北朝鮮人民の困窮の真因を日米韓の存在(軍事プレゼンス等)に求める意見に何度もお目にかかった。この点を強調し、事実上北の蛮行を黙認する立場である。このフィルタ-で見ると、今日の北朝鮮問題の本質が何も見えない。改めて再整理を試みたい。
1.北朝鮮人民は餓えに苦しんでいるの程度の事ではない。人為的に飢え死を強いられ、有史以来最大級の人民の受難を迎えている。とりわけ悲 惨なのは金王朝に対して忠誠心が低いと言われる北東部の咸鏡北道と咸鏡南道が徹底的に狙い打ちにされた。この地域に対して、徹底的に糧道を断ち、武器なしのジェノサイドを断行した、結果300万人の餓死者が発生した。父親の金日成は、スタ-リンに学び、政治犯収容所に敵対階層として、数十万の無実の人民を送り込んだ。これだけでも人権上大問題なのに、息子の金正日は「桁違い」のことを平然とやってのける。
300万人の虐殺は、近代ではヒトラ-のアウシュビッツ(150万人)とポルポト(170万人)に匹敵する。
人民の飢えを悪用し、外国からの食糧支援を巧みに誘導し、獲得したものは忠誠心の高い軍人、党幹部、平壌市民等に優先配給し、かつ、核とミサイル開発に回す。敵対階層にはゼロ配給。これが基本構造。有っても等しく配給しないのである。別の言い方をすれば、食糧は王朝支配の最大の道具なのだ。外国からの支援だけでも、等しく配給すれば決して餓死などありえないことがわかってきている。
2.何故このような蛮行を行ったか?先軍政治に行き着く。その本質は金王朝の体制維持。すべて王朝の維持ら出発している。普通の国ならこ れだけの失政を重ねると、体制は崩壊する。東ヨ-ロッパの例が如実に物語る。金王朝はそれを回避するために、外敵を意図的につくり、人民の不満のはけ口体制強化は、国内治安対策にも役立つ一石二鳥というわけだ。軍国主義のやり方そのものである。北朝鮮は社会主義とも民主主義とも何の係わり合いのない、論ずることを恥じるような儒教的独裁封建国家と規定できる。「民主主義人民共和国」という冠をつけているが、こういうのを僭称という。その延長上に、国際的無法行為の数々があり、うそと捏造を繰り返す。つまり国際的無法行為(拉致等)は、金王朝維持の国策なのだ。
3.改めて繰り返すが、日本共産党はこのジェノサイドを行った独裁者、人民弾圧の独裁者に対して毅然としなかった。拉致が発覚しなかったら、ヨリを戻していたことは想像に難くない。この点については明確に宮本体制と不破体制は異なる。このあたりを有権者が感じ取り、不支持を突きつける一因とになった。金王朝の人権抑圧(ジェノサイド等)と国際無法行為は、決して北朝鮮の内部問題として押し込めらるものではない。生死を賭けた脱北者は、北朝鮮人民の惨状を傍観視している世論、とりわけ近隣の日本の世論の責任を厳しく問うている。後世に禍根を残さないよう、毅然とした対応が求められる。