと思う反面、では何故最初から言わないのか?「外交努力の強化」の文言が入ったからという言い訳は姑息な感が拭えない。世論の動向を忖度しての大転換であろうことは、想像に難くない。
このさざ波では「右翼の策動に落ちた」「裏切った」等共産党批判の声もあるか、私の批判は角度が違う。共産党がこの拉致問題でリ-ダ-シップをとれず、防御的対応しかとれていないことに対する失望である。今回の対応もまさにドタバタ劇そのもの。一度首尾一貫した方針を貫徹してもらいたいものである。
さて、拉致救出活動は「右翼とマスコミ」が操っているとしてこの運動に敵対している方々に一言申し上げたい。
第一に「国家主権の蹂躙」に対する認識が全く欠如していること。だから「国家主権の蹂躙」を平然と行った金政権を許すとなる。
第二に、拉致されている人の救出について具体策は何ら提示できないこと。ひたすら「物分りが良い」金正日との話し合いの継続しか言えない。
第三に、経済制裁ついては、人民の更なる困窮を招くとして敏感に反応する。
金正日政権は、まともに話が出来ない「ならず者」政権である。いくら話し合いの継続をしても、うそを積み上げられたのでは継続不可。「ならず者」相手に本音を引き出すには、何らかの制裁をバックとする強い意志表示が必要なことは常識の世界である。
3番目は、現実を注視しておくことが必要と考える。今年の秋の北朝鮮の収穫は壊滅的で大飢饉の予兆すらある。米は1キロ=40ウォン(国定価格)から出発し、値上がりを続け、今や平均では1250ウォン以上まで高騰している。30倍強というすごさ。一般労働者の1か月の平均賃金は2500ウォン程度で、一ヶ月の給料で 米2kgという惨状になっている。当局による通貨乱発によるもので、未曾有の猛インフレで経済大混乱をきたしている。
この経済の急速に悪化により、軍人や秘密警察(保衛部)が集団脱北をはかる動きも出ている。「千人の餓死者を出した部隊もある」ともいわれる。ここまでいくと、秘密警察を支える密告制度も崩れる。今後死者や浮浪児が減ることはないだろう。
これに対して無分別な食糧援助が、一部褒賞金と化し、秘密警察と密告者をよみがえらせたとも言われる。密告が生活の糧になるというなんとおぞましい話だ。つまり、食糧援助の恩恵にあずかるのは、金正日と軍人、秘密警察及び人民弾圧の密告者であることをよく知っておくことが必要だ。逆に言えば、国際社会の制裁で困るのは、金正日、軍人、秘密警察。密告制度と弾圧がなくなって歓迎するのは一般庶民である。