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「北朝鮮問題」討論欄

北朝鮮の内実をどこまでわかっているのだろうか

2005/06/28 長壁 満子 40代 金融

 どうも、よくわからない。
 そろそろ、三年になるのだろうか。
 突如、日本のメディアに浮上し、連日連日、おどろおどろしい北朝鮮の暗部が、お 茶の間テレビや右・左翼系商業新聞に登場し・・・。
 何かといったら、でっぷりと太ったふくよかな顔立ちの将軍さまこと金正日。そし て、戦車を背景に国防軍隊の整列画像。一糸乱れぬ有様で、両足を上げる軍隊行進。
 または、農村地域の日本の戦前戦後を思わせるような(高齢の女性の談)貧しい風 景。地べたに落ちた物を拾い集める素足の子どもの画像。
 病院といえば、ペットボトルを点滴ビンの代わりに使用し、寂れた室内光景。薄汚 れたカーテンそして、十分な薬もないという説明付。患者さんはなぜか、いなかった が。
 ともかく、北朝鮮に関しては映像はどれもこれも貧しく、汚く、暗いイメージで統 一されたもののみが踊り狂い、同時に、脱北者の証言がさらに、これらを補強する。 私には、何のために、公開テレビに登場されるのか、その意図が分かりかねたものだ。 金以外に。
 衝撃的な公開処刑も、そういえばあった。処刑を大映しにする日本のメディアのス パイ振りには、哂ってしまうが、よくも、こうした証拠品の数々を、誰が提供してく るのかと、疑問であった。日本なら、こうした恥部は絶対出さないのである。密室で の拷問も、殺しも、めったに出ない。なぜなら、うわべだけは一応、民主主義国家で あるからだ。昨年の自衛隊員の100名近い自殺者の記事すら、おおかたのマスコミは 隠蔽である。今現在、イラク帰国の自衛隊員の中から奇形の障害児が生まれたという ことも。
 私は、これらおどろおどろしい北朝鮮のイメージと、地拉致帰国者及び拉致されて いると思われる日本人たちとを、常に対比していた。拉致帰国者および横田さんの孫・ へギョンさんらの当初のイメージがどうにも、こうした北朝鮮のイメージとつながら なくて違和感が付きまとった。
 そして、彼等彼女らの、日本政府や「救う会」のシナリオのようなセリフをのみ繰 り返される、拉致帰国者たち。私には、週刊金曜日が取材した曽我さんの家族のイン タビューのみが、肉声としてうつったし、へギョンさんのテレビで大写しになった表 情のみが真実のものと理解できた。あとは、すべて、政府官製下の記者会見、ロボッ トのような、マインドコントロールされた感じしか受け取れなかった。
 そして、案の定、帰国者たちは、相変わらず、沈黙である。
 ことに、国会前で、「北朝鮮に経済制裁を!!」とのみ叫ばれている横田さんには、 暗澹たる思いがぬぐえない。本人の孫が生活している北朝鮮である。はっきりいえば、 北で生まれ、成長されているお孫さんは、ある意味、「人質」であろう。「人質が大 事」なら、経済制裁を言うのは逆ではないだろうか。どうにも、わからない。
 大樹の陰さんが詳しく、説明されているが、北朝鮮は朝鮮戦争が始まって、今まで、 米国との休戦状態であり、この間、日本は北朝鮮の特需景気でうまい汁をたっぷりと 吸わせてもらった。北は、朝鮮人を犠牲にされ、虐げられ、あまたの同胞を帰国させ、 理想の共和国建国を目指して、必死で今日まで来たのではないだろうか。当時、南か ら民主活動家が北へ集まったといわれている。南進か北進か、とか、どっちが先に侵 攻したかといった、ことより、深く重い真実が明らかにされねばならない。
 そして、戦争のはざ間で翻弄された在日の人々、帰国事業で北に帰った人々。海女 のリャンさんの夫も、息子を共和国に帰した一人だった。祖国の建設事業に、生涯を ささげた人だった。

大樹の陰さんwrote
ーー1959年末から開始された在日朝鮮人の帰国運動は、1984年終止符が打た れるまで凡そ9万3千人が「北の楽園」に帰国した。
 1945年の日本の敗戦によって、朝鮮半島が植民地支配より解放された時、日本 の炭鉱などでの労働などのため強制連行され、また祖国で殆ど全てを奪われ、まさに 生き延びるために祖国を捨てるなどを原因として日本に居住していた朝鮮人は2百万 人以上と言われる。

 (注)横田めぐみさんや、5人が拉致されたのは、この帰国事業の最中、戦争の混 沌状況の1978年~80年のことである。歴史を日本の都合よく分断できるはずが ない。

 理想と現実は、常に違うものである。
 共産党もそうであり、自由民主主義政党であるべく自民党もまた、公明党という政 党も同じことである。
 共産党がいつまでも赤狩りされるのは、共産主義という「理想の理念」を掲げなが ら、この理想のモデルがない、つまり、それだけ、人間のやることには問題が付きま とうということである。他国の一面のみ見て、非難合戦してみたり、内紛に甘んじて いると、どこかの冷厳なケダモノ国家に、いいように、操られてしまうのである。
 ロシアでは、また、チェチェン人の民家を国軍が襲撃したという記事が載っていた。 劇場占拠事件、学校占拠事件、もまた、国の弾圧に抵抗した人々が、無残にプーチン の毒ガス等で殺されていった。
 国が自国の国益を守る、政権を守るためには、どんな非道もやる。
 日本は、今、政治の失政が巨大になり、それのつけとして、米国との略奪戦争へと 向っている。そのための国策としては、国内の金融・医療・教育・福祉とありとあら ゆる最後の弾圧と締め上げに躍起になっている。NHKをはじめとして、歴史の歪曲 と隠蔽に血眼になり、子どもの防犯と称して、ヘルメットや治安対策と名を借りた不 気味な監視対策が導入されつつある。これまた、紙上で、お茶の間テレビで広報され るからたまったものではない。
 国民保護法というものであろうか。隣近所の方たちが、最近、とみに、こうした風 潮に染まりつつある。気味が悪いことである。
 所詮、ロシアも中国も、北朝鮮も米国も日本も、形こそ違え、国を治めるために、 国民を犠牲にするのである。北朝鮮を私がなぜか擁護するのは、ひとえに、日米の経 済侵略国側と、被侵略国側という立場の違いからである。北朝鮮のことを私は詳しい わけでもないが、今の世界構造・力関係からみて、何を視なければならないか、そし て、この視点をきっちりと持っていないと、軍国路線に取り込まれるだけである。
 軍国路線がかくも、ここまで進んでしまってきたからには、良識的な知識人の正念 場ではないだろうか。戦争加担の急先鋒となって大活躍するか歯止めをかけるか、大 きな分かれ道に差しかかっていると思われる。
 間違っても、個人的な感情や狭量な見識、または票を意識した媚で、日本を破滅に 追いやらないでもらいたいものである。
 ちなみに、悪名高い「つくる会」の歴史教科書は、拉致関連が載り、強制連行や従 軍慰安婦がばっさりとけずられている。そして、これらが採択されやすいように、採 択責任者の面々が恣意的に選ばれているという。
 こうした動きを拉致帰国者や支援者は、認識すると共に、きっちりと、みてほしい。 拉致事件は、個人の報復感情で解決できるものではなく、今や、大きく、この国が戦 争国家へとなり果てようとする最後の最大の駒となっているのであるから。
 北朝鮮の拉致当事者もろとも、北がつぶれ、その火の粉もろとも被る覚悟であるな ら、もはや、私は何も言わない。