かつての東西冷戦時代、軍事独裁政権下の韓国から「K・T生」という匿名の人士が送ってくる、短いが生々しい便りは、どんな弾圧にもめげず、くじけず、闘い抜いている韓国民衆の姿を想像させ、私たち日本の労働者や市民への、何より力強い励ましの一つだった。
この韓国の人々が、自分自身の力で闘いとった民主化の流れは、もう誰にも止めることは出来ないだろう。
さて民主化が進む中で、K・T生さんはとうとう本名を明かし、今は韓国の与党「開かれたウリ党」の国会議員・金元雄として活躍している。
さてそのK・T生さんこと金元雄さんが、この5月に拉致問題についてめぐみさんのお父さん、横田滋さんに送った書簡の全文が、「週刊金曜日」6月30日号に掲載されている。
彼はまずはじめに、横田さん夫妻に同情を寄せ、深い哀悼の意を表している。
そしてこの事件が「東西冷戦」という、朝鮮半島の人々にとっては予想だもしなかった過酷な環境の中で発生した不幸な出来事であり、その過程で、「北」も「南」もお互いが同じようなことを犯し、それが未だ未解決のままであること、また戦前の植民地時代に日本帝国主義の下で行われた強制連行によって、未だどこにいるかもわからない「数十万人の朝鮮人のみぐみ」が存在し、何の解決も見ていないことなどを、丁寧に真摯に伝えた手紙です。
金さんは手紙の最後に、横田さんの訪韓中、「もし時間がおありでしたら、日帝時に強制動員された朝鮮人徴用者、従軍慰安婦とその遺族に一度会ってはどうですか」と提案されています。
そうすれば「日韓連帯」を言れている横田さんの願いは、韓国の人々により強く伝わるだろうとの意味と思います。
横田さん夫妻がこの手紙をどのようなものとして受け取り、にどんな返事をされたか、また強制連行被害者や従軍慰安婦とされた方々にお会いになったのか否か、私に知るよしはありませんが、このT・K生さんの真摯な問いかけに、横田夫妻が「人道主義の立場」からしっかりと対応されたことと信じてやみません。
また、「正義味方」さまも、「地上の楽園」さまも、しっかりこのT・K生さんの手紙をお読みいただくよう切望して終わります。