2月27日の朝日新聞で「大局を見据えてこそ」との社説が載っている。
てっきり安倍晋三・中川昭一両自民党議員のNHKへの圧力問題かと思った、と
ころが違っている。
3年目を迎えた韓国盧武鉉政権が積極的に進めている過去の歴史見直し政策に
ついての、朝日新聞しからぬ「意見書」だった。
「過去をありのまま明らかにするのは当然のことだ。痛い傷が残っているな
ら、なおのこと、過去に率直でなければならない」この盧大統領の国会演説は至
極当然である。
今年は戦後60年、朝鮮戦争55年、そして韓国併合を実質上決めた乙巳五条
約締結100年の節目に当たる、植民地とされた国が未清算の案件、そして戦後
の軍事独裁政権下で発生した不可思議な出来事・事件について真相糾明に当た
り、またその下で呻吟し、高齢化した被害国民の救済に当たろうとするのも当然
である。
日本のように「拉致問題」などを利用して排外主義をあおり、過去に異様に目
をつぶり、解決を先送りして、「平和憲法」の下にありながら、軍事大国化、自
衛隊の海外派兵、愛国心の高揚、過去の侵略の旗と歌であった「日の丸・君が
代」を子どもや国民に強要して平然としている「民主主義国家」はまれな存在で
ある。
朝日新聞社説は盧政権を「民主化運動で弾圧された人々の政権」と決め付け
「いたずらに国内の対立をあおるな」、「日韓関係に悪い影響を及ぼすな」とお
説教している、しかしこれは違う、真相究明の試みは韓国の保守・民族主義的な
人、また与党ウリ党や民主労働党からも「遅すぎるもっと早くしろ」と支持を受
けている、日韓条約公文書の公開で、国民の中になかには「日韓条約は不平等条
約だ破棄・見直ししろ」との要求の声が高まっている。
過去に対する日本政府の不誠実な態度、そしてこの間の最高裁を始めとした日
本の司法の軍隊慰安婦、勤労挺身隊訴訟に於ける恥ずかしげもない司法権独立を
投げ出した国家への忠節ぶりは戦前を思わせるものだ。
朝日新聞が批判し指摘すべきは、韓国魯武鉉政権ではなくて、日本小泉政権な
のである。
年配の在日の友人が体調を崩したとの連絡を受け、見舞いに行った、症状は快
方に向っており安心したが、訪問するなりの彼の第一声は、「朝日新聞までがお
かしなこと言い出した」だった、まだ社説を読んでいなかった私は「そうです
か」と聞くしかなかったのだが、在日として信頼できる新聞を持たない彼にとっ
て、朝日の社説はショックだったのである。
殴られた痛みは殴られた方しか感じない、いじめはいじめられるものしか感じ
ない、朝日新聞はこの鉄則をきれいに忘れ去ったようだ。
「大局」を忘れ去ったのは朝日新聞である。