12月25日の「しんぶん赤旗」電子版によると、市田書記局長は「北朝鮮に精査結果の真剣な検討を求める」とした記者会見を開き、その中で
北朝鮮から示された情報・物証についての日本政府の精査結果について、「横田めぐみさんのものとされた『遺骨』が別人のものであったことに示されるように、安否不明の十人の拉致被害者にかんする北朝鮮の『白紙』からの『再調査』がまったく不誠実で、無責任なものであったことを改めて示すものだ」と指摘。「北朝鮮側がこの精査結果についての全資料を真剣に検討し、その上で、再調査のための必要な措置をとることを強く求める」とのべました。
とあり、また、
「北朝鮮側が提出した資料や証言には、特殊機関のフィルターのかかったものが多く見られる。不自然な点、疑問点が多いのもそのためだ。 特殊機関の調査への介在が拉致被害者の安否を含む拉致問題の全容解明の重大な障害となっている。きょうの精査結果でもそのことが確認できる」。
と述べたとされている。これは、先の志位委員長の日本政府に対する申入れ
(1)北朝鮮側の交渉当事者を、拉致問題の全ぼうを知っており、問題の解決に責任を負うことができ、権限をもった人物とすること。
(2)北朝鮮の現場の全面的調査、関係者の聞き取りなどを含め、日本側の真相解明活動に、十分な保障をあたえること。
と対をなすものであろう。これらの一連の動きは、これまでの共産党のこの問題に対するスタンスとはかなり違うものだ。
実際、今年の一月の「しんぶん赤旗」「どう考える北朝鮮問題 不破議長に聞く」(2004年1月14~17日)の中で、不破議長は緒方靖夫国際局長の質問に答えて、「平壌宣言」以後の問題について、次のように述べている。
不破 こういう外交交渉というのは、問題の性格から言って、簡単に論評するわけにゆかない事情があるんですよ。私たちは、日本と北朝鮮のあいだで、水面下をふくめて、どんな交渉がおこなわれているか、 その情報の全体を知る立場にありませんし、交渉の当事者ではないわけですから。そういう立場のものが、いわば交渉の外部から、あれこれと論評したり、こうするのはまずい、こうやるべきだ、などの意見を言い始めると、交渉そのものに予想外の悪い影響を与える場合もあります。交渉の局面局面で、ここはどうかなとか、感じたり考えたりすることは、もちろん、いろいろあります。しかし、交渉の目的そのものでは、政府と私たちのあいだに見解の違いはないわけですから、局面的なことについては、意見があっても、発言を控える節度が大切だと思って、私たちは、その節度をずっと守っているんです。
この対談から、一年足らず、共産党が「交渉の当事者」になった訳でない。また、今回の特殊機関の関与の話などにしても、一般のマスコミも報じているように、実務者会談の内容として、国会等で語られたものを中心に推測しているようで、共産党が「情報の全体を知る立場」になったとは考えられない。だから、志位申し入れといい、市田記者会見といい、この不破氏の立場を踏み越えているのである。まさか、この二人が不破議長に相談なく、勝手に、申し入れしたり、記者会見を開くとは考え難い。今回のことは、恐らく不破議長の采配であろう。何しろ、従来の立場を大幅に越えて、日朝両国政府に交渉の仕切り直しを提案しているのであるから。これはまさに、「いわば交渉の外部から、あれこれと論評したり、こうするのはまずい、こうやるべきだ、などの意見を言い」始めたのである。「交渉そのものに予想外の悪い影響を与える場合も」あることなど心配するよりも、「意見があっても、発言を控える節度が大切だ」と思えなくなったとうことだ。どうして、対談から一年足らずで、「その節度をずっと守れ」なくなったのか、説明責任があるであろう。
結局は、不破議長は、野党外交の一貫として、日朝両国政府に交渉の仕切り直しを伝授したいのであろうか。歌舞伎流にもじれば、共産座の年末顔見世興行の演目は「不破伝授異骨高句麗(ふわでんじゅいこつのからくり)」ということになろうか。高句麗(北朝鮮)を「からくり」と読ませるのは苦しい語呂合わせだが、意味をとってご勘弁願いたい。
さて、ここで、パロディーの元にした、「菅原伝授手習鑑」については、次回の「解説の段」で要点解説かたがた私見を述べたい。